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日本語版新聞紹介

国立台北大学の楊孟哲教授をはじめとする東アジア各国の学者たちがここに参加したが、朝鮮代表席は空席となった。

2017-12-19 | 反共は、暴走政治の助け舟

台湾当局、国際学術セミナー朝鮮代表の入国拒否および許可取り消し

連帯心、いっそう固く結ばれた

                

李柄輝准教授

台湾・国立台北教育大学主催の「朝鮮の核武装の淵源を考える戦争と平和・東アジアの歴史と文化についての国際学術セミナー」が13日~16日にかけて、台湾台東県で行われた。

同国際学術セミナーの目的は、 現在の朝鮮半島の軍事的緊張の根源に、朝鮮や台湾に対する日本の植民地支配があると考え、特にアジア太平洋戦争以降、各国が取り戻した自らのアイデンティティー、歴史と文化の多様性および普遍性を相互に尊重し合うことによって、相互信頼・相互理解を一層深め、友好と親善を後押しすることにある。

TV電話を通して面談した李准教授と参加者たち

国立台北大学の楊孟哲教授をはじめとする東アジア各国の学者たちがここに参加したが、朝鮮代表席は空席となった。台湾外交部は、参加予定だった朝鮮社会科学院代表の入国を拒否し、朝鮮大学校・李柄輝准教授に関しては、セミナー開催直前に入国許可を取り消した。楊教授を筆頭に主催者らは、台湾国内外のメディアを通してこの事態を大きく知らせるなど、当局の不当な処置を糾弾している。

13日と15日、李准教授はTV電話を通して参加者らと面談した。(報告論文要旨は下に記載)

李准教授は今回の経緯とその不当性について話しながら、「私は台湾で、今日の朝鮮半島情勢について、朝鮮の立場について客観的に説明しようと考えていた。また、皆さんと活発に論議できればと思っていた。参席できないことは非常に残念だが、この一件で皆さんとの連帯の気持ちは一層固く結ばれたと自負している。朝鮮半島と東アジアの平和に向けて、共に力を尽くそう」と訴えた。

(李鳳仁)

 

朝鮮半島危機の淵源-抗日

親日をめぐる亀裂から停戦体制の成立へ(要旨)・李柄輝

台湾台東県で13~16日にかけて行われた「朝鮮の核武装の淵源を考える戦争と平和・東アジアの歴史と文化についての国際学術セミナー」で報告された朝大・李柄輝准教授の論文「朝鮮半島危機の淵源-抗日/親日をめぐる亀裂から停戦体制の成立へ-」を紹介する。

朝鮮の脱植民地化と抗日/親日の記憶

アジア太平洋戦争の終結によって帝国日本が崩壊し、東アジアに出現した新たな政治空間において、脱植民地化の動きが一斉に始まった。脱植民地化の中心課題は政治的主権の確立であり、それを担う主体形成―「国民」の創造である。しかし、この地域における脱植民地化のプロセスは、植民地「奪還」を狙う欧州列強や胎動期の米ソ冷戦など外部要因の介入によって、サイゴン陥落(1975年)まで続く「アジア30年戦争」を伴うことになった。東アジアにおける「戦後の戦争」の中で、朝鮮戦争だけが平和の回復を果たせず、分断された朝鮮半島に現在も危機的状況が継続している。

日本の支配から解放された後、朝鮮戦争へと至る5年史の展開の中で顕在化し、やがて南北分断へと帰結していく朝鮮社会の亀裂とは、親日派処罰や土地改革など植民地時代の遺制、後進性の克服に向けた革命と反革命の対立であった。

解放後、朝鮮における脱植民地化の過程で、人口の大半を占める小作農民層の支持を獲得しその組織化に成功したのは、左翼指導者らであった。民衆らにマルクス主義が浸透していたからではなく、左翼が日本帝国主義に対し節を曲げずに抵抗を貫いたからである。民衆側の基準は「抗日」と「親日」をめぐる記憶であり、解放後、朝鮮半島の全域に表れる左翼主導の革命的状況は、このような記憶の発現であった。

一方、日本という後ろ盾を失った地主層、または植民地「近代化」の申し子であるブルジョア階層は、新たな外来権力である米軍政の協力者となり、ソウルを拠点に反革命の陣地を築いた。解放直後の朝鮮において、地主と農民の対立を軸とする階級関係の上部構造には依然として「抗日」と「親日」の対立が存在していた。

このような緊張関係が米ソ両軍による分割占領のもと、米ソ冷戦の進展と分かち難く結びついていく中、解放後の朝鮮現代史は、分断政府の出現、朝鮮戦争の勃発、停戦体制の成立という経路を辿ることになる。

 朝米対立と「抗日武装闘争」の記憶

分断政府の出現後、北側は「国土完整」を、南側は「失地回復」を主張する相克の関係が南北関係を支配し、ひいては朝鮮戦争を引き起こすことになった。

米軍支援のためにベトナムに向けて韓国兵が派遣され、日本の米軍基地から爆撃機が飛ぶ同じ構図が朝鮮半島の北へも向かうことを警戒し、さらに当時、対中・ソとの関係においても試練を迎え、被包囲意識を増幅させていく中、共和国は60年代後半に軍事優先路線を採択した。当時、経済の犠牲を伴う軍事優先路線をめぐって指導層の内部に若干の路線対立が生じたが、金日成主席は人民の同意を得るために「抗日革命伝統の継承」というスローガンを掲げた。米国の軍事包囲網に抗うために、関東軍と戦った抗日パルチザンの闘争の記憶を動員しながら、共和国に軍事優先の体制が築かれていったのである。

現在の危機と停戦体制・その変革に向けて

停戦協定は、南朝鮮領内への核兵器搬入という米国の違反行為を阻止しえなかった。朝鮮半島に訪れる数々の危機が、再び全面戦争へと拡大するのをせき止めて来たのは、停戦協定の効力ではない。ソ連の崩壊後、モスクワの核の傘を失ってから軍事力量関係の非対称性が圧倒的に増す中、朝鮮側が米「韓」側に軍事オプションを排除させうるほどの抑止力を常時備えていてこそ成立する、瞬時の「戦闘無き状態」の連続こそが60年以上にも及ぶ「停戦」の実体である。米国の軍事的圧力が増すほど、朝鮮側が負うべき負担も増大し、国力が削ぎ落されていくこのような体制が、朝鮮をして核武装へと至らせたのだ。

冷戦は、イデオロギーや体制をめぐる共産主義と資本主義の対立構造であると同時に、両陣営内における覇権確立を、米国とソ連が互いに黙認する黙契の体制でもあった。このような見方に立てば、米国は敵国だけでなく同盟国に対しても封鎖を行ってきたのであり、この二重封鎖の体制は、冷戦期において資本主義体制の安定と米国の覇権を担保する戦略的装置として機能してきた。

朝鮮戦争勃発後、米国は即時に軍事介入したが、同時に日本との単独講和を急ぎ、韓日会談をスタートさせた。停戦成立後、米韓同盟と日米同盟は強固となり、その少し後には韓日条約が締結された。停戦以来、米国は朝鮮に対して軍事と経済、外交などすべての面で強固な封じ込め策を続けているが、同時に軍事境界線より南側の東アジア世界において覇権を維持してきた。

朝鮮半島における停戦体制の成立は、すなわち、軍事境界線の南北両方向に向かう、二重封鎖の体制の確立を意味した。東アジアの地政学的な重要度を踏まえれば、分断された朝鮮半島における停戦体制は、米国の世界覇権と資本主義体制の安定という戦略的利害を反映している。朝鮮戦争の終結と朝鮮半島の統一を求める共和国とは、利害が正面から衝突するが、この切迫した関係こそ現在の危機の本質である。

このような前提に立てば、朝鮮半島の統一は、分断以前の状態への復元でもなく、いまだ未完の国民国家建設という課題のみに還元しうる問題でもない。

人為的に分断された朝鮮半島が、米国にとって世界レベルでの覇権的支配を担保する地域拠点に位置付けられ、平和が留保される中、朝鮮民族は民生よりも軍事が優先される土壌の上で、常に暴力や死と隣り合わせの状況に置かれてきた。朝鮮民族が二重封鎖による負の代償を甘受しなければならない不条理な現実を解体へと向かわしめる、変革の意味を内包した統一構想が求められる。

2000年の6.15共同宣言後の、南北を支配した相克の関係を相生の関係へと転換させる和解のプロセスが稼働していた頃、朝鮮を「悪の枢軸」と名指し先制攻撃と体制転換の対象に据えていたブッシュ政権下においても、05年9.19声明(第4次6者会談共同声明)の発表に漕ぎ着け、朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除が実現した。この経験は、トランプ政権に対しても有効であろう。

朝鮮半島の非核化も、南北和解の推進とそれによる米国の政策変更を実現する長期的展望の中で構想していくべきである。

停戦体制の変革のためには、南北朝鮮の和解プロセスの推進と共に東アジア周辺国の後押しが必要となる。とりわけ現在の危機に対し、周辺諸国の中で唯一反戦の立場を示していない日本の安倍政権は、9.17朝日平壌宣言の線の立ち返るべきであり、朝鮮民族に内包された「抗日」の記憶に応えるべきである。(朝大准教授)

参考文献

  1. O.A.ウェスタッド著、佐々木雄太監訳『グローバル冷戦史―第三世界への介入と現代世界の形成』名古屋大学出版会、2010
  2. ブルース・カミングス著、鄭敬謨・林哲・岡崎由美訳『朝鮮戦争の起源2 1947年―1950年「革命的」内戦とアメリカの覇権(上・下)』明石書店、2012
  3. ジョン・フェッファー著、栗原泉・豊田英子訳『アメリカの対北朝鮮・韓国戦略―脅威をあおる外交政策』明石書店、2004
  4. 高一『北朝鮮外交と東北アジア1970-1973』信山社、2010
  5. 拙稿「冷戦体制下の統一運動の展開―解放後から1990年代初めまで」『朝鮮大学校学報26』2016

(朝鮮新報)

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