回覧板

ひとり考え続けていることを公開しています。また、文学的な作品もあります。

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 3542-3545

2022年07月15日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3542
閉ざされてしまうと薄暗い
部屋の中
ひとり言葉は冷たい椅子に座る 心地はよい



3543
外からは解(ほど)けばいいのに
と見えてギクギクシャク
内とは数光年隔たっている



3544
ことばがことばとすれ違う
(ああ あったかい)
言葉は要らないという野から遙か遠く



3545
ことばとことばが向き合って
(何を言っても通じない)
というおもい沈黙に立ち尽くすことがある

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 3538-3541

2022年07月14日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3538
晴れ上がった空の下
薄曇りの
抱えて座っている時もあり



3539
境目ではいろんなものが
ぶつぶつと
透明な泡のやり取りをしている



3540
(ああ もうやだな)と言葉の泡が
出てくる
うちはまだ大丈夫だ



3541
内向してもくもくと
埋め立ててしまった
心には開かれる窓がない


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 3534-3537

2022年07月13日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3534
語っているとき並行する心が
(あ 少し照れる
ということは今ウソが混じっているな)



3535
たぶん誰もが並行している
そうして知らない間に
自分の言葉の歩みを感じている



3536
「ああ 今のはうそ、うそだよ」
と冗談みたいにして
修正を加えることもある



3537
語る言葉が修正されない
としても
並行する心は修正している


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 3530-3533

2022年07月12日 | 詩『言葉の街から』
 詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3530
ひとつの言葉にも〈うそ〉と〈ほんとう〉の
配合する 微妙な
稜線があり肌合いで感じる



3531
100%の〈うそ〉と100%の〈ほんとう〉を
分離する
のはびみょうな手付きでも難しい



3532
ぼくらは純度100%の〈うそ〉と〈ほんとう〉の
誰も座れない席を心の隅に設けながら
〈うそ〉や〈ほんとう〉を語っている



3533
「うそうそ!」「え、それってほんとう?」
言葉の通りでは
〈うそ〉と〈ほんとう〉は軽い物語で流れていく


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 3526-3529

2022年07月11日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3526
「人はこの地にひとり生きている」
〈この地〉?〈ひとり〉?
ひとつの認識にも無数の疑義が湧く



3527
共通の大気を呼吸し
同じ時代に生きている
が確かに異色のひとりを生きている



3528
誰かが起こした事件に
取りあえず自分は無関係
だが遠い雲の糸をたぐれば互いに微かにつながってはいる



3529
週刊誌記事のかすかなかすかにかすか野
語られない
ことばたちが漂っている

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 3522-3525

2022年07月10日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3522
AI短歌には血が流れていない
拍動する
イメージの生命(いのち)がない



3523
政治家の空言には
拍動する赤い血はない
AIと違って黒ずんだ血が底流している



3524
にんげんのはじまりの言葉には
何かを見て
突き動かされる〈あ〉があった



3525
言葉は人の印だから
さびしいAIは
いつまでも圏外の記号の森を出られない


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 3518-3521

2022年07月09日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ
 
 

3518
沖縄の海で知らない漫画家が死んだ
ひとつも良いとこがなかった政治家が銃弾に死んだ
知らない所で人がひっそり死んでいる



3519
見知らぬ人の死には波風は立たない
悪印象の者の死には
心の波面は切断された空白である



3520
昭和天皇より先には死なんぞ
と戦争を潜り抜けた吉本さん
天皇の死の青空に何を思ったろうか



3521
死とともに人間界の感情・倫理を超える峠付近では
極悪非道の悪人にさえ
心のようなにんげんの波面が静かに揺れる


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 3514-3517

2022年07月08日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3514
もちろん不幸の言葉の家には
遠慮がちに
出入りするということもあり



3515
また若い娘さんなのに
今どき
「・・・様」と呼称される言葉の家もある



3516
けれどまぼろしの言葉場だけは
自由自在
人を殺めてしまうこともできる



3517
でも殺めたら身も心も
返り血を浴び
帰還兵のPTSDを抱え込む

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 3510-3513

2022年07月07日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3510
ひとつの言葉へ志向する
と この列島の
全時間の海が幻みたいに浮上する



3511
言葉には肉があり衣装があり
ありありと
その感触や匂いを感じる



3512
言葉はぼくのものであり
きみのもの
この列島この大地すべての時間の 言葉



3513
言葉はぼく・みんなだから
ネコみたいに
どんな家にもズカズカ出入りできるんだ