ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「世界視線」 20230731

2023-07-31 | Weblog

 

 

射抜く光が飛び交っている
あちこちで血しぶきが上がる

射抜かれたからだと心が歩いている
矢じりが突き刺さったまま
血だらけの姿が街を埋めている

射抜かれ射抜き返す

手当てされざる負傷者の群れ
射手であり瀕死者でもある展開の相互性

おそれ、おびえ、警戒、脅し、威嚇
攻撃と防衛のアマルガム、透明な秩序構成

(滅びの種を宿した関係世界)

射抜かれるまえに射抜く
そうではないやり方がある

生存を賭けた視線の獰猛さは抹消できない
ゲノムに刻印されたコードは書き換えられない

だから用法を変え、方角を変え
獰猛なエネルギーの対象を根本的に変更する

どうやって?

結論だけいえばこうなる
この世をまるごと射抜く対象とする

 

 

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「セッション」 20230730

2023-07-30 | Weblog

                                                                              Miles Davis - Burn - YouTube

 

 

表情も姿も意志も見ることはできない
しかしセッションはつづくことがある

途切れないセッションが四六時中響いている
聴き手はおのれ以外いない

ことばの先行、絵の先行、どちらでもない
先攻か後攻か、問いはすでに消えている

いつまでつづくのか、どこへたどりつくのかわからない
くりかえし、くりかえし、そのつど起動するエンドレス

破調、諧調、乱調、ひとつひとつが連結する
変換、拡張、転移、反復、回帰、停滞、高揚
すべてはおのれの生の波形を写像するように展開していく

終りのないセッション
そんなセッションがあることを教えてもらった

 

 

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「友」20230729

2023-07-29 | 参照

 

 

──中井久夫『清陰星雨』(みすず書房、2002年)

彼は見込まれたらいやと言えない男であった。
臨床でも論文の数で教授が決まる大学に嫌気がさしてもいたろう。
その結果の単身赴任である。

その夜、彼は心筋梗塞を起こした。まるで鳥の帰巣本能のように、
自分が運転して雪中四時間の道を県立尼崎病院まで行きたいと言った。
無謀を戒められて、彼は「よしわかった。ではモニターにつなげ」と言い、
自分で心電図を見ながら若い医師に指図して自己治療をやろうとした。
そして、ある瞬間、波形をみて「あ、これは駄目だ」と言い
「遺言を書き取れ、妻へ……子へ……」と述べ終わって瞑目した──。
神戸から浜坂に墓参りにきていたおばあさんが同じ心筋梗塞になった時には
神戸市衛生局長に直談判してヘリコプターを呼ばせた彼が、
自分の時には決してヘリを呼ばずに死んでいった、決して。河合淳、享年六十歳。
日本は時めく人でなく彼のような草の根で辛うじてもっているのだという思いを新たにする。
榊を供える番になった。写真を見上げたとき、不覚にも眼が霞んだ。
彼がいつくしんでやまなかった夫人が泣かれている前を、
私は夢遊病者のように通りすぎた。
はっと思ったが、もうイケダくんの夫人が彼女と相擁して泣いていた。

 

 

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「少女K、博多の夜」20230729

2023-07-29 | Weblog

 

 

 

あんたにわかるかしら。

わたしはウソをつくことができる。ためらいなく人をだますこともできる。
思ってもいないことを平然と口にすることができる。
感情を動かして手玉に取ることもできる。
それもね、わたしがいつもがらんどうに生きているいるからだと思う。

しみったれた姿を晒して生きてる人間がなんて多いんだろう。
空っぽの頭のまんま、したり顔で、なめきった面で街を歩いている。
そんな顔したら救われるとでも思っているのかな。月並みね。

がらんどうのなかで思ってみることがある。
怒りとか憎しみとかは救いなのかもしれない。心が一つになるって。

わたしは何を求めているのだろう。

文化とか、知識教養とか、知的とか、ほんとは信じていない。
それが心を引くのはいつかほめてもらいたいと思っているから、ちがう?
がらんどうを埋めるに値しないもの、道具にすぎないもの、
たったそれだけのことに呪われた姿にみえる。

でもね、それはそれでいいのだと思う。好きにすればいいわ。
わたしのこと邪魔しないでねと思うだけ。それは人の勝手だから。

官能がうずく。がらんどうを埋めるのはそれ以外ないのね。
存在まるごと、けたちがいの官能に溶けてがらんどうを舞っていたい。
空も海も木も草も人も虫も宇宙もすべてが一つになって流れていく。
そんなふうにずっと生きていたいと思う。

わたしは何も求めないけれど全部を求めているようなものね。
わたしは死にそうに退屈でうんざりだけど忙しいの。わかるかしら。

 

 

 

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「涙の谷(マルクス)」 20230728(20230213)

2023-07-28 | Weblog

 

 お前は他人の何を愛するのか?──私の希望をこそ。
 お前にとって最も人間的なことは何か。──誰をも恥ずかしい思いにさせないこと。
 体得された自由の印は何か?──もはや自分自身に恥じないこと。

                (ニーチェ『悦ばしき知識』信太正三訳)


正義、真理、理想、善き心はこちら側にある
おそらく対岸にいるものたちもそう考えている

正義、真理、善をかわちあう素晴らしい関係世界
そう思うのは勝手だが対岸にも異なる関係世界がある

全能の神を持ちだしても対岸には別の神がいる
(隔絶の淵をはさんで永遠に暮らすならそのままでいい)

もし谷を渡り向こう岸へ出て何事かをなすつもりなら
この認識を携え共通のことばを生み出さなければならない

 

 

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「求める心」20230727

2023-07-27 | Weblog

 

 

やさしさ、配慮、気づかい、思いやり、受けとめ、理解
そこにないはずのものをどこかで求めてしまうことがある

(掘り起こせばいくらでも出てくるかもしれない)

求める状況にないときも求め、いら立つ心がいる
あるはずのないものを贈られない心が裁きを下す

求める心はゲバルトと一体化することがある
強権化して人を平気で切り捨てることがある

幼いこどもの心への回帰を促がすもの

埋められない現在を不全を引きずりながら
おそらく先史時代の記憶を召喚してそうしている

 

 

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「悪口」20230727

2023-07-27 | Weblog

 

 


ほんとうに問題を突き詰めたいと思っているのかな
だったら、宴会のネタにするのはやめたほうがいいな
てか、そもそも宴会なんぞ目に入らないはずじゃね?

(わかりやすい解法があればそれは難問でもなんでもありません)

しめくくりに呑んで喰ってわきあいあい、いい気分で〆る
みな善人、こうでなくちゃ、うらやましいでしょ、とか
それって思うツボですんごくカッコ悪いと思うのですがね

居心地のよさって、敵味方例外なくだれもが求めているものさ
そのために皆さん頑張っている普通のことにすぎないと思うな
そんなレベルで何かを語り合ったつもりの連帯感、高揚感って
たいへん失礼ながら軽すぎませんか
宴会の数だけあるありふれた出来事にすぎないと思うな

いい大人がなにも大口広げて語るべきものではないでしょ
ましてや科学することを看板に掲げる集団の一員としてはね

居心地のよさって無数の形態があって、無数の感じ方がある
ある人間には温かく、別の人間にはひんやりする
湯加減と同じように、ひとりひとりちがうと思うのです

(こどもひとりひとりにとっても同じだと思うな)

むしろ居心地の悪い場所にもそれなりの資源が眠っている
思考するに値するものがそこに転がっているかもしれない
そう考えたほうが建設的で、発見的で、展開の可能性があると思う

切り捨てたり、反吐したり、薄っぺらとかカンタンに言わないほうがいい
うんうん、そうだそうだ、わかるわかる、そんな田吾作宴会の外に出たほうがいい

あえて心地悪さに踏みとどまることではじめて架橋することばが生まれる
つまり敵と味方をわける淵をブリッジする可能性がある、かもよ思う

 

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「地と図」 20230726(20230320)

2023-07-26 | Weblog

 

 


  私は、あなたが赤をどのように見ているかを知らないし、
  あなたは私がそれをどのように見ているか知らないでしょう。
  しかし、この意識の分離はコミュニケーションの失敗の後にだけ認められるのであり、
  そして我々の最初の運動は、我々の間にある
  ある分割されないものの存在を信じることにあるのです。
  
     ──メルロ=ポンティ『知覚の優位性とその哲学的帰結』加藤和雄訳


        *

虎よ さようなら──
一度はそう言わなければならなかった

もうこのマップは使えない
描かれたどのルートをたどっても
どこへも行き着くことはできない

ふたりは別々の場所に生きている
だからそうするたしかな理由がある

マップに描かれたルートを外れ
敷き詰められたマップを燃やす

外れることをよしとして
燃やしたはてに気づく

虎が虎として 俺が俺として
生きているそれぞれの「地」がある

名づけようのない ひとりひとり、隔絶しながら
数えきれないマップが立ち上がる固有の「地」がある

そして、その広さ、深さ、歩みを測ることはできなくとも
どこかでつながっているという信が俺たちを出会わせる

同じ空の色を見ている、そう信じたとき
たしかに信じるに足る、疑いようのない理由があった

そしていまそれは、別の疑えなさに変異している

描かれたマップの外に
使われたルートが消えた場所に

いつか、絶対にないとはいえない
新しいルートが走ることがあるかもしれない

かつての虎ではない虎として
かつての俺ではない俺として

いつか再び出会うことがあるとすれば
もしそのことを願う心があるなら
古いマップは静かに燃やしておかなければならない

 

 

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「シェアハウス──自己」 20230725(20230204)

2023-07-25 | Weblog

 

 

善き心があまねく行き渡り、極まれば世界は平和になる
そう思っているのかな
でもね、そういうことはありえないのです

「自己」というコンテンツを構成する全アイテム
そのすべてに素直に向き合えばすぐわかる

差別者、鬼畜、殺人者、病者、エイリアン、変質者
わが家に暮らす住人、多彩な面々をよく見たほういい

追放、処刑、殲滅という手段は使えない
そうすれば内戦がはじまる

(さんざん使われてきた方法だ)

エンジェル、聖者、有徳の者ばかりではない
サタンとも同居するシェアハウスのホストホステスとして

純化ではなく、そのまんまの自然において
かっこつけた純潔の倫理に舞い上がらずにさ

(同居人を差別しないように)

雑居しながらぎりぎり営まれる我というシェアハウス
複雑にからみあうコンポーネント、自己という存在の構成
ここからどんな共生の論理を取り出せるか

(それぞれの由来と歴史を生きる同居者たち)

ハウスの未来、同居者だれもが心をほどく帰還地
そんなものがありうるとすれば方法は一つだ
それぞれに一種の畏敬をもって接する作法が要請される

畏敬と畏敬がまじわるありそうもない原郷、シェアハウス
血で血を洗う惨劇を避けたければそうする方法しかないかもな

 

 

 

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「記述の作法」 20230724

2023-07-24 | Weblog

 

 

世界を記述して理解のポッケに収める
この作業には上も下も、優も劣もない
忘れないでいような
オノレの記述と理解にのぼせると見えなくなる

狼には狼の
羊には羊の
君には君の
俺には俺の

それぞれには固有の記述の流儀と作法がある
一匹一匹、ひとりひとり
カエルもミミズもオケラもアメンボだって
現実を、世界の姿を書きとめて生きる
どいつもこいつもそうして生きている
等しくすべては生命の必須の仕事だろう

そのことを頭に刻んだうえで覚えておこう
俺たちはなんのために世界を記述するのか

そこに在るものとして、単なる事実として
世界の姿を確定するためではない
確定項から逆算して生きるためではないな

手のほどこしようのないもの
なるようにしかならないもの
求めるのはそんな世界の姿ではない

そうではない記述のゲーム、用法がある

正義、正しさを競うゲームではない
真理の的当てゲームではない
記述の優劣を決めるゲームではない
ナイーブさ、やさしさを競うゲームでもない

記述と記述が出会い、交わり、連結し
カクテルされ、第三の視覚が立ち上がり
そこに世界に新たな奥行きが生まれる

トレースされる経験、ループする時間
見えるもの見えないもの、ここにあるものここにないもの

すべては資源として重なり、混ぜ合わされ
新たな予期とスコープ、感性が生み出され
新たなエロスにきらめく世界の姿が励起する

この作業はひとりひとり異なる記述から可能になる

みんなちがってみんないい、そうではないな
みんなちがうからこそいい、そう言わなくてはならない

そう言明できる地平を価値とすることはできる
記述と記述をカクテルする場所、それを開いて生きることはできる

 

 

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「共有された地平」20230723

2023-07-23 | Weblog

 

 

非直列的な、礼節あるへだたりにおいて
ふたりが合流する地平のかたわらに
思考、感情が動くフリースペースを用意する

ことばを探し、表現とその交換へ向かうことができるように
それぞれの作業スペースを保ち、与え合うように
みずからの開口部にあつらえ、たたずみ、迎え入れる

ふくらみ、ゆとり、奥行き、やわらぎ
それをどう呼べばよいかはわからなくとも

おそらくエールの交換がそこで可能になる
展開の第三の地平へ向かうための条件がある

 

 

 

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「Backstage──連結のアトリエ」 20230722(20230126)

2023-07-22 | Weblog

 

 

どんなに迅速な状況の展開にあっても
どんなに停滞し沈湎の底に沈んでも
プレーとプレーのつなぎ目は存在する

入力と出力を結びあわせる踊り場
車両と車両をつなぐ連結スペース

すべてのプレーはこのつなぎ目を経由して出力される

出入力のしくみはどこにも表示されない
すべてはバックステージで起きている

コード群が指定する状況と展開のウラ側にあって
状況の進行をモニターし、記録し、審議している
新たな連結関係を創り出すための作業場がある

世界に表示されない不可視、不可知、不可触のアトリエ

どんなに切れ目のないように見える展開にあっても
次のプレーはこのアトリエを経由して生み出されていく

アトリエにおいて、日々、刻々、ゆらぎながら
まどい、ためらい、行きつもどりつ、たゆみなく
新たなプレーの出力を思案しつづけている裏方

オモテの一人称を支えるように試行錯誤をくりかえす
プレー創出の作業に専心して生きる影の一人称がいる

状況は重く、展開は読み切れない
しかしどんな状況にもスキマがある

この一人称のいとなみを見失わないように
状況に目がくらみスペースをかき消さないように

 

 

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「結節点」 20230721

2023-07-21 | Weblog

 

 

手を振り、手を振られ、わかれを告げる
名残りを刻み、見送り、見送られ、遠ざかる

「ありがとう」

はかり知れない展開のゆくえ
視覚に映しきれない面影、透明な生の波形

はかり知れなさが交わる地点でシグナルを交換する
そういう確信が訪れているだけでよかった

孤独の瞬き、哀のシグナル

消えることのない交換のたしかさ
(いまここにいなくてもいい)

たった一度だけでよかった
たったそれだけで生きてゆくことができる

 

 

 

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「非人称の光源」20230720

2023-07-20 | Weblog

 

 


  (ドストエフスキー『白痴』)
  結核を患って余命のない青年イポリート‥‥
  イポリートもまた、時代思想である無神論と懐疑論を信奉する青年だが、
  彼は自分の命がもはやいくばくもないことを医者から宣告されてはじめて、
  いわば〝生ける懐疑主義〟を経験する。
  世界には意味も目的も存在しない。そのように主張することと、
  そういう世界を実際に生きてみることとはまったく別ものである。
  このことを彼は死に直面することで痛切に思い知るのだ。
  死の病に冒されてはじめて彼は、自分の生の絶対性ということに気づく。
  何人といえど、この個々人の生の一回性と絶対性を裁く権利や根拠をもっていない、と。
                 
                          (竹田青嗣『恋愛論』)

        *


カミの表象には大いなる瑕疵がある
裁き罰することしか知らない歪な姿が見える

(冷酷で酷薄で愚鈍な官僚仕事に似るかもしれない)

ねぎらい、いたわり、いつくしみ
対立を和解へみちびく「やわらぎ」の言葉は知らない

強権と断罪をもって統べることしか知らないもの
そして強権と支配を欲しがるもののツールでしかないもの

すなわち、この身を捧げるに値しないものに
全知全能という属性を与え屈服する人間とは何者か

人間と人間が連結する結節点に結ばれる超越像
人知を超えた絶対的な価値の極相、そこに鎮座するもの
そして派生する数えきれない自称のエージェント群

この天地の構造は人間的集合世界生成の必然に由来する、ただし
この必然は動かなくとも鎮座するものに変更を加えることはできる

取り去って、新たに代入されるべきものとは何か
抽象のぎりぎりのイメージとしてはこうなる気がする

ひとりひとり、人間の生を支援しケアするように働くもの
それに対する共通の信頼において生への憧れを導くもの

(天と地の階梯を生み出すことなく)

誰にも帰属せず、しかし誰もが共有しうるもの
相互に削り合うことなく生の賦活を導く非人称の光源となりうるもの

 

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「まちぶせ@大阪府高槻」20230719

2023-07-19 | Weblog

                 まちぶせ 石川ひとみ  YouTube

 

 

知人との合流まで高槻の喫茶店で時間を潰していた
有線放送に流れた娘の歌声に敏感に反応した

まっすぐに透明なリンクが走り抜ける

かなわない、かないそうもない想い
けれど、ありえない小さな予感のかけら

だれも知らない、ただひとりだけ
胸のうちに明滅するきらめき

夜明けが知らない、夜明けとともに消えてしまう
地面をいちども照らさないかもしれない光

はかなく、壊れやすく、愚かでもありうる

けれど、それなしには理由を与えられない
生きることの意味、生きることへ誘うものに

 

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