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日本語版新聞紹介

米国「ニューヨーク・タイムズ」などは12日(現地時間)、カリフォルニア州魚類野生生物局(CDFW)が、最近サンタクルーズ・ビーチで人間への接近を続けるラッコ1頭を捕獲することに決めたと報じた。

2023-07-14 | 人間以外の動物は温暖化にいきる場所を変えている!
 

ボードを盗んで乗る5歳のラッコ…

「私を逮捕?人間は怖くない!」

登録:2023-07-14 06:24 修正:2023-07-14 07:40

 

[アニマルピープル]「かわくても近づいてはいけない」
 
 
米国カリフォルニアのサンタクルーズ・ビーチでラッコがサーフボードを噛み切ったり横取りする事態が発生し、捕獲の決定が下された=ツイッター@NativeSantaCruz提供//ハンギョレ新聞社

 数週間前から、米国カリフォルニアのサンタクルーズ・ビーチで、サーフボードが破壊される事態が発生している。犯人は、ボードを歯で噛み切るだけでなく、波乗りをするサーファーからボードを横取りしたりもした。ついに管理当局が犯人の「逮捕命令」を下すに至ったが、その正体はなんと5歳のラッコだった。

 米国「ニューヨーク・タイムズ」などは12日(現地時間)、カリフォルニア州魚類野生生物局(CDFW)が、最近サンタクルーズ・ビーチで人間への接近を続けるラッコ1頭を捕獲することに決めたと報じた。

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カリフォルニア・ビーチのラッコ841、幼い時期に水族館で成長

 当局は、ラッコがとりわけ攻撃的な様子を示した先週末以降、声明を通じて「公共の安全に対する危険が増えていることを受け、モントレーベイ水族館のチームとともに救助することにした」と明らかにした。

 外信の報道を総合すると、ラッコは野生生物局が「841」と呼ぶ個体だ。5歳のメスのこのラッコは、当初はサーフボードに乗って見事な「サーフィンの実力」を示し、人々に愛されていたが、今では悩みの種となっている。ラッコがこうした境遇に陥ったのには理由がある。

 
 
米国カリフォルニアのサンタクルーズ・ビーチでラッコがサーフボードを噛み切ったり横取りする事態が発生し、捕獲の決定が下された=ツイッター@NativeSantaCruz提供//ハンギョレ新聞社
 
 
ラッコ841が噛み切ったサーフボード=ツイッター@NativeSantaCruz提供//ハンギョレ新聞社

 841の母親は幼い時に水族館で育った。大きくなって野生に返されたが、人々がイカや餌をあげ続け、母親もサーフボードやカヤックに接近し続ける様子をみせた。野生への適応に失敗した母親は結局、サンタクルーズ海洋動物保護センターに戻されることになったが、その時、841を妊娠した状態だった。

 乳離れした後、841はモントレーベイ水族館に移され、母親のように人間と肯定的な関係を結ばないよう、接触を最小限にした。モントレーベイ水族館は非営利の公共水族館で、ラッコや様々な鳥類、マグロの保全に努めている。

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野生復帰後、人間に対する恐れを失う

 だが、野生に返された後、841はすぐに人間に対する恐れを失った。現地の専門家らも正確な理由は分からないとしている。

 モントレーベイ水族館のラッコプログラム・マネージャーのジェシカ・フジイ氏は「841が野生に返された後、1年間は何の問題もなかった。ところが、次第にラッコがサーフィンやカヤックなどのマリーンスポーツを楽しむ人々に接近しているという報告が入ってきた。841が人間から餌をもらったという証拠はない。だが、この数年間、そうした行動が続いている」とニューヨーク・タイムズに語った。

 
 
米国カリフォルニアのサンタクルーズ・ビーチでラッコがサーフボードを噛み切ったり横取りする事態が発生し、捕獲の決定が下された=ツイッター@NativeSantaCruz提供//ハンギョレ新聞社

 ラッコ841が初めてサーフボードやカヤックに関心を持って乗る姿が観察されたのは、2021年のことだ。はじめは時々観察される程度だったが、その後時間が経つにつれ、ますます大胆になっていった。そして先週末には、サーフボードを横取りする様子が3回も目撃された。

 地元の写真家のマーク・ウッドワード氏はこの数週間、ラッコのそうした様子をSNSを通じて公開してきた。ウッドワード氏が11日に公開した動画をみると、841があるサーフボードに近づいて乗り込み、サーフボードを奪ってしまう様子も撮られている。ウッドワード氏がさらに公開した写真には、ラッコが噛み切って壊したボードもみえる。

 ウッドワード氏は「ラッコの姿はかわいらしく、楽しそうにみえるが、ラッコの接近はますます危険になっている。ラッコは最近、いくつかのボードを噛み切っており、これはサーファーとラッコの両方にとって危険な状況」だと、英国「ガーディアン」に述べた。

 人間との接触は、ラッコに否定的な結果をもたらす可能性が高いという。苦労して野生に返したにもかかわらず、水族館に再捕獲しなければならない状況になるだけでなく、もし人間が噛まれることがあれば、ラッコを安楽死させざるをえないためだ。

 カリフォルニア中部の海岸にだけ棲息する「カリフォルニアラッコ」は絶滅危惧種だ。かつては数十万頭がカリフォルニア沿岸海域に棲息したが、現在は3000頭あまりだけが残っている状態だ。個体数があまりに少ないため、1頭でも命を失うことになれば、種の保全に悪影響を及ぼすことになる。

 
 
 
カリフォルニア州魚類野生生物局(CDFW)はラッコ814の捕獲を決定し、ラッコが現れる地域に案内文を掲示した=ツイッター@NativeSantaCruz提供//ハンギョレ新聞社

 現在当局は、841を捕獲するために努力中だ。捕獲に成功すれば、まずはモントレーベイ水族館に戻された後、別の水族館に移されて余生を過ごすことになる。

 専門家らは、野生でラッコに会っても近づいて接触してないよう求めている。マネージャーのフジイ氏は「ラッコの行動は肯定的な相互作用のようにみえるだろうが、そうした様子を目撃しても、SNSで共有しないことが重要だ。こうした交流が長期的には野生動物にとっては害になりうるためだ」と述べた。

キム・ジスク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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忠清南道泰安郡で行われたセミナー「私たちの海のスナメリ理解」での最初のプログラムとしてスナメリ解剖が行われた。執刀した烏山大学のイ・ヨンラン教授が解剖前のスナメリの状態を説明している

2022-07-18 | 人間以外の動物は温暖化にいきる場所を変えている!

窒息死した小型イルカ「スナメリ」が伝えるメッセージ…

お腹には3センチの胎児(1)

登録:2022-07-16 02:04 修正:2022-07-16 11:28
 
[アニマルピープル]在来イルカ「スナメリ」の解剖現場 
今月初めに統営で座礁した妊娠中の個体…死因は「窒息」 
解剖によってスナメリの生態、海洋汚染などの研究資料に
 
 
       「笑うイルカ」との異名を持つスナメリ=海洋水産部提供//ハンギョレ新聞社

 朝鮮半島の西南海に生息する在来のイルカ「スナメリ」の顔を私たちが詳しく見るようになったのは、せいぜいここ5年ほどのことだ。クジラにしては体格が小さく体長が2メートルしかないうえ、人間を非常に警戒するため、自然界での目撃は容易ではない。2016年に海洋保護生物に指定され、スナメリに対する関心が高まって以降は、特有のかわいらしい外見や出産、授乳の様子などが続々と公開されたが、依然として生きている野生のスナメリに会うのは難しい。

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恥ずかしがり屋のイルカの顔があらわれた

 そんな恥ずかしがり屋のイルカ、スナメリの顔が近くに現れた。「スナメリは口が突き出ておらず、背中に幅の狭い隆起があります。顔はまるで笑っているかのようでかわいらしい」。 放映中の人気ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の台詞のように、スナメリの顔はやはりかわいさがにじみ出ていた。目元に残っているかすかな血痕と整った歯があらわになった口だけが、このイルカの死を告げていた。

 
 
11日、忠清南道泰安郡で行われたセミナー「私たちの海のスナメリ理解」での最初のプログラムとしてスナメリ解剖が行われた。執刀した烏山大学のイ・ヨンラン教授が解剖前のスナメリの状態を説明している//ハンギョレ新聞社
 
 
    解剖が行われたスナメリは、7月5日に慶尚南道統営で座礁していた個体//ハンギョレ新聞社

 今月11日、忠清南道泰安郡(テアングン)にあるアンフン食品の海洋生物解剖研究施設では、今月初めに慶尚南道統営(トンヨン)で座礁したスナメリの解剖が行われた。昨年から海洋水産部が実施中の「スナメリ解剖試験研究」の一環として行われた今回の解剖は、海洋獣医師である烏山大学のイ・ヨンラン教授の主導で忠北大学、仁荷大学、漢陽大学、国立海洋博物館、全谷先史博物館の20人あまりの海洋生物の生態を研究する研究者が参加した。昨年まで泰安郡のスナメリの死骸の処理を委託されていた地元水産物加工業者のアンフン食品が、同社の施設を解剖室として提供した。この日の解剖は7月11日から15日まで行われる行事「私たちの海のスナメリ理解」の最初のプログラムだった。

 午後1時40分、解剖台の上に完全なスナメリの遺体が載せられた。7月5日に慶尚南道統営の海岸に乗り上げ(座礁し)ているところを発見された個体だという。体長1.6メートルのこのスナメリは、イルカよりは小さいが「他のスナメリよりは大きい個体」だった。尾びれや胸びれに所々へこんだ傷があったが、外観上大きな傷は見当たらなかった。「背びれの部分がとてもふっくらしていますね。栄養状態が良かったようです」。イ・ヨンラン教授が、他のクジラの仲間と異なり非常に低いスナメリの背びれを指した。

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肺いっぱいの泡沫が意味するもの

 約20分間の検案と身体測定の後、解剖が始まった。各種のメジャーやメス、道具が登場すると、執刀するイ教授、忠北大学のキム・ソンミン博士の手も忙しくなった。厚い背中の脂肪と筋肉がまず死骸から分離された。記録を担当する研究陣が脂肪の厚さや筋肉の比率などを記録すると、漢陽大、仁荷大の研究陣が脂肪、筋肉などを採集した。研究陣は海洋生物のサンプルを採取し、残留性有機汚染物質やマイクロプラスチックの数値などを検査する予定だ。

 
 
漢陽大と仁荷大の研究陣が現場でスナメリの脂肪、筋肉などを採集した。研究陣は海洋生物のサンプルを採取して残留性有機汚染物質、マイクロプラスチックの数値などを検査する予定だ//ハンギョレ新聞社

 「スナメリは食物連鎖において人間と同じ段階にあります。クジラの仲間から汚染物質が発見され、病気になりはじめると、その危険は人間にも発生しうるということです。海の健康を知ることのできる指標になるんです。だから米国ではクジラのことを『海の歩哨兵(Marine Sentinel)』と言うんです」

 解剖が進むほど「死の匂い」も濃くなった。解剖が始まって1時間あまりが経つと、主な臓器が姿を現した。この日の解剖のハイライトである死因や妊娠の有無などの解明を行う。解剖前にイ教授は、この個体は妊娠している可能性があると耳打ちした。案の定、スナメリの乳頭を押すと、薄い茶色の乳が流れ出た。

 スナメリの子宮からは指の第二関節ほどの長さの胎児が発見された。体長3センチ、重さは370グラムと非常に小さかったが、すでに肋骨が形成されていた。スナメリの子宮を調べた研究陣は、この個体は過去に3回妊娠しており、今回が4度目だろうと推定した。個体の年齢も自然に計算できた。スナメリの性成熟期は4~5歳なので、妊娠可能な時期になって毎年妊娠したと仮定すると、最低でも9歳になる。

 
 
3つの胃を持つスナメリの第1の胃からは、まだ消化されていないエビ、イカ、魚などの生物が発見された//ハンギョレ新聞社

 続いてすぐさま肺の解剖が行われた。「肺の中は泡沫がいっぱいですね。窒息死です」。イ・ヨンラン教授が学生たちと取材陣に泡でいっぱいになった肺を広げて見せた。混獲の被害が予想される解剖結果が出たのだ。混獲とは、漁業中に狙ったものと一緒に狙っていない海洋生物が漁の網にかかることをいう。

(2に続く)

泰安/キム・ジスク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
 

窒息死した小型イルカ「スナメリ」が伝えるメッセージ…お腹には3センチの胎児(2)

登録:2022-07-16 02:01 修正:2022-07-16 11:28
 
[アニマルピープル]在来イルカ「スナメリ」の解剖現場 
 

「笑うイルカ」との異名を持つスナメリ=海洋水産部提供//ハンギョレ新聞社

(1の続き)

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「漁師との共生が切実に求められている」

 これまで政府、環境団体、イ・ヨンラン教授は、世界的な絶滅危惧種であるスナメリの保護の重要性を訴えてきた。海洋水産部は2016年にスナメリを海洋保護生物に指定し、2019年にはスナメリが生息する慶尚南道固城(コソン)の周辺海域を海洋生物保護区域に指定している。イ教授が海洋保全チーム長として在職していた世界自然保護基金(WWF)は、混獲被害を減らせる脱出網を漁師と一般市民に知ってもらうキャンペーンを展開してきた。しかし、依然としてスナメリ研究のインフラや大衆の認識などは期待にはるかに満たない。

 イ・ヨンラン教授は「国内でクジラの解剖や研究ができる公的機関はクジラ研究センターだけ。斃死(へいし)するスナメリは1年で1100頭あまりに達するが、クジラ研究センターはこのすべての個体を解剖・研究する予算や人材が不足しており、だからほとんどのスナメリはなぜ死んだのかも分からないまま廃棄される」と述べた。

 国立水産科学院の調査によると、朝鮮半島近海に生息するスナメリの数は2005年時点で3万6000頭あまりだった。しかし沿岸の開発、環境汚染、混獲などの被害によって個体数は急激に減り、2016年には1万7000頭に。斃死するスナメリの数は年間で1000頭あまりと推定されているが、漁業者の推定はその数を何倍も上回る。

 アンフン食品のチョ・ハンオ代表は「届け出があるのは1000頭だが、漁業者の推定では5000~7000頭にはなると思う。2017年から鯨肉の流通が禁止されているため、漁師は混獲を届け出ずに海に捨ててくる。政府の集計は正確ではない」と説明した。

 
 
昨年2月に済州道旧左邑で死んでいるのが発見されたスナメリ=済州海洋警察署提供//ハンギョレ新聞社

 研究者たちが正確なデータや生態研究、クジラ保護のために漁業者との共生を強調する理由もここにある。イ教授は「政府が混獲を低減する道具を普及させるとしても、漁師にそれを強制することはできない。韓国の漁師は比較的混獲を積極的に届け出ているが、届け出の手続きが難しく、複雑なのも問題」だと語った。このため、今回の解剖は学術だけが目的ではなく、住民懇談会の開催などのネットワーキングも強調された。

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スナメリの死が発する警告

 スナメリの死を惜しむのは研究者や一般市民ばかりではない。意図せずクジラやイルカを捕ってしまった漁師たちも同じだ。水産加工業を営んできたチョ・ハンオ代表は、スナメリの解剖は何度も見たが、この日はいっそう気持ちが重いと語った。「この世に生まれてくることもできず、母親の腹の中で赤ちゃんが死んでいたのが不憫」。同氏は解剖の間中、依然として多くの人は知らないと述べつつ、スナメリがどれほどかわいいか、どれほど神秘的な動物なのかを説明した。

 なぜ私たちはスナメリを守り、研究しなければならないのか。イ・ヨンラン教授は、スナメリだけのためではないと語った。「私たちの周辺の生物が一つ、また一つといなくなるということは、生態系のバランスが崩れているということです。スナメリに危険が迫っている、それは私たちに発せられる警告である可能性が高いのです。私はスナメリを愛していますが、結局のところ私が守りたいのは海であり、自然なんです」(了)

泰安/キム・ジスク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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シロナガスクジラを50頭のシャチが襲撃し、複数頭からなる多くの群れが追撃したり、噛みちぎったり、水面下に引き込んで溺れさせたりなどを交代で行うという戦略を展開したと明らかにした。

2022-02-02 | 人間以外の動物は温暖化にいきる場所を変えている!

追撃し、嚙みちぎり、溺れさせ…

シャチのシロナガスクジラ狩りを初確認

登録:2022-01-28 02:30 修正:2022-02-02 06:44
 
[アニマルピープル] 
オーストラリア南西で50頭の群れが体長20メートルの健康な成体を捕食
 
 
地球史上最大の動物であるシロナガスクジラをシャチの群れが追いかけている=ジョン・トッターデル他(2022)、「海洋哺乳類科学」提供//ハンギョレ新聞社

 世界全域に分布するシャチはイルカの中で最大の捕食者で、オオカミのように協同で狩りをする。シャチが自分の倍以上の大きさの、ヒゲクジラ亜目のうち最大のシロナガスクジラを狩ることが初めて確認された。

 西オーストラリア・クジラ研究センターのジョン・トッターデル研究員らは、科学ジャーナル「海洋哺乳類科学」最新号に掲載された論文で、シャチがシロナガスクジラを捕食した3件の事例を報告した。捕食の様子は、豪州西南部のブレマー湾沿岸で2019年3月と4月、2021年3月に目撃された。

 
 
シャチのシロナガスクジラ狩りの目撃地点。丸い点はシャチ、三角はシロナガスクジラ、星はシャチのシロナガスクジラ捕食の目撃地点=ジョン・トッターデル他(2022)、「海洋哺乳類科学」提供//ハンギョレ新聞社

 特に3番目の事例は、前の2つの事例が若いクジラと子クジラが標的だったのに対し、健康な成体のシロナガスクジラを捕食したという点で目を引く。比較的小さい西オーストラリアの亜種だが、体長は18~21メートルに達し、最大でも9メートルのシャチの2倍以上の大きさだった。

 研究者たちは「これまでも体の大きなヒゲクジラの子どもをシャチが捕食することは知られていたが、成体も獲物になるのかをめぐっては学界でも議論が繰り広げられてきた」と論文に記している。

 研究者たちは、移動中だったこのシロナガスクジラを50頭のシャチが襲撃し、複数頭からなる多くの群れが追撃したり、噛みちぎったり、水面下に引き込んで溺れさせたりなどを交代で行うという戦略を展開したと明らかにした。責任著者で米オレゴン州立大学の海洋生態学者のロバート・ピットマンさんは「最も大きな最上位の捕食者が最大の獲物を殺す地球最大の捕食現場だった」と「ナショナルジオグラフィック」とのインタビューで述べた。

 
 
シャチの群れのシロナガスクジラ狩りの様子=ジョン・トッターデル他(2022)、「海洋哺乳類科学」提供//ハンギョレ新聞社

 シャチは寿命が長く社会性を持つ動物で、長年の経験と知恵を兼ね備えた年長のメスを中心とする母系社会を形成する。オオカミのように群れを成して音でコミュニケーションを取りながら狩りの戦略を展開するが、サケからホホジロザメやマッコウクジラに至るまで、大洋のほぼすべての大型動物を餌にする。

 
 
スリランカ海域での2013年のシャチのマッコウクジラ狩り。シャチ突進(A)。身を寄せ合うクジラ(B)。水中から。2頭のシャチと身を寄せ合うクジラ(C)。クジラを攻撃するシャチ(D)=ジョージナ・ゲンメル他(2015)、Aquatic Mammals提供//ハンギョレ新聞社

 シャチは、クジラの中でも特にコククジラの子をよく狙うが、母親がそばにいる時に狩りをすることもある。マッコウクジラなどの大型クジラの回遊経路や生活史にシャチの捕食が影響を及ぼすという主張もある。

 研究者は、シャチのシロナガスクジラ狩りが絶滅の危機からの回復を妨げることはないとの見通しを示している。捕鯨以前のシロナガスクジラが多かった時代の狩りの習性が蘇った可能性があるというのだ。

 地球に存在した動物の中で最も大きいシロナガスクジラは、1900年代から乱獲で絶滅の危機に瀕していたが、1960年代以降は少しずつ個体数が回復し、2018年に国際自然保護連合(IUCN)が世界に5000~1万5000頭が生息すると推計するとともに、絶滅危機種と評価している。

引用論文: Marine Mammal Science、DOI: 10.1111/mms.12906

チョ・ホンソプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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ジョナサン・ベルメーカー教授は「地中海はもともと暑い所で、すでに多くの生物種が限界に達したことを認識しなければならない」と述べた。

2021-11-16 | 人間以外の動物は温暖化にいきる場所を変えている!

気候変動に対応できない人間…

動物たちはすでに生き方を変えつつある

登録:2021-11-15 06:30 修正:2021-11-15 07:44
 
地中海の海洋生物、深い海に移動 
アマゾンの鳥類、胴体は縮小し、翼は拡大
 
 
       地中海に生息する生物種=イスラエルのテルアビブ大学提供//ハンギョレ新聞社

 石炭発電の閉鎖など気候変動に対する人間の対応が遅々として進まない中、動物の素早い地球温暖化への適応現象が相次いで観察されている。

 イスラエルのテルアビブ大学の研究チームは14日、「魚や甲殻類、イカのような軟体動物など236種の海洋生物の生息地を分析した結果、地中海一帯の生物が平均55メートルの水深の深い場所に移動した」と発表した。研究チームの論文は学術誌「地球生態学と生物地理学」12日付に掲載された。(DOI : 10.1111/geb.13414)

 
 
地中海の温暖化が加速化するにつれ、海洋生物の生息地がより深い場所に移動している=テルアビブ大学提供//ハンギョレ新聞社

温暖化避けて冷たい海の中に生息地を移す

 地球の平均気温は産業革命以前に比べて1.09度上昇したが、地中海の温暖化は特に激しく、30年ごとに1度上昇している。研究チームは様々な研究で、1990年以後、トロール漁業(海底に沿って網を引いて多様な樹種を捕獲する方式)を通じて収集した236の生物種に対する捕獲水深資料と水温観測資料を相互比較し分析した。研究チームは、深い場所に移動する傾向がすべての海洋生物に同じく現れているわけではないと明らかにした。冷水種(冷たい水においてのみ現れる種)は、温水種に比べてより深い場所に移動したことが分かった。また、狭く浅い場所に住む種よりも広く深い場所に住む生物種の方が深い場所に移動した。同様に、狭い温度帯だけで住む種よりも広い温度帯で活動する生物種の方が深い場所に移動した。

 論文の共同著者であるジョナサン・ベルメーカー教授は「地中海はもともと暑い所で、すでに多くの生物種が限界に達したことを認識しなければならない」と述べた。ベルメーカー教授の下で博士研究員(ポストドクター)として働いている同論文第1著者、シャハル・チェイキン博士は「政策立案者たちは生物種が深い海に移動していることに注目しなければならない。例えば、未来の海洋生態系保護区は、より深い場所に移動した生物種に避難所を提供できるように再定義されなければならない。また、将来の漁業はより深い場所で魚類を捕獲する事業になり、これはより遠い場所に移動してより多くの燃料を消費しなければならないことを意味する」と述べた。

 ベルメーカー教授は「生物種が温かい水を避けて深い場所に移動し、素早く適応をしているが、海底という限界がある。すでにタラのような深海魚はこれ以上下がるところがなく、個体数が減少している」と話した。

 
 
アマゾン熱帯雨林に生息するゴシキドリ。アマゾンの鳥類の体が地球温暖化のために小さくなっているという研究結果が出た=ビテック・ジリネック撮影、「サイエンス・アドバンシス」提供//ハンギョレ新聞社

赤道に近づくほど小さくなるというベルクマンの法則が作動

 また、他の研究チームは地球温暖化のためアマゾンの鳥の体が小さくなり、翼は長くなっているという論文を「サイエンス・アドバンシス」12日付に掲載した。(DOI : 10.1126/sciadv.abk1743)

 以前の研究の中で、鳥の体がますます小さくなっているという報告があったが、ほとんどが渡り鳥を対象にした研究であるうえ、原因として狩猟や殺虫剤、生息地の破壊などが挙げられてきた。しかし、今回の研究は、原始のままであるアマゾン熱帯雨林に生息する定住性の鳥に関するものであり、研究チームは温暖化する気候を唯一の変数とみている。

 研究は1970年代以来、森林伐木や開発が生態系に及ぼす影響について研究してきたブラジルのアマゾン生物多様性センターで行われた。同センターでは研究の一環として鳥を網で捕まえて大きさを計り、翼幅を測定した。研究員たちは40年かけて、約1万5千羽の鳥の翼幅と体重の割合を集計した。その結果、研究対象鳥類77種すべてで平均体重減少が現れ、36種は1980年以降10年ごとに体重の2%が減少した。また、同期間、翼幅が平均的に増加した種は61種にのぼった。

 研究チームは、このような形態学的変化の背景に地球温暖化があるとみている。1970年代以降、同地域は乾季は1.65度、雨季は1.0度気温が高くなった。雨季はより湿気が多くなり、乾季はより乾燥するようになった.

 論文の第1著者である米国カリフォルニア統合生態研究所のビテック・ジリネック研究員は「気温と湿度の変動がこうした変化の原因に違いない」と述べた。研究チームは論文で、同種や近い種を比較した場合、寒い場所ほど体が大きくなり、赤道に近づくほど体が小さくなるという「ベルクマンの法則」に言及した。ベルクマンの法則は、19世紀ドイツの動物学者クリスティアン・ベルクマンが立てた仮説で、寒い地方で暮らすためには熱が発散する量を減らさなければならないが、体が大きければ外に露出する体表面積の割合が減るためだという理論だ。

 しかし、翼幅が長くなった原因は疑問として残っている。研究チームは遠くへ飛ぶ必要があって翼幅が伸びたと推定したが、このような変化が進化的圧力のためか、鳥が変化した環境に適応するために成長と共に翼幅が長くなったのかについて結論を下すことができなかった。

イ・グニョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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