大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ポナの季節・49『ちょっと、あんたねえ!』

2020-09-30 05:26:12 | 小説6

・49
『ちょっと、あんたねえ!』
     
  

ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名


 

「ちょっと、あんたねえ!」

 四時間目の数学の時間が退屈だったので、つい居眠り。で、自分で「ちょっと、あんたねえ!」と大きな寝言を言ってポナは恥をかきながら目が覚めた。

 覚えてはいないけど、安祐美のせいだ。

 安祐美の夢の中でのレッスンは日ごとに厳しくなっている。もうヘブンリーアーティストに合格しようというレベルではない。なんだかレコード大賞でも獲ろうかという迫力……なんだと思う。
 思うというのは夢の事は覚えていないけど、起きた時の疲労感がハンパではないからだ。

 で、今の「ちょっと、あんたねえ!」は確定的だった。

「あんたって、誰の事よ!?」と数学の先生には誤解されるし、散々だった。
「ちょっと食べ過ぎじゃね?」
 由紀が言うくらい、そのあとの昼ご飯はすごかった。
 いつものララランチではあるが、ランチのご飯もラーメンも大盛りの上にアイスキャンディー。それもララランチに手を付ける前に食べてしまった。
「順序逆……」
「とりあえず頭と、煮えくり返ったお腹鎮めなきゃ、ララランチが収まらないの!」
 と言いながら、脚がプリプリの16ビートのリズムをとっている。
「ひょっとして、安祐美の特訓?」
「そうでなきゃ、あんな寝言言わないし、こんなに昼飯増量しないわよ……てか、あんたたちは、どうよ?」
 由紀も奈菜もかぶりをふる。
「なんだって、あたしだけ」
「ポナ、脚がリズムとってる……」
「くそ……!」

 すると目の前に、とうの安祐美が実体化して現れた。姿は同じ世田女の制服なので、まるで違和感がない。

「あのね、ドラムはパンチが命なの。ポナは、歌に熱中すると、ドラムがお留守になるし、だいたいドラムだけが、微妙に違和感」
「違和感でもいいじゃん。とりあえずヘブンリー合格すりゃいいんだからさ」
「でもね、どうせやるんなら、プリプリの再来くらい言われてみたいじゃん」
「再来の前に災難だわよさ!」
「さて、あたしも」
「ちょっと、どこ行くのよさ!?」
「ランチ食べんの。実体化するとお腹空くのよね……」
「さっさと食べて、行こう。この調子じゃリアルに稽古させられないよ!」

 安祐美はリアルの稽古までは要求しなかった。なんとか無事に午後を過ごして帰宅の途中……。

「ちょっと、あんたねえ!」

 今度は、駅の改札を出たところで叫んでしまった。
 振り返ったそこにいたのは修学院の蟹江大輔であった。

「ごめん、こんなとこまで付いて来て」
「ちょっと、ストーカーだわよ」
「ごめん。でも返事、まだ聞いてないから……」
「好きになってくれるのはいいけど、名前しか書いてないんじゃ返事のしようもないでしょ!」
「え、メアドとか書いてなかったけ!?」
「なーんも。それで、付きまとわれてもキモイだけなんですけど!」
「じゃ、よかったら、ここでメアド書くから」
 大輔は律儀にメモ用紙を取り出した。
「バカね。メアドなんか交換したらしまいじゃない」
「え……じゃあ?」
「まあ、メル友の一人ってことで。しつこいと、すぐに切っちゃうからね」

 メアドを交換すると、いいとこの子どもが品よく喜んだように、意外に素直な笑顔を返してきた。

「と、いうことで、今日はここまで」
 ポナは回れ右をして、さっさと行きかけた。
「電車の中で口ずさんでいた曲、最高だから」
「え……!?」
「プリプリのダイアモンズ。いかしてた!」
「そ、それはどうも」
――安祐美めえ!――

 ポナはプリプリだった……。




ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒

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かの世界この世界:87『エスナルの泉の秘密』

2020-09-30 05:15:14 | 小説5

かの世界この世界:87

『エスナルの泉の秘密』    

 

 

 ここがエスナルの泉でしたか……

 

 すっかり元気を取り戻したミュンツァー町長がしみじみと言う。

「ムヘン街道から東へはめったに行かないので……むろん、エスナルの泉は初めてです」

 石化してからここまでの記憶は無いので、テルとタングリスが説明してやったが、さすがに町長を務めるだけのことはあって理解が早い。テルもタングリスもここまで来るまでの苦労は語らない。

 わたしならいっぱい言うぞ、町長の事がなければ、ムヘン街道で北進して、今頃はノルデンハーフェンから船に乗っているところだった。

「しかし、ここまで来るにはご苦労があったんじゃないですか? 町の外に出ただけでクリーチャーに出くわすようになりましたし、ましてムヘン街道の東は魑魅魍魎の世界と言われています」

「こうやってみんなが揃っているのが答えだ、あまり気にされるな」

 くそ、タングリスは、こういうところでも大人だ。

「その妖精さんは?」

「ああ、ロキが連れていたシリンダーの変異体です」

「ヘンタイじゃないもん!」

 聞き違えたポチが文句を言う。みんな穏やかに笑ったりして! くそ、シリンダーのくせに可愛じゃないか!

「シリンダーの変異体とは創世記に書かれている以外には、トール元帥の聖戦に二つほど例があるだけです、いずれも幼生のうちに心が通い合い、その上に共に激戦を経験しなければならないとか……あなた方も、それだけの戦いを……どうも大変なご迷惑をかけてしまったようです」

「頭を上げられよ、こうして全員無事なのですから」

「ハハハ、そうですね。わたしも良い体験をしました、こうして泉の恩恵をこうむるとは……トール元帥の聖戦では、傷ついた神々や兵士がここで傷を養ったとか、幼いころに司祭のお説教で……うる憶えですがな」

「しかし、泉の効能もすばらしいが、景色の良いところですね。周囲の木々や岩など専門の庭師が設計したような美しさだ」

「たしかに……」

 町長はタングリスやテルと共に泉を見はるかす、なんだか、温泉のCMにそのまま使えそうな風情だ。

 あまりの穏やかさにウトウトしかける……。

「……いかん、ここを直ぐに離れなければ!」

 町長の叫びで、熟睡する寸前で目が覚める。

「フワ!?」

「え?」

「あ?」

「どうしたんです!?」

 なにかに怯えたように町長は後ずさり「早く逃げて!」と叫んで山への道を駆けだした、放っておくわけにもいかず、我々は町長を追って山道を峠の向こう、泉が見えなくなるところまで逃げた。

 

「こ、ここまで来れば大丈夫でしょう……」

 泉で石化が解けた町長は、効果が効きすぎて陸上選手並みの脚で駆けてきたのだ、追いかけた我々も息が荒い。

「ど、どういうことなんだ、町長?」

 目が回りそうだったが、タングリスとテルばかりじゃ面白くない、苦しい息を堪えて聞いた。

「殿下、エスナルの泉というのはクリーチャーの一種なんです!」

「「「「「クリーチャー!?」」」」」

「はい、傷ついた者を癒すのは、癒したうえで形のいい木々や岩石に変えて、自分の身を飾るのが習性なのです。心地よさにグズグズしていると、ご覧になったような岩や木々に変えられてしまいます」

「そうだったのか!?」

「危ないところだったんだな」

「ん? ロキの鼻……」

 なんとロキの鼻はピノキオのように木になって伸び始めているではないか!

 セイ!

 テルがすかさずソードを抜いて木になったところを切り落とした。

「えーと……お礼を言わなくっちゃならないんだろうけど、オレの鼻は、もうちょっと高くなかったっけ?」

「いやいや、そんなもんだ。さ、日も暮れる、みんな四号に戻るぞ」

 

 五人乗りの四号に六人はギュウギュウだったが、なんとか乗り込み、一路無辺街道を目指して走り出した。

 

☆ ステータス

 HP:7000 MP:3000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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魔法少女マヂカ・178『高坂侯爵邸・2・高坂霧子』

2020-09-29 15:05:00 | 小説

魔法少女マヂカ・178

『高坂侯爵邸・2・高坂霧子』語り手:マヂカ    

 

 

 ドス! ドス!

 

 小柄は田中執事長の頬を掠めて廊下の壁に突きたった。

 壁には、すでに幾つも小柄が付きたった痕が付いていて、ノンコは目を丸くして金魚みたいに口をパクパクさせている。

「お嬢様、オイタはなりませんぞ」

「オイタじゃないわ、心の準備が整わないうちにドアを開けるからよ」

「開くのを待っておりましたら日が暮れてしまいます」

「フン……なに、うしろの二人は?」

 霧子お嬢様と目が合ってしまった。

 竹久夢二の美人画を思わせる美少女だけど、挑戦的な瞳と立ち姿と清楚なワンピースがチグハグで、川島芳子(東洋のマタハリと言われた女傑)が華族令嬢に化けそこなったみたいだ。

「お嬢様のご学友をお連れしました」

「そんなもの……!」

 言い切る前に槍が飛んできた!

 

 ハッシ!

 

 田中執事長の前に出ると同時に槍を掴んでやった。

「これは……」

 田中執事長が恐縮している、田中は自分で槍を掴むつもりだったのが、わたしに先を越されて驚いている。

「出過ぎたことをしました」

 と言いながら、肩の力は抜かない。これから面倒を見ることになるお嬢様に舐められてはいけないからね。

「二人とも、わたしの前に……いま、槍を掴んだのが渡辺真智香さま、そちらが野々村典子さま。明日からごいっしょに通学いたします」

「学校になんか行かないから!」

「お二人には、筋向いの蓮華の間を使っていただきます」

「え、住み込みなの!?」

「はい、寝食を共にいたしてもらいます。それに、お二人は西郷侯爵ゆかりの方々でもありますし、粗略にはあつかえません」

「ふーん、わたしの気持ちも無視して、田中って、そんなに偉かったんだ」

「お嬢様の事に関しましては、お父様より、この田中が全権を委任されております。田中が申すことはお父様のご意思と思し召しください」

「ふ、ふーん……偉そうに」

「田中の偉さはお父様より委任されたものでございます、偉そうに見えたとしたら、それは霧子お嬢様の行く末をご心配されるお父様のお気持ちと思われませ」

「田中ッ……」

 こいつ、目に殺意が籠ってる……

「二人とも、ご挨拶を」

 ノンコの背中に手をやって前に出す。

 ――なんでわたし!?――という目をするが無視。

「の、野々村典子……です、よろしくお願いします(^_^;)、えと……ノンコって呼んでください……キャフ!」

 お嬢様と目が合い、ネコみたいな悲鳴を上げてわたしの背中に隠れてしまう。

「渡辺真智香だ、遠慮はしない、覚悟してもらおう」

「……ふん」

 ソッポを向いた瞳に影が出来たような気がしたが、まだ、ツッコミを入れるような局面ではない。大人しく田中執事長の後ろに回る。

「では、これにて。さ、お二人とも……失礼いたしますお嬢様」

 田中執事長に促されて廊下に出る。

 ッウオオオオオオオオオオオオ!

 階段まで戻ると、獣が吠えるような泣き声が霧子の部屋から聞こえてきた。

 

 

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ポナの季節・48『関東大会を目指そう!』

2020-09-29 06:51:50 | 小説6

・48
『関東大会を目指そう!』
     
  

ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名



「やるからには、関東大会を目指そう」

 達孝は、遠足の目的地を挙げる程度の気楽さで言った。

「関東大会ですか!?」
 勘のいい美智は驚き、訳が分かっていないモクとチイはポカンとした。
「関東大会ってのは、関東の代表を決めるコンクールで、そのあとは日本一を決める全国大会しかないんだよ!」
 美智が唾を飛ばしながら解説。
「え、ウッソー!」
 モクとチイは、女子高生の常套句で驚きと感激を現して、顔にかかった唾を拭いた。
「本当は全国大会って言いたいけど、それは来年の夏。オレは、もう定年を過ぎていないからな」
「でも『幕が上がる』じゃ、吉岡先生は全国大会を保証してましたよ」
「自分が居ない時のまで保証するのは無責任だし、顧問の影響力というのは、そこまで大きいものなんだ。オレは無責任なことは言わない。それまでに後継の顧問を探せる保証もないしな(本当は育てると言いたかった)」

 そこまで言ったところで、優奈が大学の放送同好会を連れて視聴覚教室に入ってきた。

「ウワー、テレビ局!?」

 美智たちが感動するくらい、機材は本格的だった。
 大学の放送部だと言うと、ちょっとガックリし『ジョーナンデス!』というネット番組を持っているというと、少し株が上がった。
「ウィークリーだけど、アクセス一万ちょっとはある。関東大会までドキュメント撮らせてもらうから」
 優奈が言うと、美智、モク、チイは再び歓声を上げた。

「うちの演劇部もブログをつくろう。タイトルは『ミモチのドラマブログ』だ」
「あ、あたしたちの頭文字ですね!」
「ベースは、このジョーナンデスの人たちが立ち上げてくれる。あとは、おまえらが毎日更新するんだ。じゃ、優奈、進行台本見せてやってくれ」
「先生、この人のこと呼び捨てにしてるけど、教え子なんですか?」
「いや、オレの娘だ」
「え、ウッソー!」
「あのな、今月中でいいから、別の驚き方できるようにしとけ。おまえら表現力なさすぎ」
「でも、親子にしちゃ、似てませんね」
 モクが遠慮なく言う。
「ああ、オレとは血の繋がりないからな」
「ええー!?」

 ここで、ジョ-ナンデスのみんなが笑った。

「今、驚いた後、瞬間でいろいろ想像したろ。その驚きと想像力が演劇の基本なんだ。この五分で、おまえらは七回ほど驚いた。美智は関東大会のことは知ってたから感動のレベルが違うけどな。見ろ、ジョ-ナンデスのみんなも笑ってるだろ。おまえらの驚きが新鮮だからだ。さあ、舞台に上がれ『とことん自己紹介』をやるぞ」
 三人は、いそいそ舞台に上がって自己紹介したが、通り一遍でまるで面白くない。
「おまえたちは、友だちぶってるけど、その程度だ。もっとアピールと、相手への疑問を持て。感動は自然にやってくる。チイから話し始めてみろ。まず、なんでチイなんてニックネームなんだ?」
「えと、苗字が地井なのと、背がチッコイから。でも背の高さはAKBのたかみなと同じです!」
「それでチイって言われても平気なんだ」
「そうだよ、センターとれなくても総監督はやれるぞ!」

 チイの精一杯の背伸びに、みんなが笑った。それから、互いの肉体的やらプライベートの告白やら暴露大会になった。美智が出べそなことや、モクが三日目の便秘であることから、スキンケアの話へ、四日を超えると切れ痔になりやすいこと「あたしは鉄の肛門してんだ!」などと、日常が丸出しになって、とてもいい絵が撮れたとジョーナンデスの一同は喜んだ。

 三人は自己解放と、自然なコミニケーションの有り方を実感した。

「最後に、あたしから。あたしはお父さんとは血の繋がりはないけど、お母さんとは血のつながりがあるの。さ、ここから考えられる寺沢家の問題はなんでしょう?」
 三人とも興味津々になった。

 あいつら、思ったより初心で良い感性をしていると感心した達孝であった。

 

ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒

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かの世界この世界:86『エスナル温泉!?』

2020-09-29 06:38:51 | 小説5

かの世界この世界:86

『エスナル温泉!?』    

 

 

 三十秒で乾いてしまった。

 

 ほら、町長の重しが取れた反動で、着いたばかりのエスナルの泉に飛び込んでしまった。

 とっさのことに黒魔法を使うことも出来ずに濡れネズミになって岸に上がった。

 さすがに、ガキンチョのロキも、箸が転んでも笑う年頃のケイトも気の毒そうな顔をしている。タングリスは「申し訳ありません!」とタオル代わりに上着を脱いでわたしを拭こうとし、テルは乾燥魔法がないかとウィンドウを開くし、ポチは頭上でぐるぐる飛び回って、ささやかな風圧で乾かそうとしてくれた。

 その下僕たちのアクティビティーとは関係なく、クシャミ一つする間もなく乾いてしまったのだ。

「まるで、アルコールが揮発していくみたいだ!」

 アルコールの揮発なら気化熱を奪われ寒くなるのだが、それもない。いや、少しはある、石化した町長をボルガの船曳みたいに引っ張ってきて汗みずくだったのが、すっかり爽やかになってしまっている。

「これは乾燥ではなく、泉のエスナの効果なのですよ!」

 タングリスが閃くと同時に胸を張る。

「すまん、もう上着を着てくれ」

 上着を脱いで胸を張ると、タングリスの形のいいバストが強調されて面白くない。

「じゃ、わたしたちも飛び込もう!」

「そうだ、汗びちゃだしね!」

 ロキとケイトが思いつくと同時に泉に飛び込んで他の者も続く。

 なんだか楽しそうなので、わたしももう一度浸かってみる。

 あ~あ~極楽極楽~🎵 

 温泉状態になってしまった。じっさい、泉の周辺は形のいい岩や、盆栽のように枝ぶりのいい木々があって、湯気さへ立ち上っていれば完璧な温泉の風情なのだ。

 

 けして町長の事を忘れていたわけではない。

 

 しかし、あまりの心地よさに、もう少し……もう少し後でもいいだろうと思ってしまう。

 ……みんな……町長さんを……町長さんを……直してあげなきゃ……

 ポチが耳元で囁いているのに気付いたときは、日が傾きかけていた。

「みんな、さっさと上がって! 町長の石化を解くぞ!」

 真っ先にタングリスが上がって、みんなを促した。

 泉の効果だろうか、誰言うともなく町長を担ぎ上げて泉に浸けた。

 石化していた時間が長かったせいか、解けだすのに一分近くかかった。

「よし、もう大丈夫だ。我々は先に上がろう。浸かり過ぎていると上がれなくなってしまうぞ」

 ロキは少しムズがったが、ポチに叱られながら上がって、みんなで町長の回復を待った。

 

「おや……なんで服を着たまま風呂に入っているんです?」

 

 石化の解けた町長は、そう呟くとスルスルと服を脱ぎ始めた。

「町長、脱ぐな、ここは温泉じゃない! 聞こえてない……ロキ、町長を止めてこい!」

 ロキが飛び込んで、背中を蹴り上げて、やっと町長は正気に返った。

「あ、あ、みなさん!?」

 町長は前を隠しながら、やっと上がってきた……。

 

 

☆ ステータス

 HP:6000 MP:3000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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銀河太平記・011『修学旅行・11・九段坂』

2020-09-28 12:36:30 | 小説4

・011

『修学旅行・11・九段坂』   

 

 

 江戸時代は九段坂から海が見えたという。なんだかお伽話のようだ。

 

 その九段坂を見下ろす大鳥居の脇に立っていると、坂道の両脇が人の海のようになっている。

 東京から見ればド田舎と言っていい火星からやってきたので、人が大勢いるという状況そのものがお伽話のようだ。

「アキバの人出もすごかったけど、ここは、もっとすごいわね!」

「持ち物には気を付けろよ、もう追いかけっこはたくさんだからな」

「失礼ね、もう、あんなドジはしないわよ」

「わたしも注意してゆし、だいじょうぶなのよさ」

「陛下がご参拝になるんだ、警備も厳重だし、めったなことはないだろう」

「ヒコの言う通りよ、天皇陛下の車列に狼藉を働いた者は三百年前の虎ノ門事件以来ないわよ」

「おまえ、虎の門事件なんて知ってんのか?」

「いちおうね、テルといっしょに調べてみたの、天皇や皇族方が参加される行事のセキュリテー記録。ほかの国家的行事にくらべて事件や事故は、すんごく少ないの」

「それは言えてるだろうな、扶桑でも将軍御隣席の行事関係では犯罪率が低くなる傾向がある」

「でも、ほんとに気を付けろよ」

「だいじょうぶ、いつもとは違うとこにしまってるし」

「腹にでも巻いてるのか?」

「へへ、ここよ」

「う」

 未来が胸を押えて、思わずガン見してしまう。

「わ、なに赤くなってんのよ!」

「なってねえよ!」

「あははは」

「お、おちょくるな(-_-;)」

 俺たちは小学生のように興奮している。

 

 おれたち火星人と月人は大鳥居近くのスペースを与えられている。

 あ、火星人てのは一世紀前から移住した火星居留民のことだ。とっくに独立して、俺たち日本出身の者はアルカディア平原に扶桑政府を作っている。

 扶桑というのは昔の日本の美称だ。大東亜戦争の時代に戦艦扶桑というのがあった。国産初の超ド級戦艦で、進水式の時に扶桑と命名された。言ってみりゃ戦艦日本と呼ぶのと同じで、政府も海軍も国民も、それだけ大事大切に思ったってことだ。

 俺たちの先祖は火星に永住すると決めた時、自分たちのベースを扶桑と名付け、五十年前の独立で、扶桑を国名として受け継いだ。

 政体は立憲君主国で、元首は将軍(正式には征夷大将軍)だ。

 今上陛下の二代前から日本では女性天皇を立てようという動きが盛んだった。

 王位や皇統を巡っての争いは世の乱れの元になる。

 そこで男系継承なら皇位に付くであろうと言われてきた、その名も扶桑宮さまは、自分から望まれて火星開拓団の一員となられた。火星のベースが扶桑と名付けられたのは扶桑宮に由来……かどうかは、当の宮さまが否定なさって居られるので曖昧のままだ。

 扶桑政府樹立の時に、日本政府に働きかけて、宮さまは徳川慶喜以来廃止されていた征夷大将軍の宣下を受けられた。

 自ら火星開拓の先頭に立って扶桑国の求心力になるとさるとともに、自分は日本の皇位継承者からは外れることを内外に示されたのだ。

 普段は意識しない扶桑のことをあれこれ思ってしまうのは、そういう歴史的配慮をした火星人への配慮が、鳥居横と言う特等席の用意に繋がっているのだと思ったからだろう。

 ウワーーー

 潮騒にも似た歓声が九段下の方から湧き上がってきた。

 いよいよ陛下の車列が見えてきたようだ……。

 

 ※ この章の主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子

緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女

 ※ 事項

扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

 

 

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ポナの季節・47『ちょっといいかな』

2020-09-28 05:59:40 | 小説6

・47
『ちょっといいかな』
    
  

ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名



「ちょっといいかな」

 これは、日本においては、相手との関係性を深化させるための常套句で、日本中で一日に何千万回と使われている。
 むろん相手によって反応は異なる。
 友だち同士なら「え、なに?」と気楽に人の、主に悪口を中心とした噂話になったり。お巡りさんだったら職務質問の枕詞で、こちらにヤマシサがなければ普通に答える。母親なら、なにか用事をたのまれる前兆。親父なら、一般的に説教の前兆……とかね。

 今日、ポナは、この「ちょっといかな」を二回も聞いてしまった。

「ちょっといいかな」の最初は吉岡あかね先生である。
「ほんの三十分ほど観て欲しいものがあるんだけど」
 放課後のピロティーで気軽に声をかけられた。
「「いいですけど」」
 由紀と奈菜がいっしょだったので、互いにチラ見して、お気楽に返事した。
 で、玄関わきの相談室に入ると、鈴木友子がいた。父達孝の公立と違って、掃除も設備も行き届いていた。その行き届いた設備が、ある状態にしてある。
「じゃ、いくわね」
 程よい冷房、締め切った暗幕、目の前のスクリーンがわりのホワイトボードにプロジェクターとパソコン。

 いきなり『アルプスの少女ハイジ』のテーマ曲が流れて画面の中の緞帳が開く。

 ほとんど女の子一人の芝居。

『クララ ハイジを待ちながら』というロゴが入っていて女の子がクララであると察せられる。
 このクララは、ハイジとオンジのお蔭で立つようになれたあとのクララの話し。
 立てるようになっただけで、しばらくは人生バラ色だったが、やがて学校にいくと意に沿わないことが多く、クララは明るく元気に不登校をつづけている。一日の大半を同じ不登校の女の子とのチャットで潰している。相手の女の子のハンドルネームは「あなた」であり、観客は、いつのまにかクララが自分に語り掛けてくるように思える。
 途中シャルロッテという新人のメイドがチラリと出てくる。ロッテンマイヤーさんの声も、時々する。

 大阪の天〇寺商業という学校の演劇部が、数年前に上演したのをYouTubeから拾ってきたものらしい。そんなに上手い演技ではないけど、一生懸命さと、ストーリーと台詞の面白さは、はっきり分かった。

「どうかな、これをアゴダ劇場で演ろうと思うんだけど、シャルロッテとロッテンマイヤーさんをやってもらえないかな……」

 由紀は生徒会があるので、自動的に奈菜とポナが引き受けることになってしまった。
 新入りの常勤講師とはいえ、先週初顔合わせのときに人間関係ができてしまっている。それにクラスメートにして唯一の演劇部員である鈴木友子に、すがり付くような目で見られては断れるものではない。ま、ほんのチョイ役だし……と思い直すポナであった。

 二度目の「ちょっといいかな」は、帰りの電車の中だった。

 知らない(相手はポナをよく知っているが)修学院の男子生徒だった。
「よかったら、この手紙読んで!」
 顔を真っ赤にして手紙を押し付けると、ちょうど停まった駅で、そそくさと降りてしまった。
 駅に着いてから、歩きながら手紙を読んだ。
「……バカじゃない?」

 手紙には「付き合ってください。蟹江大輔」とだけあった。



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父が顧問をする演劇部の部長

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かの世界この世界:85『ボルガの船曳』

2020-09-28 05:45:10 | 小説5

かの世界この世界:85

『ボルガの船曳』    

 

 

 まるでボルガの船曳だ。     ヴォルガの船曳き - Wikipedia   

 

 主神オーディンの娘にしてヴァルキリアの主将! 堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士たるブリュンヒルデが……なんでこんなことをせねばならんのだあああああ!

 わたしのツインテールを二股の四つに分けて、それを我が下僕ともリトルデーモンとも呼べる者ども、タングリス、テル、ケイト、ロキに持たれ……ま、それは見ようによっては我が魔力、我が威光にひれ伏す者どもを導いているようにも見えないでもない。

 しかし。

 その麗しき二股ツィンテールの上に石化した町長を載せて引っ張っている姿は、まるでボルガの船曳だ!

 知っているか、ボルガの船曳!?

 帝政ロシアのころ、ボルガ川を遡上する船を引っ張っていた人足たち。

 数人から数十人の人足たちが、船の舳先から延ばしたロープを牛か馬のように肩や頭に掛けて、お頭の音頭に合わせて――エイコーラ エイコーラ もーひとーつエイコーラ――って船を川上に引っ張っていくんだ。あの奴隷みたいにこき使われたボルガの船曳を彷彿とさせる姿だ!

 こんなことをやるなら、父オーディンに命ぜられたままムヘンで幽囚の身であった方がよっぽどマシと思う。

 並のツィンテールならば、バリバリと頭の皮ごと持っていかれてしまっていただろう。

 

 エイコーラ…………エイコーラ…………

 

「その歌唄うなあああ!」

「自然と出てきてしまう」

「ジト目こわ~い」

「ジト目とはなんだ! この体勢で振り返ることもできないんだぞーー!」

「背中でジト目が分かるしい」

 ケイトとロキが好き放題を言う。タングリスは気づかないふりをして、テルは笑いをこらえているのも癪に障る。

「峠を越えました、木の間隠れに泉が見えます!」

「わ、分かってる……」

 タングリスの言いようは、子どものころにお八つを欲しがってむずかるわたしをなだめた婆やにソックリだ。

 くそ……無性にお腹のすく性質で、お昼を食べて三十分もするとお八つを欲しがるわたしに「ほら、あの時計の針が五センチも下がればお八つでございますよ」となだめおった。

「五センチとはどのくらいじゃ?」

「ほんの、これくらいでございますよ」

 そう言って指を広げて見せおった。あの時の婆やのオタメゴカシを思い出してしまう。

「ブリ、がんばれ! がんばれ、ブリ!」

 人間の姿になったポチが、目の前を飛びながら励ます。

 ポチは健気なもので、その三十センチにも満たない体に紐を町長の首と自分の肩に結び付けて引っ張っている。

 この健気さがなければ、右手の先をハエたたきにして叩き落しているところだぞ!

「がんばれ、ブリ!」

「ブリブリゆーな! 我はオーディンの娘にして堕天使の筆頭たるブリュンヒルデなるぞおおお!」

「あ、MPが戻った!」

 ケイトが嬉しそうに叫ぶ。ケイトのMPは歩くと回復するようだ。

「町長をリペアしながら行けるじゃないか!」

「それなら四号を持ってこいいいいい」

「四号を取りに戻っている間に泉にたどり着けます」

 タングリスは容赦がない……クソ!

 

 そうしてニ十分。ようやくエスナルの泉についた。

 

「姫の御髪を戻してさしあげろ」

 タングリスの一声で、石化した町長を下ろし、頭皮ごと抜ける寸前の髪を解放してくれた。

「ウ、ウワーーーー!」

 姫! ブリ! ブリュンヒルデ! 

 みんなが叫ぶ!

 急にツインテールの負荷が無くなったので、わたしは前のめりのまま泉に突進して飛び込んでしまった。

 

 ドッポーーーーン!

 

☆ ステータス

 HP:6000 MP:3000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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せやさかい・171『小鳥が来る街』

2020-09-27 13:16:32 | ノベル

・171

『小鳥が来る街』頼子    

 

 

 あれは『小鳥が来る街』だった。

 

 ほら、ソフィアが感動したパッカー車(ゴミ収集車)のメロディー。

 1964年というから、もう半世紀以上も昔、大阪市の環境緑化運動の曲として作られ、島倉千代子さんという女性歌手の人が歌っている。

 かわいい小鳥ガ来る街は~ 緑を映した空あ~がある~(^^♪

 きれいで可愛い歌詞なんだ。

 世界中にいろんなゴミ収集車があるんだろうけど、こんな可愛いメロディーを奏でながら仕事をしているのは日本だけだろう。

「懐かしいわねえ……」

 ブログの記事にするために原稿を見せに行くと、院長先生は遠い昔の事のように微笑まれた。

「あの、今でもゴミ収集車が流してるんですけど」

「いえね、この歌が出来た時に大阪中の小学校に録音テープが送られてね、運動会じゃ、それにフリを付けて子どもたちに踊らせたのよ」

「え、そのころから先生やってらっしゃったんですか!?」

 わたしは素直に驚き、計算の早いソフィアは院長先生を化け物を見るような目で見ている。そうだろう、院長先生が新任の先生であったとしても66年も昔、86歳以上にはなっている。先生はどう見ても60歳は超えていないはず。

 伸ばした皴をウィンプルの中に隠しているとか? ますます化け物!

「アハハ、違うわよ。わたしが踊らされたの。小学三年生だった」

「あは、そうだったんですか(^_^;)」

「男の子と手を繋いで踊るのよ、男子が外側、女子が内側の輪になって逆に回るの。二回続けてやると、クラスの男子総当たりになって、とっても嫌だった。神父の息子ってのが居てね、他の女子には人気があったんだけど、わたしは嫌いでねえ。女の子って嫌いになると、その子に関わるもの全部が嫌いになって、キリスト教も嫌いになった」

「え?」

「でも?」

「アハハ、それが修道女になって、今ではミッションスクールの学院長。人生って面白いわねえ」

 先生は面白い人生を歩んでこられたようで、含みのある笑顔に、うちのお祖母ちゃんと同質の深さを感じる。これは日を改めて聞いてみたいものだわ。

「そうだ、ゴミ収集車のメロディーって街によって違うから、興味が合ったら調べてみるといいかもしれないわ」

「そうなんですか?」

 ソフィアが身を乗り出す。

「ええ、他にも自治体や街によって独特のメロディー使ってたりするから、そういうのも面白いかもしれないわね」

「はい、調べてみるデス!」

 どうやら、わたし以上にソフィアは散策することに、散策して発見することに燃えてきたようだ。

 軽い気持ちで始めた散策部だけど、ソフィアとコンビなら、まだまだ面白い部活になりそうだ。

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ポナの季節・46『一年五組の佐伯美智』

2020-09-27 06:21:09 | 小説6

・46
『一年五組の佐伯美智』
         
  

ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名




「さっきお母さんから電話があった」

 

 美智は、その一言でホコリがうっすらと積もった相談室の机の上に目を落とした。
 成績はイマイチだが、敏い子だと達孝は思った。


「どうしても演劇部がしたい。でも、うちの学校無いから、勝手に作って連盟に届け出した。先生の名前で……」
「顧問の引き受け手はなかったのか?」
「五人の先生にあたったけど、みんな断られた」
「で、おれの名前を使って連盟に加盟したんか?」
「……もういい」
「なにが、もういいんだ?」
「お母さんが電話してきて……全部ばれちゃったら、もうおしまい。演劇部なんて存在しないし、寺沢先生は顧問でも何でもないこと分かっちゃったら、もう何もできない。連盟加盟も取り消しだし、コンクールにも出られない……」

 そこまで呟くように言うと、美智は大粒の涙を流したかと思うと「ワッ!」と机につっぷして泣きだした。

「なんで演劇部作ろうって思ったんだ?」

「幕を上げたかった、あた、あたしらの、あたしらの幕を……!」
「『幕が上がる』でも観たのか?」
 達孝は、空気を柔らかくするつもりで、半ば冗談で言った。


「なんで分かるの?」


 意外な答えだったが、美智の情熱は、幼くはあるが、ちょっとばかり本物のニオイがする感じた。
「あれははた迷惑な映画だ。演劇部なんてあんなに簡単なものじゃないし、あの吉岡という女の先生は無責任だ。新任の一年間も全うせずに教師を辞めて教科指導も、学校の仕事も演劇部も捨てて女優になる。オレが指導教官なら、ぜったい引き留めた」
 達幸は映画は観ていないが、原作の小説は読んでいた。正直な感想である。案の定美智は、しゃくりあげながらも恨めし気な目で達幸を見上げた。
「でも、それを通り越して芝居をやることの楽しさや素晴らしさを佐伯たちは受け止めたんだろう」
「……うん、これだって思った。中学は三年間しょぼくれてたけど、高校に入ったら、あんなのが出来るんだって、たった一つの虹だった。でも、もうおしまいなんだ……」
「どこで稽古していたんだ?」
「カラオケ屋とか、学校の空いてる教室」
「空き教室は、鍵がかかってるだろう」
「仲間に鍵開けが上手いのがいるから……」

 並の教師なら、この教室の施錠を破って侵入したことだけで話を打ち切り、懲戒にかけていただろう。

「それほどやりたい芝居があるのか……?」
「うん…………映画の芝居は細切れで良く分からないけど、あの中で吉岡先生は言うんだ『あたしは過去十年に遡って全国大会の芝居は観た』って。だから基礎練習とかは、まだまだだけど、パソコン持ち込んで、高校演劇の作品観まくった……」
「で、いい芝居が見つかった……そうだな」
「なんで分かるの……?」
「そうでなきゃ、日曜の夜十時過ぎまで家に帰らないなんてことないだろ。それに、なにより、佐伯、お前の目は目標を見つけた目だ」

 再び道の目から、大粒の涙が溢れてこぼれた。

「そんな風に言われたの……初めて。少しだけ気持ちが軽くなった」
「本はなんだ?」
「これ……」


 美智は四六判のくたびれた本を出した。『ノラ バーチャルからの旅立ち』という表題の戯曲集だった。四編の戯曲が入っていたが、お目当ては手垢の付き方で分かった。


「『すみれの花さくころ』か……」
「うん、最初ネットで名古屋音楽大学がやってるの見つけて、大阪の天王寺商業が本選でやったの観た。切なくて悲しくて、でも人間っていいもんだって、心が温まるの!」
「そうか、いいものに出会ったんだな」
「先生、お母さんには、あたしから謝る、シバカレたっていい。このまま、このまま演劇部続けさせてくれないかな。お願い、お願いします!」
 美智は勢いよく頭を下げた。ゴツンと痛そうな音がした。

「謝るのは、オレがやっておいた。演劇部が無いなんて言ってないからな」
「ほ、ほんと……ですか!?」
「これも何かの縁だろう。オレは一年で定年、その間しか付き合ってやれない。それでいいなら、いけるところまで行ってみるか?」
「は…………はい、やります。ありがとう、ありがとうございます寺沢先生!」
「ドアの外の三人も入ってこい」


 ドアの外に聞き耳頭巾が三人いることはお見通しだった。みんな揃って校則違反のナリだったが、目は輝いていた、そして美智の顔を見ると大笑いした。ホコリだらけの机に突っぷして泣いていたので、目を中心にしみだらけ、おまけに額にタンコブ。達孝もいっしょに笑ってやった。

 かなり波風が立ちそうだったが、定年前に、いい仕事ができそうな予感のする寺沢達幸先生ではあった。

 



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長

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かの世界この世界:84『エスナルの泉を目前に』

2020-09-27 06:09:58 | 小説5

かの世界この世界:84     

『エスナルの泉を目前に』    

 

 

 

 やっぱり無傷では済まなかった。

 

 石化したミュンツァー町長の体には縦に亀裂が入っていて、今にも二つに割れてしまいそうになっている。

「エスナルの泉まではもたないなあ」

 エンジンを止めて操縦手ハッチから出てきたタングリスはため息をつく。

「わたしがリペアをかけてみよっか……」

 オズオズと手を上げるケイトにみんなが注目する。

「リペアレベルを見せてみろ」

「えと……こんなだよ」

 ケイトが開いたウィンドウにはキロリペアとある。

 リペアには、キロ、メガ、ギガ、テラ、ペタとある。つまり、ケイトの使えるリペアは一番下の単位だ。

「これじゃ、十五分に一回はリペアしないともたないな」

「しかたない、エスナルの泉に着くまでは町長さんに張り付いてるよ」

 ケイトは砲塔後部のゲペックカステン(道具入れ)の上に身を晒し、一人後ろ向きに座って町長に付き添うことになった。

 

 山一つ回り込めばエスナルの泉が見えてくるところで妙な音がし出した。

 シュッ……シュッ……シュッ……

 

 砲塔側面のハッチから身を乗り出すと、ゲペックカステンの上でケイトが焦っている。

「どうした?」

「だめだ、MPが足りなくてリペア出来ない」

 音は、ケイトが白魔法を空振りする音だったのだ。

 ガクン ブロロロ…………

 軽く前のめりになって四号が停車した。タングリスが気づいてゆっくりと停めたのだ。

「エーテルはないのか?」

「使い果たしてしまったよ、さっきの戦いで」

 ケイトはみんなのHPを回復させるためにケアルやケアルラを使いまくっていたのだ。

「こんなときに限ってペギーは現れない……」

 ブツブツ文句を言いながらブリュンヒルデは砲塔の上に立って遠くを捜すふりをする。

「そんな見える範囲ににはいないぞ」

「ムヘン街道で商売繁盛だったからな……」

「ブリねえちゃんのエスナは使えないのか?」

「我がMPは、とうにからっけつだ」

「仕方がない、ここから歩く」

 タングリスが路上に飛び降りた。

「歩くのかあ?」

「町長は四号の振動にはたえられないでしょう」

「しかし、町長をどうやって運ぶ?」

 石化した町長は、とても一人でオンブできるようなものじゃない。

「姫の御髪(おぐし)を使います」

「わ、わたしの髪の毛!?」

「はい、姫の髪は玄武を怯ませ足止めをする力があります。その強さなら石化した町長でも運べます」

 乗員一同の目がブリュンヒルデに集中する……。

「ハ、ハハハ、何を言う! その玄武との戦いで、我がツインテールはロキと変わらぬショートヘアになっておるではないか、こんな短い髪で何ができると言うのだ!?」

「失礼します」

 一言言うと、タングリスはブリュンヒルデの両足首をムンズと掴んだ。

「な、なにをする!?」

「ごめん!」

 タングリスはブリュンヒルデの両足首を掴んだまま、ヘリコプターのローターのように振り回し始めたではないか!

「ヒエーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 呆気に取られて見ていると、しだいにブリュンヒルデの髪が伸び始め、三十秒ほどしたころには三メートルほどの長さになった。

「すごい、遠心力で戻してしまった!」

「まだまだこれから!」

 タングリスは、さらに回転速度を速め、その勢いで振り回したまま浮き上がると、二分ほどで十メートルを超えた。

「戻し過ぎだぞ、わたしはラプンツェルではないぞおおおおおお……」

 それでもタングリスは回転速度を緩めず、さらに倍の二十メートルほどに伸ばした。

「このようにします。姫を先頭に、残りの者は後ろに回ってくれ」

 言われたままにすると、ブリュンヒルデの髪を四つの束に分けてそれぞれに持たせた。

「なんなんだ、これは?」

 それには応えず、四つの束をブリュンと振ると、髪束は波打ち重なり合って、クッションの効いた橇のようになった。

「みんな、ゆっくりと町長を橇の上に移してくれ」

「「「お、おお」」」

 そう言うと、ゲペックカステンに括り付けてあった町長を橇に横たえた。

「ウオ! ちょ、ちょ、ちょーーーーーータングリス!」

「これも修行! さ、行くぞ!」

 

 ブリュンヒルデを先頭に、その髪を荷車のように引っ張って、我々は山一つ向こうまで迫ったエスナルの泉を目指したのだった。

 

☆ ステータス

 HP:6000 MP:3000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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ポナの季節・46『一年五組の佐伯美智』

2020-09-26 06:58:54 | 自己紹介

・46
『一年五組の佐伯美智』
         
  

ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名


「さっきお母さんから電話があった」

 美智は、その一言でホコリがうっすらと積もった相談室の机の上に目を落とした。
 成績はイマイチだが、敏い子だと達孝は思った。

「どうしても演劇部がしたい。でもうちの学校無いから、勝手に作って連盟に届け出した。先生の名前で……」
「顧問の引き受け手はなかったのか?」
「五人の先生にあたったけど、みんな断られた」
「で、おれの名前を使って連盟に加盟したんか?」
「……もういい」
「なにが、もういいんだ?」
「お母さんが電話してきて……全部ばれちゃったら、もうおしまい。演劇部なんて存在しないし、寺沢先生は顧問でも何でもないこと分かっちゃったら、もう何もできない。連盟加盟も取り消しだし、コンクールにも出られない……」

 そこまで呟くように言うと、美智は大粒の涙を流したかと思うと「ワッ!」と机につっぷして泣きだした。

「なんで演劇部作ろうって思ったんだ?」

「幕を上げたかった、あた、あたしらの、あたしらの幕を……!」
「『幕が上がる』でも観たのか?」
 達孝は、空気を柔らかくするつもりで、半ば冗談で言った。

「なんで分かるの?」

 意外な答えだったが、美智の情熱は、幼くはあるが本物だと感じた。
「あれははた迷惑な映画だ。演劇部なんてあんなに簡単なものじゃないし、あの吉岡という女の先生は無責任だ。新任の一年間も全うせずに教師を辞めて教科指導も、学校の仕事も演劇部も捨てて女優になる。オレが指導教官なら、ぜったい引き留めた」
 達幸は映画は観ていないが、原作の小説は読んでいた。正直な感想である。案の定美智は、しゃくりあげながらも恨めし気な目で達幸を見上げた。
「でも、それを通り越して芝居をやることの楽しさや素晴らしさを佐伯たちは受け止めたんだろう」
「……うん、これだって思った。中学は三年間しょぼくれてたけど、高校に入ったら、あんなのが出来るんだって、たった一つの虹だった。でも、もうおしまいなんだ」
「どこで稽古していたんだ?」
「カラオケ屋とか、学校の空いてる教室」
「空き教室は、鍵がかかってるだろう」
「仲間に鍵開けが上手いのがいるから……」

 並の教師なら、この教室の施錠を破って侵入したことだけで話を打ち切り、懲戒にかけていただろう。

「それほどやりたい芝居があるのか……?」
「うん…………映画の芝居は細切れで良く分からないけど、あの中で吉岡先生は言うんだ『あたしは過去十年に遡って全国大会の芝居は観た』って。だから基礎練習とかは、まだまだだけど、パソコン持ち込んで、高校演劇の作品観まくった……」
「で、いい芝居が見つかった……そうだな」
「なんで分かるの……?」
「そうでなきゃ、日曜の夜十時過ぎまで家に帰らないなんてことないだろ。それに、なにより、佐伯、お前の目は目標を見つけた目だ」

 再び道の目から、大粒の涙が溢れてこぼれた。

「そんな風に言われたの……初めて。少しだけ気持ちが軽くなった」
「本はなんだ?」
「これ……」

 美智は四六判のくたびれた本を出した。『ノラ バーチャルからの旅立ち』という表題の戯曲集だった。四編の戯曲が入っていたが、お目当ては手垢の付き方で分かった。

「『すみれの花さくころ』か……」
「うん、ネットで名古屋音楽大学がやってるの見つけて、大阪の天王寺商業が本選でやったの観た。切なくて悲しくて、でも人間っていいもんだって、心が温まるの!」
「そうか、いいものに出会ったんだな」
「先生、お母さんには、あたしから謝る、シバカレたっていい。このまま、このまま演劇部続けさせてくれないかな。お願い、お願いします!」
 美智は勢いよく頭を下げた。ゴツンと痛そうな音がした。

「謝るのは、オレがやっておいた。演劇部が無いなんて言ってないからな」
「へ…………ほ、ほんと……ですか!?」
「これも何かの縁だろう。オレは一年で定年、その間しか付き合ってやれない。それでいいなら、いけるところまで行ってみるか?」
「は…………はい、やります。ありがとう、ありがとうございます寺沢先生!」
「外の三人も入ってこい」

 ドアの外に聞き耳頭巾が三人いることはお見通しだった。みんな揃って校則違反のナリだったが、目は輝いている、そして美智の顔を見ると大笑いした。ホコリだらけの机に突っぷして泣いていたので、目を中心にしみだらけ、おまけに額にタンコブ。達孝もいっしょに笑ってやった。

 かなり波風が立ちそうだったが、定年前に、いい仕事ができそうな予感のする寺沢達幸先生ではあった。

※ 『すみれの花さくころ』 名古屋音大上演のURL ラスト三分のレビューです

 
 https://youtu.be/ItJpVtCcxMQ?t=326

ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長

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かの世界この世界:83『ポチの力』

2020-09-26 06:45:16 | 小説5

かの世界この世界:83     

 『ポチの力』     

 

 

 ポチの変身にも驚いたが、玄武を一撃で撃退した力には、もっと驚いた。

 

「どうして、あんな力が身についたんだ?」

「わ、わたし……なにかやったの?」

 墜落のショックか、ポチ自身には自覚がない。しかし、言葉は人間のようにしっかりしてきてみんな感動した。

「「「おお(*_*)」」」

「ポ、ポチイイイイイ!」

「く、くゆしい……!」

 ロキが、さっきよりも強く抱きしめるので手足をばたつかせる。それが、また可愛いので、また笑ってしまう。

「ロキ、ちょっと離してやれ」

 タングリスに言われて、ロキはポチを肩の上に座らせてやった。必死でロキの首にしがみ付くのが可愛くて、みんな目をへの字にしてしまう。

「みんな、ポチの話を聞こう」

 タングリスが身を乗り出して、やっと冷静に話を聞く態勢になる。

「実はな…………」

「ファウ(*_*;!」

 説明してやると、真っ青になってロキのシャツの中に逃げ込んでしまうポチ。

「そ、そんなこしたの!?」

 完全に忘れたのかと思うと、シャツの中をゴソゴソ動き回り「や、やめろ、くすぐったい!」と嫌がっているのか嬉しがっているのか分からないロキの襟首から顔を出した。

「思い出したよ! 空の上にぶっ飛んだら、シリンダーの群れの中に突っ込んで、そいつらが語り掛けてくるんだよ! シリンダーが、それも大勢が喋るんで、気持ち悪くてビックリした!」

 自分自身がシリンダーであることを棚に上げている。

「山の向こうには四号のみんなが居るし、早く知らせなきゃと思って急降下して地面にぶつかりそうになって、山肌の木や草に掴まりながらスピードを落として……気づいたら、手や足みたいなのが出てきて、それでも、うまく停まらなくて、あちこちぶつかってビュンビュン飛んでるうちに、みんなのところに出てきてしまったの」

「それで、ヨタついていたんだな」

「そしたら、みんなが亀の化け物みたいなのにやられそうになっていて、それで、突っ込んだら……やっつけられたんでビックリした!」

「しかし、あの力はすごかったぞ!」

「フフ、あれは無意識のうちに我が闇の力をチャージしたのだ、ポチはすでに我がリトルデーモンなるぞ」

「あ、それはない」

「ポチ、試しに、あの木をへし折ってみろ」

「ラジャー!」

 タングリスが示した木を見るや、一瞬のタメで突っ込んでいった。

 セイ!   ゴッチン……。

「アイターーーー!」

 大きなタンコブを作っただけで、ヨタヨタとかえってくる。客観的には笑える状況なのだが、だれも笑わない。ロキなどは、ポチを抱え上げて、涙を流している。

「ポチ、おまえは、あの図体のでかい玄武の鼻先目がけて突っ込んでいったように見えたんだが、ただの成り行きか?」

「あ……えと……攻めるんだったら、あそこだなあって……思ったのかも……よく分かんないよ」

「ひょっとして……ポチにはアナライズの力があるんじゃないかな?」

「でも、今の木はヒビも入らなかったし」

「ひょっとしたら……ここ一番という時にしか目覚めない力なのかもな」

「よし、我が魔力によって、力を定着してやろう」

「いいから、行くぞ」

 ポコン

「あいた! ブツことないだろ! タングリス、なんか言ってやれよ」

「見ておりませんでした」

「プン、では出発するぞ!」

 全員が履帯の修理の終わった四号に乗り組み、タングリスがイグニッションキーを回した。

 

 ブルン ブロロロローーー

 

 後ろのエグゾーストから黒い煙が噴き上がり、ブルンと四号が身震いする。

「あ、ストップ! 町長さんにヒビが入ってる!」

 ポチが手を上げてストップを要請した……。

 

☆ ステータス

 HP:6000 MP:3000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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ポナの季節・45『父達孝のお人よし』

2020-09-25 06:18:54 | 小説6

・45
『父達孝のお人よし』
           
  

ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名


 達孝が出勤すると、教頭が渋い顔で手にした電話の送話器を指さした。

 教頭の顔つきからP(保護者)からのクレーム電話であると知れる。達幸は、自分の机のコーナーの電話に転送してくれるように教頭にジェスチャーした。

「はい、お電話替わりました。社会科の寺沢ですが……」

――先生、クラブ活動なんとかなりませんか、昨日も娘が帰ってきたの夜中の十一時。これまでは熱心なご指導と我慢してましたが、これは、もう度を越しています。こう言っちゃなんですけど、ご定年寸前の年に演劇部つくって、ちょっと張り切り過ぎじゃないんですか。映画の、なんて言ったっけ……『幕が破れた』いや『幕が下がった』『幕が上がった』ですか。それをご覧になって一念発起されたらしいですが、教師の思い入れや思い込みで生徒をむりやり勧誘して、ここまでやるのはやりすぎです。中間テストでも成績を落としてているし、健康にも良くありません。むろん高校生の生活からも逸脱しています。このまま続くようなら教育委員会と相談させていただきますが。今日一日、よーくお考えいただいて、お電話いただけます? 午後の七時から待っています!――

 ここで、電話が切れそうになったので、達孝は慌てて聞き返した。

「すみません、まだお名前をお伺いいたしておりませんが」
「教頭先生にお伝えしました! 連携の悪い学校ですね」
「申し訳ありません、教頭は席を外しておりますので(教頭に目配せ)……はい、佐伯様ですね。一年五組の佐伯美智さんのお母様ですね。はい、本日午後の七時にお電話させていただきますので……はい、よろしくお願いたします」

 佐伯と言う保護者は、一方的にまくし立てて電話を切った。

「佐伯さん、教頭さんには名前言ってなかったでしょう?」
「うん、最初から、あの剣幕でね。で、寺沢先生、演劇部なんて、いつお作りになったんですか?」
「わたしも初耳です」
「え……じゃ、保護者の勘違いですか?」
「いや、何か裏がありますね。佐伯美智が登校したらすぐに聞いてみますよ。五組の担任は中村先生でしたね……今は、正門の当番か」
 いつものようにジャンジャン鳴りだした欠席連絡の電話の対応に追われ、教頭は、もう達孝の相手をしている余裕がなかった。

 達孝の学校は、いわゆる困難校。

 朝の忙しさは、経験したものでなければ分からない。達孝は一年五組の出席簿を見た。佐伯美智は遅刻常習者のようだ。
「中村先生、クラスの佐伯美智が来たら、そのまま指導することがあるので、引っ張っていきます」
「美智がなにか?」
「それが分からんので、話しを聞きます。どうやら面白そうな生徒のようですな。それまで、遅刻指導手伝いますよ」

 予鈴が鳴ったが、生徒は急ぐ様子はない。遅刻など屁とも思っていない。

 切りのいいところで、生指の先生が叫ぶ。

「よし、ここからあとは遅刻! 当番の先生から入室許可書をもらって、教室へ行け!」
 まるで行列のできるラーメン屋の列がぐちゃぐちゃになった体になる。
 二人の当番教師に混じって達孝は、慣れた対応で遅刻者をさばいていく。そしていよいよ佐伯美智を捕まえた。
「佐伯、ちょっと先生といっしょに来てくれないか」
 優しい口調ではあるが、有無を言わせぬ重みがあった。

「あ……はい」

 美智は、覚悟を決めて達孝のあとに付いてきた。



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。

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かの世界この世界:82『そいつの正体』

2020-09-25 06:06:23 | 小説5

かの世界この世界:82     

 『そいつの正体』   

 

 

 誰だおまえは!?

 

 みんなが思った。

 四人が手こずった玄武を一撃で戦闘不能にさせたのだ、それも三十センチあるかないかの身の丈で。

 いや、ほんとうにこいつがやったのか? 

 棚の裏側から十年ぶりに出てきたフィギュアのように薄汚れて精彩がない。なんとか魔法少女のようなナリはしているが、作り込みが甘く、千円の福袋の埋め草にでも入っていそうで、薄情なユーザーなら即廃棄にしてしまいそうなやつだ。

 アーーーーーー

 なんとか口を開いたかと思うと、電池が切れたように白目をむいて真っ逆さまに墜ちていく。

 ああ、待てーーーーー!

 ブリュンヒルデを先頭に落下するそいつを追いかけた。

 

 追いかけたわたしたちよりも、四号戦車の上で見上げていたロキの方が早かった。

 地上に到達する数秒前には気づいて、四号の砲塔の上で脱いだシャツを広げて待ち構え、落下地点を見定めるとジャンプしてシャツで包み込むようにしてキャッチした。

 ムヘン川でカエルを投げつけられたときから思っていたが、ロキは運動神経がいい。

「取ったあああ!」

 乱暴な言い回しの割には、やさしく保護していた。

 

「なんなんだ、そいつは?」

 

 ブリュンヒルデの問いかけにも、しばらく無言のロキ。

 やがて、そいつの顔だけをシャツから出して、ロキがしみじみ言った。

「こいつ……ポチだよ」

「「「ええ!?」」」

「温もりってか、オーラで分かる、理由は分からないけど……ポチが変身したんだ」

 履帯の修理に掛かっていたタングリスもやってきて、そいつ、ポチを介抱した。

 シャツから出したポチは、疲れ果てて眠っているようだった。

 空中で見かけた時よりも、デテールがはっきりしてきて、1/6サイズではあるが、はっきりした女の子の形をしている。

「おまえは、ちょっとあっちに行ってろ」

 顔を赤くしているロキを遠ざける。

「受注生産の限定フィギュアくらいになってきたぞ」

 頬に赤みがさして、小さいなりに体のメリハリもハッキリしてきた。閉じた目には1/6にしては長いまつ毛がそよいでいて、ザンバラな髪の毛も手櫛で整えてやると、なんとも可愛くなった。

「これは服を着せてやらないと……」

 シリンダーであったころの名残が、なんとも言い難く。このままではロキに見せられない。

 ポチの服を作ってやる者と履帯の修理をする者に分かれて作業に掛かる。

「おまえは、履帯の修理な」

 ロキの首を抱えて、わたしは履帯の修理組に入る。ブリュンヒルデとケイトがポチの衣装だ。

 タングリスが重い履帯を起動輪の手前まで引っ張り出してくれていたので、作業ははかどった。

 十分ほどで履帯の修理が終わる。

「まだまだだ」

 ポチが気になって仕方がないロキを呼び止める。

「履帯のテンションを調整する。あと、ついでに整備もな」

 タップリ一時間を整備にあてて、ようやく終了。

「もういいだろ?」

「まだだ、町長さんをきれいにしてあげろ」

 砲塔に括り付けられている町長をきれいにしてやって、ようやくポチの衣装が出来あがった。

「ポ、ポチ……」

「ロ、ロキーー!」

 ポチはベッチョリとロキの顔に貼りついて再会の喜びを爆発させた。

 不可抗力ではあるが、ポチはロキの鼻と口を塞いでしまったので、あやうく窒息するところであった。

 

☆ ステータス

 HP:6000 MP:3000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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