「つばさを生やしてみる?」
「はい」
*
「第四次延長」(宮沢賢治)の位相において時空の関所は破られ
銀河群の全域、全時間、全方位を連結する窓が開かれる
暗きより暗き道にぞ入りぬべき はるかに照らせ山の端の月
(和泉式部『拾遺』)
平安朝、跡かたなく砕け散って消えた千年はるかかなた
一人のおんなの歌が山の端の月のように「いまここ」を照らす
めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に 雲隠れにし夜半の月影
(紫式部(『新古今集』)
出会いの時、別れの時、すべての時に糸を通すように
連結の翼は通時的にも共時的にも自在に翔けてゆく
ふるさとは語ることなし (坂口安吾)
外にさがしても何もない
吹きさらしの風だけがある
連結の翼は第四次延長に開かれた窓から羽ばたき
あの歌、この歌、すべての歌を結んだ先に、未生の歌を紡ぎ出す