大橋むつおのブログ

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劇団往来プロデュース公演『うぉーあいにー』

2014-10-11 07:37:34 | 評論
劇団往来プロデュース公演
『うぉーあいにー』


 作:田中守幸  演出:鈴木健之亮  総指揮:森川英雄


 歳をくったもので、コミコミの小屋が苦手なので、10日(金)のマチネーを観にいきました。

 実に18年ぶりの道頓堀でした。分かるのは松竹座とかに道楽ぐらいのもので、目的の食い倒れビルが見つかるか不安でしたが、幸いに食い倒れビルの外観はそのままで、食い倒れ太郎の人形も健在でした。それに、なにより、会場前にはビル地下のお隣の小屋で若手芸人さんたちが、元気に呼び込みをしていたので、すぐに小屋が発見できました。

 往来もお隣の芸人さんたちも頑張っているんだなあと、いかにも見世物小屋に入る期待感で小屋に入ることができました。

 小屋は、地下だけあって天井が低いのですが、100席ちょっとの観客席とあいまって、わたしの気性に合った良き小劇場でありました。
 最初に往来のベテラン役者の乃木さんが出てきて一くさり。開幕前のベシャリをやらせると、この人の右に出る人はいないでしょう。巧みに観客を芝居の世界に連れて行ってくれました。

 この芝居は、書きすぎるとネタバレになりますので、ここからがむつかしいですね。

 ニューヨークのセントラルパークを散策するアメリカ人に「掘った芋いじっでねえ!」と言うと時間を教えてくれます。つまり、アメリカ人には[What time is it naw!?]に聞こえるのです。タイトルは、平仮名、英語、漢字(中国語として)の三つで書かれています。これがヒントであり、この芝居のテーマに繋がっています。

 とあるビルの地下(あるいは一階)に銃撃音の中、兵士たちが駆け込んでくるところから芝居が始まります。厳密にはキリコというメンソレータムのキャラのような看護婦キャラの女の子が手毬歌を手毬をついているところからですが。
 このビルの地下は矢部医院という怪しげな医院で、キリコはそこの看護婦で、鯨という怪しげな先生(キリコは「オッチャン」とよぶ)がいて、兵士たちを法外な治療費を取って直して(治すではない)いきます。全編、落語家の枝雀さんが言ったところの「緊張と緩和」の連続で、一見無駄な台詞……と言うより、コントのようなやり取りで満ちています。役者も新劇畑の役者さんから吉本、松竹、そして米朝事務所の落語家さんまでいるというごった煮です。ごった煮のナンセンスな面白さが、ラストにこの芝居のテーマを際立たせます。

 正直、役者さんの技量はまちまちですが、演出の鈴木君は、よくまとめていました。19年前の初演のときには分からなかった、この芝居の面白いところとテーマが良く分かりました。

 人間は、自分が作り出したものに溺れ、使いこなせず、場合によっては手厳しい反逆を受けます。ここまでは言ってもいいでしょう。兵士たちは戦争のために作られたドール(アンドロイド?)なのです。で、ドールでありながら自身は人間であると思っています。
 芝居の進行の中で「え、あんたもドールやったん?」という心地いい観客への裏切りが随所にあります。心地よく騙されてきました。

 ただ、若い役者さんの戦闘シーンに緊迫感がありません(張りつめた周囲への警戒感、弾着したときに思わず縮める身の縮め方などが)どうにも弱いのが歯がゆく、その緊張の戦闘シーンから、オチャラケたコントの緩和とのコントラストが、ぜいたくを言うと表現しきれません。また、モノローグになると「伝える力」の弱さが出てしまい。聴かなければ台詞として自然に届いてこないのが惜しく思いました。

 しかし、わたしが観たのは12の公演の一つに過ぎません。日によって役者がみんな違います。その日その時の芝居の楽しみが22通りあります。土日は観客席は一杯だと思います。台風が予想される月曜など落ち着いて観られるのではと、思います。



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