大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・229〔詫びに来た8月〕

2016-08-31 17:06:15 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト・229
〔詫びに来た8月〕



 車を洗っていると、後ろで気配を感じた。

 振り向くと、カットソーの上にギンガムチェックのチュニック、足許はジーンズにサンダル姿の女の子。その子がセミロングの髪を風になぶらせながら立っていた。
 目が合うと何か言おうとするんだけど、すぐに言葉を飲み込んで伏目がちになる。三度目に、こちらから聞いた。
「なんか用?」
 仕事柄、明るい印象で言ってしまうので、安心したんだろうか、はにかみながら、その子が言った。
「すみません、わたし8月なんです。お詫びにきました」
 そこまで言うとペコリと頭を下げる。なんだかファストフードの店で、バイトの子が謝ってるような初々しさがあった。え……今なんつった?
「雨ばかりで、気温も上がらずに、ご迷惑ばかりおかけしました。今日で8月も終わりなんでお詫びに……」
 少しおかしい子かと思ったが、とりあえず人間でないことが分かった。
「あ!」
 と思うと、道の真ん中に飛び出しトラックの前に飛び出し、トラックは何事も無かったように、彼女と交差して行ってしまった!

「わたし、あなた担当の8月なんで、他の人には見えないんです」
「オレの担当!?」
「はい、牧原亮介さま」

 と言うわけで、少女姿の8月を助手席に乗せて車を走らせている。

「これで、キミの気がすむわけ」
「いいえ、亮介さんが、わたしのせいでこうむった不利益を取り戻しにいくんです」
 この台詞は、車に乗せる前と、海岸通りの道に入る前にも聞いた。
「不利益こうむった人なんて、他にもいっぱいいるだろ。水害で家族亡くしたり家流されたりって」
「そういうとこには、別の担当者が行っています。ほとんど、ただひたすらお詫びし、お慰めすることしかできないんですけど……」
「オレなら、別に不利益なんかなかったぜ。冷房代かかんなくて助かったぐらいだよ」
「そう言われると辛いです。亮介さんのは、まだ取り返しがつくかもしれません。信じてください」
「ん……でも、8月の割には、もう秋ってかっこうしてるね」
「成績が悪いんで9月も担当することになりましたんで……あ、その道を左です」

 その道は旧道で、海沿いという以外取り柄のない道で、路面も悪く通る車はめったにいない。二キロほど行くと、パンクでもしたんだろうか、若い女性がサイクリング用自転車と格闘しているのが見えた。

「あ、夏美じゃないか!?」
「あ、亮介。どうして……!?」

 気づくと、8月は車を降りて、少し離れたところから、オレたちを見ていた。

 オレは、夏美と二回泳ぎにいく約束をしていた。二回とも台風と大雨で、文字通り流れてしまっていた。別の日に映画とか提案したけど却下だった。タイミングと要領が悪いんだと思っていた。
「こういう太陽の下で、泳いでみたかったんだ……その代わりに海沿いを走りまわっているわけ」
「こんなとこで、修理も大変だろ。自転車ごと乗せてやるぜ」
「ありがと。でもいいの。友達にメールしたら、ここまでサルベージに来てくれるから」
「え、ああ、そうか……」
 夏美は「友達」というところで目を伏せた。その声としぐさで「友達」が分かった。職場で夏美を密かに張り合っている秋元だ。
「じゃ、オレ行くわ……」
「すみません。いいシチュエーション作ったつもりだったんですけど……」
 8月が助手席で俯いた。
「8月のせいじゃないよ。もう一歩踏み出してもよかった……ダメ押しで断られるのが怖かったからさ。そういう男なんだよオレは。どう、もう少しドライブ付き合ってくれる?」
「ごめんなさい、そろそろ9月の用意しなきゃならないから……」
 8月は名残惜しそうにオレのことを見ながら、ゆっくりと消えていった。
 もう一言いえば、別の答えが返ってきそうな予感はした。でも、なんにも言えないオレ。

 まあ、気長に……9月になったら、よろしく。アクセルを踏み込む。暴走……のつもりが小心者、10キロしかオーバーしていない。でも、どこにいたのかパトカーが追いかけて停車を命じている……。

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高校ライトノベル・ぜっさん・15『プロムナード』

2016-08-31 14:33:01 | 小説
高校ライトノベル・ぜっさん・15
『プロムナード』


 ここは暑いだろうと思った。

 なんたって、真昼の校舎の外。中庭とグラウンドを繋ぐ通路のようなところ。
 プロムナードと書いてあったので、最初は分からなかった。
 この五月に転校してきたばかりなので、校内の施設の名前までは分からない。
「あの……プロムナードってどこですか?」
 メガちゃんに聞いた。
 メガちゃんは、担任の妻鹿先生。ほら、夏休みに瑠美奈と三人でエキストラのバイトに行ったでしょう。
 あのメガちゃん。

「え……ひょっとして、オトコ!?」

 あやうく、他の生徒に知られるところだ。
 噂とかになりたくないからメガちゃんに聞いたのに、瞬間後悔した。
 メガちゃんは、歳と教師と言う立場にありながら、こういうところが軽い。
 エキストラやってても女子高生で通るくらいチャーミングなんだけど、こういう相談をしても軽いとは思わなかった。
「場所教えてください、場所です!」
 そう言うと、恐縮な顔になり、やっと教えてくれた。

 プロムナードは、単なる連絡通路ではなかった。

 何度も通っているんだけど、生け垣の向こうが奥まっていて、奥まったところにはベンチがある。短時間なら人目につかずに話ができる。校舎の東側なので、午後には日陰になり、予想していたよりも涼しい。

 この場所を指定してきた長谷川要という男子は、この点では、文字通りクールだ。

 そう、二通目の手紙は長谷川要君だ。

 萌黄色の封筒の中は、真っ白な便箋で、こう書いてあった。

 突然の手紙で恐縮です。五月に転校してこられた時から貴女のことが気になっていました。いちどお会いして、きちんと気持ちを伝えたく思います。明日の放課後、プロムナードでお待ちしております。 敷島絶子様  長谷川要 拝

 ハネやトメに過不足のない力が籠っていて、男らしいきれいなな字だ。萌黄の封筒と言い、飾り気のない白い便箋と言い、とても印象が良い。
 これがチャラチャラした手紙なら、この場所に来ることも無かっただろう。
 先に読んだ牧野卓司の手紙の方が、印象としてはナヨっとしている。
 告白されたからと言って、軽々しく付き合うつもりはないけれど、お友だちの一人ぐらいにはなっていいと思った。

 さっきから、生け垣の向こうを何人も生徒が通り過ぎて行く。当然半分が男の子。
 カッコいい男子が通るたびにドキドキする。
 現金なもので、カッコいいのが目につくたびに、この子なら付き合っても! なんて衝動みたいなのがせきあげて来る。
 敷島絶子は自覚していたよりも、ずっとミーハーなのかもしれない……。

 思いがけず後ろから声がかかった!

 絶子……さん。


主な登場人物

 敷島絶子    日本橋高校二年生 あだ名はぜっさん
 加藤瑠美奈   日本橋高校二年生 演劇部次期部長
 牧野卓司    広島水瀬高校二年生
 藤吉大樹    クラスの男子 大樹ではなく藤吉(とうきち)と呼ばれる
 妻鹿先生    絶子たちの担任
 毒島恵子    日本橋高校二年生でメイド喫茶ホワイトピナフォーの神メイド
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高校ライトノベル・『私家版・父と暮らせば・1』

2016-08-31 07:02:35 | エッセー
高校ライトノベル
『私家版・父と暮らせば・1』
          


 まるで、連休中の小旅行の日程を決めるように簡単に決まってしまった。

「連休中は、前半と後半が晴れで、中頃は雨降るでえ」
「せやな、ほんでも二十八日は息子アコギのレッスンやしなあ……」
「あんまり先は、天気予報もあてにならんしなあ」
『それでは二十九日ぐらいでいかがでしょうか?』
 そこで、通話口を押さえた。
「姉ちゃん、大丈夫か?」
「睦夫のとこ、よかったら、それでええで」
 何事も早めを好むカミサンの顔が浮かんだ。で、送話口を解放した。
「ほんなら、それでお願いしますわ」
『何時頃お見えになりますでしょうか?』 
「え~十一時ごろ伺いますわ」
『十一時でございますね。承知いたしました。それでは四月二十九日十一時にお待ち申し上げております』

 父の納骨の日が決まってしまった。

 二年前の2011年11月の朝九時頃に姉から電話があった。
「睦夫、じいちゃん(父)心肺停止状態て、施設から電話かかってきた!」
「え、ええ……」
 五分後、再び姉からの電話。
「死亡が確認された。今から出といで」
「う、うん」
 
 一時間かけて、父の介護付き老人ホームについた。

「睦夫、こっち。警察の人と話して」
「大橋睦夫さんですね。わたしN署の○○です」
 鑑識の濃紺の作業服のお巡りさんが、警察のバッジをチラ見させながら、そこだけ非日常になった、父の部屋の前の椅子に誘った。そして、施設の人が発見してから、ここにいたるまでのいきさつを、区切るように説明してくれたが、何も耳には入らなかった。
「おっちゃん、事件性はない。ざっと検分したけど、まぶたの裏にチアノーゼもないし、ほぼ即死やわ……」
 横の刑事が、なれなれしく喋る。その時、別の刑事がやってきた。
「病院は、あきませんわ。昔なんでカルテも……こちらは?」
「ほとけさんの甥ごさんで、本部の一課の主任さんや」
 で、初めて気が付いた。なれなれしい刑事は、十数年ぶりに見る我が甥のなれの果て……いや、立派な刑事になった姿であった。
「詳しい死因は開いてみな分からへんねんけどな、ここか、ここや」
 テレビドラマそのままの呼吸で、所轄の鑑識と入れ替わり、我が甥は胸と頭を示した。
「で、おっちゃんが遺族筆頭やさかい、おっちゃんがウンて言わへんかったら、病理解剖せなあかんねん。この上メス入れたんのはカワイソウやで」
 まるで、刑事のように落ち着いて言うじゃないか……と思ったら、こいつは本物の刑事。わたしも混乱していた。
「とりあえず、じいちゃん見てくるわ……」
 そう言って、わたしは父の六畳ほどの部屋に入った。
 ありきたりだが、眠っているように穏やかな顔で父はベッドに横たわっていた。五十八年間の父との記憶が爆発した。

 その数分間の記憶は、きれいに頭からぬけている。

「おっちゃん、どないする?」
 甥が静かに問いかけてきた。
「病死……納得」
 わたしの、その言葉で全てが動き出した。所轄のお巡りさんは無線で、わたしに話した倍のテンポで連絡を取り始めた。
「一時に検死のお医者さんが来ます。そのあと死体検案書ができますんで、取りに……」
「わしが、全部やりますわ」
 と、甥が言う。
「あ、そうですね。ほんなら、そういうことで」

 あとは、よくできた芝居のようにダンドリがよかった。甥は検死を待って、タクシーで死体検案書を受け取り、市役所に死亡届を出してくれた。
 介護ヘルパー一級の姉は、かねて契約していた葬儀屋さんに電話、約束の三時にはピタリとお迎えの車がきた。
 父はシュラフに入れられ、ストレッチャーに縛着されて、施設のお年寄りが三時のお八つを食べている横を、まるで本番中の舞台裏で道具の転換をやるように正確に、静かに、見事に搬送車に載せられた。助手席に乗るとすぐに車は発車した。施設の人たちは一礼すると、すぐに建物の中に戻った。役者やったら見切れるとこでハケたらあかんやろ。と、ついダメ出ししたくなる。

 葬儀会館に着いてからは、営業のおばちゃんとの駆け引きである。

「家族葬、一本で」
 まるで、飲み屋の注文である。
「そのご予算ですと……」
 タブレットに入力して、さっと見積もりを見せる。メガネを忘れたことが悔やまれた。細かい数字がまるで見えない。ただ大きな数字で「総計」と書かれた字だけは見える。予算を二割もオーバーする。
 あちこち削って、やっと予算に収まる。ただ祭壇の細目が見えなかったことが、あとで悔やまれた。
「ぼんさん呼んだら、いくらかかりますか?」
 おばちゃんは黙ってVサインをした。二十万ということである。
「あ~ 親類が坊主なんで、そこ頼んでみますわ」

 電話をすると二十分で飛んできてくれた。わたしの従弟である。

「むっちゃん、直で言うてくれてよかったわ。こういうとこ通すと、ひどいとこは四割キックバックで持っていきよる」
 そこからは、二日興業の芝居のようであった。総議会館の人たちは、まことに丁寧と手慣れの間で葬儀を運んでくださった。

 そして葬儀の一切が終わった。

 意識したわけではないが、わたしは戯曲にしろ小説にしろ、種別ではコメディーの部類に入るものを書いている。最後でずっこけた。
「タクシーをお呼びしましょうか?」
 葬儀会館のオバチャンが言ってくれた。

 うかつに、わたしもカミサンも、息子も、通夜から、ここに至るまで自転車であった。

 息子の前カゴに父の骨箱を。カミサンの前カゴには仏具。そして、わたしの前カゴには収まりきれない祭壇のキット。見かねたオバチャンがペットボトルのお茶を四本持ってきてくれて、息子の前カゴに入れてくれた。
「これで、なんとか揺れんですみまっしゃろ」
 三日間世話になった葬儀会館の人がアクセントは別にして、むき出しの河内弁で喋ってくれた唯一のことばであった。

 重くかさばる祭壇をハンドルに結びつけ、歩くような速度で家路につきながら考えた。十年以上施設で過ごさせた父。季節が一回りするぐらいは家に置いてやろう。

 そうして、父の骨箱を目の前に、遺影を真横の壁に掛けて、一年有余の『父と暮らせば』が始まった。

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高校ライトノベル・永遠女子高生・7《瑠璃葉の場合・3》

2016-08-31 06:36:18 | 時かける少女
永遠女子高生・7
《瑠璃葉の場合・3》
        



2000年の2月29日という400年に一度しか巡ってこない日に「みんなの幸せが実現するまでは、天国へ行かない」と誓って亡くなった結(ゆい)は、永遠の女子高生となって時空を彷徨う。


『ラ・セーヌ』は竜頭蛇尾だった。

 代役の矢頭萌の印象も良く、第一週目の観客動員も、『限界のゼロ』に次いで二位だった。
 ところが、二週目に入って失速した。

 原因は二つと考えられた。

 一つは、本来主役であった楠葉が事実上芸能界から引退をせざるを得なかったこと。
 もう一つは、楠葉の事故の原因が瑠璃葉ではないかと、一部のファンが言い始めたことである。
 舞台挨拶のビデオを克明に観察したファンがいた。ファンはT大の行動心理学の助手で、専門の行動心理から、目立たないが、瑠璃葉の舞台上での動きを解析して結論を出した。

――瑠璃葉は、舞台上で、一度も主演の楠葉さんを見ていません。この無関心さは不自然で、逆に負の感情、つまり、不快感や強い反発を持っていたように思われます。第一原因者である三島純子さんは、袖のマネージャーに声をかけられ、その注意は完全に舞台袖にあり、三島さんの視線からも足許が見えていないことが分かります。で、ここで注目してください。三島さんのマネージャが声をかけた時、瑠璃葉さんは、一瞬袖を見ています。事態を正確に把握していたといえるでしょう。そして袖にハケる時に、瑠璃葉さんが三島さんの前に足を出す必然性は、人間行動学上ありえません。あるとしたら……故意に三島さんを転ばし、その前を歩いていた楠葉さんにぶつからせ、怪我をさせようとしかかんがえられません――

 匿名の動画サイトへの投稿だったが、波紋は大きく広がり、テレビのワイドショーでも取り上げられ、専門の心理学者などが「この分析は正確で、楠葉さんのファンであることを差し引いても、ほとんど信用してもいいと思います」と、分析した。

 収まらない瑠璃葉は、進んでワイドショーに出て釈明した。

「青天の霹靂です。ビデオがこの通りだとしても、わたしに、そんな意識はありませんでした」
「瑠璃葉さん。そういうのを心理学では未必の故意って、言うんですよ」
 瑠璃葉は墓穴を掘ってしまった。ワイドショーでは、ただの話題作りのために嘘発見器まで用意していたが、瑠璃葉は、それを断った。ますます疑惑は高まり、瑠璃葉は出演が決まっていた映画の役を降ろされてしまった。

「瑠璃葉さん、だめよ、こういうことしちゃ」
 楠葉が、大部屋の楽屋のゴミ箱に捨てられていた映画の台本を手にして、瑠璃葉に小声で注意した。
「あの大部屋で、あの映画に関連してたのは瑠璃葉さんだけだし、通し番号で持ち主は直ぐに分かるわ」
「あ、記憶になかった。ついよ、つい」
「その言葉もダメだわ。また未必の故意って言われるわ」
「……ふん」
 瑠璃葉は、台本をふんだくった。

 二人は、仲良く……はなかったが、いっしょに連ドラのエキストラをやっていた。互いに一からの出直しであった。ただ、新旧の違いはあるが、元アイドル同士で、先日の事件があったところなので、マスコミは直ぐに嗅ぎつけて、記事にした。
「瑠璃葉さん、道玄坂で、美味しいラーメン屋さん発見したんです!」
「原宿で、かわいいアクセサリーのお店ありますよ!」
 楠葉は、すすんで瑠璃葉と仲良くし、マスコミのウワサを打ち消して行った。

 瑠璃葉は、たまらなくなって、渋谷のラーメン屋で聞いた。

「どうして、楠葉は、こんなに優しいのよ!?」
「あたし、瑠璃葉さんのこと好きだから。これじゃ、だめ?」
「あ、あたし、楠葉に嫉妬してたんだよ」
「ありがたいことだと思ってます。それほど関心持ってもらってたってことだもの。あの件だって、あたしが舞台から落ちることまでは考えてなかったでしょ? あれは、あくまでも、あたしのドジが原因なんです」
「楠葉ちゃん……」

 瑠璃葉は大粒の涙を流した。

「ラーメン、塩味になってしまいますよ」

 この一言で、瑠璃葉の心は救われた。だが、現実は、その一歩先をいっていた……。

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タキさんの押しつけ読書感想・『ホビット』映画化に先立って

2016-08-31 06:23:02 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想・
『ホビット』映画化に先立って


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一氏が個人的に『ホビット』映画化に先立って読み散らかした読書感想を仲間内に流した物ですが、映画鑑賞にあたって、お役に立てればと、本人の了解を得て転載したものです。



 前に読み返したのが「指輪物語」の映画化前だから、かれこれ10年以上前になる。
 今回 「ホビット」が映画化されるのでまたひっぱり出して読み返した。 日本での創刊は1951年、 もう60年になる。


 確か、「指輪物語」を発表しようとしたが、あまりの長大さに出版社が二の足を踏み、プレ編を童話仕立てにして出したのが本作だったと思う。
 トールキンの創作の原動力は、イギリスに神話の無きを悲しんでの事、当時 同じ大学の教授であった C・S・ルイス(ナルニア国物語の作者)と共に書き始めた。文学者であると共に言語学者でもあったトールキンは、ストーリーを錬るのと同時に「エルフ」や「ドワーフ」の言語を作ったり、各種族の詩や歌(作曲もやった)を作ったり、本編には書き込まない「世界創世神話」をも作っていた。

 ルイスの方は、ナルニア著述にあたって そこまでアンダーラインを引かなかったようだ。アスランがルーシー達の世界では違う名前で呼ばれている(キリスト)と さっさと裏を割っている。

 さて、「ホビット~行きて帰りし物語」は早々にベストセラーとなり「指輪~」出版の背中を押す事と成るのだが、今回再読して、その世界観のまとまり方に改めて気づかされた。
 作家は、その処女作に 後に続く数々の作品の総てを詰め込んでいるものだといわれる。物書き各位におかれては異論もおありだろうが、私の読書経験からすると十分に首肯できる。ましてや「ホビット~」はトールキンの気か遠くなるような未整理草稿の上に成立している。これ以後、「指輪物語第1部~旅の仲間」に修正が入ったかどうかについては記憶が不確かなのだが、ホビットから指輪1の間は密接緻密に繋がっていて 些かの齟齬も無い。そして「指輪~」で語られる膨大な物語のエッセンスをプレ冒険談として語り尽くしている。まさにトールキンの総てがここにあると言って差し支えないと断言できるのである。
 
 トールキンは、世界を三千年を一区切りとして、三つの三千年紀を語っている。

唯一神がまず天使を生み、天使達との合唱の内に世界が創世されていく。この時、不協和音を出した天使が悪魔となり、もともと繋がっていた神界と地上を引き離す原因となる。悪魔を滅ぼさんと地上に残った天使達は後のエルフ達の先祖となる。悪魔対天使の戦で悪魔は滅ぼされるが、その一番弟子と一部眷属はしぶとく残り、この弟子が 後に魔法の指輪を作り、悪魔族対エルフ・人間連合の大戦争となる。
 この戦いもエルフ・人間側の勝利となるのだが、この時 指輪を破壊しなかった為、悪魔の弟子を完全には滅殺できず、後に禍根を残す事となる。
 
記憶が定かではないが、確か 悪魔対天使の戦いまでが第一の三千年紀で、悪魔の眷属との戦争が第二の三千年紀の二千五百年、この時 とあるホビットが指輪を偶然拾い 山深くに隠れてから五百年、この間に彼は怪物ゴラム(瀬田貞二訳ではゴクリと名付けられている)へと変身してしまう。

 世界創世から第二の大戦争までの五千五百年の話は、トールキンの死後 彼の子息が膨大な草稿を整理して「シルマリルの物語」として出版している。その後の五百年に関しては「指輪物語 第三部~王の帰還」巻末補講に触れられている。

 現在 日本語訳では、未発表草稿の内から 比較的まとまった逸話を集めた。「知られざる物語(全二巻)」が発行されている。イギリスではトールキンの遺稿総てを整理し 全十巻の本がある。知る限り未だ邦訳はされていない筈で、今回の映画化によって日本語訳が出版されるかもしれない。トールキンフリークとしては涎を垂らして待っているのだが……。

「指輪物語 第三部」で主なる登場人物達はこの世を去り、新たな三千年紀が 今度は人間の世紀として始まる…今は その第三の三千年紀の終末期と捉えられる。さて人間は無事に第四の三千年紀を迎えられるのだろうか…というのがトールキンの含みである。

 翻訳者の瀬田氏に対して何の含みも無いが、ただ、宗教的考察に欠けるきらいがある。訳自体も少々古くなっているので改訂訳を望みたい所。さらに言うと、ホビットがウサギの人格化ではないかと指摘されている。ホビット~ラビットで、至極当然な連想であるがトールキン自身それに言及してはいない(筈である) 瀬田さんは岩波文化人であって、どうしても唯物的思考のお人と思われる。
 イデオロギー・フリーでなおかつ宗教的教養のある人の訳で読みたいものである。いやなに、私が自在に英語を操れれば良いのですがね…………アハハハ。
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高校ライトノベル・ぜっさん・14『ぜっさん手紙を読む』

2016-08-30 13:17:10 | 小説
高校ライトノベル・ぜっさん・14
『ぜっさん手紙を読む』



 ジャージにTシャツ。

 これって、自宅における女子高生の定番だと思う。
 ラフな格好なので、いきおい姿勢もチョーらくちんにしている。らくちんな格好というのは人さまざまなんだと思う。
 わたしの場合は『ビルマの竪琴』に出てくる寝仏(ねぼとけ)みたいな恰好。
 右を下にして、右手で頭を支える。
 寝仏と違うのは、左足を立ててマタグラむき出しにしていること。スカートだったら絶対NGな格好。
 でもって、左手でテレビのリモコン持ったり、マンガのページめっくたり、スナックをつまんだりする。お母さんが入ってきたら立てた左足だけ、お行儀よく右足に揃える。
 要は行儀が悪い。

 その、悪い行儀のまま(あとで後悔するんだけど)例の二通の手紙を読んでいる。

 ようやく夏も盛りを過ぎたようですね。
 学校も始まってしまいました。親の時代は八月いっぱい夏休みだったとか、昔は良かったんですね、って、なんだか年寄りじみてしまいます。
 僕の学校での席は窓際です。窓は東向きなので、冷房していてもかなり暑いです。
 うちは共学校なんだけど、女子のお行儀は女子高並みです。
 女子高並みと言っても、女子高を覗いたわけじゃなく、女子たちが話しているのを聞いて「そうなんだ」と思っている次第。
 下に着ているとは言え、第二ボタンまで外すのは、ちょっといただけません。
 中には、椅子の上で胡坐をかいて、団扇で風を入れているのもいます。
「おまえら、もう女捨ててるなあ」と担任は言うけど「捨てても有り余る女子力だもん!」と意気軒昂です。
 放課後は、部活に行きます。
 本当は部活のことを書きたかったんだけど、教室の描写で終わってしまいそうです。
 今日は、演劇部の在り方というような難しいことを話し合います。
 僕は、こういう原則論と言うかベキ論というか、そういう話はするべきではないと考えます。
 楽しい芝居を創ろう! これだけでいいと思うんですけどね。

 じゃ、また手紙書きます。   
 
                  牧野卓司
 PS 男と女の間に友情は成立すると思いますか? 
 

 思わず、姿勢を正してしまった。
 さて、二通目の萌黄色の封筒……。

 これを読んで、わたしはドキっとしてしまった!



主な登場人物

 敷島絶子    日本橋高校二年生 あだ名はぜっさん
 加藤瑠美奈   日本橋高校二年生 演劇部次期部長
 牧野卓司    広島水瀬高校二年生
 藤吉大樹    クラスの男子 大樹ではなく藤吉(とうきち)と呼ばれる
 妻鹿先生    絶子たちの担任
 毒島恵子    日本橋高校二年生でメイド喫茶ホワイトピナフォーの神メイド
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高校ライトノベル・ライトノベルベスト『日中首脳怪談』

2016-08-30 06:24:07 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト『日中首脳怪談』


 日中両国民は固唾をのんでテレビに食い入るようにして、その時を待った。

 かと言って日中首脳会談ではない。日中首脳怪談である。「会」と「怪」が違う。と言ってホラー話の競い合いでもない。
 怪しげな怪談、インチキくさい会談という意味である。

 代表は、中国は孫悟空。これは党の統一見解により選ばれた代表であり、三国志や水滸伝の登場人物よりも当たりが柔らかく、周辺諸国に警戒心を与えないための思惑であり、国際的な認知度でも、国民的な人気も高く、珍しく民主派と政府の意向も一致した。

 対する日本はトトロが一番人気であったが、人語を解しないことから却下され、伝統的な桃太郎が選ばれた。

 二人の会談は、後ろに国旗もなく、笑顔もない握手から始まった。
「日本人は、中国のこと、よくパクリって言うけど、オレ何回日本にパクられたか分からないぜ」
 孫悟空はいきなり核心をついてきた。
「それは著作権を知らない言いがかりだ。『西遊記は』元の時代には成立が確認されてる。誰が、どうアレンジしようが国際的な自由だ!」
「しかしな、日本はひどすぎる。なんで玄奘三蔵が女の子なんだ。これは中国人民の心をひどく傷つける。謝罪と補償を求める!」
 悟空は赤い顔を、さらに赤くしていきまいた。そして如意棒で自分の頭を叩くと、五つの星が出てきた。怒っていると見せかけて顔面で五星紅旗を作って喝采を浴びた。視聴者のかなりが、コントローラーの赤ボタンを押した。

「そのアイデアは、手塚治虫の『ぼくの孫悟空』から始まったんだけど、むろん手塚さんは男として書いている。ただ、衣の下にスリップを着せたんで間違われた。でも、その後、これが意図的に誤解されて、西遊記のシリーズとしては夏目雅子以来大成功して、日本における中国の好感度をどれだけ上げたか分からないくらいだ」
 視聴者は青のボタンを押すものが多かった。
「とにかくパクリであることには間違いない。本来なら謝罪と補償を要求するところだが、日本のキャラを自由に使わせることで勘弁してやる」
「あ、問題のすり替えだ。西遊記なんて著作権なんて無かった時代のしろものだし、日本のキャラは立派に著作権の対象だ。そっちこそロイヤリティー払えよな!」
「あのな、動画サイトで中国がアップロードして、日本人が、どれだけ観てるか知ってんのかよ!」
「それって違法なアップロードだ!」
「日本人だって観てる!」
「だいたい、桃太郎の話ってケチくさいんだよ。食い物ったらキビ団子しか出てこねえし、鬼から奪った宝物だって、荷車にたった一杯しかねえじゃねえか」

 赤ボタンが増えた。

「西遊記なんて、もう酒池肉林よ。妖怪やっつけても、もう山ごと宝物だったりするからな。桁が違うぜ」
「日本人は、質素倹約を旨とするんだ。そっちの価値判断でものを言うな!」

 青ボタンが増えた。

 中国は、太っ腹なところを見せようと満漢全席なんか用意したが、厨房に紛れ込んだ猪八戒が酢豚にされたり、ややもめた。しかし、猪八戒の代わりなどいくらもいるので、気が付くと、新しい猪八戒や沙悟浄、ほかに牛魔王や金角、銀角、羅刹女や有象無象のキャストが出てきて、大賑わいになった。

 赤ボタンが増えた。

 桃太郎は頑張ったが、しばらくメディアに顔を出していないので、犬、猿、キジもオリジナルが集まらない。犬なんか、ようく見ると昭和の匂いがふんぷんたるビクターの犬なんかになってしまっていた。その他大勢も痩せさらばえた村人や、元気だけがいい後期高齢者のジジババに、満身創痍の鬼たち。意気が上がらないことおびただしい。

 また赤ボタンが増えた。

 桃太郎は、最後の札をきった!
「人海戦術で大勢出せばいいってもんじゃないぜ。いまパソコンで検索したら、三蔵法師がいないじゃないか!?」
「そ、それは……」
 悟空がうろたえた。赤ボタンの勢いが弱った。
「日本の文献学を見損なっちゃ困るなあ……天竺にたどり着いたとき底のない船に乗って、三蔵法師は溺死したんだ!」
「そんなカチカチ山みたいな姑息なことはしない!」
「オレは、権力闘争のあげくだとにらんだぜ。お前ら三蔵法師を粛清したな!」
「なにを、日本の修正主義者どもめが。こっちは全人代で決定しているんだ。三蔵法師は凡体を脱することができたと喜び、その後釈迦と謁見して大団円で終わるんだ!」
「白髪三千丈だ!」
「なにを、この大東亜共栄圏め!」

 視聴者たちは赤ボタン青ボタンの乱れ押しになった。

「ちょっと待て、おまえらこそ、鬼の親玉が居ないじゃないか。鬼の人数も少ない。大虐殺をやったんじゃないのか!?」
 
 すると、そこに鬼の親玉が現れた。よく見ると、額に桃のマークがほのかに見える。
「あ、あ、お前は出てくるなって!」
「桃太郎、もう本当のことを言った方がいい」
「それは……」
 桃太郎は親玉の一睨みで黙ってしまった。
「日本国民のみなさん。これから桃太郎の本質について語ります……実は、わたしは昔の桃太郎なんです。宝物を鬼ヶ島から持ち帰って、村の暮らしを一時はよくしましたが、長続きはしません。村人たちは、それを、どこにあるか分からない鬼ヶ島の鬼のせいにします。わたしは村人を納得させるために、もう一度出かけます。桃太郎? とんでもない。オッサンになってしまっては桃太郎は務まりません。鬼の親玉をやりにいくんです。代わりに新しい少年が桃太郎としてやってきます。桃太郎の話は、こうやって繋いできたんです」
「マ、マジかよ。オレもいつか鬼にならなきゃならねえのかよ!」
 桃太郎は叫びました。

 この中継を見ていた日本のゲーム屋が、アイデアをいただき『ファインファンタジー』というRPGをつくりアイテムをネット販売して大儲けをしましたとさ。


※:これはナンセンスノベルで、政治的な風刺や寓話ではありません

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高校ライトノベル・永遠女子高生・6《瑠璃葉の場合・2》

2016-08-30 06:12:40 | 時かける少女
永遠女子高生・6
《瑠璃葉の場合・2》
        


2000年の2月29日という400年に一度しか巡ってこない日に「みんなの幸せが実現するまでは、天国へ行かない」と誓って亡くなった結(ゆい)は、永遠の女子高生となって時空を彷徨う。

 楠葉は、左の手足を骨折した。

 エミの役は降りざるを得なかった。代役には同じAKRのチームAから矢頭萌が出ることになり、瑠璃葉は、引き続きエミの姉の役で残り、『ラ・セーヌ』の撮影は続けられた。

 楠葉の怪我は、不幸な事件として処理された。舞台挨拶が終わり、一同が袖に引っ込むとき、直接の原因になった三島純子という女優が袖のマネージャーに声をかけられ、足許に注意がいっていなかった。そのために、たまたま瑠璃葉の足が引っかかり、そのまま楠葉を押すように倒れ込んだ。勢いが付いたまま舞台の下に落ちた楠葉は、左半身を強打、そのまま救急車で病院に搬送された。

 楠葉の中味は結なので、真相は分かっていた。だが、なにも言わなかった。

 しかし、怪我が取り返しのつかないものであるとまでは思っていなかった。並の骨折なら三か月もあれば完治し、映画はともかくAKRには復活できるものだと、楠葉もみんなも思った。
 リハビリに時間が掛かりすぎるので、理学療法士が「もしや」と思って、精密検査が行われた。

「神経が切れている」

 医者の診断であった。普通に歩くことには目立った支障はないが、踊ることができなかった。
 歌って踊ってなんぼのAKRである。卒業せざるを得なかった。
 プロディユーサーの光ミツルは、せめてモデルかソロ歌手として残る道を考えてくれたが、それも楠葉は断った。
「わたし、歌って踊って、なんとか半人前なんです。きっぱり卒業します」
 ミツルの前で、その覚悟を伝えた。

 卒業は、皮肉にも『ラ・セーヌ』の初日であった。

 楠葉は固辞したが、AKRシアターで楠葉の卒業式が行われた。
「小学校の運動会で、こんなことがありました。100メートル競走のゴール手前で転けちゃって、それまで先頭を走っていたのが、ビリになってしまいました。膝を痛めて、そのあとのリレーも出られなくなってしまいました。わたしって、ほんとドジなんです。でも大玉転がしでは一等賞でした。
 人間一つのことがダメになっても、きっと他に開ける道があります。怪我のために、もうみんなのように踊ることもできません。歌は、自分で言うのもなんですが、うまくありません。だからAKRは卒業します。でも、人生の大玉転がしは……きっと、どこかにあります。それを信じてがんばっていきます。それから、この怪我は、楠葉のドジが原因です。誰のせいでもありません」

「そんなこと、ありません。あたしが悪いんです!」
 観客席から声が上がった。

 三島純子だった。映画の初日挨拶を終えて、シアターに直行。楠葉の言葉にいたたまれなくなったのだ。

「三島さん……違います。絶対違います。みなさんも信じて下さい。そして、また、どこかでお目に掛かります。人生の大玉転がしで。そして、これからも、みなさん、AKRの変わらぬファンでいてください。お願いします!」
 楠葉が頭を下げると、三島純子も舞台に上がり、メンバーのみんなも一緒になって涙涙の卒業式になった。

「フン、一晩だけの悲劇のヒロイン。明日になれば、世間は忘れてるわよ。大玉を転がして一等賞になるのは、あたしよ。ざまあ見ろ」
 そう毒づいて、瑠璃葉は、テレビのスイッチを切った。

 テレビの前のテーブルには、次の映画の台本が置かれていた……。

 

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タキさんの押しつけ映画評・20『今更踊る4/I am No.4』

2016-08-30 06:00:00 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『今更踊る4/I am No.4』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


これは悪友の映画評論家、滝川浩一クンが個人的に流している映画評ですが、おもしろいので、本人の了解を得て転載したものです。


☆踊る大捜査線4

 昨日、今更ながら見て来ました。本作を見て 「良かった」 「感動した」……当然いらっしゃるでしょう。全くOKです、理解できます…そういう方々、以下を読むと気分が悪くなります。ここで このメールを消去しちゃって下さい。

 さぁて、何なんやろねぇこんな映画を平気で公開出来る神経が解らん。CX系の仕事に触れる時、その昔「夢工場」ってぇイベントに行って感じた怒りがふつふつと蘇る…中途半端、ごまかし、騙し、引っ掛け……お台場のビル 爆破したろかい〓〓
 大体「踊る~シリーズ」は テレビ番組は まだ面白く見れたが劇場版はイマイチ(違う?) 3作目なんざ単なる同窓会だし、こんなもんテレビ特番で十分、それをCMで騙して強引に商売にしちまう根性が気に入らない〓
 今作も青島が倒れるシーンに銃声を重ねて予告を流した。ひでぇ騙しで 全く関係ない〓
 画面に本筋とは全く関係ない小ネタ、小芝居が入るのはいつもの事ながら、本作は過剰、しつこすぎてイラつく、早い話が邪魔。芝居だけならまだしも小道具にも仕込み多数…煩わしいにもほどがある。
 この流れの行き着く先がFinalと銘打ちながら 後1本位は作れる含みに成っている。 警察庁の長官・次官の首が飛んでシリーズの締めに成るのだが、この辺のテリングは弘兼健治の「課長 島耕作」のパクリじゃないか、脚本の君塚もCX御一統さん、さもありなん。警察庁No.1と2の首を飛ばすなら製作・亀山と監督・本広の首も飛ばせば良い…ちゅうかCXが飛べよ!
 最大譲歩して、亀山・本広は1年かそこら一切の仕事から手を引いて休めよ。脚本・君塚も含めて この三人にまともな作品は一つも無い、織田裕二はさっさとこのトリオから離れた方が良い、今後のキャリアを考えたら そうする事は絶対必要。CXも「騙してでも客を集めれば勝ち」ってぇ体質を改めなければ またいつぞやみたいに落ち込んでしまうぞ〓〓〓

☆I AM No.4
 
 wowowでやっていたので事はついでと見てしまった。
 善玉宇宙人が地球に居て、悪玉宇宙人に追い掛けられているという…まぁよう有りがちな話、例に拠ってアメリカの田舎町が舞台、なぁんも新しい仕込み無し、それでいてラストはシリーズ化したいスケベ心むきむき。まぁアメリカで大ズッコケしているし 日本でも殆ど無視されたので、よもや続編は無いとおもいますがね。プロデューサーは「トランス・フォーマー」のマイケル・ベイ、この人こんなんしかよう作らん。さすがに阿呆のガキヤンキーもそこまでは踊らんかったようでありますなぁ。ええとこテレフィーチャーならどないかなったかもしれんが、新人使ってこのストーリーでヒットさせようなんざ…なんぼ「トランス・フォーマー」を当てたからって 舐めすぎとりまんなぁ。
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高校ライトノベル・ぜっさん・13『二通の手紙』

2016-08-29 14:01:56 | 小説
高校ライトノベル・ぜっさん・13
『二通の手紙』


 ぜっさん!

 なんか気まずいことだなと思った。
 言葉の響きで気分が分かるほどに瑠美奈とは親友になった……ということなんだけど。
「かんにん、野暮用で、いっしょに帰られへん。ごめんな」
 頭が「かんにん」で、尻尾が「ごめん」。 この過剰な言い回しは、瑠美奈が、かなり困っていることの現れだ。

 多分、演劇部のこと。

「いいよいいよ、たまには一人で歩かなきゃ、道おぼえないもんね」
 昨日の天王寺公園でのことがあったので、明るく答えておく。
「ほんま、ごめん……あ、せや。ぜっさん宛てに手紙きてたよ」
 学校宛てに、わたしへの手紙?
 受け取った封筒で分かった。広島で一緒になった牧野卓司だ。
 ほら、高校演劇の全国大会で言い寄って来たミスター高校生。

「ありがとう」

 まさか廊下で読むわけにもいかず、とりあえずは通学カバンに入れておく。
「……よっこいしょっと」
 掛け声かけて通学カバンを肩にかける。今日は辞書2冊を持って帰るので、けっこうな重さなのだ。
「声だけ聞いたら、お婆ちゃんみたいやで!」
 追い越しざまに藤吉が余計なことを言う。
「ヘソ噛んで死ね!」
 江戸前で返すが、大阪ではインパクトが弱い。藤吉はヘラヘラしたまま階段を下りて行った。

「さてと……」

 いちいち掛け声がかかるのは、夏の疲れだろうか。
「あれ……」
 下足のロッカーを開けると、萌黄色(もえぎいろ)の封筒が入っている。
「え、なんで……」
 疑問が先に立つ。だってロッカーには鍵をかけてある。手紙が入っていると気持ちが悪いよ。
「それね……」
 毒島さんが寄り添ってきた。
 相変わらず学校では暗いけど、バイトが決まってからは微妙に距離が近くなってきた……ような気がする。

 敷島絶子さまへ……と、宛名があり、裏には、長谷川要とある……はせがわかなめ?

 名前もさることながら、こんなのが入っていたことが気持ち悪い。
「ロッカーの下に2ミリほどの隙間があるの……鍵かけていても、その隙間からなら入れられるわ」
「あ、そ、そうなんだ」
 妙に狼狽えてしまって、その手紙も通学カバンにしまって、そそくさと下足室を出てしまった。

 後ろで、毒島さんが、なにか言いかけたみたいなんだけど、そのまま下足室を出てしまった。

 台風の影響で思わぬ雨脚になっていた。この雨が無ければ、毒島さんの知恵を借りていたかもしれない……。



主な登場人物

 敷島絶子    日本橋高校二年生 あだ名はぜっさん
 加藤瑠美奈   日本橋高校二年生 演劇部次期部長
 牧野卓司    広島水瀬高校二年生
 藤吉大樹    クラスの男子 大樹ではなく藤吉(とうきち)と呼ばれる
 妻鹿先生    絶子たちの担任
 毒島恵子    日本橋高校二年生でメイド喫茶ホワイトピナフォーの神メイド
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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・177『男子高校生とポケティッシュ』

2016-08-29 06:26:07 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト・177
『男子高校生とポケティッシュ』
        


 ボクは街頭で配っているポケティッシュを必ず受け取る。

 正確に言うと、無視ができない。
 ポケティッシュを配っているのは駅の入り口(出口でもある)商店街の入り口や、交差点。それも人の流れを掴んだ絶妙な場所に立っている。受け取らないようにしようとすると、かなり意図的にコースを外れなければならない。なんだか、それって露骨に避けているようで「あ、避けられた」と思われるのではないかと、つい前を流れのままに通って受け取ってしまう。友達なんかは、すごく自然にスルーする。まるで、そこにティッシュを配っている人間が居ないかのように。それも、とても非人間的な行為に思えてできない。

 子どもの頃は、ポケティッシュをもらっても家に帰ってお婆ちゃんにあげると喜んでくれた。お婆ちゃんは、家のあちこちに小箱に入れたポケティッシュを置いていて、みんなが使うものだから自然に無くなり、ボクがもらってくるのと、無くなるのが同じペースだった。

 だから、なんの問題もなかった。

 二年前にお婆ちゃんが亡くなってからは、そのサイクルが狂いだした。お婆ちゃんが亡くなってからは、ボクはポケティッシュを誰にも渡さなくなった。正確には忘れてしまう。お婆ちゃんのニコニコ顔が、ボクの脳みそに「ポケティッシュを渡せ」という信号を送っていたようだ。
 ボクがもらったポケティッシュは、カバンやポケットの中でグシャグシャになり、使い物にならなくなってしまう。

「もういい加減、この習慣やめたら」
 と、お母さんは言う。
「だって……」
「だって、あんた、時々ガールズバーとかのもらってくるんだもん」
「しかたないよ、渋谷通ってりゃ、必ずいるもん」
 お婆ちゃんは、こういうことは言わなかった。

 で、この治らない習慣のために『男子高校生とポケティッシュ』なんてモッサリしたショートラノベを書かれるハメになってしまった。
 ラノベと言えば、タイトルの頭に来るのは女子高生という普通名詞か、可愛い固有名詞に決まっている。「ボク」とか「俺の」とかはあるが、むき出しの「男子高校生」というのはあり得ない。

 そんなボクが、いつものように渋谷の駅前でポケティッシュをもらったところから話が始まる。
「おまえ、またそんなものもらってんのかよ」
「なんだか、オバハンみたいでかわいいな」
「てか、それガールズバーじゃんか」
「アハハ」
 そうからかって、友達三人は、ボクの先を歩き出した。ボクは、一瞬ポケティッシュをくれた女の子に困惑した顔を向けてしまった。刹那、その子と目があってニコッと彼女が笑った……ような気がした。

 後ろで、衝撃音がした。

 振り返ると、友達三人が、バイクに跳ねられて転がっていた。ボクはスマホを取りだして、救急車を呼んだ。もしポケティッシュをもらわずに、三人といっしょに歩いていたら、運動神経の鈍いボクは、真っ先に跳ねられていただろう。

 警察の事情聴取も終わり、病院の廊下で、ボクは友達達が治療され、家の人が来るのを待っていた。

 気づくと、ズボンに血が付いていた。「あ」と思って手を見ると、左手の甲から血が流れている。事故の時、小石かバイクの小さな部品が飛んできて当たったのに気が付かなかったみたいだ。リュックからポケティッシュを出して傷を拭おうとした。慌てていたんだろう、ティッシュの袋の反対側を開けてしまい、数枚のティッシュが、中の広告といっしょに出てしまった。我ながらドンクサイ。
 取りあえず血を拭って、廊下に散らばったティッシュと広告を拾った。

――当たり――

 と、広告の裏には書いてあった。

 三人とも入院だったけど、家族の人が来たので、ボクは家にかえることにした。
 帰ると、お母さんが事情を聞くので、疲れていたけど、細かく説明した。ぞんざいな説明だと、必ずあとで山ほど繰り返し説明しなければならないので、お父さんや妹、ご近所に吹聴するには十分な情報を伝えておいた。ボクは、何事も、物事が穏やかに済む方向に気を遣う。

 部屋に入ってビックリした。

 女の子が一人ベッドに腰掛けていた。
「お帰りなさい」
 百年の付き合いのような気楽さで、その子が言った。
「ただいま……て、君は?」
「当たりって、書いてあったでしょ?」
「え、ああ、うん……」
「あたし、当たりの賞品」
「え……」
「長年ポケティッシュを大事にしていただいてありがとう。ささやかなお礼です」
 そう言うと、彼女は服を脱ぎだした。
「ちょ、ちょっと」
「大丈夫、部屋の外にには聞こえないようになってるわ。時間も止まってるし、気にしなくていいのよ」
 そう言いながら、その子は、ほとんど裸になって、ベッドに潜り込んだ。
「あ……そういうの」
「ダメなの……?」
「あ、ごめん……」
「フフ、君ってかわいい……いい人なんだね」
「どうも……」
「じゃ、三択にしましょう。一、一晩限りの恋人。当然Hつき。二、一年限定のオトモダチ。ときどきいっしょに遊びにいくの。三、取りあえず、一生の知り合い。さあ、選んで」

 こういうときは、ボクは、一番消極的なものを選ぶ。

「じゃ、取りあえず知り合いってことで……」
「わかったわ」
 そういうと、脱いだ服をベッドの中で器用に着て、部屋を出て行った。

「じゃ、またね」
 それが最後の言葉だった。

 明くる日、電車の中で気分の悪くなった女子高生を助けた……というか、気分が良くなるまで付き合った。
 それがきっかけで、ボクは彼女と付き合い始め、五年後には結婚することになった。

 誓いの言葉を交わし、エンゲージリングをはめてやって気が付いた。

「ね、一生の知り合いよ。なにもかも知り尽くそうね」と、彼女が言った……。

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高校ライトノベル・永遠女子高生・5《瑠璃葉の場合・1》

2016-08-29 06:19:18 | 時かける少女
永遠女子高生・5
《瑠璃葉の場合・1》
       


2000年の2月29日という400年に一度しか巡ってこない日に「みんなの幸せが実現するまでは、天国へ行かない」と誓って亡くなった結(ゆい)は、永遠の女子高生となって時空を彷徨う。


 久々のスポットライトは眩しすぎた。

 目の前が一瞬ホワイトアウトし、舞台も観客席も見えなかった。
 しかし、わき起こる拍手で、自分は、まだアイドルなんじゃないかと、一瞬錯覚した。
 錯覚は、直ぐに覚めた。拍手の対象が微妙に違う。

 意地を張るんじゃなかった。後悔したが、後の祭りだ。

 2001年から二年間大ヒットした『ラ・セーヌ』の実写版の制作発表に呼ばれ、瑠璃葉は大先輩のつもりでいた。だから、舞台挨拶は実写版リメークの主役秋園楠葉(あきぞのくずは)といっしょにという条件を出した。
 そして、舞台に出る寸前に、ごく自然に楠葉の前に行き、先頭を切って舞台に出た。

 観客の拍手は、瑠璃葉のすぐ後ろに控えめに現れた楠葉に対するものだった。屈辱感が増しただけだ。

 瑠璃葉は、高三の秋に新作アニメ『ラ・セーヌ』の声優のオーディションに応募して、あまたのプロを押しのけて主役ロゼットの役を射止めた。
『ラ・セーヌ』は、19世紀のパリが舞台で、ムーランルージュの踊り子たちが時代に翻弄されながらもたくましく生きていくという『ベルばら』の再来と言われたほど流行ったアニメだった。

 それが十三年の後、時代を現代に置き換え、主人公も日本から来た留学生が、アルバイトからスターになっていくストーリーになっている。
 その主役が、AKR48から抜擢された秋園楠葉である。まだ17歳で、瑠璃葉の半分ほどにしかならない、現役の女子高生でもあった。これが結(ゆい)の新しい姿でもあった。

 楠葉は、半分結の意識で、往年のアイドル声優であった瑠璃葉に、もう一度自身を取り戻してもらって、一流の俳優になってもらいたいと願っていた。
 だからプロディユーサーに頼んで、瑠璃葉にも役を付けてもらった。多少の無理はあったが楠葉の姉の役で、楠葉が演ずる主人公のエミの姉という設定で、最初は妹のエミが留学を捨てて役者になることに反対するが、最後は、その情熱と才能に気づき、応援する側に回るというものであった。

 MCに続いて、楠葉のスピーチが始まった。楠葉がマイクを持っただけで歓声があがる。

「こんにちは、みなさん。正直楠葉はビビッています。研究生からチームRになって半年。総選挙でも47番目だったわたしに、こんな大きなチャンスを頂いて、ほんと足が震えてます」
 可愛いよー! 大丈夫! 観客席から声援と拍手があがる。
「ありがとうございます。えと、この『ラ・セーヌ』は、瑠璃葉さんが声優をされて、一世風靡した作品で、『ベルばら』の再来とまで言われた名作です。今度設定は変わりますが、前作。そして、前作の主役でいらっしゃった瑠璃葉さんの名を汚さないよう頑張りますので、よろしくお願いします。あ、それから瑠璃葉さんには、今回特別出演していただくことになっています。どの役かは内緒ですけど、みなさん、どうぞ楽しみになさってください。では、瑠璃葉さん、どうぞ」

 楠葉は、瑠璃葉にマイクを渡した。拍手はきたが楠葉ほどではない。
 なにか二分ほど話したが、瑠璃葉は、その間も観客の注目の大半が楠葉に向いているのがいたたまれなかった。

 プロディユーサー、監督の話が続き、全員の挨拶が終わって舞台袖に引き上げるとき、自分の前を歩いた助演女優に敵意を覚えた。そして体をよけるフリをして、その女優に足をかけた。
 女優は「ア」っと声を上げて、前を歩く楠葉に倒れかかり、楠葉は、はずみで舞台から転げ落ちた。

 会場は騒然とし、瑠璃葉も心配顔をつくろったが、胸にはどす黒い快感が湧いていた……。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・19『アウトレイジ・ビヨンド』

2016-08-29 06:05:30 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『アウトレイジ・ビヨンド』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


 これは、悪友の映画評論家滝川浩一が、身内仲間に個人的に送っている映画評ですが、もったいないので本人の了承を得てアップロードしたものです。


 なんだ 馬鹿やろう! 今時のヤクザが こんな単純な訳ゃねえだろが。
 
 それに いきなり出てくる外国人フィクサーってな何なんだよぉ。大友(たけし)がなんぼか自由に動ける言い訳じゃねぇか。片岡(小日向)が知らねえってのはおかしいじゃねぇか。大体が中途半端なんだ。
 何さらしとんじゃ ボケィ!
 脚本も演出も たけしが一人でやっとるんじゃ、こんなもんで上等やろがい! それより、関西の会が「花菱会」っちゅう名前なんはどないやねん! アチャコかっちゅうんじゃ ボケィ!……。
 
 と言う、まぁ、お話でござりました。役者さんは気持ち良さそうに、実にノビノビと演ってはります。特に西田敏行なんてなアドリブ連発、一番気持ちよさそうに演ってはります。
 ある意味、どうしようもない閉塞状況にある日本のガス抜きを狙ったギャグ映画とも言えそうですが、残念ながら半歩足らずです。
 ギャグとリアルのギリギリラインを狙ったんでしょうが、結局 前作と同じように役者の力で助けられてはいるものの設定が甘すぎて、ストーリーテリングもご都合主義。
 バンバン殺される割には陰惨なイメージにならないのだが、もう少し説得力が欲しい。ここまで見え見えで警察が動かないはずが無い。アイデアとしては面白い(但、使い古しやけどね)、後は発展のさせかたでもっと面白くなるはず…少々残念、原案たけしで脚本は切り離した方が絶対良かった。
 ただ、今回 大友の悲しみが表現されており、前作に比べてこの点は評価出来る。
 結局、何をどう足掻こうともヤクザの泥沼から抜けられない大友の姿を描けなければ本作の意味は無い訳で、さて それをリアルバイオレンスに仕立てたとのたまうが…それこそ悲しいかな コメディアンたけしの魂はどこかで笑いに繋げてしまう。
 問題はたけし自身にその自覚が無い事なんだと思う。それにしても、石原(加瀬亮)の処刑シーンには大笑いしそうになった。最高のブラックギャグでした。
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高校ライトノベル・ぜっさん・12『当然凹む』

2016-08-28 13:28:01 | 小説
高校ライトノベル・ぜっさん・12
『当然凹む』



 大阪に来て三か月ちょっと。

 転校してきたその日に瑠美奈って親友ができたこともあって、大阪には疎い。
 だって、そうでしょ、基本的には家と学校の往復だし、出かけるときは瑠美奈といっしょ。
 出かけるというよりは、連れてもらっている感じ。
 だから大阪のことには慣れない。特に地理的にはね。

 地理的どころか、エスカレーターでも失敗する。

 うっかり右側を空けて、後ろから咳払いされることがある。
 なんで大阪は左側を空けるんだ! 最初はそう思った。瑠美奈には言えないけど、大阪は野蛮だ! と思った。
 ま、理屈じゃないんだけどね。横断歩道のフライング、これはいただけない。梅田の横断歩道で実感、なんたって信号の横に「青信号まで〇秒ってシグナル」が出る。それが出ているのに大勢がフライングする。この時の憤りがあるので、エスカレーターの左空けにも腹が立つ。
「ハハハ、ほんでも左側空けるのが、世界的には標準やねんで!」
「うそだ!」
 瑠美奈に言われて検索したら、その通りだったので、余計にムカつくのよ!

 で、たまには一人で出かけて大阪に慣れようと努力をするのだ!

 お気に入りのワンピにストローハットで家を出る。
 目指すは天王寺公園。ゆっくり季節の花を愛でることにした。
 エスカレーターも、ちゃんと左側を空け、無事に四天王寺前夕陽ヶ丘の駅に着く。
 ほんとうは、もう一駅向こうの天王寺なんだけど、ある程度歩いておかなきゃ距離感や方向感覚が成長しない。

 えと……こっちだな。

 地下鉄の階段を上がって、一度だけスマホで確認。
 地下鉄の出口を間違えると、うっかり南北を間違えて反対側に行ってしまう。
 方角を見定めて歩きはじめると、押しボタン式の横断歩道でお婆さんがオロオロしている。押しボタン式というのは青の時間が短い。きっと渡るきっかけを失ってテンパってるんだ!
「お婆さん、おぶさって!」
 ちょうど信号が青になったので、わたしはしゃがんでオンブするようにお婆さんを促した。
「行きますよーーーーー!」
 四車線を跨いでいる横断歩道を、お婆さんをおんぶして、小走りで渡る。
 信号待ちしている車の運ちゃんが、微笑ましそうに笑っているのがこそばゆい。

 美少女がお婆さんを助ける爽やかな夏の一コマ! うん、絵になるだろうなあ……なんて妄想してしまう。

「はい、お婆ちゃん、渡れましたよ!」
 吹き出す汗も清々しい。
「あのなあ……さっき苦労して、あっちに渡ったとこやねんがな」
「え、えーーー!?」
「もー、きょうびの若いもんは」
 で、押しボタンを押して、次の青で渡りなおした。

 当然凹む。

「ごめん、遅くなっちゃった!」
 天王寺公園の前で待っていた瑠美奈に謝る。
「どないしたんよ?」
「いや、実はね……」
 遅れた理由を言うと、笑い声がステレオになった。
 いっしょに待ちをきっていた藤吉が瑠美奈といっしょになって笑っている。
「もーー、なによ二人して!」
「あのお婆ちゃんは有名人でな……」

 この界隈では有名なお婆ちゃんで、若い者をおちょくっては喜んでいるお滝婆さんということだった。

 もーーーーーーー! 大阪って嫌いだーーーーーーーー!
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高校ライトノベル・ライトノベルベスト[そんな気はしていたんだ]

2016-08-28 06:43:38 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
[そんな気はしていたんだ]



 そんな気はしていたんだ。

 あたしはマリコ・ナディア重藤。苗字は普通だけど、名前が変だ。マリコとナディアと二人分ある。
 保育所で物心ついたころには、そんな気がしていた。あたしには日本人以外の血が混じっている。どうやらハーフらしいことも薄々感じていた。写真を撮ると、あたしだけ目のあたりが陰になることが多かった。他の子より顔の凹凸が激しい。でも、けして不気味とかじゃなくて、可愛いと自分でも思っていた。笑顔が得意だった。集合写真なんか、あたしの笑顔が一番引き立つ。
 でも、べつに男の子にもてたいとかチヤホヤしてもらいたいという気持ちからじゃない。

 ほどよくみんなに馴染むため。

 子供の世界はきびしい。ちょっとみんなから外れるとハミられる。薄ぼんやりしてると、いじめにあう。ほどほどのところで……そう、月に一回ぐらいね。みんなから「マリコかわいいね」と言われるぐらいでいい。

 小学校に入ると、きっと「マリコは何人とのハーフなの?」と聞かれる。思い切ってお父さんに聞いた。
「生んだお母さんはユーゴスラビアだ。でも、育ててくれた本当のお母さんは芳子お母さんだ。二度とは言わない。マリコも二度と聞くんじゃない。とくにお母さんのまえではな」
 いつものお父さんらしくなく、目を合わせないで冷たく言った。それだけでよかった。
「どことどこのハーフ?」と聞かれても、これで答えられる。そしてユーゴスラビアなんてたいていの子が知らない。
 だから「そうなんだ」で、たいがい始末がつく。

 ところが、中学1年生の時にスカウトされてしまった。成長するにしたがって、自分でももてあますくらいに可愛くなってしまった。

 そんな気がしていたから、外出するときはメガネをかけて、モッサリした格好で出かけるように気を付けていた。でも本屋さんで本を探しているときにメガネ外して上の棚を見ていた。この姿勢って、顔の造作が一番露わになる。そこをNOZOMIプロのスカウトにひっかかった。心は完全に日本人なので、きっぱり断ることが出来なくて、三か月ほどで、アイドルの端くれになってしまった。

 学校で、妬み半分のシカトが始まった。そんな気はしていたんだけど、そういう状況を避けられないのが日本人らしく、ほとんど困りながら安堵する自分がいた。お父さんと芳子お母さんに近いと思うと嬉しくなる自分もいた。
 結局、スケジュール的にもきびしいので、アイドルや芸能人の子たちが通う中高一貫校に転校した。ここは気が楽だった。あたしみたいなハーフの子もいるし、恋愛御法度の学校なんで、薄いつきあいで済むようになった。

「社長、お顔の色が悪いですよ」
 そう言うのが精一杯だった。
「そんなことないよ、マリコは心配性だな」
 ゴルフ焼けした顔でダクショの社長は笑顔で返してきた。でも、そんな気がしたんだ。社長の命は長くないって……。

 社長は二週間後、頭の線が切れて亡くなった。

 どうやら、あたしには人に無い能力があるらしいと気づいた。あれから三人ほど人が死ぬことが予知できた。でも人には言わない。
「あなた、とんでもない力もってるわよ」
 テレビ局の廊下で二輪明弘さんに言われた。
「人には言わないわ。ぐちゃぐちゃにされるからね。あたしの目を見て……うん、大丈夫。悪いことには使わない顔してる」

 十八歳の時、密かに恋をした。二十二歳というちょっと遅咲きの俳優Kに。でも、そんなことはおくびにも出さなかった。ときどきドラマやバラエティーでいっしょになる。それだけでよかった。
 ある番組でKといっしょになった。それも隣同士。もう収録のことなんか半分とんでしまった。すかたんな答えをして、皮肉にも受けたりした。話題があたしに振られたときもドキドキして、スカタン。放送作家は、かなりあたしのことを詳しく調べていて「お母さんの出身はユーゴスラビアのどこそこだね」とMCに言わせ、オーディエンスがどよめいたが、あたしはKが死ぬことを予感して、それどころではなかった。
 あたしは、死因まで分かるようになっていた。Kは白血病だった。

 気が付いたら、ホテルのベッドで朝を迎えていた。成り行きはおぼえていなかったが、うろたえる自分と安心する自分がいた。
 Kは、あたしの横で裸の胸を安らかに上下させながら眠っていた。
 Kの首筋にはあたしの歯形が付いていて、あたしの口の中には、微かに血の香りがした。
 直観で、Kはこれで命が助かったことを確信した。

 そして、収録でMCが言った言葉を思い出していた。

「マリコの生みの母は、トランシルバニアの人だね」

 そんな気はしていたんだけど……。

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