ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「自我のエロスの展開」

2021-09-30 | 参照

 

 

──ドストエフスキー『罪と罰』江川卓訳

「ああ、なんと愛すべき、まちがった心だろう!」
(母に対する独語。ラスコーリニコフ)


──竹田青嗣『人間的自由の条件』講談社学術文庫

「近代社会の到来の本質的意味は、
人間がはじめてその個的な内面性を「自由の領域」として自覚し、
それを生のエロスの源泉としてつかんだことにある。
それがヘーゲル哲学の根底にある人間観の核である。
彼が青年期にぶつかった最大の思想はカントの自由と道徳の思想だが、
ヘーゲルはそこに、キリスト教的な聖化された「善」の思想の遺制を直観した」

「近代の「自由」の追求は、一方で社会的「正義」への要求を生むが、
同時にもう一方で、個的な「愛」や「ロマン」の観念を重要な目標として作り出す。
それらはある場合、鋭い対立の相で現われるが、しかし同じ本質をもっており、
自由な主体の中で、本質的に統合されるべきものとして格闘される。
社会的な「正義=善」を個別的な愛やロマンの観念のうちに住まわせようとすること、
ここに近代的精神の最も本質的な葛藤がある、
それがヘーゲルの思想的直観であり、また彼の哲学の独創性の淵源がある」

 

 

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「symphonic、秋」

2021-09-29 | Weblog

 

 

  サイバネティックな目で世界を見るということは、
  現象のひとつひとつのステップに、マッピング、翻訳、
  変換といった形式を持つプロセスの存在を見ることにほかならないのだ。
 
                   ――G・ベイトソン『精神の生態学』佐藤他訳
 
          
コスモスが朝の光に洗われ、風にゆれ、まなざしに交わり
心の変換規則に出会うと一つのアンサンブルが構成される

光と影と色彩のランダムな差異の連なりに
タクトをふるう超越的な存在がいるわけではない

ただ、あなたのまなざしが風景に接続されるといつも
差異の連なりと重なりは一つの構成として配列され
非線形的な変換とマッピングが起動していく
 
写像された視覚像はすみやかに心の変換規則と交わり
固有の響きを奏でるスコアが記述されていく

遠く山並みへまなざしを向かわせると
さらに別のアンサンブルの構成とスコアが創発していく

錦繍とも呼ばれる拡張された意味とパターンの構成――
心と風景を結ぶ広がりのなかに〝季節〟が奏でられていく
 
汲みつくせない世界の現われはいつも
ランダムな差異の連なりと重なりにおいて変化し
まなざしが携える変換規則も変化していく
 
ときにうつくしさのアンサンブルとして
ときに乱調、アンサンブルのゆらぎとして
 
まなざしが担う心の志向性と意味的統一の作用に誘われ
世界の色あいと表情はさまざまに変幻していく
 
はるかな面影と重なりあうなにか
世界を特別な意味とパターンの構成へ導くひそやかな
シグナルの響きが明滅している
 
遷移する季節の表情と差異のゆらめきのなかに
だれかとだれかが出会うとき

もう一つの意味とパターンの配置が織り上げられ          
まなざしとまなざしが二重記述する世界の
特別なアンサンブルと転調が加えられていく

 

 

 

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「ADIEU ──光の海」 

2021-09-28 | Weblog

 

 

どう迎え、もてなせばよいのか
わからないわからなさのままに

刻まれた光を消すことなく
光の強度が損なわれないように、

静かに、ふさわしく光る場所へ

かつて-いま-これから
世界は時間の光を集めた海に浸かっている

ひとしく混じりあう光のカクテルから
つねに予期は生まれ、新しい光が加えられていく

光の生成、それは動かせない原理

歌われ、生きられた歌は「そこ」になく
位相を移して、いま「ここ」にあって

あの歌があって、この歌があり、
次の歌が生まれ、新しい歌に溶けていく

すべての光は溶けあい
光の海はそのつど陰影を深くして
新たな光源を形成し、生まれ変わっていく

光を濁らせる、踏み入ってはならない
デカダンスの領域がある

混入するノイズ、作為の腕を払って
生きられる光の強度のままに

いまを照らす光のままに
光に手をふり、わかれの挨拶を交わす

Adieu!

そんなでもありえた あんなでもありえた
ああでなかったら そうでなかったら
こんなふうではなかったかもしれなものが
いま、ここに、こうしてふうにしてある

どんなでもありえたはず、とはいえない
けれど、こんなではない別のかたちが
ありえたかもしれないこととして

いま、ここでこうしてあることにかさなり
 
ずっと、そうでもありえた
ああではありえなかった
そうではないかもしれなかったこととして
いま、ここで生きられていく

ありえた、ありえない、ありうる、ありたい
かつて-いま-これから 
すべての時制を溶けあわせながら
  
そんなではなく、あんなでもなく
いまここに、こうしてあるということ

むすうのありえたこと ありえなかったこと
こんなではなかったかもしれないことに
かぎりないわかれのあいさつが交わされ
ただわかれの感情だけはたもたれながら

さまざまな、ひとつひとつ、かぞえあげることができない
それをそうだとすべてを知るすべはない
出会いがあり、わかれがあり

ひとりひとりの透きとおった
おわりのない、孤独な
内なる儀式をたずさえて
いまのかたちがあり

ありえたかもしれないむすうかたちと
ほんとうはなかったかもしれいかたちが
ひとつに結ばれるように
むすうの出会い、さよならがくりかえされ

これからもくりかえされるだろう
孤独で、せつなく、けれどすべてが溶け合う
ただひとつだけの光の海

いま、ここに、こうしてあることに
これからのかたちがかさなり動いてゆく

これよりほかになにもない、この世にひとつだけ
沸きたつ光の海として、いまここに
あなたがいて、ぼくがいて、ひとりひとりがいる

 

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「関係世界」20210928

2021-09-28 | Weblog

 

 

他者の言葉を完全棄却することで失われるものがある

生の位相の多様性、多数性を尊重するかぎり
どんなにそれが否認の対象として現出したとしても
「棄却不可」の視線が必然化する

固有のリアルを生きるそれぞれの実存

この生の位相へまなざしを凝らすとき
ひとつの関係態度、心的な〝留保〟(協議のテーブル)が生まれる

関係世界のあり方をめぐって協議を進めるとき
「正‐邪」を決しても意味はない
「真‐偽」を突き詰めても何もえられない
突き詰めれば相剋の種が蒔かれることになる

リアルとリアルが出会う場面において
正邪、真偽、美醜を外在的に決裁しても何も加えられない

歴史を参照するまでもなく結末は明らかである
対峙、対抗、せめぎあい、雌雄決着の論理の展開
そこには荒廃と滅びへいたる道以外に開かれない

それを願わないかぎり、それとは別の位相──
「相互了解、あるいは相互承認」が導く関係の位相
この位相へ向かう意志、構築にすべてはかかっている

相互に他者として交わる地点に何を生み出すことができるか

他者を招き入れる座席をあつらえ、審議のテーブルを用意できるか

それぞれの実存がともに生をまっとうできる関係構造、関係世界
その構築へ向かう意志と実践が主題として立ち上がってくる

 

 

 

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「オキュパイド・ランド」20141205

2021-09-27 | Weblog

 

 


 This is not the world we had in mind~♪
 (Alan Walker、Different World)


魂の幻想の占領軍が支配している
魂をオキュパイされた悲しい国の住民
 
占領軍の実体は存在しない
しかし、あらゆる魂に遍在する

中央の制御盤は存在しない
ただ呪術的コマンドが心を捕捉する
 
発令されたはずのない戒厳命令に従うように
不安と不信と不寛容の警戒ラインが走っている
 
警戒のまなざしと繰り返しのコードに制圧され
私空間も公空間も逸脱のモニタリングスポットが埋め尽くしている
 
「みなさんそうしていらっしゃいます」
 
占領地一帯は、共感呪術が支配する部族集団の暮らし
誰もがすることを誰もがする、という安堵の幻想の占拠
 
今昔を貫く、マジカルな動員システムの血統
主人と下僕の関係原理、警戒のコマンド連鎖
強固に積み上がった階層ブロック
 
70年前、赤紙一枚、向う三軒両隣がこぞってバンザイ三唱して
 数百万の若者を無間地獄の戦場へ送り出した動員実績
 
粒よりの極悪人たちがサタンの心で国民を欺いたわけではない
すべては善き心と日々の精励の蝟集が一つの歴史的帰結を準備した
 
巨大なシステムが改訂版のリクルーティングシステムを回している
新たな世代がぞくぞくと、システムに魂を捧げるかのように
学びの共同体の教唆にしたがって占領コードをインストールしていく 

だれかが仕組んだものでもなく
だれかの犯罪が導いたものでもなく
だれかとだれかの悪意や逸脱や計略が原因でもなく
だれかとだれかの呪いやルサンチマンが持続しているのでもない
 
みれば善男善女
街は分別の四則演算と
話せばわかる良識にむせかえり
意を汲みあい知恵を絞りあい

情動の股と股をこすり合わせながら
加担することなく加担し
悪意することなく悪意し
共犯することなく共犯し
 
だれか悪党を探し出してシラミ潰しに撲滅しよう!
そんなスローガンはもう誰も信じない
だれかが決めたシナリオがあるわけではなく
だれかが望んだ状況に収斂していくわけでもない
 
システムはただ回っている
回すために回されている
猛烈な回転速度で回っている
なにもかもが素通りしていく

現実は速やかに希釈され、新しい現実に入れ替わる
新しいコードがぞくぞくと名乗りを上げる

 ――へえ、そんなこともあるんだ
 ――はい、次どうぞ。

感情や思考は一ヵ所に留まることができない
学習課題、課題達成はは次々に陳腐化していく
追尾しきえれないノウハウの更新速度

課題は与えられ、与える人間にも与えられる
次の展開が行列を作って待っている

 ――じゃあお先に失礼します。
 ――帰って宿題片付けなくちゃ
 ――ちょっと待ってよ、じゃなかった、こっちも時間だ
 ――さようなら、またね

魂と魂は一度も出会うことなくすれちがう
バイバイを交わしあう日々だけがある
 
行き着くべき未来はどこにもない
定点はどこにも存在しない
帰還すべきふるさは存在しない

ゴールはどこにもない、イメージもできない
人も感情も思考も環境も迅速にワープしつづける

「異常も日々つづけば、やがてそれが正常になる」

なにはともあれ決済と査定の日は必ずやってくる
支払いと受取り、評価のルールは厳密に守られる
命を削りながら日々精励する人びとの暮らし
背中にはくっきりとマーケット・プライスが貼り付き
次なる展開へのスタンバイがスタンバっていく
 
悲しい国の住民は世代的任務を果たして死んでいき
魂をオキュパイする強靭なコードだけが生きのびていく

主犯の鬼畜なるものがどこかにいるわけではない
日々の精励において見えざるコードに帰依する
ほかならないぼくときみ、みんな、だけがいる

もういいよな

愚かさの極み──荒廃と滅びの道、そう言明できる位相がある
そのことを知りながらそうではなく生きている

この位相を現実に着地させる仕事が待っている
愚かさを壊したあとにくるものを明晰にスコープに収め
それをはじめなければならない、ひとりひとりが、どうよ?

 

 

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「エコロジーという概念」 20210926

2021-09-26 | Weblog

 

──G・ベイトソン「目的心対自然」「目的の意識がヒトの適応に及ぼす影響」佐藤良明訳

  目的をひた走る意識が立脚するのは、精神の全体ではなく、
  そこから切り取られた非循環的なシークエンスである。
  それは、システムというものの特徴であるループ構造を欠いた存在であります。

  Purposive consciousness pulls out、from the total mind、
  sequences which do not have the loop structure 
  which is characterictic of the whole systemic structure.

  会社の重役室にいるスミス氏の頭の中には、会社の目的……
  以外の考えが入り込まないよう、頑強な予防線が張られている。
  もっとも現実には、思考を百パーセント具体的な目的に向けて絞り込むなどということは、
  人間に可能なことではない。……
  しかしスミス氏に理想として期待されるのは、あくまでも、修正されざる、純粋な、
  脱人間化した「意識の思考」である。

  Mr.Smith is expected to act as a pure、
  uncorrected consciousness― a dehumanized creature.

       ***


エコロジー問題を決裁する〝最終法廷〟
この法廷は人間(の知恵)ではなく自然の側にある
(最後の審判、裁きは自然が下す)

類的総和としての知恵が試されている

自然の法、自然の思考をみずからに組み込み
人間的自然との適切な合流点を見出すこと

ベイトソンが〝精神〟と名づける「全体的思考」
この言葉にecologyという概念の本質が暗示されている

この位相において思考と実践を展開せることができるか否か

閉域で完結するローカルな思考と欲望の私闘、パイの奪い合い
加点と減点のクソゲームに明け暮れる関係世界

根本的な修正の契機はただ人間の側が負っている

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「不定形 — être」20210925

2021-09-25 | Weblog

 

 

やわらかくゆらぎに満ちた生のコンポーネントは
透明なリンクを伸ばしてみずからをかたどり
不定形の本質において生の気圏を駆けていく

   *

ここにあるもの、ここにないもの
どこにもあるもの、どこにもないもの
ありうるもの、ありえないもの
あるべきもの、あってはならないもの

ほんとう-うそ
よい-わるい
きれい-きたない

意味と価値の境界線を確定するまえに
意味と価値の境界線を確定したあとも

透明なリンクは伸びていく

検証可能、検証不可能
記述可能、記述不可能

自明性、未規定性、両義性、多義性
既知と未知、カオスとノモス

一切をスコープに収め世界をマップする
理解のポッケに収めるために
心的にあつらえた時間座標と空間座標、固有の公理系

求めるもの求めないものをそのつど決しながら
しかし、つねに、すでに、その先に駈け出している

希望、いまここにない存在可能
絶望、反転としての存在不可能

できる-できない
わかる-わからない
活性-不活性

世界を区切る境界は深い霧につつまれている
結語をどこに結べばいいのかわからない

不定形──展開形としての本質
かたちを決められない
決めることを拒む触発とゆらぎ

記述の確定を急ぐものを否認する
基底にうごめく始原の意志がある

実存、未決の本質──外からの記述とすれちがう生の形式
不定形の形式においておのれをかたどる生のフォーメーション

どんな記述も射止めることができない
みずからの外へ伸びる
伸びつづけるリンクがそれを許さない

連結可能-連結不可能
エロスと恍惚ー不安とおそれ

予期と不安は走り、走りつづける
リンクは伸び、伸びつづけてゆく

みずからに生成するリンクをたずさえ、たずさえられ
未決において生の試行をめがけるものに
不可避的に湧き上がるものにことばを与える

  somewhere in time 

もっと遠くへ、海と空がまじわる彼方
リンクを伸ばし、帆を上げる

ロマンーアンチロマン

ことばの仮象性を知りながら
ことばを与え、未決にふさわしいかたちを定める

いまここにない、どこにもない
ありえない、そう思うことの彼方へ

ただ、みずからに無から有を生むことを求め
創発をみずからに仕掛けるようにリンクを伸ばす

死んでいった悲しみや愛や憎しみだけではない
いまここに、どこにもない、これから生まれるものへ
そこへつながる神聖なリンクをひそませておこうか

 

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「快-不快」 20210924

2021-09-24 | Weblog

 

 

「快-不快」──世界を分節し開示する根源的作動

この根本コードはみずからの身体状態の検出として
それが同時に、世界との関係状況の検出でもある
というふうに動いている

自己開示、世界開示としての「快-不快」の分節コードの作動

生まれたての赤ん坊は、このコードの原的様態を生きている
そして、ここからコードが分節する対象意味の変化
さらに、対象群の拡張、豊饒化のプロセスを歩むことになる

固有の知覚経験、情動経験の累積と変容プロセスとしての生の展開
この展開は、うちなる検証、審議、再編集の位相に担われる

対象意味は変化し、対象群は拡張され、再編集され
自己開示、世界開示の様相は経験累積をつうじて変化する

「嫌いなピーマンもいつか好きになることがある」

対象意味、対象価値、対象カテゴリー
すべてわたる変容可能性を秘めた展開形としての生の本質

そして、最大の変容契機としての「関係的快-不快」(言語ゲーム)

(個体発生的&系統発生的、すなわち個人史&類的歴史の合作としの感覚、情動)

 

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「二十歳のマキシム」

2021-09-23 | Weblog

                 Alan Walker - Different World feat. Sofia Carson, K-391 & CORSAK (Lyric Video) - YouTube 

 

 

否定したい否定しつくしたいと願ったもの

自動化された言葉の応報
決めつけられるまえに決めつける
削られるまえに削りあう

どこにも行き着けない命のやりとり

自陣の加点と敵陣の減点をよろこび合う
全体収支が変化しない加点と減点のクソゲーム

なによりも供犠しあう心
仰ぎ見る心

差し押さえを喰らい
差し押さえを喰らわせる

見切り見切られる
筋書の決まった宴

人間讃歌と罵倒、友情と裏切り、信頼と軽蔑
地べたに釘づけにされたトンマの抱き合わせ

儀礼に従って手を振り、手を振られ
居場所を指定され、最後に
墓場へ安置されつづける心のかたち

どう生きればよいかわからない、そのことは変わらない
けれど、どう生きたらマズイかは明晰にわかる

そう考え、直観していた、二十歳

「堕ちる」ことの積極的意味を見出すには
「堕ちる-堕ちない」で動く現実が教えない〝視覚〟がいる

けれど、みずからの直観に頼りきった時代から決別しなければならない
直観を捨てるのではない、直観にカタチを与える仕事をはじめよ
手さぐり、みえない手がかりのまま、カオスを呼び込む
自動筆記法、オートマティズムの徹底的な励行

現実論理、確定記述──
「これが現実!」という生の全域を覆えないものが、
あたかも覆えるかのようにカンちがいしてデカいツラしてのさばっている

「人生はつくるものだ」

選ばれた芸術家、天才、特別な才能に頼るのはやめよう
頼ったすえに帰依することの愚かさが世界を貧しくする

「じぶんをバカだ、愚かだと思うのは根本的にまちがっている」

うぬぼれとはちがう、自己正当化ともちがう
やみくもな自己肯定とはちがうもっと本質的なことだ

ひとつひとつ、みずからのからだを通過させないかぎり
すべて天上に戴く言葉によって地上をおとしめることになる

人間の可能性を示す人たちの仕事は真摯にリスペクトすればいい
Caution!
天の頂きまで持ち上げて、みずからの生を価値下落させないように
なによりそれをツールとして他人の生を裁いて見下し、おとしめないように

「おまえは信仰を望むのか?」
「NO!」

ひとりひとり、いちどきりの生を生きるものとして、
生を素通りしないで生きるには、はね返すべき壁が存在する

それはじぶんのなかにもある
最初の、最大の、そして最後の壁かもしれない

壁には〝人間の階梯〟を教示する言葉が刻まれている
この壁をいったんカオスにもどす

天も地もない 優も劣もない

だれも教えない、教えることのできない
ひとりひとりの固有の生を生きようと望むかぎり
侵してはならない、侵すことのできない〝孤独〟の位相があること

最も嫌ったこと、ニンゲンの道具的使用、確定記述

 

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「Je vous remercie」 20210923

2021-09-23 | Weblog

 

 

かつて-いまーこれから
おれたちは世界を時間化して生きている

(固有の情動経験が溶けた、それぞれに固有の時間座標)

思うよりはやくトレースされ
刻まれていく召喚ポイントがある

時制の秩序を破るように
かたちを定められない
リアルな情動が溶けている

特別なシグナルが明滅する
〝その時〟がある

どう迎えたらよいのか

わからないまま
一つだけたしかなことがある

それを迎えるかまえ、作法、それが
おのれの現在の姿を映している

 

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「月を照らす」 20210315

2021-09-22 | Weblog

 

 

水と酸素と食物
なくては生きられないもの

つばさを生やすことはできない
無呼吸では生きられない

わかりきったことを語るまえに
語りたいだけ語らせたあとに

そこを降りていく

湿った地層がある
いつも濡れている

いまも降りやまない雨粒が沁みていく
涙が積み重なった人間の地層がある

降りていく、降りきって底を打ち
底から引きあげ連れもどす

かぞえきれない涙の層を降りていく
リミットを超えて降りていく

かなしいことばに呼びとめられる

ひとつひとつに理由があり根拠がある
代わることのできない由来がある

くじかれる心を黙らせ
耐えがたい限界を超える

ことばを黙らせる 完全に黙らせ
リミットの向こう側へ降りていく

野蛮な、不逞な、はぐれた鬼として
ことばをほどき、ほどき切る

深すぎて視透せなくなっている
固められた地層の底に向かって

まっすぐに降りていく

降りて降りて降り切って
連れだし、帰ってくる

出会うのはただ一つだ

純水のようなまっすぐな意志
月を、世界を照らし出す光

だれの世話にもならない意志の光
きれいごとではない

月に、世界に照らされるのではない

世界を産み、照らしている
おれの、おまえの、だれかの
ひとりひとりの始原の光がある

そいつを連れもどし、ただしく光らせる
それをしなくてはならない

 

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「Another Galaxy」20210921

2021-09-21 | Weblog

                                                        Alan Walker - Lily ft. K-391 & Emelie Hollow (Official Lyric Video) - YouTube

 

 

まなざしが交叉して
なにかが壊れ
なにかが点火する

情動の高波に耐えきれずに
結界は破られる

「ああ」

愛なのか憎悪なのか
正体を確かめるまえに

心が明滅する

エネルギーの凝集において
等しく一つの感化にほかならなかった

求めることにおいて
求めないことにおいて

心臓の拍動は同じ強度を刻んでいく
この作動に恣意はとどかない

いまを照らすものが
希望なのか絶望なのか

気づくよりはやく
新たな結界は開かれていく

愛を決断して愛することはできない
憎悪を企画して憎悪することはできない

善人ぶろうが
悪人ぶろうが

知ったかぶろうが何だろうが

心臓に近接した生の前線があって
だれも追い越せない
〝いまここ〟を告げる作動がある

向かう先はどこか

頌歌なのか悲歌なのか
未来なのか過去なのか

考えるよりはやく
世界への着生は告げられ

新たな結界の入口が示され
誘いのシグナルが明滅している

 

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「〝客観〟の用法」 20210920

2021-09-20 | Weblog

 

 

「主語、一人称の消失」を導く世界記述(世界認識)の方法

ニーチェ風には「神々による収奪」
フッサール風には「事実学の席巻」
ウェーバー風には「精神なき世界」

まとめると、実体化した〝客観〟による〝主観〟の収奪
「さかしまの世界記述」が関係世界を席巻している

    *

個と個を結びあわせる〝関係子〟として生成する「客観」の本質
この本質の洞察を欠くと「客観」は「主観」の上位に君臨しはじめる

「客観」の展開形式──真・善・美、そのさまざまな派生態

    *

ソレが貢献すべき対象が見失われると
ソレが目的化し、貢献対象は手段化し
全体が自律的な運動を開始する

この展開は苛烈さを増して
貢献すべき対象を道具化し、資源化し
すべてを呑み込むように全域化していく

われわれはソレを利用するのではなく、
利用される存在として位置づけられ
さらに、みずからを位置づけることになる

この構造的な変異は再逆転されなくてはならない
抽象化すれば、つぎのようになる

客観からの規定としての主観、ではなく
主観からの規定としての客観
  
主観内に形成される「間主観的信憑」としての客観の本質

一切を主観における生成として捉え
「客観」(社会体)の本質を明らかにすること
そこから世界経験をたどり直す

われわれは根本的修正を必要としている
主語、一人称をキープしたままの〝客観〟の用法
世界記述の方法の根本修正を

     *

キャピタリズム的展開──目的と手段の逆転

ひとつの達成が新たな競争の基準点として再設定される
終わりのない基準点の再設定の連続として
相互に達成を相対化し資源化していく循環と高度化の回路

実現されるはずの「ゆとり、やすらぎ、ゆたかさ」は
次なる競争のステージの資源として再投下される

ゲームの達成と成果がただちに、味わういとまなく、
次々にセットされるゲームの資源としてリサイクルされる

すべてのプレイヤーは過呼吸の症状に襲われるように、
没落のおそれによって駆り立てられていく

競争からの脱落
プレーヤーとしての資格喪失
生の没落という恐怖

勝者も敗者も、もてる者ももたざる者も
等しく没落回避に向けて走り出す
没落回避という強迫に追い立てられて生きる日々

永遠に「さいわい」を先送りされる回路が生活の全域を覆うとき
不幸でしかありえない構造の中に閉じ込められることになる

この回路を「さいわい」に貢献するように正当に作動させるには
別の回路──ゲームを離脱することが「不幸ではない」回路
ゲームを包摂する上位の回路が開かれなけれならない

没落を回避しながら、関係世界を荒廃と滅びの道へ導く逆説
この逆説を回避したいと望むかぎりそうしなければならない

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「自由の条件」20210919

2021-09-19 | Weblog

                                                   Alan Walker - Different World (Lyrics) ft. Sofia Carson, K-391, CORSAK - YouTube

 

自由を行使する
行使しない自由もある

使う使わない──
この意志決定も〝自由〟という理念の内側にある

生世界の基底を構成する、未決の本質

つねに存在可能、「ありうる」をめがける
みずからに〝審議〟の位相を開いて生きるもの

基底の意志の展開において審議空間を開き
みずからの生、関係世界を反照し
まよい、ためらい、ゆらぎ、決断し、選択する

この位相の理念化による取り出し
しかしそれだけでは現実に着地することができない

個と個がまじわる集合的位相における承認によって媒介され
関係項として確立されてはじめて〝実在〟を与えられる

理念化された集合的価値としての展開──

相互に与えあう集合的生世界の価値として
社会体の構成原理として、「コモン」として
生きあうかぎりにおいてはじめて現実を動かすものになる

個─社会体、この関係において
どんな関係項を第一の原理とするか

始発点としての「実存=個」の位相
この位相の本質にかなう展開形としての社会体でありうるか否か

個と個を結びあわせる価値原理として「自由」
この理念が血肉をそなえるための必須の基礎条件──
「自由」の行使が導く「関係のエロス(快)」の圧倒的経験
あるいは、その不在、喪失、抑圧における圧倒的経験

 

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「始発点──for a young lion、2021」

2021-09-18 | Weblog

                                                                    Alan Walker - Sing Me To Sleep (Lyrics) - YouTube

 

からだの声、それが希望
ただ一つ、自由の入口にあたっている

この声を聴かなければ本当はどこへも行けない

だれかが、なにかが、どこかへ
おまえを連れて行ってくれるだろう

それも悪いことじゃない?

ざわめき、もやもや、いらだち
ゆらぎ、ためらい、まよい、ふるえ

声はことばとしては現われない
いつも記述の確定を拒む表情をしている

ノイズとしてすべて切り捨てることもできる
耳をふさぎ、自由を呪う道も用意されている
この世が示す流儀には多くの欠損と瑕疵がある

いやだね

そうつぶやくおまえの声を聴いたがことがある

人生、〝結局、なんとか〟である──
老若、男女、思想信条、信仰を問わない
ひとしく〝とっつぁんの思考〟と呼んでおく

世界を記述して世界の姿形を確定する
人間の歴史をわがもの顔で動かしてきたものだ

この世を枯らす流儀がこの世を席巻している

おれたちには別のルートが開かれている
敵を蹴散らして滅ぼすチカラの道ではない

滅ぼすものがみずから恥じて滅びていく別のエロス
水をやり、光をあて、日々、育ててゆけるもの

それを用意できる場所で会おう

 

 

 

 

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