大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・♡RITTLE PRINCESS・4♡♥……テリアって、犬?♥

2015-09-30 13:58:33 | 小説
♡RITTLE PRINCESS・4♡
           ♥……テリアって、犬?♥      


「なんだ、水なんてないじゃん」火星の谷間に降り立って、結衣の第一声。

「あるわよ、ほら、これ」
 プリンセスは、足元の黒っぽい砂の塊を拾い上げた。
「なによ、バッチイ」
「塩のカタマリ……これが水を含んでる。でしょ、アシス?」
「ハイ、0.5パーセント、大発見デス」
 アシスは空中に砂の塊の成分表を映し出した。NaClから始まり、三十番目ほどにH₂Oが並んでいる。
「こんなの手に握っているうちに蒸発してしまいそうじゃない」
「蒸発しても水は水。でしょ、その水蒸気が集まって、入道雲やら台風になったりするんだから」
「でもね、あたしの感覚じゃ海とか湖とか、せめて水たまりになってないと実感湧かないのよね」
「ユイ、見テゴラン、谷ノ斜面ニ何本モ黒ッポイ筋ガ見エルダロ……」
 アシスが谷の斜面を指さした。なるほど、シマウマのような筋がずっと続いている。
「ん~……谷なんだから、ああいうのあって当たり前じゃないの?」
「アレハ、水ガ斜面ヲ削ッタ証拠ダヨ」
「……なのかなあ?」
「ユイって、思った以上に想像力ないのね」
 プリンセスが呆れて腕を組んだ。
「なによ」
「でも、分かったでしょ、ユイが箱の絵を描いて『この中に王子さまがいるよ』って言ったいい加減さが」
「そ、それとこれは!」
 結衣は顔を赤くして手を振った。
「プリンセス、砂ノ中ニバクテリアガイマスヨ!」
「ほんと!?」
 プリンセスは、ジャンプしてアシスの前に行った。
「ホラ、ココデス!」
「あ、ほんと……ユイも見においでよ!」
「……テリアって、犬?」
 結衣は砂の塊を覗き込んだが、何も見えない。
「アシス、拡大してあげて」
「ハイ」
 アシスが砂の塊に手をかざすと、ユイが観ているところだけ数万倍に拡大された。
「え……このグニュグニュしたの?」
「そう、この単細胞が進化して、いろんな生物になるんだよ」
「ん~……ピンとこないなあ」
 プリンセスはため息ついて、アシスと顔を見合わせた。
「チョット進化サセテミマショウ……」
 アシスが塊の上で手を回すと、バクテリアの動きが活発になり細胞分裂し始めた。
「え……何がおこるの?」

 バクテリアはグニュグニュと細胞分裂をくりかえし、人の形になったかと思うと結衣そっくりな女の子になった。
「あたし?……どうして?」
 結衣は目の前の不思議が釈然としない、一陣の風が吹いてきて、視界がグラリと揺れた。
「ユイ!……」

 プリンセスとアシスの叫びが途中で途切れ、風の吹く音だけが残った……。


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高校ライトノベル・♡RITTLE PRINCESS・3♡♥ウワー、宇宙が一望だ!♥

2015-09-29 13:47:43 | 小説
  ♡RITTLE PRINCESS・3♡
           ♥ウワー、宇宙が一望だ!♥      

 意識が戻ると、コクピットの中でフワフワ浮いていた。

「あ、スカートが!」
 結衣は無重力で広がってしまったスカートを手で押さえた。すると、セミロングの髪が乱れて顔に張りついた。
「あー、もう!」
 ポケットからヘアゴムを取り出してひっつめにする。すると、またスカートが広がる。
「ふふ、アミダラ女王のおパンツだ!」
 下の方でプリンセスが意地悪な妖精みたいに叫んだ。
「もう、なんであたしだけが無重力!?」
 プリンセスは床に立っていて、髪もスカートもフワフワとはしていない。アシスは無表情で操縦に専念、もっともロボットなので表情は無い。
「どう、大気圏を離脱した気分は?」
「答えになってない、なんで、あたしだけ……」
「地球を離れる気分をしっかり味わってもらいたいの、これからの旅を有意義なものにするためには、まず地球のありがたさを知らなくっちゃ」
「とにかく、この状態をなんとかしてよ。あんたたちだけ普通だなんておかしいよ!」
「ハハ、それはユイが思い込んでるから。自分もちゃんと立てると思えば床に足がつくわよ」
「え……うわ!」
 瞬間床に立っている自分のイメージが浮かぶと、結衣はストンと落ちて、お尻をうってしまった。
「……イタ~」
「ユイ、見てごらん……!」
 プリンセスは、結衣の災難をアリがこけたほどにも気に掛けないで、フロントガラスを指さした。
「え……うわ~!!」

                             

 そこには宝石のような地球がポッカリと浮かんでいた。
「目に焼き付けておきなさいね、今度見られるのはいつか分からないからね」
「うん……不思議……ついさっきまでは、とんでもないことに巻き込まれたと思っていたのに、心が穏やかになっていく」
「ユイの中で眠っていた、もう一人の……ユイが目を覚まし始めたからだよ」
「もう一人の?」
「さ、デッキに出てみよう」
「うん」
 二人は階段を上がって、デッキに出た。
「ウワー、宇宙が一望だ!」
「ここ、ヤカンでいうと蓋にあたるところ。ここから戦闘艇も発進するんだよ」
「戦闘艇?」
「ほら、あそこ」
 プリンセスは右舷の後方を指さした。
「え……ヤカンの蓋?」
「に見えるけど、戦闘艇。人がデッキに上がってきたときは外れて、あの位置にいるの」
 グワッとケトル号が旋回し、かなたに月が見えてきた。
「地上で見るより大きい!」
「まず、あそこでチュートリアルってことにしようか」
「なんだかスターウォーズ!」
「これは『星の王子さま』を捜す物語だからね。アシス、進路を月に……どうかした?」
――プリンセス、ニュースデス。火星デ水ガ発見サレマシタ!――
「水? ほんとに!?」
「タッタ今ノニュースデス、NASAノ探査衛星ガ発見!」
「これは、いきなりのステップアップ! アシス、進路を火星に!」
「アイアイアサー!」

 ケトル号は急きょ進路を変更、火星へと向かった……。

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高校ライトノベル・♡RITTLE PRINCESS・2♡♥やかんひこうのはじまり♥

2015-09-28 16:21:03 | 小説
 ♡RITTLE PRINCESS・2♡
           ♥やかんひこうのはじまり♥      

 気がつくと、ベッドの中だった。

 正確に言うと、白い闇が淡いピンク色になったかと思うと、結衣の体をホンワカと包んだ。
 ホンワカは日向っぽい匂いがして、干したての布団の中にいることがわかった。
 布団から顔を出すと、そこが淡いピンクで統一された部屋の中だと知れる。

 少し違和感があった。

 かわいい部屋だけど窓が無い……ガラス張りのバスルーム……一つだけのドアは閉まっている様子……ベッドが大きい……ここは……!?
 思わず体をまさぐった……だいじょうぶ服は着ている。

 まだ違和感……かすかにモーターが動いているような音がする……船の中……?
 コンコン……ドアをノックする音がしたので頭から布団をかぶった。
「オ目覚メデスカ……」
 黙っていると、プッシュっとドアが開く音がしてロボットが部屋に入ってきた。

「この人はアシス。ロボットだけど有能なあたしの助手」
 ロボットにうながされて上の階にいくとコクピット、あの女の子が操縦席に座っていて、一言言ってからクルリと結衣の方に向いた。
「アシスデス。コノ船ノ操縦トプリンセスノアシスタントヲシテイマス。プリンセス、操縦ヲ替ワリマス」
 そう言うと、操縦席の女の子と入れ替わった。
「ようこそ宇宙船ケトル号へ、これから三人の旅がはじまるの、よろしくね。あたしのことはプリンセス、そう呼んで。あなたのことはユイでいいわよね?」
「……あたし夢でも見てるの?」
「エイ」
「痛い!」
「ね、夢じゃないでしょ?」
 結衣はつねられた二の腕を庇いながら後ずさった。
「あなたは……?」
「プリンセス、星の王女さま……相棒の星の王子さまを捜してるの。で、ユイは、あたしを助けるんだ。ね、だから、この宇宙船に来たんだよ」
「そんな、あたし関係ないわよ。帰してよ!」
「関係がなきゃ、このケトル号に来るはずないわよ。でしょ、階段を上るのは上の階に行くため、靴を履くのは出かけるため、財布の中にお金が入るのは使われるため、ケトル号に乗るのは星の王子さまを捜すため、ね。さ、そこのシートに座って、まもなく大気圏を出るから。アシス、前進強速!」
「ちょ、ちょっと、あたし帰らなきゃ、捜索願出されるよ! 学校だってあるんだから!」
「大丈夫、何年かかろうと、地球じゃ時間はたたないから」
「そんなこと言われても、とにかく、あたしはヤなんだから!」
「コレヲゴ覧クダサイ」
 アシスがパネルをタッチすると前のスクリーンに宇宙空間を進むヤカンが現れた。
「なに? 空飛ぶヤカン?」
「ヤカンデハアリマセン、ケトル号デス。イマジネーションパワーデ光速ノ100倍、標準ワープデ10万光年ジャンプデキマス」
「エ? 10万個の少年ジャンプ?」
「光の何十倍何百倍で飛行するから時間はたたないわけ。ね、安心でしょ?」
「そ、そういう問題じゃ……ウ、ウワー!」
「大気圏ヲ離脱シマス」
「ア、ア、気が遠くなる……」

 こうして訳も分からないまま、ケトル号のヤカン飛行の旅が始まった……。


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高校ライトノベル・♡RITTLE PRINCESS・1♡♥王子さまの絵を描いて♥

2015-09-27 17:44:27 | 小説
 ♡RITTLE PRINCESS・1♡
           ♥王子さまの絵を描いて♥  
                 


 思ったとおり簡単にすんだ。

 観たばかりのテーマパークのセットをプリントし板紙に貼りつけ、案内図を拡大した台の上に並べる。
 基本はこれだけ。
 あとは『星の王子さま』の本を適当に並べる……そうそう、羊が入っている小箱を忘れちゃいけない。

 想像力でしか見えない羊……これは都合がいい。

 これで三年A組の文化祭は完成。そのまま焼き直せば、推薦入試のプレゼンテーションにも使える。
――これであたしの十代は、めでたくハナマルの及第点―― 
 結衣はニンマリ顔のまま深呼吸をする。
 ゲートの前には緑萌えて高原の街が広がり、秋風が心地よくセミロングの髪をなぶっていく。
 小さくクラクションの音がした。
「あ………」
 駐車場の方を向いた拍子に風向きが変わり、後れ毛が目に入った。
「もう、やだ……」
 髪が変な入り方をしたので目が痛んだ。結衣は数秒目をつぶり、ハンカチで涙を拭いた。

 目を開けると軽い違和感があった、見える景色が微妙に違う……ような気がした。

「気のせいか……ん……お兄ちゃん、まだ?」
 結衣は『星の王子さまパーク』まで兄に送ってもらっていた。兄は隣町に用事があり、結衣がパークに入っている間は、そっちの方に行っている。さっきのクラクションをてっきり兄だと思っていたので、少々肩すかしの感じ。
 後ろからふいに影が延びてきて結衣の影と重なった。
「お兄ちゃん?」
 振り返ると、誰も居ない。
「あれ………………ん?」
 小さく、でも、さっきよりはっきりとクラクションが鳴った。

 もう一度振り返ると、駐車場の隅に女の子が立っていた。

「上手いでしょ、クラクションの真似?」
 そう言うと、女の子は口を開けて、パオ~ンとクラクションの音をさせた。
「ね!」
「上手だけど、ちょっと紛らわしい」
「世の中って、紛らわしいものよ」
 女の子は結衣に近づいてきた。よく見ると変わったファッションだ、緑のワンピース、袖口が折り返しになっていて、そこと襟が赤。両肩には一つずつ星がアクセントになっている。

「ね、星の王子さま見なかった?」瞬間真顔になって、そう聞いてきた。

「え……あ、それなら」
 結衣はパークのゲートを指さした。
「そんなのじゃなくて、本物の王子さま」
 女の子は結衣のすぐそばまでやってきていた。笑顔なんだけど、目の光は真剣だった。
「ね、見なかった?」
 結衣は一歩だけ後ろに下がった。
「あたしは……」
「見たんでしょ……意地悪しないで教えて……いきなりすぎるのかな……じゃ、絵を描いて、星の王子さまの絵」

 絵ぐらいなら、そう思って、結衣はパンフレットの裏側に小さな箱を描いた。

「いい、王子さまは、この箱の中に居る。あなたが探している星の王子さまは」
 これで解決するはず。
「……これは、ただの箱よ。真面目に描いて」
「想像力よ、想像力があれば見えるわよ」
 
 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリならこれで正解のはずだ。

「知っているはずなのに、安い想像力に逃げてしまう……そういうの嫌いよ」
「だって……」
「あなたしかいないの……責任もって王子さまを探して」
 気味が悪くなって、結衣は駆けだした。
 駆けるうちに、周囲の景色が白っぽくなり、すぐに消えてしまい、意識が遠くなっていく。
「な、なんなの、これは……!?」

 結衣は白い闇の中に沈んでいった……。 

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高校ライトノベル・『さよならバタフライ』

2015-09-21 18:50:22 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
『さよならバタフライ』
         


 無数のチョウチョが、空中を舞って飛び去っていくようなイメージだった。

「金床、○分○○秒!」
 コーチの金丸さんの声が頭上でした。とても他人様に言える記録じゃないので、タイムは秘密。
 だけど、ボクが水泳部に入って、バタフライでは最速の記録だ。

 今日は、ぼくの水泳部最後の日だった。三年生の引退は早い。一応進学校であるうちの高校は二年生がピークだ。朝から夕方遅くまで一万メートルも泳ぐことは、時間的にも体力的にも、受験を控えた三年生には無理だからだ。
 ボクは、去年の地区大会自由形で二位にまでいけた。それで十分だった。
 もともと名前がいけない。金床碇(かなとこいかり)どう見ても水泳部向きの名前じゃない。ボクの家は祖父ちゃんの代まで、近くの漁師さんやお百姓さん相手に、漁具や農具を作ってきた野鍛冶屋だった。お祖父ちゃんは、特に漁具、その中でも碇を作らせたら県の中じゃ一番だった。特徴は長持ち、金床の碇は一生物とか言われ、沿岸漁業がアゲアゲのころは大した羽振りで、女の人に入れあげては婆ちゃんを泣かせていたらしい。それでもアゲアゲだったから、親類も世間も、男の甲斐性だ。くらいに見てくれた。
 でも、地域の漁業が廃れる……とは言わないが、横ばい状態になるといけなかった。なまじ一生物なんてものを作る物だから、注文がほとんど来なくなった。で、昭和ヒトケタの祖父ちゃんは、生まれた初孫に「碇」という迷惑な名前をつけて、ボクが三歳のときに、あっさり死んだ。最後にお父さんに残した言葉が振るっている。
「腹上死がしてえなあ……!」
 病院のベッドで大声で叫んで逝ってしまった。狭い町なので、噂はパッと広がり腹上死の金床と、しばらく言われた。お父さんもお母さんも、婆ちゃんも恥ずかしそうにしていたけど、ボクは平気だった。だって、みんな明るく腹上死の金床と言うもんで、ボクは誉め言葉だろうと思った。事実お祖父ちゃんは町のみんなから愛されていたことは確かだった。

 しかし、ボクも小五で腹上死の意味を知ると、やっぱ恥ずかしかった。

 水泳部に入ったのは事故のようなものだった。教室のある三階の廊下からプールは丸見えで、水泳部の女の子たちが泳いでいるのを、一年のときニンマリ見ていた。すると、同じクラスのダボハゼみたいな野島春奈ってのに言われてしまった。
「さすが、腹上死の孫ね。あんなの見てニヤニヤ、ガチスケベ!」
 で、
「ちがわい、オレは水泳部に入りたいんだ!」
 ダボハゼが犬の糞を飲み込んだような顔をした。ダボハゼは幼稚園から高校まで同じという、どちらにとっても有り難くない存在だった。ダボハゼは、腹上死の金床を知っている珍しいガキだったし。ボクはボクで、小六のとき、ダボハゼが廊下を掃除していて、ちり取りをとったところで、派手にオナラをしたのを聞いてしまっている。

 で、とにかく水泳部に入った。
「おまえ、よくそれで水泳部入ったな」
 と、先輩にも仲間にも言われたが、コーチ一人が庇ってくれた。
「オレだって金丸。同じ金付きだ。オレが泳げるようにしてやる」
 で、ほんとうに、ある程度は泳げるようになった、クロ-ルでは、部内でトップクラスになった。でも、他の泳法はさんざんだった。特にバタフライがいけない。
「金床のは、テンプラ鍋に飛び込んだアマガエルみたいだ!」
 と、言われた。やたらに水しぶきは上がるけど、前に進まない。コーチには「腰が定まっていないからだ」と技術的に指導を受けた。
 しかし、今日で引退。もうみっともないバタフライを人に見られずに済む。

 でも……信じがたいだろうが、ボクのバタフライを誉めてくれたやつがいる。それもとても可愛い子に。

 あれは、二年の一学期の中間明けだった。水島洋子という、なんだか水泳部向きの名前をした一年生が見学に来た。
「金床さんですね。いつも三階の窓から見てたんです。先輩のバタフライいいですよ」
「ええ、どこが!?」
 同輩たちが一斉に叫んだ。
「あ、あの力強さが、なんだかタグボートみたいに元気いっぱいで」
「アハハ、タグボートはよかったな!」
 洋子は、瞬間怒ったような目になったが、すぐに元の穏やかな目になった。

 二日目には水着を持ってきて、自分から泳ぎだした。名前に負けずきれいなフォームだった……え、あ、正直に言うと体のフォームも泳ぎのフォームも。ね、正直だろ!

 二十分もたったころだったろうか、洋子が溺れた。コーチや女子部員が飛び込んで助けた。
「水島。おまえ、股関節……だろ」
 コーチが難しい病気の名前を言った。
「もう治ったと思っていたんです……」
 洋子は悔しそうにしていた。水から上がったばかりなのでよく分からなかったけど、あの子の頬をつたっていたのは水では無かったと思う。
 その日は、お父さんが職場から、そのまま駆けつけてきた。その時の制服で、この町の近くにある海上自衛隊の幹部だということが分かった。

 洋子は、それ以来水泳部には顔を見せない。もう泳ぐのを諦めたんだろう。

 どうしてか、水泳部最後の日に洋子のことを思い出した。きっと、最後という言葉のせいだ。
 コーチや、みんなに挨拶して、その日は早めに自転車で家に帰った。海岸通りに出ると、ときどき横殴りの風が吹いてきて、体をもっていかれそうになる。前線が近づいているようだった。

 日の出橋まできて、異変に気がついた。橋の真ん中に自転車が倒れ、小学校の低学年とおぼしきガキが泣き叫んでいた。
「どうした、おまえら?」
「お、おねえちゃんが海に。あたしたちを除けようとして……」
 その時、また突風が吹いてきた。ガキの目線の先には……洋子が、ぐったりして浮き沈みしている。
「この風にさらわれたんだな!」
 橋は、船を通すために十メートル近い高さがある。一瞬ビビッタけれど、体の方が先に動いた。

 我ながらきれいなダイビングだったと思う。海に飛び込むと、数メートル潜った。そして水を蹴って水面に顔を出すと方角を確認。しかし、橋の上とは違い、沈みかけた洋子は見つからない。
「水島! 洋子!」
 すると、橋の上のガキたちが方角を示した。いったん潜って洋子を確認し、ボクは泳いだ、それも、こともあろうにバタフライで。
 クロール! と頭の誰かが叫ぶんだけど、体は拒否してバタフライになる。そして、それは今まで体験したことがないほどの速さだった。
 水面下二メートルほどのところで、洋子を掴まえた。浮上して洋子の体を確保しながら背泳ぎで岸にたどりついた。
 脈はあるが、呼吸をしていない。ボクは洋子に水を吐かせてから、人工呼吸をした。そのときは必死だったけど、マウストゥーマウスだった。

 病院で、うっすら意識が戻ったとき、洋子が言った。

「先輩のバタフライ……やっぱ、かっこいいです」

 洋子は、その秋に転校した。お父さんの転勤……お父さんは鈍足のタグボートの艇長だった。洋子の病気のために、移動の少ない船を選んだようだが、時代が、お父さんを必要としはじめていた。それに東京の親類に預け、治療に専念できる体制もできたようだ。

 ボクはというと、身の程知らずにも推薦をみんなけ飛ばし、センター試験をうけ某公立大学に入った。
 入学して半月、学食でランチを食っていたら、後ろから懐かしい声で、懐かしい言葉をなげかけられた。
「お、腹上死!」
 ダボハゼの春奈がランチのトレーを持ってニンマリしていた。

 春奈は、忘れていたが、高校でダンス部に入った。で、大学でも続けているようで、もうダボハゼの面影はニクソゲな言葉にしか残っていなかった。まあ、人魚姫の侍女ぐらいは勤まりそうだ。

 金床の青春て、こんなもんだろう。まだ碇を降ろすには時間がありそう。

 とりあえず、さよならバタフライ……。
 

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高校ライトノベル・『The Exchange Vacation』

2015-09-20 13:56:49 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
『The Exchange Vacation』
    


 わたしは、三つある内の「休み」で春休みが一番好きだ。それも、一二年生のそれに限る!

 夏休み・冬休み、それに対する春休みは全然違う。そうは思わない?
 だってさ、夏休みと冬休みっていうのは、単なる休み。
 休みが終わると、また同じ教室で、同じクラスメートで、時間割とか先生とか完全にいっしょで変化がない。せいぜい席替えがあるくらい。基本的に同じ事が始まるだけ。でしょ?

 だけど、春休みは違う。だってそうでしょ。学年が一個上がって、クラスも教室も先生もクラスメートもほとんど変わっちゃう。教科書だって、最初手にしたときは、なんだか新鮮。
「今年こそ、がんばるぞ!」って気持ちになる。もっともこの気持ちは連休ごろには無くなってしまうけど。年に一度の身体測定なんかもあって、背が伸びた、体重がどうなったとか、なんかウキウキじゃん。それでいて、学校はいっしょ。勝手知ったる校舎、四時間目のチャイムのどの瞬間までにいけば並ばずに済むか。合点承知之助!

 三年生は事情が違う。だって、完全に環境が変わってしまう。でしょ?
 中学にいく前の春休みは、それほどじゃなかった。だって公立の中学だから、半分は同じ学校の仲間。学校そのものも、ガキンチョのころから、よく側を通っていたし、お姉ちゃんが三年生でいたから心強くもあった。
 高校にいく前の春休みは、最初は開放感。でもって、入学式が近づくにしたがって、つのる緊張感。二年生になろうとしている今、思い返せば、良い思い出になっている。
 だけど、高三になったら、きっと緊張はハンパじゃないんだろうなあ。だって大学だよ、大学。でもって十八歳。アルコールと選挙権以外は大人といっしょ。アルコールだって、十八を超えてしまえば飲酒運転でもしないかぎり、大目に見てくれる。そう、車の免許だって取れちゃう! 恋の免許も、なんちゃって……これは、こないだお姉ちゃんに言ったら、怖い顔して睨まれた。
 お姉ちゃんは、この四月から大学生だ。最初は地方の大学を受け独立するとか言ってたけど、お父さんもお母さんも大反対。で、結局、地元の四大で、自宅通学。ここんとこの緊張したお姉ちゃんをみていると、正解だったと思う。

「ねえ、お姉ちゃん、ま~だ!?」
 あまりの長風呂にわたしはシビレを切らし、脱衣所のカーテンをハラリと開けた。
「なにすんのよ!」
 乱暴にカーテンを閉め直した拍子に、カーテン越しに右のコメカミをぶん殴られた。
 お姉ちゃんの裸を見たのは、スキー旅行で、いっしょに温泉に入って以来だ。湯上がりに、肌が桜色。出るところは出て、引っ込むところは、キチンとくびれて、同性のわたしが見てもどっきりした。
「高校最後の、お風呂だからね、いろいろ考え事してたの」
「卒業式、とうに終わってんのに……案外……」
「案外、なによ!?」
「いやはや、大人に近づくというのは、大変なもんだなあって。同情よ、同情」
「余計なお世話。さっさと入っといで」

 そんなに長風呂した訳じゃないのに、お風呂から上がって、少しグラリときて、脱衣場でへたり込んでしまった。一瞬頭の線が切れたのかと思った。
 時間にすれば、ほんの二三秒なんだろうけど、わたしの頭の中で十七年間の人生が流れていった。そして小学校の終わり頃に、なにかスパークするような思い出があったんだけど、言葉では表現できない。
「どうかした?」
「ううん、ちょっと立ちくらみ」
 お母さんの心配を軽くいなして、リビングへ行った。
 テレビが、どこかの春スキー帰りに高速で事故が起こったニュースを流していた。
「あ~あ、二人亡くなったって……」
 お姉ちゃんが、ドライヤーで髪を乾かしながら言った。

 お父さんは、仕事の都合で、会社のワゴン車で帰ってきた。かわりに自分の車は会社の駐車場。
 代わりに残業がお流れになったので、夜食用のフライドチキンを一杯持って帰ってきてくれた。
「また歯の磨き直しだ」
 そう言いながら、わたしも、お姉ちゃんもたらふく頂いた。
「わたしね、春休みは『 Exchange Vacation』だと思ってるの」
「なに、ヴアケーション交換て?」
 お姉ちゃんが、紙ナプキンで、口を拭きながら聞いてきた。
「なんか、全てが新しくなるようで、夏休みとか冬休みとかじゃない、特別な印象」
「それなら、Vacation for Exchangeでしょうが」
「イメージよ、イメージ!」
「ハハ、美保、英語はしっかりやらないと、大学はきびしいぞ」
「もう、うるさいなあ」

 
 その夜、わたしは寝付けなかった……正確に言えば意識は冴えているのに、体が動かない。金縛り……いや、それ以上。目も動かせなければ、呼吸さえしていない。でも意識だけは、どんどん冴えてくる。お父さんが、何かをしょって部屋に入ってきた。お母さんが、大容量のハードディスクみたいなのを持って続いてくる。
 お父さんは、しょっていた物を横のベッドで寝ているお姉ちゃんの横に寝かした……それは、もう一人のお姉ちゃんだった。
「いつも辛いわね、この作業……」
「真保は、これで終わりだ。あとは義体の調整でなんとかなる」
 お母さんは、ハードディスクみたいなのを中継にして、二人のお姉ちゃんの右耳の後ろをコードで繋いだ。古い方のお姉ちゃんの目が開いて、赤く光った。それは、しだいに黄色くなり、五分ほどで緑に変わると、光を失った。
「起動は五時間後ね」
「ああ、それで熟睡していたことになる。着替えさせるのは、お母さん、頼むよ」
「年頃の女の子ですもんね」
 お母さんは、古いお姉さんを裸にして、新しいお姉さんに着替えさせた。
「じゃ、美保の番だな……」
「真保、きれいに体を洗ってますよ。分かってたんじゃないかしら?」
「まさか、そんなことは……」
「そうですよね。ただ、三月の末日と重なっただけ……明日は入学式ですもんね」
 お父さんは、右耳の後ろとハードディスクみたいなのをケーブルに繋いで、いろいろ数値を入力していった。
「右の記憶野に……」
「なにか、異常ですか!?」
「いや……単純なバグだ。回復したよ」
「来年は、美保の義体も交換ですねえ……あの事故さえ無ければ」
「それは、もう言うな。スキーに行こうと言ったのは、オレなんだから」
「せめて、母星のメカニックにでも来てもらっていたなら……」
「言うなって。もう、真保はシュラフに入れたか」
「はい……」
 お父さんが、シュラフに入った古いお姉さんを担ぎ、お母さんが、跡を確認して出て行った。

 わたしは、全てを理解した……お姉ちゃんが、わたしの右のこめかみを叩いたのは、無意識の意思があった。それは、自分の境遇を知った上での感謝の気持ちだった。
 そして、目が覚めると、夕べの事は全て忘れていた。
「もう、どうして早く起きないかな。入学式でしょうが」
 歯ブラシを加えながら、お姉ちゃんが何か言った。
「訳分かんないよ!」
「美保は春休みなんだから、時間関係無いでしょうが!」
「あ、そか……」

 わたしは大事なものが頭に詰まっているようで、半分ぼけていた。でも、今の遣り取りで飛んでしまった。

 でも、このことは人生の大事な時に思い出しそうな予感もしていた……。
 

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高校ライトノベル・アンドロイド アン・4『ご町内の放送局』

2015-09-20 11:53:07 | 小説4
アンドロイド アン・4
『ご町内の放送局』



「新ちゃんといっしょに住むことになりました、従妹のアンです。よろしくお願いします」

 アンは、回覧板を持ってきた隣の町田夫人に、くったくのない笑顔で応えた。
「あら、従妹さんだったの。ゴミ出しでお見かけして、すてきなお嬢さんだと思ってたの、ほんとよ」
「照れます、言われつけてないですから」
「ホホ、ほんとうよ。ご近所の奥さんたちも言ってるわ。ここらへん若い人が少ないから、大歓迎」
「わたしも分からないことだらけなんで、助けていただくと思います」
「あの……まだ学生さん?」
「はい、高校生です。今度の学校は、まだ編入手続き中なんですけど」
「じゃ、ここに腰を落ち着けるのね」
「ええ、父が海外赴任してしまって、母は四年前に亡くなりましたので、同じ境遇の新ちゃんと……」
「そうなの……いえね、あたしたちも心配してたの。高校生の一人暮らしでしょ、なにかと大変じゃないかって」
「そうなんです……新ちゃんて、手がかかるんです、大掃除に三日もかかりましたから。それにお風呂ギライで……」
「ホホ、なにか困ったことがあったら遠慮せずに、オバサンたちに話してね」
「そんなこと言われたら、ほんとうに頼ってしまいますう!」
「どうぞ頼って! 真っ当にやっていこうって若い人は、あたしたちにとっても希望の星だから、じゃあね!」

 町田夫人は、固い握手をして帰って行った。

「あそこまで話す必要あんのか?」
 パジャマ姿でソファーにひっくり返って、新一がプータれる。
「町田さん偵察にきたんだよ」
「だったら余計にさ、あの奥さん放送局だぜ……それも嘘ばっか。俺たち従兄妹じゃないし、学校の編入とか言っちゃうし」
「するよ。もう学校のCPとリンクしてるし、連休が終わったら連絡来る。ご近所の様子や新ちゃんのこと考えたら、それが一番。さ、さっさと着替えて朝ごはん」
「パジャマのままじゃダメ?」
「ダ~メ! せっかく早起きと着替えの習慣がつきかけてるんだから!」
「せっかくのシルバーウィークなんだからさ」
「ちゃっちゃとやって。町田夫人が望遠鏡で見てる……」
「え、覗かれてんの!?」
「気づかないふり……あのオバサンに信じ込ませたら、ご町内全部の信用が得られるから」
「なるほど……お、自治会の運動会があったんだな、明後日……気づかないで良かったな」
 回覧板を投げ出して、新一は自分の部屋のドアノブに手を掛けた。
「これ出よう! まだ出場者足りないみたい!」
「うざいよ、自治会の運動会なんて」
「チャンスだよ、あたしのことも新ちゃんのことも変に興味持たれる前に解消できる。ほら、町田夫人の心拍数が上がった、喜んでるふうにして。ヤッター、新ちゃん、ご町内の運動会、今からでも間に合うかな!?」

 新一は無理矢理喜んだ芝居をやらされた。三十分後、アンが運動会の申し込みをした。すると町田夫人を始めとするご町内の二人への関心は、かなり好意的なものに変わっていった。
 

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高校ライトノベル・『制服マネキン』

2015-09-18 13:54:52 | ライトノベルセレクト
ライトノベル・セレクト
『制服マネキン』
              

「お父さん、そろそろ閉めようか……」

 日の落ちかけた空を見ながら、美優が呟くように言った。
「そうさな……でも、明日は神楽坂の卒業式だろ。もう少し開けておこうや。ボタンとかスカーフとか、小物を買いにくる子がいるかもしれねえ」
「そうだね、篠崎さんとこも閉店だし、神楽坂の制服扱ってるのうちだけだもんね」

 神楽坂学院は、この春から創立以来の制服を改訂する。
新しい制服はデザインが凝っていて、街の小さな業者では採算が合わない。制服業者は、大手デパートと二十校以上の取引先を持っているY商店の二つになってしまった。
 学院創立以来、制服を手がけてきた篠崎屋は、店主が高齢なため、この二月いっぱいで店を閉めることになっていた。篠崎屋から三十メートルほど離れた筋向かいの美優のテーラーSAKURAも、今日を限りに神楽坂学院の制服から撤退することになった。娘の美優が、早くからこういう日を見越して、制服以外のプレタポルテに比重を置くようにして、なんとか神楽坂で店を続けることができるようになってきた。

「ほんとに、美優のお陰だよ。こうやって店続けられんの」
「だよな、美優がいなけりゃ、ゲンとこみてえに店たたまなくっちゃならないとこだ」
「篠崎さんとこも、信ちゃんいればねえ……」
「もう、五年も前に死んだ人のこと言っても仕方ないでしょ」
 美優は、怒ったように言う。彼方の筋向かいの篠崎屋の看板が薄闇に滲んで、しばらく目が離せなかった。
「あ……雪……」
 そう呟くと、ホッペをこするフリをして滲んだ涙を拭った。
「お母さん、お茶……」
「あいよ、いま、お茶葉入れ替えるから」
 
 ホコホコと、そのお茶をすすり終えた頃、静かに店のドアを開けて、少女が入ってきた。

「すみません、まだいいですか?」
「はい、いらっしゃい」
 その少女は、この薄ら寒いのに、神楽坂学院のジャージにマフラーをしただけの姿で立っていた。
「あのう……学校の制服、まだ置いてらっしゃいますか?」
「ええ、あるわよ。まあ、こっちおいでなさいな、冷えるでしょ。お母さん、お客さんにお茶お願い!」
「インスタントだけどココアでも入れたげようね……」
「どうも、すみません」
「スカーフか何かかな、明日卒業式でしょ?」
「一式欲しいんです」
「え、上から下まで?」
「ええ、今日自転車で転んでしまって、あちこち破けてしまって」
「縫って直せないの、明日一日のことでしょ?」
「最後だから、きちんとして卒業したいんです……お願いします」
 少女は、自分の言葉に照れて、ペコンと頭を下げた。
「すみません、へんなこだわりで……」
「いいわ、お父さん、一着残ってたわよね?」
「ああ、ちょっと待ってくれ……」
「もう処分品みたいなものだから、原価でいいわ」
「ありがとうございます……あちち」
 少女は、慈しむようにココアを飲んだが、少し熱かったようだ。

「まあ、ピッタリね。九号サイズだから、どうかと思ったんだけど」
「わたしって小柄ですから」
 そうはにかむ少女に美優は、えも言えぬ親近感を感じた。
「サービスで、名前の刺繍させてもらうわ。苗字は?」
「あの……嘘みたいですけど、神楽坂です」
 おずおずと、少女は生徒証を見せた。確かに名前は「神楽坂幸子」となっていた。
「こりゃ、目出てえや。気持ち籠めてやらせてもらうからね」
 オヤジは、嬉しそうにミシンに向かった。

「幸子ちゃんて、なんだか、とても懐かしい感じの子ね」
「そう言われると嬉しいです。わたしって、よくタイプが古いって言われるんです。消極的で……あだ名は昭和っていうんです」
「ウフ……ごめんなさい。わたし好きよそういうの」
「どうもです」
「最後の制服の学年だけど、なにか特別なことやるの?」
「いいえ、いつも通り。正式には卒業証書授与式っていうんですけど、わたしは、卒業式って呼んで欲しいんです」
「そうだよな、世の中、名前ばっか変えちまってよ。先だって、病院で看護婦さんて呼んだら『看護師』ですって叱られちまったよ」
 ミシンを踏みながら、オヤジがぼやく。
「わたし、卒業式の歌も、へんな流行歌じゃなくて、ちゃんと仰げば尊しと蛍の光で……ヘヘ、なんて言うから、昭和って言われるんですよね」
「いいや、そりゃ大事なことだよ。さっちゃん、なかなか良いこと言うね。だいたい今時の……」
「はいはい。お父さんが演説したら、さっちゃん帰れなくなっちゃうわ」
「はは、それもそうだ……ほい、できあがり。立派な神楽坂だ!」
「ありがとうございました。はい、お代です」
「ちょうどいただきます……さっちゃん、手が荒れてるわね」
「あ……肌荒れがきついんです、わたし」
「ちょっと待ってて……はい、スキンクリーム。即効性があるから、明日は、これを塗っていけばいいわ」
「ありがとうございます……え、丸ごと頂いていいんですか」
「いい、卒業式をね!」
「はい!」
 少女は、スキップするようにドアまで行くと、振り返り、丁寧なお辞儀をして行ってしまった。
 テーラーSAKURAの親子は、ホッコリした気持ちで、神楽坂学院ご指定の店の役割を終えた。

 その夜の遅くだった、救急車のサイレンの音で美優は目を覚ました。父と母が、あとに続いた。

「だれか、具合が悪いんですか?」
「篠崎屋のゲンさんが、心臓発作だってさ」
 向かいの洋菓子屋のオジサンが答えた。
 美優が駆けつけたとき、篠崎屋のゲンさんはストレッチャーごと救急車に載せられるところだった。
 救急車のドアが閉められる寸前、ちらりと神楽坂の制服を着た人影が車内に見えた。

――あの子……。

 同業のよしみで、明くる日、美優は病院にお見舞いに行った。病院は、子どもの頃からの馴染みのK病院だった。幼い頃、篠崎屋の信ちゃんといっしょにインフルエンザの注射をしにきたことがある。日頃は強がってばかりの信一が、猿のように嫌がって泣き叫んだことなどを思い出した。
 総合の待合いに、篠崎屋のオバサンがうなだれて座っていた。
「オバサン、大丈夫?」
「ああ、美優ちゃん……」
「オジサンの具合は?」
「うん。今夜が勝負だって……」
「病室は?」
「今は、あの子が見てくれているの」
「あの子?」
「ほら、マネキンの幸子……え……いま、あたし、なんて言った?」
「マネキンの……幸子って……」
「そんな、ばかな……!?」
 そのときナースのオネエサンが、足早にやってきた。
「篠崎さん、大丈夫、いま峠をこえましたよ!」
 二人は、危うく走りたいのをこらえて、病室へ向かった。
「……あんた、大丈夫?」
「おじさん」
 ゲンのおじさんがゆっくり顔を向けて、笑顔で言った。
「信一のヤローが、まだ来ちゃいけねえって……で、幸子が代わりによ……幸子、幸子……」
 おじさんが目で探ったそこには、神楽坂の制服が、こなごなになった何かのカケラにまみれて落ちていた。それが、マネキンの幸子であるということに気づくのに数秒かかった。
 幸子は、篠崎屋が開業以来使っている、神楽坂学院専用の制服マネキン。お下げに、はにかんだような笑顔が可愛く、子どもの頃に信一と遊びにいくと、いつもこのマネキンと目があった。
「この子なんて名前?」
「……幸子だ」
 とオヤジさんが答えたのを思い出した。最後の制服は神楽坂学院に記念に寄付し、幸子はジャージを着せていたとオバサンが教えてくれた。篠崎屋と神楽坂学院の歴史をみんな知っている。

 カケラの中に、夕べ、幸子にやったスキンクリームの小瓶が混じって、朝日に輝いていた……。


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高校ライトノベル・かざみ 時と風の少女・12『危うく墜落!』

2015-09-17 15:51:30 | 時かける少女
かざみ 時と風の少女・12
『危うく墜落!』
 
  

 ジェット旅客機は河川敷に沿って墜落、長さ五百m幅三百mに渡って被害を及ぼす。

 河川敷にいる高校生、サラリーマンとOL、ロケの役者とスタッフ、四百人余りが巻き添えで死亡!
 かざみの体内埋め込み型情報端末タマホは、そうシュミレートした。むろんかざみも生きてはいられない。

 あの事故よりも悲惨だ!

 自分が孤児の赤ん坊になった十七年前の航空機事故が頭をよぎる。
――せっかくお父さんの謹慎が解けて、これからだっていうのに、百年前に時空移動させられ、飛行機事故の巻き添えで死ぬ? いやだ!!――
 そう思ったが『ここが墜落の中心、生存率ゼロパーセント』タマホは他人事のような分析をする。
 河川敷にいる人たちは、呆然と至近距離に迫った旅客機を見上げるばかりで、逃げることもしない。かえって被害が及ばない堤防上の人たちが逃げ出している。

 パニックなんだ……!

「タマホ、あの旅客機の墜落原因は!?」
『じきに死ぬのに、そんなの知って、どうするんだ?』
「つべこべ言わないで、サーチしなさい!」
『………………』
「早く!」
『サーチの最中だ』
「急いで!」
『……コンピュターがハッキングされている。サイバーテロだな、機内からのコントロールは不能』
「じゃタマホ、こちらから旅客機のコンピューターに接続してコントロ-ル!」
『旅客機のコンピューターに接続するのは違法だ』
「それは二十二世紀でよ。ここは百年前の二十一世紀!」
「でも、タマホの能力じゃ、セキュリティーは破れない』
「この時代のセキュリテーなら突破できるでしょ!」
『えと……お、コンタクト成功……ハッキングブロック、エンジン出力マックス!』

 言問橋の上に迫っていた旅客機のエンジン音が十倍ほどに大きくなり、機首が上がった。

 河川敷に居る人たちの鼻先をかすめ、旅客機は川上の白髭橋の方に飛びさっていった。
「あぶないとこだった……」
『この時代のコンピューターはチョロい……ん、かざみ、体が透けていたんじゃないのか?』
「あ……元に戻ってる!」
 かざみの消えかけていた手足が、しっかりもどっていた。

――やったわね! あの旅客機にひいひいお祖父ちゃんの太田義純さんが乗ってたの。かざみさんが救けなきゃ、飛行機事故で死んでるところ!――玄孫のなゆたの思念が届いた。
「やった! じゃ、これで二十二世紀に戻れるのね!」
――……かざみさんのひいひいお祖父ちゃんお祖母ちゃんは十六人、八組いるの。まだ不安要素は残ってる、もう少しがんばって――
「ちょ、ちょっと、がんばるって……!」
――あ、時空が歪んできた……かざみさ……だから……あ……――
 なゆたの思念はとぎれとぎれになり、消えてしまった。

 百年前の隅田川テラスに一人取り残された。慣れない街中に出るのも億劫で、かざみは川辺の遊歩道をボンヤリと歩いた。

「かざみ……かざみじゃないか?」
 振り返ると、かざみと同じ帝都国際高校の制服を着た男子生徒が立っている。かざみは判断がつかない。
『時空パルスは2103だ、この時代の人間だ』タマホが解析した。
 かざみは混乱した。この時代の人間が、なぜ百年後の自分を知っているんだ……男子生徒は人懐っこい笑顔でかざみを見つめる。
 かざみは曖昧な笑顔を返すしかなかった……。


※:登場人物

 時任かざみ     百年の時空を超えて旅する少女 航空機事故の生き残り
 時任祐之      陸軍中佐 航空機事故でかざみを救う かざみを引き取り十七歳まで育てる
 ノラ          軍から派遣された監視用アンドロイド 祐之の謹慎が解けてからはハウスキーパー かざみのサポーター
 満腹亭のオヤジ  祐之の元部下 戦争で負傷 脳みそ以外義体
 加藤珠美      かざみのクラスメート 野球部のマネージャー 名ばかりエース佐藤の彼女
 佐藤球児      下り坂の野球部エース
 なゆた       かざみの玄孫 百年未来から来てかざみを百年前の世界にもどした

※:かざみの使命  百年前に戻って高祖父母をめでたく結びつける


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高校ライトノベル・ボク少女 イン オオサカ

2015-09-17 09:54:28 | エッセー
ボク少女 イン オオサカ

A  「オレ、今日はよ帰りたいねん。さっさと、やってしまおうや」
B  「うん、オレもはよ帰りたいねん」
A  「おまえは、なんで?」
B  「あした、オレ検定やねん。ちょっとは、やっとかなら、検定料もったいないさかいにな」
A  「おまえ、先月受けたとこちゃうんか?」
B  「あれは簿記や、あしたは英検」
A  「忙しい、やっちゃなあ~」
B  「おまえは、なんやねん?」
A  「おれ……」
B  「あ、ああ……」
A  「なんやねん……?」
B  「まさか、これと(親指を立てる)……隅に置けんやっちゃなあ!」
A  「ちゃう、ワクチンの予防注射や」
B  「あ、ああ、あれのか……痛いぞ、明日手ぇ上がれへんで」
A  「おまえ、もうやったんか?」
B  「うん、先月なあ」
A  「女は損やなあ……」

 これ、部活の後始末をやっている女子高生の会話なのです。最後のAの言葉で分かります。
 勘のいい人なら、Bの(親指を立てた)で分かったかもしれませんね。

 大阪の、ティーンの女の子の一人称に、近頃「オレ」が流行っています。
 イケイケネエチャンかと思うと、そうではなく、ごく普通の女の子が「オレ」と言います。
 先生や、目上の人と話すときには、「わたし」あるいは「あたし」という伝統的な一人称を使います。

 なんで「オレ」なん? と聞いたことがあります。
「さあ……気ぃついたら、使うてました」という答えが返ってきました。
 要は、ハヤリのようです。

 関東では「ボク少女」という女の子たちが5%ぐらいの割で存在するとネットに出ていました。
 一種のユニセックスの派生系のようです。
「ボク少女」の元祖は、わたしの記憶では、手塚治虫の「三つ目がとおる」のワトさんこと和登千代子だと思うのですが判然としません。 ライトノベルの影響であるという人もいます。いわゆる「社会が決めた既成の女の子であることへのプロテスト」ととる勇ましい方から、「ユニセックスを装った「女の子」であることの、アピールである」という文化論まであります。

 大阪の「オレ少女」は、「ボク少女」のようなカワユゲさは感じません。文字で表現すると、ほんとうに男女の区別がありません。

 話は前後しますが、「ボク少女」の発見で、目からウロコ的な発見がありました。
 AKB48のいくつかの歌の主語が「ボク」なんです。「ヘビーローテーション」「ビギナー」「大声ダイヤモンド」などです。AKB48は、男の子の心を唄うことで、男の子の……いや、男のファンのハートをつかんでいたのか……と、思っていました。
 しかし違うんですねえ……女の子の一人称だったんですね(冗談ですが、ほんまにソウカイナと感じる歌もあります)
 なるほど、箱根の向こうでは、そういう文化があるのか!

 わたしの知っている範囲では、大阪に「ボク少女」はいません。
 潔くも、凛々として「オレ少女」であります。

 じつは、ここから本題であります。
 埼玉から、大阪の高校の先生になった若い女の人が、こう言いました。
「大阪の女の子は……」
「どうかしました?」
 なにやら、カルチャーショックを受けた様子で授業から帰ってきました。
「なにか、しよりましたか?」
「……一人称が……ね」
 その先生は、廊下でしゃべっている女生徒が、自分のことを「わし」というのを、それも集団で使っているというのです。
「ほら、今も廊下を歩いている子達が……!」
「え……あの子ら、〈わたし〉て、言うてますけど」
「うそ、ワシです!」
 で、しばらくワシ論争になりました。
 大阪の女の子は「わたし」と言っているつもりなんです。それが関東の人が聞くと「ワシ」に聞こえます。
 むりやり文字にすると「わっし」になります。この「っ」大阪の人間にはたいてい分かります。変形で「あし」もあります。
 そう「あたし」が「あっし」そして「あし」に聞こえます。
 これは、昨日今日のものではなく、室町のころにはそうなっていたようで、堂々たるオオサカ弁であります。
 古くは「わい」という男女共通の一人称がありましたが、近頃聞きません。身の回りで使っているのは八十を超えた伯母一人です。
「うち」というカワユゲなものもありますが希少化しつつあります。この「うち」の頭に「お」を付けて「おうち」にすると二人称になりましたが、ほぼ絶滅しました。
 よ~く耳を澄まして聞いてください。「ワシ」と「わっし」は、明らかに違います。

 自分のことで恐縮ですが大阪では「大橋さん」は「おおはっさん」になり、急いでいるときなど、つづまって、ほとんど「おっさん」にナリハテます。
 関東の方は、こうなりません。「おはしさん」と、「お」が一つ無くなります。お急ぎのときは「し」と「さ」が一緒になり「おは(すさの合成音)ん」であります。大阪と関東では、なんだか「大橋」の値打ちがちがうのか……と、ひねくれてみたりします。
 しかし60年以上「大橋」をやっておりますと、つづまった「おっさん」と、ただの「オッサン」の違いは良く分かります。
ときどき、おちょくって「オッサン」という生徒がおりました。そういうときは……。
「だれがオッサンやねん!」と、追いかけ回したものでありました。

 
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高校ライトノベル・アンドロイド アン・3『その気……?』

2015-09-16 13:59:31 | 小説4
アンドロイド アン・3
『その気……?』



 パカ……床下収納の蓋がひとりでに開いた。

 しばらくすると、形のいい両手が現れ、ハタハタと手がかりをまさぐった。何も無いと分かると、手は収納庫の縁に張りついた。
「えい」と可愛い掛け声が上がり、若い女性が収納庫から出てきて、月明かりの台所に立ち上がった。

「おお、まだいたのか……もう、とっくに帰ったかと思った」

 振り向くと新之助がパジャマ姿で立っている。
「すっかりお爺さんになってしまったのね」
「ああ、三十年たっちまったからな……すまん、水を飲むんだ」
「あたしが……はい、どうぞ」
 新之助はコップの水を受け取ると、コクンコクンと薬を呑んだ。
「心臓の薬ね」
「効きやしないんだけどね、医者がうるさくてな」
「……その気になった?」
「相変わらずだなあ、アンは」
「だって、そのために、あたしは来たんだもん」
「二百年先の未来からな……ま、落ち着かないから掛けようじゃないか」
 新之助は椅子に掛けると、テーブルを隔てた向かいの椅子をアンに勧めた。
「……ここで、毎朝お味噌汁作ったのよね」
「ありがとう、お蔭で健康だったし、物覚えも良かった」
「また、こさえようか?」
「ハハ、ありがとう。でも、もういいよ」
「いいよ、直ぐにできるから!」
 アンが身を乗り出すと、新之助は眩しそうに照れた。
「もう味噌汁を飲んでも遅い。この高階新之助の命は十日ほどしかもたない」
「……なんで?」
「アンのお蔭さ……頭が良くなったから、自分の寿命も分かるさ」
「治してあげる!」
「アンでも治せないよ、寿命だからな……その気にもならずに逝ってしまう。すまんな、アン」
「新之助……」
「ところで、その気って、なんの気か覚えているかい?」
「それは……つまり……えと……」
「……忘れてしまった……それとも、アンの中で変わってしまったかな?」
 アンは懸命に思い出そうとした。CPUがフル稼働し、ラジエーターを兼ねた髪の毛に陽炎がたった。
「思い出さなくていい……こうやって現れてくれただけで、わたしは十分だよ」
 新之助は、アンの手に優しく自分の手を重ねた。
「わたしが死んだら、孫の新一のところに行ってやってくれないか」
「新一……」
「この春から一人暮らしをしている。あの子にはアンのような存在が必要だ」
「その気にさせられるかしら?」
「わたしは、その気になってるよ……」
 声のトーンが違うので、アンは少し戸惑った。
「だって、だろう。奥に布団は敷いたまま……どこまでアンの期待に沿えるか分からんが、その気持ちをむげにはできないよ」
 そう言いながら、新之助はパジャマを脱ぎだした。
「ちょ、ちょっと新之助!」
「え、だって、そのためにスッポンポンで出てきてくれたんだろ?」
「え…………キャー!!」
 アンは、自分が裸であることに気づき、慌てて床下収納に飛び込んだ。

 結局ははぐらかされたんだ……新一の味噌汁を作りながら、新之助との最後の会話を思い出すアンであった。


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高校ライトノベル・「GIVE ME FIVE!」

2015-09-15 21:06:47 | 小説
「GIVE ME FIVE!」(ギブ ミー ファイブ!)  

「ねえ、ケント元気!?」

 陽気な声が、梅の花びらといっしょに降ってきた。
 見上げると、ピロティーの上の露天になった渡り廊下から、スーザンがみんなと写メを撮りまくっている。その合間に、中庭でしょぼくれているボクに声をかけてきたのだ。ボクは手の甲の傷をそっと撫でた。
 
 スーザンは、アメリカはシアトルにある姉妹校ヘブンロックハイスクールからの交換留学生。
 普通は、一ヶ月程度の短期なんだけど、こいつは、二学期からずっといて……というか、居着いてしまい、とうとう今日の卒業式まで居座った。
 やってきた時はびっくりした。日本人の血が1/4入っているらしいが、青い目にソバカス、ほどよく上向きの鼻が、いたずらっぽく、なんだかポップティーンの表紙になってもおかしくないほど可愛かった。
 で、当然のごとくクラス、いや、学校中の男子からはアコガレを通り越して、遠巻きに見守られているって感じ。
 最初の挨拶、まさに漢字の挨拶。ぼくたちが、学年始めにやるフニャフニャしたアイサツとは格が違った。
「初めまして。わたしスーザン・モントレーと申します。皆さんご存じのアメリカの姉妹校ヘブンロックハイスクールから、交換留学世としてやってきました。ヘブンロックハイスクールはシアトルにございます。シアトルはアメリカの北西部のワシントン州にあります。えーと、この教室をアメリカだとすると、廊下側の席の一番後ろあたりになります……」
 クラスのみんなは、スーザンの流ちょうな日本語に驚くとともに、彼女が示した廊下側の一番後ろの席に注目した。彼女に悪意はない。たまたま教室の北西部にあたるのが、ボクの席だった。で、ポーカーフェイスを決め込むとか、適度な笑顔ができたらよかったんだけど、ボクはニッコリ笑顔のスーザンとまともに目が合い、自分でもはっきり分かるくらいに真っ赤な顔になって、うつむいてしまった。当然クラスのみんなから、注目されてしまった。
「わたし、アメリカじゃ、スーズって呼ばれていたの。みなさんも、そう呼んで……で、あなたは?」
 救いの手のつもりだったんだろうけど、スーザンはボクに振ってきた。シアトルじゃ救いの手とか、親愛の情とか言うのかもしれないけど。ここじゃ「イジル」ってことになる。ボクは、学校では、ちょっとした「変わり者」で通っている。その理由はおいおいと……。
 ボクがモゴモゴしていると、担任のジュンちゃんが、余計なフォローをしてきた。
「松平賢人、ほんとは前から二番目の席だったんだけど、黒板が見えにくい鈴木さんに席を譲ってあげたの」
「それは偉いわ!」
 スーザンにとっては、自然だったんだろうけど、日本では大げさな誉め言葉(誉め殺し。少なくともイジメの一歩手前のイジルに通じる)とともに拍手した。クラスのみんなも、スーザンのペースに巻き込まれて拍手。
 で、偶然とは怖ろしいモノで、スーザンの席はボクの横になってしまった。

 怖ろしい偶然は、その後も続いた。なんとスーザンは、ボク一人だけが男子部員という演劇部に入ってきた!
 そう、これがボクが「変人」と思われる理由。演劇部は、ボクが入学したころは上級生に男子が居た。だからうっかり入ってしまった。その上級生は、茶花道部とも兼部していて、学校じゃ、ちょっとしたオネエで通っていた。それを知ったのは連休明けに正式入部届を出した後だった。
 でも、その強田剛という、オネエとは、およそ似つかわしくない名前の上級生が居る間は良かった。強田オネエが卒業してからは、演劇部で唯一の男子部員になってしまった。それまでになくてはならない存在になってしまったボクは、クラブを辞めることもできなかった。
 なくてはならない存在というのは、能力のことじゃない。ボクが辞めるとクラブは五人になってしまい、規定によって、クラブから同好会に格下げされ、部室も使えなくなるからだ。
 
 まあ、一ヶ月の短期留学。お客サマのつもりでいた。

 それが、月が変わっても、彼女は居続けた。
 その手伝いをしたのも、偶然だけどボクだった。
 その日は文化祭の振り替え休日で、学校は休み。朝寝坊して、大学を遅刻しそうになった姉貴をバイクに乗せて、駅からの帰り道、コンビニの角を曲がったところで出くわしてしまった……スーザンと。
 ブロンドのポニーテールが、道ばたでしゃがみ込み、壊れた自転車と悪戦苦闘していれば、イヤでも目に付く。目に付くんだから、放っておいても誰かが声をかけたんだろうけど、ボクはあまりの突然にブレーキをかけた。自分の直ぐ後ろでバイクが停まったんだから、当然スーザンも振り返る。
「ああ、ケント、ちょうどよかった。神さまのお導きね!」
 胸に十字をきって、スーザンは、バイクの後部座席にまたがった。
「あ、あの、ちょっと……」
「アメリカ領事館まで、お願い!」
 ボクは、日本の道路交通法で、バイクは同乗者でもヘルメットを被らなければならないと言うのが関の山だった。

 スーザンがなんの用事で領事館に行ったのか、分かったのは、その帰り道に寄ったマックの二階だった。
「え、じゃあ、卒業まで日本にいるの!?」
「日本人の表情は読みにくいけど、特にケントは、そうね。わたしが卒業まで同じ学校の同じクラスで、同じクラブにいることが、嬉しいの? それとも迷惑なの?」
 スーザンはまともにたたみかけてきた。
「いや、迷惑だなんて……」
 ボクは、平均的な日本人がそうであるように、意味不明な笑顔になった。しかし、彼女は完全な賛意と受け止めた。
「ないんだ! じゃ、わたしの話を聞いて!」
 完全にスーザンのペースだった。
 スーザンは、シアトルで嫌なことがあって、日本への留学を希望したようだった。嫌なことの中身は言わなかったけど、むこうの学校の名前のように「ヘブンがロックされたような事情」らしい。
 一ヶ月の短期留学を、卒業までの半年に延ばしただけでも、ヘブンのロックは取れないような様子だった。 保護者である母親の了解を得られたのが、昨日で、延長許可が認められる最後の日だったようだ。そして、喜び勇んで領事館に行く途中、中古で買った自転車のチェ-ンが外れてしまったところにボクが出くわしたわけ。
 彼女が日本人以上に正しい日本語を喋るのは、母方のお婆ちゃんに、幼い頃から育てられたから。だから「ら」抜き言葉なんか喋らなかったし、朝日新聞のことも正確に「アサシシンブン」と発音していた。

 文化祭で演劇部は、「ステルスドラゴンとグリムの森」という芝居をやった。ボクは優柔不断で、白雪姫になかなかキスをできない王子さまの役だった。言っとくけど、ボク自身が優柔不断で当たり役だというわけでは無い。どうしても男でなければできない役が、これだったから。
 スーザンは中途入りだったので、照明係と、道具係を楽しげにやっていた。特に、後半の山場で、ドラゴンが飛び回り、最後に退治され、本来の姿、これがすごい。数千のゲームソフトやマンガラノベの本。これが舞台一面にぶちまけられる。この仕掛けをスーザンは簡単にやってのけた。どうやったかって?
 コロンブスの玉子! 彼女はネットで、昨年、この芝居をやった学校を検索し、直接交渉して仕掛けごと借りてきた。で、文化祭では大成功!
「ねえ、どうしてケントは、わたしのことスーズって呼ばないの?」
 紙ナプキンで、口を拭きながら、スーザンが聞いた。
「いや……なんとなく、そう呼び慣れちゃったから」
「ま、いいんだけどね。シアトルで、わたしのことスーザンってキチンと呼ぶのは、教会の神父さんと、遅刻指導するときの校長先生ぐらいだから」

 コンクール前に大事件が起こった。
 主役の白雪姫をやる徳永さんが盲腸で入院してしまった。今年は、文化祭でも成功したので、コンクールは自信をもって、みんな張り切っていた。
 本番三日前。もう、こりゃ辞退するするしかないと、部員一同覚悟を決め、期せずしてため息をついた。その時に、スーザンが叫んだ。
「わたしが、アンダスタディやる!」
 ス-ザンの流ちょうな日本語に慣れてしまっていたので、突然の英単語に、みんな戸惑った。
「アンダスタンド?」
 顧問の滝沢先生が、仮にも英語の教師であるのに、中学生並みのトンチンカンを言った。
 これくらいの言葉は通じるだろうと思っていたスーザンも戸惑った。
「Oh it's mean……Daiyaku!」
 この半年で、スーザンが英語を喋ったのは、これが最初だった。青い目玉を一回ぐるりと回すと、日本語で、こう言った。
「わたしが、エリカ(徳永さんのこと)の代わりに、白雪姫やるのよ!」
 アメリカやヨーロッパの芝居では、主役級の役は、あらかじめ代役が決めてあり、イザというときにはいつでも代役が務まるようにしてあるそうで、それをアンダスタディといって当たり前なのだそうだ。スーザンはそのアメリカでの当たり前を口にしたのである。別に、ぜひ代役がやりたくて、徳永絵里香の名前を書いたワラ人形に五寸釘を打ったわけではない。

 で、そのスーザンの代役で、地区予選は無事に最優秀。我が校としては十五年ぶりの地区優勝だった。
 ささやかに、祝勝会をカラオケでやった。女の子ばっかのクラブなので、唄う曲は、KポップやAKB48の曲になり、ボクはタンバリンを叩いたり、ソフトドリンクのオーダー係に徹した。スーザンは、この三ヶ月足らずで、新しい日本語によく慣れた。立派な「ら」抜きの言葉になったし、自分のことをときどき「ボク」と言ったりする。もっとも「ボク」の半分は、いまどき一人称に「ボク」を使うボクへの当てこすりではあるけど。スーザンの美意識では、男の一人称は「オレ」または「自分」であった。
 しかし、スーザンの歌のレパートリーも大したものだ。AKB48の曲なんか、ほとんど覚えてしまっていた。

 中央大会でも、出来は上々だった。最優秀の枠は三つあるので、地方大会への出場は間違いない!
 演ったほうも、観ていた観客もそう思っていた。部長のキョンキョンなどは顧問に念を押していた。
「地方大会は日曜にしてくださいね。土曜は、わたし法事があるんで!」
「ああ、法事は大事だよね」
 スーザンが白雪姫の衣装のまま、神妙に言ったので、みんな笑ってしまった。しかし、その笑顔は講評会で凍り付いてしまった。

「芝居の作りが、なんだか悪い意味で高校生離れしてるんですよね。高校生としての思考回路じゃないというか、作品に血が通っていないというか……あ、そうそう。白雪姫をやった、ええと……主水鈴さん(洒落でつけたスーザンの芸名)役としてコミュニケーションはとれていたけど、作りすぎてますね、白雪姫はブロンドじゃないし、外人らしくメイクのしすぎ。動きも無理に外人らしくしすぎて、ボクも時々アメリカには行くけど、いまどきアメリカにもあんな子はいませんね。それに……」

 審査員のこの言葉にスーザンは切れてしまった。

「わたしはアメリカ人です! それも、いまどきの現役バリバリの高校生よ! チャキチャキのシアトルの女子高生よ!」
「まあ、そうムキにならずに」
「ここでムキにならなきゃ、どこでムキになるのよ! それだけのゴタク並べて、アメリカ人の前でヘラヘラしないでほしいわよね!」
「あのね、キミ……」
 そのあと、スーザンは舞台に上がり、審査員に噛みつかんばかりに英語でまくしたてた。アメリカに時々行っている審査員は、一言も返せなかった。史上で一番怖い白雪姫だただろう。


「そんなこともあったわね」
 渡り廊下から降りてきたスーザンがしみじみと言った。
「止めんの大変だったんだから」
「ごめんね」
「もういいよ」
 ボクは、傷の残っている右手を、そっとポケットに突っこんだ。でも、スーザンは目ざとく、それを見つけて、ボクの右手を引っぱり出した。
「傷になっちゃったね」
「ハハ、男の勲章だよ」
「傷にキスしてみようか。カエルだって王子さまにもどれたんだし。ボクがやったら、傷も治って、キミはいい男になれるかもよ」
「その、ボクってのはよせよ。日本語の一人称として間違ってる」
「ボクは、ボク少女。いいじゃん。この半年で見つけた新しい日本だよ。キミも含めてね」
「よく、そういう劇的な台詞が言えるよ。他の奴が聞いたら誤解するぜ」
「だって、ボクはアメリカ人なのよ。普通にこういう表現はするわよ。ただ日本語だってことだけじゃん……あ!」
 スーザンが有らぬ方角を指差した。驚いてその方角を見ているうちに手の甲にキスされてしまった。
「あ、あのなあ……」
「リップクリームしか付けてないから」
「そういうことじゃなくて」
「……じゃなくて?」
 
 気の早いウグイスが鳴いた。少し間が抜けた感じになった。

「シアトルには、いつ帰んの?」
「明日の飛行機」
「早いんだな……」
「見送りになんか来なくっていいからね……ここでの半年は、ちゃんと単位として認められるから。秋までは遊んで暮らせる。もちろん、大学いくまではバイトはやらなきゃならないけどね」
 アメリカの学校は夏に終わって、秋に始まるんだ。
「ねえ、GIVE ME FIVE!(ギブ ミー ファイブ!)OK?」
 ボクは勘違いした。卒業に当たって、女の子が男の子の制服の何番目かのボタンをもらう習慣と。で、ボクたちの学校の制服は、第五ボタンまである。なんか違うなあという気持ちはあったけど、ボクは返事した。
「いいよ」
「じゃ、ワン、ツー、スリーで!」
 で、ボクたちは数を数えた。そして……。
「えい!」
 ブチっという音と、ブチュって音が同時にした。ボクは、てっきり第五ボタンだと思って、ボタンを引きちぎった。スーザンは、なぜか右手を挙げてジャンプし、勢い余って、ボクの方に倒れかかってきた。危ないと思ってボクは彼女を受け止めた。でも勢いは止められず、ボクとスーザンの顔はくっついてしまった。クチビルという一点で……。
「キミね、GIVE ME FIVEってのはハイタッチのことなのよ! ああ、こんなシュチュエーションでファーストキスだなんて。もう、サイテー!」

 それから、一年。ボクもスーザンも、お互いの国で大学生になった。
 で、ボクはシアトル行きの飛行機の中にいる。手には彼女からの手紙と写真。写真は少し大人びた彼女のバストアップ。胸にはボクの第五ボタンがついている。スーザンはヘブンのロックを、同じ名前の母校の生活とともにパスしたみたいだった。
 シアトルについたら、スーズって呼べそうな気がする。しかしボクの心って、窓から見える雲のよう。青空の中の雲はヘブン(天国)を連想させるが、実際はそんなもんじゃない。
 前の四列目の座席で乗客が呟いた。
「あれって、積乱雲。外目にはきれいだけど、中は嵐みたいで、飛行機も飛べないんだぜ」
 同席の女性が軽くおののいた。
 ボクの心は、もっとおののいている……。


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高校ライトノベル・かざみ 時と風の少女・11『隅田川テラス』

2015-09-15 13:59:22 | 時かける少女
かざみ 時と風の少女・11
『隅田川テラス』
 
  


「うーーーーーーーーん!」

 思わずノビをしてしまった。
 それくらい隅田川テラス(河川敷)は二十二世紀と変わっていなかった。
 スッコーンと開けた空、その下にゆるゆると流れる隅田川。
 河川敷は言問橋の方から、隅田公園、野球場、スポーツセンターと続いて、その間を縫うように遊歩道が貫いている。
 ちょうど下校時間のようで、河川敷をブラブラしながら駅に向かう高校生の群れがいる。その後ろには運動部の生徒たちがランニング。フレックスタイムなのか、休憩なのか、サラリーマンやOLの姿もチラホラ。
「おっと……」
 思わず、同じ制服の帝都国際高校の生徒達と目が合いそうになった。同じ制服でも百年に近い隔たりがある、下手に話しかけられたりしたら具合が悪い。
「あたしって可愛いから気を付けなくっちゃ」
 俯いて視線から逃れる。まだ視線は感じるが、追いかけてはこない……というか、視線は今までかざみが居たところから動かない。
「あれ……?」
 視線を追っていくと……かざみが居た後ろの方でテレビドラマのロケをやっていた。

『あ、あれ、今戸高校合唱部! 2010年に大ヒットしたテレビドラマ! リアル星野美鈴! かわいい~!!』

 いつも寡黙なタマホが勝手に喋りだす。今までワープが理解できずに沈黙していたのが、いっぺんに状況を理解したようだ。
「百年前のロケ見てる場合じゃないんだけどな……」
『ちょっとだけ、ご先祖捜すたって、手がかり、何もないんだから』
「だから考えなくちゃ……あ、まぶしい」
 レフ板に反射した日光が眩しくて、かざみは手をかざした。
「あれ……手が」
 かざした手を通してロケ隊が見える、目を足許に移すと足の先も透けはじめている。悲鳴が出そうになるが、辛うじて手で口を押さえた。

――急いで! ご先祖の誰かが結婚しなくなってきている。で、かざみさんに近づきつつある!――
 時空を超えて、玄孫(やしゃご)のなゆたの声がした。
「ど、どこに? 何をしたらいいの!?」
――ご先祖がいたら分かるはず、探して!――
「探すたって、どこを!? タマホ、あんたも探して! 考えて!」
『かざみ、それどころじゃ……空を見ろ!』
「え……」

 なんと大きなジェット旅客機が川筋に沿って墜ちてこようとしていた……!


※:登場人物

 時任かざみ     百年の時空を超えて旅する少女 航空機事故の生き残り
 時任祐之      陸軍中佐 航空機事故でかざみを救う かざみを引き取り十七歳まで育てる
 ノラ          軍から派遣された監視用アンドロイド 祐之の謹慎が解けてからはハウスキーパー かざみのサポーター
 満腹亭のオヤジ  祐之の元部下 戦争で負傷 脳みそ以外義体
 加藤珠美      かざみのクラスメート 野球部のマネージャー 名ばかりエース佐藤の彼女
 佐藤球児      下り坂の野球部エース
 なゆた       かざみの玄孫 百年未来から来てかざみを百年前の世界にもどした

※:かざみの使命  百年前に戻って高祖父母をめでたく結びつける


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高校ライトノベル・アンドロイド アン・2『味噌汁アンドロイド』

2015-09-14 16:33:01 | 小説4
アンドロイド アン・2
『味噌汁アンドロイド』



 味噌汁の香りで目が覚めた。

 一瞬、子どものころの記憶が蘇りかけるが、意識の水面に浮かび上がる前に沈んでしまった。
「え、朝ごはん作ったの?」
「そう、朝は、きちんと食べなきゃね」
 エプロン姿のアンがニコニコして言う……昨日押しかけてきたばかりなのにしっくり馴染んでいる。
「でも、食べてたら学校に遅刻しちゃうよ。顔洗ったら出るから……」
 そう言って、洗面に向かった。
「フフ、そう言うだろうと思って、時計を四十分進めておいた~♪」
 
 で、何カ月ぶりかで朝ごはんを食べるはめになった。

「……………」
「どう、おいしい?」

 アンドロイドが作った飯なんて……と思ったが、おいしかった、特に味噌汁が。

「アジの一夜干し、玉子焼き、梅干しとおしんこ。お味噌汁の具は、豆腐と油揚げ……もひとつ、な~んだ?」
「えと……これ?」
 ボクは見たことも食べたことも無いものを、お椀の中からつまみ上げた。
「さあ、なんでしょ?」
「キノコの一種なんだろうけど……なめ茸はもっと太いよな」
「エノキだよ」
「エノキって、こんなに味がしないよな?」
「特製乾燥エノキ『アンスペシャル』 味は生のエノキの十倍、キノコキトサンとかグアニル酸とか入ってて、体にいいの。頭にもね。新一の場合、弱点の記憶力によく効く。ほんとだよ♪」

 たしかにボクは記憶が苦手。いや、逆の言い方をすると……忘れることが上手い。

 いつもは、朝ごはんも食べずにギリギリに家を出るけど、今日は十五分も早く出て、二本早い電車に乗った。当然だけど乗客の顔ぶれは全然違う。二本早い電車の車内は、こころなし空いていて、遅刻ギリギリの殺伐、あるいは厭世的なダルさがない。
 学校に着くと、みんなに驚かれた。担任は目をパチクリするし、遅刻仲間の赤沢には裏切者のような目で見られた。

 二時間目には重大なことを思い出した。

 クラスに小金沢灯里という才色兼備の美人がいる。そう、その時までは、ただの美人のクラスメートだった。

 思い出してしまった。彼女が好きだと、大好きだという自分の気持ちを……味噌汁の効き目はテキメンだった。


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高校ライトノベル・かざみ 時と風の少女・10『最初のワープ』

2015-09-14 09:05:37 | 時かける少女
かざみ 時と風の少女・10
『最初のワープ』
 
  


 最初のワープは目の前が真っ赤だった。

 続いてオデコに痛みが走り、かざみは悶絶しかけた。
 道行く人たちの何人かがクスリと笑う。
 オデコを撫でながら目の前をあらためて見ると、真っ赤に見えたのは赤に近いオレンジ色だと分かる。
 で、それは円柱の上に四角い箱が載っている。
――えーと……あ、ポストだ!――
 博物館でしか見たことが無い郵便ポストが立っている。スマホやネットの普及で二十一世紀の半ばに郵便事業は大幅に見直され、ポストは廃止されている。それが現役で立っているということは、二十一世紀の前半である。
「おっと……」
 ポストから目を離すと、通行人のお兄さんにぶつかりかけた。

――危ないなあ……て、あれクラシックスマホ……初めて見た!――

 スマホは七十年前に安全装置が付いて歩きスマホをやっても人や物にぶつかることは、ほぼ無くなった。その後ウェアラブルなものに替わっていき、二十二世紀では体内埋め込み式のタマホに置き換わっている。あんな原始的なスマホでは公道は歩けない。
「二十一世紀前半のいつごろだろう……」
 無意識に道なりに歩いた、かざみの制服は百年以上変わらない帝都国際高校のそれだったので歩いていても怪しむものはいない。

 タマホがせわしなく周囲の光景や飛び交う電波から情報を得ようとするが、タマホにはワープの概念がないので解析不能のシグナルしか発しない。

――人が自動車を運転してる、よく事故が起こらないものね……歩きスマホも危ないし、神経使うなあ――

 百メートルも歩くとヘトヘトになった。
――なゆたぁ……無責任だよ、これじゃご先祖捜すどころか、あたしが迷子になっちゃうよ――
 街角の住居表示で浅草寺の裏手あたりだと分かる、このまま歩けば隅田川に出る。
――河川敷に出て、一息つこう――

 それは、への字になった道路の角を曲がって唐突に現れた。

「あ…………?」
 思わず声が出た。
 隅田川の向こうに見えたそれは、一見しただけでは確信はもてなかったが、建設中の下半分を見て閃くものがあった。
「スカイツリーだ」
 タマホが、すかさず検索。高さが338メートル……。

 2010年の三月という答えが出た。


※:登場人物

 時任かざみ     百年の時空を超えて旅する少女 航空機事故の生き残り
 時任祐之      陸軍中佐 航空機事故でかざみを救う かざみを引き取り十七歳まで育てる
 ノラ          軍から派遣された監視用アンドロイド 祐之の謹慎が解けてからはハウスキーパー かざみのサポーター
 満腹亭のオヤジ  祐之の元部下 戦争で負傷 脳みそ以外義体
 加藤珠美      かざみのクラスメート 野球部のマネージャー 名ばかりエース佐藤の彼女
 佐藤球児      下り坂の野球部エース
 なゆた       かざみの玄孫 百年未来から来てかざみを百年前の世界にもどした

※:かざみの使命  百年前に戻って高祖父母をめでたく結びつける


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