大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・坂の上のアリスー02ー『マウストゥーマウスの人工呼吸』

2016-06-30 11:10:50 | 小説3
坂の上のー02ー
『マウストゥーマウスの人工呼吸』



 振り向いた綾香の口は真っ赤だ! 倒れている女子生徒も口から胸元にかけて真っ赤に染まっている!

「お、おまえは吸血鬼だったのか!!?」

 俺を90分早く起こした悪戯にブチギレている場合じゃないぜ。いきなりホラーアドベンチャーのフラグが立っている!
 このまま吸血鬼と化した妹に血を吸われて始まったばかりの物語はサイテーのバッドエンディング!?
「ヒ、ヒエー!!」
 き〇たまが体にめり込むほどの恐怖を感じて、俺は踵を返した。

 ムンズ!

 まだ7・8メートルはあったであろう距離を跳躍して、綾香は俺のズボンの裾を掴んだ。
 吸血鬼の運動スキルはハンパねえ! 昔やったバンパイアゲームの吸血シーンを思い出す。
「違うんだって! いま人工呼吸をやってんの!」
「じ、人工呼吸?」
「純花がぶっ倒れて呼吸が停まっちゃったのよ! もう一分ほどやってるんだけど、純花の息戻ってこないよ!」
 綾香の目は逝ってしまっている、ガキのころにコンプリート寸前のゲームデータを消しちまった時みたいだ。
 一瞬哀れを催したが、全然安心はできない。
「でも、その口の周りの血……」
「バ、バカ! これはトマトジュースだよ! そんなことより人工呼吸やってよ! ニイニこういうの得意じゃんか!」
 一瞬去年のことがフラッシュバック。

 で、気づいたら純花というらしい女生徒にマウストゥーマウスの人工呼吸をしている。

 綾香は気道確保が出来ていなかったか鼻をつまむのを忘れていたか、女生徒の鼻からは泡だったトマトジュースが溢れている。
 俺は必死で人工呼吸を続けた。
「ウ、ウーーーーン」
 一分にも一時間にも感じられる時間が過ぎて、女生徒の呼吸が戻って来た。
「自発呼吸にもどった。綾香、救急車を呼べ!」
「うっさい! もう呼んだ!」
 人の命を俺に預けた安心だろう、いつものツンツンに戻って吐き捨てた。
 救急車のサイレンが聞こえてくると、綾香は前を向いたままの忍び声で言う。
「いい、人工呼吸したのはあたしだからね。いい気になって自分がやったなんて思うんじゃないから」
「なっ…………」
 こいつの理不尽には慣れっこだが、一瞬ムッとする。
 でも、女の子にマウストゥーマウスの人工呼吸をやったことが学校に広まるのもごめんなので「ムッ」は飲み込んで置く。

 救急車には綾香とエッチャン先生が乗っていった。エッチャンは、たまたま早く出勤した流れで付いて行ってしまった。なにかと的外れに口やかましいセンセだが、こういうところは憎めない。

 ドン!

 救急車を見送っていると背中をドヤされた。
 振り返ると時代錯誤の胴着姿の薫ちゃんが立っている。
 薫ちゃんというのはカワユゲな女の子ではなく、ムクツケキ体育の教師で閻魔生活指導部長の桜井薫だ。
 国民的リア充男を目指す俺は、従順なうすら笑顔になる。
「見てたぞ、りっぱな救急救命だった。あのときもそうだったけどな……」

 俺の黒歴史をポツリと言う。それ以上言われたくないので「ハア……」とあいまい返事。

 このときキッチリ言わなかったツケがくるとは思わない俺だった。
 


 ♡登場人物♡

 新垣亮介      坂の上高校二年生 この春から妹の綾香と二人暮らし

 新垣綾香      坂の上高校一年生 この春から兄の亮介と二人暮らし

 二宮純花      坂の上高校一年生 綾香の友だち トマトジュースまみれで呼吸停止

 桜井 薫      坂の上高校の生活指導部長 ムクツケキおっさん

 唐沢悦子      エッチャン先生 亮介の担任 なにかと的外れに口やかましいセンセ 
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高校ライトノベル・奈菜のプレリュード・5《1キロの長さ、2キロの重さ》

2016-06-30 07:00:27 | 小説5
奈菜のプレリュード・5
《1キロの長さ、2キロの重さ》



 前回に書いた北村先生に倣うて、あたしは即実行に移した。

 なにを? 忘れた人は前回の『豚の星に願いを……』を読んでください。
 昨日から、近くのO川の土手道をジョギング。
 グーグルの地図で見たら、家から一番近いジョギングコースが、そこやと分かったから。
 家を出てから二回角を曲がったらO川の土手道。土手道までは歩いていく。
 亮介アニキは「家の前から走ったら時間も距離も稼げるのに」と余計なことを言う。

 亮介は女心を分かってへん。

 いきなり家の前から走ったら近所の目がある。
「やあ、奈菜ちゃんジョギング始めたん。偉いねえ」と向かいのオバチャンから話が広がって御町内の噂になる。
 噂になったら、やめられへん。
 あたしは、とりあえず二キロ痩せたらええんで、それ以上やる気はない。
『奈菜ちゃんの三日坊主』という噂をたてられんためにも家の前から走るわけにはいかへん。

 土手道を外環と交差するとこまで走ったら、ちょうど一キロ。折り返しは無理には走らない。無理したら長続きはしません。

 まあ、このへんのとこは正直自信の無さの現れ。
 しかし、一キロがこんなに長いもんとは思えへんかった。グーグルのストリートビューで周りの景色は一応確認済みなんで、景色でだいたいの距離感は掴める。もう八百は走った感じになってても、実際は四百ほどしか行ってない。

 ああ、しんど。

 初日から、三日坊主の予感。
 あかんあかん、初日でケツ割ってどないすんねん。
 足腰は、ちゃんとジョギングシューズ履いてるんでこたえへんけど、呼吸がえらい。心臓もバクバク。
 それでも十二分かけて、なんとかクリアー。荒い息を整えて、そのまま回れ右。一キロが、こんなに長いもんやとは思えへんかった。

 帰り道、幼稚園の年長さんぐらいの男の子が、流行りの幅の狭いスケボーの練習してるとこにでくわす。
 この子も初心者。スケボーの新しさと、へっぴり腰の走り方で分かる。
 子どもと言うのは、すぐに調子に乗る。
 まっすぐ走るのがやっとやのに、スラロームの練習に入りよった!
 案の定、最初に捻ったとこで転倒。二拍ほどおいてから、膝を抱えて泣きだした。
 通行人は他にもいてたけど、誰も声をかけへん。鳴き声は苦悶の表情で、時々途絶える。
――骨折かもしれへん!?――
 そう思うたら声を掛けてた。
「ぼく、大丈夫か?」
 痛さのあまり声も出しにくい様子。
「ちょっと触るけど、ええか」
 ぼくは、苦悶のまま頷く。触ると、ちょっと腫れてる。いよいよ骨折か!?
「足伸ばしてごらん……今度は曲げて……」
 一応足は伸びるし曲がる。まあ、骨折ではない様子。せやけど腫れようから、かなりの打撲に見える。
「ぼく、どこの子や。お姉ちゃん送ったろか?」
 そのとき、はじめてぼくは、あたしの顔を、痛さに顔をゆがめながらも、チラ見の観察。

 あきらかに、あたしを変なネエチャンやいう目えしてる。

――アホか。人が親切に声かけてんのに、怪しむやなんて、失礼なガキや!――
 そう思うてるうちに、ガキはスケボー持って泣きじゃくりながら歩き出した。目線の先には自分の家と思しき戸建の三階建て。
「うちの人居てはんのか?」
 これには答えず、泣きながら怪しそうな目線だけ送ってくる。
 よう見たら、メットこそはしてたけど、膝にも肘にもプロテクターはしてなかった。
――ちゃんとプロテクターぐらいは付けさせろ!――
 と心で毒づいて、家に帰る。
「ハハ、慣れんことするから、怪しいネエチャンやと思われてんで」
 たしかに、このごろは、子どもが変な大人から理由もなしに連れ去られたり殺されたり。せやけど、あたしの知ってる限り、それはオッサンか、オッサンと言うてええニイチャンや。こんな見目麗しい女子高生というか女子大生の玉子と言うてええかがそんなことするわけないやろ!

 ムカつきながら、スポーツドリンク飲んだんがあかんかった。体重は昨日と一グラムも変わってへん。
「当たり前でしょ、たった一日一キロ走ったぐらいでは変わらへんよ」
 と、おかあさん。
「奈菜、ウンコしてから測ったら四百グラムは違うぞ」
 と、亮介。

 デリカシーのないのは、うちの家系か!?

     奈菜……♡
 
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高校ライトノベル・宇宙戦艦三笠・22[暗黒星雲 惑星ロンリネス・2]

2016-06-30 06:53:30 | 小説5
宇宙戦艦三笠・22
[暗黒星雲 惑星ロンリネス・2]




 予想はしていたけど、スカイツリーは無かった。

 公衆電話がやたらに多く、当然歩きスマホをしている人もいない。ただ、今はほとんど見かけなくなった歩きたばこはそこここに。
 よく見ると、自販機の飲み物が110円。車のデザインなんか、良く分からなかったけど、なんとなく古臭い感じがした。
「ファッション古い……」
 美奈穂が、後部座席で呟いた。
 修一もトシもファッションに疎かったが、渋谷や原宿を通っても、いわゆる萌え系のファッションはなく、日本によく似た外国に来た感じだった。

「いやあ、よく来られましたね。東京を代表して歓迎しますよ」
 鈴木という知事で、この人のことはよくわからない。
――石原さんの二代前の都知事――
 クレアが、三笠のCPに照会してくれたようで、直接頭にクレアの声がした。
 修一たちには、石原さんより前の知事は、ほとんど歴史上の人物だ。鈴木さんは、見かけはとっつきにくい重役タイプだったが、進んでいろんな話をしてくれた。
 東京に、もう一度オリンピックを誘致したいを強調していた。24年後に実現しますよ……と言ってみたかったが、なにか過去に干渉するようではばかられた。

 都庁で昼食をごちそうになり、展望台から下界の新宿を見ていた樟葉が、こっそり言った。

「街を行く人たち、なんだか変……」
「なにが……」
「5分間隔ぐらいで、同じパターンが……ほら、あの修学旅行の一団、さっきも通ったんだけどね……ほら、またあの子こけた」
「そうなの?」

――みんな、この星はバーチャルだよ!――

 クレアが、少し興奮して言ってきた。
――昨日から、この星の主だったことメモリーにしてるんだけどね、大気の流れから人の動きまで、昨日といっしょ。よくできたバーチャルの3DCGみたいなもんだよ……――
「ほんとだ、いま飛んでったジェエット機、10分前と機体番号までいっしょだ」
 修一は大胆な行動に出た。
 給仕にきてくれた女の子のスカートを派手にめくってみた!

 なんと、太ももから上は、荒いポリゴンのようにカクカクしていて、真っ黒だった。別に黒いカクカクパンツを穿いているわけじゃない。太ももから上が存在しないのだ。
 そして、その子は、何事もなく、そおまま用事を済ますと行ってしまった。
「普通、叫ぶとかするよな……」
 三笠のクルーの疑問は決定的になった。

 そして、あたりの風景が急速にあやふやになり、数秒後には消えてしまった。

 星は荒涼として、荒れた大地が広がっているばかりだった。驚きとやっぱりという気持ちが一度にやってきた。

 三笠のクルーの前に、白いワンピースの女性が現れた。
「ごめんなさい。やっぱり分かってしまったようね」
 セミロングの髪を緩い風になぶらせながら女性が言った。
――この女性はバーチャルじゃないわ――
「そう、でも人間というわけでもないの」
 不思議に警戒心はおこらなかった。女性の雰囲気が、まるで舞台が終わった女優のようだったからかもしれない。
「あなたは……」
「名前はないわ。誰も関心をもってくれないから、地球からは、暗黒星雲と呼ばれている星々の一つ。暗黒星雲は地球からは、よく見えない。だから名前がない。名前って、人が付けるものでしょ……わたしは、この星のスピリット。星の精神が人格化したものだと思ってくれていいわ」
――この星、唯一の生命反応。さっきまであったのは、全てバーチャルよ――
 クレアが、解析結果を伝えてきた。
「この星は、地球とよく似た環境にある……でも。わたし、この星に生命を生めないの」
「どうして……」
「当たり前にしていれば、地球と同じような歴史を踏んで、人類が誕生したでしょう……そして、地球と同じように人類はたくさんの過ちをおこすわ……あなたたちが、ここにいることも過ちの一つの結果。それに耐える勇気がないんで、わたしは、この星に生命を誕生させないの」
「でも、どうしてぼくたちを呼んだんだい?」
「こうやって、間近にあなたたちを見ていると、生命を生んでおけば良かったような気もしているの」
「じゃ、今からでも……」
「フフ、それができるようなら、グリンヘルドもシュトルハーヘンも、わざわざ地球まで手を延ばしたりはしないわ」
「それって……」
「そう、星としての寿命は長くないの。こんなに恵まれた条件なのに……とても愛おしくて、あなたたちを呼びました。ごめんなさい。どうぞ、先の航路を急いで、ボンボヤージ……」
 女性は、時間をかけて修一たちクルーの顔を見ると、満足したような寂しさを浮かべて消えていった。

 三笠のクルーたちは、星に「ロンリネス」という名前をつけてやった。そして、帰り道に余裕があれば、もう一度ロンリネスに寄ってみようと思った。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・106〔The Summer Vacation・9〕

2016-06-30 06:38:17 | 小説6
高安女子高生物語・106
〔The Summer Vacation・9〕
                      


 時差ボケしてる間もなかった。

 ハワイのプロモロケから帰ってくると、そのまま毎朝テレビの『ヒルバラ』に出演。選抜6人が前で、あとの6期生は後ろの雛壇。
 当然トークは選抜に集中。他の子らはお飾り。

 MNBに入って2か月ちょっとやけど、差ぁが付いたなあ……とは、まだ思えへんかった。

 口先女では自信のあたしやけど、8分の間に、MCの質問受けて、プロモの話を面白おかしく話して、22人の子みんなに話振るのはでけへん相談。第一進行台本がある。関西のテレビは、「ここで突っ込む」とか「ここボケる」ぐらいのラフで、あとは成り行き任せいうとこがあるけど、『ヒルバラ』のディレクターは東京から来た人で、台本から外れることが嫌い。タイミングになると、必ずADのニイチャンのカンペで、否応なく台本通りに進行させられる。

「もっと面白できたのになあ」

 カヨさんが楽屋に戻りながらささやいた。楽屋に戻ったら局弁食べながらメールのチェック。ゆかり、美枝、麻友を始めあたしがMNBに入ってからメル友になった子ぉらに「ただいま。時差ボケの間もなくお仕事。またお話しするね!」と一斉送信。ファン向けのSNSには「疲れた~」「ガンバ!」なんちゅう短いコメントと写メを付けて、あたりまえやけど一斉送信。
「さあ、あと10分でユニオシのスタジオに戻って夜のステージの準備。いつまで食べてんのよ。チャチャっとやってよチャチャっと!」
 チームリーダーのあたしは、いつのまにか市川ディレクターや、夏木先生の言い方、考え方が移って同じように言うようになった。みんなんも認めてくれてるし、チームもまとまってきたんで、これでええと思うてた。

 バスでスタジオに戻るわずかの間に3人もバスに酔う子がでてきた。
「ちょっと、席代わったげて! 舛添さん酔い止め!」
 女同士の気安さで、3人のサマーブラウスやらカットソーの裾から手ぇ入れてブラを緩めたげる。薬飲ませて、気ぃ逸らせるために喋りまくり。3人もなんとかモドスこともなくスタジオについた。ただ、バスの中で酔いが伝染。10人近い子らがグロッキー。
「ちょっと休ませた方がええで」
 カヨさんの一言で決心。
「一時間ひっくり返っとき。しんどい子は、薬もろてちょっとでも寝とき」
「よし、明日香。その間に打ち合わせだ」
 市川ディレクター、舛添チーフADと夏木先生ら大人3人に囲まれて、ハワイでのことを中心に反省会と今後の見通しについて話し合う。
「一番落ち込んでるのは誰だ?」
 市川ディレクターの質問は単刀直入やった。
「和田亜紀と芦原るみです」
「じゃ、カヨさんといっしょに支えてやってくれ。6期生はスタートが早かった。まだ気持ちがアイドルモードになり切れてないと思う。なんとか取りこぼさずに、VACATIONを乗り切って欲しい」
「分かりました」

 短時間やったけど、有意義やと思た。短い会話の中で、現状の確認と展望、これからの見通し。ほんで、なによりもこれから6期生全員を引っ張っていかならあかんいう責任感と期待が市川さんらと共有できたことやと思えた。
 みんなの様子を控室に見に行って、カヨさんとさくらと相談して、休憩時間を30分延ばした。

「じゃあ、6期。ハワイで一回り大きくなったところを見せるで!」
「オオ!」
 控室で円陣組んで、テンションを上げた。休憩時間を30分余計に取った分、レッスンの時間は減ったけど密度は濃かった。この時まではいけると思てた。
 うちらは、まだまだ先輩らの前座やけど、MNB47始まって以来の成長株やと言われてる。負けられへん!

 30分間、VACATION、TEACHERS PETなんかのオールディーズのあと21C河内音頭。間を、うちとカヨさんのベシャリで繋いでいく。
 なんとか、アンコール一回やって、失敗もせんと終われた。

 で、楽屋で、仲間美紀が倒れた。全然ノーマークの子ぉやった。酸素吸入しても治らへんので救急車を呼んだ。

――うちは、何を見てたんやろ――

 やっと出来始めたリーダーの自信が、遠ざかる救急車のサイレンとともに消えていく……。

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高校ライトノベル・坂の上のアリスー01ー『お早うございます!』

2016-06-29 10:21:09 | 小説3
坂の上のー01ー
『お早うございます!』


 くそ、空気が入ってねー!

 忌々しくタイヤを蹴ると、ガチャンと悲鳴を上げて自転車は倒れてしまった。
 自転車に罪は無い。日ごろからメンテをしていない俺が悪い。だけど、心貧しい俺は自転車に当たってしまう。

 クッソー!!

 立て付けの悪い、名前ばかり門扉を乱暴に閉めて道路に飛び出す。
 いつもなら徒歩で行くんだからカッカすることもないんだけど、今日は特別だ。

 なんせ100%の遅刻確定だ。今日遅刻すると生活指導部長指導をくらう。

 桜井薫と名前はやさしげだけど、生活指導部長は魔界の帝王、閻魔大王の化身だ。あいつの指導は後免こうむる。
 そもそもは綾香が悪い。綾香ってのは俺の妹。
 妹というからには女なんだけど、見かけの割には女らしくない。女らしくないという言い方をするとエッチャン先生に怒られそうだが、俺個人の感覚だからしようがない。綾香は炊事洗濯掃除とかいう感覚をお袋の腹の中に置いてきたようなやつだ。
 だから、この四月に親父の転勤にお袋が付いていってからは、俺が主婦。いや主夫。
 夕べも晩飯の用意はもちろん、梅雨時には欠かせない布団の乾燥、風呂場のカビ取りまでやった。
 で、ちょっとグロッキー。
「明日寝坊してるしてるようなら起こしてくれよな」
 綾香に頼んだ。これには兄としての目論見がある。綾香も朝は早い方ではない。その綾香にあえて頼む。
 俺が起きなければ朝飯が食えない。なんせ、綾香は目玉焼き一つ作れない。そう言っておけば、グータラ妹も少しは我が身を律しようと思うだろう。
「え、あたし今夜は友だちんちにお泊りするんだけど」
 シラっと言いやがった。
「おまえなー」「なにさ」と火ぶたを切って、リアル兄妹喧嘩になりかけて、妥協点を見出した。

 綾香が責任をもって、俺が起きれるような工夫をしておくことになった。

 その結果、目覚ましが二個鳴って、テレビではゴジラが大音量で吠えまくる。トドメは『さっさと起きろ!!』とスマホで綾香の声。
 それで飛び起きたんだけど。

「クソガキイーーーーー!!!」頼んだ時間より一時間も遅い!

 そういうことで、不快指数90の中、学校までの坂道を走っている。
 世間が許すならマッパで走ったね。だって汁だくの牛丼みたくビッチャビチャ! マッパで走って頭から水被るってのが合理的だと思うんだけど、世間と言うのは、こういう高校生の危機に対応してくれるようにはできてはいない。
 く……生徒諸君の姿がねえじゃねえか。
 どうやら同罪の遅刻生徒の姿も見えないくらいの大遅刻になってしまったようだ。

 ゲ、桜井薫!!

 最後の角を曲がると、正門に閻魔生活指導部長の姿が見えた。奴は最後の遅刻者を見逃さないように遅くまで正門に立っているとは聞いていた。だが、もう一時間目が終わろうと言う時間まで立っているとは!

 お早うございます!

 元気に挨拶する。今の俺に出来るのは恭順の意を示すことだけだ。
「新垣、今朝は、なんでこんなに早いんだ?」
 閻魔大王が不思議なことを言う。
「え、ええ?」
「まだ、7時30分だぞ」
「えーーーーー!?」
 頭の中でいろんなものがスパークした。俺の時計は9:00を指している。

 どうやら綾香にしてやられた。時計もテレビもスマホも90分遅らせてくれたようだ。

 薫閻魔大王の野太い笑い声を背に下足室に向かう。
 ゲ!? あれはなんだ!!??
 下足室手前の自転車置き場で、とんでもないものが目に飛び込んできた。

 なんと女子生徒が女子生徒を押し倒し、馬乗りになって乱暴を働いている。
「お、おい! なにをしてるんだ!?」
 俺は国民的リア充をモットーに生きている。君子危うきに近寄らずだろうが、ここは並のリア充なら声を掛けるシチュエーションだ。

 だが、これがとんでもないステージへのフラグだとは思いもしなかった。

「あ!?」と悲壮な顔で振り返った馬乗り女は、妹の綾香だったのだ……!
 
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高校ライトノベル・奈菜のプレリュード・4《豚の星に願いを……1》

2016-06-29 07:18:15 | 小説・2
奈菜のプレリュード・4
《豚の星に願いを……》



 女の子は、ほっとくと一週間で豚になる。

 一年の保険の時間に、先生に言われて「なに言うとんねん」と思うた。
 あたしは、それまで、ずっと標準体重以下でいてた。あたしは、そういう体質やと思うてた。
 
 それが、このプレリュードの前半も終わらへんのに、二キロも増えた!

「当たり前や。学校も休み、毎日遅まで寝てて起きてて、一日三食が四食になって、どこか出かけてはなんやら食べてばっかり。そらソクラテスでも豚になる」
 と亮介(アニキ)は容赦がない。ボーっとしてるだけの大学生や思うてたけど、ツイート一回分の言葉で、あたしの欠点をえぐりよる。

 で、あたしは一念発起してジョギングを始めた。

 あたしは、形から入るタイプの人間。久々の登校日の帰り道、ABCマートでジョギングシューズを買うことにした。
 目的を持った行動は人を生き生きさせてくれる。
「お、奈菜、なんかええことでもあるんか?」
 スマホで、ジョギングシューズのあれこれ電車の中で調べてたら、横に担任の北村先生が座ってきた。
 正直たよんない担任やけど、話しはしやすい先生。というか、口から生まれてきたような先生で、授業も話が多くて、担当科目の日本史は江戸時代までしかいかへんかった。
「聞いてもらえへんで、さきさきいく授業より、歴史の本質を分かってもらえるような授業がええねん」
「ハハ、そうですね」
 賛成してるわけやないけど、目的を持ったあたしは機嫌よう返事した。あたしも適当に返事するのは得意やし、なんや調子のええ話しながら、電車は鶴橋へ。時間調整で、三分ほど止まってると、見るからにアラブ人らしいニイチャンが、メモをお客さんに見せながら英語で、なんか聞いてる。みんなわからへんいう身振りでシカトしていく。

 アラブのニイチャンが、とうとううちらの前まできた。

「エクスキューズ」だけは分かったけど、あとは全然分からへん。
「難波に行こうと思っています。行き先を案内してあげてください」
 知り合いの日本人が書いたんやろ、きれいな字のメモを見せてた。
 この電車は大阪線やから、次の上六が終点。難波へ行こ思うたら、終点の上六で降りて、地下に潜って、ちょっとある。このニイチャンにはややこしいやろなあと思うた。難波は、同じプラットホームの向こう側の電車に乗ったら、そのまま終点の難波につく。
「カム ウイズ ミー」
 先生はそれだけ言うと、ホームの反対側に。アラブのニイチャンは地獄に仏いう顔であとを着いていった。
「ディスホーム バーンフォー ナンバ ユーテイクネクストトゥレイン。 ネクストステイション イズ ウエロク エンド ネクスト ニッポンバシ エンド ネクストステイション イズ ナンバ ユーシー?」
「Yes I see verry thankyou!」

 で、めでたく北村先生の中学生並の英語で、話しは通じた。口先も偉いもんやと思うた。

 人間が行動を起こすいうのは、こういうことかと感心。あたしも豚との決別に思いを新たにした!

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高校ライトノベル・宇宙戦艦三笠・21[暗黒星雲 惑星ロンリネス・1]

2016-06-29 07:12:35 | 小説5
宇宙戦艦三笠・21
[暗黒星雲 惑星ロンリネス・1]



 暗黒星雲とは、真っ黒、あるいは真っ暗と言う意味ではない。

 宇宙物理学上面白い星、資源や生命反応がないので、地球人の興味が薄く、研究、観測資料が乏しいので、そう呼ばれているだけだ。
 逆に言うと、なにが飛び出してくるか分からない星団でもあった。
「他の国の船は、この星雲を迂回しています」
 アナライザーのクレアが、航跡の残像を検知して、そう言った。
「ここを通らなきゃ、他の船に追いつけないからな」
 みんなの覚悟を促すように、修一艦長が言った。皆は、無言をもって、その覚悟を示した。

 惑星ロンリネスから「歓迎」の反応があった。

「地球型の惑星です。地球の1/3程の生命反応があります。寄ってみます?」
「儀礼的に一日だけ立ち寄るか」
「地球に似すぎているのが気になる……」
 ウレシコワ一人が慎重だったが、他のメンバーは、平均的日本人らしいというか、しょせん高校生というか、お気楽に招待を受けることにした。

 寄港地はヨコスカを指定された。着水して近づくと、それは見れば見るほど横須賀に似ていた。

「懐かしいね、島のあそこだけが横浜にそっくり」
「他の地域は?」
 樟葉が、当然のように聞いた。
「日本のような街が、あちこちに……ただ……」
 クレアの濁した言葉に全員が注目した。
「サーチの結果が出るのに、0・05秒ほどタイムラグがあるんです」
「理由は?」
「弱いバリアーか……この星の磁場の影響かもしれないわ」
「ま、とにかく存在するんだから寄るだけ寄ろう。美奈穂、礼砲ヨーイ!」

 三笠は、21発の礼砲を撃ちながら、ヨコスカに入港した。

 港は、横須賀にそっくりだった。港を出入りする船、アメリカ第七艦隊に自衛隊の横須賀基地。三笠公園にある三笠までそっくりだった。
 桟橋には、自衛隊とアメリカ海軍の音楽隊が軍艦マーチと、アンカーアウェイの演奏で出迎えてくれた。
 市長、自衛隊、第七艦隊の挨拶を受けたあと、留守番にクレアを残して、全員が、横須賀ホテルに向かった。
「横須賀の街にそっくりなんですけど、ひょっとして、僕たちと同じ人間がいたりするんでしょうか?」
「さあ、どうでしょう。広い意味では地球とパラレルな世界ですが、なにもかもというわけではないと……まあ、ご自分の目で確かめてください」
 市長は、にこやかな顔で、そう言った。修一は望み薄だと思った。市長とミスヨコハマが自分たちの世界とは違う人物だったからである。
「ロシアの人は来ないんですか?」
 ウレシコワが淡い期待を込めて聞いた。
「あなたはロシアの方ですか?」
「今はウクライナになっていますが、わたしの意識ではロシア人なんです」
「それはそれは、さっそくロシア領事館にお知らせしておきます」
 市長は、秘書に耳打ちした。

 昼食会のあと、リムジンで、ヨコスカの街を見て回った。

「桜木町駅が昔のままよ……」
 樟葉が呟いた。
「まるで、『コクリコ坂』の時代だな。
 さすがにオリンピックのポスターなどは無かったが、あきらかに20年以上昔の横須賀の姿だった。
「あたし、自分ち見てくる!」
 美奈穂がたまらなくなって、リムジンを降りた。もし20年前のヨコスカなら中東で亡くなったお父さんが生きているはずだった。
 学校の横を通ってもらった。古い校舎などはそのままで、十分自分たちの学校と言えたが、違和感を感じ、そのまま素通りした。
 ドブ板横丁は、昔の賑やかさがそのままで、アメセコの店などが繁盛していた。

「お父さんがいた……」

 ホテルに帰ると、美奈穂が目を赤くして、ラウンジに居た。
「会えたのか!?」
 修一は意外だった。いくらなんでも、そこまでそっくりだとは思わなかったからだ。
「20年前のお父さんとお母さん。あたし知らないふりして道なんか聞いちゃった。娘だなんて言えないもんね……だって、あたしが生まれる前の時代っぽかったもの」
 樟葉も、ブンケンらしく、夕方までトシと二人でヨコスカの街を見て回った。
「ブンケンに残ってた資料そのままの横浜だったわ」
「多分、20年遅れの地球と同じパラレルワールドじゃないっすかね!?」
 トシも喜んだ。
 三笠に残したクレアに交代しようかと連絡した。
「20年前なら、もう、あたしは打ち上げられていた。だからいいわよ」
 と答えが返ってきた。

 市長の提案で、あくる日はトウキョウに行ってみることになった……。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・105〔The Summer Vacation・8〕

2016-06-29 06:58:30 | 小説6
高安女子高生物語・105
〔The Summer Vacation・8〕
           


 ハワイのロケは、とにかく忙しかった。

 ワイキキビーチからダイヤモンドヘッド、アラモアナ・ショッピングセンター、ハナウマ湾、カラカウア通り、モアナルア・ガーデン、クアロア牧場、記念艦ミズーリ、と二日間かけて、撮影許可が下りるとこでは全部撮った。

 親会社のユニオシ興行のやることに無駄はありません。

 うちらはリカちゃん人形みたいに行く先々で着替えて、水着からアロハの短パン。支給された私服(?)なんかに着替え、3台のカメラで、延べ40時間分ほどの撮影。
 なんせ、曲が1950年代のアメリカンポップスの代表『VACATION』
 年寄りから若者まで、アメリカ人も日本の観光客もノリノリでノーギャラのエキストラに付き合うてくれはる。むろん、うちらが可愛いて、イケてるからやねんけど、市川ディレクターと夏木インストラクターのやることはインスピレーションに溢れてて、ミズーリの前では、どこで調達してきたんか、水兵さんのセーラー服を着て『碇上げて』を即興の振り付けでやらされました。
 夜は、泊まってるホテルの要請で急きょミニライブ。これで宿泊代が三割引き。ほんまにうちのプロダクションは……!

 そんなふうな過密スケジュールで、さすがに線が切れかかったうちらに、なんと半日の自由時間。メンバー22人は4、5人ずつのグループに分かれて、ちょっとの間VACATION。ただ、ビデオカメラを持たされて、とにかく撮りまくりさせられました。
 これはアイデアでした。
 プロのカメラマンやのうて、素人のうちらが、好き好きに撮るんやさかい、いろんなビデオが撮れます。あとは編集するだけで、経費も手間もかかりません。

 ほとんどの子は、いわゆる名所を回りましたけど、うちは、ちょっと勇気出してアリゾナ記念館に行きました。

 アリゾナ記念館は、真珠湾攻撃で日本海軍がボコボコにして沈めた戦艦アリゾナの上にあります。いわゆる日本の『スネークアタック』と呼ばれる、アメリカ人には忘れられへん歴史記念建造物。日本人観光客は、あんまり行きません。
 あえて、ここを選んだのは、アメリカ人の生の反応が知りたかったから。

 入館は無料。沈んだままのアリゾナの真上を交差するように浮桟橋みたいな仕掛けで記念館があります。56メートルの「潰れた牛乳パック」と言われる白い箱みたいな記念館です。
「中央部はたしかにたるんでいるが、両端はしっかりと持ち上がっており、これは最初の敗北と最終的な勝利を表している。大きなテーマは平静であり、人々の心の最も奥にある悲しみの表現は、その人それぞれに感じ取るものでありデザインでは省略した」もんやそうです。
 亡くなった乗組員の銘板と、英文の説明文がありました。さぞかし日本の悪口が書いてあるんやと単語を拾うようにして読んでたら、いかついアメリカ人のオッチャンが寄ってきた。一瞬ビビったけど、オッチャンはにこやかに握手を求めてきた。
「NMB47のメンバーだね」
 きれいな日本語でした。聞くとアメリカ海軍の退役軍人さん。で、うちらが読みあぐねてた文章を日本語に訳してくれはりました
「アメリカ人には悲劇だけども、これは君たちのひいおじいさんたちが、どんなに勇敢に高い技術で戦ったかを書いてある。あの開戦は当時の情報技術では、悲劇的な行き違いだったけど、アメリカ人も日本人も死力を尽くした。そのことが書いてある。ここから何を読み取るかは、それぞれの人の心の問題だ」
 なんや、アメリカに一本取られたような気がした。

 そのあと、オッチャンは当たり前のアメリカ人に戻って、いっしょに記念撮影。Tシャツにサインしたげたらムッチャ喜んでくれはった。

――なかなか粋なオッサンや―― 正成のオッサンが感心した……。

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高校ライトノベル・奈菜のプレリュード・3《それはないやろ……後篇》

2016-06-28 07:05:39 | 小説・2
奈菜のプレリュード・3
《それはないやろ……後篇》



 あたしは高校の演劇部とは縁を切った……つもり。

 ところが学校いうのは村社会で、必要以上に「縁切った!」と言いまわっていては友達をなくします。
 せやから、演劇部のみんなの、メルアドは残したし、着信拒否なんちゅう大人げないこともせえへんかった。廊下で会うても「お早う」とかの挨拶ぐらいはしてた。

 この半端な対応がムカツキの種。

 うちの演劇部とF高校の有志が合同公演やると、冬休みに入って一斉送信で連絡してきた。
 あたしは、メールは送るけど一斉送信はせえへん。ダイレクトメール以下の通信やさかい。
 コンクールのときも、観客動員を言われたんで、直美のほかにも二人メールを打った。ちゃんと別々に。で、結果的に直美一人が観に来てくれたわけ。

 で、この一斉送信を無視してたら、二日後にまた一斉送信。
――ご要望通り、お席を確保いたしました。UFO劇団一同ご来場をお待ちしてまおります――

 うそ、観に行くなんて絶対返信してへんさかい!

 念のため、こないだの一斉送信を確認。やっぱり返信なんかしてへん。で、もっかい確認。すると、本文が終わったずーっと下、四スクロールしたあたりに、こうあった。

――ご都合の悪い方はご連絡ください。ご連絡が無い場合は、それを持ってご出席のご返事とさせていただきます――

 まるで詐欺みたいや。無視してもええねんけど、あたしは気が弱い。なんとか卒業までは穏便に高校生活を送りたい。小屋(会場)も朱雀ホール。定期で行ける会場。しょうことなしにいくことにしました。
「お、やっぱりきたか!」
 もぎりやってた卒業生のO先輩がしたり顔。どうやら、あの一斉送信の考案者はO先輩みたい。
 これで分かったことが、もう一つ。
 この公演は、うちのU学院とF高校の合同公演。せやから名前はUF劇団にならならあかん。それが人を喰ったみたいにUFOいうのんは、このO先輩がイッチョカミしってるから。
 ちなみにO先輩は二年前の卒業生。もっと大学生としてやることあるやろ……思うたけど、口には出しません。

 O先輩の戦術が効いたのか、観客席はほぼ満席。まあ、キャパ100ちょっとの小屋やから、そんなにビックリするほどやない。

 芝居は……舞台に上がって、なんかパフォーマンスやるのを全て芝居やとして。素人のドタバタコントを繋いだだけ。パンフには『邂逅と出会いの奇跡!』なんというキャッチコピー。要はろくに稽古もしてへん即興芝居。
 即興そのものは否定せえへん。マリリンモンローとかジェームスディーンが出たアクターズスタジオでも即興は重要な課題。せやけど、あっちは10分ほどの映画の一コマを丹念に半年もかけて、先生と学生の役者が解釈、実行、検証のスリーステップを丹念にやってる。
 ジェームスディーンが『エデンの東』で見せた屈折したアマエタの演技も、アクターズスタジオの即興の練習の成果。あたしが好きなんは、キャル(ディーンの役名)がパパに叱られて、うじうじ部屋の片隅で壁をホジホジしてるとこ。パパに反発しながらパパの愛情が欲しいてたまらんハイティーンの切なさが胸に迫ってくる。
 これも、真剣な即興から出てきたもんや。
 あとは楽屋受けのアホみたいなギャグの連発。客席は一部を除いて湧いてた。あたしと数人のお客さんが白け顔。その中に一人、あたしでも知ってる演劇評論家の栗田さんがいてはった。伝説通り上手の一番奥で、腕組みながらポーカーフェイスで観てはった。あのポジションは、芝居を観客ごと見てしまう栗田さんの定位置。

 あくる日のブログには『老衰した若者のモドキ芝居』と、タイトルから厳しかった。
 あたしは匿名で、観客動員のえげつなさを書いた。
「同感です」と短いコメントが出てた。

 まあ、愚痴みたいなことは、これでおしまいです。次からはプレリュードに相応しいことを書き散らしたいと思います。

 奈菜……♡ 

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高校ライトノベル・宇宙戦艦三笠・20[空母遼寧の船霊ウレシコワ・2]

2016-06-28 06:59:48 | 小説5
宇宙戦艦三笠・20
[空母遼寧の船霊ウレシコワ・2]



 彼女は「カチューシャ」をバラード調のBGにして、やってきた。

「ね、あれメーテルじゃないの!?」
 と、美奈穂が叫んだとおり、黒のコートに黒の帽子にブーツといういでたちで、艦首の甲板に佇んでいた。
「あれ、遼寧のウレシコワさんです……」
 クレアが冷静に、しかし語尾は濁して呟いた。
「なんだか、ワケ有だな」
「あんなとこ、寒いよ!」
「ちょっと!」
 トシは、樟葉が止めるのも聞かずにブリッジを降り、艦首のウレシコワの元に行った。
「なんだか、トシ君、鉄郎みたいね」
 船霊のみかさんまで出てきて、期せずしてウレシコワ歓迎の形ができてしまった。

「遼寧では、つっけんどんでごめんなさい」

 ブリッジに着くと、以前のウレシコワと、打って変わった穏やかさで頭を下げた。
「ブリッジじゃ狭いわ、長官室でお話ししよう」
 みかさんの提案で、艦尾の長官室に向かった。ウレシコワが艦内に入ってから、心なし……いや、はっきり寒い。
「ウレシコワ、どうしてこんなに寒いの?」
「ごめんなさい。たぶん、あたしの心が寒いから……」
 メーテル風の暖かそうなコートは見せかけだけではなかったようだ。

 長官室はスチームが効いて暖かかった。

「なにか、暖かいものを頂きながら、お話ししようか?」
「じゃ、あたしに作らせて」
 みかさんの提案に、ウレシコワは全員分のボルシチ風鍋を作った。甲斐甲斐しく鍋奉行をやっているウレシコワだが、どこか屈託がある。
「いつまでも、三笠にいてくれていいのよ」
 みかさんの言葉は、クルーたちにもウレシコワにも意外だった。
「なにもかも、お見通しのようね……」
 ウレシコワは、安堵したようにスプーンを置いた。

「遼寧……この名前きらいだけど、ヴァリヤーグなんて言っても、誰にもわからないものね。遼寧の船霊は、実質あたしじゃないの……」
「共産党?」
「でもないわ、しいていえば中国そのもの。内部は分裂してるけど、したたかな人たちだから、決定的な破局にはならない。そうなったら、みんなが損をするから、ギリギリのところでまとまっている。ヴァリヤーグは、その点はロシア的な頑丈さで出来ているから、船が分解することもないわ」
「このピレウスへの旅は、どこが勝ってもいいの。どこかの国の船が、寒冷化防止装置を取りにいければいいの。これは全人類と、その船の船霊の戦いなんだから」
「あたしは、三笠に勝ってほしい。あたしもクルーとして、働くわ。三笠こそ、勝つべき船なのよ」

 ウレシコワの言葉は、みんなの胸に響いた。だが暖かくはならなかった。ウレシコワの声には、これからの運命の厳しさを感じさせるものがあったから。

「敵はグリンヘルドとシュトルハーヘンだけじゃない。ピレウスまでには難所がいくつもある。敵は、そこで我々が自滅するのを待っている。さあ、最初の難所、第一暗黒星雲よ」

 星座標で存在は分かっていたが、それはクル-たちの想像を超えたものだった……。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・104〔The Summer Vacation・7〕

2016-06-28 06:46:37 | 小説6
高安女子高生物語・104
〔The Summer Vacation・7〕
                   
  

 恵美須町の地上に出たらえらいことになってた……!

 電気屋のオッチャン、ネーチャン、オタク、メード喫茶のメードさんらが100人近く集まっての大歓迎。
『歓迎MNB47 佐藤明日香さん!』『日本橋のアイドル白石佳代子!』なんかのノボリやボードが生い茂った夏草みたいに林立。

 近頃難波やら、心斎橋あたりに持っていかれたお客さんらに、返せ戻せの百姓一揆か、伊勢のお蔭参りの勢い。
 人波の中にカヨさん見つけて、カヨさんの家に行くのを予定変更して、百姓一揆のみなさんを引き連れ、十分に日本橋のロケーションを撮りながら難波のスタジオへ。途中百姓一揆のみなさんは、自分の店の前に来たら、カメラさんを強引に店の方にパンさせる。自分らも口々にお店のPR。せやけど100人余りが、てんでに好き勝手に言うさかい、全体としてのガヤの勢いしか伝われへん。
 カヨさんが、日本橋期待のアイドルやいうことがよう分かった。

「河内音頭のフリに手を加えます」

 スタジオに着いて、レッスンの準備ができると、夏木先生が宣言した。
「ディープなファンの方々からご指摘を受けました。河内音頭は『手踊り』と呼ばれる基本形と、『マメカチ』と呼ばれるリズミカルなものがあります。MNBは横方向の動きが目立つマメカチ系でしたけど、崩します。基本的なリズムだけ踏まえておけば、あとは各自の自由です。その自由と要所要所での統一感を出すレッスンをやります。テンポは基本の1・5倍でしたが、ラストは2倍にして、一気に盛り上げます。曲もニューミュージック風にアレンジしました。明日香は曲の練習ね。一時間で仕上げて」
 MNBはいつもこの調子。その時その時のお客さんの反応や、テレビの数字などで、イケルと思えるところはどんどん変えて、イマイチなとこはあっさり切られる。

 あたしはニューバージョンになった曲と歌詞を覚える。アレンジしたとは言え、基本は河内音頭なので、体を動かさなければ曲も歌詞も勢いが出ない。この一時間のレッスンはきつかった。もう途中で取材カメラが回っていることさえ忘れてしまった。
 OKが出ると、あたしはTシャツの裾を大きくパカパカ……しすぎてブラがカメラに映ってしまった。ラッシュで気が付いて「ここカット」ってディレクターは言っていたけど。あてにはなりません。

「すげーなあ!」

 テレビのディレクターが思わずいうくらい、うちらの休憩時間はすさまじい。
「はい、休憩!」
 その声がかかったとたん、うちらの女の子らしさはスイッチ切ったみたいに無くなってしまう。スポーツドリンクをオッサンみたいにがぶ飲みする子。バスタオルでTシャツまくり上げ汗を拭きまくる子。シャワー室へ駈け込んで、ダイレクトに体を冷やす子。二台のカメラは、そんな子らを追い掛け回して大忙し。
「うち、映してくださいよ。これ『MNB47 佐藤明日香の24時間』いうタイトルなんでしょ!?」

 で、思い出したディレクターが、急きょうちにインタビュー……言われても、急には言葉が出てけえへん。うちもたいがいや。

「車で言うとF1耐久レースですね。何百キロいうスピードで走りまくって、ピットインしてるのが今ですわ。うちら体は一つやけど、エモーションは何人前もあるんです。一遍には出しません。休憩のたんびに、ドライバーが入れ替わるように、新しいエモーション注入。え……教えられたこと……ちゃいますね。この二か月間で、うちら自身で自然に会得した心と体のローテーションですね。キザに言うたら青春の完全燃焼のさせ方です」

 我ながらうまいこと言葉が出てくる。そない言うてみんなを見ると、ただバテかけてるメンバーの姿が、いかにも美少女戦士の戦闘束の間の休息に見えてくる。

 午後からは、河内音頭がバージョンアップした分、バランスをとるためにVACATIONも手直し。
 ヘゲヘゲになったとこで、市川ディレクターから嬉しい知らせ。

「ユニオシから予算が付いたんで、週末は三日かけて、プロモの撮り直し。ハワイで!」

 一瞬間があって、みんなから歓声があがった……!

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高校ライトノベル・日仏トイレットペーパー考

2016-06-27 08:43:26 | エッセー
日仏トイレットペーパー考http://a7.sphotos.ak.fbcdn.net/hphotos-ak-snc6/s720x720/208831_4210955756646_618158527_n.jpg

 フランスのクレルモンに引っ越した友人が、「フランスではすぐにトイレットペーパーが無くなる」と電信をよこしてきた。

 わたしはパソコン原始人なので、添付した写真が出ているかどうか分からないが、出ていたら左のチッコイ方がフランス製。純白の堂々たるシロモノが日本製である。
 なんと雄々しい日本製ではないか!

 ちなみに日本製はJIS規格が厳しく、以下のようである。

〈品質〉衛生的で適度の柔軟性があり、水にほぐれやすく、すきむら、破れ、穴など使用上の欠点がなく、試験によって規定(坪量18g/m2以上、破裂強さ(10枚)78kPa以上、ほぐれやすさ100以内)に適合しなければならない。
〈形状〉巻取りとし、巻きむらがあってはならない。
〈寸法〉紙幅114mm(許容差±)、1巻(ロール)の長さ27.5m,32.5m,55m,65m,75m,100m(許容差±3)、しんの軽(内径)38mm(許容差±1)、巻取りの径120mm以下
その他、試験方法や包装、表示などが規定されている(トイレットペーパー百科事典より)

 フランスで、トイレットペーパーの使用料が多いのは、この規格の違いにあると思う。直径で1センチは細く、幅も10ミリは短い。したがって、一度に使用される量も多くなる。フランスの資料がないので憶測であるが、厚みも違うと思う。
 そして、何よりも、ウォシュレットの普及率が、トイレットペーパーの使用量に決定的に影響していると思うのだが、どうだろう?

 「小よく大を制する」という、一時代前の日本人が好きな言葉があるが、二時代前の日本人なら骨身にしみている戦力の逐次投入のロスがフランス製にはある。JIS規格によって鍛えられた日本製トイレットペーパーは、大戦力のわずかな出撃回数で、敵を撃滅する。

 メグ・キャボットの『プリンセスダイアリー』にも、主人公の女子高生ミアが、たびたび「トイレットペーパーを買っておくこと!」と書いているように、アメリカにおいても、その使用量が多い事がしのばれる。

 五十代以上の方なら、ご記憶にあると思われるが、かつてのトイレットペーパーは「落とし紙」と呼ばれ、和式便器の左前方のA4程の箱に、古新聞の再生紙であることを隠しもしない無骨な灰色をして収まっていた。

 洋式トイレとの劇的な出会いは、中学の修学旅行で、横浜の氷川丸に一泊したときである。
 船内のトイレのことごとくが洋式であった。
「どないやって、するんやろ……」
 あどけない中学生たちは、このため、多くがイタセなくて、便秘ぎみになってしまった。
 それから、半世紀近くたち、我が国のトイレのほとんどが洋式、それも、世界に冠たるウォシュレットに変化した。

 このウォシュレットの開発は、涙ぐましい努力と研鑽があった。便水の適切な発射角、位置の設定など、開発した会社は、社員全員がモニターになり決定に至ったそうである。
 テレビCMも流された。
「何を隠そう、お尻もキレイ!」のキャッチコピーでお茶の間に流れたとき、視聴者からは「食事時に便器の宣伝をするとは何事か!」と、お叱りを受け、初期商品には故障も多く、クレームが続いた。
「温水が熱水になって○○をヤケドした!」
「水の勢いが強すぎる!」
 しかし、このウォシュレットは日本人の合理性とよくあい、前世紀末から急速な普及を見た。

 このウォシュレットの開発は、何度かマスコミで取り上げられ、この程度の知識をお持ちの方は、比較的多い。
 その中で、トイレットペーパーは地味に、確実に進化を遂げた。薄く丈夫で水に溶けやすいという矛盾した条件を、コツコツとした努力で成し遂げた。

 一見話が変わるようであるが、広辞苑である。
 広辞苑は、版が変わるたびに収録する言葉が増えている。内容が増えるわりには、本としての厚み、重さは、ほとんど変化がない。これは、岩波書店や、提携の紙屋さんなどが努力をして、紙を薄くすることで対応している。

 日本は、かくのごとく、各方面において努力を重ね、その結果、渡仏した我が友人をして、こう言わしめた。
「フランスでは、すぐにトイレットペーパーがなくなる」
 わたしは、こう返した。
「そやけど、そっちは、トイレットペーパーはくれるもんとちゃうんか?」
 
 数分たって、友人から返信がきた。

「地球の裏側まで、オヤジギャグとばすな!」

 念のため、「くれるもん」は「クレルモン」にひっかけている。
 え……しつこい。
 では、このへんで。
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高校ライトノベル・奈菜のプレリュード・2《それはないやろ……前篇》

2016-06-27 07:20:55 | 小説・2
奈菜のプレリュード・2
《それはないやろ……前篇》



 昨日直美と話したこと思いだしたんで……。

 あたしは一年の頃は演劇部に入ってました。中三のとき、あるお菓子メーカーのCMのオーディションに合格して、ほんのワンカットの、そのまたその他大勢のひとりやったけど、三か月ほどテレビに出てた。
 CMの主役はアイドルの黛朱里(まゆずみあかり) 普段はちょっと小悪魔系のアイドルやけど、スタジオの彼女は礼儀正しいて、あたしらその他大勢にもきちんと挨拶。プロデューサーやらスタッフと話すときは、必ず相手の正面をむいて、きちんと返事。正直目からうろこ。
 三分バージョンから三十秒バージョンまで、撮るのに丸一日。間に休憩は入るけど、オーディション組は、ちょっとバテ気味。そやけど黛朱里は平然としてる……だけと違って、あたしらをリラックスさせよ思うていろいろ話してくれたり、いっしょに歌うとうたり。

 大変やなあ……と思いながら、憧れてしもた。
 
 で、芸能プロにでも入ったら、オッチョコチョイではあるけど、あたしの本気度はマックス100%。あたしは憧れるだけで、なあんもせんと中学生活を終わってしもた。
 それで高校に入ったら、すぐに演劇部に入った。映画でえらい賞とった女優さんがO学院の演劇部の出身と聞いて、役者になるんやったら演劇部……今から思うと単純な発想。

 演劇部は期待外れやった。発声練習と肉体訓練は型になってて、それなりに気合い入ってるけど、肝心の芝居の稽古になるとあかん。

 あたしも、CMに出て役者になりたい思うようになってから、亮介(アニキ)の勧めで、簡単な戯曲やら、演技の教則本を読んでた。亮介は心理学部やけど、学部の選択で演劇のコマをとってる。実力はともかく、講師の先生がええようで、勧めてくれるもんに間違いは無かった。
 演劇部で、驚いたんは、役者が人の台詞を聞いてないこと。なんや大げさに台詞吐くけど、状況に対する反応になってない……つまり、相手の演技への反応になってないから、ただ声と動きが大きいだけ。簡単に言うたら大根ですわ。

 もっとびっくりしたんが、うちの演劇部は創作劇しかやれへんこと。

 クラブのロッカー見ても既成の本は一冊も無い。休憩時間に新感線やら三谷幸喜なんかの芝居の話しても、まるで知らない。シェークスピアやらチェーホフの名前すら知らん先輩が居てるのには、ビックリ通り越して寒むなってきた。
 連休明けに連盟の講習会があった。劇団○×△□(これでコントローラーと読む。なるほどプレステのコントローラーや)の南野隆いうオッチャンが講師で、呼吸から、エチュードまで教えてくれて、なんやそんな気になった。
「これ、通年の講習会とかはないんですか?」
 司会の先生に聞いてみた。
「夏休みに、もう一回。ほんで地区でも講習会があります。そこでまたがんばろう!」
 トンチンカンな答えが返ってくる。芝居は通年で訓練せなら身に着かないくらいは、あたしでも分かってる。

 で、文化祭。演劇部の前のダンス部は満員御礼やったけど、演劇部になったとたん潮が引くように観客がおらんようになった。

 一口で言うて、うちの演劇部は勘違いしてる。戯曲も読まんと自己満足の創作劇。一年のあたしが読んでも戯曲の形になってない。演技は、ただの形だけやし、なんちゅうても舞台監督が名前だけ。稽古場の管理も稽古日程の管理もできてない。たった十人の演劇部やのに、演技班と工作班に分かれてて、どないかすると、何日も顔見ない部員もいてる。
 あたしは、一応演技班やけど、稽古中人の稽古見てないもんが多い。あかんで、これは。
 そのくせ『U学院演劇部ブログ』の更新には熱心。交代で毎日更新してる。中身は、よその演劇部とうちの誉め言葉と「ガンバロー!」のスローガンだけ。あたしに番が回ってきたときに、さっき書いた講習会の感想書いたら、すぐに部長に削除されて、別のプロパガンダに替えられた。

 もう、辞めます。夏休み前に宣言した。

 せやけど、人が足らんとか部員の責任とか言われて足止め。たしかに十人だけでコンクールの表と裏を切り盛りすんのは難しい。
 あたしは「責任」とか「人情」いう言葉には弱い。結局演技班から降りて工作班に。でも実質辞めたんも同じで、本番前と本番のスタッフの手伝いすることで手を打つ。

 コンクール……アホかと思うた。

 五百人入るK高校の観客席に五十人ほどしか観客が入ってない。参加校は十二校やから、一校四人ちょっと。十二校中十一校が創作劇。先生にもろた公式パンフ見たら、93%が創作劇。うちの学校だけが特別やないことを実感。府全体がおかしい。
 もう、これ終わったらほんまに辞めよと思うた。

 審査にもびっくりした。

 あたしはスタッフやったんで、最初で最後のコンクールでもあるんで、最後まで観た。
 ありえへん審査結果やった。
 声は聞こえへん、話しはよう分からへん、幕が下りても「え、これでおわり?」てな感じで、拍手がなかなかおこらへんかったH高校が最優秀。ほんで、うちの学校が二等賞にあたる優秀賞と創作脚本賞。審査員どこに目えつけとんねん!?

 ま、こんな話を直美としてたわけ。観客動員や言われたんで、あたしは直美にだけ頼んだ。直美は律儀な子で、あたしが全部見てたさかいに、付き合いで全部見てくれた。
 直美はブロガーで、その日のうちに観た学校の感想をブログでアップロード。中身は、あたし同様に手厳しい。
「あのブログは、奈菜、おまえの入れ知恵やろ」
 部長から、そない言われた。あたしは直美から、こない言われた。
「観客動員いうから、行ったけど、連盟のサイト見ても会場も時間も出てへん。ちょっとどないかと思うよ」

 長うなりました。まだ半分です。では、明日また。    奈菜……♡

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高校ライトノベル・宇宙戦艦三笠・19[空母遼寧の船霊ウレシコワ・1]

2016-06-27 07:10:50 | 小説5
宇宙戦艦三笠・19
[空母遼寧の船霊ウレシコワ・1]



 ワープが終わると、少し後方に中国の航空母艦遼寧が感知できた。

 正確には、ごく微速で三笠の後を追っている形である。
「遼寧に連絡、救助の必要ありか?」
 副長の樟葉が、修一艦長が言い終わる頃には連絡をし終えていた。ワープの間に見た夢のせいか、二人の呼吸はとても合ってきた。
 遼寧は、元ロシアの航空母艦であったので、見かけはいかつく堂々としている。ブリッジを中心とする上部構造物は、クリンゴンかガミラスのそれを思わせるほどマガマガしいほどの対空、対艦兵器に各種のむき出しのレーダーが取り囲んでおり、いかにも頼もしい。艦首はバルバスバウ(球状艦首)とよくバランスの取れたジャンプ台式の滑走甲板。アメリカの空母に比べると、やや小ぶりではあるが、見かけは立派な航空母艦であった。

 それが、時速300キロという、宇宙船としては静止しているのに等しい鈍足で、ワープした三笠に軽々と抜かされた。

「修一、矛盾する返事が複数きた」
 樟葉が見せたタブレットには8通の返事があった。「本艦に異常無し、お気遣い無用」という木で鼻を括ったようなものから、「救援を乞う。本艦は操舵不能、漂流しつつあり」という悲壮なものまであった。
「放っておこうよ」
 トシはニベもなかったが、美奈穂もクレアも、様子を見に行った方がいいという顔をしていた。

――ただいまより、貴艦に接舷する――

 そう返事をすると、これに反対する反応は返ってこなかった。
 遼寧の艦内は荒れていた。三笠と違ってクルーは多いようで、数百人の人の気配がした。
「ようこそ、一応艦内をまとめている紅紀文です。艦内の序列では3位ですが、とりあえず艦長代理と思ってください」
「ほとんど船は停止しているようですが、機関に故障でもあったんですか?」
 クレアが、白々しく聞いた。アナライザーを兼ねているクレアには分かっていた。この遼寧はウクライナから、スクラップとして中国が買ったもので、エンジンさえ付いていなかった。
 空母は、飛行機を発進させるため、30ノット以上の速度が必要で、元々は強力なガスタービンエンジンが4基ついていたが、スクラップと言うことで、エンジンは外されていた。中国はやむなく商船用の蒸気タービンエンジン4基を付けたが、速度は20ノットしか出なかった。20ノットでは、対空、対艦兵器を満載した戦闘機を発艦させることができなかった。その他電子部品にも不備があり、日本の民生品で間に合わせていて、まあ、実物大の航空母艦の模型に等しかった。

「やって、らんないのよね!」

 バニーガールコスのロシア娘が割り込んできた。
「遼寧の船霊さまよ」
 クレアが樟葉に耳打ちした。
「あ、ウレシコワ……!」
 紅紀文が慌てた。
「だいたいね、あたしは香港でカジノになる予定だったのよ。だからウクライナ出るころから覚悟決めて、こんなナリして頑張ろうと思っていたのに、今になって空母はありえないわよさ!」
「いや、だから艦内委員会にも諮って、今後のことは……」
「それに、よりにもよって、日本の三笠に救援頼むなんて、あたし、絶対やだからね!」

 なるほど、日本海海戦でボロ負けしたロシアとしては、日本の救援は受けにくいだろう。まして、当時の連合艦隊旗艦の三笠である。
 船霊のウレシコワを挟んで、遼寧の代表者たちが、もめはじめた。

 結局、樟葉とクレアはそのまま三笠に帰ってきた。
「あれ……でも遼寧、動き出してるぜ」
 三笠に帰ると、修一が、そう言った。
「最低動けるようにはしてやれって、みかさんのお願いでしたから」

 クレアが、きまり悪そうに言った……。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・103〔The Summer Vacation・6〕

2016-06-27 06:54:37 | 小説6
高安女子高生物語・103
〔The Summer Vacation・6〕
                 


『MNB47 佐藤明日香の24時間』

 このありがたくも、あんたら、そこまでヒマなんかいな言うテレビ取材の話は、昨日ユニオシの事務所から。実質業務命令の依頼がきたもの。
 お母さんは嫌がったけども、お父さんは喜んでた。仕事柄、家に引きこもりみたいな毎日を送ってるお父さんにはええ刺激と宣伝の機会。いそいそと座卓の上に10冊ほどの自分の本を並べだす。
 低血圧のお母さんは、夕べ睡眠剤を飲んで早起きに努力の姿勢。
 うちは、夏休みは早起きの習慣がついてる(一時間でも早よ起きて、休みを満喫しよいう根性)ので、朝の6時にクルーが来た時には、すでに起きてた。
 クルーは寝起きのブチャムクレ明日香を撮りたかったらしいけど、残念でした。ハーパンにカットソーに、セミロングをポニーテールにして、お目目パッチリの迎撃態勢。さすがにお母さんも起きたけど、こっちは完全なブチャムクレ。三階で身づくろいと化粧にかかる。
「アスカちゃんは、いつも、こんなの?」
「はい。時間もったいないよって、夏休みとかは早いんです」
「あ、朝ごはん自分で作るんだ」
「はい。うちは家族三人やけど、起きる時間も朝ごはんの好みもバラバラ……え、お父さんも一緒に食べるて?」
 いつもは別々に食べてる朝ごはんをいっしょに食べる。ト-スト焼くとこまではいっしょやけど、お父さんはハム乗せてコーヒー。うちはトーストの上にスクランブルエッグにインスタントのコーンポタージュ。食後の麦茶は常温のにしといた。こないだみたいにお腹の夏祭り撮られたらかないません。
「もう30分早かったら、朝シャワー撮れましたよ」
 そう言うてから、メールのチェック。麻友だけが「お早うメール」で、美枝とゆかりは「おやすみなさい」のまんま。
「学校の友達とは、ずっとメールのやりとり?」
「はい、夏休みになってから、ずっとお仕事ばっかりで、クラスの友達とは会われへんさかい、お早うとお休みだけはやってます」
 それからFBのチェック。「お早うございます♪」と、取材クルーの写真付けて送信。
「ラジオ体操行きます?」
「アスカちゃん、ラジオ体操やってるの?」
「まさか、小学校までですけどね。たまにはええんちゃいます?」

 9時にカヨさんとこに行く約束したあるので、それまでの時間稼ぎ。

 ラジオ体操は近所の公園。テレビのクルーといっしょに行ったら、みんながびっくりしてた。高学年の子らは、昔いっしょにやった顔見知り。自分で言うのもなんやけど、高安が出した初めてのアイドル。自然な形でどこに行ったら、いい絵が撮れるかは承知してます。
 五年ぶりに子供らとラジオ体操。終わったらスタッフが用意してたカードにサインしたげる。ここで40分も尺とったけど流れるのは、せいぜい一分やろなあ。
 家に戻ると、お母さんがいつもの倍くらい身ぎれいにして、掃除と洗濯。「あら、やだ、いつの間に!」しらこいこと言いながらスタッフにお愛想。時間つぶしに両親のインタビュー。これもあらかたカットされるんやろなあ……親の努力がけなげに思えたころに時間。高安駅までスタッフの半分が付いてくる。
 日本橋(ニホンバシとちゃいます、ニッポンバシ)で堺筋線に乗り換えて、一駅恵美須町へ、カヨさんの家は初めてなんで、迎えに来てくれてることになってる。

 で、恵美須町の地上に出たらえらいことになってた……!

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