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SDGs(持続可能な開発目標)を考える

2022-01-18 18:36:07 | 講演・講義・フォーラム等

 「SDGs」という言葉が世の中での認知度を高めている。しかし、その概念や理念を人々はどれだけ理解しているだろうか? 私もいささか心もとない。講義を聴きながらSDGsについて改めて考えてみた。

 昨日の「札幌市高齢者市民講座」の第二講は「持続可能な開発目標?」と題して、やはり第一講と同じ札幌市社会教育協会に所属する高杉正一氏が講師を務めた。

      

 私がこの講座に注目したのは、私が所属するシニアの学習グループ「めだかの学校」において、現在SDGsに関連するDVDを視聴し話し合う講座を開設中である。そこで私が今月末の講座でナビゲーターを務めることになっているため何かのヒントを掴みたいという思いがあった。さらに来年度にはSDGsに関わる札幌市の取組みを学ぶ講座を予定していることもあり、今回の講座を受講したいと思ったのだ。

 講座における高杉氏のスタンスは何かを主張することではなく、氏自身がSDGsについて学んだことを私たちに紹介する、という形の講義だった。その学んだ主なこととは、環境政策学が専門でSDGsについて深く考察されている慶大教授の蟹江憲史氏の解説についての紹介だった。

 ご存じのようにSDGs(持続可能な開発目標)は、2015年の国連総会において採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」であり、そこには17の分野にわたり169のターゲットを掲げ《我々の世界を変革する》《誰一人取り残さない》という理念のもと、国連加盟国すべてが2030年までに達成を目指す国際目標である。

 ここまでは私をはじめ多くの方々がなんとなく承知していることかと思われる。高杉氏が、蟹江教授の解説を7点にわたって紹介してくれた。その7点とは…、

① アジェンダは「前文」「宣言」「持続可能な開発目標(SDGs)とターゲット」「実施手段とグローバルパートナーシップ」「フロアーシップとレビュー」の5つの要素で構成されている。

② 「前文」には、SDGsを理解するための「P」からはじまる5つのキーワードとその解釈が書かれているという。その5つとはPeople(人間)、Planet(地球)、Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、Partnership(友好的協力関係)である。

③ 「宣言」には歴史的意義として「地球を救う機会をもつ最後の世代になるかもしれない」と現世代へ警告している。

⑤ SDGsでは「バックキャスティング」とよばれるアプローチをとっている。 ※このバックキャスティングについての詳しい説明は省略します。

⑥ 前文においてSDGsは「持続可能な開発の3側面、すなわち経済、社会、および環境の3側面を調和させる」と述べ、この概念を立体的に表現した「三層構造の木の図」がある。

          

⑦ SDGsは達成へ向けたルールがなく、目標とターゲットがあるだけである。それらに拘束力はなく、目標を達成できなくてもペナルティがない。それぞれの創造性が問われているといえる。

 これまで表層的にしかSDGsを理解していなかった自分に、新たな視点を与えてくれたと思いながら高杉氏の講義を聴き入った。そして次のもう一つ興味深い話題を高杉氏は提示してくれた。それはSDGsの動きに強烈な疑問をぶつけることになった大阪市立大学の斎藤幸平助教授の著「人新世の『資本論』」である。

      

 私もこの本を早くに入手し読んでみた。斎藤氏の論は明快である。「人新世」(現代)の時代は際限なく利潤を求める資本主義(これを強欲資本主義と称する向きもある)がコロナ禍と気候危機を引き起こしたと喝破し、この危機を解決するにはSDGsでは間に合わないとして、脱成長コミュニズムへの転換を主張する論である。

 強欲資本主義とする斎藤氏の論は明快で私も大いに納得しながら読み進めたのだが、その代替としての脱成長コミュニズムを主張するあたりから私にはその是非が分からなくなってきた。講師の高杉氏も同様だったようだ。そこで高杉氏は学識者の書評を探ってみたという。すると次のような書評にぶつかったそうだ。その書評とは…、

「SDGs自体に現行経済システムを根底から変革する思想が埋め込まれているのである。なぜならばSDGsに掲げられた目標を徹底的に追求していけば強欲資本主義のあり方そのものを変えざるを得ないからである」と…。

     

※ 講師を務められた高杉正一氏です。

 さて、時代はどう巡っていくのであろうか?時代を読む眼など持ち合わせていない私としては当面SDGsの概念や理念を理解することに努めながら、SDGsのアジェンダ達成に近づくために一市民として取り組んでいくことかなぁ、と考えている。