限りなき知の探訪

45年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

沂風詠録:(第24回目)『観相のこつ、八観六験と九徴』

2009-10-18 00:25:33 | 日記
以前、このブログで『さんじゅつを極める』というテーマで、私が学生時代から、『三術』(弁論術・観相術・読心術)に熟達したいと念願しているという話を書いた。

春秋左氏伝や史記などには観相にまつわる話がいくつか出てくる。例えば、淮陰侯列伝には、「かい通」が韓信に『僕嘗受相人之術』(拙者は観相の心得がござる)と言って近づく場面がある。そして、人払いを願ったあと、韓信の顔をみて、『このツラじゃ、せいぜい小名じゃな』そして韓信の後ろにまわり『おやおや、この背格好からすると天子にもなれる』とおだてた。
『相君之面、不過封侯、又危不安。相君之背、貴乃不可言』(君の面を相するに、封侯にすぎず、又、危くして安からず。君の背を相するに、貴きは、すなわち言うべからず)

このように個別の判断もさることながら、中国人の得意なのは、それらから何らかの法則性を(半ばでっちあげてでも)導きだしてくることである。



戦国末期から秦にかけて編纂された呂氏春秋には、戦国の遊説子たちがまとめた『人を判断する手引き』が書かれている。それが、『八観六験』である。

【八觀】
およそ人を論ずるに、と題して次の8つの観点に注目せよ、と言う。
読み方は、全て同じ口調である。
例えば第一文: 通づれば、則ちその礼する所を観よ。
枠組みは 『if 通、then 禮 を観察せよ』ということだ。

通則觀其所禮
貴則觀其所進
富則觀其所養
聽則觀其所行
止則觀其所好
習則觀其所言
窮則觀其所不受
賤則觀其所不爲

【六驗】
この六験も読み方は、全て同じ口調である。
例えば第一文: これを喜ばせて、もってその守りを験す。
枠組みは 『let him 喜、then 守 をチェックせよ』ということだ。

喜之以驗其守
樂之以驗其僻
怒之以驗其節
懼之以驗其特
哀之以驗其人
苦之以驗其志

 *******************************************

老子や荘子の老荘思想というのは、一般的には退嬰的とみなされているが、中国の古典は全てそうだが、このような浅薄な見方をはるかに超える芳醇な内容が盛り込まれている。(ただ、その内容、特に外篇や雑篇に、どの程度荘子本人の思想が反映されているかについてはここでは問わない。)

さて、荘子によると君子を判断するには、次の九徴(9つの特徴)を見ればよい、という。

【九徴】
この九徴も読み方は、全て同じ口調である。
例えば第一文: これを遠使して、その忠を観る。
枠組みは 『let him 遠使、then 忠 を観察せよ』ということだ。

遠使之而觀其忠
近使之而觀其敬
煩使之而觀其能
卒然問焉而觀其知
急與之期而觀其信
委之以財而觀其仁
告之以危而觀其節
醉之以酒而觀其側
雜之以處而觀其色

最後から2番目の『酔之以酒而観其側』(これを酔わするに酒を以ってし、その側を観る)というのは、私は次のように解釈する。『酔った時にちゃらちゃらとする奴は、いくら普段しらふの時にしゃんとしていても、怪しい奴である。』そう言えば、大事な国際会議に高級フランスワインで泥酔し、テレビ中継で全世界に醜態をさらした大臣がいたような気がするが。。。
コメント
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