大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・日仏トイレットペーパー考

2016-06-27 08:43:26 | エッセー
日仏トイレットペーパー考http://a7.sphotos.ak.fbcdn.net/hphotos-ak-snc6/s720x720/208831_4210955756646_618158527_n.jpg

 フランスのクレルモンに引っ越した友人が、「フランスではすぐにトイレットペーパーが無くなる」と電信をよこしてきた。

 わたしはパソコン原始人なので、添付した写真が出ているかどうか分からないが、出ていたら左のチッコイ方がフランス製。純白の堂々たるシロモノが日本製である。
 なんと雄々しい日本製ではないか!

 ちなみに日本製はJIS規格が厳しく、以下のようである。

〈品質〉衛生的で適度の柔軟性があり、水にほぐれやすく、すきむら、破れ、穴など使用上の欠点がなく、試験によって規定(坪量18g/m2以上、破裂強さ(10枚)78kPa以上、ほぐれやすさ100以内)に適合しなければならない。
〈形状〉巻取りとし、巻きむらがあってはならない。
〈寸法〉紙幅114mm(許容差±)、1巻(ロール)の長さ27.5m,32.5m,55m,65m,75m,100m(許容差±3)、しんの軽(内径)38mm(許容差±1)、巻取りの径120mm以下
その他、試験方法や包装、表示などが規定されている(トイレットペーパー百科事典より)

 フランスで、トイレットペーパーの使用料が多いのは、この規格の違いにあると思う。直径で1センチは細く、幅も10ミリは短い。したがって、一度に使用される量も多くなる。フランスの資料がないので憶測であるが、厚みも違うと思う。
 そして、何よりも、ウォシュレットの普及率が、トイレットペーパーの使用量に決定的に影響していると思うのだが、どうだろう?

 「小よく大を制する」という、一時代前の日本人が好きな言葉があるが、二時代前の日本人なら骨身にしみている戦力の逐次投入のロスがフランス製にはある。JIS規格によって鍛えられた日本製トイレットペーパーは、大戦力のわずかな出撃回数で、敵を撃滅する。

 メグ・キャボットの『プリンセスダイアリー』にも、主人公の女子高生ミアが、たびたび「トイレットペーパーを買っておくこと!」と書いているように、アメリカにおいても、その使用量が多い事がしのばれる。

 五十代以上の方なら、ご記憶にあると思われるが、かつてのトイレットペーパーは「落とし紙」と呼ばれ、和式便器の左前方のA4程の箱に、古新聞の再生紙であることを隠しもしない無骨な灰色をして収まっていた。

 洋式トイレとの劇的な出会いは、中学の修学旅行で、横浜の氷川丸に一泊したときである。
 船内のトイレのことごとくが洋式であった。
「どないやって、するんやろ……」
 あどけない中学生たちは、このため、多くがイタセなくて、便秘ぎみになってしまった。
 それから、半世紀近くたち、我が国のトイレのほとんどが洋式、それも、世界に冠たるウォシュレットに変化した。

 このウォシュレットの開発は、涙ぐましい努力と研鑽があった。便水の適切な発射角、位置の設定など、開発した会社は、社員全員がモニターになり決定に至ったそうである。
 テレビCMも流された。
「何を隠そう、お尻もキレイ!」のキャッチコピーでお茶の間に流れたとき、視聴者からは「食事時に便器の宣伝をするとは何事か!」と、お叱りを受け、初期商品には故障も多く、クレームが続いた。
「温水が熱水になって○○をヤケドした!」
「水の勢いが強すぎる!」
 しかし、このウォシュレットは日本人の合理性とよくあい、前世紀末から急速な普及を見た。

 このウォシュレットの開発は、何度かマスコミで取り上げられ、この程度の知識をお持ちの方は、比較的多い。
 その中で、トイレットペーパーは地味に、確実に進化を遂げた。薄く丈夫で水に溶けやすいという矛盾した条件を、コツコツとした努力で成し遂げた。

 一見話が変わるようであるが、広辞苑である。
 広辞苑は、版が変わるたびに収録する言葉が増えている。内容が増えるわりには、本としての厚み、重さは、ほとんど変化がない。これは、岩波書店や、提携の紙屋さんなどが努力をして、紙を薄くすることで対応している。

 日本は、かくのごとく、各方面において努力を重ね、その結果、渡仏した我が友人をして、こう言わしめた。
「フランスでは、すぐにトイレットペーパーがなくなる」
 わたしは、こう返した。
「そやけど、そっちは、トイレットペーパーはくれるもんとちゃうんか?」
 
 数分たって、友人から返信がきた。

「地球の裏側まで、オヤジギャグとばすな!」

 念のため、「くれるもん」は「クレルモン」にひっかけている。
 え……しつこい。
 では、このへんで。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・邪気眼少女イスカの失踪④『もう一人のイスカ・2』

2016-06-25 13:27:25 | 小説
 邪気眼少女イスカの失踪④  
『もう一人のイスカ・2』

 暑いと思ったら、キャスケットを被ったままだった。

 でも脱ぐわけにはいかない。
 キャスケットは、月夜見尊(ツクヨミノミコト)からの霊波を受けて我が邪気眼を曇りなきものにしておくための必須アイテム。
 これがあるからこそ、海千山千の骨董屋がひしめく京の都で仕入れの仕事ができる。

「イスカはんにかかったら、しょうがおまへんわ」

 三条のハゲチャビンにこう言わせるのに二年かかった。ハゲチャビンは祖父よりも年上の骨董屋。
 最初は相手にされなかった。
 無理もない、あたしはセーラー服の女子中学生だった。おまけに目深にかぶったキャスケットは、かのレーニンにこそ相応しい代物。
 アキバや渋谷でこそ違和感がないだろうけど、京都で骨董の仕入れをするにはあんまりだろう。
「光雲晩年のものが三つ手に入りましたね」
 古物商免許を見せながら核心をついても相手にされなかった。
「本物は一つだけ、あとはお弟子の習作よ!」
 つまみ出されながらも忠告したことが当たって、それでも一年かかったのよね。

 今回の仕入れは一か月かかってしまった。

 うちは岐阜県の小さな骨董屋なので潤沢な資金は無い。
 わらしべ長者のように売っては買いの繰り返しで資金を十数倍に膨らませ、なんとか納得のいくものを五十点ほど買った。

 もう二三日はがんばろうと思っていたら夢を見た。

 だからキャリーバッグを曳いて魍魎駅のコンコースに戻って来たのよ。
「「「おひさー!」」」
 ティーンの女子高生らしい挨拶は同時になった。挨拶の相手は、もう一人のイスカと田中沙利菜愛利江留。
 あたしは一瞬で15歳の邪気眼電波女に戻る。
「もう、この一か月どこに行ってたのよ!?」
 田中沙利菜愛利江留がプータレる。
「いいよいいよ、いま話してもらったら、きっとサリナの名前より長い話になりそうだから」
 雲母坂イスカは、全部のみこんでるって顔で、あたしの前を歩きはじめた。

 こんなに頭が回転して、とっさの判断ができるような女じゃなかったんだけどな……雲母坂イスカの背中を見て思う。

「あっちーからさ、マックにでも寄っていこうよ。クーポン券持ってるから」
「お、いいね。ご飯前に少し血糖値上げとくのはダイエットにいいんだってさ」

 マックに向かいながら、お互い今までのイスカではないことを実感。

「この際提案なあだけど、お互いイスカだと紛らわしいからさ、ちょっと工夫してみない?」
 ダブルチーズバーガーに齧り付く前に提案した。
「オ、ということは、忽然と居なくなったりしないってことだよね?」

 雲母坂イスカは、チョー嬉しそうな顔をした。



※ 登場人物

 雲母坂イスカ       戦国時代の美濃の女忍者 今は高校一年生

 高台寺イスカ       もう一人のイスカ。雲母坂は高台寺の方こそがもう一人だと思っている。

 田中沙利菜愛利江留    イスカの親友 普段は略称のサリナで通っている

 西峰真之介        西峰流忍法宗家の息子


 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・邪気眼少女イスカの失踪③『もう一人のイスカ・1』

2016-06-24 10:55:52 | 小説
邪気眼少女イスカの失踪③   
『もう一人のイスカ・1』


 ……てっきり断るのかと思った。 四階への階段を上がりながらサリナが呟く。

 教室に向かう前に、三階の社会科準備室に寄ったところ。
 先月から高島先生に迫られていた郷土史研究部への入部をOKしてきたのだ。
「あたしが断ったら、サリナだけが無理くりに入らされてたでしょ」
「でも、巻きこんじゃったよ」
「いいって、いいって」
「でも、急にどうして?」
「んーーーーーー内なる衝動?」
「衝動で入っていい部活じゃないわよ」
「へへ、自分でも説明つかないんだ……ま、次だよ次」
「でも……」
「気にしない、気にしない」
「うん……でも、なんで右手ニギニギしてんの?」
「え……あ、ほんとだ」
「社会科準備室出てからずっとだよ」
「どしてだろ?」
 そう言いながらもニギニギをやめられないあたし。

 ウォット!!!

 自然に体が旋回して、旋回したあたしを掠るようにして男子がタタラを踏んだ。
「西峰くん、いつものセクハラしようとしたでしょ」
「してねーよ!」
「したよ。ほら、その指」
 西峰真之介の右手の指がやらしそーに蠢いている。
「これは、打った拍子に痙攣してんだ。ケ!」
 そう言って背中を向けた西峰。あたしの中で小さな爆発が起こった。

「死ね!」

 爆発が収まると、西峰が再びひっくり返っていた。で、あたしは、なぜか西峰のズボンを持っている。
「え、ええ! なんだよ! なんだよ、これは!?」
「あんたのズボンが勝手に飛び込んできた」
 そう言いながら、あたしは西峰のみっともない姿をスマホで撮っている。
「と、撮るな!」
「もう撮っちゃった」
「くそ、消せえ!!」
「うん、そのうち」
「雲母坂(きららざか)ああああああああああ!」
 跳びかかってきた西峰を反射神経で避けてしまう。もし衝動に従っていれば、あたしの拳をモロに受けて西峰は絶命している。
「お、おまえ、ほんとうに雲母坂か? 弱虫の雲母坂イスカなのか?」
「んーーーーー多分」
 自分でも驚いているんだから多分としか答えられない。
「あのさ、もう人に乱暴すんの止しなさいよね。女の子にぶつかって泣かせるなんてサイテーだからね。わぁった?」
「お、おお」
「ぶつかるだけじゃなくて、スカートまくったりブラのホック外したり。西峰流忍法の汚れだよ」
「お……お、おお」
「じゃ、今日から掃除もサボらないでね。サボったら、今度はズボンじゃすまないから。ほら、さっさと穿いて。朝礼始まっちゃうから」
 西峰はズボンを持って男子トイレに駆け込んだ。西峰にもハズイという気持ちがあるようだ。
「すごいよイスカ! 郷土史研だけじゃなくて、西峰も決着つけちゃうんだ!」
「あ、これはたまたま。もう一個が本命だわさ」
「あ……それって……?」
「そう、イスカを探さなきゃ。親友のイスカをさ」

 あたしは、先月から行方不明になっているもう一人のイスカを思い浮かべた。

 我が友、邪気眼電波女イスカ……を。 
 


 ※ 登場人物

 雲母坂イスカ       戦国時代の美濃の女忍者 今は高校一年生

 田中沙利菜愛利江留    イスカの親友 普段は略称のサリナで通っている

 西峰真之介        西峰流忍法宗家の息子


 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・邪気眼少女イスカの失踪②『梅雨の晴れ間』

2016-06-23 13:57:51 | 小説
邪気眼少女イスカの失踪②
   『梅雨の晴れ間』



 梅雨の晴れ間と言うのは新鮮だ。

 そんなことは、これまでの十六年の人生で分かっているはずなのに、特別に思ってしまう。
 ゆうべはひどい夢を見た。どんな夢だったかは忘れてしまったけど、ひどかったということだけは、感覚として鮮明に残っている。
 あまりのひどさに、起き抜けから体がクタクタ。
 身体を引きずるようにして起きて、まっすぐお風呂に向かった。

 え……あたしって、裸で寝てたの?

 パジャマを脱ごうとして気が付いた。いま思うと、とても変なんだけど、その時は、脱ぐ手間が省けたとしか感じなかった。
 バスタブにお湯が無かった。スイッチを押して「お湯はりをします」の合成音声。ノロノロとお湯が満ちるのを待っているうちに眠ってしまった。
 ゲホゲホゲホ。少しお湯を飲んで目が覚める。
 それからはいつも通りの朝。
「いってきまーす」
 玄関を飛び出して、風の匂い。見上げた空は爽やかな梅雨の晴れ間。

 感動して、見上げたまま突っ立ってしまった。

「UFOとか見える……?」
 真横で声がした。
「お、おはよ」
 返事が上ずってしまった。目の前に居るのは……親友の田中沙利菜愛利江留(たなかさりなありえる)……とフルネームと共に思い出し、彼女の名前を呼ぶときは略称のサリナでなければならない! アラームが、頭の中で点滅した。
「だいじょうぶ、イスカ?」
「だいじょぶ、だいじょぶよサリナア……」
「ん、ひょっとして、あたしのことフルネームで呼ぼうとした?」
 サリナがジト目になった。
「ん、んなわけないじゃん。今日は決着つけなきゃならない日なんだからね。緊張よ緊張! オー!」

 いろんなことをいっぺんに思い出し、拳を天に突き上げてしまったあたしだった。


 ※ 登場人物

 イスカ       戦国時代の美濃の女忍者 今は高校一年生

 田中沙利菜愛利江留    イスカの親友 普段は略称のサリナで通っている


 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・邪気眼少女忍者イスカの失踪①『蛍のように輝き』

2016-06-22 14:25:33 | 小説
邪気眼少女忍者イスカの失踪
   ①『蛍のように輝き』



 気配が絶えて一刻になった。

「……お頭、もう頃合いでは?」
 ムササビが唇も動かさずに呟く、忍者の会話方である闇語りである。
もう半刻
「死なせては、元も子もありません」
完璧な死域に入らせねば、あの邪気眼とて先を見通せぬ
「しかし」
おまえの声は大きすぎる
「……黙しまする」

 虫ほどの気配が消え、魍魎ヶ峰の羅刹杉は地獄のような緑に溶け込んだ。

 イスカは半ば沢の流れに沈んで、指の先も動かせずにいた。
 沢を飛び越えようとし、跳躍したところで力が尽きた。
 イスカほどの忍びになると、次第に弱まるということがない。気力体力の限界を超え、死域に入ると常の倍ほどの力が出せる。その倍ほどの力で魍魎ヶ峰を一刻あまり走り回った。常の忍びの働きならばここまでである。これを越せば十に九つ命が無い。イスカは死域の向こうに超えて、沢の真ん中で糸が切れるように尽きてしまった。いまで言う心肺停止状態である。

 イスカには生まれついての邪気眼が有る。

 その邪気眼で、戦国の世の帰趨を見通してきた。
 天下の流れが奔流のように信長という滝つぼに落ちて行くのを、イスカは見守った。そして潮目をとらえては頭に伝え、そのつど十鬼一族を滅亡の危機から救ってきた。
 大きくは、土岐頼芸→斉藤道三→斉藤義龍→織田信長の潮目を読み取り、盛衰激しい美濃国で忍びの一族を守ってきた。
 むろん、十六にしかならないイスカが、この長い戦国の世全てを読み取って来たわけではない。この邪気眼の術はイスカの母、祖母、さらにそれ以前の女たちから血縁で繋がれてきたものである。

 そして、三日前。京の本能寺で信長が討たれた。

 この先は、いつもの邪気眼では読み取ることができなくなった。
 お頭はイスカに命じた。
「先を読め」
 イスカは魍魎ヶ峰の森に入った。
 いつもなら一昼夜で死域に入り潮目が見えてくる。
 だが、今回は流れが大きすぎる。命の火を消すところまでいかないと見えてこない。
――秀吉の天下になる――
 そこまでは読めた。
 だが、そこに至る紆余曲折が読めない。そして、イスカの邪気眼は秀吉の後の騒乱まで見通しているが、朧に霞んで見えてこない。

 なんでここまで……イスカは思った。祖母は母を、母はイスカを産んで間もなく亡くなっている。邪気眼というのは、その力を持つ者の命を削ってしまう。祖母にも母にも女としての人生は無かった。死ぬまで潮目を読まされ、娘一人を産んだところで命の火を消している。一族のため……そこまではいい。しかし、イスカは跡継ぎの娘さえ産んではいない。希望の火であったタケルは長篠の戦で行方不明になってしまった。せめてタケルと……その想いをかみ殺しながらイスカは駆けてきた。

 森に入って三日、幾たびも転び木や茨に引っかけられ、イスカの衣はズタズタになっている。沢に転落して、そのズタズタの衣もあらかた流されてしまった。

「もう読めません……あとは、お頭のお力で……切り抜けて……ください……」

 きのう飛騨で降った雨が沢の水かさを増やした。
 沢は奔流となってイスカを流し始めた。

 流れに飲み込まれる刹那、イスカの体が大きな蛍のように輝き、次の瞬間……消えてしまった。
 
 
 ※ 登場人物

 イスカ       戦国時代の美濃の女忍者 その邪気眼で十鬼(とき)一族を導いてきた。
  
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・ライトノベルセレクト『100年たったら喋れなくなるかも』

2016-06-21 11:22:27 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト317
『100年たったら喋れなくなるかも』



 日本人は、100年たったら喋れなくなるかも……。

 と思うくらい電車の中はスマホや携帯だらけ。
 ま、8割がやってるね。中にはモバゲーとかもあるんだろうけど、画面見ながら無言であることはいっしょ。

 あたしは思う。日本人の声を出す時間は20世紀の半分くらいじゃないだろうか。
 あたしはスマホ持ってるけど、緊急必要なときしか返事しないことを、家族にも友だちにも言っている。で、実践してるもんだから、人の半分もメールが来ない。で、栞ってやつは、そういうやつなんだと思ってくれているから気が楽だ。

 あたしが突っ立ってる前の座席にも男子高校生が座って、チマチマとスマホをいじっている。

 自分で言うのもなんだけど、あたしは平均以上にはイケてると思う。街を歩いていて視線を感じることも時々ある。でも、この男子高校生は三日間(偶然なんだろうけど)いっしょになっている。並の神経してたら一瞥ぐらいはくれると思う。
――こいつはゲイか?――
 S駅で隣が空いたんで座ってみた。そいつのスマホが丸見え。どうやらラインをやってるらしい。チラ見すると相手は女の子らしい。T駅につくころ写メが送られてきた。ケバくはないけどパープリンな女子が写っていた。やつは微かにニヤケた。ゲイというわけではなさそうだ。
 U駅で、そいつは降りた。降りながらもスマホからは目を離さない。当然車内の何人かとはぶつかるってか、こすれ合いながら降りて行った。あたしならムカつくが、こすれ合った人たちもスマホをいじっているので知らん顔。杖ついたお爺さんが一人ムッとした顔をしていた。

 あたしは、想像力が豊か……とは言いにくいけど、妄想力は人一倍だと思う。

 あいあつの替りに座ったオネエサンは、友だちが昨日食べたスィーツを見比べて感心している。当然あたしを含め車内のことには無関心。
 で、あたしは思った。あのスィーツ、食べる前の姿ではなく、リアルタイムで変化したのが出てきて、ついでに臭いまでついていたら面白いだろうなと思う。
 そう思うと、自然に笑いがこみあげて吹いてしまった。女の勘だろうか、オネーサンは、あたしの妄想が分かったような顔で、一瞬あたしを睨んだ。今日初めて見た人間的な反応。なんだかホッとした。

 あたしがガキンチョのころAKBの『スカートひらり』が流行った。

 偶然の悪戯で、あなたとすれ違った。心臓止まりかけて、わざと無視したふり。なんてバカなわたしなの、自己嫌悪に陥る🎶
 
 この歌はスマホがあっては成立しない。ながらスマホでは、すれ違った相手が誰なのか分からないもんね。

 あたしの人生、まだ17年だけど、世の中変わったと実感。

 その日家に帰ると、お祖父ちゃんがきていた。隣の区から来ているから電車を使っている。で、聞いてみた。
「ね、お祖父ちゃん。スマホどう思う?」
「須磨帆……源氏の何帖だったかな?」
「朧月夜との仲が発覚したあとだよ」

 どーよ、あたしの機転の効き方と教養の高さ!

              東京都立希望ヶ丘青春高校  小山内 栞 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・高安女子高生物語・90〔そういう訳やないねん……〕

2016-06-14 16:42:58 | 小説6
高安女子高生物語・90
〔そういう訳やないねん……〕
        


 死者2重軽傷者8の大事故やった!

 あの時、うちの靴紐が切れへんかったら、確実に巻き込まれてた。亡くなった人は、うちらのすぐ前を歩いてたサラリーマンの人らやった。
 うちとカヨさんは、しばらく動かれへんかった。
 ほんのちょっとした運命のイタズラでうちらは助かった。ほんで目の前で血ぃ流して倒れてる人ら。
 警察を呼ぶ声! 救急車を呼ぶ声! 倒れてる人らを励ます人。あたりは騒然とした。

 ほんで、警察と救急車とマスコミが同時に来た……。

 で、あくる朝、お母さんに言われて気が付いた。10人も死傷者が出たんで、ニュースは全国ネットで流れた。なんとスンデのとこで巻き込まれそうになった代表みたいに、うちとカヨさんがニュースに出てたらしい。それもモザイクなしで。
 うちは覚えてへんかった。とにかく、足が震えて、その場を動かれへんとこに、なんや人が寄ってきたぐらいの記憶しか無かった。
 けっこう喋ってた。事故や、事故前の様子。ほんで、自分らがMNB47の研究生やいうことを……。

「あんた、覚えてた!?」

 朝やけど、カヨさんに電話した。
「なんや、アスカ覚えてへんのん? 難波テレビのインタビュー受ける前に、事務所に電話して許可もろたん、あんたやで」
「おい、明日香、新聞の三面のトップやで『またしても脱法ハーブの惨禍! MNBメンバー危うく難を逃れる!』

 そのあと、うちがやったことと思うたことは二つやった。

――あれ、助けてくれたん、正成のおっちゃん?――
――感謝せえよ……といいたいけど。わいにも分からん。出雲阿国ちゃんとちゃうかな?――
 で、カヨさんにメールで聞いたら「阿国さんも正成はんとちゃうかて」と返ってきた。偶然か、うちらの運の良さか……?

 ほんで、学校に着いてからが大変やった。

「そういう進路にかかわることは、早よ、担任に言え!」と、ガンダム。
「佐藤さんには幸運の女神さまが付いてるんやわ」宇賀先生は喜んでくれはったけど、先生の傷を思うたら複雑な気持ち。
「なんで、アスカは言わんのかな!」これは、美枝とゆかり。
「アスカ、アイドルだね。事故とスキャンダルはスターの条件だからね!」この変な励ましは麻友。

 みんなの質問に共通してたんは「なんでMNB47のこと黙ってたか。

「やっぱり、言うたらあかんことになってるんやろ?」
「明日香の奥ゆかしいとこやねんな!」
「もう、選抜になるねんやろ?」
 と、いろいろ言うてくる。

 そういうわけやない。

 ガンダムに、進路選択迫られて、いろいろ体験入学やら申し込んでる中に、MNBがあっただけ。うちは、どうも人からズレてる。
 関根先輩からも「がんばってんねんな。今度のことは無事でなにより!」いうメールが来た。
 お礼のメールは打っといたけど、それだけ。
 今日は、うちの苦手なリズムのレッスンがある。

 タ タン タ タン タン タン………タ タン タ タン タン タン………ムズ!

 五拍子のリズムなんか、だれが作ったんや! そない思いながらも、歩きながらリズムをとる明日香やった……!

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

劇評『無音のレクイエム』大阪憲法ミュージカル2016

2016-06-04 10:15:16 | 評論
       劇評『無音のレクイエム』
   大阪憲法ミュージカル2016



 主催:大阪憲法ミュージカル プロディーユース:劇団到来 後援:大阪弁護士会 大阪府 大阪府教育委員会
 大阪春の演劇祭り参加作品 演出:鈴木健之亮 会場:大阪ビジネスパーク円形ホール 6月2日~5日


 ☆大成功のモブ芝居

  この芝居の主役はモブです。その他大勢、通行人、エキストラ、仕出し……いろんな言い方がありますが、80人にもなろうかという台詞のない人たちです。

 幕が上がると、数十人のモブたちが、三々五々昭和15年の千日前を行きかいしているところです。

 親子連れ、女学生グループ、女給さん、易者さん、劇場や活動の人たち、春団治と女、春団治のかみさん、リヤカーのおっさん、非番の兵隊さん などなど……。

 その人たちが実に生きています。

 年齢や職業立場に見合った速度で歩いていて、それぞれに目的と興味を持っています。そして、テンポと圧がなんとも大阪なのです。
 大阪の人間は全国で一番歩くのが速く、賑やかです。
 モブなので声量は押えられているのですが、みんな程よいテンションでキョロキョロし、連れの有るモブはペチャクチャ会話をしています。
 東京や地方に行くと実感するのですが、大阪の繁華街はキョロキョロとペチャクチャが一杯です。それが、この芝居では幕開きから活き活きと活写されています。
 宮崎アニメでは、背景になるガヤにも台本があり、そのためにガヤが活き活きしていることに定評があります。同じ……いや、それ以上のことが、この舞台では行われていました。
 演出の鈴木君の腕の確かさもうかがえますが、モブの人たちが、この公演を楽しみ、演出意図を自分たちの感性にまで昇華しているのが分かりました。

 ☆モブの中から浮き出てくる主人公たち

 芝居の中心になるキャラたちは、最初はモブの中に居ます。
 弁士志望の青年、千日前の食堂の娘、常盤座文芸部の青年、モブの中からチラチラと台詞のある役として立ち上がっては、すぐにモブの中に溶け込んでいきます。それが繰り返されるうちに時代は進んでいきます。

 弁士志望の青年は千日前の雑踏の中で存在が明らかになっていきます。思わず白雪姫の一節を弁じ、モブたちの関心を集める。そして常盤座の人たちとの交流、弁士見習いになり、食堂の娘と育む恋、弁士としての初舞台、文芸部の青年との交流、そして戦争、召集され戦地に向かう、戦地での文芸部青年との再会、復員後の食堂の娘との奇跡的な再会という大団円。

 そのドラマが、全てモブたちの日常の中に現れてきます。

 映画館の中のモブたちは秀逸でした。スクリーンに映る映像にキチンと反応しています。年齢や性別性格によって反応はまちまちですが、全体としてはむき出しに反応する戦前の大阪人の圧が良く出ています。弁士志望の青年が初舞台を踏むときの圧が、そのまま舞台のモブたちが表現してくれているので、面白くも素直に共感できました。
 これらの表現は『三丁目の夕日』で、鈴木オートに初めてテレビがきて、町内のみんなで力道山のプロレスに熱狂したシーンに匹敵します。

 ☆あえて苦言を

 モブ芝居というか群集劇として大成功しているので、それ以上は余計なことなのですが。
 主役たちのドラマが希薄です。
 主人公と彼女との出会い、育まれる恋、そして別れと再会。これがドラマとして希薄です。特に主人公が復員して、北陸に戻っていた彼女と再会するところは簡単すぎて、観客の感情や共感がついていきません。オッサン役のモブが「これで終演です」と言っておしまいになるのは、マンボウの尻尾のように唐突です。

 空気としては十分に大阪の雰囲気は出ているのですが、ドラマの部分、そこにもう一歩大阪らしさが欲しいと思いました。

 検閲で、常盤座の台本が全て不許可になり、みんな愁嘆するところがあります。
 ただ嘆くのではなく、検閲の網をあの手この手で潜り抜けてきた事実があるのではないかと思います。当時、吉本の芸人さんたちが中心になって『わらわし隊』という慰問団を結成して実績を挙げた事実があります。隙間を縫うように工夫された大阪の笑いがありました。
 徴兵でとられた大阪のニイチャンたち。配属された部隊の隊長が、なんと幼なじみ。で、戦闘中にテンパり、軍刀を閃かせ「突撃!」と叫んだときに「アホ、いま突っ込んだら死んでまう!」「思いとどまれ、おっちゃんおばちゃんらが悲しむ!」と壕の中に引きずり戻した。そういうマンガみたいなこともありました。
 地方の部隊が進駐して現地の中国人たちと軋轢がおこりますが、大阪の第八連隊が入れ替わると上手くいったこと、
 八連隊は「またも負けたか八連隊、それでは勲章九連隊」と手毬唄に織り込まれたように、日本一弱いとされた部隊ですが軍政には定評がありました。
 大阪大空襲のときは事前に東京の参謀本部から第四師団に情報が伝えられていました。
「大阪市民に警報を出したい」
 師団長以下の幹部は決心しますが「機密情報である」という大本営に押し切られ市民の犠牲が大きくなりました。このとき、師団の幹部と東京から来た高級軍人との間に軋轢があったことは、当時の師団司令部勤務の兵隊たちには知られていたことでした。

 国防婦人会が憎まれ役で出てきますが。

 国防婦人会というのは、それまで夫の階級に寄って序列が決まっていた夫人組織を、大阪のオバチャンたちのアイデアで、かっぽう着さえ着ていれば、みんな平等な組織にしたものです。
 そういう大阪らしさ、たくましさ、元来戦争を好まない気風などが描かれていればと思いました。

 もう一つ例を。

 週番将校は、就寝前に営内放送で軍人勅諭を諳んじることが、全国の陸軍部隊で行われていました。
 地方の部隊で、読み間違えた将校がいました。彼は、その日のうちに自決してしまいました。
 作家の司馬遼太郎さんは軍隊時代、週番になったとき、よく読み間違いしていました。でも、自決もせず、特段のお咎めもなく「福田(司馬さんの本名)はしゃーないやっちゃ」で済んでいました。

 この芝居はよくできていますが、このまま設定を東京にしても他の地方にしても通用してしまいます。

 今少し大阪らしさ、気質、気風というものが出てくればと思いました。
 そして、時代は、そんな大阪らしさも踏み倒し踏みにじって進んでいったというスゴミが出ればと思いました。
コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・イレギュラーエッセー GO AHEAD! 003『とと姉ちゃんの初月給』

2016-06-02 09:37:40 | エッセー
イレギュラーエッセー GO AHEAD! 003
『とと姉ちゃんの初月給』
 



 とと姉ちゃんが初月給をもらった。

 昭和12年だから、あたりまえであるが手渡しだ。

 で、これに感動したので、いささかの駄文を書く。

 現役時代の前半の給料は手渡しだった。初任給は2号給の4号俸、手取りは14万ちょっと。それまでもらっていたバイト給料の倍近い厚みがあった。とても幸せな気持ちになったことを覚えている。
 給料は定型大型の茶封筒に入っていて、事務長のデスクの上に、全職員分が箱に収まっていたように記憶する。
「はい、大橋先生」
 顔を見ながら手渡しされ「ありがとうございます」とか「いただきます」とか「どうも」とか言って受け取り、朱々と朱肉を付けたハンコで受け取り表に捺印。人にもよるが、その場で金額を確認していた。

 年月を経るに従って、給料袋は分厚くなり、給料の重みが実感できた。

 箱の中に給料袋が並んでいるので、人の給料の多寡も、ザックリと分かってしまう。
 今の郵便料金で言うと、82円の厚みと92円の厚みのものがあり、82円のものでも、薄いものから厚いものまで色々である。
 また、受け取りの書類には職員全員の名前と給料の金額が書かれていて、捺印するときに、嫌でもお仲間の金額が目に入る。

 冬のボーナスの日に、所用が合って校長室に行ったことがあった。

「校長先生、ハンコお願いします」
 そう言って、事務長が黒塗りの盆に載せたボーナスを持ってきた。
「大橋センセも、帰りにお願いします」
 そう続けている間に、校長は受け取りにハンコを捺した。
 このとき、校長になんの話をしに行ったのかは忘れてしまったが、盆の上に載った校長のボーナス袋は忘れない。

 なんと、ボーナス袋の口が閉まらず、開きっぱなしの口からは岩波ジュニア新書ほどの札束が覗いていた。
 用事を終えて、事務所でもらったボーナス袋の中身は、テレビゲームのマニュアル程度の厚みしかなかった。

 これが振り込みになって、そっけなくなった。

 給料は通帳の数字でしか分からない。ときめきと言うか実感が乏しい。まして、お仲間の給料の多寡などは知る由もない。

 55歳で早期退職したので、退職金を最後に給料が振り込まれることは無くなった。
 しかし、習慣で給料日の17日に生活費を引き出しに行く。
 引き出す作業は、給料をもらっていたころと変わらない。同じキャッシュカードと通帳を機械に飲み込ませ暗証番号と金額を打ち込む。出てきたお金を備え付けの封筒に入れ、通帳とキャッシュカードを回収。

 通帳を見れば身銭が減っていくことは分かるのだけど、作業が現役のころと同じなので、給料袋時代の退職者と比べると、はるかに実感は薄いだろう。

 ほんの僅かだけれど、毎月息子に小遣いをくれてやる。
 銀行で引き出すときに(一部両替)のボタンを押す。すると1万円ぶんだけ千円札で出てくる。
 で、息子には千円札で小遣いを渡す。五千円札や万冊よりも分厚くなって、たくさん渡した感じになる。
「ほれ、今月分」
「どうも……」
 小遣いを渡すときの、息子との定型文のようなやりとり。

 わたしは、昭和原人なので、あっぱれ小遣いをやった気になる。

 息子がどう感じているかは……聞かないことにしている。

 ちなみに、とと姉ちゃんのモデルになった大橋鎭子さんとわたしは同じ苗字である。なんだか親類の子が初月給をもらったような気になった朝ではあった。 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・30『モノ言えば……秋の風』

2016-06-02 06:45:35 | ノベル2
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・30
『モノ言えば……秋の風』


☆ご無沙汰いたしておりました

 先月の21日から、16日ぶりの公式ブログです。ちょっと校内でもめ事があって、事実上演劇部は休部状態でした。本当は公式ブログを書くことも差しさわりがあるのですが。わたしは憲法で保障された「表現の自由」で書いてます。校内事情を書くわけですから、月曜日には、なにがおこるか分かりません。それでも、あたしは書きます。

☆自衛隊への体験入隊

 これが問題になりました。基本的にはクラブ合宿の手続きで行きました。演劇部と、その顧問で行くんやから、クラブ合宿のカテゴリーしかないと思たからです。

 そやけど、ここで足をすくわれました。

 合宿は、一学期の7月末日までに顧問が合宿計画を校長に提出し、職員会議にあげられ、そこの承認を得た上で決定になります。しかし、これは校内の内規、あるいは慣例であって、基本は学校長の許可で専決事項になります。内規は、あたしら生徒には見られませんですけど、淀先生の言葉では明文化されてはいないそうです。淀先生も、その点をついて職員会議で説明してもらいました。せやけど多勢に無勢やったようです。むろん職員会議の中身は淀先生も言うてくれはりません。演劇部の無期限休部の結論から導き出したあたしの推論です。

 たとえ内規に明文化されてなくても、長年慣習化してきてるんで、内規同然。いや、慣習内規やいう理屈やと思てます。

 法律には、実定法と慣習法があります。商法なんかで慣習法が一部あります……むつかしいですね。日の丸と君が代が長い間慣習法でした。法律のどこにも日の丸=国旗、君が代=国歌とは書いてありませんでした。多くの国民にとっては、ごく当たり前のことやったんで、あえて法律にしてなかったんです。せやけど、これを楯にとって「法律にもなってないこと守る必要はない」いう理屈で、多くの先生が長い年月国旗・国家をないがしろにするタネになってました。そやから学校では長いこと日の丸と君が代については不毛な論戦がありました。賛成派の先生は「反動」とか呼ばれたらしいです。
 そやけど、あれだけ(消極的とはいえ)日の丸、君が代に反対してた先生らが、今は、当たり前みたいに起立して歌うてはります。「信念やったら、貫けや!」いうのがあたしの感想です。大阪では3人ほど卒業式で歌えへんかった先生がいてはったそうですけど、見上げたもんやと思います。せやけど、ほんまに歌いたくないんやったら卒業式休んだらええと思うんですけど、なんや、授業の前に、言われても起立礼せえへん生徒といっしょやと思うんですけど……話が横っちょいってしまいました。

 話題を戻します。

 合宿が慣習内規や言うて、それを守らへんかったことで、演劇部を休部処分にするのは、先生ら自己矛盾してないかいうことです。国旗・国家では実定法やない言うてサボタージュして、うちらの体験入隊を内規違反いうのは矛盾してます。
 これも推測ですけど、ほんまは自衛隊への体験入隊を問題にされたんやと思います。うちの先生の中にも「憲法をまともに読んだら、自衛隊は違憲や」いう骨董品みたいな先生がいてはります。集団的自衛権が閣議決定されたころには授業で演説めいたことも言うていかはりました。
 うちらは、いま集団的自衛権の行使に向けて運動中です。文化部の賛同署名は集めました。いま部員が手分けして運動部に働きかけてます。来週には文化部長から生徒会にあげてもろて、臨時生徒総会にもっていこと思てます。
 手の内ばらして「アホか」と思う人がいてるかもしれませんけど、これも作戦です。まず外堀から埋めよです。この公式ブログはゲリラブログです。これをもって、うちらのこと処分しよいうんやったら受けて立ちます。

 ここまで決心して、ブログに書くのに二週間かかりました。正直ビビってます。せやけど表現の自由を守るためにがんばります。

☆休部期間中の稽古

 部活が禁止されたんで、淀先生に迷惑かけんために完全に自粛してます。せやけど、部活は禁止されてますけど、スマホの使用が禁止されたわけではありません。部員同士でラインで稽古してます。スマホに台詞打ち込んで、台詞の稽古だけはしてます。喋る速度で打たならあかんので、部員は、みんな親指姫になった気持ちです。
 不思議なもんで、スマホでやってると変な現実感があります。案外練習法としては新発見かもしれません。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・29『スランプです』

2016-06-01 06:52:02 | ノベル2
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・29
『生意気ですがスランプです』
   


☆どうしても入ってこないかおるという役

 いったんは完成しました『すみれの花さくころ』大女優佐藤恵さんや、先輩の坂東はるかさんに言われて、あと一歩のところがつまっていないことを気にかけて、自衛隊の体験入隊までやってきました。
 それで気が付いたのは、思っていたより遠いかおるとの距離でした。

 自衛隊の体験入隊で感じたんですが、カタチからして、全然あたしはできてへんいうことです。自衛隊の身のこなしには旧軍のものが、そのまま受け継がれているものもあります。それがあたしにはできませんでした。動画サイトで、女学生の勤労動員の様子なんかも調べました。これは、この作品に取り掛かったころにも見たんですけど。そのときは、こんなもんチョロこいと思てました。
 せやけど、稽古が進んで、自衛隊の体験入隊もやって見直してみると、全然違うんです。

 どな言うたら分かってもらえるでしょう……。

 4月の終わりごろに、学校で仲間の生徒を見ると、ああ、この子は一年、この人は三年となんとなくわかります。制服の新しい、古いもあるんですけど、発してるオーラが違うんです。ちょっと分かってもらえます? この感覚は学年が上がるほどよう分かります。つまり、高校生活を続けてるうちに分かるようになるもんなんです。

 わたしのかおるは、まだ一年生です。言い方悪いかもしれませんけど、勉強できて態度がええ子でも、やっぱり一年は一年のオーラです。以前、コンクールに出たら、地区大会優勝ぐらいはいけてるなんて生意気いいましたけど、全然自信がありません。

 坂東先輩にメールしたら、「役者は誰でも通る道。苦しめ苦しめ!」いう、ドSなメールが返ってきました。根拠のない自信が、あたしの取り柄やったんですけど、完全に自信喪失。もう逃げ出したいくらいです。

☆○○高校さんの芝居を観て。

 ご招待の案内がきたんで観に行きました。学校名も、どんな評も書いてええいわれたんですけど、やっぱり○○とさせてもらいます。
 戦争ものやいうことだけ書いときます。

 正直、頭の中でこさえた戦争やと思いました。

 全編通して真面目で悲惨なんです。あたしも戦時中のかおるという役をやるんで、調べたり、お話を聞いたりしました。言い方難しいんですけど、朝礼、訓示を受ける時、天皇陛下の言葉が出た時ぐらいは瞬間ビシっとします。
 せやけど、作業を含め日常は「ああ、お腹すいた」いう気持ちで、淡々と作業やってました。映像で残ってるようなもんは、カメラで撮ることを意識してるんで、どえらい力がこもってますけど、お年寄りに聞いたら、程よいペースでやってたようです。緊張してばっかりやったら、長時間の勤労には耐えられません。また怪我やらの事故もあります。せやから○○さんのは、高校演劇としては、そこそこのできでしたけど、似たような芝居やってると、違ういう意識が強くなりました。

 ただ、うちと違うて、臨時のスタッフ入れて10人以上でやってはるのは、羨ましくもあり、○○さんの日ごろの努力の結果やと思いました。そこは正直脱帽です。

☆しんどいクラブを見せてもらいます

 111校ある加盟校でうまいこといってるのは一握りのクラブです。大方は、うちみたいに兼業部員入れても5人以下いうとこばっかりです。そういうとこと連帯していきたいと思います。連帯てな大げさなこと言いましたけど、みんなが、それで元気で立派なクラブになるとは思てません。ただ、そいうクラブがあるいうことを、みなさんに知ってもらいたいんです。立派な演劇部ばっかりやないいうことを。小烏高校さんは、盛んにブログ出してはります。読ませてもろたら、勇気もため息も湧いてきます。世の中には、こんな演劇部もあるのかということも勉強になります。うちらは、そこからこぼれてる高校に(こんな言い方失礼かなあ)焦点をあてていきたいと思います。

☆文化祭の取り組み

 コンクールとは別のことします。『すみれ』は、ええ本ですけど、文化祭みたいなお祭り行事には向いてません。で、10分ぐらで楽しいことをやってみよ思います。いまアイデアを出し合うてるとこですけど、4人おったら、みんな意見がちゃいます。
 まあ、まとまったらご報告します。

※ このブログは、改編しない限りご自由にお使いください。出典だけ書いてもろたら嬉しいです。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする