大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・高安女子高生物語・113最終回『始業式 いつの間にかの覚悟』

2018-01-22 06:12:39 | 小説5

高安女子高生物語・113最終回
『始業式 いつの間にかの覚悟』
      


 アイドルと高校生の両立はむつかしい。

 そんなことは百も承知のつもりやった。

 バンジージャンプでは、高校生どころか、女であることも捨てた感じ。落ちる速度と谷からの上昇気流が作る合成風力で、うちの顔は、まるで崩れかけのプリン。ギャーと叫んだ口には遠慮なく空気が猛烈な勢いで入ってきて、顔全体をはためかす。中学のときに治した奥歯が銀色に輝き、喉ちんこが叫び声と風にはためいてるとこまで御開帳。鼻の穴も二倍に膨らんで見えるし、つぶった目ぇは押し上げられて、糸ぐらいの細さ。時間にして30秒もない映像を、さっそくYouTubeで流される。中には叫んで、一番不細工になった瞬間を50回もつないで流したヒマなやつもいてる。

 一応アイドルやさかい、親会社のユニオシ興行は削除依頼してくれるかと思たら、なんとユニオシ新喜劇の冒頭に大スクリーンに映し出してくださった!

 で、今日は一か月半ぶりの学校。

 予想通り、校内で顔合わす生徒のほとんどがうちの顔見ていきよる。中には遠慮なく吹き出す奴もおった。相手によって、アハハと笑うたり、恥ずかしげに俯いて見せたり。このへんの使い分けは、MNBの二か月ちょっとで覚えてしもた。

「あれ、美枝は来てへんのん?」

 空いてる席を見てゆかりに聞いた。
「うん、もうお腹が目立ってきたよってに……」
 MNBで明け暮れてた夏の間に、学校のみんなはいろいろあったみたい。そらそやろ。うちかて、こんなに変わってしもた。
 もういくつか空いてた席があったけど、体育館での始業式終わって戻ってみたら、全部の席が埋まってた。さすがにガンダムクラス。帳尻は合わせてる。でも、なんか違和感……席ごとおらんようになった奴がおった!

「新垣麻衣が、家庭事情でブラジルに帰った。話は、八月の頭には決まってたけど、みんなに気づかれるのは辛い言うて、君らには内緒やった……今頃飛行機に乗ってる時間やろ。朝はように学校の郵便受けに、こんなんが入ってた……」

 ガンダムは、一枚の色紙を黒板に掲げた。

――ありがとう――

 たった五文字の中に万感の思いが詰まってた。

 くだくだしいことはなんにも書いてない。うちやったら日本人の常套句「がんばって!」ぐらい書いたやろ。さよならだけどお別れじゃない……なんて言葉を書いたかもしれへん。鮮やかなお別れの言葉やった。

 ホームルームのあと、教室に残ってゆかりと夏の空を見てた。

 今までのうちらは、空気吸い込んだら、なんか言葉にせんともったいないいうくらいのおしゃべりやったけど、二人とも無言やった。

「サンバ……やるんやろ?」
「うん、みんなで決めたことやもん」

 言いだしべえの麻衣はおらへんけど、文化祭でやろ言うのはクラスみんなの決定や。それが筋やと思う。
 はっきりせん曇り空やったけど、西の方に微かに雲の切れ目。

 そこから夏らしい青空。

 雷さんがお腹を壊したような遠雷……夏の残りはまだまだの予感。

 予感は、すぐに現実になった。

 夜のステージが終わって家に帰ると関根先輩から手紙が来てた。

――メールではなくて、手紙にした、きちんと気持ちを伝えるために。僕は、MNBを何回か観に行った、握手会にも並んで。明日香は、ほんまにきらきらしてた。そう感じた。明日香は明日香の道を歩いていけよ。それが一番や。明日香のことは、明菜と応援してます。佐藤明日香様 関根学――

 涙がこぼれてきた……関根先輩はうちのこと思ててくれた。うちは握手会に来てくれてたことにも気ぃつけへんかった。先輩は悩みに悩んだに違いない。そんなことは、ちょっとも書いてないけど、短い文章の文字の間に痛いほど現れてる。人間の心は……言わへんとこ、書かへんとこによう現れる。麻衣も先輩も……。

 うちは返事を書こ思て止めた。決心した人には余計なことやと思たから。

「これで、ええねんな。正成のオッチャン……?」

 答えも気配もなかった……ふと、バンジージャンプのときのことが頭をよぎった。あのときに正成のオッチャンは抜けて行ってしもた。

 偶然やない、あれをきっかけに……うちにとってか、正成のオッチャンにとってかは分からへんけど、潮時やと思たんやろ。

 静かに思た。一人で頑張っていこ……ほっぺたの涙は、まだ乾かへんけど、心は潤ってる。いつの間にか覚悟ができてた……。

 高安女子高生物語 完 

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・112『惜別 それはバンジージャンプから』

2018-01-21 06:22:40 | 小説5

高安女子高生物語・112
『惜別 それはバンジージャンプから』
   


 MNB47の母体はユニオシ興行。日本で一番人使いが荒い。

 当たるとなると、半日の休みもくれへん。これでは、先日の仲間美紀みたいな子も出てくる(リスカやったけど、命に別状は無し。せやけど、休んでる間に、ゴーストライター付きで手記を書かされてる。ほんまに無駄のない会社や)
 あたしらは、まだ売り出し中なんで、来た仕事はなんでもやる……やらされる……やらせていただく。

 今日は、わざわざ新幹線とバスを乗り継いで、バンジージャンプのメッカ岡山鷲尾ハイランドにまできた。

 あたしらはAKBみたいに自分の番組持てるとこまでいってないんで、ヒルバラ(お昼のバラエティー)に10分のコーナーをもろてて、メンバーが、とっかえひっかえ、いろんなことをやらされる。

「ええー、どうしてもMNBの明日香がやりたいというので(だれも言うてません!)この岡山鷲尾ハイランドのバンジージャンプにやってきました。ここはジャンプしながら願い事を叫ぶと叶うそうです。デビューからたった2カ月、どんな願いがあるのでしょうか(決まってるやん、ゆっくり寝かせて!)でも、ここの願い事は、ジャンプするまでは口にできません。しゃべってしまうと効果が無いそうです。で、明日香にはカメラ付きの……」

 ヘルメットを被せられた。顔の前には自撮り、メットの上には、あたしの視線とシンクロさせたチビカメラ。

 ホンマは、メンバー二人が飛ぶはずで、ジャンケンに負けたカヨさんも飛ぶはずやったんやけど、リハでちびってしまうぐらいの緊張なんで、急きょチームリーダーのうちが二人分の内容=おもろさを出して飛ぶことになった。

「なんで、明日香が選ばれたか分かる?」
 MCのタムリが聞いてくる(おまえやんけ、やれ言うたん!)
「え、あ、センターだから?」
「いや、明日香だけが、自分の部屋3階にあるから」
「ええ、マンションの五階とかに住んでるのもいますよ」
「戸建てで、三階は自分一人やから。で、準備は万端?」
「うん、トイレも二回もいってきたし……たぶん大丈夫」
「よし、絶対成功する御呪いしてあげる……」
 そう言うて、タムリはあたしのすぐ横に寄ってきた……と思たら、突き飛ばされた!

 ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 そう叫んだとこまでは覚えてる。そのあと、あたしはモニターの中からも、みんなの視界からも一瞬で消えて……何かが抜けていったような気がした。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・111〔夏休み宿題幻想〕

2018-01-20 06:07:46 | 小説5

高安女子高生物語・111
〔夏休み宿題幻想〕
           


 夏休みの宿題は全部やったつもりやった。

 市川ディレクターも気ぃつこてくれてて、夏休み期間中2日は休みがとれるようにしてくれて、休憩時間なんかに、ちょっとでも宿題ができるように、自習用に会議室を解放してくれたり。うちはチームリーダーやし、休みがとられへん。休んでもチームのことが気になるよって。で、宿題は全部終わったつもりでいてた。

 ほんなら、数学のプリントに挟まって社会の宿題が挟まってるのに気ぃついた。で……慌てた。

 しゃあないよって、休みの日、収録先の放送局まで選抜メンバーに着いて行って、放送局の小会議室を借りて宿題にかかる。
「ゲ、なにこれ!?」
 うちは、宿題を読み違うてた。「戦争に関わる本を読んで感想を書け」やのうて「戦争体験者から聞き取りをして感想を書け」やった。
 戦争の本やったら山ほどあるし、これまで『蛍の墓』『レイテ戦記』『真空地帯』なんかは読んでた。せやけど戦争体験者いうのは、最低でも70代の後半……まして、ここは放送局。

 そんなん…………………………おった!

 地下駐車場のオッチャンは定年後の再任用で残ってて、見かけは70代後半や!

「残念だけど、わし終戦の年は、まだ二歳だったからな……そうだ、資料室に戦時中の記録が一杯あるよ。それ見て適当に聞いたように書けばいさ。電話しといてあげるよ」
 というわけで、資料室のお世話に……。
 室井さんいう定年前のオッチャンがいてて、モニターに何本か、候補を上げて待っててくれてはった。
「これなんか、ええと思うで。『撃墜された米兵と女学生』ちょうど明日香ちゃんの高安あたりの話や」

 モニターにお婆さんが映った……と思たら、グッと画面に吸い寄せられて、意識が飛んだ。

 気ぃついたら、信貴山の山の中。うちは夏のセーラー服にモンペ。山の中で松根油をとってる八尾中学の生徒にお弁当を持っていく途中で、道にはぐれた。
 八尾の飛行場が爆撃されてる。それが、よう見えるんで、見てるうちにはぐれたみたい。飛行場はボコボコにやられてたけど、低空飛行で機銃掃射してた米軍機が、対空機銃に当たって黒煙。と思たら……こっちに向うて落ちてきよった!

 ……操縦士は生きてた。

 飛行機は雑木林に突っ込んで壊れたけど、燃料に火ぃが点いて爆発する前に、操縦士は逃げ出してた。

 燃え盛る飛行機見てたら、後ろで気配。振り返ったら褐色の髪の毛した操縦士がピストル構えて、うちを睨んでた。
 うちの、お父ちゃんは海運会社の船長で、戦争前は外人のお客さんなんかも来てたんで、ちょっとは英語が喋れる。
『そんなとこに居たらすぐ人に見つかる。わたしといっしょに来て』
 最初は、うちにも分からんくらい早口の英語でまくしたててたけど、かなたで人の気配がすると震えだした。
『日本人、オレを殺しにくる!』
『落ち着いて。その落下傘貸して!』
 うちは、落下傘を山の下の方に投げた。
『いっしょに来て! 来てったら!』

 うちは、操縦士を千塚古墳群の方に誘導して、あんまり人が来えへん横穴の古墳に連れて行った。操縦士は肋骨を折ってるみたいで痛そうやった。

『憲兵に引き渡すのか?』
『分からない。とにかく、今はみんな気が立ってるから出ないほうがいい』
『そ、そうか……』
『あなたも気が立っている。そのピストル下ろしてもらえない』
 操縦士は、うちを見つめたままピストルを下ろしたけど、引き金には指かけたままやった。正直怖い。
『どうして助けた?』
『……人がなぶり殺しになるの見たくないから。あのままじゃ、日本人が何人か撃ち殺されたあと、あなたは竹槍でめった刺しにされる』
『……だろうな』
『でも、なんで、あんな無茶な低空飛行やったの。あれじゃ、日本の機銃だって当たるわよ』
『オレは勇敢な男なんだ!』
『……そうなんだ。あたしマリ。あなたは?』
『コワルスキー』
『ああ、ポーランド系なのね。勇敢なとこ見せたかったんだ……』

 一瞬コワルスキーの目が悲しそうになった。ポーランド系アメリカ人は、アメリカでは少し低く見られてる。これもお父ちゃんの仕事から得た知識。うちは大阪の兵隊が、日本で一番弱いと言われてることを話した「またも負けたか八連隊。それでは勲章九連隊」これは訳して理解してもらうのに三日かかった。分かった三日目にはコワルスキーは大笑いした。

『日本人にもジョ-クがあるんだな……で、日本の中でも差別があるんだ』
『ポーランド系よりはまし。占領したあとの軍政なんかは、大阪が一番』
『ポーランド系も、コツコツやらせりゃ、アメリカ一番だ!』
『で、コワルスキーはガラにもなく突っ込んできたりするから』
『もう言うなよ、マリー』

 そうやって、ちょっとずつ気持ちが通い始め、二週間後に終戦になった。それからは立場が逆転して、コワルスキーは、よく面倒を見てくれたし、何より日本人への偏見が無くなったのが嬉しかった。

 気ぃついたら、モニターはエンドマークになって、うちはマリから明日香に戻ってた。

 このリアルな追体験は、多分正成のオッサンのせい。このオッサンのことは前にも言うたけど、いずれ改めて言うことになると思います。
 で、放送局のやることに無駄はのうて、この様子は隠し撮りされて、後日バラエティーで流されてしもた。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・110〔MNB47の終戦記念日〕

2018-01-19 05:55:16 | 小説5

高安女子高生物語・110
〔MNB47の終戦記念日〕
          

 世の中100%の善意もないけど、100%のビジネスもない。

 仲間美紀のゴーストライターの桃井さんが言うた言葉は、二日ほどして実感になった。
「今日は、護国神社にいくぞ」
 市川ディレクターに言われて、最初は意味が分かへんかった。ゴコクも「五国」「五穀」なんちゅう字ぃが頭に浮かんだくらい。

 最初は靖国神社の大阪支店ぐらいに思てた。

「これには、ぜひ参加。靖国神社とは似て非なるもんだ。戦死した軍人だけじゃなく、自衛官、警察官、消防士など公務で殉職した人たちも祀られている。真摯な気持ちでお参りしてほしい」

 市川ディレクターの言葉で顔色が変わった子もおった。お父さんや御祖父さんが警察官や消防士で殉職した子がMNBで数人いてた。
 バス5台に分乗して、選抜から、ペーペーの研究生まで、100人を超えるメンバーで住之江区の護国神社を目指した。
 案の定、マスコミが待ち受けてて、護国神社は天皇さんが来はった昭和45年以来の賑わいになった。

 バスの中で、お参りの仕方はレクチャーされてた。

 鳥居の前で一礼、それから御手洗所で左手、右手の順で手を洗い、口を漱ぐ。拝殿の前で座長の嬉野クララさんを先頭に、二礼二拍一礼をビシッと決める。一斉にカメラマンの人らのシャッター音。すると、神主さんが出てきて、かしこまってお辞儀しはった。うちらも、つられてお辞儀。

「前もってお話はいただいてましたけど、こない大勢で来てくれはるとは思てしませんでした。ほんまにありがとうございます。ここのご祭神は、若くして殉じた男の人がほとんどです。こないに仰山若いMNBのお嬢さんらに来ていただいて、ご祭神の方々も喜んでくれてはると思います。よろしかったら、お歌なんかご奉納していただけるとありがたいんですけど。お願いできまっしゃろか?」
「分かりました。二曲奉納させていただきます」

 いつのまにか笠松プロディユーサーも来てて、ちょっとしたライブができる準備がされてた。

 クララさんらの選抜が『心のプラットホーム』 うちら6期で『VACATION』 で、アンコールに応えて『21C河内音頭』で締めくくる。

「この神社には戦犯も祀られてること承知で参拝したんですか!?」
 毎朝新聞のアホがステレオタイプの質問をしてきよる。クララさんが代表して答えた。
「サンフランシスコ講和会議で、戦犯という呼び方は国際的に無くなったんです。みんな『公務死』という扱いと名称になってます」
「しかし、アジアの人たちがね」
「あなたのおっしゃるアジアって、どこなんですか?」
「それは……」

 毎朝の記者は三つの国の名前をあげた。

「あたしたち、みなさんみたいに賢くないけど、アジアの国がもっとあることぐらい知ってます」
 毎朝のオッサンが食い下がろうとすると、メンバーの一人が進み出た。
「あたしの父は消防士で出動中に殉死して、ここにいるんです。そこに娘がお参りして、どこが悪いんですか!?」
 その涙声にオーディエンスから拍手が起こる。
「でもね、さっき笠松さんが玉ぐし料渡してたでしょ。あれって、MNBの収益から出てるわけ。で、君たちのファンには、こういうことには反対の人もいると思う。そこのとこどう?」
 オッサンも意地になってきよった。

「わたしから、一言」

 神主さんが出てきた。
「護国神社は、楽に運営はできてません。せやけど、うちなんかより、もっと困ってる人がいてます。震災やら災害の被災者の方々に義援金として納めさせていただきたいと思います。ありがとうございます」
 オーディエンスから「お前も寄付せえよ!」「せやせや!」などと声があがる。
「こ、これって、売名行為とかの性格強いんじゃないの!?」
 しつこいオッサンや。
「それもあります、あけすけに言えば。でも世の中100%の善意やなかったら、したらあきませんのん? 少なくとも貴方よりはピュアな気持ちでお参りさせてもらっています。以上です」

 さすが、クララさん。うちはここまでの演説はでけへん。結局毎朝のオッサンは引き下がりよった。けど、その日の毎朝新聞のサイトは「シブチン!」「アホンダラ!」なんかのレスで炎上した。
 で、うちらの夜の公演は大盛況やった。

 仲間美紀が、「人生見直しのジャーニーに出かけます、もう少しだけ時間をください」の書き込み。桃井さんと手記を書く準備に入ったんやと思う。

 これが、うちらの終戦記念日でした。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・109〔そのフレキシブル〕

2018-01-18 05:52:39 | 小説5

高安女子高生物語・109
〔そのフレキシブル〕
                       


「美紀はいけるかもしれんなあ……」

 仲間美紀ちゃんを見舞った帰り、車の中で笠松プロディユーサーが呟き、クララさんが頷いた。

 事務所に帰ると、見舞いに行ったメンバーに市川ディレクターと夏木先生も加わって小会議になった。

「美紀は、どこか吹っ切れた顔をしていた。リストカットに失敗はしたけど、自分の中の何かが吹っ切れた顔になってた。どう思う?」
「安心はしたんやと思います。自分は死なれへんいう見切りがついたんか、また続けよかいう気持ちかは分かりませんけど……」
「わたしは、美紀ちゃん自身分かってないと思いました」

 クララさんは断定的に言うた。うちは、そこまで言い切る自信は無い。そやから語尾が濁る。

「これは、持っていきようだと思うんだ。こちらの押方次第で、美紀はどちらにでも変わる」
「もう一つ勝負にでますか」
「アイドルグループで、リスカやったのは美紀が最初です。だから、それを乗り越えて続投するのも初めてになります。賭けてみる値打ちはあるかもしれませんね」
「あたしも、それがいいと思います。ここまできた六期生です。他の子たちには、まだまだ伸びしろがあります。美紀を引退させたらイメージダウンだし、みんなのモチベーションにもかなりの影響が出ます」
「そうだよな、ここまで製作費つぎ込んだんだしな……」

 笠松さんは、なにやら考えながら顎をなでた。うちは、美紀ちゃんのことより、制作面やマネジメントの方に重心のある話に、ちょっと違和感があった。で、思い切って発言した。

「大事なんは、美紀ちゃんの心やと思うんです。まだ15歳です。美紀ちゃんの心に傷が残らへんように考えるんが第一やと思います」
「その通りだよ。だけど、持っていきようによっては、美紀の心も救って、MNB47をジャンプさせることもできると思うんだ」
「手記を出しましょう!」
「手記……そんなん書けるほど、美紀ちゃんは回復してません」
「大丈夫アシスタントを付けるよ。桃井ってGRが使えると思います。東京の奴ですが、明日にでも呼びます」
「よし、その線でいってみよう。明日、夏木さん、美紀のところに行ってくれないかな。全員じゃ多いから選抜から何人か引き連れて」
「了解しました」

 あっという間に話はまとまってしもた。市川ディレクターは、さっそく桃井さんに電話。夏木先生はメンバーに話しにいった。

「桃井君、これがチームリーダーの明日香、こっちが座長の嬉野クララ。美紀が君に慣れるまで、どちらかをつかせるから、よろしく頼むよ」
「おまかせください。一人の少女の心を癒して、さらに同世代の子たちの心を掴めるような手記をものにします。お二人とも、どうぞよろしく」

 桃井さんは、新大阪から直行して、うちらと話してる。手許には美紀に関する資料がノート一冊分ぐらいあった。びっくりしたことには、美紀が今まで住んでた三軒の家の外観、間取り、近所の地図と写真まで入ってた。

「さすがは、一流のゴーストライターだな」
 市川ディレクターが方頬で笑うた。
「ゴーストライターって言わないでくださいよ、シンパシーライターです。相手の心に同化して、本人が言葉にならない思いを文字に起こす仕事です。今度の仲間美紀さんの場合はカウンセラーでもあるつもりです」
「ハハ、そうやってギャラ上げようって腹だな」
「よしてくださいよ、このお二人が変に思うじゃないですか。確かにぼくは世間でいうゴーストライターです。今のところ、そういうカテゴライズしかないからね。それから、ぼくは、これによって収入も得ている。だけど考えてね、世の中100%の善意もないけど、100%のビジネスもない。ぼくは、そのバランスはちゃんと取っているつもりだ」

 この桃井さんは竹中直人みたいな怪しげな圧があったけど、話しているうちに引き込まれる。美紀やみんなとの二か月半を、いろいろと話した。桃井さんは、ものすごく真剣に聞いてくれて、うちといっしょに驚いたり笑うたり、美紀のリスカに気づいたとき、助けた時は、自分のことみたいに涙を浮かべて、話終わったら仲間いうか、昔からの知り合いのオッチャンみたいになってしもてた。

――明日香の世界も、たいがいやのう――

 家に帰ったら、正成のオッサンが、苦笑いしながら言いよった。どうやら、うちは「乗せられてる」状況かもしれへん。
 せやけど、これで美紀が立ち直り、メンバーもうまいこといったら、それが一番ええ。
 うちも、この業界のフレキシブルに慣らされてきたみたいや……。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・108〔仲間美紀の波紋〕

2018-01-17 06:09:18 | 小説5

高安女子高生物語・108
〔仲間美紀の波紋〕
      


 カメラのランプが赤に変わると、MNB47座長の嬉野クララさんが静かに語り始めた。

「MNB47の座長嬉野クララです。今日は、みなさんにご心配、ご迷惑をおかけしたことを、まずお詫びいたします。ファンの皆さんのお引き立て、応援でMNB47はここまでにしていただきました。そして6期生は特にみなさんのご支援のおかげで『VACATION』、空前のヒットをさせていただきました。わたしたち1期生をはじめメンバー、スタッフは大変喜んでおりました。しかし、みなさんの応援、ご支援に、まだ十分なお返しをする前に、大変な事故を起こしてしまいました。6期生のメンバー仲間美紀が、過労から自損事故を入院先の病院でおこしました。幸い発見が早く、大事には至りませんでした。動画サイトや新聞、テレビを通じてご承知のこととは存じますが、仲間美紀の異変に気づき、いち早くその救助をしたのは、6期生チームリーダーの佐藤明日香でした。わたしたちは6期生はじめ、まだまだ未熟ではありますが、前を向く気持ちと、ファンのみなさんの気持ちを第一に、頭を打ちながらではありますが関西を代表するアイドルグループとして精進していく決心です。仲間美紀は、しばらくの間休養させます。このような大事を起こしてしまいましたが、MNB47は一日も無駄にせず、みなさんのお気持ちご支援に沿えるよう努力いたします。ご心配、ご迷惑をおかけしたことを、いま一度お詫びいたします」

 クララさんが頭を下げて、カメラはうちに向けられた。

「わたしは、MNB47のメンバーになって二月あまり。チームリーダーになって一か月ちょっとにしかなりません。しかし、どの世界でもリーダーになった時から十分に注意を払い、チームを引っ張っていく責任があります。仲間美紀の事故は、たまたまわたしが一番早く気が付き、対処できましたが、仲間をはじめメンバーの統率やケアに気が回らなかったのは、わたしの責任です。今後は、こういうことの無いように、いっそうの努力に努めます。これからも、MNB47、なにとぞよろしくお願いします」

 カメラがロングになり、あたしとクララさんのバストアップになり、二人そろって深々と頭を下げ、カメラのランプが消えた。

「ありがとうございました、クララさん。6期のミスにつきあわせてしもて」
「座長は、あたしよ。こうするのが当たり前。そやけど美紀ちゃん、大したことのうて、ほんまによかったね。動画に撮られてなかったら、こんなお騒ぎにならんと済んだのにね。ま、これで一区切り。前向いていこ、前向いて。な!」
「はい!」

 録画したものは、すぐに動画サイトに流されていた。これで、ちょっとは収まるやろ。せやけど、ウソが一つあった。

 美紀は……休養やのうて引退や。

 けど、それは伏せた。カッターナイフで手首切って自殺しかけ、そのことで引退いうことになったら『VACATION』そのものができんようになってしまう。プロモも二回撮った。オリコンチャートも順調。ここで止めるわけにはいかへん。

 うちとクララさん、ほんで笠松プロディユーサーで、仲間美紀の病院に向かった。ダブルスタンダードかますために……。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・107〔The Summer Vacation・10〕

2018-01-16 06:38:21 | 小説5

高安女子高生物語・107
〔The Summer Vacation・10〕
            


 結局、仲間美紀は辞めていった。

「けっきょく、あたしを引き留めてくれはるのは、明日香さん自身のためなんでしょ?」
「……せや、うちのためや。やっと軌道に乗りかけた6期、このまま仲間を減らしたら、みんなへの影響が強すぎる。うちの使命は一人も欠かさんと、きちんとメジャーにすることや」
「それで、ええんです……」
 美紀は、精一杯の笑顔を作ったかと思うと、ベッドの蒲団を頭からかぶって泣き出した。

――仲間は、ほんまに仲間やねんで――いう決め台詞は言える空気やなかった……。

「あの子は精神的にまいってる。とにかく辞めさせるのが一番。治療はそれからです」

 お医者さんの意見で、笠松プロディユーサーも、市川ディレクターも納得した。

 うちは後悔した。きれいごと言うて引き留めるよりは、四捨五入した本心でぶつかった方が仲間美紀には伝わると思たから。6期は、もうみんな家族や! 姉妹や! ほんで、うちが一番のお姉ちゃんや! そない思てた。せやけどなんにも分かってなかった。危ないのは和田亜紀と芦原るみやとばっかり思てた。リーダーやのに、うちはなんにも見えてなかった。

「まあ、一人二人抜けるのは織り込みずみだから、気にすんな明日香」

 市川ディレクターはビジネスライクに、一言でしまい。下手に慰められるよりは、気が楽やった。
 夜はステージが終わった後、ローカル局のトーク番組があった。
「美紀のことには触れんように。こっちのディレクターにも話してあるから」
 市川さんに言われた通り、うちもパーソナリティーも美紀のことは無かったみたいに、プロモロケの話やら、アホな話で盛り上がった。

 家に帰ったら、日付が変わってしもてた。メールのチェックもせんと、ざっとシャワー浴びて、そのまま寝てしもた。

 スタジオ入りには時間があるんで、美紀の病院へ行った。面会時間やなかったけど、ナースステーションに寄ったら「もう落ち着いてるからどうぞ」て言われて病室へ。

 ところが、部屋に入ったら美紀の姿が無かった。

――明日香、トイレに行け!――正成のオッサンが、うちの心の中で叫んだ。

 トイレに行くと、個室二つが閉まってた。一つはノックしたらすぐにノックが返ってきた。もう一つをノック……反応が無い。

――ここや!――

 正成のオッサンの声に体が反応した。ヒョイとジャンプして、個室の上に手を掛けると、自分でも信じられへんぐらいの身の軽さで個室の中へ。
 美紀は手首を切ってぐったりしてたけど、うちの姿を見ると暴れだした。血まみれになりながら緊急ボタンを押して、美紀のみぞおちに当て身を食らわせた。

 切って間が無かったんで、美紀は助かった。

 このことは、秘密にすることになったけど、血まみれのうちと美紀をスマホで撮ったドアホがおって、あっという間に動画サイトに投稿され、手におえんことになってしもた……。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・106〔The Summer Vacation・9〕

2018-01-15 06:16:48 | 小説5

高安女子高生物語・106
〔The Summer Vacation・9〕
                      


 時差ボケしてる間もなかった。

 ハワイのプロモロケから帰ってくると、そのまま毎朝テレビの『ヒルバラ』に出演。選抜6人が前で、あとの6期生は後ろの雛壇。
 当然トークは選抜に集中。他の子らはお飾り。

 MNBに入って2か月ちょっとやけど、差ぁが付いたなあ……とは、まだ思えへんかった。

 口先女では自信のあたしやけど、8分の間に、MCの質問受けて、プロモの話を面白おかしく話して、22人の子みんなに話振るのはでけへん相談。第一進行台本がある。関西のテレビは、「ここで突っ込む」とか「ここボケる」ぐらいのラフで、あとは成り行き任せいうとこがあるけど、『ヒルバラ』のディレクターは東京から来た人で、台本から外れることが嫌い。タイミングになると、必ずADのニイチャンのカンペで、否応なく台本通りに進行させられる。

「もっと面白できたのになあ」

 カヨさんが楽屋に戻りながらささやいた。楽屋に戻ったら局弁食べながらメールのチェック。ゆかり、美枝、麻友を始めあたしがMNBに入ってからメル友になった子ぉらに「ただいま。時差ボケの間もなくお仕事。またお話しするね!」と一斉送信。   ファン向けのSNSには「疲れた~」「ガンバ!」なんちゅう短いコメントと写メを付けて、あたりまえやけど一斉送信。
「さあ、あと10分でユニオシのスタジオに戻って夜のステージの準備。いつまで食べてんのよ。チャチャっとやってよチャチャっと!」
 チームリーダーのあたしは、いつのまにか市川ディレクターや、夏木先生の言い方、考え方が移って同じように言うようになった。みんなんも認めてくれてるし、チームもまとまってきたんで、これでええと思うてた。

 バスでスタジオに戻るわずかの間に3人もバスに酔う子がでてきた。

「ちょっと、席代わったげて! 舛添さん酔い止め!」
 女同士の気安さで、3人のサマーブラウスやらカットソーの裾から手ぇ入れてブラを緩めたげる。薬飲ませて、気ぃ逸らせるために喋りまくり。3人もなんとかリバースこともなくスタジオについた。ただ、バスの中で酔いが伝染。10人近い子らがグロッキー。

「ちょっと休ませた方がええで」

 カヨさんの一言で決心。
「一時間ひっくり返っとき。しんどい子は、薬もろてちょっとでも寝とき」
「よし、明日香。その間に打ち合わせだ」
 市川ディレクター、舛添チーフADと夏木先生ら大人3人に囲まれて、ハワイでのことを中心に反省会と今後の見通しについて話し合う。
「一番落ち込んでるのは誰だ?」
 市川ディレクターの質問は単刀直入やった。
「和田亜紀と芦原るみです」
「じゃ、カヨさんといっしょに支えてやってくれ。6期生はスタートが早かった。まだ気持ちがアイドルモードになり切れてないと思う。なんとか取りこぼさずに、VACATIONを乗り切って欲しい」
「分かりました」

 短時間やったけど、有意義やと思た。短い会話の中で、現状の確認と展望、これからの見通し。ほんで、なによりもこれから6期生全員を引っ張っていかならあかんいう責任感と期待が市川さんらと共有できたことやと思えた。
 みんなの様子を控室に見に行って、カヨさんとさくらと相談して、休憩時間を30分延ばした。

「じゃあ、6期。ハワイで一回り大きくなったところを見せるで!」
「オオ!」
 控室で円陣組んで、テンションを上げた。休憩時間を30分余計に取った分、レッスンの時間は減ったけど密度は濃かった。この時まではいけると思てた。
 うちらは、まだまだ前座やけど、MNB47始まって以来の成長株やと言われてる。負けられへん!

 30分間、VACATION、TEACHERS PETなんかのオールディーズのあと21C河内音頭。間を、うちとカヨさんのベシャリで繋いでいく。
 なんとか、アンコール一回やって、失敗もせんと終われた。

 で、楽屋で、仲間美紀が倒れた。全然ノーマークの子ぉやった。酸素吸入しても治らへんので救急車を呼んだ。

――うちは、何を見てたんやろ――

 やっと出来始めたリーダーの自信が、遠ざかる救急車のサイレンとともに消えていく……。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・105〔The Summer Vacation・8〕

2018-01-14 06:08:36 | 小説5

高安女子高生物語・105
〔The Summer Vacation・8〕
           


 ハワイロケは忙しかった。

 ワイキキビーチからダイヤモンドヘッド、アラモアナ・ショッピングセンター、ハナウマ湾、カラカウア通り、モアナルア・ガーデン、クアロア牧場、記念艦ミズーリ、と二日間かけて、撮影許可が下りるとこでは全部撮った。

 親会社のユニオシ興行のやることに無駄はありません。

 うちらはリカちゃん人形みたいに行く先々で着替えて、水着からアロハの短パン。支給された私服(?)なんかに着替え、3台のカメラで、延べ40時間分ほどの撮影。

 なんせ、曲が1950年代のアメリカンポップスの代表『VACATION』

 年寄りから若者まで、アメリカ人も日本の観光客もノリノリでノーギャラのエキストラに付き合うてくれはる。むろん、うちらが可愛いて、イケてるからやねんけど(笑)市川ディレクターと夏木インストラクターのやることはインスピレーションに溢れてて、ミズーリの前では、どこで調達してきたんか、水兵さんのセーラー服を着て『碇上げて』を即興の振り付けでやらされました。

 夜は、泊まってるホテルの要請で急きょミニライブ。これで宿泊代が三割引き。ほんまにうちのプロダクションは……!

 そんなふうな過密スケジュールで、さすがに線が切れかかったうちらに、なんと半日の自由時間。メンバー22人は4、5人ずつのグループに分かれて、ちょっとの間VACATION。ただ、ビデオカメラを持たされて、とにかく撮りまくりさせられました。

 これはアイデアでした。

 プロのカメラマンやのうて、素人のうちらが、好き好きに撮るんやさかい、いろんなビデオが撮れます。あとは編集するだけで、経費も手間もかかりません。

 ほとんどの子は、いわゆる名所を回りましたけど、うちは、ちょっと勇気出してアリゾナ記念館に行きました。

 アリゾナ記念館は、真珠湾攻撃で日本海軍がボコボコにして沈めた戦艦アリゾナの上にあります。いわゆる日本の『スネークアタック』と呼ばれる、アメリカ人には忘れられへん歴史記念建造物。日本人観光客は、あんまり行きません。
 あえて、ここを選んだのは、アメリカ人の生の反応が知りたかったから。

 入館は無料。

 沈んだままのアリゾナの真上を交差するように浮桟橋みたいな仕掛けで記念館があります。56メートルの「潰れた牛乳パック」と言われる白い箱みたいな記念館です。
「中央部はたしかにたるんでいるが、両端はしっかりと持ち上がっており、これは最初の敗北と最終的な勝利を表している。大きなテーマは平静であり、人々の心の最も奥にある悲しみの表現は、その人それぞれに感じ取るものでありデザインでは省略した」もんやそうです。
 亡くなった乗組員の銘板と、英文の説明文がありました。さぞかし日本の悪口が書いてあるんやと単語を拾うようにして読んでたら、いかついアメリカ人のオッチャンが寄ってきた。一瞬ビビったけど、オッチャンはにこやかに握手を求めてきた。
「NMB47のメンバーだね」
 きれいな日本語でした。聞くとアメリカ海軍の退役軍人さん。で、うちらが読みあぐねてた文章を日本語に訳してくれはりました
「アメリカ人には悲劇だけども、これは君たちのひいおじいさんたちが、どんなに勇敢に高い技術で戦ったかを書いてある。あの開戦は当時の情報技術では、悲劇的な行き違いだったけど、アメリカ人も日本人も死力を尽くした。そのことが書いてある。ここから何を読み取るかは、それぞれの人の心の問題だ」

 なんや、アメリカに一本取られたような気がした。

 そのあと、オッチャンは当たり前のアメリカ人に戻って、いっしょに記念撮影。Tシャツにサインしたげたらムッチャ喜んでくれはった。

――なかなか粋なオッサンや―― 

 正成のオッサンが感心した……。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・104〔The Summer Vacation・7〕

2018-01-13 06:14:01 | 小説5

高安女子高生物語・104
〔The Summer Vacation・7〕
                   
  

 恵美須町の地上に出たらえらいことになってた!

 電気屋のオッチャン、ネーチャン、オタク、メードさんらが100人近く集まっての大歓迎。
『歓迎MNB47 佐藤明日香さん!』『日本橋のアイドル白石佳代子!』なんかのノボリやボードが生い茂った夏草みたいに林立。

 近頃難波やら、心斎橋あたりに持っていかれたお客さんらに、返せ戻せの百姓一揆か、伊勢のお蔭参りの勢い。
 人波の中にカヨさん見つけて、カヨさんの家に行くのを予定変更、百姓一揆のみなさんを引き連れ、十分に日本橋のロケーションを撮りながら難波のスタジオへ。途中百姓一揆のみなさんは、自分の店の前に来たら、カメラさんを強引に店の方にパンさせる。自分らも口々にお店のPR。せやけど100人余りが、てんでに好き勝手に言うさかい、全体としてのガヤの勢いしか伝われへん。
 カヨさんが、日本橋期待のアイドルやいうことがよう分かった。

「河内音頭のフリに手を加えます」

 スタジオに着いて、レッスンの準備ができると、夏木先生が宣言した。
「ディープなファンの方々からご指摘を受けました。河内音頭は『手踊り』と呼ばれる基本形と、『マメカチ』と呼ばれるリズミカルなものがあります。MNBは横方向の動きが目立つマメカチ系でしたけど、崩します。基本的なリズムだけ踏まえておけば、あとは各自の自由です。その自由と要所要所での統一感を出すレッスンをやります。テンポは基本の1・5倍でしたが、ラストは2倍にして、一気に盛り上げます。曲もニューミュージック風にアレンジしました。明日香は曲の練習ね。一時間で仕上げて」
 MNBはいつもこの調子。その時その時のお客さんの反応や、テレビの数字などで、イケルと思えるところはどんどん変えて、イマイチなとこはあっさり切られる。

 あたしはニューバージョンになった曲と歌詞を覚える。アレンジしたとは言え、基本は河内音頭なので、体を動かさなければ曲も歌詞も勢いが出ない。この一時間のレッスンはきつかった。もう途中で取材カメラが回っていることさえ忘れてしまった。
 OKが出ると、あたしはTシャツの裾を大きくパカパカ……しすぎてブラがカメラに映ってしまった。ラッシュで気が付いて「ここカット」ってディレクターは言っていたけど。あてにはなりません。

「すげーなあ!」

 テレビのディレクターが思わず言うくらい、うちらの休憩時間はすさまじい。
「はい、休憩!」
 その声がかかったとたん、うちらの女の子らしさはスイッチ切ったみたいに無くなってしまう。スポーツドリンクをオッサンみたいにがぶ飲みする子。バスタオルでTシャツまくり上げ汗を拭きまくる子。シャワー室へ駈け込んで、ダイレクトに体を冷やす子。二台のカメラは、そんな子らを追い掛け回して大忙し。
「うち、映してくださいよ。これ『MNB47 佐藤明日香の24時間』いうタイトルなんでしょ!?」

 で、思い出したディレクターが、急きょうちにインタビュー……言われても、急には言葉が出てけえへん。うちもたいがいや。

「車で言うとF1耐久レースですね。何百キロいうスピードで走りまくって、ピットインしてるのが今ですわ。うちら体は一つやけど、エモーションは何人前もあるんです。一遍には出しません。休憩のたんびに、ドライバーが入れ替わるように、新しいエモーション注入。え……教えられたこと……ちゃいますね。この二か月間で、うちら自身で自然に会得した心と体のローテーションですね。キザに言うたら青春の完全燃焼のさせ方です」

 我ながらうまいこと言葉が出てくる。そない言うてみんなを見ると、ただバテかけてるメンバーの姿が、いかにも美少女戦士束の間の休息に見えてくる。

 午後からは、河内音頭がバージョンアップした分、バランスをとるためにVACATIONも手直し。
 ヘゲヘゲになったとこで、市川ディレクターから嬉しい知らせ。

「ユニオシから予算が付いたんで、週末は三日かけて、プロモの撮り直し。ハワイで!」

 一瞬間があって、みんなから歓声があがった……!

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・103〔The Summer Vacation・6〕

2018-01-12 06:02:18 | 小説5

高安女子高生物語・103
〔The Summer Vacation・6〕
                 


『MNB47 佐藤明日香の24時間』

 このありがたくも、あんたら、そこまでヒマなんかいな言うテレビ取材の話は、昨日ユニオシの事務所から。実質業務命令の依頼がきたもの。

 お母さんは嫌がったけども、お父さんは喜んでた。仕事柄、家に引きこもりみたいな毎日を送ってるお父さんにはええ刺激と宣伝の機会。

 いそいそと座卓の上に10冊ほどの自分の本を並べだす。低血圧のお母さんは、夕べ睡眠剤を飲んで早起きに努力の姿勢。
 うちは、夏休みは早起きの習慣がついてる(一時間でも早よ起きて、休みを満喫しよいう根性)ので、朝の6時にクルーが来た時には、すでに起きてた。

 クルーは寝起きのブチャムクレ明日香を撮りたかったらしいけど、残念でした。ハーパンにカットソーに、セミロングをポニーテールにして、お目目パッチリの迎撃態勢。さすがにお母さんも起きたけど、こっちは完全なブチャムクレ。三階で身づくろいと化粧にかかる。

「アスカちゃんは、いつも、こんなの?」
「はい。時間もったいないよって、夏休みとかは早いんです」
「あ、朝ごはん自分で作るんだ」
「はい。うちは家族三人やけど、起きる時間も朝ごはんの好みもバラバラ……え、お父さんも一緒に食べるて?」
 いつもは別々に食べてる朝ごはんをいっしょに食べる。ト-スト焼くとこまではいっしょやけど、お父さんはハム乗せてコーヒー。うちはトーストの上にスクランブルエッグにインスタントのコーンポタージュ。食後の麦茶は常温のにしといた。こないだみたいにお腹の夏祭り撮られたらかないません。
「もう30分早かったら、朝シャワー撮れましたよ」
 そう言うてから、メールのチェック。麻友だけが「お早うメール」で、美枝とゆかりは「おやすみなさい」のまんま。
「学校の友達とは、ずっとメールのやりとり?」
「はい、夏休みになってから、ずっとお仕事ばっかりで、クラスの友達とは会われへんさかい、お早うとお休みだけはやってます」
 それからFBのチェック。「お早うございます♪」と、取材クルーの写真付けて送信。
「ラジオ体操行きます?」
「アスカちゃん、ラジオ体操やってるの?」
「まさか、小学校までですけどね。たまにはええんちゃいます?」

 9時にカヨさんとこに行く約束したあるので、それまでの時間稼ぎ。

 ラジオ体操は近所の公園。

 テレビのクルーといっしょに行ったら、みんながびっくりしてた。高学年の子らは、昔いっしょにやった顔見知り。自分で言うのもなんやけど、高安が出した初めてのアイドル。自然な形でどこに行ったら、いい絵が撮れるかは承知してます。
 五年ぶりに子供らとラジオ体操。終わったらスタッフが用意してたカードにサインしたげる。ここで40分も尺とったけど流れるのは、せいぜい一分やろなあ。
 家に戻ると、お母さんがいつもの倍くらい身ぎれいにして、掃除と洗濯。「あら、やだ、いつの間に!」しらこいこと言いながらスタッフにお愛想。時間つぶしに両親のインタビュー。これもあらかたカットされるんやろなあ……親の努力がけなげに思えたころに時間。高安駅までスタッフの半分が付いてくる。
 日本橋(ニホンバシとちゃいます、ニッポンバシ)で堺筋線に乗り換えて、一駅恵美須町へ、カヨさんの家は初めてなんで、迎えに来てくれてることになってる。

 で、恵美須町の地上に出たらえらいことになってた……!

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・102〔The Summer Vacation・5〕

2018-01-11 06:00:16 | 小説5

高安女子高生物語・102
〔The Summer Vacation・5〕
           


 思わずサブイボが立ってしもた!

 長崎県のS市で、友達殺して、その死体の手首と首を切った女子高生のニュース!
「ゲー……!」
 こういうときには、かいらしい「キャー」は出てけえへん。我ながらオバハンのリアクションやと思う。
 そやけど、反応してる心は17歳。殺した子も殺された子も15歳の高校一年生。うちと一学年しか変わらへん。

「またか……」

 沸きたての麦茶に氷入れながらお父さんがポツンと言うた。それほどショックやないみたい。テレビのコメンテーターは、なんでかスマホのせいにしてしたり顔。
――やっぱ、コミニケーションの取り方が、この年齢では未熟なところにもってきて、今は、みんなスマホでしょ。分からないんでしょうね、距離の取り方。やっぱ、スマホというのは……――
「オレが高校生やったころもあった……」
 何十年前や?
「友達と喋ってたら、知らんオッサンが来て因縁つけよるんで怖なって一人で逃げた。心配になって戻ってみたら、友達は殺されてて首を切り落とされてたいうのがあったけど、結局殺して首落としたんは、そいつやった……」
 うちも、スマホに罪は無いと思う。サブイボ立ったんは、心のどこかで同じような鬼が住んでる気がしたから。

――鬼て、わいのことか?――

 正成のオッサンが言う。正成のオッサンは、ちゃう意味で鬼や。
 人を殺して首まで落とすいうのは、ある意味心理的エネルギーの爆発やと思う。みんな、このエネルギーは持ってるけど、適度に火ぃ点けて燃やしてる。それが、ちょっと火の点き方の違いで爆発してしまう。持ってるエネルギーはいっしょや。せやからサブイボが立つ。エネルギーは鬼にもなるし、神業をおこすこともある。

 神業に成れ! 

 そない思うて、お母さんがUSJのハリポタで買うてきたバタービールのジョッキに氷をしこたま入れて麦茶入れて一気飲み。そのままお風呂に行ってシャワー浴びてたら、お腹が夏祭りになってしもた!
 急いで体拭いて、タオルを頭に巻き付けて、パンツ穿くのももどかしくトイレに駆け込む。日本三大祭り(祇園祭、天神祭、神田祭)に岸和田のダンジリいっしょにしたみたいな夏祭り。
「エアコン点けっぱなしで、お腹出して寝てるからよ」
 トイレ出たとこでお母さんに怒られた。

 陀羅尼助を二人前飲んで、スタジオへ。難波からスタジオまで歩いて汗流したら、お腹も治ってきた。

「今日は、ちちんぷいぷいに選抜が出て顔売りにいきます。暫定的にリーダーは明日香。他のゲストはベテランの人ばっかりやから心配いらんけど、生やから気いつけて放送事故なんかにならんように。他のメンバーは勉強のために見学。終わったら戻ってレッスンと夜のステージ。よろしく!」
 市川ディレクターの説明で行動開始。

 番組では、やっぱり長崎の殺人事件が話題になってた。
 フッてこられたんで、朝思た心の鬼説を語る。メンバーも出演者も感心して聞いてくれた……とこまではよかった。
 調子に乗って、お腹の夏祭りの話までしてしまう。

「ほんなら、明日香さん、パンツも穿かんとトイレに……!?」

 スタジオ大爆笑。この時、うちはMNBのお祭り女王という称号をいただく、その原因の半分はこれですわ。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・101〔The Summer Vacation・4〕

2018-01-10 06:16:44 | 小説5

高安女子高生物語・101
〔The Summer Vacation・4〕
        


「河内音頭しか取り柄がないんだからね!」

 夏木先生の言うことは三日で変わってしもた。
 三日前からのうちのブログアクセスは30000を超えてしもた。事務所にも6期生の河内音頭が聞きたいという電話やメールが殺到。
 で、市川ディレクターと夏木先生らエライさんが相談して、うちら6期生をシアターのレギュラーにすることにした。

 普通、研究生は一か月目ぐらいで一人15秒ほどの自己紹介と先輩らのヨイショがある。
 それから新曲がついて、グループデビューには3か月。それまでは選抜のバックと営業と決まってる。

 それが、ステージ紹介から、わずか6日でステージデビュー。

 日本で数ある女性グループで民謡、それも日本一泥臭い河内音頭。それとオールディーズのVACATIONとの組み合わせが、レトロでありながら、とても新鮮に映ったらしい。とにかく目先の人気第一主義のユニオシ興行が見逃すわけがない。

「ええ、では6期生の選抜と、チームリーダーを発表します」

 取り柄の変更の次に、これがきた。

「緒方由香、羽室美優、山田まりや、車さくら、長橋里奈、白石佳世子、佐藤明日香。あとは決まり通りバックね。ただ人気の具合では選抜入れ替えもありだから、がんばって!」
 落胆やらガッツやら、戸惑いやらが一遍に起こった。で、それを噛みしめる間もなく、夏木先生の檄。
「VACATIONの振り付けをきちんとやります。全員バージョン、選抜バージョン、1分バージョン、4分フルバージョンやるから、3時までには覚えること。3時からは河内音頭の特訓。はい、かかります!」

 さすがは夏木先生、完全に新しい振り付け。オールディーズの匂いを残しながらも、今風の目まぐるしいまでのフォーメーションチェンジ。これはいけると思た。
 午前中で、全員バージョンと選抜バージョンをこなす。上り調子のときは覚えも早い。レッスン風景をカメラ二台で撮ってたとこを見ると、プロモも撮り直しの感触。ユニオシから予算が付いたんやろなあ。

「昼からは、短縮とフルバージョンだけだからコス着けてやります。新調した衣装が来てるから、それ着てやるよ。シャワ-浴びて下着からとっかえてね」
「あの、下着の着替えは持ってきてません」
 という子が半分以上おった。充実はしてるけど、こんなハードなレッスンになるとは思っていなかった。
「あ、そっちの連絡はいってないか。仕方ない。全員分のインナー買ってきて!」

 これは、さすがに男のアシさんと違うて、事務の女の人が買いに行った。全員のスリーサイズは登録済みなんで、サイズ表持っていったら、一発でおしまい。
 シャワーはいっぺんに十二人が限界なんで、大騒ぎ。衣装は着替えならあかんし、頭もセットのしなおし。こないだのロケバスでも、そうやったけど、裏ではうちらは女を捨ててかかってる。学校でこれだけ早よやったらガンダム喜ぶやろな。と、一瞬だけ頭にうかぶ。
 みんなスッポンポンで着替えて交代。MNBに来る子はルックスもバディーも人並み以上やけど、その人並み以上でも胸やらお尻の形が千差万別やのは新発見。

 夏木先生の言うた通り、短縮とフルバージョンの違いは二回ほどでマスター。先生の指導がええのんはもちろんやけど、うちらのモチベーションが高いいうのが大きいことやったと思う。コスは赤と白を基調とした水玉。全体のデザインはいっしょやけど、襟やポケット、タックの取り方が微妙に違うんで、自分のコスはすぐに分かる。

 三時からは、河内野菊水さんが来て、河内音頭の特訓。菊水さんは河内音頭の第一人者。ちょっと緊張したけど、うちと同じ八尾のオッチャン。フリはスタンダードを教えてくれはったけど、ステップさえ間違えへんかったら、アレンジは自由。
「明日香ちゃん、あんた上手いなあ。それだけやれたら、盆踊り、いつでもヤグラに立てるで」
 誉められてうれしいけど、河内音頭は、ほとんど、うちの中に住み着いてる楠正成のオッサンが楽しんでやっとる。700年の筋金入りの河内のオッサン。上手うて当たり前。

 本番前に、先輩の選抜さんらに挨拶。メイクとヘアーの最終チェック。全員で円陣組んで気合いを入れる。
「今日から、6期を入れて新編成。気合い入れていこな!」
「おお!!」
 座長嬉野クララさんの檄で気合いが入る。

 うちらの受け持ちは15分ほどやったけど、舞台も観客席もノリノリやった!

 そのあと、初めての握手会。うちのとこには長い行列。嬉しかった。

 そやけど、その中に関根先輩が混じってたのには気ぃつけへんかった。佐藤明日香、一世一代の不覚やった……。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・100〔The Summer Vacation・3〕

2018-01-09 06:31:52 | 小説5

高安女子高生物語・100
〔The Summer Vacation・3〕
              


「勝手に河内音頭なんか流すんじゃないわよ!」

 夏木先生が、鬼の顔になって怒った。
「すみません!」
 ワケは分からんけど、研究生は怒られたら、とりあえず謝る。この世界のイロハです。
「あんたたちはオールディーズのイメージで売り出すんだからね。一人違うイメージ出されると困んのよ!」
「はい。すいませんでした」
 そこに横から市川ディレクターが口をはさんだ。
「夏木さん。でも明日香のアクセス、3000件超えて、まだ伸びてますよ。6期生のブログじゃ最高だよ」
「うそ……ほんとだ」
 夏木先生と、市川ディレクターは20秒ほど話して結論を出した。さすがは大阪の芸能プロ。良くも悪くも頭の回転は早い。
「よし、今日一日で5000超えるようなら残してよし。超えなかったら、即刻削除。いいわね!」
「はい!」
 と、返事したあとは、カヨさんら研究生が笑うて、もう別の話題になってた。

「ええ、一昨日のバケーションの評判がいいので、急きょプロモーションビデオを撮ることになりました。ただし、製作費は安いから、大阪の無料で撮影できるところだけで撮ります。じゃ、衣装に着替えて。バスに乗り込むよ!」
「はーい!」
 で、20分後には衣装に……いうても、一昨日のありあわせのままやけど。

 まずは、近場の難波高島屋の前。バスからサッと降りたかと思うと……
「カメラ目線でもいいから、とにかくハッチャケて。フォーメーション? そんなのいいから、とにかく一本いくよ」
 マイクも何にも無し。カメラ2台。照明さん二人。音声さんは、たった一人で口パクを合わせるためだけに曲を流すだけ。夏木先生は選抜の人らの振り付け指導で残留。市川ディレクターとアシさんが二人っきり。

 10分で撮り終えると……どうやら撮影許可をとってないようで、お巡りさんから言われるまえに撤収。   

 次にあべのハルカスが見えることだけが取り柄の、親会社ユニオシ興行の屋上。ここは自前の場所なんで、リハも含めて、一時間。それからユニオシの前。日本橋、天王寺、心斎橋なんかで、ゲリラ的に数人ずつ撮影。さすが大阪の物見高いオーディエンスの人らも「なんかやっとるで!」言うて集まったころには撤収。通天閣の下でやったときは、見物のオバチャンがみんなにアメチャンくれた。

「次は大阪城や!」

 大阪城はバスの駐車場のすぐ近く。北側の極楽橋の前で、天守閣を背景二十分。毎日放送が『ちちんぷいぷい』のロケに来てたんで、無理矢理割り込んで一曲やらせてもらう。これは市川さんのアイデアと違うて、うちらと毎日放送の世紀のアドリブ。生放送に5分も割り込む。お互い低予算同士の助け合い。

 バスに戻ったら、アシさん二人がロケ弁を配ってくれた。さすがにMNBのアシさん、この移動の最中に贔屓の弁当屋さんに手配してくれたらしい。
 感心したんやけど、アシさん二人は、みんなが食べ終わるまで、打ち合わせやら、次の手配やらで走り周り。
「ロケの許可下りました」と、アシさん。
 急きょ市役所の前に行って30分。終わりの方では市長さんも出てきてノリノリ。これも互いのPR。大阪の人間のやることに無駄はありません。

 さすがに衣装が汗びちゃ。

「その衣装は、ここまで。次は海水浴!」
 で、一時間かけて二色の浜へ。その間にバスのカーテン閉めてみんなで水着に着替える。
「みんな、高画質で撮ってるから、ムダ毛の処理なんかは、忘れずに。シェーバーはここにあるから、よろしく!」
 22人の勢いはすごい。とても文章では表現できんようなありさまで、着替えたり、ムダ毛の処理したり。朝からのハイテンションで、スタッフのあらかたが男の人やいうことも気になれへん。

 二色の浜に着いたんは4時前。海水浴客が少なくなる時間帯を狙うてる。なんか思い付きで撮ってるようやけど、市川ディレクターの頭には、ちゃんとタイムテーブルがあるみたい。
 二色の浜では、フォーメーション組んで、二回撮った後は、みんなで時間いっぱい遊んだ。カメラさんは腰まで水に浸かりながら撮影……してたらしい。うちらは、そんなんも忘れてはしゃぎまくり!

 その日、家に帰ってパソコン見たら、アクセスは5000件を目出度く超えてた……(^0^)!
    

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・99〔The Summer Vacation・2〕

2018-01-08 05:54:56 | 小説5

高安女子高生物語・99
〔The Summer Vacation・2〕
        


 もぎたてレモンのバスケット!!         

 昨日の初舞台の新聞の評。
 家で一番早起きのお父さんに、朝の6時に起こされて知らされた。
 いっぺんに目が覚めてしもた。


 うちらのデビューは、昨日の夏休み初日の劇場公演の二番目やった。選抜メンバーのヒット曲とトークの最後に紹介された。
「ちょっと異例の早熟デビュー。でもどこか面白くて新鮮! 名無しの6期生初のお披露目! バケーション。どうぞ!」
 選抜センターの石黒麗奈さんの紹介で、うちらは舞台のカミシモから11人づつ出て、バケーションをかました!
 舞台のリハは一回しかでけへんかったさかい、ぶつかったり、イントロの間にフォーメーション整えたり、はっきり言うてドンクサイ。
 せやけど、歌と踊りは二日で仕上げたとは思われへんぐらいにイカシテタ!
 衣装は急にお揃いは間に合えへんので、親会社のユニオシ興行の衣装部から借りてきたオールディーズの衣装。衣装さんの工夫で、ブラウスとスカートが半々の割合で揃てる。それをいろいろ組み合わせてバリエーションを工夫。スカーフは首に、それぞれの工夫で巻いて、バラバラの中にも統一感。
 曲はオールディーズの代表曲なんで、たいていのお客さんもノリノリ。

 あっという間に一曲終わって、石黒さんのMCで全員が10秒ずつの自己アピール。

「河内音頭でオーディション通りました。八尾は高安の河内のネーチャン。佐藤明日香! 明日の香り! では明るく元気に河内音頭の一節を!」
「やられてたまるか! 一人10秒。日本橋は恵美須町。お電気娘のカヨさんこと白石佳代子で~す!」
 てな具合に続いて、ボロが出る直前の10分あまりで退場。

 一応観客席は湧いてた。せやけど、これは選抜の人らが作ってくれた空気に乗ってなんとか恥かかんで済ませられた程度やと思てた。

 ところが、新聞の評は好意的やった。ネットで、スポーツ新聞とか見てみると、三面のトップとはいかへんけど、各紙とも三段ぐらいのコラムで書いてくれてて、さっきの「もぎたてレモン」やら「異色の6期生デビュー!」とか書いてくれてた。
「そや、ブログや!」
 うちらは、研究生になった時から、ブログのソフトを渡されて毎日更新してる。MNBやったら仰山アクセスがある思てたけど、まだ顔も見たことない研究生へのアクセスは少のうて、日に300ほどやったけど、昨日は1000件を超えた。

 コメントが20件ほど着てて「明日香の河内音頭が聞いてみたい」いう書き込みが多かった。

 動画サイトで河内音頭を撮って、さっそく流そ思て、美枝、ゆかり、麻友の三人にメール。いきつけのカラオケ屋で動画を撮ってYoutubeでアップロード。ほんまは、そのままカラオケ屋で遊んでたかったけど、夏休みは午後からみっちりレッスン。
「かんにん、また今度!」

 で、スタジオに行ったら、夏木先生に怒られた……。
 

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