tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

AIJ:なぜこんなことが・・・蓄積社会と犯罪

2012年02月28日 18時28分19秒 | 経済
AIJ:なぜこんなことが・・・蓄積社会と犯罪
 戦後の貧しい社会では、日本の国も企業も個人もほとんど蓄積を持っていませんでした。蓄積を持たない社会では、誰もが日々働かなければ食べていけないことをよく知っていました。

 日本人はしゃにむに働いたようです。その結果、個人にも企業にも、国にも蓄積が出来ました。「恒産無ければ恒心無し」といいます。恒産は生活の安定にも、精神的な安定にも、将来の発展のための投資にも重要です。

 こうして生まれた蓄積(恒産)は、虫に食われないように、腐らないように確り貯蔵できなければ意味がありません。「貨幣と金融機関」は、そのために大きな役割を果たすことになりました。
 かつては銀行預金は元本保障で、適切な利息が付きました。

 今その安心感が、急速に崩れています。何故でしょうか。マネーゲーム流行のせいだ、などという答えが返ってきそうです。しかし真因に遡れば、それは、それぞれの人間がそれぞれに持っている「邪な欲望」が次第に表に出てきてしまったせいではないでしょうか。他人の蓄積を「自分の所に振替えよう」という欲望の顕在化です。

 資本主義は倫理と共存しなければ崩壊することは多くの先人の指摘するところですが、欲望が勝り、倫理が後退する中で、マネー資本主義と名を変えたギャンブルの跳梁が大きな原因になっている様な気がします。世の中には、正業よりギャンブルを好む(誘惑に負ける)人も大勢いるのです。

 インカムゲイン(国民所得を構成する所得)は社会を豊かにする所得です、しかしギャンブルで得る所得、キャピタルゲインはもともとゼロサムで、単なる所得の移転に過ぎません。
 にも拘らず、今は会計基準でも、この2種類の「ゲイン」を区別しない方向に振れ過ぎています。

 アメリカが主導したこうした動きは、経常収支の赤を資本収支の黒で埋めなければならないという要請から始まり、次第にマネー資本主義、金融工学などへと外見は高度化しましたが、本質は、あくまで価値の創造ではなく、価値の移転(価値を創造しない虚業)です。

 エルピーダの倒産は残念なことですが、原因は分析可能で再建も可能でしょう。それに引き換え、AIJの場合はどうでしょか。ギャンブルには多くの場合犯罪も同居します。

 前述のように、かつて、銀行が元本保証で適切な利息をつけ、預金を預かるようになり、社会は安定しました。しかしこうした社会の安定が急速に劣化しています。
  
 今、世界中が、ソブリンリスクも含めてそういう時代にはまり込んでしまっているのではないでしょうか。これでは資本主義は成り立ちません。AIJの問題はそういううねりの中で起きた事件と考えるべきでしょう。
 本質は資本主義の劣化です。資本主義の立て直しが必要なようです。そのためには、実業に携わる人が、口を開かなければなりません。


80円の円安効果持続のために

2012年02月24日 11時35分18秒 | 経済
80円の円安効果持続のために
 白川総裁の発言は、予想以上の効果があったようです。ユーロ問題の落ち着きという援軍もあってかもしれませんが、株価にこれだけの効果があって初めてその効果に気付くといった様子が見られるような気がします。

 さすがにこのところ、円高の懸念が払しょくされたわけではなく、またいつ、円高に戻るかわからないという危惧から、株価も連日小動きにとどまっているようですが、この際、日本にとって、まずは80円水準の定着を目指して、円を安定させることを日本は望んでおり、それは世界経済のためになるという事を、日本政府は世界に積極的にPRすべきではないでしょうか。

 まずは、日本経済が実力以上の円高でデフレに呻吟することがいかに世界経済へのマイナスであるかを説明し、過度の円高解消で、日本が正常な経済成長体質を取り戻すことがいかに日本経済の世界経済への貢献を促進するか、そのための用意が日本にはあるという事を十分説明することでしょう。

 特にアメリカには、日本経済が活性化することがアメリカの利益に直接直つながることを理解してもらうことが、「アメリカが日本の単独介入に不快感」といったギクシャクした関係を改善するためにも必須でしょう。

 もともと為替レートというのは、その国の経済価値のベースですから、不安定に変動することがない方が良いことは明らかです。そうした最も基本的な経済の問題を十分に理解し尊重し合う風土を国際経済関係のなかに作りあげていかなければならないことは、いずれの国でも解っているはずです。

 マネー資本主義の跳梁を阻止しようというというG20などの試みも、原点はそこにあるはずです。
 まずは「思惑や疑心暗鬼による為替レートの過度な変動を防止することが世界経済の安定のために必要」という世論を喚起することも大変大事でしょう。

 日本政府のやるべきことはたくさんあります。そして今をチャンスにして、日本として世界に訴えるべき情報を明確に世界に向け発信することはまさに必要ではないでしょうか。

 そろそろ日本も受け身ばかりの外交から、世界に役立つことであれば、積極的に発信して世界の世論に問うようなことのできる外交に一皮むける時期ではないでしょうか。


動き始めるか日本経済

2012年02月21日 17時22分51秒 | 経済
動き始めるか日本経済
 ギリシャの国民が「経済にタダの昼飯はない」という諺を理解し、デモをやってもストをやっても、結局は、自分たちの経済の生産力の範囲で生活をするしかないという事を理解し、「ただし今までやってしまった過剰支出の結果の借金は、とてもすぐに返すのは無理だから、当面面倒を見てほしい、将来一生懸命働いて、ユーロ諸国や世界の皆様におかけしたご迷惑は最大限償うように努力します。」という事になれば、ユーロの混乱も一段落でしょう。

 ヨーロッパの国々はそれぞれに成熟した国々で、西も東も解らない子供ではないのですから、ギリシャがそうなれば、今騒がれている他の国々も、「俺のところは違う」とは言いにくくなり、結局は、実体経済の実力の水準にまで支出を切り詰めるしかないと理解することになると期待されるからです。

 こんな見通しのもとに、ユーロ相場が対円でも、対ドルでも持ち直してきたのでしょうか。その教訓がアメリカにどこまで共有されるのかわかりません。
アメリカには、未だ「アメリカは別だ」という気もあるようですが、アメリカには良識を持った人もたくさんいますから、本心では解っているのでしょう。

 しかしドルの持ち直しには、「アメリカの経済が堅調を取り戻したようだから」などという経済学者たち、巨大な赤字を垂れ流してでも経済活動を活発にした方を喜ぶ「近代経済学」ならぬ「近視経済学」者も多いですから、多分、またいつか何か起こるのでしょう。

 その頃は、アメリカ経済の世界での相対規模はますます小さくなっていて、世界経済への悪影響がより小さくて済むことを願うばかりですが、これは世界経済の抱える最大の問題として、最後まで残されそうです。

 一番良く解っている日本人は、政治家も、アカデミアも、財界も。陰に陽にそれに言及し、世界の関心、アメリカの良心に常にそのことのリマインドを働きかけることを、まさに「アメリカのために」心がけることが大事でしょう。

 それはまた、日本自身が、失われた二十数年をかけて経験してきた、過度の円高への、長期的な対応策でもあります。
 幸い、日本銀行は、過日の政策発表で、その基本線を示すことができたと思います。これからは、あらゆることを契機にして、日本経済の実力以上の円高を阻止する手段、戦略を縦横に活用することで、日本経済が本来の力を発揮して、世界経済にまともな貢献のできるものにしていくことを考えるべきでしょう。

 日本の国が芯まで腐らないうちに、人づくりからやり直せる(まずは新卒の就職率を高められる)ような力を企業に持たせるぐらいの、円レート実現に、今をチャンスに徹底した政策努力をつぎ込むべきでしょう。
 それが出来れば、少子化対策にも、税・社会保障の一体改革にも、新たな地平線が開けるでしょう。


インフレターゲットと経済環境

2012年02月18日 20時26分39秒 | 経済
インフレターゲットと経済環境
 $1=¥80台になったりして、このところ一寸円高環境が緩んでいるような気がします。ユーロ問題が少しずつ進んでいるせいか、日本の財政状況がますます泥沼の様相を見せているからか、日銀が徹底した金融緩和を継続するといったからか、国際投機資本の思惑か、単なるはずみか、定かにはわかりませんが、これだけで日本の株式市場は、様変わりの活況です。

 今の日本経済には、多少でも円安になることが、まさにほっとする条件なのでしょうが、予断は許しません。ただ、インフレターゲットの条件が整うまでは徹底した金融緩和を続けると宣言した日銀にとっては、この円安に、それへの反応の部分があるとすれば、これは歓迎すべきことでしょう。
 
 今の日本の金融緩和政策は、まさに消費者物価が上がる環境に持って行くための「アメリカとの」根競べで、中央銀行が市中から国債を買い上げてでも緩和を続けようという金融論の基本からいれば、禁じ手を平気で使うといった異常なものです。そして、「円高→デフレ」という異常な状態だからこそ、それが許されるということでしょう。

 「円高→デフレ」という状態は、それほど異常なもので、しかも20年以上もそういう状態に置かれている国があるという事そのものが、今の変動相場制(勝手相場制)の異常さ(為替無政府状態)を示しているというべきでしょう。

 日銀の政策は、この、「常に実力以上の為替レートを強いられる」(常に実力以上のハンデを決められるゴルフプレーヤー)日本をその状況から脱出させることをまず目指し、それが出来た暁には、インフレは1パーセントにします、という宣言にほかなりません。

 デフレにならないような為替レートが決まらない限り、消費者物価上昇などはありえず(消費税増税は別)、際限のない円高デフレのもとでのインフレターゲットなどは、真夜中にソーラーパネルの発電を期待するようなものと知悉した日銀が、敢てインフレターゲットを含むこういう政策をとった、という事は、インフレターゲットが可能になる環境作りまでのプロセスに本当の目的がある、という風に理解して、今回の日銀の政策を判断しているものです。

 前回、意を尽くさなかったこともあり、今回のブログで書かせていただきました。


白川総裁のクリーンヒット

2012年02月15日 11時32分40秒 | 経済
 アメリカが2パーセントのインフレターゲットを決めてきました。これに対して機を逸せず、日銀の白川総裁は1パーセントのインフレターゲットを打ち出しました。素晴らしいクリーンヒットではないでしょうか。

 このクリーンヒットが、単なるクリーンヒットを超えて、いわば審判団が混乱している今の野球ルール(世界経済の価値基準)が本来の野球ルールにの基本に帰るきっかけになることを願うものです。

 アメリカが、年2パーセントの物価上昇を認め、日本が年1パーセントの物価上昇を認めるということは、実体経済の基本の戻れば、アメリカは年に2パーセントの生産性を上回るコスト上昇を認め、日本は年に1パーセントの生産性を上回るコスト上昇を認めるということです。

 そしてどちらの国も、その状況になるまでは(たとえ流動性の罠がどうのと言われようが)徹底した金融緩和を続ける(いわば根競べ)ということです。

 たぶん白川総裁は、消費者物価が流動性よりもコストアップによって決まるということをご存じなのでしょう。 「バブルの時期にも日本の物価は年に1.6パーセントしか上がらなかった」と言っておられます。

 あの時の日本の、地価、住宅価格、ゴルフ会員権、などなどの高騰の中で、消費者物価の安定は世界的にも特筆に値するでしょうし、これは日本の労使の賃金決定における良識によるところが大です。
経済の基本に戻れば、日米の物価上昇格差が、1パーセント(2%-1%=1%)ということは、円レートはドルに対し年に1パーセントの円高で理論的には適切、ということになります。

 今のように、国際投機資本や格付け会社の思惑で、勝手な円高が発生すことに対する明らかな牽制の手段であり、為替レートに対する合理的な判断基準を提供します。
 しかも固定相場制のように、がんじがらめではなく、それぞれの国の事情にも柔軟に対応しうる余地を用意するものでしょう。

 そんなことは、経済学を勉強した者なら誰でも解ってるよ、と言われる方もおられましょう。しかし最近の経営学や、人事考課でも言われるように担当者、責任者は「やれているかどうか」が問われているのです。
 次は政府の政治的手腕が問われるということでしょうか。


中国、ドイツ、スイス、そして日本は?

2012年02月15日 10時33分25秒 | 経済
中国、ドイツ、スイス、そして日本は?
 「無理が通れば道理が引っ込む」というという諺がありますが、これは、「 時に世の中では、まともでないことの方が通ってしまう」 ということを言っているのでしょう。それを慨嘆しながら「まあ生姜ないのか」と自嘲的な感じが良く出ています。

 無能な上役の横車などで、部下が無駄と分っていることをやらなければならなくなったなどというのは典型で、多くの方もご経験でしょう。
 しかしあまり深刻になると、自嘲的に苦笑いで済ますわけにはいかなくなることもあります。

 今の世界経済を見ていると、すでに、苦笑いで済ませる段階ではなくなっていると思えるのですが如何でしょうか。

 特に先進国経済を見て行きますと、アメリカをはじめ、多くの国は、その国の経済力以上の支出をし、毎年赤字を計上しています。赤字は借金でファイナンスしなければなりませんから、無理して金を借ります。
 本来は支出水準を下げて(生活を切り詰めて)赤字にならないように是正しなければならないのですが、意志薄弱でそれが出来ません。借金がかさんで動きが取れなくなります。

 一方少数ですが、自分の経済力の範囲での生活をきちんと守る国、ガバナンス、セルフディシプリンの確りした国もあります。日本、ドイツ、スイス、中国(途上国ですが)などです。
 ところが赤字の国の方が力が強く、数も多くなると、「お前が黒字を出すから俺たちが赤字になる。怪しからん」と、横車を押して、いちゃもんをつけます。そして黒字国に通貨価値切り上げを迫ります。

 黒字国はある程度は譲歩しますが、程度を超えると、それぞれに対抗手段を考えます。
・力の強い中国は、力でそれを押し返します。
・ドイツは、共通通貨ユーロを盾に、「俺たちの仲間には、赤字国が多い」とユーロ安で躱します。
・スイスはたまらず、スイスフランをユーロにリンクします。
・日本は、何も対抗手段を持てず、半泣きで単独介入をやります。そしてその結果が、前回の冒頭「アメリカの不快感」です。

 道理を主張する正義の味方、白馬の騎士(月光仮面でもいいです)は現れそうにありません。日本はどうするのでしょうか。


海外展開で解決できるのか

2012年02月13日 10時26分28秒 | 経済
海外展開で解決できるのか
 アメリカは、日本が円高阻止のために「単独介入」に踏み切ったことに不快感を示したという報道がありました。つまりアメリカはもっと円高ドル安にしてほしいということでしょう。1995年の超円高に際し、協調介入に踏み切ってくれた時とは大違いです。

 こうしたアメリカの意向は陰に陽に、国際投機資本の行動にも影響を与えるでしょう。さらなる円高、$1=¥60~50を予想する人も多いですね。
 予想は結構ですが、$1=¥75を切り上げるような円高で日本はまともにやっていけるのか、真剣に考えてほしいものです。

 トヨタは国内300万台の生産は死守したいと、言ってくれていますが、多くの企業は雪崩を打って海外シフトを考えているようです。貿易収支の赤字化傾向は進み、経常黒字は投資収益頼みになりつつあります。

 海外に工場進出して儲かれば、それでもいいという意見もありましょう。企業収益としてはそれでもいいかもしれませんが、日本経済と雇用、賃金、国内の社会問題を考えた時、それでは、問題解決にならないことは明らかだと思います。

 投資収益と付加価値の問題を考えてみればそれは明らかです。日本人は投資収益で食べているのではりません、付加価値で生きているのです。それはこういうことです。

 一億円のお金があった場合、それを外国債券に投資して2パーセントに回れば年200万円の収入です。これで人一人、1年何とか暮らせるかもしれません。
 一方、その1億円でパン屋をやって、家族3人で働き、1年たって利益がやっと50万円でたとします。国民経済にとってどちらがいいのでしょうか。

 お分かりと思いますが、パン屋の方がずっといいのです。パン屋の場合には50万円の利益のほかに、家族3人の生活費(多分1000万円ぐらいの付加価値)を生み出しているからです。日本経済にとっては収益ではなく、雇用と賃金の源である付加価値(GDP)が大事なのです。

 円高は、企業の海外移転により、この大事な付加価値を海外で発生させ、利益の一部だけを国内に持ってくるという経済のあり方を促進するわけです。
 これでは就職氷河期は続き、賃金は下がり続け、就職できても非正規ばかりが増える、事になります。これを促進するのが円高です。
 アメリカが日本の円高阻止の努力に不快感を示すという意識の底に何があるのかが問題です。


今、一発で景気が回復する言葉

2012年02月10日 11時00分42秒 | 経済
今、一発で景気が回復する言葉
 いろいろな方と、景気回復策についてお話をしている中で、もしこんなことが出来れば、日本経済は直ちに回復を始めるだろうというアイデアが出てきます。その中でも、ほとんどの方が、そう思っておられるものがあります。

 私も、昭和40年不況の折の「国債を発行します」という一声に匹敵するアイデアだと思います。あのときの、経済界、国民の反応がいかに劇的だったかをご記憶の方は、「そんな方法があるのなら、何としてでもやって欲しい」と言われるでしょう。

 勿体ぶらず、ざっくばらんに申し上げてしまえば、
「もうこれ以上円高にはしません」
という一言です。これほど日本の経営者を安心させる言葉はありません。もしそれでも、日本経済の回復は容易でないということであれば、日本経済は既に半分死に体で、ソブリンリスクにも、円の空売りにも対抗できないところまで堕ちているということではないでしょうか。まだ今のうちなら、これを聞いたら、多分、明日から景気は回復するでしょう。

 多くの方も、もちろん企業も、まだまだ元気を残していて、「円高の心配がないのだったら、何とでもやりようはあるよ。」と考えておられるのではないでしょうか。

 現状、なぜ元気が出ないのかというと、「頑張ってコストダウンすれば、日本経済は元気だからとまた円高になる。コストダウンするだけ円高になるのでは頑張る意味がない」、しかも円高になったからといって、どこにも文句も持って行きようがない、これで経営をやれと言われてもできるはずがない、外国に行くしかない、となるわけです。

 日本のコスト水準は、労使が決める前に円高によってきまる、国際投機資本は日本が頑張っているとみれば、際限なく円高にしてくる、というのが多くの企業経営者の現状認識でしょう。これでは経営計画も立ちませんし、企業の経営活動が成立する状況ではりません。元気が出なくて当たり前です。

 プラザ合意の時は、一応「円高OKと言ってください」という挨拶がありました。$1=¥240→120は予想外でしたが、日本人は10年以上かけて、コストを下げ、2002年には何とか目鼻が付き、「いざなぎ越え」が始まりました。当時、私も、これで苦難の時期は過ぎた、あとはまた頑張るだけ、と思っていました。

 しかし、リーマンショックで90円、ユーロ問題で75円。何の挨拶もなく、さらに4割のコストアップです。今後も全く予断を許しません。これでは経営者が日本国内で、責任を持って経営ができ状況ではありません。 経営者の皆さんはどうお考えでしょうか。


景気回復策の歴史

2012年02月08日 11時26分56秒 | 経済
景気回復策の歴史
 戦後の日本経済の歴史の中ではいろいろなことがありました。そのたびに日本人はいろいろなことを考えて、景気回復を図り、劇的に回復させたり、長い努力の末回復させたり、それぞれの場で努力をして、何とか凌いできました。

 そうした場面を通観しても、今の日本の状態は、大変厄介だと思います。しかし起死回生の妙案はないわけではありません。
 ただ、今までの不況からの回復の手段は、日本人が自分の手で決定することが出来ましたが、今回の不況の場合は、日本人がいくら頑張ってみても、海外との関係が決定的な要因ですから簡単ではありません。
 
 日本人は自分の努力でできることであれば、かなり難しいことでも、何とかしてやってしまう能力はあるのですが、もともと遠慮深いのでしょうか、相手があると、どうも交渉下手で、何もできなかったり、ぎくしゃくしてしまったりで、巧くいきません。

 この超長期不況からの脱出のために何が必要なのか。 それははっきり言って「景気回復の手段を,他人の手から自分の手に取り戻すことでしょう。

 戦後、日本経済が一人前になってからの動きの中から、不況とその対策については、ほんのポイントだけですが、このブログでは「景気回復策あれこれ1~5(2008.9.9~2008.9.20)」で、書かせていただきました。

 戦後最大の不況と言われた昭和40年不況からの回復、第一次オイルショック後のマイナス成長・狂乱物価からの回復、そして、プラザ合意後の大幅円高・バブル崩壊からの回復などです。

 そして、今、リーマンショック後のユーロの混乱も巻き込んだ超円高不況からの脱出の方途を探る日本経済です。試験問題に例えれば、出題の内容は毎回より複雑で、難しくなっています。回答を思いつくのも容易ではありません。特に今回は、回答を思いついても実行が大変難しいようです。

 さて、日本はうまく正解を出し、それを実行しうるでしょうか。できなければ、今の不況から脱出できないことになりますから、矢張り、結局はやらなければならないのでしょう。さて、巧く出来るでしょうか。


円高・円安、何でも心配? 日本経済

2012年02月06日 11時09分08秒 | 経済
円高・円安、何でも心配?
 三菱UFJ銀行が、日本のソブリンリスク対応の準備をしているという報道がありました。円安を誘うジェスチャーとしての行動ならば、素晴らしい発想だと思いますが、今の国際経済情勢の中では、円安への反転は容易でないように感じています。

 理由は縷々説明してきましたように、いまのアメリカを始めとした経済の不健全さがあまりにもひどく、それに引き替え、日本があまりにも健全だということです。冒頭の検討は、数年後に日本が経常赤字になり、国内で国債が捌けなくなる時期を目処に、ということのようですが、問題はそのあたりをどう読むかでしょう。

 今の日本経済の状況で、もし、ソブリンリスクで円安になれば、日本の製造業は急速に復活するでしょう。国際投機資本の国債空売り・円安で日本経済が大打撃を受けるとすれば、円安になっても復活できないほどに日本の製造業は疲弊、海外移転しガラガラに空洞化しているとか、さらには、アメリカが文句を言うから保有するアメリカ国債は、絶対売らない とかいう条件を付けなくてはならないでしょう。

 日本経済の生命線である、技術開発とものづくりがそこまで落ちる可能性が数年のうちにあるとしたら、それこそが、何としてでも食い止めなければならない最大の問題でしょう。このブログでも繰り返し述べて来ていますように、そうならないために、今の経常黒字を技術開発積極化のために使い切る ぐらいの戦略こそが必要なのではないでしょうか。

 それが出来れば、経常収支は早めに赤字になるが、技術開発力やモノづくりの力はもっと強くなって、円安でデフレ脱却、健全化の方向も見えてくる可能性も出て来るのではないでしょうか。
 
 成長しない経済の中で、税・社会保障の一体改革を叫んでも、結局中身は、「みんなで痛みを分かち合う」以外に方法はありません。
 痛みから逃れよとする人を見つけて、「あなたも痛みを分かち合うべきだ」という以外に何ができるのでしょうか。

マイナス成長で、日本経済自体が痩せ細る中で、「格差解消で分厚い中間層」(野田総理)と言ってみても、何か空しさ、そらぞらしさを感じているというのが今の日本人の本当の気持ちではないでしょうか。
 
 今、国民が必要としているメッセージは、「こうすれば日本は活力を取り戻す」という目標と方法論の具体的な提示でしょう。


マネー資本主義克服に何が必要か その2

2012年02月01日 15時30分00秒 | 経済
マネー資本主義克服に何が必要か その2
 マネー資本主義の根本的な克服策は「賃金上昇を生産性上昇に合わせること」、これしかありません。しかし、これは必要条件であって、十分条件ではありません。
 以前も書きましたように、ギャンブルというのは有史以前から人間と共にあり、ついでに言えば、インチキ も必ず随伴します。
 必要条件が満たされても、ギャンブルは残ります。

 そこで必要になるのは、ホモ・エコノミクスに倫理を教えることと、制度的に、厳しいディシプリンを課すことでしょう。その点で2009年の「ロンドンG20」や2011年の「慶州G20」の共同宣言 は重要なのです。

 この実現のために、財政支出の削減が言われますが、実はその背後にある、国民の「生産能力を超えた生活向上の欲求」(生産性向上を超える賃上げ欲求)に手を打たないと、問題は解決しません。そのためにも「合意的な労使関係」は決定的に重要なのです。
 ここでも「経済にタダの昼飯はない」という格言は生きています。労働組合にその理解が必要なのです。

 今、世界を見渡してみても成熟経済の先進主要国の中で、経常収支の黒字を維持しているのは、ドイツと日本です。ドイツはかつて物価1兆倍を経験し、国民自体が、インフレを徹底的に嫌っています。日本は、戦後、第一次オイルショックで狂乱物価を経験し、第二次オイルショックでその教訓を生かし「ジャパンアズナンバーワン 」と言われた経済の安定を実現し、その過程で労使がインフレの無駄を熟知しています。
 各国経済には、こうした歴史から直接学んだ国民への教訓が生きているようです。

 以上、最も基本的なことを指摘してきましたが、前々々回書きましたように、アメリカがブレトンウッズ体制を考えた時に掲げた思想はこれだったのでしょう。しかし結局は、ベトナム戦費の拡大と国民の欲求に抗しえず、ケネディー~ニクソン時代の悪戦苦闘の末、アメリカ自体が先ずこれを放棄、世界経済はキーカレンシーの漂流から、マネーの大津波に飲み込まれてしまうという今日に至ったのがその間の実情でしょう。矢張り世界のリーダー、一国のリーダーは大変です。

 今ギリシャではパパデモス首相が、悪戦苦闘しています。国民が「ただの昼飯はない」ことを「本当」に理解しなければ、デモや暴動はやまないでしょう。理解を得るためには「国民のリーダーに対する信頼」がベースになります。これはどこの国でも同じです。やはりリーダーは大変です。しかし、それこそがリーダーの役割です。