天を突くゴシックの尖塔。
古都トレドのほぼ中心に位置する場所に、大きく聳(そび)え立つのが、このカテドラル。
トレドを訪れる人は、まずここへと足を運ぶというこの大聖堂は、ゴシック建築特有の垂直性を持って、勢いよくかつ高く、天に向かって真っ直ぐに伸びています。
この大聖堂の中へと足を踏み入れて驚かされたのが、トランスパレンテの祭壇。
礼拝堂のレタベルと呼ばれる祭壇の衝立には、イエスの生まれてから復活するまでの様々な場面が彫り込まれています。
その彫刻のシーンひとつひとつをよく見ると、ところどころに透かすような穴(トランスパレンテ:透明な、透き通る)が空いているのです。
そして、そのレベタルの真裏、大聖堂東側の天井には天窓が設けてあり、ある時間、日の光が天窓に差し込むと、トランスパレンテに導かれた朝日が前面へと向かい、祭壇に刻まれた聖者の姿を、魔法のように神々しく浮かび上がらせるのです。
500年以上も前から続く、この奇跡の光景。
このような神がかり的な仕掛けが施されているなどと考えもしなかった当時の街の信者達が、ミサの途中、司祭の声と共にこのイリュージョンを見たとしたら…。
誰もが神の存在を、その心に実感したに違いありません。