大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・音に聞く高師浜のあだ波は・19『大晦日の奇跡』

2016-12-31 11:58:16 | 小説4
高校ライトノベル
 音に聞く高師浜のあだ波は・19
『大晦日の奇跡』
         高師浜駅

 なんやハイビジョンと変わらへんな~。

 4Kテレビを観たお祖母ちゃんの感想。
 この感想は二段階になってます。
 第一段は「J電器です、お買い上げの商品をお届けにまいりました!」とJ電器からテレビが届いて、梱包を解いた時。
「4Kいうから、なんかゴージャスなもんや思てたけど、そっけないもんやなあ」
 お祖母ちゃんは、4Kテレビいうのは、大昔に白黒テレビがカラーになった時のような大革命で、家具調テレビみたいなゴージャスな外観を想像してたみたい。
「ま、とりあえず設置しよか」
 お祖母ちゃんと二人で、前のテレビとは反対側に据え付ける。前の場所やと「また壊しそう」というお祖母ちゃんの意見やから。
「昔は電気屋さんが据え付けてくれたもんやけどなあ……」
 コードをどこに付けたらええのか分からんようになったお祖母ちゃんがプータレる。据え付けは別料金なので節約したこともあるんやけど、ちょっとは頭使たほうがボケ防止になる……とは言いません。
 あーでもないこーでもないとお祖母ちゃんとやるのも悪いもんやない。
「さあ、ほんなら点けますよ~(#^^#)」

 一時間の奮闘のあと、いよいよ4Kテレビの点灯式!

「うわ~~~~~(*^▽^*)」

 というのが、わたしの素直な感動。

「ウーーーーン」

 お祖母ちゃんは腕を組んだ。第二の感想が始まる。

「なんやご不満?」
「なんか、ハイビジョンと変わらへんなあ」
「え、そんなことないでしょ? クッキリ鮮やかで、ぜんぜんちゃうやんか」
「そうか……」
 お祖母ちゃんは、ソファーの上で正座して、テレビの画面を睨み始めた。
 その眉間の皴を見てピンときた。
「お祖母ちゃん、眼鏡が合うてないんとちゃう?」
「あ、え?」
 お祖母ちゃんは、ちょっと狼狽えた。わたしは部屋から英和辞典を持ってきてお祖母ちゃんに見せた。
「お祖母ちゃん、読める?」
「バカにせんとき、お祖母ちゃんは英文科出てる……ウ、見えへん」
「やっぱり老眼が進んでるねんで」
「せ、せやなあ」
 並の年寄りやったら落ち込むとこやねんけど、お祖母ちゃんは傾向と対策の人やから、さっそくゲンチャに乗って眼鏡をあつらえに行った。

「やあー、えらいベッピンさんになってたんやなーーーー!」

 眼鏡を替えての第一声がこれ。
「さっきまで見てた美保は、脳内変換してた美保の姿やってんなあー、こうやってマジマジ見ると、ええ女に成長してんねんやんか!」
 作家の性かもしれへんけど、感動をねつ造、あるは針小棒大に言うのんは身内だけにしときや、お祖母ちゃん。

 夜は大晦日恒例の紅白歌合戦の鑑賞。

 お祖母ちゃんは、早めにお風呂に入って、薩摩白波をドーンとテーブルに置いき、ソフアーの上で大あぐら。
 お祖母ちゃんが私にだけ見せる正体。ちなみに、この姿をスマホで撮ったら、マジで怒られたことがある。

「やっぱりスマップの出えへん紅白は面白ないなあ……」

 この意見には満腔の同意です。
 スマップは物心ついた時からのファン、わたしにとって、スマップは紅白のカナメ。
「もう寝よかなあ……」
 テレビはツケッパで、雑誌に目を落としていたお祖母ちゃんが、しょーもなさそうに言う。
 それを受けて、あたしがリモコンに手を伸ばした時に奇跡が起こった。

――それでは、いよいよ白組のトリであります! お待たせいたしました、急きょ出場が決まりましたスマップのみなさんです!――

「「う、うそ!?」」

 孫と婆さんが同時に驚きました。

 スマップの『世界に一つだけの花』に、我が家の大晦日は心豊かに満ちてきました……。
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高校ライトノベル・ライトノベルベスト・〔オレの高校の丑寅の壁〕

2016-12-31 07:59:51 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
〔オレの高校の丑寅の壁〕



 三学期のこの時期に教頭が替わった。

 生徒にとっては、どーでもいいことなんだけど、わざわざ授業を短縮して全校集会を開いて着任の紹介があった。
 教頭なんて、授業もなし、ほとんど職員室の奥に座りっきりで、集会なんかでも校長の話はよく聞くので、顔ぐらいは覚えているが、教頭になると、普段接することもないので、前の教頭も憶えていない。
 紹介された新教頭は、なんか印象の薄いオッサンで、一時間目の終わりには名前を、二時間目の終わりには顔を忘れてしまった。

 ま、それはどうでもいい。ただオレが集会をサボったりしなくて、二時間後には新教頭の名前も顔も忘れてしまうという、並の注意力と生活態度の高校生であるという例えにいいと思ったから。

 大事な話は、ここから。

 オレは、身長:170、体重:65、ルックス:中の上(人に言わせると潜水艦=ナミの下) 成績:下の上。コミニケーションってか人間関係は上手くない(したがって先生たちからは愛想の悪い奴と思われてる)むろん女の子にはモテない。モテようとも思わない。
 意地じゃない。長い人生、きっかけはいくらでもあると思ってるし、他の奴らみたいに発情期でもない。そして、なによりもオレには薄い関係だけど彼女がいる。篠田樟葉っていう。
 樟葉は一年の時、空から降ってきた……てのは誇張だけど、ほんとに降ってきた。

 ゴールデンウィーク明けの昼休み、食堂で飯食って教室に戻ろうとして、渡り廊下の下を歩いていた。すると明り取りのアクリル板をぶち破って樟葉が落ちてきた。

「イッテー……!」「ごめんね……」

 これが樟葉との出会い。樟葉は渡り廊下でボールをドリブルしながら歩いていたら、安全柵を超えてボールが明り取りの中に落ちてしまい、柵を乗り越えてボールを取ろうとしたら、アクリル板が割れて落ちてきたという話だった。運がいい良いのか悪いのか、真下を歩いていたオレの真上に落ちてきた。

 それから、オレと樟葉の薄くて濃い付き合いが始まった。

 オレは、態度はまあまあだけど、成績はすこぶる悪かった。一年の二学期で4教科15単位も不足していて、学年でも数少ない留年候補者だった。そんなオレに、救いの手を指し延ばしてくれたのが樟葉。試験の前の日に解答付きの問題用紙をくれた。
「とにかく、答えだけ覚えるの。いいわね」
 書式はちがったけど、試験はそっくりな問題が出て、なんとか合格。
「おかげで助かった!」
「じゃ、なんかおごって!」
「うん、都合のいいときに」
 で、六月に公開されたばかりの『アナ雪』を観に行った。樟葉は大感激で泣き笑いしていた。
「この映画、ぜったいアカデミー取るわよ!」
 樟葉の予言は当たった。まあ、観ればたいていの人間は、そう思うけど。樟葉の感動ぶりに感動してしまった。

 そのあとは、廊下で会ったら挨拶する程度だった。

 夏休み明けに発見してしまった。樟葉が校庭の東北の壁の壊れたところから入ってくるのを。
「あ、バレちゃった!?」
「あんなとこに、通り道あったんだ……」
 オレには、その程度の事だったけど、樟葉は「絶対人に言っちゃダメ、お願いだから!」と真剣だった。

 で、あくる日樟葉の方から、デートに誘ってきた。

 二線級のテーマパークで、たっぷり遊んだあと、樟葉はとんでもないことを言った。
「あなた、まだ童貞でしょ?」
「そ、そんなことに答えられるか!」
「ウフフ」

 気づいたら、その種のホテルに居た。気軽に誘ったわりには樟葉も初めてだった。今まで普通の女の子だと思っていたのが、この日から愛おしい存在になった。でも、特段親密さが増したわけでもなく、廊下や食堂で会ったら挨拶する程度の仲に戻った。

 新教頭が来てから三日目に、その工事が始まった。

「へー、こんなとこに抜け穴があったんだ」
 ベテランの生活指導の先生さえ知らなかった。むろん他の先生も生徒も。知っているのはオレと樟葉と新教頭だけ。
「ここは丑寅、裏鬼門ですからね」
 と、教頭は事務長に説明していた。
 工事は、たった一日で終わってしまった。異変に気付いたのは三日後だった。

 樟葉と会わなくなってしまったのだ。不思議に思って樟葉の教室に行ってみた。
「なあ、篠田樟葉って休んでんの?」
 オレは、一年のとき同級だったモンタに聞いた。
「シノダクズハ……そんなやつ居ねえぞ」
「え……」

 それ以来樟葉には合っていない。学校でも見かけない。

 ダブってもいい、樟葉に会いたい……そう思いながら、学年末試験を受けている。

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高校ライトノベル・クリーチャー瑠衣・10『今日から新学年の新学期』

2016-12-31 07:48:22 | ノベル2
クリーチャー瑠衣・10
『今日から新学年の新学期』



 Creature:[名]1創造されたもの,(神の)被造物.2 生命のあるもの< /font>


 朝目覚めたら、ミューがいなかった。いつも寝ていた菓子箱のベッドの中はもぬけの殻。

 小さな乃木坂学院の制服がたたんで置いてあった。1/6の制服を手に取ると、その下にはアナ雪キャラがプリントされた小さなブラとパンツも畳まれて置いてあった。
――悪いけど、人形は借りていく。なんたって体が動かないんで人形の体を使うしかないの。制服は置いておきます。人形が返せたら、また着せてやって。瑠衣がクリーチャーで、かなりの力があることは分かったと思う。あとの力は自分で見つけて磨きをかけてね。それから、クリーチャーは瑠衣一人じゃないから。気を付けて――
 そんな残留思念が置手紙のように残っていた。

「行ってきまーす!」

 今日は希望野高校の新学年の新学期だ。学校はあんまり好きじゃないけど、この改まった空気は好きだ。
 ミューが言い残していったクリーチャーは瑠衣の味方ではないだろう。そして生まれながらのクリーチャーではなく、急きょ送られてきたものに違いない。

 通学途中は気を付けた。

 見知らぬ誰がクリーチャーか分からないからだ。クリーチャーたちは瑠衣が覚醒したことを知って、瑠衣を抹殺しにきた敵だ。ミューの思念で、そこまでは分かる。だが敵の実態や、姿かたちは分からない。ミューにそこまで言い残す余裕が無かったのか、まだ理解する能力が瑠衣に無いかのどちらかだ。

 意外にも学校までは無事だった。

 学校に入って違和感があった。具体的には分からないが、何かがいつもと違う。
 新しいクラスの一覧が下足室の前に貼りだしてあった。

「瑠衣、今年は同じクラスだぞ!」

 野球部の杉本が上履きに履き替え、体育館に向かっていた。あいつが瑠衣に気があることは知っていた。
――同じクラスになったんだ、少しは仲良くしてやるか――
 そう思ったとき、杉本が笑顔でボールを投げてきた。まるで青春ドラマの始まりだ。

 笑顔でボールを受け止めようとした瞬間、ボールは鋭利な刃物に変わっていた。瑠衣の右の手の平の上半分が切れて吹っ飛んだ。
 あいつ、クリーチャー!?
 気づいた時には、左腕の付け根から先が無くなっていた。前のクラスから一緒だった、スーちゃんが、ちょっとした悪戯をしたような笑顔で、血の滴る瑠衣の左腕を持って立っている。

――ここにいちゃ、殺される!――

 そう思った瑠衣は、無意識に英語の準備室にテレポした。両手の欠損したところは直っていた。
――あたしも大したもんだ――
 そう思った時、高坂先生が机の向こうから顔を出した。
「あら、もう始業式始まるわよ」
 高坂先生は、岸本との傷も癒えたのだろうか明るい笑顔で、出口の方を指さした。反射で出口の方を見ると、音もなく、後ろの背の高さ以上もある本棚が倒れてきて、瑠衣は下敷きになってしまった。
 胸が痛い。肋骨が何本か折れたみたいだ。
「さあ、あなたを生贄にして新学年が始まるのよ……」

 高坂先生は、準備室の隅に立てかけてあった槍を手に取り、本棚の下敷きになった、瑠衣を串刺しにしようとした。
「高坂先生までクリーチャー!?」
 思った瞬間、鼻先まで伸びてきた槍は消え、高坂先生の体がねじ切れた。血しぶきと内蔵をまき散らしながら、高坂先生の上半身が目の前に落ちてきた。

 学校にはバリアーが張られているようで、外に出ることはできなかった。

 三十分ほどで、学校中のクリーチャーを片付けた。最初の十分で、瑠衣は二度死にかけたが、そのたびに回復し、あとの二十分は一方的にクリーチャーを殺していき、学校で生きているのは瑠衣一人になってしまった。

 どうやら、瑠衣の本格的な戦いが始まったようだった……。


 クリーチャー瑠衣  第一期 完
 

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高校ライトノベル・新釈ピュグマリオン・28『咲月をその気にさせる!』

2016-12-31 07:42:20 | 小説5
新釈ピュグマリオン・28
『咲月をその気にさせる!』



 ピュグマリオンは、ギリシア神話に登場するキプロス島の王。現実の女性に失望していたピュグマリオンは、あるとき自ら理想の女性を彫刻。そうして彼は自分の彫刻に恋をするようになった。そして彼は食事を共にしたり話しかけたりするようになり、それが人間になることを願う。その像から離れないようになり、次第に衰弱していく姿を見かねたアプロディーテがその想いを容れ、像に命を与え、ピュグマリオンはそれを妻に迎えた。



 花曇りの藤棚の下は、程よく二人の少女の世界を包み込んでいた。 


「人間やって失敗した後悔より、やらずに諦めた後悔の方が大きいっていうよ」
「でも、わたしは、もうやって失敗したんだよ」
「一回の失敗では完全な失敗とは言えないわよ」
「そっかなあ……」
「そうだよ、咲月ちゃんは、現に二回目の二年生をやってるじゃない!」
「それは……」
「別だって言いたいんだろうけど、あたしから見ればいっしょだな」
「どういうこと?」
「うーん、いっしょっていうよりは、中途半端。落第までして学校続けようっていうのは、負けたくないっていう気持ちからでしょ。でも、それだけじゃ誰も評価しないし、咲月ちゃんだって、我慢してるだけじゃない。でしょ?」

 降り出した小雨を避けるように、一匹のチョウチョが藤棚に入ってきた。咲月は、そのチョウチョを目の端に入れながら考えた。

「今は我慢するときだと思うの。少し雨宿りしたら、新しい晴れ間も見えてくるんじゃなかな……って」
「卒業まで雨降りだったら、ずっと雨宿りだよ。少々の雨だったら、飛び出してみたほうがいいんじゃないかな」
「……どうだろ」

 その時、もう一匹のチョウチョが藤棚の中に入ってきた。

「AKPのオーディションて、春と秋にあるんだよね」
 栞は無遠慮に、咲月の顔を覗き込んで言った。
「うん、春と秋……」
「もう一回やってみようよ。このままじゃ、みんな咲月ちゃんのこと、意地を張った負け犬としか見ないよ。言い方悪いけど落ちるとこまで落ちたんだ。もっかいやって失敗しても同じ。リトライしたらチャンスはある……買わない宝くじは、絶対に当たらないから」
「ハハ、わたしの合格率って宝くじ並?」
「そう。でも栞って宝くじ売り場で買った宝くじは、よく当たるんだよ。さあ、買いな!」

 もう栞の顔は、咲月の鼻先まで近づいていた。

「分かった分かった。それ以上近づいたらキスされそうだ!」
「あ、ああ、ごめん咲月ちゃん」
「その代り、条件が一個」
「なに、まさか、あたしにいっしょに受けろっていうんじゃないでしょうね?」
「それはないよ。栞ちゃんの目的は、もっと別なところにありそうだから」
「じゃ……?」
「わたしのこと、ちゃん付けで呼ばないでくれる。わたしも栞って呼ぶから」
「あ、なんだ。あたし、ちゃん付けで呼んでたんだ。オーシ、咲月まかしとけ!」

 こうして、栞は咲月にコペルニクス的な変心をさせることに成功した。

 二匹のチョウチョは、まだ小雨の中、藤棚から外へ飛び立っていった……。

 

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『白洲正子「西行」』

2016-12-31 07:14:52 | 映画評
タキさんの押しつけ読書感想
『白洲正子「西行」』
       


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している読書感想ですが、もったいないので転載しました。


ねがはくは 花の下にて 春死なん そのきさらぎの 望月のころ

 まだ暫く正子ちゃん(白州正子)が続きそうです。正子ちゃんにしてみれば軽い読み物のおつもりでございましょうが、こちらにしてみれば毎回 我が古典教養の無さかげんを思い知らされるばかりです。

 よく大学の学部を「文学部」かと聞かれるのですが、「経営学部」です!

 何でかっちゅうと、当時は この古典ってのが限りなく「うっとおしかった」からです。バチ当たりでございました。ゴメンナサイ。
 さて、「西行」って人は数多くの伝説に包まれた謎の人であります。それだけに断片的にはその業績(?)を知ってはいても西行本人の人生は知られていないんだと思います。

 源平盛衰の時期の生き証人でもあり、後半生 旅の中にあった人ですから伝奇ミステリー作家にしてみれば格好の登場人物です。
「孔雀王伝奇」では、高野山修行中に死体をつなぎ合わせて反魂法を使って子供を作り、その子供が鬼のように育ち 義経と出会って弁慶に成る……なんてな扱い。雨月物語(だったよな)で崇徳院の大怨霊(日本一の大怨霊)と会ったりしていますから“反魂法”なんかお手のもの?
 数多の歌が残っており、中には作法無視して吐き出したようなものが有るため 西行研究者の間でも解釈が分かれる歌が有ります。この激動の時代、旅に明け暮れた人ですから、その行動に政治的意図を読み取ろうとする研究者もいらっしゃいます。確かに坊主というのは、ある種身分が保証されるため行動の自由が担保され、古今 縦横家として生きたり、間者的役割をはたした人が大勢います。
 しかし、西行に関して こういう見方は間違っていると正子さんはおっしゃっています。彼女は西行の足跡を時代を追って自ら歩き、彼の歌を 詠まれたその場所で味わってみる事を通して西行の人生に迫っていく。
 元北面の武士が出家したわけですが、一途な修行者ではなく“数奇”の心を生涯無くす事は無かった。 待賢門院(たいけんもんいん)への恋情、崇徳院への憐情、桜へのこだわり、すべて個人的な“あはれ”“いとをし”の情に突き動かされての旅であった事が その歌を通して明らかにされて行く。
 事あるごとに「仏門帰依」を勧めてはいますが仏教にとらわれるのではなく、その精神は自由です。
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高校ライトノベル・あたしのあした・61『そこで、あたしはアルバイト』

2016-12-30 12:12:30 | 小説
あたしのあした・61
『そこで、あたしはアルバイト』



 どうして落ち着いているんだろう?

 不思議なくらいショックがやってこない。


 電車に飛び込もうと思ったぐらい――実際飛び込んでしまったんだけど――引きこもりの不登校で、イジメに負けそうになっていた。
 そんなあたしが、奇跡的に復活して学校に通っている。通っているだけじゃなくて、イジメていた子たちとも仲良くなって、口幅ったいけど、その子たちを真っ当な女子高生にした。智満子やネッチは、今や親友だ。
 これは、あたしの力じゃない。あたしの中に住んだ風間寛一という人格がやったこと。
 その風間さんが亡くなったんだから、あたしは元の木阿弥……にはなっていない。

 不思議。

 でも、考えてもらちが明かないことなので平常心。

 うちのお母さんは、とりたてて正月の準備をしない。
 年越しそばもお節も生協の出来あい。普段からやっていれば必要ないということで大掃除じみたこともやらない。
 あたしの中には――やったほうがいい――という気持ちが芽生えているんだけど、お母さんを尊重しているんでやらない。

 そこで、あたしはアルバイト。

 短期集中で稼ぎのいいものということで、雲母神社の巫女さんになるのだ!
 
「ごめんね、ほんとうに助かった」
 鳥居の前で待ち合わせしたベッキーが恐縮する。
「そんなことないわよ、思いもかけないバイト紹介してもらって、あたしこそラッキー」
「そう言ってもらえると、気が休まる~(>#o#<)!」
 実はノンコやノエもいっしょにやることになっていたんだけど、二人とも家の都合でアウトになり、ベッキーは途方に暮れていたのだ。
 巫女さんのバイトは、立ち居振る舞いや着物のさばき方がキチンとできなくてはいけないので、事前に二日かけて練習をやる。普通の女子高生じゃできないから、ベッキーはネッチに電話した。ネッチの家はお茶屋のかたわら茶道教室をやっているので、着物も立ち居振る舞いも問題ない。でも、年末年始、商店街のお店は忙しくてバイトなんかやっていられない。そこで、お鉢が回って来たというわけだ。
 あたしは『雲母姫フェスタ』で腰元の役をやるので、着物も立ち居振る舞いも講習を受けていてバッチリなのだ。

 雲母神社の御祭神は大国主命(オオクニヌシノミコト)と天宇受賣命(アメノウズメノミコト)だ。

 大国主命は商売の神さま、天宇受賣命は芸事の神さま。
 一通りの説明と巫女装束の試着をしたあと、二柱の神さまに御挨拶。
 拝殿の奥で神主さんのお祓いを受け、お作法通りの仁礼二拍手一礼。

 最後の一礼をして顔を上げると……景色が変わっていた。

 十二畳ほどの拝殿は、まるで江戸城の大広間くらいに広がってしまっていて、神主さんや、他の巫女さんたちの姿も消えてしまっていた。
 はるか正面の上段の間には祭壇があって、祭壇の向こうの壁は素通しで本殿の社が見えている。
 本殿の扉がピカっと光ったかと思うと、左横に人の気配を感じた。
「この度は、お世話になりますね」
 首をひねると、天宇受賣命が立膝で座っていた。着物は巫女風なんだけど天女の羽衣みたいなのを羽織っていて、巫女装束もシースルーの生地なので、女のあたしでもドキドキする。
「恵子さんは、雲母姫さんの専属なんだけど、この度は、ちょっと無理をお願いしています」
「あの……バイトは、あたしの方から進んで……」
「筋道をつけたのは、わたしです。大国主命さんは、伝える必要はないとおっしゃるんですけど、雲母さんへの礼儀の上からも、恵子さんのお力からも、きちんと御挨拶しておかなければと思いましたの」
「は、はあ?」
 筋を通してくださっているんだろうということは分かるんだけど、『お世話』の中身が分からない。

「それは……言わぬが花……ということで、うふ」

 可愛く笑ったと思ったら天宇受賣命さんの姿は消えてしまい、同時に拝殿の大広間は元の十二畳に戻ってしまった。
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高校ライトノベル・ライトノベルベスト・『美男高校他球防衛部』

2016-12-30 07:14:44 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
『美男高校他球防衛部』
        


「おい、あいつら全員野球部に入れちまえ!」

 監督の伊藤が、唾を飛ばしながらキャプテンの野々村に叫んだ。
 監督は実力の割に声がでかいので、メガホンを通した声は場内放送のマイクも拾って、市民野球場全体に響き渡った。

 なんといっても、3対0で迎えた9回裏の攻撃で、臨時で入れた他球防衛部の連中が出撃。あっと言う間にノーアウト満塁でホームランをかっ飛ばしたのである。まさに奇跡の救世主である。こんな連中を放っておくのはもったいない。

「だめです監督、あいつらとの契約は、この試合限りっすから。明日は、あつらサッカー部の助っ人です」

 そう、花田充(みつる)を始めとする五人の他球防衛部は、名前の通りピンチに陥った球技部のお助けをやるという変わったクラブなのだ。
 ボールを使うクラブなら、野球から卓球部まで、なんでも来いの助っ人クラブだった。創部は去年だが、もう九クラブを敗北の縁から救っている。
 変わったところでは壊滅寸前の演劇部まで救った。演劇部は文化部の玉であるとして臨時部員となり、去年のコンクールでは関東大会まで進出。惜しくも選外であったが、その審査に不服を申し立て、信じられないことに東京地方裁判所で係争中である。

「花田、これで間に合うか……?」

 副部長の角野が、こっそり聞いた。
「野球はポピュラーな分得点が低い、なんとかしなくちゃ、時間がない……」
「演劇部で全国大会までいけたら、ギリギリなんとかなったんだが」
「あたしたちだって、がんばったのよ」
 女子部の瑠璃は聞き逃さなかった。美男高校と異名をとる宇宙(そら)学園高校の中でも紅一点の美人と言っていい。今日の試合は長い髪をショ-トボブにして、胸をサラシでつぶして参加していた。
「裁判の結果を待っているわけにはいかない。なにか手を考えなくちゃな」
「しかし、悔しいわよ。だれが観たって、あたしたちの芝居がピカイチだったのに」
「あそこまで、演劇の審査がいい加減だとは計算外だったな」
 角野が瑠璃に同調すると、他の部員たちも大きく頷いた。
「だいたい、大阪から来た審査員が……」
「言うな、過ぎたことだ。夏までにもう50ポイントは稼がなきゃ、あれは……救えない」

 他球防衛部のメンバーは眉間にしわを寄せながら駅への道を急いだ。で、パチンコ屋の前で瑠璃の足が停まった。

「どうした瑠璃?」
「うちの生徒がパチンコしてる」
「みのがしてやれよ、制服でやってるわけじゃないんだから」
「ううん、待ってて!」
 瑠璃は一人制服を着ていない(なんたって、男ということで、今日の野球部を助けてやった)のでズカズカと店に入り、負けのこんでいる三年の滝川の横に座った。で、あっという間にフィーバーになった。やっと滝川が気が付いた。
「おまえ……他球防衛部の瑠璃、おまえパチンコの腕ハンパないぞ……」
「玉半分あげるから、質問に答えて」
「な、なんだよ……」
 滝川は、緊張と感心で汗が流れてきた。

「パチンコ、部活にしない?」

 宇宙高校は、美男が多く真面目で通っていたが、裏に回れば滝川みたいなのもいる。仲間が4人いると聞いて、その場で宇宙高校パチンコ部にしてしまった。むろん非合法部活である。ただ大事なのは青春を賭けた部活であるという自覚であった。

 あくる日曜のサッカー部の試合を勝利で終わらせると、全員私服に着替えて、夜の9時まで掛けて合計50台のパチンコ台を終了させてしまった。

 希少部活(日本でただ一つ)のポイントは高かった。一気に30ポイントを稼いだ。

「これで、オレたちの星も、地球も救われる……」

 花田が感無量で呟いた。

 他球防衛部は、11万光年先のミランダ星から地球に送り込まれていた。地球もミランダも気候変化や自然破壊に晒されていた。
 宇宙の神が言った。
「地球に宇宙高校を作った。そこの球技部を助ければ、そなたたちの誠意と認め、破滅寸前の両方の星を救ってやろう。ただ地球の方が寿命が短い。一年で成し遂げなければ、この話はチャラじゃ」

 他球防衛部は、みごと使命を果たし、夏休みには母星に帰って行った。ただ瑠璃だけが、しばらく地球に残った。
 去年の演劇部の審査の裁判結果を見届けるためである。結果は勝訴だった。

「やったー!」

 しかし、演劇部の全国組織は即時上告した

 あまりのアホらしさに、瑠璃も帰途に就いた……。

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高校ライトノベル・クリーチャー瑠衣・9『一休みしにきた宇宙人・4』

2016-12-30 06:59:58 | ノベル2
クリーチャー瑠衣・9
『一休みしにきた宇宙人・4』



 Creature:[名]1創造されたもの,(神の)被造物.2 生命のあるもの 


「さあ、次の課題だよ!」


 春休みも、もうあと二日。もう少し惰眠をむさぼっていたい瑠衣は、朝の六時から、ミユーに起こされた。
 これがお母さんなら、グズグズ言いながら、もう一時間は寝て居られる。
 しかし、ミューは1/6サイズの人形の姿をしており、ニクソイことに、瑠衣が入りたかった乃木坂学院の制服を着ている。それが耳元でキンキン怒鳴ってくるのだから、むかついて起きてしまう。

「今日はどこなの……?」

「尖閣諸島の空の上。もう時間ないから、そのパジャマ代わりのスェットでいいわよ」
「センカク……どこの中華料理屋?」
 寝ぼけているうちに、瑠衣の体は宙に浮き、窓のサッシが開いたかと思うと、ピーターパンのように飛び出し、ついたところはネバーランドならぬ尖閣諸島の上空だった。

 見下ろすと、中国の海監と呼ばれる監視船が、日本の海上保安庁の巡視船二隻をオチョクリながら、領海を出たり入ったりしている。

「あれ、なんとかするのが課題。こういうことを繰り返しているうちに南沙諸島みたいにとられちゃうんだよ」
「えー、こんなムズイのが課題!?」
 瑠衣は尖閣の名前くらいは知っていたが、こんなにいくつもの島でできているとは思わなかった。まして海上保安庁がこんなに苦労していることなど想像もできなかった。
「もう、こんなちっぽけな島なんか、くれてやりゃいいのに」
 まだ眠かったので、ついヤケクソを言ってしまう。
「バカなこと言うんじゃないわよ。瑠衣には力があるんだからね……ほら、もう変わっちゃった」

 なんと、尖閣の一番大きな島に五星紅旗がたなびいている。

「あら~」
「尖閣を失うと、その周囲の経済水域が海底資源ごと持ってかれるのよ。それどころか……」
 今度は、沖縄の上空にやってきた。
「あれ、県庁に変な旗がたなびいている」
「日本から独立しちゃって、琉球民主国になってる。港をみてごらん」
「あ、中国の船がいっぱい!」
「そう、実質的には中国の属国だね。放っとくとこうなっちゃう」

「ううん……巻き戻す!」

 再び尖閣の上空。海監三隻と巡視船二隻のいたちごっこが、まだ続いていた。
「さあ、なんとかしなくちゃね」
「う~ん……海上自衛隊にきてもらうとか。なんなら、佐世保にいるのを二三隻テレポさせようか?」
「こじれるだけよ。それに自衛隊の船は中国や不審船には手が出せないのよ」
「なんで、なんのための自衛隊なのよさ!」
「法律で縛っているんだから仕方ないでしょ」
「……じゃあ、あり得ない方法で追っ払えばいいのね」

 瑠衣が指を鳴らすと、海監の船を挟み込むように二隻の巨大な船が、浮上した。

「戦艦大和と武蔵!?」
「これなら、ありえないでしょ」
 大和と武蔵は46サンチの主砲を海監に向けた。海監三隻は泡を食って領海の外へ全速で出て行った。水平線のかなたに海監の船が見えなくなると二隻の巨大戦艦は、再び海中に潜航し、姿を消した。

 日中双方から、その映像は公表されたが、あまりに荒唐無稽なので、世界中がCGの合成か、日本の無邪気なトリックだと喝采をあげた。

「まあ、アイデア賞だけど、本質的な解決にはならないわね」
「いいじゃん。しばらくは、尖閣のあたりは平和だよ」
「まあ、60点。ギリギリ合格かな」

 甘い点数だが、ミューには時間が無かった……。

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高校ライトノベル・新釈ピュグマリオン・27『水分咲月の心象風景』

2016-12-30 06:50:39 | 小説5
新釈ピュグマリオン・27
『水分咲月の心象風景』



 ピュグマリオンは、ギリシア神話に登場するキプロス島の王。現実の女性に失望していたピュグマリオンは、あるとき自ら理想の女性を彫刻。そうして彼は自分の彫刻に恋をするようになった。そして彼は食事を共にしたり話しかけたりするようになり、それが人間になることを願う。その像から離れないようになり、次第に衰弱していく姿を見かねたアプロディーテがその想いを容れ、像に命を与え、ピュグマリオンはそれを妻に迎えた。


「そうか、あの子には、そんな秘密があったんだ……」


 その日の夕飯のときに、栞は颯太に咲月の話をした。
 夕飯と言っても、ス-パーのお惣菜を適当に買ってきて並べたものだ。
「ちょっと塩分多すぎだな……」
 メンチカツを齧りながら、独り言のように栞が言う。
「しかたないよ、スーパーのお惣菜なんだから」
 ついこないだまでは、栞が料理していたが、帰り道がアパートの近くというクラスメートができて、うかつに食材を買いにスーパーに寄れなくなったのだ。
 学校では、大家のジイサンの孫で鈴木栞ということになっているが、実際は美術の非常勤講師立風颯太の妹(実際は、颯太が命を吹き込んだ人形だが)である。
 友だちにアパートに帰る姿を見られたら、直ぐに美術の先生と同棲している、いけなくも羨ましいかもしれない存在として噂が広まってしまう。で、栞はスーパーには寄らずにいったん大家の家に入り、持ち込んだ私服に着替えてアパートに戻る。
「いっそ、額面通りうちで暮らせばいいのに」
 大家の鈴木爺ちゃんは言う。
「でも、あたしたち兄妹だから」
 そう言って、つまらなさそうな顔をする爺ちゃんには気づかないふりをしている。で、ここのところ晩御飯は颯太の担当になっていた。

「実は、初めての授業で、こんなものを書かせたんだ」

 そう言って颯太が見せたのは、四つ切の画用紙に書かせた一本の樹だった。
「みんなの個性を知りたいって言ってな。一本の樹を描かせる。背景に地平線を入れることだけが条件。栞もやってみな」
「……で、なにが分かるの?」
「描きあがってのお楽しみ」
 その間に、颯太は暖かいお茶を入れる。颯太がまともに作れる口に入れるものである。

「描けた!」

「ちょうど標準的な描き方だな。一番重要なのは地平線の位置。真ん中に引くやつは理性と感情のバランスがとれている。まあ、ほどほどに地面に足のついた夢を持っている。栞はそういう気質だ。樹の幹、緑の葉っぱもほどほどだ」
「ふーん、そうなんだ。で、咲月ちゃんのは?」
「これだ」

 咲月のそれは、地平線が低く空の広がりが大きい。樹の幹は細いが葉っぱの部分は大きい。ただし、葉っぱのほとんどが枯れかけている。
「春なのに秋の風景だ」
「もともとは、夢の大きな子だ。でも、障害があって挫折しかけている。栞は、言いもしないのに周りに花とか描いてるだろう。協調性と親和性が強い証拠だ。栞については安心した」
「咲月ちゃんは?」
「うーん……孤独で、その割に夢が大きい……大きかった。夢が枯れかけてる」

 そこにノックの音がしてお隣のセラさんが顔を出した。

「ちょっとお客さんといっしょに旅行に行くから、しばらく留守にしますので……あら、御絵描きしてんの?」
 興味を持ったセラさんは、一気に絵を描き上げた。栞と同じくバランスのとれた絵だった。ただ色彩と勢いは、栞の何倍も力強かった。
「ふーん、そうなんだ」
 分析を聞くと、鼻歌と共に出かけていった。気の置けないお隣さんだ。
「あたし、ちょっと咲月ちゃんと話してみる」
「うん、それがいいな。あの子には心を開いて話せる友達が必要だ」
「分かった」

 もう栞には、咲月に何を話すべきか決まっていた。

 そして、この心理分析の絵の意味も初めから知っていた。だから颯太が一番気に入るものを描いた。

 本心から描いたら、もっと別な絵になっていた。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『おかしなジパング図版帖』

2016-12-30 06:35:46 | 映画評
タキさんの押しつけ読書感想
『おかしなジパング図版帖』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している読書感想ですが、もったいないので転載したものです


 好きなんですよねぇ……この類の本。

 本書は1669年、オランダ人モンタヌスが著した『日本誌』の挿し絵を中心に『ファンタジー アイランド ジパング』がどう描かれたのか……というビジュアル本です。
 とはいえ、モンタヌス自身は訪日した事が無く、フリシウスの『江戸参府日記』を基に、当時ヨーロッパで流行していた未知の地への旅行記を出版した。
 ヨーロッパ人の日本発見が1500年台 フロイスの『日本史』やリンスホーテン、カロンなど先行する出版は割と多いが モンタヌスの画期的な点は90以上の新しい挿し絵で紹介した事にある。
 ただ、前述のように彼自身は来日経験無し、報告書からの書き起こしで 文章そのものにも勘違い、誤り、中には「妄想」もある。 挿し絵職人はそれの又聞きで描く訳だから……こりゃあ一体どこの国? いや、そもそも地球上のどこかかい? ってな挿し絵のオンパレード。
 それでも、当時の知りうる限りの情報・資料を基に、最もリアルな日本を描こうとしたのであって まさに海の彼方にワンダーランド・ニッポンがあったのである。

 今の私たちからすれば極めてユーモラスな図版の連続、当時の日本人が目にしてもぶっ飛んだであろう事は間違いない。
 どのような絵なのか、とても口では説明出来ない。今なら平積みしている本屋もあるので立ち見をオススメいたします。
 マルコポーロ以来、東方に黄金の国・ジパングが有ると考えられたが、17世紀当時 ニッポンとジパングは分けて考えられたらしい。日本はすでに金輸出国では無くなっていて、ジパングを信じる人々は さらに東方に存在すると考えられたらしい。
 マルコポーロの『黄金の国・ジパング』は中国人からの聞き取りで、例えば奥州藤原と宋との貿易話が伝わったとも考えられる。中尊寺・金色堂やまだあたらしい金銅仏を見れば いかにも黄金の国に違いない。これが伝言ゲームに乗っかって、最後にマルコポーロが聞いたなら、さてもいかなる話になっていたやら……タイムマシンができたなら、是非とも一緒に聞いてみたい会話の一つです。
 時代はモンタヌスから200年以上、外国人には門戸を閉じたため、図版に現れる日本はシーボルトまで封印される。シーボルトの図版はリアルではあるが どこか陰鬱であり、ここに『幻のワンダーランド・ニッポン』は姿を消す。
 著者はこれを指して「日本は二度発見された」と書いています。これは政治、軍事、文化等 対ヨーロッパの歴史の中で必ず言われる表現で、何を取っても日本はワンダーランドだったのでしょうね。まぁ、未だに理解されない部分もありますから… さて、次はどこを発見してくれるんでしょうね。

 明日は、アクション映画二本、押し付けます。お楽しみに〓

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高校ライトノベル・マリア戦記・エピソード01・31『今日からは特務師団の特任隊員』

2016-12-29 10:58:37 | 小説・2
高校ライトノベル
マリア戦記・エピソード01・31
『今日からは特務師団の特任隊員』


 どこで間違えてしまったんだろう?

 百のパーツを組み直したまりあの骨格は二センチほど高くなってしまった。
 ベースのスタッフは「自分たちでやるからいいですよ」と言ってくれたが、自分の代わりに犠牲になったまりあを人任せにするのは忍びなく、マリアはマニュアルに沿って、丸三日かけて復元した。で、まりあは背が高くなってしまったのだ。
「ま、いいわよ。伸びた分は腰から下だし」
 鏡に姿を映し、ポーズをとりながらまりあが答える。
「徳川曹長、そんなマジマジ見ないでくれる。あたし、チョ-裸なんだけど」
「スケルトンの状態で言われてもねえ」
 まりあは、長時間高熱で焼かれたためにムーブメントとPC以外は焼け落ちて骸骨同然になってしまっている。
「オホホ(ケタケタ)、これで肉を付けたらナイスボディーになるかもね」
 スケルトンの状態で笑うと、骨同士がぶつかってケタケタという音が混じる。
「パーツが熱膨張したのかもしれない……ま、あとは肉付けだ、まりあ、第三ラボに行くぞ」
「ハイハイ~、よっと!……あら?」
 調子に乗ってステップを踏むと頭蓋骨が落ちてしまった。
「頭は拾ってやるから、急げよ」

 まりあを見送ると、マリアは荷解きを始めた。

「自分で詰めてないから、なにがなんだか分からないよ……」
 二つ目の段ボールでマリアは音を上げる。それでも俺の過去帳だけは仏壇の所定の位置に収めてくれた。
「あれ、マッチが無い……」
 線香を立てようとしたマリアの手が止まる。
「ベースの中じゃ火は使えないから」
 ちょうど部屋に入って来たみなみ大尉が注意する。
「わ、びっくりした!」
「片付け手伝ってあげたいけど、忙しくてね。ちょっと腕を出して」
「え、なに?」
「いいから」
 大尉は、マリアの腕を掴み、二の腕までシャツをめくって、スタンプのようなものを勢いよく叩きつけた。
「痛い! なにすんのよ!?」
「マリアもベース住まい。今日からは特務師団の特任隊員、いちおう階級は少尉だから、士官用の施設は全部使える。あとは、こうやって揉んどこう……」
「い、痛いってば」
「認識チップ埋め込んだから、ちょっとの間ベッドで横になっていて。じゃ、21時には戻ってくるわ」
 それだけ言うと、大尉は足早に行ってしまった。
「あ……眠くなってきた……」
 チップの埋め込みには微妙な麻酔がかかっているようで、マリアはベッドでまどろみ始めた。

 三時間ほど眠ったマリアは、ベッド脇に立つ人の気配で目が覚めた。

「おはよ!」
 肉付けの終わったまりあが、偉そうに腕を組んで立っている。
「……あ……まりあ?」
「こうやって見ると、マリアってブスよね」
 いきなり失礼なことを言う。
「まりあ、微妙に変わっちゃった?」
 微妙ではなく、かなりの美形に変わったまりあは、こう言った。
「マリアの影武者は卒業したの、今日からはガイノイド戦士テレジアよ。よろしくね」
「テレジア?」
「そーよ、ガイノイドってのは機密。書類上はマリアの姉ってことになってる。グレードは上がったけど、マリアと相似形だからね。一個年上の美人お姉さんということになってる。ダミーの姉妹関係は、そこのパソコンにインストールされてるから学習しといてね。あ、一応ガードは継続するから安心して、それじゃ、あたしの部屋は隣だから、入る時はノックしてね(^^♪」
 まりあ……いや、テレジアは鼻歌まじりで隣の部屋に行ってしまった。
「あ、あーーーー!?」
 眠っている間に部屋は片づけられていた。

 仏壇こそはそのままだったが、それ以外は、なんというか……。

 まるでキモオタの部屋じゃんよ!
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高校ライトノベル・ライトノベルベスト・〔赤線入りのレシート〕

2016-12-29 06:49:39 | ライトノベルベスト
ライトノベルセレクト
赤線入りのレシート〕



 赤線入りのレシートで渡された。

「ちょっと、レジロールどこかしら!?」
 パートのオバチャンが怒鳴ったけど、わたしのレシートは両脇に赤い線の入った「おしまい」を示す印が付いたまま。

 わたしは、中学までは演劇部に入っていたけど、高校の演劇部は一年の連休明けから足が遠のき、学期末には正式に辞めた。理由はいろいろあるけど、大まかに言うと、高校の三年間を預けるにはお粗末だと思ったから。
 今は帰宅部二年生。お芝居はたまにお父さんが連れてってくれる。
 まともに観に行ったら一万円を超えることもある一級品の劇団の芝居を、近隣の市民会館のプロジェクト事業などで安く観られるのを見つけては、お父さんがチケットを取ってくれて、この二年で二十本ばかり観た。劇団四季とか新感線とか一級品の芝居はビデオで録画したのを観る。
「卒業しても、その気があるんなら劇団の研究生になればいいさ」
 と、往年の演劇青年は言ってくれる。で、三年生目前のわたしは受ける劇団の絞り込みの段階。一時は高校生でも入れるスタジオや劇団を受けようかと思ったけど、お父さんの意見で、高校を出てからにということにした。それまでは、戯曲を読んで、芝居を観るだけでいいということになっている。
「それよりも、高校時代は好きなことをやっていればいい」
 と、かなり自由にさせてくれる。
 わたしは、オープンマインドな人間じゃないので、一年の秋ぐらいまでは芝居を観る以外ボンヤリした女子高生だった。

「これあげるから、好きなようにカスタマイズしてごらん」

 誕生日にドールの素体というのをもらった。
 体の関節が人間と同じように動くプラスチックとビニールでできた人形。
 人形なんて、子どもの頃のリカちゃん人形以来だ。素体と言うのは、人形は裸のまんまで、首さえない。
 別に二万円を現金でくれて、それで自分の好きなヘッドやウィッグ、アイ、ツケマ、衣装なんかを買って人らしくしていく。
 やってみると、これが面白い。カスタムする以外に自分でポーズを付ける。ちょっとした体の捻り方、手の具合などで人形の表情だきじゃなくて、感情そのものが変わってしまう。この面白さは、やった人間でないと分からないだろう。
 気づいたらハマっていた。人を観察してドールで再現してみる。すると、今までのドールでは限界があることが分かる。
 わたしはドールのためにバイトまでするようになった。

 そして、二年の終わりごろには、男女含めて五体のドールが集まった。中でも圧巻は完全に自分の体形を1/3にしたマコ。わたしの真子をカタカナにしたわたしの分身。これでポーズをつけると他の理想的なプロポーションをした人間のようにはいかないことを発見。
 ドールの足の裏には磁石がついていて、付属の鉄の飾り台にくっつけるんだけど、やはり姿勢によってはできないものがある。
 ドールの撮影会で知り合ったSさんがホームセンターで売っている簡単な材料で人形の飾り台ができることを教えてくれて、その材料を買ったところで、出た。

 赤線入りのレシートが……。

 こないだ、ドールたちの手入れをしていると、暖房の効きすぎか、半分眠った感じになってしまった。
 マコが、トコトコと寄って来て、わたしにささやいた。
「真子、赤線入りのレシートが出たら、死んじゃうからね」
「え……」
「あたしたちを可愛がってくれるのは嬉しいんだけど、そういう落とし穴があるの」
「赤線入りって、めったに出たりしないわよ……」
「でもね……もし出たらね、破っても捨てても、消してもダメ、三時間以内に死んじゃう」
「どうしたらいいの……?」
「それはね……」

 そこで意識が無くなった。マコはなにか対策を言ってくれたんだけど、夢のように忘れてしまった。

「ねえ、マコ、どうしたらいいの?」
 家に帰って、マコに聞くが、マコはただじっとしてお人形様のまま。
「あああ……あと三十分で三時間だ」
 その時、わたしは閃いた。修正ペンを持ってきて、レシートの両側の赤線に……してみた。

 三時間たっても死ななかった。わたしは、赤線に白い区切りを点々と付けて紅白のお目出度いレシートにしたのだった。

 ほんとよ。面白くなかったかもしれないけど。

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高校ライトノベル・クリーチャー瑠衣・8『一休みしにきた宇宙人・3』

2016-12-29 06:39:56 | ノベル2
クリーチャー瑠衣・8
『一休みしにきた宇宙人・3』



 Creature:[名]1創造されたもの,(神の)被造物.2 生命のあるもの 


 駅までの五分で最初の試練に遭遇した……お坊さんと、お巡りさんが、なにかもめていた。


「こんなところで、駐禁とるなよ」
「でも、このあたりは、道幅が5メートル以下なんで駐禁なんですよね」
「あのね、うちの寺は江戸時代の最初の頃から三百年もやってんだぜ。あんたの警察よりも二百年は古いよ。ここの檀家も先祖代々だ。それもスクーターだぜ、駐禁なんかとんなよ」
「でもね、あそこにちゃんと駐車禁止の標識が……」
「あんなものは、こないだまで無かったよ」
「ちゃんと回覧板でまわしたんですけどね」
「おいらの寺は、この町内じゃないの!」
「だったら、檀家さんからお寺さんに伝えてもらわないと」
「あ、そんな檀家さんに責任転嫁なんかできるかよ。三百年も檀家回りして、お上からこんな理不尽な目に遭ったのは初めてだぜ。月回りのお参りに来てさ、お布施3000円いただいて、9000円も違反料金。江戸幕府だって戦時中のお国だって、こんな理不尽なことはしなかったぜ」
「しかし、違反は違反ですからね」

 道幅4メートルほどの生活道路で、交通課の新米巡査とオッサンの坊主が駐禁をめぐってもめているのだ。お巡りさんにとっては真剣な警邏勤務の一つであるし、お坊さんにとっては、300年の檀家回りに、帝国主義の大日本帝国からでさえ受けたことのない弾圧に感じられた。

「あれ、どうやって丸く収める?」
「うーん、どっちも分かるからなあ……」
 ミユーは鞄から顔を出しニヤニヤ。瑠衣は腕を組んだ。

「あ、そうだ!」

 瑠衣は閃いて、お巡りさんに、声を掛けた。
「あの、通りがかりの高校生なんで、失礼なんですけど。あの標識間違えてません?」
「そんなことはないよ。本官はちゃんと……」
「五メートル以上あったら、ノープロブレムなんでしょ?」
 瑠衣は鞄から、五メートルの巻き尺を出して、道路の幅を測りなおした。
「五メートルと、一センチ!」
「そんな馬鹿な!?」
 お巡りさんは、巻き尺を見てびっくりし、本署の交通課に連絡、測量のやり直しをやった。

 結果、五メートル一センチに変わりはなく、駐禁の規制は解除された。

「どうよ、丸く収まったでしょうが!」
「まああね……」
 ミューは、あまり感心した顔をしない。
「なにか不足?」

 テレビをつけると臨時ニュースをやっていた。

「東京葛飾の南部を中心に最大で一メートル五センチ、地殻のずれがあることが人工衛星の観測によって明らかになりました。地震予知連絡会では、葛飾を中心とした浅い震源の直下型地震が起こる前触れではないかと、地震警報を……」
「ちょっと騒ぎになったようね」
「でも、地震なんか起こらないもの」
 瑠衣は口を尖らせた。

「じゃ、次は、もうちょっと難しい課題に取り組んでもらうわ」

 宇宙人のミユーがニンマリと笑った……。
 

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高校ライトノベル・新釈ピュグマリオン・26『水分咲月の秘密』

2016-12-29 06:35:35 | 小説5
新釈ピュグマリオン・26
『水分咲月の秘密』



 ピュグマリオンは、ギリシア神話に登場するキプロス島の王。現実の女性に失望していたピュグマリオンは、あるとき自ら理想の女性を彫刻。そうして彼は自分の彫刻に恋をするようになった。そして彼は食事を共にしたり話しかけたりするようになり、それが人間になることを願う。その像から離れないようになり、次第に衰弱していく姿を見かねたアプロディーテがその想いを容れ、像に命を与え、ピュグマリオンはそれを妻に迎えた。



「咲月はね……あ、ひい爺ちゃんが乗ってた駆潜艇咲月の方ね……」


 栞がカツ丼を食べる間に、咲月は要領よく、自分とひい爺ちゃんと落第したことについて語った。

 ひい爺ちゃんは駆潜艇咲月の艇長で、ペリリュー島が玉砕する半年前に、島の住人を他の島に移動させる任務についていて、最後は本土に帰る民間人を小さな艇内に乗せられるだけ乗せて、他の輸送船を護衛しながら日本に帰ってきた。途中米軍の攻撃を受け、船団の半分が沈められた。
 咲月は小型の駆潜艇ながら、敵の潜水艦を一隻撃沈するという武功があったが、ひい爺ちゃんは、表面はともかく内心では喜べなかった。デッキにまで一杯になっていた民間人の何人かが、激しい操船のために海中に投げ出され、ほとんどは救助したが、少女が一人見つからなかったのだ。
 この少女は宝塚歌劇団志望で、その音楽学校に入ることを夢見ていた。

 しかし、ひいお爺ちゃんは知っていた。宝塚音楽学校は昭和十九年から、無期限で募集を停止していたことを。でも、そのことは言わなかった。過酷な日本までの航海、少しでも夢があった方が、心も体も元気でいられるからだ。

 昭和二十年になって、乗組員の移動があった。なんという偶然だろう、新任の機関長は商船学校あがりの中尉で、その妹が、あの宝塚少女だった。触雷して、沈没するまで、機関長と少女について話すことは無かった。
 触雷で、機関長を含む半分の乗組員が亡くなり、衝撃で気を失ったひい爺ちゃんは生き残った。

 戦後、ひい爺ちゃんは戦時中のことは、亡くなるまで、ほとんど語らなかった。

 咲月は小学校入学以来のAKPファンで、咲月に目のないひい爺ちゃんも、いっしょにAKPのファンになってくれて、咲月はひい爺ちゃんが大好きだった。
「AKPは宝塚に似てるなあ……どうだ、咲月もオーディション受けてみないか」
 そう言い始めたころ、ひい爺ちゃんはめっきり衰え始めた。
「咲月は、あの南の海で行方知らずになった女の子と同じ目をしている。咲月は向いているよ」

 けして、ひいお爺ちゃんのためと言うようなことではなく、自分の乏しい才能を言い当てられたような気がした。

 遅まきながら、咲月は歌とダンスのレッスンに通いだした。なんとか、ひい爺ちゃんが生きている間にオーディションに通りたかった。

 そして、勉強そっちのけでレッスンした結果、オーディションは落ち、学校の成績も悪くなった。

「オーディション受かったよ!」
 ひい爺ちゃんには、そう言っておいた。ひいお爺ちゃんは、その言葉に頷いて亡くなっていった。

 学校や学校のみんなは、身丈に合わない夢を追いかけて落第したダメな咲月としか見て居なかった。

 栞に話し終えて、少し気持ちが楽になったような顔になったが、まだ芯からのわだかまりは解けない顔の咲月である。

「もう少し話していたいけど、鐘が鳴るわ。明日また話、いい?」
「う、うん……」

 放課後に話しても良かったのだが、咲月のとんがったところが少し丸くなって話をした方がいいと思う栞だった。

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大人ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『岳飛伝五』

2016-12-29 06:22:54 | 映画評
タキさんの押しつけ読書感想
『岳飛伝五』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している読書感想ですが、もったいないので転載しました。



さても ご婦人方には またしばしご辛抱の程を、 北方謙三「水滸伝シリーズ、第三部、岳飛伝 第五巻」です。
 
 例によってストーリーは遅々として進まんのですが、大展開としては南宋対金の戦闘が終了。最後まで男の在り方をかけて闘った岳飛とウジュも痛み分け。
 秦檜は岳飛を南宋軍の中に組み込もうと画策するが 岳飛は軍閥の立場を維持する構え、梁山泊では呉用が死に際に「岳飛を救え」と言い残す。一体 呉用は何を見据えていたのか。
 張朔は平泉で秀衡から思いがけず「船の購入」を持ちかけられる。
 韓成は西遼に足場を築き、それは交易に止まらず、モンゴルの一部部族の信頼を得るに至る。安南(現ベトナム)に赴いた秦容の事業も軌道に乗りそう。

 さぁて、物語世界は非常にきな臭い展開を前に着々と準備を整えているように思えます。  
元々、山東に起こった「宋江の反乱」が膨らみに膨らんだのが「水滸伝世界」、たまたま現シリーズが史実に近い展開になっているだけで、本来は荒唐無稽な小説……岳飛が暗殺されずに梁山泊の首領になろうが、源義経が大陸に渡ろうがかまわない。
 さて、北方謙三さん! どこまで書くつもりなんでしょうねぇ。本来の水滸に集った百八人の英雄達も、残る所 後九人。それぞれに後継者がいるとはいえ、ここで岳飛の参入やら、義経の参加があるなら、それはもはや「水滸伝」じゃ無くなるのでは…いや!梁山泊が存在して、そこに替天行道の精神がある限り 水滸伝世界は続いて行くのか。 呉用は、死に際して「替天行道の旗」と共に葬れと遺言した…今後、これが象徴的な意味を持つのかもしれない。さて、次巻の進行やいかに……?

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