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日本の高校歴史教科書における東アジア古代史叙述 1

2008年06月19日 | 会議
      ことし5月23日にソウルで開かれた第15次国際歴史教科
     書学術会議(国際歴史教科書研究所・清華大学中韓歴史
     文化研究所共催)で報告した日本語原稿を連載します。
      当日は、この要旨を朝鮮語で報告しました。
                                  キム チョンミ


   一、日本の教科書における日本ナショナリズムの要因
        1、教科書検定制度
        2、歴史教科書執筆者の歴史観・歴史思想
   二、日本の高校世界史教科書における朝鮮古代史叙述
   三、日本の高校日本史教科書における朝鮮古代史叙述  
   四、東アジア古代史記述の根本問題  国家・民族・領土
   五、なぜ、日本の歴史教科書で東アジア古代全史が叙述され
    ないのか
   六、東アジア共通のインターナショナルな歴史教科書叙述を
    めざして


一、日本の歴史教科書における日本ナショナリズムの要因
1、教科書検定制度
 日本政府は1871年に文部省を設定し、1872年に「学制」を確定した。この「学制」においては、教科書は、自由発行・自由採択制だった。
 1880年から文部省は「教科書取調べ」を開始して自由採択制を廃止し、1883年から認可制にした。
 1886年に日本政府は、「教科用図書検定条例」を公布し、文部大臣による教科書検定を開始し、さらに、1887年に、「教科用図書検定条例」を廃止し、「教科用図書検定規則」を制定した。
 1889年2月11日に日本政府は「大日本帝国憲法」を発布し、天皇制を強化した。 翌1890年10月30日に日本政府は、天皇の名で、「教育ニ関スル勅語」をだした。
 その後、1945年まで、半世紀以上にわたって、日本では、「教育勅語」にもとづく「尊王愛国」を機軸とした学校教育が行われ、子どもたちに天皇主義・侵略思想が植えつけられた。
 日ロ戦争開始2か月後、1904年4月から、日本政府は、「国語読本」・「書き方手本」・「修身」・「日本歴史」・「地理」の教科書を国定化し、翌1905年に「算術」・「図画」の教科書を国定化し、1910年に「理科」の教科書をも国定化し、小学校教科書をすべて国定化した。
 1945年8月のアジア太平洋戦争敗北後も1946年7月末まで、それまでと同じ国定教科書が使われたが、その多くの部分に、生徒たちは、教師の支持に従って、墨を塗ったり、紙を張ったりした。切りとった場合もあった。
 1946年4月から、一部地域で暫定教科書が使われはじめた。
1947年9月に文部省は、国定教科書のほかに検定教科書を使用することにし、1948年4月に「教科用図書検定規則」を、7月に教科書の発行に関する臨時措置法をつくった。
 1949年4月から検定教科書が使われはじめた。
日本政府は、教科書検定制度によって、自然科学の分野においてもそうであったが、とくに歴史教科書における歴史事実の記述内容にかかわって管理・介入をおこなってきた。

 20世紀末、1999年8月13日に、日本は、侵略の旗「ヒノマル」を国旗とし、天皇賛歌「キミガヨ」を国歌とし、その12日後の8月25日に、他地域・他国軍事侵略のための「周辺事態法」を施行した。このころから、日本政府は、教科書検定制度を利用して、歴史教科書の「記述の誤記」を指摘すると称して、児童や生徒にいつわりの史実を教え、日本ナショナリズムを注入しようとする策動を、いちだんと強化しはじめた。
 21世紀はじめ、2001年12月、アジア太平洋戦争後はじめて日本軍が侵略戦争に参戦した。おなじころ、日本政府は、教科書検定制度を利用して偽りの歴史の宣伝策動を強化しはじめた。日本文部科学省が、歴史事実を極度に歪曲した中学校社会科歴史的分野用教科書『新しい歴史教科書』(扶桑社)をはじめて検定通過させたのは2001年であった(2001年採択率、推計0.097%)。
 日本文部科学省は、2008年4月から使用される高校の日本史教科書を検定する際、アジア太平洋戦争末期の沖縄での集団自決について、それまで認めていた「日本軍の強制」とする記述にかんして「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」と検定意見をつけた。これに従って教科書会社は、歴史的事実を歪曲し、日本軍による強制がなかったかのように文章を変えた。
 たとえば、清水書院の日本史Bは、「非戦闘員の犠牲者も多かった。なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた」という原文を、「非戦闘員の犠牲者も多かった。なかには集団自決に追い込まれた人々もいた」と変更して、検定を通過した。
 沖縄戦のさいに日本軍が住民に集団自決を強制したという記述を教科書から一斉に削除させてことに対して、2007年6月22日に沖縄県議会は検定意見を撤回して記述をもとにもどすことを要求する意見書を全会一致で可決した。この意見書には、「集団自決は日本軍による関与なしには起こり得なかったのは紛れもない事実」と書かれている。

2、歴史教科書執筆者の歴史観・歴史思想
 日本の歴史教科書が、日本ナショナリズムを強化するものとなっているのは、日本政府が教科書検定制度をおこなっているからだけではない。
 検定制度とともに重大な要因は、歴史教科書執筆者のイデオロギー・歴史観・歴史思想が、日本ナショナリズムを克服できていないことである。
 もちろん、多数の歴史教科書が、単一のイデオロギーや歴史観や歴史思想にもとづいて書かれているのではない。それぞれの教科書における日本ナショナリズムの強度は一様ではない。
 以下で、2007年3月22日に日本文部科学省の検定を通過した日本の高等学校歴史教科書における東アジア古代史記述を検討し、それぞれの教科書における日本ナショナリズムの濃淡を具体的に分析する。
 これらの歴史教科書は、すべて、現在(2008年5月)、日本の高等学校で使用されているものである。
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