18歳の娘がつぶやいた
余裕をかますだけの頭空っぽたちに
「いつもたぶらかされていた」
知ってるつもりのトンマたちがのたまう
謙虚なふりして正論をわめきちらす
「もっと考えなさい」
「知らないことは罪である」
(一体誰が誰に向かって言っているのか。どんな罰が下るのか)
そうではないのですよ
〝正解〟にしがみついた、ボケナスくん
(正義客観真理の座席に着席したトンマたち)
わかったつもり、善男善女を見せつけあう
たったそれだけのことに血道を上げる
(悪男悪女を必要とする滅びのルート)
娘に代わってそのままそっくり返す
耳をほじくってよく聞いておこう
「おまえが考えろ。出直せ」
*
ことばの包囲をほどいて
記述を急ぐ世界をしりぞけ
しずかに耳を澄ましたほうがいい
からだの声、それが希望
ただ一つ、自由の入口にあたっている
(聴こえるのは愛だけではない)
この声を聴かなければ本当はどこへも行けない
だれかが、なにかが、どこかへ
おたたちを連れて行ってくれる
それも悪いことじゃない?
ざわめき、もやもや、いらだち
ゆらぎ、ためらい、まよい、ふるえ
声はことばとしては現われない
いつも記述の確定を拒む表情をしている
ノイズとしてすべて切り捨てることもできる
耳をふさぎ、自由を呪う道もこの世には用意されている
老若、男女、思想信条、信仰を問わない
人生、結局、〝なんとか〟である──
結論を急がせ、かたちを確定したがる世界、関係記述
人間の歴史をわがもの顔で動かしてきたものだ
おのれの声とは別のなにかに乗ること
乗っかる以外一歩も生きられない、生きさせない
虎の衣を着るしかおのれを示せない
権威に毒された記述命題から逆算して生を定義する
そんな流儀がいまも席巻している
この世を干上がらせ、荒廃へ導くものだ
「いやだね」
そうつぶやくおまえの声を聴いたがことがある
(漢字が苦手、そんなことはどうでもいい)
俺たちには別のルートが開かれている
敵を蹴散らして滅ぼすチカラの道ではない
滅ぼしあうものがみずから恥じて滅びていく
目撃することでみずから消えていく道がある
日々、水をやり、光を当てるように
一人称がともに生きる相手、からだを迎え、もてなす
そうしてはじめてともに生きていくことができる
俺とおまえが本当に出会うことができる作法がある