大橋みつるの平和ト-ク・・世直しご一緒に!

世界の変化を見ながら世直し提言
朝鮮・韓国・中国・ロシアとの友好促進
日本語版新聞紹介

国連の国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルに対し、パレスチナのガザ地区住民に対する集団虐殺(ジェノサイド)を防ぐすべての措置を講じるよう命じた暫定措置決定が波紋を広げている。

2024-01-29 | ウクライナ情勢
 

国際司法裁判所の

「イスラエルへのジェノサイド防止命令」、安保理で論議へ

登録:2024-01-29 10:28 修正:2024-01-29 10:35
 
 
国際司法裁判所(ICJ)のジョアン・ドノヒュー裁判長が26日、オランダのハーグにあるICJで、イスラエルのガザにおける戦争犯罪に関する暫定措置を発表している/UPI・聯合ニュース

 国連の国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルに対し、パレスチナのガザ地区住民に対する集団虐殺(ジェノサイド)を防ぐすべての措置を講じるよう命じた暫定措置決定が波紋を広げている。

 国連安全保障理事会は31日、ICJのこの暫定措置命令について議論する予定だと、ロイター通信などが27日付で報じた。今回の会議は、アルジェリアがICJの命令を安保理決議案を通じて執行するよう要求したことで開かれる。ICJは国連機関ではあるが執行能力がないため、アルジェリアが強制力のある国連安保理決議案を採択しようと主張したもの。

 ICJは、イスラエルがガザ地区で「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約(ジェノサイド条約)」を違反しているとして南アフリカ共和国が先月29日に提訴した件について、イスラエルは自国兵士の集団虐殺行為を防ぐすべての措置を取るよう、6項目に対する暫定措置を命令した。

 ICJは特に、パレスチナ住民を殺害したり、肉体的・精神的に深刻な危害を加えたり、部分的あるいは全体的に物理的破壊を引き起こすために「生活の条件」を故意に破壊するなど、「集団としてパレスチナ住民を破壊しようとする意図を持った行動を取ってはならない」と命じた。ICJは、イスラエルが「ジェノサイドを犯しうる直接的で公開的な扇動」も防いで処罰し、ガザ地区に必要な援助をより緊急に支援しなければならないと命じた。ICJの暫定措置は、最終判決が出るまでさらなる被害を防ぐための一種の仮処分命令だ。ジェノサイドの疑いそのものに対する本案判決の結果が出るまでには、今後数年かかる可能性もある。

 ただし、南アフリカは提訴当時、イスラエルの「ガザ地区への軍事作戦の即時停止」も要求したが、ICJはこれに対しては踏み込まなかった。

 国連安保理決議は、常任理事国である米国が拒否権を持っているため、採択されるかどうかは不明だ。しかし、米国が拒否権を行使すればダブルスタンダードを適用しているという批判も避けられない。ロシアはウクライナ侵攻初期の2022年3月、「ウクライナ領土で始めた軍事作戦を直ちに停止せよ」というICJの暫定措置決定を無視しているが、これを米国は批判してきた。

 イスラエルは反発した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はICJの暫定措置命令後、「イスラエルがパレスチナでジェノサイドを行なっていることを議論するというICJの意志は、恥として残るだろう」と主張した。ただし、ICJが軍事作戦停止を暫定措置命令に含めなかった点は、イスラエルの自衛権を認めるものと解釈し安堵をみせた。

 米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は同日、「我々はその主張(ジェノサイド)には根拠がないと主張してきており、ICJもジェノサイドに対してイスラエルが有罪だと明らかにしなかった」と評した。

 ICJの今回の命令が実際に執行されるのは容易ではないが、記念碑的命令だという評価が出ている。ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)のような悲劇を繰り返さないために作られたジェノサイド防止条約の違反者としてイスラエルが裁判を受けるという歴史的なアイロニーを指摘する声も少なくない。

 イスラエルも、今回の事案の外交的影響を意識している。米メディアのアクシオスが12月に公開したイスラエルの秘密外交公電によると、今回の裁判について「法的な側面だけでなく、実質的な二国間、多国間、経済、安全保障で波紋を起こす恐れがある」と記されている。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「毎日、我が軍の戦士たちに変わらぬ感謝の意を伝える。国を守るために戦っている人々に、訓練をしている人々に、命を救って治療している人々に、必要な武器を製造している人々に

2023-12-23 | ウクライナ情勢
 

窮地に立たされたゼレンスキー大統領、

「軍が50万人を追加要請…資金調達はいかに」

登録:2023-12-22 06:42 修正:2023-12-22 08:10
 
米・EUの支援が行き詰まり、国際社会の関心も薄れる
 
 
ウクライナ軍が20日、ドネツク地域で独自に作ったロケット砲を発射している/EPA・聯合ニュース

 「毎日、我が軍の戦士たちに変わらぬ感謝の意を伝える。国を守るために戦っている人々に、訓練をしている人々に、命を救って治療している人々に、必要な武器を製造している人々に…。我々は必ず国と主権を守る」

 来年には勃発から3年目を迎えるロシアとの戦争で、窮地に追い込まれているウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が20日、再び勝利への決意を固める国民向け演説を行った。昨年2月末に始まった戦争の長期化に伴い、国際社会の関心と支援が薄れ、国民の負担は大きくなる状況を突破しようとする意志を示したのだ。ウクライナは6月初め、ロシアの南東部占領地を2つに分割するため、大々的な反転攻勢を始めたが、目立った成果を上げられていない。さらに10月初めにガザ戦争が始まり、国際社会の関心は全て中東に注がれている。

 ウクライナを最も当惑させる変化は、国際社会の支援熱気が冷めたことだ。米上院のチャック・シューマー民主党院内総務とミッチ・マコネル共和党院内総務は19日、ウクライナへの追加支援が含まれた予算案について「上院の来年の早い行動を希望する」という内容の共同声明を発表した。ジョー・バイデン大統領が10月20日に議会に提出したウクライナ支援予算614億ドル(約8兆7400万円)を含む計1059億ドル(約15兆円)規模の緊急支援予算の今年中の処理を諦めるという宣言だった。

 欧州連合(EU)がウクライナに支援するため策定した500億ユーロ(約7兆8300万円)規模の支援予算も、14日にハンガリーの反対で阻まれた。欧州連合の予算案の決定には加盟国の満場一致の賛成が必要だ。ドイツのキール世界経済研究所の集計によると、今年8~10月の間にウクライナに対する世界各国の新規支援は戦争が勃発して以来最低水準に落ちた。反転攻勢を率いるウクライナ軍のオレクサンドル・タルナウスキー准将は18日、ロイター通信とのインタビューで「すべての戦線」で砲弾が不足しているとし、「一部の地域では我々は防衛に転じている」と語った。

 これに比べ、ロシアは戦時経済への移行に拍車をかけている。英国のBBCは西側当局者の話として、来年ロシアの予算の40%ほどが国防・安保分野に配分される見通しだと報じた。ロシアは昨年末、1カ月に長距離ミサイル約40発を生産できたが、今は西側の経済制裁にもかかわらず、1カ月で100発余りを生産できるほど生産能力を拡大したものと推定される。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は19日に開かれた国防総省会議で、ウクライナとの戦争と関連して、ロシア軍が「主導権を握っている」とし、「特別軍事作戦(ウクライナ侵攻)の目標を放棄する考えはない」と述べた。

 これに対抗し、ゼレンスキー大統領は19日、場所と時間は非公開で行った国内外メディアとの記者会見で、兵力50万人を追加動員する可能性を示唆した。ゼレンスキー大統領は「彼ら(軍首脳部)が45万~50万人の追加動員を提案した。私はもっと多くの討論が必要だと答えた」と語った。ウクライナ軍兵力は現在100万人程度だが、半分近く増員するという話だ。ゼレンスキー大統領は、追加動員にかかる費用も5000億フリブナ(約1兆9千億円)に及ぶとし、「どこからその金をねん出するのか、首相と財務長官に答えを聞きたい」と述べた。

チョ・ギウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界の流れはどこにあるのか、自分の国の政府がこの集団殺害や戦争についてどんな態度をとっているか。そこに目を向けて行動することも私たちの国際協力です。

2023-11-14 | ウクライナ情勢

しんぶん赤旗きょうの潮流

 「だれにでもできる国際協力」には三つのステップがあるといいます。まずは、相手の心を感じること。次は相手の状況を知って、それについて考えること。そして、その道をひろげること

▼国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田(せいた)明宏・保健局長が著者『天井のない監獄 ガザの声を聴け!』で強調しています。国際協力の世界には問題が山積し、いつも答えがあるわけではない。しかしすべては他国の人々への共感から始まると

▼イスラエル建国の翌年に国連総会で決まったUNRWAの創設。当初の活動期間は3年とされましたが、延長に次ぐ延長。いまや支援は4世代にもわたります。医療や保健、教育や福祉と生活全般に及ぶ援助はパレスチナの人たちの命綱に

▼いまガザでは100人をこえる国連職員が命を落としています。UNRWAは「亡くなった同僚は教師や医療関係者、技術者などであり、母や父、息子や娘、夫や妻でもあった」。13日には各地の国連職員が黙とう、半旗を掲げました

▼病院や学校、難民キャンプと国際法上も許されないイスラエルの攻撃。その現実のなかで、支援を続け、彼らのそばに立っていくことが、いま一番大事だと清田さんはいいます

▼戦争はなくならないと悲観する向きもある一方で何ができるかと自問自答する日々。世界の流れはどこにあるのか、自分の国の政府がこの集団殺害や戦争についてどんな態度をとっているか。そこに目を向けて行動することも私たちの国際協力です。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米下院は2日、イスラム武装組織ハマスの攻撃を受けて大々的な反撃に出たイスラエルに対する143億ドル規模の支援予算案を、賛成226票対反対196票で可決した。

2023-11-04 | ウクライナ情勢
 

米下院、「イスラエルだけ支援」法案可決…

ウクライナ戦争は予断許さない状況に

登録:2023-11-04 08:57 修正:2023-11-04 09:24
 
 
      2日、記者会見を行っているマイク・ジョンソン米下院議長=ワシントン/EPA・聯合ニュース

 共和党が主導する米下院が、イスラエルとウクライナへの支援予算を一度に配分してほしいというジョー・バイデン大統領の要求を拒否し、イスラエル支援法案だけを可決した。バイデン大統領は拒否権行使を示唆しており、ホワイトハウスおよび民主党と共和党の対立によって「二つの戦争」に対する米国の支援に支障が出ることが予想される。

 米下院は2日、イスラム武装組織ハマスの攻撃を受けて大々的な反撃に出たイスラエルに対する143億ドル規模の支援予算案を、賛成226票対反対196票で可決した。米国議会でイスラエル支援法案は圧倒的な支持を得ているが、民主党議員の大半は反対票を投じた。

 民主党がこのような態度を示したのは、バイデン大統領が先月20日、ウクライナ610億ドル、イスラエル143億ドルの支援を含む安保予算1050億ドルをパッケージで処理してほしいと要請したにもかかわらず、新任のマイク・ジョンソン下院議長(共和党)がイスラエル支援予算だけを先に処理しようとしたからだ。ジョンソン議長はウクライナ支援法案に何度も反対票を投じた人物。

 イスラエル支援法案はこの日、下院を通過したが、最終確定する可能性は極めて低い。民主党が多数を占める上院では否決の可能性が高く、バイデン大統領も拒否権行使を示唆したためだ。ミッチ・マコーネル上院院内総務ら共和党の上院議員も、イスラエルだけでなくウクライナ支援予算も急がれるという意見を示している。民主党のチャック・シューマー上院院内総務は同日、イスラエルとウクライナを支援し、ガザ地区にも人道支援を提供する法案を共和党上院議員らとともに推進すると明らかにした。

 民主党がジョンソン議長に大きく反発するもう一つの理由は、共和党の法案が、バイデン政権の代表的な成果として数えられる「インフレ抑制法」に含まれている国税庁の脱税調査強化予算を削ってイスラエルを支援するという策略を使っているためだ。ジョンソン議長はこれに対して「政治的目的ではなく、財政責任の原則を回復するためのもの」と主張した。

 ユダヤ人の票や資金力などに気を使う両党は、同法案に対する態度をめぐり「どちらが反イスラエル的か」を争う攻防も繰り広げている。共和党は民主党が大挙して反対票を投じてイスラエルに背を向けたと攻撃しているが、民主党は共和党が国税庁強化予算削減のためにイスラエルを利用するという不純な態度をみせていると非難している。

 このような中、ウクライナ支援に対する共和党の否定的な態度が明確になり、今後の戦争の見通しは予断を許さない状況となった。AP通信は、バイデン大統領が従来の配分予算および大統領在庫引き出し権限(緊急時に議会の承認なしに物資を提供できる権限)を利用して、ウクライナに4億2500万ドル分の軍事援助を追加で提供する予定だと報じた。しかし、このような応急策を取る手段を使い切り、大規模な支援予算案が議会で足止めされることになれば、ロシアを相手に厳しい戦いを繰り広げているウクライナは大きな困難に陥ることになる。

ワシントン/イ・ボニョン特派員

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の代表であるエフゲニー・プリゴジン氏の名前が搭乗者名簿に載っていた航空機がロシア上空で墜落し、搭乗者全員が死亡した。

2023-08-25 | ウクライナ情勢
 

プリゴジン氏が搭乗したと思われる

ジェット機墜落…全員死亡

登録:2023-08-24 07:22 修正:2023-08-24 07:43
武装反乱から2カ月
 
 
ロシアの非常事態省は23日(現地時間)、モスクワからサンクトペテルブルクに向かっていたジェット機がトベリ州のクジェンキノ周辺に墜落したと発表した。同事故で搭乗者10人全員が死亡し、搭乗者名簿にはエフゲニー・プリゴジン氏の名前も載っている/AFP・聯合ニュース

 ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の代表であるエフゲニー・プリゴジン氏の名前が搭乗者名簿に載っていた航空機がロシア上空で墜落し、搭乗者全員が死亡した。

 ロシア国営の「タス通信」は23日(現地時間)、ロシア当局の発表を引用し、モスクワからサンクトペテルブルクに向かっていたジェット機「エンブラエル・レガシー」が同日夕方、トベリ地域に墜落し、乗員3人と乗客7人など搭乗者10人が全員死亡したと報じた。

 ロシアの航空航空運輸局は同日、直ちに墜落事故に対する調査を始めた。また、搭乗者の中にワグネルの首長「エフゲニー・プリゴジン」という名前の人が含まれていると明らかにした。

 23日午後9時20分(現地時間)現在の「タス通信」の報道によると、現場に出動した救助隊が墜落事故で死亡した7人の遺体を見つけたという。同日墜落した航空機の搭乗者名簿に載っている人物が実際にプリゴジン氏本人かどうかはまだ確認されていない。

 プリゴジン氏は昨年2月末、ロシアがウクライナを全面侵攻した後、東部のバフムトなど最前線の戦闘に投入されたワグネルを率いた人物。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との親交が厚く、一時「プーチンの料理人」とも呼ばれた。だが、ロシア軍部がウクライナ戦争でワグネルをまともに支援していないとして何度も不満をあらわにし、6月にはついに「武装反乱」を起こした。ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の仲裁で反乱は一日で終わったが、プーチン大統領のリーダーシップに大きな打撃を与えた。

ベルリン/ノ・ジウォン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロシア指導部の分裂を狙った西側情報機関の「情報工作」である可能性も排除できない。ニューヨーク・タイムズは「米国の官僚たちは、他の指揮官よりも有能で無慈悲なスロビキン氏の地位を脅かす情報・・

2023-07-02 | ウクライナ情勢
 

ロシア軍内の反乱同調・粛清説…事実か西側の工作か

登録:2023-06-30 06:20 修正:2023-06-30 07:30
 
姿を消したスロビキン氏の粛清説 
ロシア大統領府「憶測とうわさ」と一蹴 
ロシア指導部の分裂を狙う西側の工作説も
 
 
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とセルゲイ・スロビキン航空宇宙軍司令官の2017年の姿。西側で提起されている、エフゲニー・プリゴジン氏による反乱へのロシアの一部の将軍の同調および粛清説の中心人物として、スロビキン氏の名前が挙がっている/ロイター・聯合ニュース

 ロシア軍内の中心的な将軍がワグネルの起こした武装反乱に「同調」し、それにより「粛清」されたとする報道を、西側の主要メディアが流している。ロシア大統領府は関連報道を一蹴したが、一部のロシアメディアはこれを裏付ける報道を行った。

 米国「ニューヨーク・タイムズ」は27日、1月までウクライナ駐留ロシア軍の総司令官を務めていたセルゲイ・スロビキン航空宇宙軍司令官らは今回の反乱計画を事前に知っていたと米国の情報当局が判断していると報じた。同紙は、スロビキン氏の関与の事実が判明したとすれば、ロシア軍の内紛がきわめて深刻であることを示す事例になるとした。その後、CNNや英国「フィナンシャル・タイムズ」なども粛清説の報道を裏付ける後続報道を行った。

 シリア内戦などで果敢かつ残酷な作戦を遂行し、「アルマゲドン将軍」と呼ばれるスロビキン氏は、昨年下半期には強硬かつ効率的にウクライナ戦争を指揮するなど、ロシア軍内では信望と影響力が強い。スロビキン氏は、ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏が反乱を宣言すると、すぐにテレグラムに投稿した動画を通じて「敵は私たち内部の政治状況が悪化することを望んでいる」とし、「(反乱を)止めるよう要求する」とする立場を明らかにしている。

 プリゴジン氏は、シリア内戦でともに戦ったスロビキン氏を高く評価していた。先月初めには、スロビキン氏がワグネルとロシア軍首脳部との間の摩擦を仲裁する役割を果たしているとして、「彼はロシア軍で戦う能力を備えた唯一の将軍」と述べた。

 スロビキン氏は昨年9月、ウクライナ駐留ロシア軍の総司令官に任命されたが、今年1月に副司令官の地位に降格した。スロビキン氏の同調・粛清説について、ロシアでは相反する反応が出ている。ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は28日、ニューヨーク・タイムズの前日の報道は事実ではないと断言した。ペスコフ報道官は、その報道に対する質問に「こうした事件をめぐり、多くの憶測やうわさがある」としたうえで、「これもそういった事例の一つだと信じる」と述べた。

 翌日29日、ロシアで発行されている英字新聞「モスクワ・タイムズ」は、ロシア国防省関連の消息筋の話を引用し、スロビキン氏が逮捕されたと報じた。同紙は、スロビキン氏がワグネルの反乱について尋問を受けていると報じた。ある消息筋は「スロビキンは明らかにプリゴジン側だった」と述べた。

 これに先立ち、CNNは28日、あるロシアの軍事ブロガーの話を引用し、軍粛清説を報じたことがある。「リバル」という人気の高いブロガーは、粛清はすでに進められており、民間人の被害を懸念してワグネルを射撃することを拒否した中間級の司令官に影響を及ぼしていると明らかにした。さらに、「ロシア連邦警護庁(FSO)の捜査官が、数日にわたり軍指揮部と各部隊の司令官を対象に調査を進行中」であり、ワレリー・ゲラシモフ参謀総長がウクライナ戦争について形式的に責任を持ち、ミハイル・テプリンスキー空輸部隊司令官(中将)が実質的な指揮を担当していると述べた。また、別の有名軍事ブロガーであるボリス・ロジン氏も、今回の反乱の「肯定的な側面は不十分な者と不安分子の粛清」だと述べた。

 西側の報道機関が流す同調・粛清説は、反乱時にプリゴジン氏のワグネル部隊が留まったロストフナドヌーの軍事基地などで、一部の部隊と指揮官が消極的な態度を取ったり、スロビキン氏がプリゴジン氏と良好な関係を維持していたという点などに基づいている。だが、ロシア指導部の分裂を狙った西側情報機関の「情報工作」である可能性も排除できない。ニューヨーク・タイムズは「米国の官僚たちは、他の指揮官よりも有能で無慈悲なスロビキン氏の地位を脅かす情報を出すことに関心がある」とし、「彼が除去されるとすれば、疑いの余地なく、ウクライナの役に立つだろう」と指摘した。

チョン・ウィギル先任記者、ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロシアの民間軍事会社「ワグネル」を率いるエフゲニー・プリゴジン氏の24日の反乱によって、ウラジーミル・プーチン大統領の指導力が大きく損なわれ、ウクライナ戦争の状況にも変化が予想される。

2023-06-28 | ウクライナ情勢

ウクライナ住民、1700万人が「限界状況」…

国連機関の報告書、凄惨な現状明かす

登録:2023-06-28 06:22 修正:2023-06-28 15:43

 

ロシアによる「ウクライナ侵攻」1年4カ月、生活を妨げる砲煙 
人道支援が必要な人口、1700万人に急増 
児童の割合10%→23%…避難民は540万人
 
 
ウクライナ東部の都市リシチャンシクで定住する場所のない避難の道に出た母親と2人の子ども=リシチャンシク/AP・聯合ニュース

 ロシアの民間軍事会社「ワグネル」を率いるエフゲニー・プリゴジン氏の24日の反乱によって、ウラジーミル・プーチン大統領の指導力が大きく損なわれ、ウクライナ戦争の状況にも変化が予想される。

 ロシア内部の混乱を機会を利用し、ウクライナが強力な反撃の機会を得ることもありうるが、プーチン大統領が政治生命をかけてさらに好戦的になるかもしれない。戦争がよりいっそう激しい対決局面に陥り、ウクライナ国民の生活は、ふたたび大きな危機に直面することになった。

 国連が把握しているウクライナ国民の状況は凄惨だ。現在受けている苦痛と同じくらい未来も暗い。国連開発計画(UNDP)、ユニセフ、国際移住機関(IOM)など12の国連機関が12日に出したウクライナ戦争に関する報告書「ヒューマン・インパクト・アセスメント(Human Impact Assessment)」では、多くの住民が限界状況に追い込まれていると警告した。

 報告書は「住民たちは、貯蓄していた資金や人道支援金、借金などで持ちこたえ、生活必需品の購入のために医療費の支出まで最小化しているが、もはやこれ以上は持ちこたえることは難しい」と伝えた。

 この報告では、昨年末から今年初めまで全国24州で3239世帯を対象に調査を行い、10回のフォーカスグループインタビューと23回の専門家による深層インタビューを行った後、過去の資料と比較した。

 
 
戦争開始から1年4カ月、ウクライナ国民の生活の変化 //ハンギョレ新聞社

■危機に陥った未来世代

 ロシアが昨年2月24日に侵攻する前から、ウクライナ国内に存在した都市と農村の貧富の格差は、1年あまりの間にさらに広がった。特に、主な戦闘地域である北部と南部の農村は、廃虚に変わっている。戦争前の2021年末には、人道支援が必要な人口は、東部の紛争地域の住民など合計290万人だったが、昨年末には1760万人と5倍以上増加した。

 さらに懸念されるのは、支援が必要な住民に占める児童の割合が10%から23%に急増したという点だ。人口の高齢化と若年層の国外移住などによって、今後30年間で人口が3分の1に減少する可能性もあるという予想が出ている状況を考慮すると、子どもたちが直面している現在の危機は、ウクライナの未来をよりいっそう暗鬱にさせる。

 教育危機も暗い未来を予告している。報告書は「ウクライナ西部の一部地域でのみ対面授業が完全に行われ、残りの地域ではオンライン授業に大きく依存している」としたうえで、「ザポリージャ州、ヘルソン州、ドネツク州ではインターネット接続が難しく、オンライン授業の大きな障害となっている」と指摘した。特にヘルソンとドネツクは、教師の77%が他の地域に避難して離れており、「教育不毛地」に転落した。

 未来世代の健康も深刻な状況だ。報告書は、支援団体ワールド・ビジョンの資料を引用し、「中南部のドニプロペトロウシク、北東部のハルキウ、南部のヘルソンで子どものケアを行う状況を評価した結果、子どもたちが低年齢から喫煙、中毒、物理的暴力にさらされるリスクが高いと指摘された」と明らかにした。

 ワールド・ビジョンの資料によると、青少年が感じる不安とストレスが強まり、9~13歳の少年と少女のそれぞれ39%と44%が、タバコのような中毒性物質に手を付けていることが明らかになった。14~17歳の少年と少女は、この割合がそれぞれ78%と55%に達した。学校の授業に出ない青少年の割合も36~50%だという調査結果が出ている。

 
 
ロシアのドローン攻撃で崩れ落ちたウクライナの首都キーウのマンションの建物=キーウ/AP・聯合ニュース

■低下する生活の質

 1年以上続く戦争によって、調査対象の世帯の13%が、爆撃や戦闘によって家が壊される経験をした。過去1年間に全国で損傷した家屋は140万軒程度と推算される。こうして生活基盤を失った住民の多数が、避難の道に進み、1月時点で故郷を離れて生活する人は、全体の15%の水準である540万人に達した。

 昨年秋にロシアがウクライナの発電所などの社会インフラを集中攻撃した後、飲料水や暖房など基本的な公共サービスまで十分に享受できない人たちも同様に急増した。特に、北部と南東部の住民の77%が、飲料水の中断などによって苛酷な冬を経験した。相対的に安全な西部も、戦争前には体験しなかった飲料水不足で苦しむなど、インフラ不足は全国的な現象だと報告書は指摘した。

 調査対象の世帯の22%は、所得の25%以上を保健・医療費に使っていると答えたが、家族が病気になっても医療機関に行かないと答えた世帯も38%に達した。全般的な保健危機のなか、階層別の医療格差も広がっていると推定される。

■自立不可能な人口が雪だるま式に増加

 ウクライナ経済は、戦争のために昨年は-29.2%のマイナス成長を記録した。これにより、自ら生計を立てる余力を失った世帯が急増した。報告書は、主な収入源が「有給労働」である世帯は全体の67%から53%に大幅に減少したと明らかにした。仕事がある世帯構成員が1人もいない世帯も26%に達した。

 これにともない、人道支援金が主な所得源である世帯が、戦争前の1%から1年ほどで21%にまで大きく膨らんだ。さらに、全世帯の13%は、親戚や友人から経済的支援を受けていることが明らかになった。この割合は、戦争前より8ポイントも増えたものだ。生活が苦しく政府から一定の所得支援を受けている世帯の割合も、1年間で53%から60%に高まった。国際通貨基金(IMF)は、今年のウクライナの経済成長率を-3~1%程度と予想している。世帯所得がすぐに増加するよう期待することも難しい状況だ。

 6日にヘルソン州のカホウカダムが崩壊して浸水騒動となり、主要産業である農業生産が大きな打撃を受けると予想されている点も、今後の経済見通しを暗くする。報告書は「ウクライナは農産物の輸出大国であるため、これまで食糧安全保障問題はほとんどなかったが、戦争によって、食糧を十分に消費できない世帯が全体の10分の1の水準から3分の1にまで増えた」と明らかにした。戦争がさらに長引けば、食糧問題が住民たちの新たな心配事に浮上する可能性も排除できない。

 
 
ウクライナ東部ドネツク州クラマトルスクのある教会で、食事の配給を受けるため待っている住民たち=クラマトルスク/EPA・聯合ニュース

■対策なしで追い出される脆弱階層

 一人親家庭、高齢者、障害者、性的マイノリティ、ロマ民族のような少数民族の状況は、よりいっそう深刻だ。

 故郷を離れて慣れない土地に定着しようと努める「国内避難民」の境遇も、これらの人たちと大きな違いはない。報告書は「脆弱階層に属する人口は、1年間で全国民の34%から45%に増えた」としたうえで、「これらのなかでも、国内避難民が最も大きな困難に直面している」と指摘した。540万人程の国内避難民は、高齢者や障害者とともに最も所得が低い階層を形成しており、新たに定着しようとしている地域社会から排斥されることも多いと、報告書は付け加えた。

 ドニプロ地域に留まっているある避難民は、国連調査官に「私の履歴書には、国内避難民という表示がある。(そのため仕事を探すことができない)」としたうえで、「金銭関連の責任が伴う業務は、最初から(地域の)永住許可証を必須として要求する」と伝えた。黒海西部沿岸のオデーサ地域のある社会活動家も「地域社会には職はあるが、国内避難民が職に就くことは非常に難しいのが現実」だと述べた。

 女性や少数民族出身者なども、不利益を受けていることは同じだ。西南部地域のヴィーンヌィツャのジェンダー平等活動家は「女性たちは、男性より仕事をさらに必死になって探し、賃金が安い仕事も喜んで受けいれる」と伝えた。ハルキウの女性人権活動家は「子どもと老人の面倒をみなければならない負担のため、外での活動がまったくできない女性も多い」とし、「そのため、人道支援さえ受けられないことも起きている」と述べた。

 ウクライナ南部に主に集まって住んでいるロマ民族に対する差別は、はるかに深刻だった。オデーサ地域に住むあるロマ民族の住民は「戦争前も子どもたちを幼稚園や学校に行かせにくかったが、今はさらに難しくなった」とし、「結局、賄賂を渡して子どもを学校に登録させた」と打ち明けた。また別のロマ民族の女性は「仕事を見つけることが戦争後ははるかに難しくなった」と述べた。ウクライナには5万~26万人のロマ民族が暮らしていると推定される。

 報告書は、戦争の衝撃に苦しめられるすべての階層が権利を保護されるよう、国際社会の支援を求めた。特に、教育への投資と農業生産力の回復のための介入、女性と国内避難民の労働機会の拡大のための条件を設けなければならないと強調した。だが、戦争を終わらせる道を見つけることができない限り、ウクライナ住民たちの困難を画期的に改善させるのは難しいという点が、最も根本的な悩みだ。

シン・ギソプ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする