大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・音に聞く高師浜のあだ波は・3『ブルータスおまえもか!?』

2016-10-31 12:01:51 | 小説4
高校ライトノベル・音に聞く高師浜のあだ波は・3
『ブルータスおまえもか!?』
       


 あれってイジメじゃないの?

 西日に目を細めながら姫乃が言うた。
 学校に居てる間は差し障りがあると思てたようで、校門を出てランニングに出てきた野球部の一団が追い越していくのを待って切り出してきた。ちなみに、すみれは弓道部の部活に行ったんで、あたしと姫乃の二人連れ。
「あれって……ああ、マッタイラ?」
 思いついてから迷った、あほぼんのマッタイラのことか、マッタイラがあたしに言うたことか、どっちか分からへんから。
「えと、両方」
 姫乃は感度がええようで、あたしの間ぁの空き方で察してくれたみたい。
「男は、ああやって遊んどおるねん。ジャンケンして恥ずかしいことを聞く役を決めて、あたしのリアクションを楽しもういう腹や、しょーもない奴らでしょ。ま、いきなりあんなん見たら、なんかイジメっぽいと思うかもしれへんけど、子どものころから続いてきたオチョケあいの一種やね」
「そうなんだ……転校してきてから何日もたってないけど、わたしには、みんな優しくしてくれるから、ちょっとビックリした」
 わけを聞いて安心したというよりは、そんなあたしらの日常を聞かされてビビッてしもたかな?

 あたしらの高師浜高校は創立百年に近い府立高校。

 周りが大正時代から開発された住宅街いうこともあって、学校も生徒も見かけのお行儀はええ。偏差値は六十ちょっと、学力ではAランクに入るけど、偏差値区分では一番上がSランクやから、まあ……まあまあいうとこ。
 どこかに泉州気質いうのんがあって、日ごろのあたしらは姫乃がイジメと勘違いするくらいには賑やかや。
「うちの近所にも東京から引っ越してきたオバチャンが居てんねんけどね。仲ようなってから話してたらね『東京から落ちてきましたけど、がんばるわ!』て言うてはった。悪気はないんやろけど、大阪は落ちてきてがんばるとこやねん」
「ああーーーー」と引っ張って、姫乃は口をつぐんだ。
「アハハ、言うてええねんよ『それ分かる!』って」
「え、いや、そんなことは」
「まあ、ちょっとバランス崩したらイジメに変わってしまいそうなとこはあるけどね、オチョケのTPOが分からんようになったら危ないやろね」
「TPO?]
「マッタイラが言うてきて、あたしが何にも言えんで俯いてしもたらイジメの始まりになるやろね。マッタイラの言い方がジメジメしてたらマッタイラがイジメられたっぽなるし、ま、そのへんがTPO言うとこやね」
「そうなんだ……」
「姫乃の第一印象は『一歩前へ』いう感じやから」
「一歩前?」
「朝礼で初めて会うたとき。あれだけしっかり言えるやもん、洗礼受けるかもしれへんよ~」
「わ~~おっかない!」
「せやから、あたしらと付き合うて慣れとかなあかんよ」
 すると、姫乃の目ぇが急にイタズラっぽく回り始めた。この子のこういう表情はメッチャ可愛いのを発見!
「だったらさ~」
 目ぇをカマボコ形にしてすり寄ってきよった。
「オぺの時って……剃っちゃうの?」
 ブルータスおまえもか!? やったけど、答えてやった。
「剃ります、ナースが来て剃刀でソリソリと。なんともけったいな感じです~」
「ウウ、そーなんだぁ~!」
 嬉しそうな顔をしよる。
「専門用語で剃毛(ていもう)て言います」
「あ、それだと抵抗少ないかも。『剃るぞ!』て迫られたらこの世の終わりだよね」
「それだけとちゃうねんよ……あ、ちゃう!」
 アホな話をしてたら目的地の羽衣公園への道を過ぎて、高師浜駅に向かう道に入ってきてしもた。

「わー、可愛い駅!」

 うちの学校より、ちょびっと古い駅は小さいけども雰囲気が良く、たった今までアホな話をしてた二人を、一瞬で正統派の女子高生に変えてしまったのだ。
 
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高校ライトノベル・新 時かける少女・1〈その始まり〉

2016-10-31 07:08:12 | 時かける少女
新 かける少女・1
〈その始まり〉


「じゃ、また明日!」

「ハハ、明日は日曜だよ!」

 そう言って三叉路で別れたのが最後の記憶。

 それから、川沿いの道を歩いた。

 いつもとは違っていたような気がする。

 いつもは、もう一本向こうの道まで行って川を渡る。

 少し遠くなるけど、道が安全なんだ。お喋りも長くできるし。

 でも、その日は、なにか特別なことがあって、少しでも早く帰りたかった。

 川沿いをしばらく行くと、川の中で女の子が溺れているのが目に飛び込んできた。

 この寒さ、この流れの速さ、あたしが助けなければ、その子は確実に死んでいただろう。

 あたしは、パーカーの袖口、裾、首もとを絞った。短時間でも浮力を得るために。スカートは脱いだ。足にまといつくし、水を吸って重くなる。ハーパンを穿いているので恥ずかしくもない。
 川に飛び込むと、冷たいよりも痛かった。胸回りは、パーカーに溜まった空気で幾分暖かい。浮力もある。
「がんばって!」
 声を掛けると、弱々しいながら、その子は、あたしの方に顔を向けた。大丈夫、これなら助かる!
 そして、川の中程で女の子を掴まえ抱きかかえ、橋桁に掴まった。
「だれか、助けて下さい!」
 十五回までは覚えている、次第に体温が奪われて意識がもうろうとしてくる。
 ああ、ダメかな……そう思って目を閉じかけると、川岸の人影が何か言いながら、スマホで……119番に電話してくれている様子。
 救急車の音がかすかにした……救急隊員の人が、女の子を確保したようだ……。

 で、気づいたら、ここにいた。

 真っ白い空間。床はないけどちゃんと立っていられる。寒くはなかった。体も無事なよう……。

 でも記憶がなかった。三叉路で曲がったところは鮮明に覚えている。でも、だれと別れたのか思い出せない。なんで、あの道を通ったのかも……なにか楽しいことが待っていたような……女の子が溺れていた。  で、あたしは冬の川に飛び込んだ。女の子は助かったよう……でも、あたしは助かったんだろうか……実感がない。

 あたしは、自分の名前さえ思い出せなかった。

「余計なことをしてくれたな」
 目の前五メートルほどのところに男が現れた。周りの白に溶け込みそうな白い服で、カタチも定かではない。まるで白の中に首と手が出ているようなものだ。
「われわれは、積み木細工のように条件を組み合わせ、やっとあの子の命を取る寸前まできていたんだ。もう二度と、あの子には手が出せない」
「……悪魔なの、あなた?」
「なんとでも呼べばいい。それより下を見ろ」

 男が言うと、白い床が透き通って、はるか下にチューブだらけのあたしが機械に取り巻かれて眠っていた。
「あれ、あたし……」
「そうさ、ただ脳の大半は死んでいる。名前さえ思い出せないだろう……おれたちの仕事をダメにした報いだ。これからは時の狭間でさまようがいい!」
 恨みの籠もった声でそう言うと、男の姿は消えてしまった。床の下に見えていたあたしの姿は、どんどん遠くなり、グラリとしたかと思うと上下左右の感覚も無くなった。
 どこかへ上っていくような感じでもあるし、落ちていくような感じでもある。なにがなんだか分からない。

 ただ、どこかに連れて行かれるんだ。

「時の狭間……それって、なに? どこ? あたしは……」

 そして体の感覚が無くなり、意識も無くなった。無くなったことが全ての始まりだった……。

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・3』

2016-10-31 06:53:08 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・3』


 家に帰ると、もう由香里が来ていた。

 正確には、マネージャーやら放送局のスッタッフなんかを引き連れて俺のことを待ち受けていた
「ウワー、薫ねえちゃん、いっそうマニッシュ!」
 由香里が、家の前で叫ぶと、レポーターがスタッフを引き連れ、由香里といっしょになって、俺のことを撮り始めた。
「従姉の薫さんですね。いやあ、お話以上ですね。あ、手にしてらっしゃるのは原作の『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』じゃありませんか! そうなんだ、今度の由香里さんの映画の初出演に合わせて、いっそうヤンチャナ女子高生って感じで迎えてくださったんですね!」
「薫ねえちゃん、ありがとうね。あたしが、こうして、この世界でやっていけるようになったのも、ガキンチョのころからの薫ねえちゃんのスパルタ教育のおかげ」
「ほんと、大したもんですね。録画の時も言ってたんですけど、由香里ちゃんは、まっすぐ人の顔も見て話もできない子だったとか!?」
「根は、いいもの持ってた子ですからね。自信さえ持てば、俺、いやボク、いやアタシが世話焼かなくっても、これくらいに……」

 そこで、由香里と目が合ってしまった。

 テレビで観たとはいえ、俺の頭の中の由香里は下ぶくれギョロ目の泣き虫に過ぎなかった。それが目の前で見ると、ビビッとくるような可愛いアイドルに成長している。なんだか胸がときめいてくる。俺って気づかないうちに女捨ててしまったのかなあ、と思ったぐらい。

 一つ疑問があった。

 なんで映画の撮影にH市みたいな地方都市に来るんだ。原作読んでも舞台は大阪と東京の南千住だ。こんなチンケな街のどこを写すんだろうと思ったら、訳が分かった。
 話の中で、二回劇場のシーンが出てくる。大きな街のホールは、この時期スケジュールが一杯で、とてもロケなんかには使えない。
 そこへいくと、このH市は、地元から有力国会議員が出ていることもあって、立派すぎる市民会館がある。それも大中小と三つも揃っている。で、今回、大と中のホールを使って、ロケとあいなったわけである。

「ねえ、薫ねえちゃん。今度の由香里は、可愛いんじゃなくて、いじめっ子なのね。だから、今の薫ねえちゃんみたいなツヨソーな、で、ちょっち斜に構えたような女の子やるわけよ。あとで、コツ教えてくれる」
「え……ああ、いいよ」
 十年ぶりぐらいで、二人で風呂に入って話がついた。祖父ちゃんの趣味で大きめに作った風呂だけど、さすがに二人はきつい……と、感じたけど、昔は平気で入っていた。それだけ、由香里との距離が遠くなってしまったということなのかと寂しく思い、そしてショックだった。
 由香里の裸はイケてた。プロポーションはもちろん肌のきめの細かさ、つややかさ……そういうものはアイドルなんだから当然磨きがかかって当たり前なんだろうけど、そういうもんじゃない……なんて言うんだろ、精神の確かさから来る美しさがあった。俺も元は……ハハ、言い訳になっちゃう。大事なのは今だ。不規則で荒れた毎日おくってるもんだから、肌の荒れなんかが由香里と一緒だと際だってしまう。そして心の荒みさえ体に表れているようで落ち込んでしまう。
「薫ねえちゃん、なんか落ち込んでる?」
「バーロー、由香里は、相変わらずネンネだなって、思ったんだ。由香里、まだオトコ知らないだろ?」
 なんて質問するんだと思いながら、つい意地悪なことを言ってしまう。我ながら根性が傾いている。
「だって、AKRは恋愛禁止だもん。あ、薫ねえちゃん経験済み!?」
「え、あ、それは……」
 うろたえる俺を、由香里はシゲシゲと見つめる。それも全然邪気のない無垢な目で……。裸の自分をこんなにハズイと思ったことはない。
「いや、薫ねえちゃんがミサオをささげるんだ。とってもドラマチックでビビットな恋だったんだろうね……」
「バカ、それ以上見ると拝観料とるぞ!」

 風呂から上がると、由香里は、いろんな姿勢を試していた。
「おい、行儀悪いってか、汚ねーよその姿」
「そっか、これなんだ!」
「え、なにが?」
「だよね、伯母ちゃん?」
「うん、薫そっくり」

 そう言われてゾッとしたが、ここで湿気っちゃ俺の値打ちが下がる。それから寝るまでワルの姿を伝授した。

 で、やや複雑な気持ちで二人で寝た。懐かしい由香里の匂いと一緒に昔の自分の思い出が蘇ってきた……。

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高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・45『第九章・5』

2016-10-31 06:39:31 | 小説7
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・45   


『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。


『第九章 竜頭蛇尾、そしてクリスマスへ・5』


「あの、これ持ってきたんです!」

 わたしは、やっと紙袋を差し出した。
「これは?」
「潤夏先輩が、コンクールで着るはずだった衣装です」
「ああ、これね。まどかちゃんが火事の中、命がけで取りに行ってくれたの!」
「エヘヘ、まあ。本番じゃわたしが着たんで、丈を少し詰めてありますけど」
「丈だけ?」
 夏鈴が、また混ぜっ返す。
「丈だけよ!」
「ああ、寄せて上げたんだ。イトちゃんがそんなこと言ってた」
 里沙までも……。
「あんた達ね……!」
「アハハハ……」
 お姉さんは楽しそうに笑った。それはそれでいいんだけどね……。
「こんなのも持ってきました……」
 里沙が写真を出した。
「……まあ、これって『幸せの黄色いハンカチ』ね」
 勘のいいお姉さんは、一発で分かってくれた。部室にぶら下がった三枚の黄色いハンカチ。その下にタヨリナ三人娘。それが往年の名作映画『幸せの黄色いハンカチ』のオマージュだってことを。
 わたしは理事長先生の言葉に閃くものがあったけど、ネットで調べるまで分からなかった。
 伍代のおじさんが、大の映画ファンだと知っていたので、当たりを付けて聞いてみた。大当たり。おじさんは、そのDVDを持っていた。はるかちゃんもお気に入りだったそうだ。
 深夜、自分の部屋で一人で観た……使いかけだけど、ティッシュの箱が一つ空になっちゃった。
 それを、お姉さんは一発で理解。さすがなのよね。
「ティッシュ一箱使いました?」
 と聞きたい衝動はおさえました。
「これ、ちゃんと写真が入るように、写真立てです」
 里沙が写真立てを出した。あいかわらずダンドリのいい子なのよね。
 写真は、すぐにお姉さんが写真立てに入れ、部員一同の集合写真と並べられた。

「あ、雪……」
 写真立てを置いたお姉さんがつぶやくように言った。
 窓から見える景色は一変していた。スカイツリーはおろか、向かいのビルも見えないくらいの大雪になっていた。
「これ、交通機関にも影響でるかもしれないよ……」
 里沙が気象予報士のように言った。
「いけない。じゃ、これで失礼します」
「そうね、この雪じゃね」
「また、年が明けたら、お伺いします」
「ありがとう、潤香も喜ぶわ」
「では、良いお年を……」
 ドアまで行きかけると……。
「あ、忘れるとこだった!」
 夏鈴、声が大きいってば……カバンから、何かごそごそ取り出した。
「ミサンガ作り直したんです」
 夏鈴の手には四本のミサンガが乗っていた。
「先輩のにはゴールドを混ぜときました。演劇部の最上級生ですから」
「……ありがとう、ありがとう!」
 お姉さんが、初めて涙声で言った。
「わたしたちこそ……ありがとうございました」
「あなたたちも良いお年を……そして、メリークリスマス」
 ナースステーションの角をまがるまで、お姉さんは見送ってくださった。

 結局トンチンカンの夏鈴が一番いいとこを持ってちゃった。ま、心温まるトンチンカン。芝居なら、ちょっとした中盤のヤマ。
 こういうのをお芝居ではチョイサラっていうのよね。ちょこっと出て、いいとこさらっていくって意味。

 わたし達は地下鉄の駅に向かった。そのわずか二三百メートルを歩いただけで、雪だるまになりかけた。駅の階段のところでキャーキャー言いながら雪の落としっこ。
 こんなことでじゃれ合えるのは、女子高生の特権なんだろうな。と思いつつ楽しかった!

 里沙と夏鈴は、駅のコインロッカーから、お荷物を出した。
 今夜は、わたしんちで、クリスマスパーティーを兼ねて、あるタクラミがある。
 それは、合宿みたいなものなんだけど、タヨリナ三人組の……潤香先輩も入れて四人の演劇部のささやかな第二歩目。
 第一歩は部室の片づけをやって、黄色いハンカチ三枚の下で写真を撮ったこと。

 心温まる第二歩は、次の章でホカホカと湯気をたてて待っております……。
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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・79『WOWOWで新撰組』

2016-10-31 06:33:45 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・79
『WOWOWで新撰組』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


58年の東映「新撰組」を見ました。

 意外に歴史、政治史に忠実に描かれています。確かに、鞍馬天狗は出てくるし、近藤勇の視野は後の歴史を見越して、リベラルではありますが、それらを飲み込んだ上で男の生き様を様式美にのっとって描いてあります。必ずしも史実に忠実に、リアルにという要請には背を向けています。
 池田屋襲撃、史実として近藤は一番に斬り込んではいませんが、片岡知恵蔵演じる近藤は真っ先かけて斬り込むのです。近藤が斬り倒す勤皇の志士十名、当時池田屋に集った志士は三十数名、内1/3を近藤が叩っ斬る! それでええんです。この時、池田屋に集まった志士達は、京に放火せんとした馬鹿野郎共、新撰組が犯した間違いは、この時殺しすぎた事、1/3も生け捕れば違う局面も出たかもしれない。しかし、それは後の歴史を知る者の傲慢な見方です。
 
 いわゆる大御所芝居(片岡知恵蔵/大友柳太郎/東千代の介)で各キャストの見せ場を重ねてあるのですが、その周囲の歴史的経緯は正確です。現在作られるいかなる時代劇よりも現実の歴史に敬意が払われています。
 思うに、ロードショー当時の日本人の教養は幕末の状況を知悉していて、その上で映画の虚構を楽しんでいたのでしょう。そういう観客に向かって余りに荒唐無稽な作品は作れなかったのだと思います。
「仁義なき戦い」が空前絶後のヒットだったのも本当の話だったからです(作中の人物に存命中……例えば、門広組長や羽谷組長など……さわりが大きすぎるため描け無かった部分もありますが) 本当の話に勝るものはないのです。
 この「新撰組」は、薄い記憶の中では、史実ぐちゃぐちゃな作品という印象だったのですが、ほぼ50年振りに見返してみると、なんともリアルな作品で有りました。片岡知恵蔵さんが色っぽいのは毎度の事として、山形勲の土方や大友柳太郎の月形半平太も見応え有り……なんつっても判ってはいただけないですかね〓 旧作邦画の歴史エンタメ作品は見直す必要ありですね、私のような そろそ
ろ老年にさしかかる者は、無理としりつつも若い世代に、こういった作品の意味を伝える義務があるのかも知れませんねぇ〓

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高校ライトノベル・あたしのあした・45『心臓やぶりの雲母坂』

2016-10-30 12:05:27 | 小説
高校ライトノベル
あたしのあした・45
『心臓やぶりの雲母坂』
      


 城址公園の雲母坂は心臓やぶりだ。

 この坂を上り切ったところで、さすがの春風さやかのペースもガクンと落ちる。
 だから、雲母門の陰で待っていた。

 ザッ、ザッ ザッ、聞きなれたジョギングの足音が二人分近づいてきた。
「今よ!」
「了解!」
 とたんに智満子が「うーん、うーん」と仰向けになったまま唸りだす。
「智満子、大丈夫? 大丈夫?」
「智満子、死んじゃやだよ!」
 おろおろした声で、わたしとネッチが途方にくれる。

 わたしたちを少し追い抜いたところで、さやかと伴走者が立ち止まって近づいてくる。計算通りだ。

「どうしたの、具合悪くなったの?」
 さやかお得意の優しい声で近づいてきた。
「あ、はい、雲母坂を上りきったところで……」
「あー、この坂がんばっちゃうとバテるのよ。どれどれ……」
 さやかは、体育の女先生のような頼もしさで智満子の横に跪いた。
「大丈夫でしょうか?」
 ネッチが、いかにも心配そうな声を出す。
「……うん、呼吸は、ちょっと荒いけど、脈は落ち着いてる。あなたたち、普段は、こんなに走らないでしょ」
「はい、今日から始めたとこで……」
「ここまでは調子よかったんですけど」
「それはランナーズハイよ、注意しないと。ちょっと過呼吸ね、ゆっくり呼吸して……」
「あ、君は横田不動産の下の娘さんじゃないか?」
 伴走の南君(次席秘書)が気が付いた。
「え、あの横田不動産?」
「ええ、県内最大手の……園遊会でお見かけしました」
 南君は若いが、このへんの物覚えはぴか一の議員秘書だ。ネットで検索して、南君が伴走する日を選んで正解。ひっくり返る役を智満子にしたのも良かった。わたしの読みでは、次にこう反応する。
「落ち着いてきたようね、じゃ南君、あとは頼むわね。彼は救急救命士の資格も持っているから、任せておけば大丈夫よ」
「はい、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
 過不足のないお礼を言っておく。
「じゃ、わたしは行くわね。ほら、手を握ってあげて。こういう時はスキンシップが大事なんだから」
 チャームポイントである方エクボを見せて、さやかは走り出した。

 倒れたのが普通の女子高生なら、さやかは、ずっと付き添っていたはずだ。

 国会議員の一日は忙しい。議員になる前、ジョギングは日課だったが、今は一日おきだ。そうそうイレギュラーなことに時間は割けない。だから、一般庶民なら、それっきりの縁として回復するまで付き添う。そしておしまい。
 県内有数のブルジョアの娘だからこそ、さやかは南君に任せた。ブルジョアだと言って特別な扱いはしないという特別さで印象付けるのだ。あとで電話の一本も入れておけば、そこから新しい関係が生まれる。そういう機微を教えたのはわたし自身なのだけれど。

「春風さやかさん」

 百メートルほど追いかけて声を掛けた。
「あ、あなた?」
「すみません、あまりに奇遇なんで追いかけてしまいました」
「智満子さんは大丈夫なの?」
「はい、すぐに戻ります」
 一瞬迷って、こう続けた。

「わたし、風間寛一の娘なんです」

 さやかの目が演技ではなく、まん丸になった。
 
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高校ライトノベル・ライトノベルベスト『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・2』

2016-10-30 07:00:00 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・2』


 従妹の由香里はブサイクだった。

 だった……に力が籠もる。過去形なんだ。いや、過去完了だ。ベテランのMCに質問される由香里は、まっすぐにMCに顔を向け、笑顔を絶やさず、考えるときは少し首をかしげる。まったくもって可愛い。

 俺の知っている由香里は、下ぶくれの不細工な輪郭の中で目だけが大きく、その目は、いつも怯えて涙で潤んでいた。ちょっと失敗すると大泣きになり、涙の他に水ばなとヨダレがいっしょになり、俺は、いつもティッシュで拭いてやったもんだ。そして話をするときに人の顔が見られず、いつも俯いてばかりいた。
「いいか由香里、そんなんじゃ学校行っても友達もできないでいじめられっ子になっちまうよ。人と話すときは、キチンと相手の顔を見て、少しニッコリするぐらいでやるの。いい、こんなふうにね」
 俺は、そのころ好きだったMを想像し、Mに話しかけるように言った。

「お早う、どう、昨日の宿題できた? ボク、最後の問題がとけなくってさ。出来てるんだったら……あ、答を教えてほしいんじゃないの。ヒント聞かせてもらったら自分でやるから……あ、そう。どうもありがとう。そうか、これは距離から考えちゃダメなんだ。時間なんだね。うん考える!」

 てな感じで、Mをエアー友達にして、由香里に見せてやった。
「すごい、薫ねえちゃん、ほんとに人がいるみたいに話すんだ。由香里もやってみた~い!」
 で、由香里はやってみるんだけど、目の前に人がいると思っただけで、顔が真っ赤になり、声がしょぼくなってしまう。ま、そんな子だった。

「由香里さんは、子どもの頃はとてもはにかみやさんだったってうかがいましたけど」
 MCが聞く。
「はい。自分に自信のない子だったんで、あ、今も自信なんてないんですけどね」
「やっぱ、AKRできたえられたんですか?」
「はい、それもありますけど、従姉のお姉ちゃんに鍛えられたってか、憧れてて、真似してばかりいたんです。とってもマニッシュでかっこいい美人のお姉ちゃんで、あ、今度の撮影H県のホール使ってやるんで、久方ぶりにお姉ちゃんのところに泊まって、撮影の現場に通おうかと思ってるんです」

 ゲ……由香里のやつがうちに泊まるって!

「で、今度は初の映画出演で張り切ってるのよね?」
「ええ、まだ研究生に毛の生えたようなものなんですけど、プロディユーさんが『由香里クンみたいなのが、ひねくれたら、どんな感じになるか。そのイメチェンぶりに期待』とおっしゃって。あたしも芸の幅をひろげるためにアタックです!」

 と、いうわけで、由香里が家に泊まることになった。

「すごい。由香里ちゃんが来るんだ!」
 オカンは舞い上がって叔母さんちに電話。

 俺は悩んだ。いったいどんな風に接したらいいんだ!?

 とりあえず由香里が出る映画が『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』というタイトルで、由香里の役は、ラスト寸前まで主人公のはるかをいじめる東亜美という役ということを知り、駅前の書店に原作本を買いにいった……。

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・『チョイ借り・6』

2016-10-30 06:52:41 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
『チョイ借り・6』
        


 チイコの部隊は壊滅しかけていた。

 軍事用語で壊滅とは、部隊の実力の1/3以上の戦闘能力が喪失した状態を言う。有り体に言えば。中隊の100人近くが死傷したことになる。
 中隊長は、増援か撤退のどちらかにしてくれと石垣島の連隊司令部に暗号電をうっていたが、「しばらく待て」の返事が返ってくるだけであった。

 昨夜S島に某国の武装部隊一個中隊が秘密裏に上陸した。

 内閣の国家安全保障会議は、とりあえず同規模の実力部隊を派遣して対処することになった。自衛隊出身の防衛大臣は、敵の三倍の一個大隊の派遣を主張したが、軍事には素人同然の公民党に遠慮した結論として、敵と同規模の部隊派遣になったわけである。
 当然勝てるはずもない。島などの孤塁に立てこもった敵を殲滅するには三倍以上の兵力が必要なのが常識だ。戦闘は膠着状態から、次第に自衛隊の劣勢になってきた。石垣島の司令部はヤキモキしたが、シビリアンコントロールの悲しさ、独断で増援部隊は出せない。

 この戦闘は、マスコミや国民に知られないうちに片づけようという、政府の甘い見通しで始められ、その犠牲は、派遣された部隊がモロに被っていた。

 中隊長は肌で感じていた。敵にも軍事的な常識がない。全滅しても戦う腹である。おそらく潜水艦で小規模な部隊の増援を行い、こちらが全滅したときに一人でも残っていれば勝ちと踏んでいる。
「チイコ、お前を連れてくるんじゃなかったな。全滅する前にお前は降伏しろ」
「中隊長、あたしは中隊一番のレーザー誘導員です。だから……」
「そのレーザー誘導の弾が切れてしまった。チイコは普通の歩兵だ」

 その時、敵の弾が岩に当たり跳弾になって、チイコのテッパチをかすめた。

「暗視スコープだな」
「応射を!」
「敵は、こういう戦闘に慣れている。無駄弾を撃たせて、こちらを消耗させるつもりだ」
 90度方向に身を潜めていた数人が応射をして一人を倒したが、彼らも一人が死亡、一人が負傷し、部分的戦力としては壊滅した。
「アパッチの一機でもあれば、数分で片づくんだがな……」

 カシャリと音がして、チイコたちは身を伏せた。音のしたあたりを敵が撃ってきた。音がしたところからは少し外れている。暗視スコープにも写らないということは、人間ではない。

「チイコ、わたし」

 チイコにははっきり聞こえた。女の子の声だ。初めて聞く声だけど懐かしかった。暗視スコープで見ると、ぼんやりと横倒しになった自転車のようなものが見える。なんと、横倒しのまま自転車が寄ってきた。
「なんで自転車が……!?」
 中隊長と隊員達が驚いている。

「ナオキのオレンジだ!」
「知っている自転車か?」
「はい、でも……」
「チイコ、あるだけの手榴弾を持って、横になったまま、わたしに乗って!」
 不思議な感じがしたが、チイコはオレンジが言う通りにした。
「チイコ、何する気だ?」
「自分にも分かりませんが、上手くいくような気がします……」

 すると、オレンジはチイコを乗せたまま横滑りに空に上った。

「下に二個投げて」
 オレンジの言うとおり、二個投げると、岩場の二カ所で爆発し、数名の敵が吹き飛んだ。
 お返しがきた。地対空ミサイルが飛んできたが、チイコが発する熱では探知できず、あさっての方角に飛んで行った。銃弾が十数発飛んできてオレンジに二三発当たったが、オレンジは直ぐに、弾の届かない海上に出た。
「いいこと、すぐ目の前に潜水艦が現れる。ハッチが開いたら、手榴弾をまとめて投げ込んで」

 敵の増援部隊はビックリした。ハッチをあけたら、目の前に自転車に乗った小柄な敵がいたからだ。そして、ビックリしているうちに手榴弾の束が艦内に放り込まれた。派手な音がしてハッチから火柱が上がった。
「これで、この潜水艦は身動きがとれないわ」

 その間に、島では中隊長以下必死の反撃に出て、40分ほどで敵を制圧した。

 オレンジが、傷だらけのセーラー服姿で戻ってきたのは、夜明け近くだった。
「どうしたんだ、オレンジ!?」
「ちょっと暴れ過ぎちゃって……」
「オレンジ、怪我してんじゃん!」
「大丈夫、これくらい……でも、もう、あまりこうしていられないわ。最後にナオキの顔が見たくって」
「オレンジ……」
「ほんのチョイ借りのつもりだったのにね……」

 そう言って、オレンジの姿は消えてしまった。

 その後、チイコは除隊して、ナオキのもとにもどってきた。S島のことは、いっさい言わなかった。あの作戦に従事したものには箝口令がしかれた。しかし、マスコミから次第に情報が漏れてきて、ナオキのカミサンになったチイコのところにもやってきたが、オレンジのことだけは話さなかった。

 チョイ借り 完

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高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・44『第九章・4』

2016-10-30 06:45:07 | 小説7
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語 初稿版・44   



『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。


『第九章 竜頭蛇尾、そしてクリスマスへ・4』

「まあ、まどかちゃん! 里沙ちゃん! 夏鈴ちゃん!」

 予想に反して、お姉さんはモグラ叩きのテンションでわたし達を迎えて下さった。
 ちょっぴりカックン。
「オジャマします」
 三人の声がそろった、礼儀作法のレベルが同程度の証拠。
「アポ無しの、いきなりですみません」
 と、わたし。頭一つの差でおとなの感覚。
「クリスマスに相応しいお花ってことで見たててもらいました」
「わたしたち、お花のことなんて分からないもんで、お気にいっていただけるといいんですけど……」
「わたし達の気持ちばかりのお見舞いのしるしです」
 三人で、やっとイッチョマエのご挨拶。だれが、どの言葉を言ったか当たったら出版社から特別賞……なんてありません。
「まあ嬉しい、クリスマスロ-ズじゃない!」
「わあ、そういう名前だったんですか!?」
 ……この正直な反応は夏鈴です、はい。
「嬉しいわ。この花はね、キリストが生まれた時に立ち会った羊飼いの少女が、お祝いにキリストにあげるものが何も無くて困っていたの。そうしたら、天使が現れてね。馬小屋いっぱいに咲かせたのが、この花」
「わあ、すてき!」
 ……この声の大きいのも夏鈴です(汗)
「で、花言葉は……いたわり」
「ぴったしですね……」
 と、感動してメモってるのは里沙です(汗)
「お花に詳しいんですね」
 わたしは、ひたすら感心。
「フフフ。付いてるカードにそう書いてあるもの」
「え……」
 三人は、そろって声を上げた。だってお姉さんは、ずっと花束を観ていて、カードなんかどこにも見えない。
「ここよ」
 お姉さんは、クルリと花束を百八十度回した。花束に隠れていたカードが現れた。なるほど、これなら花を愛(め)でるふりして、カードが読める。しかし、いつのまにカードをそんなとこに回したんだろう?
「わたし、大学でマジックのサークルに入ってんの。これくらいのものは朝飯前……というか、もらったときには、カードこっち向いてたから……ね、潤香」

 お姉さんの視線に誘われて、わたしたちは自然に潤香先輩の顔を見た。

「あ、マスク取れたんですね」
「ええ、自発呼吸。これで意識さえ戻れば、点滴だって外せるんだけどね。あ、どうぞ椅子に掛けて」
「ありがとうございます……潤香先輩、色白になりましたね」
「もともと色白なの、この子。休みの日には、外出歩いたり、ジョギングしたりして焼けてたけどね。新陳代謝が早いのね、メラニン色素が抜けるのも早いみたい。この春に入院してた時にもね……」
「え、春にも入院されてたんですか?」
 夏鈴は、一学期の中間テスト開けに入部したから知らないってか、わたしも、あんまし記憶には無かったんだけど、潤香先輩は、春スキーに行って右脚を骨折した。連休前までは休んでいたんだけど、お医者さんのいうことも聞かずに登校し始め。当然部活にも精を出していた。ハルサイが近いんで、居ても立ってもいられなかったのよね。その無理がたたって、五月の終わり頃までは、午前中病院でリハビリのやり直し、午後からクラブだけやりに登校してた時期もあったみたい。だから色白に戻るヒマも無かったってわけ。そういや、コンクール前に階段から落ちて、救急で行った病院でも、お母さんとマリ先生が、そんな話をしていたっけ。
「小さい頃は、色の白いの気にして、パンツ一丁でベランダで日に焼いて、そのまんま居眠っちゃって、体半分の生焼けになったり。ほんと、せっかちで間が抜けてんのよね」
「いいえ、先輩って美白ですよ。羨ましいくらいの美肌美人……」
 里沙がため息ついた。
「見て、髪ももう二センチくらい伸びちゃった」
 お姉さんは、先輩の頭のネットを少しずらして見せてくれた。
「ネット全部とったら、腕白ボーズみたいなのよ。今、意識がもどったらショックでしょうね。せめて、里沙ちゃんぐらいのショートヘアーぐらいならって思うんだけど。それだと春までかかっちゃう」
「どっちがいいんでしょうね?」
 単細胞の夏鈴が、バカな質問をする。
「……そりゃ、意識が戻る方よ」
 お姉さんが、抑制した答えをした。
 とっさにフォローしようとしたけど、気の利いた台詞なんてアドリブじゃ、なかなか言えない。
「だって、『やーい、クソボーズ!』とか言って、からかう楽しみが無いじゃない」
 お姉さんが、話を上手くつくろった。妹が意識不明のままで平気なわけないよね……。
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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・78『2GUNS』

2016-10-30 06:34:33 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・78
『2GUNS』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


本来 昨日、これと“42”を見る予定でしたが、朝っぱらから大頭痛、今日に延ばして“42”は堪忍してもらいました。
 体調万全とは行かないものの、これ以上ワガママ(本来、この2本プラス“パーシー・ジャクソン2”“SPEC”をオファーされとりましたが、どちらも蹴ってますもんで)は、なんぼなんでも言えません〓

 重い頭を支えながら映画館に入ったのですが……ゲンキンなもんです、映画が面白かったので重い頭も軽くなって、現状 頭痛の再発も無し……いやはや、我ながら……〓
 さて、今作 ド派手なクライム・アクションです。原作小説があるかと思っていたのですが、またもやグラフィック・ノベル(漫画)が原作でした。
 アメコミと言えば派手なコスチュームヒーロー物しか無いイメージが強いのですが、現在 極少数ながら純然たる犯罪スリラーも存在するようです。
 元々、20世紀初頭から50年代に猖獗を極めたパルプフィクション(安物の探偵小説やSF、ポルノ)の影響下で誕生していますから、かつては様々なジャンルの作品が有りました。第二次大戦後 一気に広がったのですが、60年代に入る直前、「子供に悪影響を与える」ってんで焚書され、以降 勧善懲悪以外のコミックは一掃されてしまいました。
 これは、当のアメリカ人も認めていますが、アメリカンの単純お馬鹿の証明です。なんせ、中世ヨーロッパで焼かれた魔女容疑者よりも近代から現在に至るアメリカで魔女狩りに会った犠牲者の方が圧倒的に多いのですから、何をか言わんやであります。
 それはさておき、現在のアメコミに復活し始めたサスペンス/スリラー物は、かなり上質な作品が多いらしく(全く読んでません、なんせ1冊 高いっすから)同種の小説に引けを取らないそうであります。本作も小学館から2千円ほどで発刊されてるそうですから、興味のある向きはお手にしてみて下さい……尚、購入されたら是非ご一報を、貸してね〓

 漸く映画です。本作の目玉は、入り組んだ人間/組織関係の クンズホズレツストーリーですが、デンゼル・ワシントンがこの所定期的に取り組む悪役(トレーニングデイ/デンジャラスラン)と マーク・ウォールバークが取り組むコメディタッチ(アザーガイズ/テッド)が組み合わさっているってのが最大目玉です。面白い映画ってのは、脚本の出来、編集の巧みさなんかと同じように 何らかの“化学変化”が起きています。本作の化学変化は、まさに主役の二人が引き起こしているのです。  フリーランスの悪党ボビー(ワシントン)とスティグ(ウォールバーク)は最近コンビを組んだ。メキシコの麻薬ディーラー/パピ(E・J・オルモス/ブレードランナーでデッカードを連れにくる刑事……あの時はスリムだったのに)に偽造パスポートと引き換えにコークを貰う予定が現金を渡される、しかも もう一人組んでいた悪党は殺されて首に成っている。腹いせに(?)パピの貸金庫の300万$を狙って銀行強盗、犯行は見事に成功するが、金庫にあったのはなんと4300万$!! この金を巡ってDEA/CIA/NAVY/マフィアが絡んで二転三転、一体誰の金なのか、信じられるのは誰? 元々ボビーもスティグも何者? 謎は少しずつ明かされていくが、誰が信頼出来るのか、全貌を知る者は誰なのか、こいつが全く解らない。解らなきゃ全部集めてガラガラポンてなもんで大乱闘になる訳ですが、はて 誰が生き残って大金を手にするのか。
 ラスト、さすがの大迫力なのですが……これって、どこかで見たような……と思ったら「マチェーテ/R・ロドリゲス監督、来年2がある)」のラストにムードがそっくり。まぁ、本作の方がスマートですがね。
 他の共演者も多彩で、P・パットン(Mi:I)B・パクストン(楽しそうに悪役やってます)分かりにくいのがジェームス・マースデン、この人「Xメン」でサイクロップスをやっていた俳優さん、準主役なのにサングラスをしているか目をつぶっているか、さもなきゃ目から光線を発しているかで素顔が判らなかった、漸くメジャー作品で素顔オープン、なかなかのハンドサムであります。
 なかなか容赦の無い殺人シーンの連続で 「カタルシス」ってのとはちがいますが、これもアメリカ映画の一つのスタイル、子供に悪影響……なんぞと思うなら、大人だけで見に行って、くれぐれもスクリーンに放火などなさいませんように。お願い申し上げます。

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高校ライトノベル・ライトノベルベスト『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・1』

2016-10-29 12:48:24 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・1』


 気が付くと、もう連休だった。

 今年こそ、がんばるぞ! と決心して三週間ちょっと。最初の一週こそは遅刻もせずに、授業中もちゃんとノートをとり、先生の話も聞いていた。
 それが、先週になって遅刻はするは、授業中は居眠りはするは、ノートは数Ⅱだけでも、三時間。全教科一週間分は取り遅れている。選択教科を入れて10教科。もう友達のノートを借りて写そうという気持ちもならない。
 もっとも友達の大半が似たり寄ったり。ラインで連絡取り合うだけ無力感にさいなまれるだけ。

 このまま没落の一年の予感。

 ま、こう言っちゃなんだけど、学校がショボイ。我が県立H高校は、偏差値42。県内でも有数のダメダメ高校。
 俺の人生は中学三年で狂ったと言っていい。いろいろ理由というかワケはある。例えば数学。
 二年までは、公式は「成り立ちを理解してから使え」だったけど、「とりあえず覚えろ、使って暗記しろ!」に変わった。俺は、物事の因果関係がはっきりしないと落ち着かない人間だ。

 例えば、中一のとき「日本はニッポンとニホン、どちらが正しいのか?」で、悩んだことがある。

 先生は明確に答えてくれた。
「ニッポンが正しい」
 理由は分かり易かった。昔の日本人は「H」の発音ができなかった!
「なんで、そんなことが分かるんですか?」
 俺は、すかさずに聞いた。
「平安時代のナゾナゾにこんなのがある『父には一度もあわず、母には二度あうものはなにか?』で、答は『唇』なんだ。つまり『母』は『ファファ』と発音していた」
 そう言われて唇をつけて発音すると……なるほど『ファファ』に、ぶきっちょにやると『パパ』になる。
「そうなんだ、江戸時代ぐらいまでは『H』の発音ができなかったんだ。だから『ニホン』とは発音できずに『ニッポン』と言っていた。ただ時代が進んで『H』の発音が出来るようになると使い分けるようになった『ニホンギンコウ』とは言うけど、サッカーの応援なんかの時は『ニッポン』だろ」
「そうか、ここ一番力をこめる時は『ニッポン』なんだ!」

 そういう理解をする子だった。

 ただ分かっていても、ことの本質が理解できなければ、分かった気にもならないし、学習意欲も湧かない子だった。
 それが、やみくもに「覚えろ、とにかく公式を使え!」は受け付けなかった。

 で、結局は三年生はつまらなくて、よく学校をサボったし、授業も不真面目、あっというまに成績は下がり、高校は県内でも最低のH高校しか行けなかった。ここだけの話だけど、家出もした。高校に入ったときは、もうバージンじゃなかった。

 あ、ここで誤解を解いておく。一人称は「俺」だけど、俺は女だ。中一までは世間並みに「あたし」と言っていた。ときどき「ボク」という言い方もしていた。世間でいう「ボク少女」だった。
「ボク」と「俺」の間には大きな開きがある。「ボク」は年下の子なんかに「自分は世間の女の子とは違うんだ」という感じで使ってた。それが中三の時に好きだった男子に使うときは、ちょっとした媚びがあった。その男子も「ボク」を可愛いと思い、ボクを女の子から女にしてしまった。

 けっきょく、そいつは最低な男子だった……。

 それから一人称は「俺」に変わってしまった。

 H高校の一年生も最低だった。俺は、これでも高校に入ったらやり直そうと思っていた。一人称を変えてもいいと思った。でもダメだった。

 予感は、入学式の時に気づいた学校の塀。

 塀には忍び返しって、鉄条網付きの金具が付いている。普通、これは外側に俯いている。外からの侵入を防ぐために。
 しかしH高校のそれは、内向きに俯いている。つまり、中から外への脱走を防ぐため……。

 授業は、どれもこれもひどいものだった。33人で始まったクラスで進級した者は20人しかいなかった。かろうじて俺は進級組に入っていた。だから、なけなしのやる気を振り絞った。最初のホームルームの自己紹介で「あたし」と言おうと思ったが、先生やクラスの人間の顔をみていると「俺、一ノ瀬薫。よ・ろ・し・く!」とやらかしてしまった。ケンカも二度ほどやって、一目置かれるようになったけど、群れることはしなかった。

 そんなこんなで、連休初日。昼前に起きてリビングに行くとオカンが叫んだ。

「ちょっと、これ、由香里ちゃんじゃないよ!」
 テレビは、日曜の朝によくある、その道の有望新人のインタビュー番組だった。

 そして、そこに映っていたのは従妹の由香里だった。

 俺の従妹がこんなに可愛いわけがない!

 大波乱の連休の始まりだった……。

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高校ライトノベル・マリア戦記・エピソード01・15『まりあの作戦勝ち』

2016-10-29 10:33:48 | 小説・2
 高校ライトノベル
マリア戦記・エピソード01・15
『まりあの作戦勝ち』


 まりあはマリアにそっくりだ。

 マリアのアシスタント兼ガード兼影武者として特務師団から派遣されてきたのだから、そっくりで当たり前。
 ベースはアクト地雷の汎用品だけれども、CPUが一昔前のスパコン並の性能……じゃ分かりにくいよな。
 かつてゲーム機の王者と言われたプレステに例えると、初代プレステとプレステ8くらいの差がある。
 学習能力や表現能力がケタ違いに優れている。

 常にマリアを観察していて、思考や行動パターンを修正していく。

「やっぱ、写真というのはアナログがいいよね~」
 アルバムやら未整理の写真が山盛り入った段ボールを核とした引っ越し荷物の真ん中で、マリアとまりあが悦にいっている。
 マリアが帰宅した直後は「捨てろ!」「捨てない!」と双子のケンカのようになっていたが、マリアの心と性癖を学習したまりあが修正を計り、マリア以上の情熱で引っ越し荷物に熱中し始めた。
「印画紙に焼き付けた写真て、いい具合に劣化していくんだよね……」
「色がさめたり、セピア色になったり、とても懐かしい……」
 壮大なカルタ会のように写真を並べてはひとしきり思い出に耽り、ため息ついては並び替え、いろいろ差し替えては目を潤ませている。
「これ、ケンカしたあくる日だ」
「ああ、ホッペの絆創膏ね!」
「この難しい顔は、ケンちゃんにコクられたあとだ」
「こっちは、芳樹くん。ニヤケテるし!」
「相手によって態度も反応もゼンゼンちがうんだよねー!」
「おたふく風邪のなりかけ~!」
「ぶちゃむくれ~!」
「そのとき買ってもらったのが……ジャーン、このリボンのワンピだ!」
 衣装ケースから懐かしいものを取り出す。
「そーそー、それがリボン時代の始まりだ!」
「小六の春まで続いたんだ。前の席になった吉井さんが大人びててさ」
「そーそー、ブラウスの背中に浮かんだブラ線見た時はショックだった!」
「家に帰ってすぐに初ブラ買いにいったんだよね!」
「お父さんに着いて行ってもらって!」
「お父さん、真っ赤な顔で、お店に入れなかったんだよ」
「お兄ちゃんは鼻血出しちゃうしね」
「男って、おっかしいよねー!」
「「アハハハ」」

「ちょっと、早く片づけちゃいなさいよ! そいでお風呂入んな!」風呂上がりのみなみさんがガシガシ髪を拭きながら注意する。

「まりあ、いっしょに入ろ」
「あたしお風呂当番だから、あとにする」
「じゃ、おっさきー!」
 鼻歌を奏でながらマリアは風呂に向かった。
「まりあ、あんたアシさんでもあるんだから、この溢れかえった荷物なんとかしなさいよね!」
「わかってまーす」
 調子のいい返事をすると、言葉とは裏腹に段ボールの中身をぶちまけ始めた。
「ちょ、まりあ!」
 もうみなみさんの言葉には反応せずに、敷き詰めた思い出アイテムの上でゴロゴロし始めた。
「あ、あのなー」
「ゴロニャーン」
「あんたは猫か!」

 あくる日、マリアは、みなみさんが手配してくれたロッカールームに荷物のほとんどを運び込んでしまった。

 夕べ、風呂からあがると、まりあがマタタビに酔った猫のように目をトロンとさせヨダレを垂らしながら引っ越し荷物に溺れているのを見て気持ちが変わってしまったのだ。

 どうやら、まりあの作戦勝ちのようだった。
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高校ライトノベル・女子高生で売れないライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで……

2016-10-29 06:35:25 | ライトノベルベスト
高校ライトノベル
女子高生で売れないライトノベル作家をして いるけれど、年下のクラスメイトでアイドルの女の子に首を絞められている 
        


 女子高生で売れないライトノベル作家をして いるけれど、年下のクラスメイトでアイドルの女の子に首を絞められている。この現実離れした状況はなんだ?

 あたしは、本格的な小説家になるために、半年間アメリカに居た。

 これも現実離れしている。
 ちょっと冷静に整理してみる。うちの隣の渡辺さんちに交換留学に来ていたアリスと仲良くなった。
 アリスは、変わった子で、アメリカ人なのに日本語ペラペラ……そんなに珍しくもない。
 このアリスが六十二年前の大阪弁を喋ると言ったら、少し珍しい。
 これが、動機の最初。なんでアリスが六十年以上前の大阪弁を喋るかと言えば、アリスに日本語を教えてくれたのがTANAKAさんという、アリスの隣のオバアチャンだから。

 TANAKAさんのオバアチャンは、当時進駐軍と言われたアメリカ軍専用のPXという売店で、片言の英語を喋りながら売り子をしていた。
 売店といってもスゴイ物で、百貨店をまるまる接収してアメリカ軍専用のデパートにした。でも、アメリカ軍の軍事施設の分類では、PX(post exchangeの略)になる。
 そこによくやってくるアメリカの大尉さんと仲良くなり、結婚して六十二年前にアメリカに移った。当時としては非常に珍しいことで、新聞に載ったらしい。

 でも、若きTANAKAさんの幸せは長続きしなかった。

 大尉の旦那さんが、朝鮮戦争で亡くなったのだ。旦那さんの両親は、TANAKAさんに冷たくあたり、家を放り出された。で、アメリカの苗字を失ってTANAKAの旧姓に戻り、シカゴでハウスキーパーをしながら暮らすことになった。
 でも、TANAKAさんのお腹の中には赤ちゃんがいた。TANAKAさんは日系のアメリカ人に助けられて、なんとか女の子を産んだ。そして、皮肉なことに、朝鮮戦争の休戦後の捕虜交換で、旦那の大尉が生きて帰ってきた。大尉の親は、TANAKAさんが死んだことにして、お墓まで作っていた。すっかり信じ込んだ大尉は、傷心の果て、アメリカ女性と再婚。サウスダコタとシカゴに別れ、そうとは知らずに、同じアメリカで五十年暮らし、十二年前に出会った。
 互いに再婚相手には死なれていた。周囲のものや、二人の間に生まれた娘は、もう一度の再婚を勧めたが、二人は、良き友として、残りの人生を生きることにした……。

 これは、TANAKAさんのオバアチャンの話の、ほんのデテールに過ぎない。アリスからは、何度にも分けてTANAKAさんのオバアチャンの話を聞いた。
 感動した文学少女であるあたしは、これを小説にしようと、アメリカへの交換留学生制度を利用して、アメリカに渡り、TANAKAさんのオバアチャンからも話を聞いて、勉強のかたわら、プロットとしてまとめた。

 で、あまりに熱中しすぎて、勉強が疎かになり、単位をいくつも落としてしまった。

 アメリカはシビアな国で、たとえ交換留学生であっても、単位不足は情け容赦なく落とされる。
「うそやん、そんなやつ、千人に一人ぐらいしか居てへんわ!!」
 アリスは、これ以上驚きようがないほど目を剥き、鼻をを膨らませ、ノドチンコが見えるほど口を開けて驚いた。でもって、呆れられた。

 勘のいい人は、このあたりで分かると思うんだけど、あたしは留年生として、日本に帰ってきた。当然学年は一個下がってしまう。
 で、そのクラスににアイドルがいた。AKR47の駆けだしだけれど、人類の分類で言うとアイドルの女子高生ということになる。

 でもって、こいつが、あたしの妹だというところに決定的な問題がある。

 あたしにとってではない。妹にとって問題なのである。留年生の姉が同級生になるなんて、ヘタをすればゴシップである。
 で、首を絞められながらも「これは、小説……ラノベのネタになる」と思った。

 悲しい作家の性である……。

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・『チョイ借り・5』

2016-10-29 06:25:35 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
『チョイ借り・5』
       


 次の土曜日、サイクリングに行った。

 チイコはオレンジに乗り、おれがチイコのママチャリに乗った。オレンジは、かなりのアシストをしてくれたので、チイコは楽勝だった。
「自転車って、楽しいね!」
 アシストされているとも気づかずに、チイコは楽しげに言った。オレンジはうまくやってくれている。
 オレは、当たり前のママチャリなので、どうなるか心配だったけど、これが平気で付いていけた。オレンジのやつ、新聞配達の間にアシストを少しずつ落としていって、どうやら近頃は、オレの自力でやらせているようだ。騙されたようだが、悪い気はしない。

 ただ行き先が奇妙だった。行き先はチイコが決めているようだが、実はオレンジが巧妙に誘導している。
「ハハ、もうほとんど埼玉県だよ」
 スポーツドリンク飲みながら、チイコが壮快そうに言った。
「たしか、この辺は……」
「見て、自衛隊の基地だよ!」
 オレたちは、阿佐ヶ谷の自衛隊駐屯地まで来てしまった。
「オレ、自衛隊に入る気はないぜ……」
 小声でオレンジに言ってみた。
「これは、チイコちゃんの運よ」
 と、一言言って黙ってしまった。

Japan Ground Self-Defense Force Public Information Centerの文字が目に入った。側には、もっとデカデカと陸上自衛隊広報センターと看板が出ていたが、オレンジの薫陶で、英文を見て訳すクセが付いてしまっている。

 オレは、特に自衛隊フェチじゃないけど、展示物には迫力があった。生まれて初めて本物の戦車を見た。

 二階のオープンシアターで、チイコは運命的な映像に出くわした。女性自衛官が災害派遣や訓練に励んでいる姿である。女性の自衛隊員が重機を動かしたり、中には幹部になって男性隊員を指揮している姿に感動していた。

「これだ……!」

 チイコの進路が決定した。
 チイコは、その場で入隊に関わる資料をもらい、明くる日の日曜にはオジサンの部屋で、資料とネットを駆使して、いろいろ調べた。そして、チイコの心が決まった。

「あの部屋にいって、何もしないで出てきたの初めてだな」
「なに言ってんの、一番充実した一日だったわよ!」
 チイコのトンチンカンが嬉しかった。
 進路の先生は、進歩派で、自衛隊には反対したが、チイコの決心は固かった。

 そして、明くる春に、チイコは自衛隊に入った。

 成績が優秀なので、南西方面遊撃連隊という、自衛隊の海兵隊のようなところに回された。車の免許から、無線、小型船舶の免許まで取れて、チイコの嬉しそうなメールがくるのは、オレにも楽しかった。
 オレは、大学生になっていた。うちの高校からは二人しか通らない難関の大学で、みんなは奇跡だと言ったが、オレには当たり前だった。

 そのころから、オレンジの口数が少なくなってきた。

「どうか、したの?」
 オレンジが、久々に人間の姿で現れた時に聞いてみた。相変わらずオレンジのセーラー服を着て、ベッドのおれの横に寝転がった。
「変わったわね、ナオキもチイコちゃんも」
「そうかい? ま、確かにね……オレンジのおかげだよ。ここまで立ち直れたの。ありがとう」
「なに言ってんの、半分は二人の力よ。二人の可能性がゼロなら、あたしが何をやっても答はゼロよ。チョイ借りのつもりが三年もいっしょに居ちゃった……」
 珍しく、オレンジの声が湿っている。
「どうかしたのか?」
 そう言うと、オレンジは、横向きになって背中を見せた。思わず肩に手をやった。当たり前なんだろうけど、人間の女の子のように柔らかくて暖かかった。
「お願い、しばらく、そうしていてくれる」
「あ、ああ……人間のオレンジに触ったの初めてだな」
「ありがとう、人間て言ってくれて」
「オレンジ……」
「そのまま、これ以上はチイコちゃんに悪い」

 その明くる日、オレンジが居なくなった……。

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高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・43『第九章・3』

2016-10-29 06:14:22 | 小説7
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語 初稿版・43   


『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。


『第九章 竜頭蛇尾、そしてクリスマスへ・3』


 で、ここらへんまでが、竜頭蛇尾の竜の部分。

 考えてもみて、たった三人の演劇部。それもついこないだまでは、三十人に近い威容を誇っていた乃木坂学院高等学校演劇部。発声練習やったって迫力が違う。グラウンドで声出してると、ついこないだまでの勢いがないもんだから、他のクラブが拍子抜けしたような目で見てんのよね。最初はアカラサマに「あれー……」って感じだったけど、三日もたつと雀が鳴いているほどの関心も示さない。
 わたし達は、もとの倉庫が恋しくて、ついその更地で発声練習。ここって、野球部の練習場所の対角線方向、ネットを越した南側にはテニス部のコート。両方のこぼれ球が転がってくる。
「おーい、ボール投げてくれよ!」
 と、野球部。
「ねえ、ごめん、ボール投げて!」
 と、テニス部。
 最初のうちこそ「いくわよ!」って感じで投げ返していたけど、十日もしたころ……。
「ねえ、そのボール拾ってくれる!?」
 と、テニス部……投げ返そうとしたら、こないだまで演劇部にいたA子。黙ってボ-ルを投げ返してやったら、怒ったような顔して受け取って、回れ右。
「なに、あれ……」
「態度ワル~……」
「部室戻って、本読みしよう」
 フテった夏鈴と里沙を連れて部室に戻る。

 わたしたちは、とりあえず部室にある昔の本を読み返していた。
「ねえ、そのボール拾って!」
「またぁ……違うよ、それ夏鈴のルリの台詞」
 里沙の三度目のチェック。
「あ、ごめん。じゃ、夏鈴」
「……」
 夏鈴が、うつむいて沈黙してしまった。
「どうかした……ね、夏鈴?」
 夏鈴の顔をのぞき込む。
「……この台詞、やだ」
 夏鈴がポツリと言った。
「あ、そか。この台詞、さっきのA子の言葉のまんまだもんね」
「じゃ、ルリわたし演るから、夏鈴は……」
「もう、こんなのがヤなの」
「夏鈴……」
 演劇部のロッカーにある本は、当然だけど昔の栄光の台本。つまり、先代の山阪先生とマリ先生の創作劇ばっかし。どの本も登場人物は十人以上。三人でやると一人が最低三役はやらなければならない……どうしても混乱してしまう。
 じゃあ、登場人物三人の本を読めばいいんだけど、これがなかなか無いのよね……。
 よその学校がやった本にそういうのが何本かあったけど、面白くないし……抵抗を感じるのよね。

 竜頭蛇尾の尾になりかけてきた……。

「ね、みんなで潤香先輩のお見舞いに行かない。明日で年内の部活もおしまいだしさ」
「そうね、あれ以来お見舞い行ってないもんね」
 里沙がのってきた。
「行く、行く、わたしも行くわよさ」
 夏鈴がくっついて話はできあがり。
 そしてささやかな作業に取りかかった……。

 三人のクラブって淋しいけど、ものを決めることや、行動することは早い。数少ない利点の一つ!


 一ヶ月ぶりの病院……なんだか、ここだけ時間が止まったみたい。
 いや、逆なのよね。この一カ月、あまりにもいろんなことが有りすぎた。泣いたり笑ったり、死にかけたり……忙しい一カ月だった。
 病室の前に立つ、一瞬ノックするのがためらわれた。ドアを通して人の気配が感じられる。
 おそらく付き添いのお姉さん。そして静かに自分の病気と闘っている潤香先輩。その静かだけど重い気配がわたしをたじろがせる。
「どうしたの……まどか?」
 花束を抱えた里沙がささやく。その横で、夏鈴がキョトンとしている。
「ううん、なんでも……いくよ」
 静かにノックした。
「はーい」
 ドアの向こうで声がした、やっぱりお姉さんのようだ。
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