大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・016『砲雷長 山本計時』

2019-04-29 06:37:55 | ノベル2
時空戦艦カワチ・016
『砲雷長 山本計時』   





 いいアイデアに違いなかった。

 スペースバトルの中にラブコメがありドタバタスラプスチックに笑い転げながら人類救済のアイテムを十万光年の彼方に求めるRPG。
 選択肢によって目標の惑星が変化する。

 デフォルトのキスカンダルの他にメスカンダルとオスカンダルがある。

 キスカンダルは男女の愛、メスカンダルは百合、オスカンダルはBLとベタな設定だが分かりやすくていい。
 分かりやすいフラグ立てでストレスなく攻略できるが、コアユーザーには物足りない。
 そこで戦闘スタイルでも分岐するように仕込んでおく。
 通常兵器であるパルスレーザー砲や艦載機コスモSによる攻撃を主体に戦っていけばキスカンダル第一層へ到達しレギュラーなエンディングを迎える。Hシーンは一ヒロインにつき3~5で体位は10くらい。
 肉を切らせて骨を切る的な戦法で敵艦隊の中央に躍進しテラ光子砲をマックス+20%の力で主力を撃滅。その時の自己損失が大破認定であればキスカンダルの深層に到達できて、隠れヒロインの攻略が可能になり、Hシーンは10まで増える。体位は文字通り48手。
 これをヌルヌル動かそうというのだから、PCにどれだけのスペックを要求するのか?
 WindowsPXはもちろんのこと7でも諦めてもらおう。最低でも8は当たり前、10でスイスイくらいの要求。
 まあ、Hに関しては社内でも定評のあるワンニャンに任せて置こう。彼なら革命的なHを表現してくれるのに違いない。
 俺が考えるのは戦闘システムの構築と気持ちのいいリアリティーだ。

 で、夕べから八通りのシステムを試し、八つ目のテラ光子砲の重層発射で気が遠くなってしまった。

「山本さん、山本さん、起きてください山本さん」
 目を開けると田中航海長の顔があった。脈をとっているのはサクラ二曹だ。

 で、俺は時空戦艦カワチの……砲雷長!?

「転送した時にはまだ寝ていたから医務室に連れてきたの、あちこち弱ってるようだから、ちょっと安静ね。まだ衛生長の配置が無いからサクラ二曹が代役、また後で様子見に来るから大人しくしていてね。じゃ、サクラ、お願いね」
 航海長はサクラに目配せするとブリッジの配置に戻っていった。
「航海長、なんだか美味しそうな匂いがしていたね……って、そういう意味じゃなくて!」

 俺はエロゲの制作を生業としているが、リアルではしごくノーマルだ。サクラ二曹のようなリアル美少女には口の利き方に気を付けなければならないぞ……でも、これって俺の夢か妄想の世界だよな?」

「航海長は烹炊長兼務ですから。砲雷長は元々スカニエのプランナーやってらっしゃったんですよね」
「あ、それは俺の黒歴史」
「でも、ゲームのコンセプトは、そこで培ったんですよね。バトルの展開はスカニエ随一だったとか……」
「夢ばっかり追いかけていてもね」
「今度はエロとバトルの融合ですね」
「エロとバトルは双頭の鷲なんだよ、ゲームの柱なんだ、ここで妥協するとスピンオフした時の鬱がハンパないからね、自己評価クソゲーで当たるより、原価回収ギリギリの神ゲーでありたいよね」
「ですね、今度はきっと報われますよ」
 妄想世界のキャラなんだろうけど、サクラ二曹とは気が合いそうな気がする。惜しむらくは……。
「あら、その指はキーボードの操作ですね」
「え、あはは、そうだけどね……あれ?」
 サクラのバストを八センチ大きくしようとしているのだが、いっこうに大きくならないぞ。
「乗員は全員デフォルトのままだから変わりようがないですよ」
「え、そなの? 妄想にしては不自由なんだな……あれ?」
 腕を上げようとしたら、右ひじの裏側に点滴の針が刺さっている。注射嫌いの俺にいつの間に……あ、妄想だから痛みとかないのか。
「こんど目覚めたら、艦長に会っていただきます。さ、しばらく休んでくださいね」

 そういうと、サクラは優しく掛け布団を掛けてくれた……。

「砲雷長お休みになりました……はい、まだ妄想と思っておられるようです、次に目覚められましたら……」

 サクラがどこかに報告を入れている……相手は……ま、いっか、もうちょっとこのまま……」
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 高校ライトノベル・時かける... | トップ | 高校ライトノベル・連載戯曲... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ノベル2」カテゴリの最新記事