【ASMR・本人生歌】月のウサギ-RYTHEM (youtube.com)
ことばを紡ぐ以前に深く交わりながら
いつかどこかで合流する場所がある
そういう直観のなかにありながら
追い越していくリアルに席を譲る
列車の窓の外に背中だけが見える
手を振る以外ない、そんなことがある
はかり知れない感情の乱流
引き返せない地点を過ぎて、あらためて
いまここの出来事として深く教えてもらった
しかしそれでおしまいではない
*
かたちなく意味に染まり
いつも情動に濡れている
せき止められない世界の訪れ
ことばはとどくことができない
とどきたい心がそうつぶやく
ひとりの月
ひとりの空
先回りできない
底知れないいざない
心は泡立ち
光が駆け出し
月と空を照らす
俺たちは世界に魅入られている
世界の何に?
わからない
ここにない
どこにもない
うしなったものではない
はじめから手もとにはない
たとえば?
ふたりの月
ふたりの空
たずねられたら
そう答えることがあるかもしれない
けれど、そう答えた途端に
そうではないものが動いていく
かたちを定めることができない
ただそうとしかいえない
問いの方向を修正したほうがいいな
ことばの用法をまちがえないように
「なに?」と問えばかたちが定まってしまう
有形のものには有形を
無形のものには無形を
なに、ではなく
かたちのないものへ
なぜ、俺たちは唇を向けるのか
この問いになら答えることができる
そして、その本質は取り出すことはできる
俺たちはかたちあるものに
かたちないものを重ねている
世界はかたちのないものに溶けている
かたちのないものは汲み尽くせない
取り出すことができるのは
ただそれをそれとして生きる
俺たちの心のかたちだけだ
かたちのないものにかたちを与えようとする
そのたえざる試行──
それが俺たちの生の波形をつくっていく
たえざる試行
つねに未決の波形を描いていくもの
すべては心の泡立ちを起源として
世界に魅入られ、さまざまな試行へ向かう
なぜか?
答えは、そう生きることを心が望むから
(それ以上の答えはない)
どこへ向かうのか未規定だ、そして
この試行にピリオドを打つことはできない
心に決めておくべきことがある
この試行にピリオドが打たれないために
俺たちの生の本質を決して見失わないために
ただ一つのことだ
どんな思考においても、どんなふるまいにおいても
最終解、確定項から逆算して出力される世界記述
俺たちの試行を殺すこの経路を完全に断っておこう
俺たちはそうしてはじめて
未決の合流地点へ向かうことができる
抽象的?
観念的?
そう云わないほうがいい
俺たちはあまりにも具象の世界にたぶらかされている