田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

老いて益々盛ん! 桜守おおいに語る

2012-04-05 23:05:13 | 講演・講義・フォーラム等
 「 国宝とは財宝にあらず。一隅を照らす人なり 」とは平安時代の僧である最澄が言った言葉だそうだ。講師の浅利正俊氏はまさに社会の一隅を照らした素晴らしい方だった。

          

 3月31日(土)、道新ぶんぶんクラブの講演会で「日本の桜、北海道の桜 ~広がる花園、豊かな心~」と題して、松前の桜をはじめ北海道の桜の育成に多大な貢献をされた浅利正俊氏の講演を聴いた。

 今年の北海道の春はやや遅くなっているような気もするが、本州からは花だよりが聞かれる季節になった。ここ札幌でもあと一か月も経たないうちに桜の季節を迎えることだろう。そうした時期に桜の話を聴けるとあっておおいに興味をもった。

 講師の浅利氏は今年81歳を迎えるというが意気軒昂、張りのあるお声で90分間にわたって桜賛歌を披露された。
 氏は小学校教員の傍ら桜の研究を始めて松前公園の桜見本園の設計・整備だけではなく、品種改良までも手掛けられたという。また、札幌の桜を広めることにも貢献された方だという。

 浅利氏は言う。「日本人にとって桜の花は古の昔から特別な花だった」として、古今和歌集の中にある歌を紹介された。
 「春ごとに花のさかりはありなめど あひ見むことはいのちなりけり」(詠み人知らず)
 浅利氏はこの歌から「生きる力」を感ずると言う。さらに
 「世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」(在原業平)
 この歌からは「美を育てる心」が感じられるという。

 そして浅利氏は、「桜は日本人にとって“青春の花”である」と話された。ここで日本の代表的唱歌である「花」を会場全体で合唱した。
 この“青春の花”説には私も同感した。浅利氏は言及されなかったが、最近のJポップには桜を題材にしてヒットした曲が実に多い。人それぞれ好き嫌いはあるだろうが、私には森山直太朗の「桜(独唱)」とか、コブクロの「桜」が耳に残っている。

 浅利氏の話は、ワシントンのポトマック川河畔の桜にまつわる話や、円山公園に桜の木を松前から献本した話など多岐にわたった。
 そして最後に北海道においても桜の名所として知られる静内の御料牧場の桜並木を整備した当時の牧場長の詩を紹介していただいた。少し長いが書き写すことができたので全文紹介することにします。

          

 牧場正門より数町右折し坂を上れば
 直線一道平坦砥石の如く
 左右両側翠色流るるが如く
 牧草園を見る正門より事務所まで
 二里余樹間所どころ厩舎点在し
 清風おもむろに至りて遥かに
 振鬛長鳴の象を伝える
 
   新冠御料牧場 第四代場長 黒岩 四万之進
 
 振鬛長鳴(しん りょう ちょう めい)とは、「馬がたてがみをふるわせていななく」という意味だとのこと。

          
          ※ 会場後方には北海道内各地の桜祭りなどのポスターが掲示されていました。

 浅利氏は自らの功績についてはほとんど語られなかったが、2005年に日本桜の会からで全国6人の「桜守」に選ばれ、2011年には北海道新聞文化賞を受賞された方ということから、その功績がいかばかりかということが想像される。
 80歳にしてなお矍鑠(かくしゃく)としたその姿からおおいに元気を注入された講演会だった。