三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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「銃殺された遺体、石で押さえた」7千人が犠牲になったコルリョンコルの73年

2023年06月29日 | 朝鮮史
「The Hankyoreh」 2023-06-29 08:45
■「銃殺された遺体、石で押さえた」7千人が犠牲になったコルリョンコルの73年
 李承晩政権の軍警による朝鮮戦争中の民間人銃殺 
 「弾丸で割れた頭、肉片が土の上に出ていた…」 
 慰霊祭、真実和解委員長と大田市長は不参加

【写真】1950年の朝鮮戦争勃発直後、大田市山内のコルリョンコルに連れて行かれ、両足首をつかまれ銃殺される直前の被害者。故イ・ドヨン博士が1999年末に米国立公文書記録管理局(NARA)で発掘した写真=資料写真//ハンギョレ新聞社

 1950年7月4日、イム・スンジェは生まれて100日が過ぎたばかりの娘の泣き声を背にして家を出た。「儒城(ユソン)警察署に出頭せよ」という通知に従わなかったら、後でどんな目にあうか分からなかったからだ。いやな予感がした。妻には「警察署に寄ってから出勤する」と言って、いつものように自転車に乗った。
 大徳郡(テドックン、現在の大田市大徳区)の懐徳面邑内里(フェドンミョン・ウムネリ)で生まれたイム・スンジェは、幼い頃から聡明で家族の期待を一身に背負っていた。本家に人手が足りなかったため養子に入ったが、伯父と伯母は彼を実の息子と考えていた。日帝強占期に鉄道学校を卒業した彼は、1944年に鉄道局に就職して順調な職場生活を続けていた。1950年4月に次長になった矢先に戦争が起きた。
 いつものように自転車に乗って出勤した後、イム・スンジェは消えた。家族は彼を探しまわった。警察官だったイム・スンジェの義弟は儒城警察署を訪ね、彼の行方を尋ねた。同じ警察官なのに儒城署の警察官は「二度と聞くな。訪ねてもくるな」と色をなした。
 「山内に連れて行かれたんだそうだ」。
 彼の行方について「山内(サンネ)」という地名が言及されるようになったのは、ある程度時間がたってからだった。

◆私は韓国で真実を見た
 英国の日刊紙「デイリー・ワーカー」の記者アラン・ウィニントンは1950年7月、大田(テジョン)山内のコルリョン谷(コル)を訪れた。同年8月、「私は韓国で真実を見た(I saw the truth in Korea)」との見出しを付けた記事で、彼は当時のコルリョンコルの現場の様子を次のように描写している。
 「歩くたびに徐々に地中に沈んでゆきつつある肉片や骨が見えた。(中略)大きな死のくぼみに沿って青白い手、足、膝、肘、そしてゆがんだ顔、銃弾によって割れた頭が地面から突き出ていた」。

【写真】「韓国での政治犯処刑」と題する米国の報告書に添付されたコルリョンコル虐殺現場の写真。米国極東軍司令部駐韓連絡事務所の総責任者レナード・アボット少佐が撮影したもので、故イ・ドヨン博士が1999年に初めて発掘し世に公開した。大田山内コルリョンコル対策会議提供//ハンギョレ新聞社
【写真】「韓国での政治犯処刑」と題する米国の報告書に添付されたコルリョンコル虐殺現場の写真。米国極東軍司令部駐韓連絡事務所の総責任者レナード・アボット少佐が撮影したもので、故イ・ドヨン博士が1999年に初めて発掘し世に公開した。大田山内コルリョンコル対策会議提供//ハンギョレ新聞社
【写真】「韓国での政治犯処刑」と題する米国の報告書に添付されたコルリョンコル虐殺現場の写真。米国極東軍司令部駐韓連絡事務所の総責任者レナード・アボット少佐が撮影したもので、故イ・ドヨン博士が1999年に初めて発掘し世に公開した。大田山内コルリョンコル対策会議提供//ハンギョレ新聞社
【写真】「韓国での政治犯処刑」と題する米国の報告書に添付されたコルリョンコル虐殺現場の写真。米国極東軍司令部駐韓連絡事務所の総責任者レナード・アボット少佐が撮影したもので、故イ・ドヨン博士が1999年に初めて発掘し世に公開した。大田山内コルリョンコル対策会議提供//ハンギョレ新聞社

 ウィニントン記者が現場を訪れたのは、1950年7月6日から7月17日未明にかけて起きた「第3次コルリョンコル虐殺」の直後だった。イム・スンジェがコルリョンコルに連れて行かれたのも、この時と推定される。
 ウィニントンは記事で「7月16日に100人ずつ乗せた37台のトラックが移動し、かなりの数の女性を含む3700人の人が射殺された」と記している。彼は「銃撃や殴打、そして斬首は韓国の警察が行ったが、これは米国の犯罪」、「(虐殺は)米軍の将校たちが見守る中で行われ、(虐殺過程に動員された)運転手のうちの数人は米国人」だと報道した。
 コルリョンコルで最初の虐殺が起こったのは、戦争勃発直後の1950年6月28日から6月30日にかけて。当時、李承晩(イ・スンマン)大統領とシン・ソンモ国防部長官ら政府閣僚たちは27日未明、大田に来ていた。翌日、予備検束で逮捕された保導連盟員と大田刑務所に収監されていた麗水(ヨス)・順天(スンチョン)事件関連の思想犯の一部がコルリョンコルに連行された。

【写真】1950年8月に英国「デイリー・ワーカー」のアラン・ウィニントン記者が書いた「私は韓国で真実を見た」と題する記事に掲載されたコルリョンコル虐殺現場の写真。土の上に虐殺された人々の手足などが現れている=資料写真//ハンギョレ新聞社
【写真】1950年8月、英国「デイリー・ワーカー」のアラン・ウィニントン記者が書いた「私は韓国で真実を見た」との見出しの記事の表紙=大田山内コルリョンコル対策会議提供//ハンギョレ新聞社

 大田東区朗月洞(トング・ナンウォルトン)にあるコルリョンコルは、人影の少ない谷間だった。米陸軍対敵諜報隊(CIC)の派遣部隊の戦闘日誌は、6月28日からの3日間でコルリョンコルで1400人が銃殺されたと記録している。当時、銃殺を執行した警察の責任者はメディアとのインタビューで、次のように証言している。
 「死刑に使う柱を地面に10本打ち付けておいて、死刑囚の目を覆い、後ろ手に木の柱に縛りつけた。7メートル前方から狙撃手が、弾丸が1発ずつ装填されたM1で射殺した。(憲兵の)指揮者の号令に従って(憲兵が)撃つと、死刑囚の首がガクッと下がった。すると指揮者が確認射殺をした。確認射殺が終わると、消防隊員が手の縄をほどいて遺体をあらかじめ準備していた薪の山に投げ入れた。遺体が50~60体たまったら火葬した」。
 1950年7月1日未明、李承晩大統領は秘密裏に大田を去った。大統領が去ったその日の明け方、大田地検の検事長は大田刑務所に「左翼極烈分子を処断せよ」という電文を送った。当時、大田刑務所には4千人が収容されていた。7月2日、第2師団の憲兵隊は大田刑務所に「左翼囚、すなわち布告令・国防警備法違反など主に麗水・順天反乱事件(の関係者)、保導連盟員、10年以上の強力犯を引き渡せ」と要求した。翌日、在所者たちはコルリョンコルに連行された。当時、大田刑務所の特別警備隊長は、その時の状況を次のように述べている。
 「在所者を座らせて穴の方に向かせ、在所者の後頭部に突き付けて撃つんだ。後ろから撃つと血と脳髄の白っぽいのが飛び出して、ズボンがぐちゃぐちゃになる。すぐに穴に死体が逆さまに突き刺さって足が上に向き、ひどいものでした。憲兵の指揮官が青年防衛隊に山の上から石を転がして持ってこさせて死体を押さえつけさせていました」。
 5日間続いた第2次虐殺の犠牲者は1800~2000人と推定される。1950年6月28日から7月17日にかけて、3次にわたり7千人あまりがコルリョンコルで集団射殺されたのだ。

【写真】2021年9月10日にコルリョンコルの虐殺現場から発掘された遺骨=チェ・イェリン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】2021年8月6日、大田山内虐殺犠牲者遺骨発掘団の研究員たちが、コルリョンコルの現場で遺骨発掘作業を行っている=発掘団提供//ハンギョレ新聞社
【写真】2021年にコルリョンコルで発掘された虐殺犠牲者の遺骨=チェ・イェリン記者//ハンギョレ新聞社

◆北朝鮮に対する利敵の可能性をなくせ
 韓国軍と警察が自国民に対してこのような恐ろしいことをしたのはなぜだろうか。
 日帝強占期が終わった後も、大田(テジョン)刑務所は「窃盗犯」と「思想犯」でいっぱいだった。解放後、朝鮮半島の南側では左右対立が激化しており、李承晩(イ・スンマン)による単独政府樹立に反対する騒乱が広がるにつれ、収監者はさらに増えていった。1948年3月には1875人だった大田刑務所の収容者は、1949年には3041人にまで膨れ上がっていた。その中には麗水(ヨス)・順天(スンチョン)事件と済州4・3事件の関係者もいた。
 李承晩政権は1949年6月5日、左翼からの転向者を「国民保導連盟」という反共団体に加入させた。「左翼を転向させて保護し導く」との趣旨だったが、実績に目がくらんだ公務員たちは左翼と関係のない人々までやみくもに加入させた。
 1950年6月25日に戦争が勃発すると、内務部治安局は全国の道警察局に「要視察人全員を警察に拘禁するとともに、刑務所の警備を強化せよ」とする非常通報を送る。保導連盟に加入させられた人々は警察署、面事務所の倉庫、刑務所などに拘禁された。そして6月28日、コルリョンコルで最初の虐殺が起きた。

◆父の恨(ハン)、解いてさえあげられたなら
 イム・スンジェの娘のイム・ナムシンさん(73)は、出勤途上で永遠に帰れぬ道へと旅立った父を忘れたことはない。家族たちはイム・スンジェが「山内(サンネ)に連れて行かれた」といううわさを聞き、せめて遺体を探そうとしたが無駄骨に終わった。
 息子探しに没頭していた祖父は、食を断った末に病んで亡くなった。家運は徐々に傾き、ナムシンさんが12歳の時に母親は再婚した。祖母の下で育ったナムシンさんは「両親を失った大田」が嫌いで大邱(テグ)に嫁いだ。

【写真】コルリョンコル虐殺の犠牲者イム・スンジェさんの娘のイム・ナムシンさん(73)が2日、大邱の自宅でハンギョレの取材に応じ、父親と撮った唯一の写真を手に涙を流している=チェ・イェリン記者//ハンギョレ新聞社

 ナムシンさんは2020年12月に発足した第2期真実・和解のための過去事整理委員会に真実究明を申請した。2005年に発足した第1期真実和解委は、2010年に「戦時とはいえ、国民の命と財産を保護すべき国が、収監された在所者を左翼の前歴がある、または人民軍に同調することが憂慮されるとの理由のみで、適法な手続きもなしに射殺したのは、明白な違法行為」だとし、「その責任は当時の李承晩大統領と国に帰属する」と明らかにした。
 しかし、現任のキム・グァンドン真実和解委員長は最近、朝鮮戦争前後の違法な民間人集団死亡事件の被害者が補償を受けることは「深刻な不正義」だと発言し、遺族の胸に剣を突き刺した。
 コルリョンコルに2024年までに建設される予定だった「朝鮮戦争民間人犠牲者慰霊施設」は、着工さえできずにいる。2007年から現在までにコルリョンコルで発掘された遺骨は1441体。大田山内事件犠牲者遺族会と大田山内コルリョンコル対策会議は、2000年から毎年6月に「コルリョンコル虐殺犠牲者慰霊祭」を行っている。今年も27日にコルリョンコルで慰霊祭が開催された。
 慰霊祭に参列したナムシンさんは、無念の魂を慰める宗教祭礼を見つめながら涙をぬぐった。真実和解委のキム・グァンドン委員長と大田市のイ・ジャンウ市長は、この日の慰霊祭には参列しなかった。2010年以降は毎年送られてきていた大田市長の追悼の辞も、今年はなかった。
 父親と一緒に撮った100日祝いの写真を手に、ナムシンさんは泣きながら語った。「写真の中の父を忘れたことはありません。無念の父の死を明らかにできなければ、死んでも死にきれないと思います」。

【写真】2021年8月、コルリョンコルの入り口に「世界で最も長い墓 コルリョンコル」と記されたリボンがかかっている=チェ・イェリン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】コルリョンコルに建てられた追悼碑=チェ・イェリン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】現在のコルリョンコルの様子。2020年からの3年間にわたる遺骨発掘が終わり、地ならしされている。この場に「朝鮮戦争民間人犠牲者慰霊施設」が建設される=大田山内コルリョンコル対策会議提供//ハンギョレ新聞社
【写真】昨年6月27日、大田市東区朗月洞山内コルリョンコルで開催された「山内虐殺事件犠牲者合同慰霊祭」で、大田山内事件犠牲者遺族会のチョン・ミギョン会長が祭祀の膳に杯をささげている=チェ・イェリン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】イム・ナムシンさんが27日午前、大田東区朗月洞のコルリョンコルで開催された「大田山内コルリョンコル虐殺事件73周忌犠牲者慰霊祭」に参列し、涙を流している=チェ・イェリン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】27日午前、大田市東区朗月洞のコルリョンコルで開催された「大田山内コルリョンコル虐殺事件73周忌犠牲者慰霊祭」で、大田山内事件犠牲者遺族会のチョン・ミギョン会長が杯をささげている=チェ・イェリン記者//ハンギョレ新聞社

チェ・イェリン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-28 06:00
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「「賛成一色」の汚染水討論会に野党批判まで…世論戦に総力挙げる韓国政府」

2023年06月28日 | 
「The Hankyoreh」 2023-06-27 07:56
■「賛成一色」の汚染水討論会に野党批判まで…世論戦に総力挙げる韓国政府
 福島原発汚染水の海洋放出が差し迫っている中、韓国政府がこれを批判したり不安を示す世論を静めようと必死になっている。この過程で外交部が異例にも野党を批判する意見を表明するなど、行き過ぎた姿を見せたことに対し、野党は「政治的意図を持った行為」だとして強く反発した。
 政府は原発汚染水の安全性を強調することに全力を傾けている。国立外交院は26日午前、ソウル瑞草区(ソチョグ)の庁舎で、討論会「福島原発汚染水の海洋放出をどうみるか」を開いた。開会の辞でパク・チョルヒ院長は「科学を無視して国民の不和を煽る感性的論理、政治的レトリックを前面に押し出す論争が韓国社会を分裂させている」とし、海洋放出に反対する立場を批判した。同日の討論会で発表を行った韓国原子力学会のペク・ウォンピル会長や、ソウル大学原子核工学科のキム・ギヒョン教授、パネルを務めた大邱カトリック大学放射線学科のキム・ヨンミン教授らは、いずれも汚染水の海洋放出に肯定的な意見を示した。
 国務調整室は15日から休日を除き、毎日汚染水関連会見を行い、不安を抱いている世論をなだめることに力を入れている。パク・グヨン国務調整室国務1次長は、この日の会見では「現在の海洋放出方式が科学的先例や安全性などを総合的に考慮したうえで、最も現実的な代案」だと強調した。これに先立ち、ハン・ドクス首相も23日、与党「国民の力」の「我が海を守る検証タスクフォース(TF)」所属議員らとソウル銅雀区(トンジャック)の鷺梁津水産市場を訪ね、水産物を自ら食べてみせた。
 国民の不安を鎮めることは必要だが、批判世論を「政府への攻撃」だと罵倒し、安全性だけを強調するのは不適切だという声もあがっている。野党「共に民主党」が太平洋島しょ国に汚染水の海洋放出に関する国際連帯を求める書簡を送ったことについて、外交部が民主党を批判したのが代表的な事例だ。外交部は25日、同書簡が「対外的なレベルで憲法上の行政府の持つ固有の権限を尊重しないものであり、国家の外交行為の単一性という側面でそぐわないもので、遺憾だ」と述べた。
 しかし、このような主張は憲法を無理に解釈したものだという指摘もある。西江大学法科大学院のイム・ジボン教授はハンギョレとの電話インタビューで、「福島原発汚染水の海洋放出に関して、政府が確定的な立場を発表した段階でもなく、公論化の過程で国民の代表機関である国会が外国との連帯を模索するのは憲法に反するとは言えない」と語った。汚染水の海洋放出に問題がないという世論戦を攻撃的に繰り広げる過程で、外交部が「一線を越えた」という指摘だ。
 共に民主党のパク・グァンオン院内代表は26日、党最高委員会議で「(国会と政党は)政府をただ支持し称賛すべきということなのか」と外交部を強く批判した。また「政府与党がすべきことは、国民の生命と健康を守るための民主党の努力をけなすことではなく、国民が与えた権限と責任を政府がちゃんと履行しているかどうかを自ら振り返ること」だと述べた。同党のイ・ソヨン院内報道担当は「外交部が政治的中立を守らず、政治的意図を持った行為とみなされかねない立場を示したことは不適切なもので、遺憾の意を伝えたい」と述べた。
シン・ヒョンチョル、チャン・イェジ、カン・ジェグ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-27002:45


「聯合ニュース」 2023.06.26 19:30
■韓国野党が福島視察結果報告会 海洋放出阻止で日本側と連携へ
【ソウル聯合ニュース】韓国の革新系野党「正義党」は26日、ソウルの日本大使館前で、同党所属国会議員の訪日の結果に関する報告会を開き、東京電力福島第1原発の処理済み汚染水海洋放出を巡り、日本政府が五つの重大な違反を犯していることを確認したと主張した。

【写真】日本大使館前で開かれた報告会の様子=26日、ソウル(聯合ニュース)

 放射性物質の海洋投棄を禁ずる国際法、多核種除去設備(ALPS)で処理した汚染水の処分に関する日本国内法、処理水は敷地内タンクに貯蔵するとした東電の確約文書、汚染水を希釈しないという東電の方針、処理水は海洋放出できないとする日本の原子力安全委員会の計画にそれぞれ違反しているという。
 また、福島第1原発で東電の関係者と面会し、漁業関係者への補償は日本国内に限定する計画との回答があったと説明した。
 訪日した議員らは日本の超党派議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」関係者と面会し、海洋放出を阻止するための国際的なネットワークを設立することで合意した。
 同党の裵晋教(ペ・ジンギョ)院内代表は報告会で「政府がないがしろにした国民の安全と国益を野党レベルの外交と連帯で取り戻す」とし、積極的な国際連帯で日本政府の海洋投棄計画の撤回を必ず実現させると強調した。
 同党の「福島汚染水阻止TF」団長を務める姜恩美(カン・ウンミ)議員、裵院内代表などは22日から3日間の日程で訪日し、福島原発を視察したほか「原発ゼロ・再エネ100の会」関係者などと面会した。 


「聯合ニュース」 2023.06.26 15:46
■塩が品薄の韓国 コンブやワカメの売り上げも増加=汚染水懸念で
【ソウル聯合ニュース】東京電力福島第1原発の処理済み汚染水の海洋放出による海洋汚染の懸念が広がる韓国で塩とともに海藻類の売り上げが伸びていることが26日までに分かった。

【写真】塩の陳列棚が空になっている大田市内の大型スーパー=(聯合ニュース)

 スーパー大手のイーマートによると、東電が汚染水を海洋放出する設備の試運転を始めた12日から25日までの塩の売上高は前年同期比156.3%増加した。
 長期保存が可能なコンブ、ワカメの売上高もそれぞれ92.9%、69.9%増えている。
 ロッテマートでも同期間、塩の売上高は150%増え、コンブとワカメ、ノリなど海藻類は20%以上増加した。
 流通業界の関係者は「長期間保存できる食品から需要が高まっており、特にワカメの場合、子どもや妊婦が多く食べる食品であるため、求める人が多いとみられる」と話した。
 一部の大手スーパーでは海水を使って精製する天日塩が品薄になっており、ロッテマートは1人当たり1個に購入制限をしているという。
 イーマートも塩について1キロ以上の製品に限り、1人2個までと購入制限をしている。
 ただ政府は、天日塩の生産量が減少し価格が上昇したことについて、雨天の日が多かったことに加え、梅雨を前に出荷量の調節があったためとみている。
 海洋水産部は天日塩の生産量は6月から平年並みに回復しているため、供給量は問題ないと判断している。
 また需給バランスを取るため、政府による買い入れなどを通じて供給拡大を進めるとともに、生産者団体などと協議して安定した出荷のための制度づくりも進める方針だ。


「聯合ニュース」 2023.06.26 14:42
■汚染水海洋放出 「別方式の提案は信義誠実に反する」=韓国政府
 金泰均
【ソウル聯合ニュース】韓国の国務調整室の朴購然(パク・グヨン)第1次長は26日、東京電力福島第1原発の処理済み汚染水に関する記者会見で、「放出決定を元に戻し、国際原子力機関(IAEA)などに別の方式を提案することは信義誠実の原則に反する態度」と述べた。
 「海洋放出ではなく、固体化などの代案はないか」との記者団の質問に答えた。
 朴氏は「日本内でも相当複雑な議論があり、IAEAなどが最終決定にまで関与した」とし、「放出の方式が科学的な前例、安全性などを考慮した際、最も現実的な代案だと判断され決定がなされた」と説明した。そのうえで、「放出をどのようにすれば安全に行われるかに全力を注いでいる段階」と述べた。
 一方、食品医薬品安全処のカン・ユンスク食品基準企画官は会見で、韓国の食品の放射性物質濃度の基準値は1キロ当たり100ベクレル以下として、「世界のどの国より厳しい」と説明。国際的な食品規格を作るコーデックス委員会の1キロ当たり1000ベクレルと比べ10倍厳しいと強調した。


「聯合ニュース」 2023.06.26 11:46
■韓国の野党代表 日本大使館前でハンスト開始=「汚染水海洋放出に反対」
 金泰均
【ソウル聯合ニュース】韓国の革新系野党「正義党」の李貞味(イ・ジョンミ)代表は26日、東京電力福島第1原発の処理済み汚染水の海洋放出に反対するとして、ハンガーストライキを始めた。

【写真】野党代表 日本大使館前でハンストへ
 韓国の革新系野党「正義党」の李貞味(イ・ジョンミ)代表(左から3人目)が在韓日本大使館前で東京電力福島第1原発の処理済み汚染水の海洋放出に抗議する記者会見を行っている。李氏は大使館前に場所を設け海洋放出に反対するハンガーストライキを行うと宣言した=26日、ソウル(聯合ニュース)

 李氏はソウルの日本大使館前で記者会見し、汚染水の海洋放出に反対する意見が84%に上った世論調査結果を取り上げ、「正義党が先頭に立ち、国民と共に要求を貫徹するまで戦う」と述べた。大使館前に場所を設け、ハンストを続ける予定だ。
 李氏は「日本でも汚染水の海洋投棄に反対する声が高まっている」として、「日本の野党、市民社会と力を合わせることができれば日本の世論を動かすことができ、日本政府に圧力をかけられる」と主張。「今回のハンストはその世論を集める出発点となる」とし、「韓国国民の常識的かつ正当な声を伝えたい」と強調した。
 正義党の議員と党員は交代で断食する形で李氏のハンストを支援する。
 正義党の国会議員らは22~24日に日本を訪問し、福島第1原発を視察した。訪日した姜恩美(カン・ウンミ)議員は26日のラジオ番組で、「日本の議員や市民団体ではわれわれが思っていたより反対する意思がはっきりしていた」として、「日本の議員たちもこれは処理水ではなく、廃棄物だとはっきり話した」と述べた。
 正義党は今後、日本の政党や市民団体などと共同の対応策を模索する方針だ。


「The Hankyoreh」 2023-06-26 08:52
■[フォト]「なぜ海に汚染水を捨てるのか、日本の領土に保管すればいい」=韓国

【写真】「日本による放射能汚染水の海洋投棄阻止のための共同行動」のメンバーらが24日午後、ソウル中区のソウル市庁近くで開かれた「日本による放射能汚染水の海洋投棄阻止第3回全国行動の日」でシュプレヒコールを叫んでいる=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「なぜ海に捨てるのか。保管すればいい」。
 ソウル都心の湿度が60%を越えるなど蒸し暑い天気となった22日午後、日本による放射性物質汚染水の海洋投棄を批判する集会が開かれた。
 「日本による放射能汚染水の海洋投棄阻止のための共同行動」(以下、共同行動)は、ソウル市庁の東側道路で開かれた第3回全国行動の日の集会で、放射能汚染水の海洋投棄を糾弾し、汚染水の陸上での保管を求めた。この日の集会には、大学路(テハンノ)で集会を終えた民主労組の組合員も参加した。
 共同行動は「福島原発の放射能汚染水は一度だけ捨てられるのではなく、溶け落ちた核燃料を除去して廃炉するまで、すくなくとも30年以上は続くだろう」と明言し、「日本は汚染水の海洋投棄の代わりに大型タンクによる陸上での長期保管や、セメントに入れて固体化する代案を設けるべきだ」と主張した。また、メンバーらは「韓国政府は、日本政府を代弁するかような毎日の定例説明会ではなく、汚染水の海洋投棄を反対して積極的な汚染水対応を求めよ」と要求した。
 共同行動は「日本政府は7月から福島原発汚染水の海洋投棄を予告している」とし、「今からでも韓国政府は日本を国際海洋法裁判所に提訴せよ」と求めた。
 集会の参加者らは「海を生かそう」という意味を込め、地球儀を転がすパフォーマンスで集会を終えた。共同行動は来月8日に第4回全国集会を予定している。

【写真】参加者らがプラカード持ち、日本政府に汚染水を陸上で保管するよう求めている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】「日本による放射能汚染水の海洋投棄阻止のための共同行動」のメンバーらがプラカードを持ってシュプレヒコールを叫んでいる=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞
【写真】参加者らが日本政府に福島原発汚染水を陸上に保管するよう求めるシュプレヒコールを叫んでいる=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞
【写真】ある参加者が集会場所に設置されたフェンスに放射能汚染水に汚染される魚介類を警告するプラカードを取り付けている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞
【写真】参加者らが「福島原発汚染水の放出、絶対にだめ」と書かれたプラカードを持って合唱公演をしている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞
【写真】参加者らが集会の最後に、海を生かそうという意味を込め、地球儀を転がすパフォーマンスをしている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞
【写真】参加者らが集会の最後に、海を生かそうという意味を込め、地球儀を転がすパフォーマンスをしている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞

シン・ソヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1097319.html
韓国語原文入力:2023-06-25 08:24


「The Hankyoreh」 2023-06-26 18:12
■福島第一原発の汚染水放出、安全の前にまず正当性を問うべき
[来週の質問]

【写真】全羅南道莞島郡の漁業関係者たちが22日、莞島港で福島第一原発の汚染水放出に反対する集会を行っている/聯合ニュース

 日本が推進する福島第一原発事故で発生した汚染水の海洋放出について最も多く問われているは、どうも「安全」のようだ。だが、安全性を問う前にまず「正当なのか」という問いに対する答えを得るべきだ。最悪の原発事故で発生した放射性物質を、数多くの生物の生活の場であり、人類共同の資産である海に放出する行為が、果たして正当化できるのか、との問いだ。
 この問いは放出に否定的な側からのみ発せられているものではない。放出しようとする側が「従う」という「国際安全基準」も同じ問いを投げかけている。国際原子力機関(IAEA)は、施設と活動の正当化▽保護の最適化▽個人に対するリスクの制限という3つの原則を、放射線から人間と環境を保護するための基本原則として提示している。
 このうち1つ目の「正当化」原則は「放射能のリスクを発生させる施設と活動は、全般的な利益を生産しなければならない」と定義される。放射能による被害を誘発する活動は、それによって発生する利益と損害を計算し、利益の方が被害より大きい時のみ正当であるということだ。
 「最適化」は、放射能のリスクを誘発する活動が正当であっても、合理的に達成可能な最高水準の安全を提供しなければならないというもの。「リスクの制限」は、先の2つの原則に従ったとしても十分な安全は保障されないから、放射線被ばくの「線量の限度」を守らなければならないという要求だ。汚染水は排出基準さえ順守すれば良いのだという主張や、甚だしくは飲むこともできるという誰かの大言壮語は、3つの原則うちの最後のひとつのみを守れば良いという話だ。
 IAEAは2021年9月から汚染水放出計画の安全性を検討してきた。この過程において真っ先に問うべきは汚染水放出の正当性だったが、それは放棄された。正当化を含む3つの基本原則の履行指針ともいうべき全般的安全指針「公衆と環境の放射線防護(GSG-8)」を検討基準から除外したのだ。
 GSG-8は「正当化は放射線防護の範囲よりもはるかに広く経済的、社会的、環境的要因も考慮する」と規定している。安全基準に則って放射線被ばくの利害当事者を判断する際、国境は重要ではない。「GSG-8」を適用するならば、韓国や太平洋の島しょ国の経済、社会、環境的得失も考慮されなければならないということだ。
 汚染水の海洋放出に反対してきた太平洋諸島フォーラム(PIF)専門家パネルのアルジュン・マクジャニ教授(カリフォルニア大学バークレー校)は、先月10日の韓国国会での討論会で「汚染水放出は韓国や太平洋の島しょ国にとって期待しうる利益が0であるため、『GSG-8』を適用すれば正当化条件に違反することになる」と断言した。
 このため専門家パネルは、IAEAの放出計画検討基準に「GSG-8」を含めるべきだと主張し続けてきた。専門家パネルと連絡を取ってきたヤン・イ・ウォニョン議員室(共に民主党)によると、IAEAは、「GSG-8」を検討する責任は日本の原子力規制委員会にあるとして、これを拒否している。
 IAEAは、福島第一原発の汚染水放出計画の安全性検討結果が記された最終報告書を近く発表する。日本が同報告書を大義名分として来月にバルブを開けば、汚染水は海に流れ込むことになる。放出は正当化されうるのかという問いに何も答えないまま。
キム・ジョンス|気候変動チーム先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:


「The Hankyoreh」 2023-06-26 09:08
■韓国外交部、「汚染水問題で国際連帯」書簡送った野党第一党に「遺憾」

【写真】共に民主党のイ・ジェミョン代表と議員たちが21日午前、国会で開かれた議員総会で福島第一原発の汚染水放出に反対するスローガンを叫んでいる/聯合ニュース

 韓国外交部は、野党「共に民主党」が太平洋の島しょ国に福島第一原発の汚染水放出に関して国際的連帯を求める書簡を送ったことについて「対外的次元で憲法上行政府が持つ固有の権限を尊重しないものであり、国の外交行為の単一性という面で正しくないため、遺憾だ」と表明した。政府省庁が政党に遺憾を表明したのは異例。
 外交部は25日、担当記者団に送ったショートメッセージで「共に民主党の今回の書簡発送は、国際原子力機関(IAEA)を含む国際社会の共同の努力はもちろん、韓国の安全性評価の努力を何の科学的根拠も提示せず度外視するものであり、客観的な検証と判断の助けにはならない」と述べた。
 外交部は「韓国政府はこれまで一貫して明らかにしてきた福島第一原発の汚染水放出に対する立場を貫徹するため、太平洋の島しょ国およびIAEAなどの国際社会と積極的に協力してきた」とし「これからも韓国政府は、国際的権威が認められているIAEAの検証結果、そしてこれとは別に進めてきた韓国自らの科学・技術的分析の結論を総合的かつ客観的に判断し、必要な対応と協力を行っていく予定」だと表明した。続けて「このような我々の対応の方向性は、主要7カ国(G7)などの主要先進国の立場と軌を一にするものであり、韓国水産業界の利益を保護し、国民の健康と安全を保護する最も効果的な方策」だと付け加えた。
 民主党は21日、太平洋諸島フォーラム(PIF)所属のオーストラリア、フィジー、マーシャル諸島など18カ国とPIF事務局に対し、福島第一原発の汚染水放出について国際的連帯を求める書簡を発送した。書簡には汚染水の海洋放出についての最近の問題、海洋法裁判所への暫定措置請求の必要性、国際連帯の必要性などが記されている。
 民主党の書簡送付について、与党「国民の力」のユン・ジェオク院内代表は23日、「国際慣行に照らして、通常の範囲を越える深刻な国益損傷行為であり、外交権限を大統領の権限と認めている憲法の原則と趣旨にも反する、非常に不適切な行為だ」と批判している。これは外交部の立場表明と同じ趣旨だ。
シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-25 16:47


「聯合ニュース」 2023.06.25 17:08
■汚染水放出巡り太平洋諸国に連携呼びかけ 野党書簡に「遺憾」=韓国政府
 金泰均
【ソウル聯合ニュース】韓国の外交部は25日、東京電力福島第1原発の処理済み汚染水海洋放出問題への対応を巡り、最大野党「共に民主党」が太平洋島しょ国に連携を呼びかける書簡を送ったことについて、「客観的な検証と判断に役立たない」として遺憾の意を表明した。

東京電力福島第1原発の処理済み汚染水に関する記者会見を行う韓国政府関係者ら(資料写真)=(聯合ニュース)
 外交部は「共に民主党の書簡は国際原子力機関(IAEA)を含む国際社会の努力はもちろん、われわれの自主的な安全性評価のための努力を何ら根拠も提示せず度外視するもの」と指摘。「憲法上、行政府が持つ固有の権限を尊重しないものであり、外交行為の単一性という側面から遺憾」と表明した。
 また、「今後政府は国際的な権威を認められているIAEAの検証結果、これとは別に行ってきたわれわれの科学・技術的な分析の結論を総合的かつ客観的に判断し、必要な対応と協力をしていく」との方針を示した。そのうえで、「主要7カ国(G7)など主な先進国の立場と歩調を合わすもので、水産業界の利益を守り、国民の健康と安全を守る最も効果的な方策」と述べた。


「The Hankyoreh」 2023-06-23 10:06
■韓国野党代表、汚染水放出問題で政府への攻勢強化…「不逮捕特権放棄」宣言で転換図る
 共に民主党のイ・ジェミョン代表は、福島第一原発の汚染水放出問題を契機として政府与党に対する攻勢の姿勢を強めている。先日、「国会議員不逮捕特権(国会議員は現行犯でない限り会期中に国会の同意なく逮捕・拘束されないという憲法条項)」を放棄すると宣言したことで、自身と党を締め付けていた「防弾(徹底して身を守る)」フレームから抜け出し、反対世論の強い汚染水放出問題に集中することで、政府けん制の中心に立つことを意図した動きとみられる。
 イ代表は22日、江原道江陵(カンヌン)の注文津(チュムンジン)を訪れ、水産業や観光業の関係者と福島第一原発の汚染水問題について話し合った。イ代表はこの席で、「放出を止めるために韓国(政府)は実質的な行動を取るべきだが、非常に足りないという考えはぬぐい難い」とし、「安全には何の問題もないと言い張ったり主張したりしたところで、その問題そのものが消えるのか」と言い、政府を強く批判した。
 民主党はこのところ「汚染水放出問題」に注力している。前日に汚染水放出反対署名100万人達成を告げる報告大会を行ったのに続き、7月からはソウルを皮切りに全羅道、忠清道、済州道など全国を巡回して大規模な糾弾大会を開催する予定だ。民主党は、21日には太平洋の島しょ国に民主党議員全員の名義で国際的連帯を求める協力書簡を発送している。
 民主党内のイ・ジェミョン派は、イ代表が「不逮捕特権」の放棄を宣言したことで、より身軽に対政府闘争を導く環境が整ったとみている。与党および民主党内の非イ・ジェミョン派議員の攻撃の的となっていた「防弾国会」というフレームが、不逮捕特権放棄でかなり崩れたというわけだ。イ・ジェミョン派のキム・ヨンジン議員は、この日の仏教放送(BBS)ラジオの番組で「『イ代表の防弾問題、司法リスクをめぐっては、これ以上論争すべきことはない』というのが、民主党議員や外部の大方の見方」だとし「民生、経済、外交安保などの国会本来の仕事に集中していくことが必要だ」と語った。
 いっぽう、非イ・ジェミョン派からは「イ代表の司法リスクは猶予されているだけ」との声があがっている。非イ・ジェミョン派のある議員は「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の失政に対してはきちんと闘うにしても、『イ・ジェミョンのリーダーシップ』の根底にある司法リスクはそれとして直視すべきだ」と述べた。
 正義党のペ・ジンギョ院内代表、イ・ウンジュ院内首席副代表、カン・ウンミ議員(同党福島原発汚染水阻止タスクフォース団長)はこの日、東京を訪れ、汚染水放出に反対する日本の政治家の集まり「原発ゼロ・再エネ100の会」と懇談会を実施した後、社会民主党の議員たちと東京電力を訪問した。ペ院内代表は出国前、金浦国際空港で記者団に対し、「(汚染水の放出に反対する)日本の議員や市民団体と連帯し、日本の核汚染水が決して無断で投棄されないよう、意志を結集していくつもりだ」と述べた。23日には放射能の専門家とともに福島第一原発を訪問する。
 国民の力のユン・ジェオク院内代表は、民主党が太平洋島しょ国に連帯を求める書簡を送ったことについて、この日の最高委員会議で「国民に対する怪談扇動が通じないため、国外でも怪談扇動をはじめた格好」だとし、「耳を疑うほどの非常識な行動」だと非難した。
イム・ジェウ、カン・ジェグ、ソン・ヒョンス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-22 18:54


「The Hankyoreh」 2023-06-23 08:27
■[フォト]韓国の女性団体「福島原発汚染水、日本の領土に保管せよ」

【写真】ソウル女性連帯などの女性団体のメンバーが21日午前、ソウルの日本大使館前で福島原発の放射性物質汚染水の海洋投棄を批判し、核廃棄物保存容器を意味するプラスチックのバケツで「日本の領土に保管せよ」と主張している=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 ソウル女性連帯や冠岳(クァナク)女性会、九老(クロ)女性会、城北(ソンブク)マザーセンターなどの女性団体のメンバーが、21日午前、ソウル鍾路区(チョンノグ)にある在韓日本大使館の前で記者会見を行い、日本の福島原発の放射性物質汚染水の海洋放出を批判した。
 メンバーらは「世界各国と日本国内の反対世論にもかかわらず、日本政府は福島第一原発の放射性物質汚染水の投棄を押し切ろうとしている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、こうした状況に対して、国民の懸念の声を『怪談』と切り捨て、露骨に日本側を擁護するばかりの状況」だと主張した。
 メンバーらは、日本の福島原発の放射性物質汚染水の海洋放出に反対する市民1000人あまりの署名を集め、署名用紙を在韓日本大使館に渡そうとしたが、警察が阻止し、直接渡すことはできなかった。

【写真】ソウル女性連帯などの女性団体のメンバーが21日午前、ソウルの日本大使館前で福島原発の放射性物質汚染水の海洋投棄を批判し「日本の領土に保管せよ」と要求している=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社
【写真】ソウル女性連帯などの女性団体のメンバーが21日午前、ソウルの日本大使館前で福島原発の放射性物質汚染水の海洋投棄を批判し「日本の領土に保管せよ」と要求している=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社
【写真】ソウル女性連帯などの女性団体のメンバーが21日午前、ソウルの日本大使館前で福島原発の放射性物質汚染水の海洋投棄を批判し「日本の領土に保管せよ」と要求している=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社
【写真】ソウル女性連帯などの女性団体のメンバーが、約1000人の市民が署名した「日本による放射性物質汚染水の海洋投棄阻止」署名用紙と「日本の領土に保管」と書かれた核廃棄物保存容器の模型を日本大使館に渡すために移動している=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社
【写真】ソウル女性連帯などの女性団体のメンバーが、約1000人の市民が署名した「日本による放射性物質汚染水の海洋投棄阻止」署名用紙と「日本の領土に保管」と書かれた核廃棄物保存容器の模型を日本大使館に渡そうとしたが、警察に阻止された=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

キム・ジョンヒョ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-21 13:47
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「建設労働者の焼身自殺から50日…労組・政府関係の対立はより極端な構図に=韓国」

2023年06月27日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-06-26 10:17
■建設労働者の焼身自殺から50日…労組・政府関係の対立はより極端な構図に=韓国
 「強硬鎮圧対退陣デモ」悪化の一途をたどる

【写真】21日午前、メーデーの日に焼身自殺した建設労働者のヤン・フェドンさんの葬儀の列が、ソウル大学病院葬儀場で出棺ミサを終えた後、路祭の開かれるソウル西大門区警察庁に向かって移動している=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の「建暴(建設労組を暴力集団と表現した新造語)攻撃」に抗議してメーデーの日に焼身自殺した建設労働者の故ヤン・フェドンさんは、結局政府から謝罪を受けることなく、21日に出棺が執り行われた。ヤンさんが亡くなって50日目。その50日の間、政府は謝罪を要求する労組の集会を「強硬鎮圧」し、労組は「政府退陣闘争」で対抗して、労政関係は最悪に突き進む様相だ。
 民主労総建設労組は17日から5日間行われたヤンさんの労働市民社会葬を終え、この日午前、ソウル大学病院葬儀場で出棺ミサを行なった。続いて午前11時に西大門区(ソデムング)の警察庁前で路祭(路上で行う祭祀の儀式)を、午後1時に光化門(クァンファムン)の東和免税店前で告別式を行った。
 政府・与党はヤンさんの葬儀最終日までついに謝罪しなかった。むしろこれまでの労組に対する政府の強硬基調をあおり立てた。与党「国民の力」のキム・ギヒョン代表は20日、国会本会議の交渉団体代表演説で「尹錫悦政権になって『建暴』が止まった。建設現場の風通しが良くなり、工事現場がうまくいっている」と主張した。さらにウォン・ヒリョン国土交通部長官は先月17日、自身のフェイスブックに、ヤンさんと一緒にいた建設労組幹部が焼身自殺をほう助したという朝鮮日報の報道について「ひょっとして同僚の死を闘争の動力として利用しようとしたのではないか、疑問に思わずにはいられない」と書き込み、陰謀論に加担した。
 政府と労組の衝突は肉弾戦に飛び火する様相だ。これまで労組の会計公開など制度的攻撃に集中してきた政府は、ついに先月、建設労組の2日間にかけての集会を契機に集会・デモに対する「強硬鎮圧」態勢に切り替えた。警察はこの集会を不法とみなし、続いて開かれた「非正規職、もうなくそう」共同闘争の2日間集会を強制解散させるなど、物理的衝突が起きた。警察は先の建設労組集会と関連集会およびデモに関する法違反でチャン・オッキ建設労組委員長などに出頭を要求した状態だ。
 このような状況で、韓国労総金属労連のキム・ジュニョン事務処長に対する警察の流血鎮圧は必然的な結果だった。警察は先月31日、全羅南道光陽(クァンヤン)製鉄所で高空立てこもりをしていたキム事務処長に対し、頭をこん棒で何度も殴って引きずり下ろした。こうした警察の過剰鎮圧にもかかわらず、キム事務所長は翌日、特殊公務執行妨害致傷などの容疑で拘束され、21日には最低賃金委員会の労働委員から解嘱された。
 政労使の唯一の対話の場であった経済社会労働委員会の窓口まで閉ざされた。労働界代表として唯一参加していた韓国労総が、7日に経済社会労働委員会への全面不参加を宣言してからだ。労働市場の二重構造、労働時間改編など議論しなければならない懸案は山積みだが、経済社会労働委員会が再稼動する可能性はなさそうだ。大統領室の主要な関係者は8日、「経済社会労働委員会維持のために労働政策の原則を変えることはしない」とし、強硬基調を再確認した。
 悪化の一途をたどる労政関係は破綻に突き進むもようだ。民主労総と韓国労総はそれぞれ、ヤン・フェドンさんの焼身抗議自殺、キム事務処長の流血鎮圧により、「政府退陣闘争」を全面化した。さらに民主労総は7月の2週間一斉ストを予告しており、今後、労組と政府が衝突する可能性がある。イ・ビョンフン中央大学教授(社会学)もハンギョレの電話インタビューで「現在のところは政府が労組と対話をしようという動きは全くないようだ。むしろ労組が7月の一斉ストなどを予告した状況で、労組に対する政府のさらなる圧迫が続きかねない」とし、「今よりもっと極端な対決構図があらわになるだろう」と話した。
キム・ヘジョン記者(お問い合わせjapan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2023-06-25 11:57


「The Hankyoreh」 2023-06-14 11:15
■建設労組幹部たちが語る…「正当な労組活動」の夢、混乱、そして涙=韓国
 「驚くべき成果」である建設労組の団体協約をもって 
 現場交渉する地域幹部らの涙

【写真】先月16日、ソウル世宗大路で開かれた建設労組弾圧中断要求一斉スト決起集会で、建設労組の故ヤン・フェドンさんに対し黙祷する参加者たち/聯合ニュース

 7章に分けられた28条項、附則4条項からなる5ページの団体協約。
 特別なことは何もない。「週40時間の労働と有給休日賃金支給基準(補充協約)、組合員であることを理由に雇用などで差別をしないこと、労組専従者の活動を保障すること、紛争の平和的解決」などが書かれている。勤労基準法と労働組合法が規定した内容を確認し、現場の状況に合わせて一部を具体化した程度だ。2021年に建設労組土木建築分科と専門建設業者が結んだ団体協約は、今年まで全国の型枠大工、鉄筋工など土木建築分科の組合員3万8000人余りの大半に適用される。
 何も特別なことはなさそうな団体協約とその後の交渉過程について話していた時、建設労組忠清南道支部のイ・サンホさん(59)、光州・全羅南道支部のイ・ジュンサンさん(42)、釜山・蔚山・慶尚南道支部のキム・テミンさん(55)はそれぞれの姿で例外なく涙を見せた。突然の涙に戸惑い、眼鏡拭きで素早く目頭を拭う者。涙ぐみながら話を続ける者。言葉を止めてため息をつく者。イ・ジュンサンさんが言った。「この数ページの団体協約に、実に多くの人の汗と涙が込められているんです」
建設労組の団体協約は、労働制度の死角地帯に置かれた不安定労働者たちが企業を越えた規模の労組として団結し、使用者(事業者)団体に属した企業と当該産業の労働条件全般に影響を及ぼす枠組みを作ってきたという点で注目された。正規職中心の「企業別交渉」が当然な職場の現実において、このような交渉は労働市場の二重構造と不平等を克服する代案と見なされた。三人は建設労組の団体協約を現場で適用するよう要求し、管理する仕事をしてきた。それは、先月1日に自ら体に火をつけて亡くなった建設労組江原支部のヤン・フェドン支隊長が「正当な労組活動」と遺書に書いた仕事、「共同恐喝」の容疑などで起訴された仕事と同じだ。だからこそ、泣いている三人は「ヤン・フェドンたち」だといえる。

【写真】建設労組大田・世宗・忠清建設支部の団体協約//ハンギョレ新聞社

 「ヤン・フェドンたち」は建設現場を越えたところにもいる。産業の特性により失業状態にある場合が多く、勤労基準法上の労働者性が完全には認められない、あるいは使用者が曖昧な下請け・特殊雇用労働者の様々な交渉と団体協約は、最小限の労働条件を守る命綱だった。2023年春、ようやくつかんだと信じていた交渉と団体協約を奪われた貨物労働者やプラットフォーム労働者も、同じ恐怖を訴えた。「私たちの要求も恐喝、脅迫だったのでしょうか」(配達プラットフォーム労組のホン・チャンイ委員長)「身一つで競争に追い込まれることになりました」(貨物連帯釜山地域本部のコ・ジョンギ梁山支部長)。
 ハンギョレはソウルで建設労組の1泊2日闘争が繰り広げられた5月16~17日、ヤン・フェドンさんと同じ仕事をしていた建設労組の地域幹部たちに会い、労組加入から団体協約締結、そして最近の状況に至るまでに体験した希望と混乱、挫折について話を聞いた。さらに、似たような境遇に置かれた貨物労働者やプラットフォーム労働者に会った。不安定労働者の交渉と団体協約を対象にした政府の攻勢の中で、韓国社会が失いつつあるものは何かを振り返るために。

◆団体協約 : 定着、公正、自負心
 仕事を求めて渡り歩いていた三人の建設労働者が労組に集まった時点はほぼ同じ、2010年代半ばだった。忠清道出身の建設労働者であるイ・サンホさんの30年余りの建設労働者人生にまつわる記憶も、労組加入以前はほとんどが故郷の外にある。「1986年アジア大会の時、1日7~8千ウォンもらって城南(ソンナム)に橋を架けていたのを覚えています。その頃から渡り歩いて働きました」。彼が会社と雇用関係を結んだ期間は長くて1年。勤続期間1年未満が94.3%(2021年基準)に達する建設業では当然のことだった。雇用の不安定さは、滞在先の不安定さと一致する。「オヤジ(チーム長)を通して人づてに仕事を見つけましたからね。『現場が巨済島(コジェド)だが行けるか』と言われたら行かないといけません。済州島(チェジュド)に行った時は雨がたくさん降って、お金も稼げずに帰ってきました。家族とゆっくり食事をすることもできませんでした」。組織され始めたばかりの建設労組忠南支部に2015年に加入し、イ・サンホさんは初めて定着した。組合が地域内で働き口を提供してくれたおかげだ。
 キム・テミンさんもその頃、「こんな生活を続けるくらいなら」という思いから、建設労組釜山・蔚山・慶南支部を訪ねた。彼は「下手をすると3カ月以上、日常的には1カ月分の賃金を踏み倒され、いざオヤジについて現場に行ってみれば『工事代金はこれしかない。これだけでやってくれ』と言われることも日常茶飯事だった」と語った。彼が労組活動を始めたばかりの2015年基準で建設業の未払い賃金額は2488億ウォン(約250億円)、全産業の賃金未払いの19.1%を占めた。イ・ジュンサンさんは「そんなとき不満を言えば、顔にお金を投げつけられ『出て行け』と言われるのもずいぶん見てきました。チーム長以上とは目を合わすこともできないんです」と語り、その頃の「対等であり得なかった」労使関係を伝えた。
 定着、公正な報酬、対等な労使関係を夢見て、三人は建設労組に入った。入ってくる労働者が増え、大邱・慶北(2006年)を皮切りに光州・全南(2013年)、釜山・蔚山・慶南(2015年)等の地域で、労組と地域の企業が圏域別に団体協約を結び始めた。次第に広がっていったこの動きは、2017年、ついに建設労組土木建築分科(型枠大工や鉄筋工などが組合員である分科)が全国200余りの専門建設業者(鉄筋コンクリート連合会)と中央交渉をする段階に至る。マンション団地など規模の大きい工事を行う専門建設業者のほとんどが団体交渉に含まれた。民主労働研究院のイ・チャングン研究委員は「厳しい環境で労組を組織し、使用者を集めて交渉の場に出させ、具体的な賃金水準と労働条件を対等に決めた建設労組の成果は非常に驚くべきこと」だと指摘した。
 「中央交渉→圏域単位の補充交渉と団体協約締結→業者が地域に現場を設けたら、地域幹部らが団体協約履行を要求し、労使関係を管理」する建設労組と会社との関係が定着した。賃金協約および団体協約に含まれた労働条件は組合員だけを対象としたものだが、自然に建設労働全般に影響を及ぼした。建設労組と会社が合意した賃金水準は、建設業の標準賃金となる役割を果たした。2018年に1万5千人程だった建設労組土木建築分科の組合員数は、現在3万8千人ほどに増えた。キム・テミンさんは「多様な業種の労働者が労組加入したいと言って訪ねてきた」と言った。
 建設労組の地域幹部になった三人は、団体協約をもって各地域で工事を始める業者を訪ねて行った。イ・ジュンサンさんは「そんな時には、私たちが現場を構造的に変えるんだという自負にあふれていた」と語った。そして「ヤン・フェドンさんもそうだったろう」と付け加えた。

◆過渡期 : 葛藤、交渉、理解
 三人は「団体協約の解釈と履行をめぐって交渉初期に混乱があった」という点を否定しなかった。ただ「労使が自ら接点を探ろうとしていた時期だった」と説明した。
 イ・ジュンサンさんは「光州地域も最初の3~4年は過渡期を経験した」と語った。労使関係の概念が希薄な建設業に交渉と団体協約、履行が定着するには時間が必要だった。「会社は労組のチョッキを見ただけでもドアにカギをかけてしまいました。『我々は不法請負を使う』とあからさまに言う業者もありました。組合員もいない各種の労組が民主労総建設労組の団体協約書に印鑑だけ押して労組専従費だけ取っていくという実際の“たかり”もあったし、会社側に無理な要求をする組合員もいましたから」。
 最大の問題は雇用だった。短期入職と失職が繰り返される労働環境で、地域に定着できる働き口の持続的な供給は労組の重要な役割だ。再下請けなど不法雇用を最小化し、建設業の労働条件を建設労組の団体協約水準に改善するためにも、組合員の一定した雇用が維持されねばならなかった。ただし、現在の制度で労使が雇用問題を交渉対象にできるかどうかは明確でない。不完全な制度のもと、建設労組の団体協約は雇用に関しては、「組合員優先採用」の代わりに「会社は開設される現場に組合員であるという理由で雇用を差別しない」という一種の妥協地点を見いだした。その解釈をめぐって業者と論争し、妥協点を見いだす仕事が地域幹部に任された。
 キム・テミンさんは「我々の地域のこの職種の組合員の割合を示して、この程度の工事規模で差別のない組合員雇用人員はどれくらいかを提示した」と説明した。イ・サンホさんは「労組法を提示して交渉拒否は不当労働行為だと主張したりもした」と話した。集会やデモを行ったり、会社の産業安全保健法違反を通報する場合もあった。雇用されていない状態では団体行動権である争議行為が制限されるので、集会・デモ・不法通報など市民の一般的な権利を活用したわけだ。
 ただ、最近になってより根本的な妥協点が生まれた。イ・サンホさんは「私たちが状況を突破していく方式は、仕事で勝負すること」だと言った。「現場の組合員に『仕事ができなくてはいけない』と小言をたくさん言いました。4、5年ほどそうやって仕事の腕を磨くように言って、今では外部の業者が初めて私たちの地域に入ってきたら、まず周りに一度聞いてくるように言います。私たちが仕事の腕がよくないと言われたら、組合員を入れませんからって」
 組合員と会社の間に対立が生じた時に労組がこれを仲裁するという役割も、会社に提示する「ニンジン」だった。キム・テミンさんは「客観的に見て労働者が無理なことを言っていれば、組合員を説得したり他の現場に移したり、地方労働委員会まで行った事件では会社側に立ったこともある」と説明した。小規模で不確実な雇用関係が蔓延したために「労務管理」の概念が希薄な会社(下請け)に代わって、労組幹部は労働者を督励し、会社との対立を最大限解決していく労務担当者のような役割も担った。
 イ・ジュンサンさんは「特に地域では、日常的に会社と対話が行われた結果、労組と専門建設業者が互いの事情を理解するようになって一種の『信義誠実の原則』が生まれた」として「彼らも元請けとの関係では最低入札制で入ってくるしかない『乙(社会的弱者)』であり、これを考慮して私たちも譲歩するところは譲歩すべきだと考えるようになった」と語った。避けられない労使の摩擦を、処罰ではなく自律的な交渉で解決し、「労働争議を予防・解決することにより産業における平和の維持と国民経済の発展に寄与する」というのは、労組法第1条に書かれた志向点だ。労働者の数と現場の規模が小さい地域から、労組法の志向が徐々に定着しつつあった。

◆崩壊 : 弾圧、葛藤、涙
 昨年末から始まった建設労組に対する政府の大々的な捜査は、このような交渉過程をターゲットにした。三人はそれぞれ捜査機関の取調べを受けた。公正取引委員会と雇用労働部などがそれぞれ公正取引法、採用手続き法違反などを挙げて取り締まりに合流した。大統領は建設労組を「建暴(建設労組暴力団)」と呼んだ。
 建設労組の組合員2万5千人が集まって「建設労組は正当だ」と叫ぶかたわらで、イ・サンホさんが涙声になって話す。「苦労して作ってきた労使関係が、恐喝、脅迫、建暴という言葉で全て崩れてしまったのです。団体協約は紙切れになり、現場での対話は途切れてしまいました」。彼はついに涙をこぼした。「申し訳なくて。組合員たちに申し訳なくて。仕事に就けないでいる組合員が多いのに、よく話をしていた業者たちも会ってくれません。これらが全部自分のせいのように思われて。ヤン・フェドンさんもそんな気持ちだったんじゃないでしょうか」
 建設労組に対する政府の圧迫は、不法に対する取り締まりと処罰を越えて、現場で労組の交渉と団体協約を切り崩しているものとみられる。建設労組が15~17日に土木建築分科の組合員を相手に緊急アンケート調査をした内容によれば、回答者2262人のうち、現在失業中の労働者は27%だった。建設労組のチョ・ウンソク政策局長は「組合員雇用が昨年12月より30%ほど減り、多いところでは70~80%減った支部もある」と話した。「最近(現場で)民主労総の組合員の雇用に対してどのような態度の変化があるか」という質問に対し、回答者610人中346人(56.7%)が「民主労総の組合員は初めから使おうとしない」と答えた。イ・サンホさんは会社との対話が定着してからはほとんど行わなかった「工事現場早朝集会」を、今年に入って毎日行っている。対話が消えたところに対立が始まった。
 建設労組の組合員が感じる恐れは、何よりもこの間の交渉と団体協約履行で積み上げてきた「建設現場で働く基準」が崩れているという点だ。「建設会社の態度にどんな変化があったか」という質問(複数回答、回答数4219)で、建設労組組合員の32%が「現場に不法雇用された労働者が多くなった」と答えた。「会社側が作業のスピードを上げることを強要する」(16.3%)や「作業が残っているにもかかわらず現場から出ることを要求する」(14.6%)という回答もあった。イ・ジュンサンさんは「建設現場の問題に政府が介入するとしても、不合理な構造はそのままにして労組だけを一方的に叩くのであれば、建設業は10年、20年前の、基準もなく不法が横行していた時代に戻るだろう」として、「そうすればまた労組はその不合理さを乗り越えて激しくならざるを得ないのに、なぜこういう非効率的な戦いを繰り返すのか分からない」と言った。
 恐れと申し訳なさと涙でつづられた1泊2日を終え、三人は17日に再び自分の地域に戻った。今後、交渉を復元し団体協約の意味を取り戻すために奔走するだろう。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は建設労組の1泊2日の集会に対して「いかなる不法行為も放置、無視、あるいは容認しない」と発言した。続いて25~26日、下請け、特殊雇用労働者など非正規職が労組法第2条・第3条の改正を通して団結権・団体交渉権・団体協約締結権を要求するために開いた1泊2日の集会では、非正規職労働者三人が連行された。
 ヤン・フェドンさんの死に込められた意味、不安定労働者の労使関係をめぐる希望と挫折、消えた労使の対話が産業秩序に及ぼす影響に関しては、ここでは言及しなかった。

パン・ジュンホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-05-30 20:20
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日本最大の漁業者組織「全漁連」、汚染水海洋放出に改めて反対決議

2023年06月26日 | 
「The Hankyoreh」 2023-06-23 07:15
■日本最大の漁業者組織「全漁連」、汚染水海洋放出に改めて反対決議
 日本の漁業関係者組織が「海洋放出反対」の特別決議

【写真】福島第一原発敷地内のタンクに保管されている放射性物質汚染水/AP・聯合ニュース

 福島第一原発に保管されている放射性物質汚染水の海洋放出が目前に迫っている中、日本最大の漁業関係者組織である全国漁業協同組合連合会(全漁連)が「汚染水の海洋放出に反対する」という内容の特別決議を採択した。全漁連の反対表明の決議は今回で4年連続となった。
 全漁連は22日、東京で通常総会を開き、汚染水の海洋放出に対する反対決議を採択した。同団体は決議で「(福島第一原発)廃炉に向けた取り組みを否定するものではない」としつつも、「(汚染水の)海洋放出に反対であることはいささかも変わるものではない」と明らかにした。
 全漁連は、東京電力が8年前にした約束を守るべきだと求めている。東京電力は2015年8月、社長名義で汚染水の海洋放出と関連し、「(漁業)関係者の理解なしには、いかなる処分もしない」と文書で約束した。これは福島県漁業協同組合連合会の要請で作られたものだ。だが、日本政府と東京電力は漁業関係者たちの反対にもかかわらず約束を無視し、今夏頃に海洋放出を進めている。
 朝日新聞は「2015年の文書を理由に、福島の漁協などからは『(政府による)約束はどうなっているのか』などの反対の声が相次いでいる」と報じた。
 決議では、日本政府が漁業関係者の被害に備えて基金(計800億円)を創設し、汚染水の安全性を積極的に説明していることについては「重く受け止める」と評価した。
 全漁連の坂本雅信会長は22日、西村康稔経済産業相と面会し、決議文を手渡した。全漁連は全国に組合員が約30万人である日本最大の漁業関係者組織だ。
東京/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-22 17:44


「The Hankyoreh」 2023-06-22 07:02
■日本の汚染水処理施設の故障は8件?…「フィルター24個の故障を1件に」
 政府発表の8件は原因別にまとめた事例の件数 
 現場視察参加専門家、定例会見で明らかに

【写真】クォン・オサン食品医薬品安全処次長(左から2番目)が21日午前、ソウル鍾路区の政府ソウル庁舎で開かれた福島原発汚染水関連の定例会見に出席し、日本産水産物の輸入検査体系について説明している/聯合ニュース

 日本の福島原発汚染水を処理する多核種除去設備(ALPS)の故障発生件数が、機器別にみると少なくとも30件を超えることが分かった。韓国政府はこの10年間、ALPSの主な故障事例は8件だと明らかにしてきたが、実際の故障件数がさらに多いことが明らかになり、汚染水海洋放出の安全性と直結したALPSの信頼度に対する疑念がさらに深まるものとみられる。
 原子力安全技術院のキム・ソンイル放射線廃棄物評価室責任研究員は21日、福島原発汚染水関連の定例会見(毎日実施)で「2021年度にHEPAフィルターという排気フィルターの故障が1件発生したが、この件を機に(他の機器にある同じ)排気フィルターを全数検査したところ、全体25個中24個で故障が見つかった」と述べた。
 現場視察団が東電から受け取ったALPSの主な故障事例(8件)リストの資料には、2021年8月にALPSのHIC排気フィルターの損傷が1件あったと記載されているが、機器別にみると故障件数は24件でさらに多いという趣旨の話だ。また、「東電がそれ(同じ種類の故障)を一つの故障事例とみて、原因と対策を一つにまとめて処理しているものと理解すればよい」と説明した。
 キム研究員は福島現場視察に参加した専門家の一人だ。この発言は「2013年から2022年までの10年間、ALPSで計8件の主な故障事例を確認した」(16日の定例会見)という韓国政府の発表とは異なり、故障事例がさらにあったという報道が事実ではないと釈明する過程で出たもの。キム研究員は「重要なのは機器の性能を維持しているかどうか」だと語った。
キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-22 02:11


「The Hankyoreh」 2023-06-21 07:32
■日本の議員の訴え「海は共有財産…汚染水は固体化して保管し、のちに再利用を」
 [インタビュー]立憲民主党の阿部知子衆議院議員 
 「海は共有財産…周辺国の理解が必要」

【写真】立憲民主党の阿部知子(74)衆議院議員=東京/キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 「東京電力の言うように多核種除去設備(ALPS)で汚染水を何度もろ過して放射性物質を最大限除去することが必要だ。汚染水の放射性物質を基準値以下に下げた後、セメントや砂などを混ぜて固体で保管すればよい。このコンクリートをのちに防潮堤などに再利用できる」。
 立憲民主党の阿部知子衆議院議員(74)は、目前に迫った福島第一原発の汚染水の海洋放出について、「海は共有財産」だと述べつつ、汚染水を固体にして日本国内に置き、後に再利用しようという新たな代案を提示した。
 また「日本政府とIAEAは、処理汚染水の海洋放出が長期間続いた時、環境や人体に与える影響についても深く研究していない。放射性物質を海に捨ててはならない」と訴えた。
 日本の超党派議員の集まり「原発ゼロ・再エネ100の会」で活動しつつ、汚染水放出の問題点を粘り強く訴えている阿部議員のインタビューは、15日に東京都千代田区の衆議院議員会館で行われた。韓国は「汚染水」、日本は「ALPS処理水」と呼んでいることについて阿部議員は、ALPSで処理しても依然として汚染水だと述べつつ、「ALPS処理汚染水」という用語を使っていると語った。

-日本政府は、今月中にIAEAから最終報告書が発表されれば、これを根拠として福島第一原発の汚染水を今年の夏ごろ海に放出する予定だ。
 「日本政府が決定し、日本の原子力委員会、IAEAが大丈夫だと言ったからといって済む問題ではない。海は共有財産であり、広くつながっている。海洋放出を強く憂慮する人々と周辺諸国の理解がなければならない。そもそも『ロンドン条約』や議定書では、海に放射性物質を投棄してはならないと定められている。IAEAの一般安全指針(GSG-8)には、『その行動によって個人と社会に予想される利益は、その行動による害悪よりも大きくなければならない』という原則がある。汚染水の放出が100%安全とは言えない中、日本だけでなく韓国の漁民、太平洋の島しょ国などが強く反対している。利益はなく危険が存在するのなら、海洋放出はしてはならない。IAEAはこの部分をまったく検討していない」。

-日本政府は、ALPSで放射性物質を基準値以下に下げ、除去できないトリチウム(三重水素)は海水で希釈して放出すれば安全だと主張している。
 「福島第一原発は(2011年3月に)事故が起きた原子炉であるため、セシウムやストロンチウムなどのあらゆる放射性物質が汚染水には含まれている。経済産業省と東京電力は、どれだけの量の放射性物質を海に捨てることになるのかは語らない。希釈だけに焦点を当てており、放射性物質の総量に対しては何の検証もない。基準値以下にして薄めたとしても巨大な量の処理汚染水であるため、放射性物質の総量は無視できない。処理汚染水の放射性物質測定核種も64種から30種に縮小された。リスクを評価するためには、できうる限り確認しなければならない。日本政府とIAEAは、処理汚染水の海洋放出が長期間続いた時の環境や人体への影響についても深く研究していない。また日本は福島第一原発の2051年の廃炉を目指しているが、これは不可能だ。廃炉になるまで汚染水は発生し続ける」。

【写真】福島第一原発の敷地内のタンクに保管中の放射性物質汚染水/AP・聯合ニュース

-汚染水の安全性にかかわるALPSの性能も争点だ。
 「ALPSの性能を確認するための資料は不十分。汚染水が保管されている1千基を超えるタンクのうち、試料を採取して64の核種を分析したのはごく一部だ。K4、J1-C、J1-Gの3つのタンク群に対してのみだ。さらに大きな問題は、(東京電力に確認したところ)これらの試料採取の過程で攪拌(かくはん)作業も行われていないこと。相対的に放射性物質の濃度が低いタンクの上部から試料を採取したということだ。ALPSの性能を確認するための資料は信頼できないということになる。これはごまかし行為だ。東京電力は、処理汚染水の海洋放出前の核種測定の際に攪拌するため問題はないという立場だ」。
(※先月23~24日に福島第一原発を訪問した韓国視察団は、ALPSの注入口と出口における64の核種の濃度を分析した2019年から昨年までの原資料を確保したことを成果として掲げたが、この資料の実効性に疑問が提起されたことになる)

-汚染水はどのように処理すべきだと思うか。
 「放射性物質は、環境や人間を保護するためには閉じ込めておかなければならない。これが原則だ。まだ間に合う。東京電力の言うように、ALPSで汚染水を何度もろ過して放射性物質をできる限り除去することが必要だ。汚染水の放射性物質を基準値以下に下げ、その後、セメントや砂などを混ぜて固体として保管する『モルタル固化』という方法で保管すればよい。専門家は、このコンクリートは後に防潮堤などとして再利用できるという。汚染水のように福島第一原発に保管し続ける必要もない。汚染水処理は、政治的論争より環境を守るために皆で知恵を集めなければならない問題だ」。

-最近の世論調査によると、日本国民の60%が汚染水放出に賛成している。日本の雰囲気はどうか。
 「福島第一原発の周辺は暖流と寒流が出会う非常に良い漁場だ。海を守りたいと思っている漁民は強く反対している。世論は60%が賛成というが、国民には正しい情報が与えられていない中、日本は全体的に原発についての雰囲気が変わりつつある。(原発の運転期間が60年以上に伸びるなど)東日本大震災の前に戻っている感じがする。原発事故が過小評価され、あの日の教訓を忘れさせている。汚染水の放出問題も、トリチウムは一般の原発からも出ており、十分希釈すればよいと原子力規制委員会も考えているが、汚染水の実態はそうではない。海の環境を国際的にどのように守っていくかに対する認識がない。これはただのトリチウムではなく、事故を起こした原発から出る汚染水だという考えが足りない。原発事故から12年がたったが、セシウムなどの放射性物質に汚染された魚が今もとれる。果てしなく生物濃縮が起こっている。海は広くて薄まるからといって、放射性物質の海洋投棄をしてはならない。もっと公開的で民主的なやり方で汚染水の問題を議論していきたい」
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-20 16:56


「The Hankyoreh」 2023-06-21 10:13
■韓国の野党議員、汚染水放出反対訴えハンストに突入

【写真】「福島第一原発の汚染水放出反対」を訴えハンストを開始した共に民主党のユン・ジェガブ議員が20日午前、ソウル汝矣島の国会本館前で議員たちの激励を受けている/聯合ニュース

 日本による福島第一原発の汚染水放出が迫る中、20日に開かれた韓国国会の農林畜産食品海洋水産委員会(農海水委)の懸案質疑では、与野党が汚染水放出の安全性をめぐってまたしても激突した。与党「国民の力」は、野党「共に民主党」が政治的利益を得るために「怪談」によって国論を分裂させていると主張し、民主党は国民たちの懸念を怪談と罵倒していると応じた。
 民主党のユン・ジェガブ議員はこの席で、「福島第一原発の汚染水放出は国民の命と安全にとって脅威であるばかりでなく、水産業そのものを根こそぎ壊滅させる放射能テロ」だとし、「覆水盆に返らずで、原発汚染水の海洋放出が始まれば何の対策もない」と述べた。汚染水放出の直撃を受けうる全羅南道の海南(へナム)・莞島(ワンド)・珍島(チンド)選出のユン議員は、この日から国会本庁前で汚染水放出反対を訴えるハンストに突入した。
 国民の力のパク・トクフム議員は「科学を無視して怪談によって恐怖を造成すれば、その被害はそのまま国民に回ってくる」とし「(2008年のBSE問題のように)事実には関心がなく、ひたすら政治的利益ばかりを追求する野党」と攻勢に打って出た。これに対し民主党のユン・ジュンビョン議員は「国民の懸念を政府与党は怪談とみなし、似非科学と罵倒し、ひねり潰そうとしている」と批判した。
 与党は「政権が変わったら民主党は言うことを変えた」と主張した。国民の力のホン・ムンピョ議員は「2020年に文在寅(ムン・ジェイン)政権は合同タスクフォース(TF)を設置し、福島第一原発の汚染水について懸案報告を行っているが、その報告書で『汚染水(放出)が及ぼす影響は微々たるものだ』と述べている」、「これが民主党の実体」だと主張した。これに対し無所属のユン・ミヒャン議員は「合同TFの報告書は文在寅政権の立場をまとめた報告書ではなく、国内動向として専門家の中にはこのような意見を持っている人がいると明らかにした報告書」だと反論した。
 与野党は、民主党のイ・ジェミョン代表が17日に仁川(インチョン)地域の「福島第一原発汚染水海洋投棄反対糾弾大会」に参加し、汚染水を「核廃水」と呼んだことについても攻防を繰り広げた。「2021年にムン・ソンヒョク海洋水産部長官が国際海事機関(IMO)に送った公文書では『核廃水』となっている」(民主党のウィ・ソンゴン議員)との主張がでる一方、パク・トクフム議員は「野党第1党の代表(イ・ジェミョン)が汚染水を『核廃水』と呼ぶと主張し、科学と常識を弄んでいる」と述べた。
オム・ジウォン、カン・ジェグ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-20 18:09


「The Hankyoreh」 2023-06-21 10:18
■「釜山市長は核汚染水放出問題で日本をITLOSに提訴するよう政府に建議すべき」

【写真】釜山の市民団体が20日、釜山市役所前広場で記者会見を行い、パク・ヒョンジュン釜山市長らに福島第一原発の核汚染水の海洋放出問題で日本をITLOSに提訴するよう求めた=キム・ヨンドン記者//ハンギョレ新聞社

 釜山(プサン)の市民団体はパク・ヒョンジュン釜山市長に対し、日本による福島第一原発の核汚染水の海洋放出を止めるために、国際海洋法裁判所(ITLOS)への提訴を尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に建議するよう求めた。
 地域の166の市民社会団体からなる「釜山古里(コリ)原発2号機寿命延長・核廃棄場反対 汎市民運動本部」は20日、釜山市庁前広場で記者会見を行い、「パク市長は市民の命と安全のために、日本政府による核汚染水の海洋投棄を止めるため、ITLOSへの提訴を尹錫悦政権に直ちに建議すべきだ」と述べた。
 同団体は「日本政府は核汚染水の海洋投棄に対してすべての海洋汚染防止措置を取っておらず、日本の地域外へと広がらないようにする措置にも従っていない。これは国連海洋法条約とロンドン条約(海洋汚染防止条約)に明確に違反するもの」だと主張した。
 同団体はまた「2020年に釜山、蔚山(ウルサン)、慶尚南道、全羅南道、済州道の5つの広域自治体は沿岸5市道協議体を結成し、日本による核汚染水の海洋放出阻止に向けた共同対応の取り組みを開始している。パク市長は市道協議体を通じて、日本政府をITLOSに提訴するよう、尹政権に建議すべきだ」と述べた。
 ハンサリム釜山のチャン・ビョンユン理事長は「市民の食の安全を脅かし、漁民の生業を危機に陥れる問題に対して、釜山市は手をこまねいている。パク市長は今からでも漁業者の被害や水産物の安全などの対策をきめ細かく準備するとともに、直ちに民間協議体を設置して強く対処してほしい」と注文した。釜山YMCAのオ・ムンボム事務総長は「政府がなしうる唯一の方法は、日本政府をITLOSに提訴することだ。市民、国民の安全は何ものにも代え難い。尹政権が国民、市民の安全を優先する政権なのかどうかしっかり目を見開いて見守る」と述べた。
キム・ヨンドン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-20 13:06


「The Hankyoreh」 2023-06-20 08:27
■IAEA中間報告書を分析すると…日本の汚染水放出への「丁寧なコンサルティング」

【写真】ソウル大学の海洋研究所所長・地球環境科学部教授のチョ・ヤンギ氏が19日、政府ソウル庁舎で開かれた福島原発汚染水放出に関する定例会見で、福島原発事故後に研究されたセシウムの表層拡散シミュレーションを説明している/聯合ニュース

 国際原子力機関(IAEA)は、日本の福島原発汚染水の海洋放出計画の安全性を検討した最終報告をまもなく発表する。汚染水の海洋放出を推進する日本はもちろん、圧倒的な放出反対の世論に包囲されている韓国政府も、この報告書は客観的かつ科学的な検証の結果だとし、大きく意味付けている。
 だが、IAEAが6回にわたって発表した中間報告書の内容を詳しくみると、汚染水の海洋放出を難しくする方向に結論が出る可能性がほとんどないというのが、大方の評価だ。なぜそのような評価が出てくるのかを調べてみた。

◆「海洋放出支援プロジェクト」として始まったIAEAの安全性検討
 IAEAは2021年9月、所属職員および韓国、米国、中国、英国、フランス、ロシア、アルゼンチン、ベトナムを含む11カ国の原子力専門家で特別チームを構成し、日本の福島原発汚染水の放出の安全性に対する検討を進めた。韓国からも、原子力安全技術院(KINS)のキム・ホンソク博士が参加している。
 国際的に発言力を認められている機関を通じて、韓国を含め利害関係が絡む11カ国の専門家が参加する検証であるだけに、結果が客観的かつ科学的である点は否定できないだろう。問題は、今回の安全性の検討の究極の目的が、「福島原発汚染水を海洋放出しても問題ないかどうか」を判断することではないという点だ。
 IAEAは、安全性の検討を始めた背景について「(2021年4月に海洋放出の計画を発表した直後に)日本が放出を安全に履行できるよう放出計画と関連活動のモニタリングと検討を支援するよう要請し、それを受け入れた」と明らかにしている。
 つまり、福島原発汚染水を海洋放出しても問題ないかどうかを判断するのではなく、日本が計画した汚染水放出を支援することが、安全性検討の目的だという話だ。「日本の要請」によって「汚染水の海洋放出を前提」になされる検討であるだけに、中立性の側面で根本的な弱点を持たざるをえない。可能性はまずないがIAEAの最終報告書の結論が放出に否定的であったとしても、日本には従う義務もない。

◆日本が同意した範囲内で検討…放射性核種をろ過する「ALPS」の性能は検討対象外
 日本の支援要請で始まったIAEAによる安全性検討は、徹底的に「日本が同意した範囲内で」で進められている。
 日本が要請したのは、「汚染水の海洋放出計画と、それに沿って進められる放出が、IAEAの安全基準を満たしているかどうか」を技術的に検討してほしいということだった。日本とIAEAは2021年7月、IAEAの支援方法などを定義した「付託事項」(ToR:Terms of Reference)に署名し、これに基づき検討の範囲やスケジュールなどを協議して決めた。
 具体的には、放出される処理水(汚染水)の放射能の特性▽放出管理のためのシステムとプロセスの安全性▽放射線環境影響評価(REIA)▽放出のための規制と認可▽処理水(汚染水)と環境のモニタリング・プログラム▽利害関係者の関与▽職業的放射線防護などを含む8点が検討対象だ。
 これによると、福島原発汚染水に含まれる放射性核種を取り除く「多核種除去設備」(ALPS)は検討対象ではないことがわかる。実際、最近までの6回にわたる中間報告書には、ALPSの性能と運営についての内容は含まれていない。ALPSは過去10年の間に8回も故障を起こし、汚染水の海洋放出の安全性を懸念する側が特に信頼性に疑問を呈している設備だ。

◆問題となる点を補う「オーダーメード型コンサルティング」形式で進行
 IAEAがこれまでに発表した6回の中間報告書を読むと、「提案した」「助言した」「認めた」「同意した」などの表現が多く登場することが目につく。言い換えると、IAEAの安全性検討は、「汚染水を海洋放出しても問題ないかどうか」を判断することを重視したものではなく、放出の履行を支援することが目的なのだ。
 そうした目的のもと、IAEAの安全性検討の多くは、特別チームが東京電力と関連の政府省庁である経済産業省、規制機関である原子力規制委員会(NRA)を訪問し、検討テーマに関する説明を聞き、質疑応答と討論を行う形式で進められた。
 質疑応答と討論は、日本の放出計画から安全基準を満たさない部分を発見することにとどまらず、利害当事者を説得するために足りない点を探して補完していく過程として進められた。一言でいうと、汚染水の海洋放出が滞りなく進められるよう、IAEAが日本に「きめ細かいオーダーメード型コンサルティング」を行い、共同して放出計画の完成度を高めていったわけだ。
 一例として、IAEAの特別チームが昨年11月に日本で検討任務を遂行した結果を盛り込んだ第4回中間報告書には、「(放射性物質の海洋拡散)シミュレーションの境界領域の海水中に存在する(低濃度の)炭素-14とヨウ素-129の推定値を(シミュレーションした結果に)加えれば、このような放射性核種の濃度は無視できる程度だということを示すことができる」という提言が含まれている。低濃度で生じる炭素-14などの数値を提示すれば、人々に特に影響がないという印象を与えやすいということを、東京電力側に「親切にコーチング」したわけだ。
 しかも、中間報告書を読むと、IAEAは日本が提出した資料と説明に全面的に依存しながらも、資料と説明の信頼性を確認する「交差検証」を疎かにしていることを示す記述も発見される。
 IAEAの特別チームが昨年2月に出した初の中間報告書で、日本の経済産業省と東京電力が周辺国を含む利害当事者に多くの情報を提供し、透明なコミュニケーションを行ったことを認め、東京電力に対しては「称賛した」とまで表現した内容がその一例だ。昨年6月に公開された第2回中間報告書には、日本の原子力規制委員会が隣国に情報を提供した努力を肯定的に評価した記述もある。
 こうした内容は、日本政府が「放射性物質の放出許可の過程で、情報交換が必要な利害当事者に隣国も含まれる場合がある」と規定した安全基準(GSG-9、「環境に対する放射能放出規制」)をきちんと守っていると評価したものだ。日本側から関連情報をろくに与えられず現状把握に困っている周辺国の立場としては、容易には納得しがたい評価だ。

【写真】日本の福島第一原発にある汚染水の貯蔵タンク。日本はこのように保存している原発事故汚染水133万トンを30年かけて海洋放出する計画だ/聯合ニュース

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-19 20:25


「The Hankyoreh」 2023-06-19 06:44
■汚染水海洋放出の影響、保護者ら心配の声…給食の現場でも悩み深まる=韓国

【写真】福島原発汚染水の海洋放出を控え、15日午後、京畿道水原市勧善区の京畿道保健環境研究院で、農水産物検査部農水産物安全性検査チームの研究員らが水産物の放射能安全性検査を行っている/聯合ニュース

 「原発汚染水の海洋放出が行われるようですが、子どもたちの給食は大丈夫でしょうか」、「水産物や塩が心配ですが、対策はありますか」。
 ソウルのある中学校で働く栄養士のKさん(37)は14日朝、給食のモニタリングに来た保護者からこのような質問を受けた。Kさんは18日、ハンギョレに「福島原発汚染水の海洋放出で、給食の食材に関する保護者の心配がますます高まりそうだが、これといった対策がなく、頭を悩ませている」と語った。
 福島原発汚染水の海洋放出を控え、韓国の市民の食に対する不安が高まり、保護者の間では給食の食材に対する懸念の声もあがっている。塩や海苔など水産物の買いだめ現象で食材の値段が急騰しており、学校給食を担当する栄養士たちの悩みも深まっている。
 Kさんは「現在、政府は放射能検査を経て基準値以下であることを毎回確認すると言っているが、検査数値が確実なのか、子どもたちの健康にどのような影響を及ぼすのか信頼できない状況」だとし、「これといった対策がない中、保護者たちの懸念にどのように対応すれば良いのか分からない状況だ。最近買いだめの影響で塩、海苔の値段が上がっており、給食の単価に合わせて食材を手に入れるのが難しくなりそうだ」と話した。
 ソウルのある初等学校の栄養士のAさんも「今、他の学校の栄養士たちと関連資料とニュースをモニタリングしながら様々な悩みについて話し合っている。12年前、福島原発事故が起きたばかりの頃は、水産物を給食メニューから外したこともあった。ウクライナ戦争ですでに食材の値段が大幅に上がったが、今のような買いだめが続けば給食の品質に影響を及ぼしかねない」と語った。
 学校現場で日本政府の汚染水放出により水産物に対する不安が高まったことを受け、ソウル市管内の小中高等学校に食材を供給するソウル市エコ流通センターは14日、「日本産水産物は納品しない」という公文書を所轄の学校に送った。ソウル市エコ流通センターの関係者は「すでに2020年から日本産水産物は学校に供給していない。しかし最近、保護者の懸念が高まり、『日本の水産物は最初から遮断しており、これから食材放射能検査も強化する』という計画などを知らせた」と話した。
 各教育庁も学校に納品される食材に対する放射能調査を拡大すると発表した。ソウル市教育庁は17日、一部の学校を対象に実施していたサンプリング方式の食材放射能調査をすべての学校の食材に拡大することにした。全羅南道教育庁も5日「水産物に対する放射能検査の強化計画」に基づき、年4回実施してきた水産物に対する放射能検査を年10回に増やすと発表した。
 しかし、食に対する保護者の不安はなかなか収まらない。2歳半の子どもを国公立の保育園に通わせているというイ・ジョンミンさん(34)は、「日本に住む知人から『日本人も済州(チェジュ)や釜山(プサン)に観光に行くと、魚は避けて肉だけを食べる』という話を聞いた。現在、保護者の間では『韓国産も信頼できない』という不安が大きく広がっている」とし、「放射能汚染による影響はすぐ現れるものではない。長い間体に蓄積して問題が現れる可能性もあるのに、政府は『安心せよ』という言葉を繰り返すだけ。具体的かつ明確な根拠を示してほしい」と述べた。
パク・チヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-19 02:45


「The Hankyoreh」 2023-06-19 07:14
■韓国政府与党、放射能調査地点を2倍に拡大へ…最大野党代表「汚染水ではなく核廃水」
 福島原発汚染水の海洋放出対策を議論 
 43カ所の委託販売場で流通前の全魚種を検査 
 水産業界に緊急安定資金の支援も

【写真】共に民主党のイ・ジェミョン代表が17日午後、仁川市富平区の仁川地下鉄1号線富平駅北広場で開かれた「日本による福島原発汚染水の海洋放出糾弾大会」で発言している/聯合ニュース

 韓国の与党「国民の力」と政府は、日本による福島原発汚染水の海洋放出への対応策として、海洋の放射能調査地点を2倍以上拡大し、水産物の大型委託販売場43カ所で流通前の国内産の全魚種に対する検査システムを構築する案をまとめた。野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表は原発汚染水を「核廃水」と称し、政府が国民を欺いていると批判した。
 政府与党は18日、ソウル鍾路区三清洞(サムチョンドン)の首相公館で政府高官と党幹部による協議会を開き、海洋の放射能調査地点を従来の92カ所から200カ所に拡大し、セシウムとトリチウムの濃度分析周期を現行の1~3カ月から隔週単位に短縮することにした。また、水産物の委託販売の80%以上を占める大型委託販売場43カ所に流通前の国内産の全魚種に対する検査システムの構築を進めることにした。政府与党はまた、水産業界に緊急経営安定資金を支援することにした。これらは福島原発汚染水対策に対する世論の不信感を意識した措置とみられる。韓国ギャラップが16日に発表した世論調査結果によると、福島原発染水の海洋放出問題に対する不満が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の職務遂行を評価しない理由の2位に挙げられた。
 民主党は批判を強めている。イ・ジェミョン代表は17日、仁川市の富平(ブピョン)駅近くで開かれた「福島原発汚染水の海洋投棄反対・糾弾大会」に参加し、「核物質にさらされ、それらを含んで流れる地下水は明白に核廃棄物だ」としたうえで、「(国民の力が)『核汚染水』だと(言った民主党関係者を)告発するというから、これからは『核廃水』と呼ばせてもらう。国民が任せた権力で国民をだまし、脅し、生命と安全を脅かす行為をするなら、国民の代理人の資格がない」と述べた。
 一方、政府与党は「釜山(プサン)回し蹴り強姦殺人未遂事件」を機に進められている重大犯罪者の身元公開の拡大に関する法案を速やかに法制化することにした。特に、既に党が検討した「女性・児童対象強力犯罪」などをはじめ「内乱、外患、テロ、組織暴力、麻薬」などの重大犯罪と、起訴された状態の被告人まで身元公開の対象に含めることにした。
カン・ジェグ、ソン・ヒョンス、ソン・ダムン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-18 23:25


「The Hankyoreh」 2023-06-19 05:58
■「海は日本の下水溝なのか」…韓国政府が沈黙する間に世界各国の反対論激化
 [ハンギョレ21] 
 フィジー・中国など周辺当事国、汚染水の放出に明確な反対の声
 
【写真】中国外交部の汪文斌報道官が定例会見を行っている/REUTERS

 「透明性に基づいて客観的かつ科学的な評価をした後に立場を決めることになるだろう」。
 韓米日安保室長会議出席のため6月14日に東京を訪問したチョ・テヨン大統領室国家安保室長は、羽田空港で記者団に対しこのように述べた。東京電力が6月12日、福島原発の核汚染水の海洋放出のための試運転に入ったにもかかわらず、従来の立場から一歩も変わらない発言だ。

 「それほど安全なら、なぜ汚染水を日本にとどめておかないのか」

 福島原発汚染水の海洋放出に明確な反対の意思を明らかにしない尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権とは異なり、周辺の当事国はますます声を高めている。6月3日、シンガポールで開かれた第20回アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で、日本の浜田靖一防衛相を前に「それほど安全なら、なぜ汚染水を日本国内にとどめておかないのか」と問い詰めたフィジーのティコドゥアドゥア内務長官が代表的だ。中国も、日本政府が海洋放出の方針を公にした2022年7月以後「太平洋は日本の下水溝ではない」という表現を用いて、機会あるごとに反対の立場を明確にした。
 「福島原発汚染水の海洋放出は、全世界の海洋環境と公衆保健に関する問題であり、日本だけに限った問題ではない。日本側が内外の強い反対にもかかわらず汚染水の海洋放出を強行するなら、これは非常に無責任な行為であり、世界の世論の支持を得ることはできないだろう」
 中国外交部の汪文斌報道官は、6月14日の定例会見で「福島原発汚染水の放出は『国連海洋法条約』が規定した海洋環境保護および保存義務に違反する行為」だと述べた。これまで中国外交部が強調してきた汚染水海洋放出の反対論理は大きく4つにまとめられる。
 第一に、原発事故で作られた汚染水を人為的に海洋に放出した前例はない。したがって、これによる危険性も予測が不可能だ。
 第二に、日本側は十分な研究と実証を通じて最も安全な汚染水処理方案を設ける意思がなく、ただ経済的側面だけを考慮して海洋放出を決定した。隣国はもちろん、全人類に汚染水による危険と費用を転嫁しようとするも同然だ。
 第三に、国際原子力機関(IAEA)評価団は日本政府の要請により構成され、職務範囲が制限されている。汚染水の海洋放出自体を見るだけで、その他の汚染水処理方案を検討する権限はない。したがって、IAEA評価団の報告書は汚染水海洋放出の「免罪符」にはなりえない。
 第四に、専門家らは、福島原発汚染水は溶け出した原子炉の炉心に直接触れたため、数十個の放射性核種を含有しており、これらの核種の相当数はまだ効果的な処理技術がないと指摘している。一部の半減期が長い核種は、海流と共に広がり生物に濃縮され、自然環境の放射性核種総量を追加で増やし、海洋環境はもちろん人体にも予測不可能な危険を加重させかねない。
 中国外交部の毛寧報道官は今年5月23日の定例ブリーフィングで「海洋放出以外の汚染水処理対策を用意するために周辺国を含む利害当事者と十分かつ意味ある協議が必要だ。人類が予測不可能な危険を避けられるよう、日本政府は科学的で公開的、かつ透明で安全に汚染水問題を処理しなければならない」と強調した。
チョン・インファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-18 18:16


「The Hankyoreh」 2023-06-17 09:12
■韓国政府、日本も行わない「汚染水不安解消」定例会見を毎日実施へ
 汚染水放出計画の安全性に対する懸念に積極的に釈明 
 「韓国の基準の2万倍は事実…そのまま放出ではない」 
 環境団体「そんな時間があるなら、まず影響の把握を」

【写真】国務調整室のパク・クヨン国務第1次長(右から4人目)が15日、政府ソウル庁舎別館で福島第一原発の汚染水放出に関する会見を行っている/聯合ニュース

 韓国政府は、日本による福島第一原発の汚染水の海洋放出に対する国民の不安を解消するためとして、15日から毎日定例会見を行う。
 国務調整室のパク・クヨン国務第1次長は15日、政府ソウル庁舎で行った「福島第一原発汚染水放出に関する定例会見」で「科学的事実にもとづいた情報を頻繁に提供することが必要だという判断に至り、定例会見を毎日実施することとなった」と語った。この日の第1回目の会見にはパク国務第1次長以外にも、海洋水産部のソン・サングン次官が発表者として出席したほか、原子力安全委員会のシン・ジェシク放射線防災局長をはじめとする政府関係者が多数参加した。
 この日の会見で政府は、日本の放出準備作業の進捗状況を説明するとともに、メディアに問題点として指摘された内容について積極的に釈明した。
 パク国務第1次長は、多核種除去設備(ALPS)による処理後も最大で基準値の2万倍の放射性物質が検出されるという報道について、「東京電力が公開している貯蔵タンクの汚染水の核種ごとの放射能濃度を示した資料で、ストロンチウムの濃度の最大値として、リットル当たり約43万3千ベクレルが検出されたという内容」であり、「この検出値が韓国の排出基準であるリットル当たり20ベクレルの約2万倍に当たる数値であることは事実」ではあるが、「基準値を超える汚染水がそのまま放出されるわけではない」と釈明した。パク次長は「日本はこのような汚染水が基準値を満たすまでALPSで浄化し、希釈後に放出すると表明している」と付け加えた。
 東電は汚染水の上澄みだけを試料として採取しているため代表性が足りないという一部の報道について、パク次長は「その試料は国際原子力機関(IAEA)の確証モニタリングのために採取したものではない、目的がまったく異なる試料採取だった」と釈明した。
 福島第一原発の汚染水放出によって被害を受ける漁業者への支援と、海洋環境汚染の回復を主な内容とする特別法案が、12日に国会に上程されたことに関して、海洋水産部のソン・サングン次官は「まだ発生していない被害に対する補償と回復を議論するのは時期尚早」だとし、否定的な立場を明らかにした。ソン次官は「特別法の制定議論は、現段階では慎重な検討が必要だと考えられる」として「韓国の水産物に対する国民の不安を軽くし、怪談などの市場かく乱行為によって水産業界に被害が発生しないようにすることが順序としては先だ」と語った。
 政府は「定例会見は、国民の不安が十分に解消されるまで週末を除いて毎日実施する予定」だと明らかにした。しかし、放出を準備している肝心の日本政府や東電は、このような毎日の会見を行っていない。これについて、環境運動連合のアン・ジェフン活動処長は「日本政府を代弁する内容の会見を毎日実施するというのは、韓国政府のなすべきことなのか」とし「そのような時間にむしろ汚染水放出の影響を把握した方が良いだろう」と述べた。
キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-15 19:07


「The Hankyoreh」 2023-06-17 07:32
■福島原発汚染水を処理するALPS、昨年も故障…10年間で8回も
 韓国政府の定例会見 
 「汚染水が海洋放出されても水産物の輸入禁止は維持」

【写真】パク・クヨン国務調整室国務第1次長が16日、政府ソウル庁舎別館で開かれた福島原発汚染水放流関連の定例会見で、記者の質問に答えている/聯合ニュース

 韓国政府は16日、福島原発事故の汚染水を処理する多核種除去設備(ALPS)で最近まで10年間、計8回の故障が発生したと明らかにした。
 パク・クヨン国務調整室国務第1次長は同日、政府ソウル庁舎で行った「福島原発汚染水海洋放出に関する定例会見(毎日実施)」で、ALPSと関連し、「2013年6月に設置して以来、昨年7月まで8回の故障があったことは視察団が資料を要請して受け取った内容であり、事実だ」と述べた。政府が構成した福島原発汚染水視察団は、先月31日、活動結果報告でALPSの主な故障事例や措置事項などの資料を確保し精密分析していると明らかにした。
 原子力安全委員会のシン・ジェシク放射線防災局長は、故障の具体的な類型と位置に対する質問に「腐食が2013年と2014年に2件あった。フィルター関連では2014年から2020年まで4件、2021年度に1件、(昨年)定期点検の時も1件あった」と答えた。
 ALPSで最近まで故障が発生したことは、ALPSが長期間にわたり安定的に運営されるかについて徹底した検証が必要だという主張を裏付けている。これに関してパク国務第1次長は「視察団が詳細資料を受け取って分析を行っており、これに加えて定期点検の項目や設備維持管理計画などもさらに確保し、ALPSが長期間にわたり安定的に運営される可能性がどれくらいあるかについて詳しく分析している」とし、「結果は最終報告書発表の際に含まれる計画」だと語った。
 同日の定例会見でソン・サングン海洋水産部次官は、汚染水が海洋放出されれば福島を含む近隣8県の水産物輸入禁止措置も解除されるという一部の懸念について、「水産物の輸入禁止措置は原発汚染水の海洋放出問題とは全く違う問題」だと述べた。
 2011年の福島原発事故による大規模な放射性物質流出以後、韓国政府は福島を含む近隣8県の水産物に対して輸入禁止措置を取ってきた。ソン次官は「福島付近で基準値以上の放射能に汚染された水産物が今のように発生する限り、絶対に(当該地域の)水産物の輸入はしない。福島地域が放射能から安全だと科学的に立証され、国民が安全だと感じるまで、政府は輸入禁止の解除を検討しない」と述べた。
 一方、政府の汚染水関連の定例会見について、マスコミと野党などから日本政府を代弁するものだと指摘されていることについて、パク国務第1次長は「定例会見を始めた目的は国民により正確な情報を伝え不安を解消するため」だとし、「そのような目的なら、こうした定例会見はできるだけ多くの形で繰り返し行うのが良いと判断した」と述べた。
キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-16 23:23


「The Hankyoreh」 2023-06-16 10:47
■[寄稿]福島原発汚染水「怪談」、2021年vs2023年
 ソ・ボクキョン|ザ・可能研究所代表

【写真】東京電力が福島第一原発に保管中の放射性物質汚染水の海洋放出の設備試運転を開始した12日午後、国会前で「日本による放射能汚染水の海洋投棄阻止のための第2回全国行動の日全国漁民大会」が開かれている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 6月12日、日本の東京電力が福島原発汚染水を海洋放出するための試運転を開始した。同日、ハン・ドクス首相は、国会の対政府質疑で「行き過ぎた虚偽の事実の流布などによって水産業従事者が被害を受けることが生じた場合、司法当局が適切な措置を取る」と述べた。13日、与党「国民の力」の蔚山市(ウルサンシ)党支部は「汚染水を『核汚染水』と表現したことによって(…)悪意の怪談を流布した(野党)共に民主党の蔚山市党支部の者に対して『虚偽の事実流布』容疑で警察に告発措置を取る方針」だとする声明を出した。14日、国民の力のキム・ギヒョン代表は、フェイスブックに「(共に民主党の)イ・ジェミョン代表と共に民主党が、狂牛病怪談の扇動専門のデモ軍団と手を結び、国民を相手にまたしても非科学的な怪談を作っている」と書いた。
 2023年、政府と与党は、差し迫った汚染水の海洋放出に対する野党や市民団体、漁業者ら利害関係者の批判と懸念に対して、「怪談」あるいは「虚偽の事実」とレッテル張りをし、必要ならば法的制裁も加える方針のようだ。ところが、その基準によると、与党のキム・ギヒョン代表とチョ・テヨン国家安保室長、パク・チン外交部長官ら現政権の関係者たちの2021年の考えは「怪談」なのか、そうではないのだろうか。
 「日本政府は、2021年4月13日、福島原発の汚染水の海洋放出決定を突然発表した。(…)日本政府は、汚染水はきれいで安全に処理されると主張しているが、汚染水の成分に対する透明性が足りず、処理過程に対する科学的検証が不十分で、国際社会が強く懸念している。福島原発汚染水には、人体に致命的となるトリチウムをはじめとする60種類ほどの放射性物質が含まれているが、完全な除去は難しいとするのが専門家らの意見だ。(…)福島原発汚染水の海洋放出は、人類と未来世代の生命と健康に直結する問題であり、海洋生態系の安全と水産業界の生存にかかわる重大な事案だ。したがって、科学的根拠と透明な手続きをともなう、徹底した検証と安全性の確保が必須だ(「日本政府の『福島放射能汚染水』放出決定糾弾および原発汚染水の安全性確保のための大韓民国政府の積極的な対策要求決議案」キム・ギヒョン議員ら16人発議、2021年4月29日)。

【写真】12日午後、国会前で「日本の放射能汚染水の海洋投棄阻止のための第2回全国行動の日全国漁民大会」が開かれている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 「放射能汚染水」と表現すれば「怪談」ではなく、「核汚染水」と言えば「怪談」になるのか。「60種類ほどの放射性物質の完全な除去は難しい」とする専門家らの意見を受け入れた2021年のキム・ギヒョン党代表ら国民の力の議員たちの考えは「科学的意見」であり、2023年に「東京電力の汚染水処理は安全だとは信じがたい」とする野党や市民の意見は「非科学的な怪談」なのか。2021年に日本政府の放出決定を糾弾したことは怪談ではなく、2023年に糾弾をすれば怪談になるのか。いったい政府と与党の「怪談」の基準は何なのか。
 過去2年間、東京電力の汚染水処理技術に画期的な発展があったという根拠はない。政府と与党は7月、「国際原子力機関(IAEA)の最終報告書が出てくれば、客観的根拠が用意される」のだから、その前に様々な批判をすることは「怪談」や「虚偽の事実」に該当するとみなしているようだが、そうした観点であれば、IAEAの最終報告書がいつ出てくるか分からなかった2021年の国民の力の議員たちの決議案こそ、「怪談」ではないだろうか。

【図】「日本政府の『福島放射能汚染水』放出決定糾弾および原発汚染水の安全性確保のための大韓民国政府の積極的な対策要求決議案」(キム・ギヒョン議員ら16人発議)に名を連ねた16人の名前=国会議案情報システムよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 2021年以降、日本政府が「科学的根拠と透明な手続きにともなう徹底した検証および安全性確保」を行ったのかどうかについては、見る観点によって立場が違う。キム・ギヒョン党代表らが、2年前とは違い、日本政府と東京電力の「放射能汚染水」処理を「科学的に」信頼できるようになったとすれば、国会やメディアのインタビューなど様々な空間で、根拠を挙げて野党や市民を説得すべきであり、「怪談」や「虚偽の事実」とレッテル張りをして告訴・告発を乱発し、興奮することではないのではないか。
 科学的根拠を持って論じなければならないという主張は、一見妥当にみえる。だが、国内外の科学者の関連の主張自体が多様かつ対立しており、一つの結論に至ることができないのが現実だ。日本社会ですら反対意見が優勢な状況であるにもかかわらず、韓国市民が不安を感じることがおかしなことなのか。
 「不思議で奇妙な話」。「怪談」の辞書での定義だ。汚染水処理や海洋放出の安定性と今後及ぼす影響について、何一つ明らかなことはないが、何より先に「怪談」や「虚偽の事実」と断定する韓国政府と与党の話のほうが、私の耳にははるかに「怪談」に聞こえる。
ソ・ボクキョン|ザ・可能研究所代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1096088.html
韓国語原文入力:2023-06-15 18:46


「The Hankyoreh」 2023-06-16 08:23
■[コラム]良心を汚染水で薄めて捨てようとしている日本政府
 チョン・ナムグ|論説委員

【写真】日本の放射性物質汚染水海洋投棄阻止ソウル行動のメンバーが15日午後、ソウル西大門区の西大門駅近くから出発し、放射能汚染水放出中止を求めるパフォーマンスを繰り広げながら鍾路区の在韓日本大使館に向かって行進している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 建物の同じ階にある他のオフィスで誰かがタバコを吸っているので消してほしいと言ったら、次のような返事が返ってきたという話を聞いた。
 「ここで私がタバコを1箱ほど吸ったからといって、あなたが受動喫煙でがんになるわけでもあるまいし」。
 福島第一原発で生じた放射能汚染水を今後数十年にわたって福島沖に捨て続けるという日本の態度は、まるでこの人のようだ。日本は遠からず汚染水投棄を強行すると思われる。その日、日本政府はどうにかコップ1杯分ほど残っていた良心すら、汚染水で薄めて捨ててしまうだろう。
 2011年3月に起きた福島第一原発事故は現在も進行中だ。原発1~3号機の1496本の燃料棒に入っていた核燃料は一部燃焼し、セシウムなどの核分裂生成物質が原子炉内に閉じ込められていたが、原子炉が損傷したことで大量に大気中に流出した。かなりの量が風に乗って飛んでゆき、世界中にばらまかれた。
 原子炉内で溶け落ちた核燃料の残骸は地下水を汚染している。高濃度の汚染水が、一時は1日に300トンも海に流れ込んでいた。漏れた総量がどれほどなのかは誰にも分からない。史上最大の海洋放射能汚染を引き起こした1983年の英ウィンズケール再処理施設の放射性廃液流出事故より、はるかに多いだろう。福島沿岸では今も半減期の長いセシウムにひどく汚染された魚がとれる。
 東京電力は汚染水をタンクに貯蔵してきた。汚染水を吸着装置サリー(SARRY)でろ過してセシウムやストロンチウムを除去し、続いて多核種除去設備(ALPS)でろ過してトリチウム(三重水素)以外の管理対象核種を排出基準値以下になるまで除去しているという。炭素14は平均で基準値の40分の1ほどになるというから除くとしても、トリチウムをまったく除去できていない汚染水は「事故によって発生した放射性廃棄物」に過ぎない。それを改めて海に捨てることは、原発事故で人類に大きな被害を与えたことに対する一握りの責任感さえ忘れ去った行為だ。
 汚染水にはトリチウムが1リットル当たり平均68万ベクレル(1ベクレルは1秒間に崩壊する原子核の個数、およびその際に放出される放射線の本数)含まれている。日本の排出基準値であるリットル当たり6万ベクレルの10倍を超える。国際放射線防護委員会(ICRP)は放射線被ばく量を「社会的・経済的な諸要素を考慮して合理的に達成可能な最低の値にする」(As Low As Reasonably Achievable)という原則の下、一般人の被ばく量を年間1ミリシーベルト以下にするよう勧告している。リットル当たり6万ベクレルは、それが含まれた水を1年にわたって1トン飲んだら、被ばく量が1ミリシーベルトに迫る放射能濃度だ。1ミリシーベルトは1万人に1人の割合でがんによる死亡者が発生すると考えられる水準だ。交通事故の死亡率と似たような「その程度の危険は受け入れよう」という意味の込められた数値であるに過ぎず、「安全」を保障する数値ではない。
 日本政府はトリチウムを含む汚染水に50倍ほどの海水を混ぜ、濃度をリットル当たり1500ベクレル未満にまで下げて捨てるという。海水で薄めようというのなら、そもそも高濃度の汚染水も基準値以下にするのはとても簡単だ。地球の海水の総量は136京トンで、130万トンの福島第一原発の汚染水を1兆分の1にまで希釈できるほど大量にあるからだ。「基準値以下だから大丈夫」という言い草は「海はとても大きいから、人間の生活を脅かすほど汚染するにはほど遠い」という暴言に他ならない。
 日本政府は汚染水投棄をやめるべきだ。日本にとっては金のかからない解決策かもしれないが、隣国にとっては何の利益もなく、危険のみを甘んじて受け入れよと要求する権利は日本にはない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領、政府、与党国民の力は日本政府をかばいだてするのに必死だ。尹大統領の「(福島第一原発では)放射能漏れはなかった」とか「(原発の)安全を重視する官僚的な思考は捨てるべきだ」などの発言との一貫性はあるが、一体どの国の政府なのか。
 私は西海(ソヘ)の塩と南海(ナムへ)の刺身はこれからも食べ続けるつもりだ。汚染水を考えた時の気の重さより、食べられないもどかしさの方がはるかに大きいだろうから。だが、我々が人類共同の資産である海をいかに破壊しているかを考えるとめまいがする。福島第一原発の汚染水に含まれるトリチウムは900兆ベクレルほど。世界各国の原発からは、1カ所当たり年に多くて100兆ベクレルのトリチウムが排出されてきた。英国、フランス、日本の使用済み核燃料再処理施設は、原発の数倍から数百倍の量を排出する。重金属や化学物質、マイクロプラスチックによる汚染は放射能より深刻だ。生命は海から誕生したのにもかかわらず、人類は海を破壊している。

チョン・ナムグ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1096106.html
韓国語原文入力:2023-06-15 16:24
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「関東大震災での戒厳軍の配置図まで…姜徳相先生の寄贈資料は想像以上」

2023年06月25日 | 個人史・地域史・世界史
「The Hankyoreh」 2023-06-19 19:43
■「関東大震災での戒厳軍の配置図まで…姜徳相先生の寄贈資料は想像以上」
 [インタビュー]イ・ギュス|全北大学学術研究教授

【写真】イ・ギュス教授が故・姜徳相教授の寄贈資料に含まれる「関東大震災当時の戒厳軍の配置図」を掲げている=カン・ソンマン先任記者//ハンギョレ新聞社

 「想像以上の資料を持っておられました。一つかと思うと、二重、三重で資料が出てきます」。
 全北大学高麗人研究センターのイ・ギュス学術研究教授は、2月からソウル光化門(クァンファムン)駅の近くにある事務室で、恩師である在日コリアンの歴史学者の故・姜徳相(カン・ドクサン)元一橋大学教授(1931~2021)が、東農財団(キム・ソンヒョン理事長)に寄贈した資料を整理している。姜徳相氏は、今年で100年となる関東大震災の研究の開拓者であり、執筆に20年も要した『呂運亨(ヨ・ウンヒョン)評伝』(全4巻、2019年完刊)の著者。姜氏の遺族は、昨年12月、故人が生涯かけて集めた蔵書や資料、書画類などをすべて寄贈するという契約書を財団と結んだ。先月、創立総会を開き、8月に公式の発足を控えた財団は、姜徳相資料センターを設置し、寄贈資料を整理して公開する計画だ。
 9月に故人の資料に基づく関東大震災100年の展示会も計画しているイ教授に12日、事務室で会った。一橋大学で故人の指導によって博士号を取得したイ教授は、恩師の口述回顧録『時務の研究者 姜徳相:在日として日本の植民地史を考える』(2021年、日本語版は三一書房刊、韓国語版は語文学社刊)の韓国語翻訳も手掛けた。イ教授は恩師のデータの整理に専念するため、昨年初めに日本での生活を終えて帰国した。
 「先生は亡くなる前、資料が分散することを最も心配していました。可能であれば、資料を韓国に持っていき、整理して公開するのがいいだろうとのことでした。(資料を)社会化させてほしいという意向でした」。
 慶尚南道咸陽(ハミャン)で生まれ、3歳で日本に渡り生涯日本で暮らした故人の蔵書が、なぜ韓国に来たのかという質問に対するイ教授の答えだ。「韓国の公共機関や大学図書館とも交渉しましたが、そこで資料が適切に整理されるのか疑わしく思えました。そうした時、東農・金嘉鎮(キム・カジン)先生のひ孫であるキム理事長が財団を作るという話を聞き、引き取っていただけるかどうか意向を打診したところ、すぐに受け入れてくれました」
 財団は、2月に700箱を超える寄贈資料をすべて韓国に運び、そのうち14箱分の関東大震災の資料を優先して整理している。「東京にある在日韓人歴史資料館(李成市(イ・ソンシ)館長)とともに、9月に仁川(インチョン)の韓国移民史博物館で『差別と抵抗』と題して展示会を開催します。また、10月には高麗大学博物館で関東大震災だけをテーマにして展示する予定です。姜先生の寄贈資料が中心となるでしょう」。

【写真】イ・ギュス教授が故・姜徳相教授の寄贈資料である関東大震災当時の様子を描いた木版画を掲げている=カン・ソンマン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】故・姜徳相教授(右)とイ・ギュス教授が4年前に故人が完刊した『呂運亨評伝』を前にして並んで写真を撮っている=イ・ギュス教授提供//ハンギョレ新聞社

 在日韓人歴史資料館の開館を主導して初代館長も担当した故人は、歴史研究者である前に誠実な資料収集家であった。1963年から13年間、関東大震災や三・一運動、日帝強占期(日本による植民地支配)の独立運動に関する資料をそれぞれ集大成した資料集『現代史資料』6巻を発刊した。特に、日本官憲の資料や現場を現地調査して発掘した各種資料を数年間かけて集めて整理した『現代史資料:関東大震災と朝鮮人』(みすず書房、1963)は、出版するなり日本の報道機関と学界の注目を集めた。関東大震災当時の朝鮮人虐殺の「起承転結」を資料で示したためだ。故人は、資料集や著述を通じて、大震災当時の朝鮮人虐殺の背後には、日本の民衆の怒りが皇室や治安当局へ向かうことを懸念した官憲首脳部の策略があったことを示した。
 イ教授は、今回の寄贈資料は『現代史資料』の原資料だと明らかにした。「解放(日本の敗戦)以前の日帝官憲の資料をマイクロフィルムにしたものが多いです。解放後、日本で出された韓国関連の研究書もほとんどそろっています。わずか5~6年前に出た本まであります」。イ教授は、100年前に出た『戒厳司令部情報』というパンフレットを見せてくれた。「これには、大震災当時の戒厳軍の配置図や各種のポスター、軍が作成した資料があります。先生がどのような経路でこのパンフレットを入手したのか、私もよく知りません。大震災当時の写真も何枚かあり、日刊紙の号外の原本もあります。最近、李成市館長がこの資料を見て(価値は)想像以上だと言っていました」
 日帝による侵略の過程を描いた300~400枚もある木版画(錦絵)のセットも、寄贈目録にある。「先生が日本の家3軒分の値段を投じて買ったそうです。日本でも非常に珍しい木版画です」。

 「関東大震災朝鮮人虐殺」の研究を開拓 
 一橋大学の故・姜徳相教授の弟子 
 東農財団に寄贈した恩師のデータを整理中 
 「データベース化して誰でも利用できるようにする計画」 
 9月に「関東大震災100年」の展示を計画 
 「『100年前のことでひざまずく…』発言の後、 
 展示場を貸すことに公共機関が難色」

 非常勤講師など非専任の大学教員を転々とした故人は、満58歳で一橋大学教授に任用され、「在日コリアンで初の日本の国立大学の専任教授」になった。生活が苦しい講師生活にもかかわらず、故人は、古本屋で関心を持った資料を見つけるとそのまま通り過ぎることはなかった。「先生の母親と夫人が、代々にわたり東京の代々木駅前で中華料理店を営んでいました。先生はその店のカウンターからお金を持っていき、本をたくさん買ったそうです。そのようなことをしても、夫人は何も言わなかったそうです。寄贈図書のなかには『清韓人傑伝』という小冊子があり、定価は2万8000円でした。私だったら、とても買えなかったでしょうね」
 寄贈資料のなかでイ教授が最も重視するのは日記だという。「先生は、高校生の頃から亡くなる前まで、毎月大学ノート1冊分の日記を書きました。日記をざっと見てみると、新聞のスクラップや手紙をはじめ、韓国に行った時に立ち寄った飲食店のメニューまであります。何がさらに出てくるのか気になります」
 イ教授は今後、大学の研究機関と協力し、寄贈資料をデータベース化して解題も付け、国立中央図書館のネットワークを通じて誰でも自由に利用できるよう推進する計画だ。
 イ教授と恩師の縁は、イ教授が高麗大学史学科を出て、日本に留学した1984年にさかのぼる。「当時、一橋大学の非常勤講師だった先生に、日本史を専攻すると伝えると、『日本近代の核心は朝鮮問題』だといって朝鮮史の研究を薦められたのです。その後、朝鮮史に方向を定め、博士論文も『近代朝鮮の植民地持株制度と農民運動』をテーマに書きました」。イ教授は、故人が専任の教授として在職中に送り出した唯一の博士だ。「私が朝鮮史専攻の修士2年目だったときから、大学の教授たちに、朝鮮史を教える正規の教授が大学に必要だと言って戦ったんです。幸い教授たちが賛同して、姜先生は89年に専任の教授になりました」
 恩師はどのような学者だったのかという質問に、イ教授は「誠実な研究者」だったとしたうえで、こう付け加えた。「関東大震災の朝鮮人虐殺の研究は、今でも先生を越えることができません。韓国はまだこのテーマで博士論文も出ておらず、このテーマの論文も先生の研究に依存しています」
 イ教授は、今回の「関東大震災100年」の展示を準備する際、展示場の確保に苦労したとも語った。「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が『100年前のことで、日本にひざまずかなければならないとは考えていない』と言ったではないですか。そのためなのか、公共機関はすべて展示に難色を示したのです。現政権だけではありません。1945年以降、韓国のどの政権も日本側に朝鮮人虐殺について抗議したり調査を要求したことはありません」。
 インタビューの最後に尹錫悦政権の韓日関係についてどう思うのか尋ねた。「過去の歴史を無視して明日を論じることができるでしょうか。姜先生は生前、日本社会に期待するものはないと言っていました。韓国と北朝鮮の和解と協力だけが東アジアの平和の道であり、日本と中国も変えるだろうと言っていました」。

カン・ソンマン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1095968.html
韓国語原文入力:2023-06-14 19:13
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「『気候悪党』韓国、途上国に対し330兆円以上の補償責任あり」

2023年06月24日 | 国家・社会
「The Hankyoreh」 2023-06-07 09:24
■「『気候悪党』韓国、途上国に対し330兆円以上の補償責任あり」
 「ネイチャー・サステナビリティー」に発表の論文 
 研究チーム、途上国に対する「気候補償金」設計 
 「1.5度目標を守るためには先進国が 
 2050年までに170兆ドルの補償金を支払うべき」

 温室効果ガスを過度に排出した先進諸国は2050年までに170兆ドルの気候補償金を発展途上国に支払うべきだとする研究結果が発表された。現在、炭素排出量が世界で10位以内の韓国が支払うべき気候補償金の予想額も3105兆ウォン(約332兆円)とされた。
 英国リーズ大学持続可能性研究所のアンドリュー・ファニング研究員ら英国とスペイン出身の研究チームは5日(現地時間)、「ネイチャー・サステナビリティー」に発表した論文で、先進諸国は年間約6兆ドルにのぼる補償金を発展途上国に支給しなければならないとの結果が出たと明らかにした。
 研究チームは地球の大気を世界の人々が公平に分け合う「共有物」と仮定し、全世界168カ国の人口を反映して1人が排出できる温室効果ガスを割り当てるというやり方で気候補償システムを設計した。そして1960年以降に各国が「炭素予算(カーボンバジェット)」を自国に割り当てられた量よりどれだけ多く、あるいは少なく使用したかを計算した。ここで炭素予算とは、産業化前と比べて地球の平均気温上昇幅を1.5度以下に抑えるという目標を守るために人類が排出を許容される炭素量のこと。大半の発展途上国の使用量は割り当て量より少ないが、米国、欧州連合(EU)諸国、カナダ、日本などの先進国は割り当て量を超過していた。
 その結果、世界168カ国中、米国、ロシアなど67カ国が気候補償金を支払うべき国に分類された。米国が負担すべき金額は80兆ドルで最も多かった。ロシア、日本、ドイツ、英国がそれに続き、韓国は2兆7000億ドルで13位。2050年までに全ての国が炭素中立(カーボンニュートラル)を達成するとともに「1.5度目標」を守るために先進国が支払うべき補償額は、170兆ドルに達した。
 一方でインド、中国、ナイジェリア、パキスタンなどを含む101カ国は、気候補償金を受け取るべき国に分類された。中国は現在、温室効果ガスの最大排出国だが、人口が多いため1人当たりの排出量が少なく、炭素予算の割り当て量が余っているため補償を受け取る資格を持つ。
 研究チームは「1960年から大気中の二酸化炭素についての科学的理解が進むとともに、化石燃料による地球の温度の上昇が認識されだしたため、これを出発点として温室効果ガス排出量を測定するのが合理的だと考えた」とし、「1850年を基準とすれば、米国などの先進国が負担すべき金額はさらに増える」と説明した。
 世界各国は昨年エジプトで開催された国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で、気候変動に対する責任が軽いにもかかわらず大きな被害を受けている発展途上国の「損失と被害」に対して支援するための「気候基金」を創設することで合意している。しかし、先進国の責任の範囲や分担比率などの具体的な内容については合意できていない。
 研究チームは、今回の研究結果が発展途上国の損失と被害に対する補償の一つの方法論になりうると期待している。研究に参加したファニング研究員は、リーズ大学の報道資料で「気候を不安定にする温室効果ガスの超過排出に対して何の責任もない一部の国に、早く経済を脱炭素化するよう要求するのは、気候正義に反する」、「むしろこれらの国は不公正な負担に対して補償を受けるべきだ」と語った。

ナム・ジョンヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-06 16:50
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拘束されわずか1カ月で死亡したロシアの反戦運動家…弁護士「殴打・拷問の疑い」

2023年06月23日 | 個人史・地域史・世界史
「The Hankyoreh」 2023-06-17 08:22
■拘束されわずか1カ月で死亡したロシアの反戦運動家…弁護士「殴打・拷問の疑い」

【写真】ウクライナの情報ホットライン「私は生きたい」を知らせるビラ=ツイッターアカウント(hochuzhit_com)よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 ロシア軍に向けてウクライナ軍への降伏のホットラインを知らせるビラを貼った疑いで拘束されたロシアの活動家が、収容されてわずか1カ月で死亡し、拷問を受けた疑惑が広がっている。
 15日付の「モスクワ・タイムズ」によると、ロシアの反戦運動家アナトリー・ベレジコフさん(40)はロシア当局に逮捕された後、拘置所で拷問死した。ベレジコフ氏の弁護人が、ロシアの人権団体「OVD-Info」を通じて14日に主張したもの。ベレジコフ氏の弁護人イリーナ・ガク氏は、フェイスブックに動画を投稿し「15日に釈放予定だったベレジコフさんが、その前日に霊安室に移送された」と述べた。米国「ニューヨーク・タイムズ」は、反戦運動を行った容疑で捕まったロシア人が拘束中に死亡したのはベレジコフさんが初めてと推定されると報じた。
 ベレジコフさんは、ウクライナのドネツク州から南に60キロメートル離れた都市ロストフ・ナ・ドヌ市内でロシア軍の投降を促すビラを貼った疑いで、先月、地元警察に拘束された。ベレジコフさんは軽犯罪の容疑で警察に自宅で逮捕された後、近くの拘置所に収容された。ロシア当局が問題にしたビラは、ウクライナ軍への投降を希望するロシア兵士のためにウクライナ情報当局が作ったホットライン「私は生きたい」を伝える内容だ。ベレジコフさんは容疑を否定していた。
 ベレジコフさんの弁護人のイリーナ・ガク氏は、ベレジコフさんとの面会を予定していた14日、医療スタッフがベレジコフさんの遺体を救急車に載せるのを目撃したと述べた。ガク弁護士は、ベレジコフさんが収容されていた拘置所の刑務官は当時、ベレジコフさんは施設にいないと話していたと述べた。また、当直の刑務官は後にOVD-Infoに「ベレジコフさんは自殺した」と述べたと、同団体が明らかにした。
 ガク弁護士と人権団体によると、ベレジコフさんは死亡する数日前、肋骨が折れ殴打の跡が体に残っており、拘置所での暴力の苦痛を訴えていたという。ガク弁護士は、死亡前日にベレジコフさんの体にテーザー銃(スタンガン)の跡があるのを見つけたと述べた。
 人権団体は、ロシア当局がベレジコフさんを反逆罪で起訴する準備をしていたと主張している。ベレジコフさんは軽犯罪の容疑で行政処分を受けた後、3回連続で拘束されたが、これはロシアが反逆罪を適用する場合のパターンだという。ロシア警察と拘置所は、ロイターやニューヨーク・タイムズなどの取材に応じていない。
 ロシアの人権団体「OVD-Info」の集計によると、ウクライナ戦争が始まった昨年2月以降、ロシアで約2万人の市民が反戦デモに参加した疑いで逮捕され、大半は釈放されたが、約600人が起訴された。また、起訴された市民のうち37人が拷問の被害を訴えているという。

キム・ミヒャン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-16 15:36
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1600年前の「韓流元祖」…日本で発見された耳飾りをした伽耶人の顔=韓国

2023年06月22日 | 朝鮮史
「The Hankyoreh」 2023-06-21 10:31
■1600年前の「韓流元祖」…日本で発見された耳飾りをした伽耶人の顔=韓国
 国立金海博物館企画展「海を渡った伽耶人たち」

【写真】6世紀頃、日本列島に渡った伽耶系移住民を形象化したと推定される日本の古代墓出土造形物。もともと死者の魂を鎮めるために収められた象徴物で、日本では「埴輪」と呼ばれる。千葉県山倉1号墳から出土=ノ・ヒョンソク記者//ハンギョレ新聞社

 1600年前の伽耶の人々の顔を見たことがあるだろうか。
 4~6世紀、嶺南・湖南地方で小さな国を構成し、日本列島と活発な交易を繰り広げ、今日の韓流の有力な元祖に挙げられる彼らの実際の姿を、現在の韓国人が思い浮かべるのは実に難しい。しかし、驚くべきことに日本には当代の伽耶人の姿を形象化した生き生きとした造形物が残っている。
 今年4月末から慶尚南道金海市(キメシ)の国立金海博物館で開かれている特別展「海を渡った伽耶人」の展示場の入り口で、まさにその伽耶人の像に出会うことができる。6世紀頃、日本列島に渡った朝鮮半島の伽耶系移住民を形象化したと推定される現地古代墓からの出土品。もともと死者の魂を鎮めるために収められた象徴物で、日本では「埴輪(はにわ)」と呼ばれる一種の土製人形だ。東京近郊の千葉県にある山倉1号墳から出たもので、海を渡って日本列島で暮らした伽耶人の姿を当時形にした唯一の遺物として挙げられる。尖った三角形の帽子をかぶり、首には玉型の首飾りをして、耳飾りを着けた人物像で、上衣の右の前身頃を先にあわせ、左の前身頃を重ねるかたちの古代朝鮮半島人特有の服装であるため、当代の日本人の姿とは異なる。
 日本の九州国立博物館、福岡県と共催した今回の展示は、規模は大きくないが特別な意味をもつ。鉄器や騎馬術などの先進文物を日本列島に伝播した古代韓流の主役、伽耶人たちが残した交流の痕跡を振り返る最初の展示であるためだ。日本に残した伽耶人たちの痕跡を、見慣れない現地出土品を通じて初めて韓国国内に見せるだけでなく、韓国国内の伽耶遺跡から出土した遺物と比較しながら見ることができる。一風変わった感覚と雰囲気に感じられる日本現地の伽耶系土器や造形物、鉄器、武器など259点の遺物が登場する。
 伽耶移住民の形を模した土製品である埴輪とともに目を引く重要な遺物は、馬と牛の形に作られた5~6世紀頃の墓造形物(埴輪)だ。4~5世紀、日本に移住した伽耶人たちは牛と馬を一緒に連れて行き、現地で放牧しながら牧畜生活文化の土台を築いた。家畜を飼う伽耶人の牧畜文化が、当代日本人の実生活はもちろん、葬儀文化にも大きな影響を及ぼしたという事実を、馬と牛の形をした埴輪から察することができる。一切装飾を施したり飾ったりせず、胴体だけを強調したもの、子馬の姿を造形したものなど、多様な形と日本特有の端正さが特徴のこの家畜埴輪は、伽耶と日本の強い古代交流を示す端的な象徴物といえる。
 特別展はこの他にも、伽耶人たちが乗っていたと推定される船が刻まれた埴輪土器、伽耶の特産品である鉄の塊と鎧、渦巻き装飾がついた刀、甑(こしき)を乗せた移動式かまどなど、日本各地の34遺跡から出土した伽耶関連遺物260点余りを3つのエリアに分けて紹介している。玄海灘を渡った伽耶移住民が、文化的アイデンティティを守り、古代日本社会に大きな影響を及ぼした跡を鑑賞できる稀有な機会だ。6月25日まで。

【写真】国立金海博物館展示に出品された馬を素材にした5~6世紀頃の墓造形物(埴輪)。家畜を飼う伽耶人の牧畜文化が当代日本人の実生活はもちろん、葬儀文化にも大きな影響を及ぼしたという事実をこの馬の埴輪から推測できる=ノ・ヒョンソク記者//ハンギョレ新聞社

金海/文・写真 ノ・ヒョンソク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-20 10:04


「The Hankyoreh」 2023-06-07 10:32
■伽耶の王族たちは「ローマングラスの器」をどこで買い求めたのか=韓国
 韓国国内16番目の世界遺産登録を控えた「伽耶古墳群」に行ってみると

【写真】慶尚南道陜川の玉田古墳群から出土したローマングラス=キム・ギュヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 穏やかな稜線上に大小の昔の墓がこぶのように集まって盛り上がっていた。墓を取り囲むトゥルレキル(遊歩道)には、散歩を楽しむ市民たちが見えた。稜線の上に立つと、高霊(コリョン)の市街地が一望できた。今月1日に訪れた慶尚北道高霊郡の芝山洞古墳群の姿だった。古代伽耶連盟が残した芝山洞古墳群は、9月にユネスコ世界文化遺産への登録を控えている。
 伽耶古墳群が世界遺産に登録されれば、韓国では石窟庵・仏国寺、海印寺大蔵経板殿などに続き16番目の世界遺産となる。ハンギョレがこの日、伽耶古墳群世界遺産登録推進団と共に訪れた伽耶古墳群は、高霊の芝山洞古墳群のほかに、慶尚南道陜川(ハプチョン)の玉田古墳群、全羅北道南原(ナムウォン)の酉谷里・斗洛里古墳群だった。ユネスコ遺産登録を控えた「伽耶古墳群」(Gaya Tumuli)は、この3カ所を含め慶尚南道金海市(キメ)の大成洞古墳群、慶尚南道咸安(ハマン)の末伊山古墳群、慶尚南道昌寧(チャンニョン)の校洞・松ヒョン洞古墳群(ヒョンは山に見)、慶尚南道固城(コソン)の松鶴洞古墳群までの7カ所だ。

【写真】慶尚北道高霊の芝山洞古墳群の様子=慶尚北道提供//ハンギョレ新聞社

 高霊の芝山洞古墳群は、7つの古墳群の中で最も規模が大きい。5~6世紀の伽耶王族の墳丘704基が集まっている。主山の頂上部のすぐ下にある44号墳は、高さ6メートル、直径25メートルにのぼる大型墳丘だ。韓国で初めて発見された殉葬墓(死者と近かった人や動物を共に埋葬すること)でもある。墓の中央には王の席である「ウトゥムトルバン(第一石室)」が長方形に作られ、南側と西側に「タルリントルバン(付属石室)」2基がある。これを囲むように丸く32基の殉葬木槨があり、10代から60代まで多様な年齢の民40人余りが殉葬されたという。伽耶連盟の最盛期を導いた大伽耶の地位を推し量ることができるというのが専門家たちの説明だった。

【写真】「伽耶古墳群」に含まれる7つの古墳群の現状(左上から時計回りに、高霊の芝山洞古墳群、昌寧の校洞・松ヒョン洞古墳群、金海の大成洞古墳群、咸安の末伊山古墳群、固城の松鶴洞古墳群、陜川の玉田古墳群、南原の酉谷里・斗洛里古墳群)=文化財庁提供//ハンギョレ新聞社

 古墳群の下の大伽耶王陵展示館では、44号古墳群内部をそのまま展示し、発掘された遺物などを直接見ることができた。芝山洞古墳群から車で30分余り離れた慶尚南道陜川の玉田古墳群も高い丘陵の上に墳丘が集まっていたが、丘陵の頂上部には4世紀頃の木槨墓が、西側には5世紀頃の石槨墓が見えた。玉の畑を意味する「玉田」という名前のとおり、ここでは玉のネックレス、金製イヤリングなど華麗な装身具が多く発見されたという。透明ガラス器「ローマングラス」も1点出たが、西域との交流を通じて流入したものと推定される。
 7つの古墳群の中で最も西側にある南原の酉谷里・斗洛里古墳群では発掘作業が真っ最中だった。当初、ここは百済支配層の墓であると考えられていたという。実際、百済式遺物と伽耶式遺物が混ざって出てきた。32号墳から出た青銅鏡は百済武寧王陵から出たものと似ており、百済と交流して影響を受けたものと専門家たちは推定している。

【写真】全羅北道南原の酉谷里・斗洛里古墳群は今も発掘作業が真っ最中だ=キム・ギュヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 伽耶古墳群世界遺産登録推進団のイ・ギュホン研究員は「伽耶式石槨墓は細長い長方形という共通点があるが、主槨と副槨を並べて置いたり斜めに置くなど構成方式が全て異なる。対等な水準の威勢品と交易品が発見され、伽耶に属する各政治体が自律的で水平的な関係を形成していたことを示している」と説明した。そして「高句麗・百済・新羅三国の遺跡はすべて世界遺産に登録されている。伽耶古墳群の世界遺産登録により、古代史の最後のパズルを完成させることができることになる」と語った。
キム・ギュヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/yeongnam/1094745.html
韓国語原文入力:2023-06-06 16:31


「The Hankyoreh」 2022-04-04 09:49
■「鉄の王国」伽耶古墳群の世界遺産登録、最後の峠を越えるか
 世界遺産委員会、6月の会議で決定の予定 
 古墳群780カ所のうち主要7カ所を推進 
 一部団体「植民史観で歴史歪曲」 
 学術的な欠陥を批判して保留要求 
 専門家「任那日本府説とは無関係」

【写真】世界遺産登録が推進されている伽耶古墳群の位置(1)金海大成洞古墳群(2)咸安末伊山古墳群(3)陜川玉田古墳群(4)高霊池山洞古墳群(5)固城松鶴洞古墳群(6)昌寧校洞・松峴洞古墳群(7)南原酉谷里・斗洛里古墳群=慶尚南道提供//ハンギョレ新聞社

 「鉄の王国」伽耶の優れた文化水準を証明する伽耶古墳群が、価値を認められ、世界遺産に登録されるだろうか。
 世界遺産委員会は6月19~30日、ロシアのカザンで会議を開き、「伽耶古墳群」(Gaya Tumuli)の世界遺産の登録の可否を決める。これに先立ち、伽耶文化圏である慶尚南道・慶尚北道・全羅北道などは、2013年から同意を集め、伽耶古墳群のユネスコ世界遺産の登録を推進している。この9年間、ユネスコ世界遺産の暫定リストへの登録、世界遺産登録申請の対象選定、登録申込書の完成度の検討などの手続きをすべて通過し、世界遺産委員会の最終決定だけを残している。

◆ 慶尚道・全羅道で合わせて780カ所の伽耶古墳群
 紀元前1世紀の朝鮮半島南部地方で生まれ、562年の大伽耶滅亡に至るまでの600年あまりにわたり繁栄した伽耶が残した古墳は、数十万基(古墳群基準で780カ所)に達する。このうち、世界遺産の登録を推進する連続遺産(地理的に接近していないが、関連性が強い遺産)は、伽耶の開始と王墓の出現を示す金海大成洞(キムヘ・テソンドン)古墳群▽殉葬制度を示す咸安末伊山(ハマン・マリサン)古墳群▽日本と中国はもちろん、西域との交流を証明する陜川玉田(ハプチョン・オクジョン)古墳群▽伽耶古墳群のなかで最大規模の高霊池山洞(コリョン・チサンドン)古墳群▽一つの封墳に多くの墓が次々と造成された固城松鶴洞(コソン・ソンハクトン)古墳群▽派手な装飾馬具と金銅冠などが出土した昌寧校洞・松峴洞(チャンニョン・キョドン・ソンヒョンドン)古墳群▽中国系と百済系の遺物が出土した南原酉谷里・斗洛里(ナムォン・ユゴクリ・トゥラクリ)古墳群など7カ所。行政区域別では、慶尚南道5カ所、慶尚北道1カ所、全羅北道1カ所となる。
 当初、2013年までは、慶尚南道と慶尚北道がそれぞれ世界遺産登録を推進していた。しかし、文化財庁が類似の性格の遺産を一つにまとめて登録するよう勧告したことにより、代表的な伽耶古墳群35カ所を専門家が検討し、7カ所を候補地に選定した。これら7カ所は、伽耶の各政治体の中心地に位置し、伽耶文明を代表的に証明し、伽耶文明の社会構造を反映した祭祀と副葬遺物を備えているという評価を得ている。

◆干潟に続く韓国16番目の世界遺産になるだろうか
 「ユネスコ遺産」は、世界遺産・無形文化遺産・世界記録遺産など3種類に分けられる。世界遺産は合わせて10個の基準があるが、伽耶古墳群は、3番目の基準である「現存するかすでに消滅した文化的伝統や文明の卓越性、または少なくとも無二の証拠」に該当する。伽耶古墳群が登録されれば、海印寺大蔵経板殿、宗廟、石窟庵・仏国寺などに続く韓国16番目の世界遺産になる。
 7つの古墳群が位置する3つの広域団体(慶尚南道・慶尚北道・全羅北道)と7つの地方自治体が共同で設立した「伽耶古墳群世界遺産登録推進団」は、「伽耶古墳群が世界遺産に登録されるということは、伽耶史の世界史的な認証を通じて、伽耶が高句麗・百済・新羅に対応する歴史的な実体として認められるようになったということを意味する。ユネスコ世界遺産という世界的な地位の獲得を通じて、観光需要の増大効果も期待できる」と明らかにした。
 韓国政府は2017年、「伽耶文化圏調査研究および整備」を国政課題に加え、伽耶古墳群の世界遺産登録を支援している。2020年、超広域協力伽耶文化圏助成計画も用意した。この作業は、伽耶古墳群の発掘・整備を皮切りに、伽耶史の究明・確立▽伽耶遺産の合理的保存・管理▽伽耶歴史資源の活用と価値創出などに拡大している。2020年10月には、金海大成洞76号墳から出土のネックレス、金海良洞里(キムヘ・ヤンドンリ)270号墳から出土の水晶のネックレス、金海良洞里322号墳から出土のネックレスが宝物(重要文化財)に指定された。

◆多羅国・己汶国などについて植民史観とする議論も
 伽耶古墳群の世界遺産登録は、順調なことだけではない。
 2月18日、「植民史観で歪曲された伽耶史を正す全国連帯」が、記者会見を開き、伽耶古墳群の世界遺産登録推進の保留と、「伽耶古墳群研究叢書」の廃棄を文化財庁に要求した。これらの人々は記者会見で、「伽耶古墳群の登録推進の過程において、学術的にも歴史的にも絶対に容認できないとんでもない欠陥があることを発見した。『伽耶古墳群世界遺産登録申込書』は、日本帝国主義が作ったいわゆる植民史観で汚染されており、伽耶の実情を明らかにするどころか、広く知られている伽耶史自体さえ歪曲している」と主張した。「伽耶史を正す慶尚南道連帯」共同代表のキム・ヨンジン慶尚南道議員(共に民主党)は先月17日、慶尚南道議会の本会議で、「伽耶古墳群の世界遺産登録推進の過程で、日本の極右と植民史学家が主張する任那日本府説が召喚された」とし、「任那日本府説を伴ったまま登録することになれば、倭(日本)が朝鮮半島南部を支配したという任那日本府説を私たち自らが認めることになり、これは、古代から韓国が日本の植民地だったということを認める格好」だと述べた。
 これらの人々は、特に「多羅国」と「己汶国」という伽耶の国の名称を問題視している。世界遺産の登録申込書では、慶南陜川郡の玉田古墳群は「多羅国」、全羅北道南原市の酉谷里・斗洛里古墳群は「己汶国」の古墳に分類されている。この多羅国や己汶国などは、韓国の歴史書の『三国遺事』には書かれておらず、『日本書紀』や『梁職貢図』などの日本と中国の歴史書や資料に出てくる名称だ。
 議論は、伽耶に関する文献記録と、最近発掘と確認がなされた伽耶の実体が反映されている点があることによる。これまで当然視されてきた伽耶についての一般的な常識は、「首露王ら6兄弟が建国した、金官・安羅・大・小・星山・古寧などの6つの小国」だ。しかし、2018年に「伽耶古墳群世界遺産登録推進団」が発行した『伽耶古墳群研究叢書』(研究叢書)はこれについて、「『三国遺事』の記録のために作り出された虚構にすぎず、史実とは完全にかけ離れている」と明らかにしている。伽耶史研究関連の20の機関の専門家25人が共同執筆した研究叢書は、「『三国志』『三国史記』『日本書紀』などを総合的と分析すると、伽耶は12以上の小国で構成されていた」と結論づけた。そのため、世界遺産登録を推進する古墳群7カ所は、金官伽耶(金海大成洞古墳群)、安羅伽耶(咸安末伊山古墳群)、非火伽耶(昌寧校洞·松峴洞古墳群)、小伽耶(固城松鶴洞古墳群)、多羅国(陜川玉田古墳群)、大伽耶(高霊池山洞古墳群)、己汶国(南原酉谷里・斗洛里古墳群)などに整理された。また、韓国と日本の両国の歴史学界の長きにわたる論争の種である「任那日本府」については、「倭王権が伽耶に派遣した外交使節」と定義した。
 慶尚南道・伽耶文化遺産と学芸研究員のキム・スファン氏は、「『三国遺事』 などの韓国の歴史書に、星山伽耶と古寧伽耶という名称が出ているが、この地域の古墳群を発掘した結果、伽耶ではなく新羅の古墳だと確認された」とし、「反対に、韓国の歴史書には、陜川や全羅北道の南原地域に伽耶の国の名称は出ていないが、その地域の古墳群を発掘した結果、伽耶の古墳であることが明確に確認された」と述べた。さらに「そのため、専門家らは、発掘結果の分析と韓国・中国・日本の古文書の比較検討などを経て、『多羅国』と『己汶国』の名称を受け入れたのだ。これは、倭が伽耶を支配したという、いわゆる任那日本府説とは何の関係もない」と説明した。
チェ・サンウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/yeongnam/1037351.html
韓国語原文入力:2022-04-04 02:32


「The Hankyoreh」 2022-02-19 11:27
■慶尚南道の大伽耶の地から出た「百済式古墳」、被葬者はどの国の人か
 [ノ・ヒョンソクの時事文化財] 
 慶尚南道山清「M32号墳」発掘現場 
 封墳内の石塚の石室構造物 
 アーチ形天井・側壁などすべてが完全な形 
 典型的な宋山里型の墳墓構造 
 「百済勢力の影響力行使の証拠」と解釈 
 「単純に葬祭文化が広がったものではないか」との見解も

【写真】百済系の横穴式石室の墳墓だと確認され学界で注目されている慶尚南道山清生草にあるM32号墳の石室内部//ハンギョレ新聞社

 古代王国である百済の領域は、東にどこまで広がっていたのだろうか。忠清道と全羅道を越えて慶尚道の内陸の奥深い所まで進出したのだろうか。伽耶を直接支配し、新羅と対峙したのだろうか。
 韓国の歴史学界の研究者たちが長い間抱いていた疑問を解く手がかりが、年明けに現れた。智異山(チリサン)の東側の裾にある慶尚南道の山清(サンチョン)の地から、6世紀に精巧に作られた百済風の支配層の古墳が出てきた。洞窟のように古墳の側面を掘り下げていき、遺体を安置する墓室(玄室)を作った古墳だ。何度も葬儀を執り行えるようにした、いわゆる「横穴式石室」墳墓が出現した。百済が高句麗軍によって最初の首都の漢城(ハンソン、現在のソウル)を陥落され、475年に熊津(ウンジン、現在の公州(コンジュ))に遷都した後、武寧王(在位501~523)の治世を機に中興し始めた時期の王族と貴族の典型的な古墳の構造だ。しかも、大伽耶の主要な領域だと思われていた慶尚南道の西部内陸の山清郡にある生草(センチョ)古墳群で完全な百済支配層の古墳が出てきたというニュースに、学界の関心が集中している。

【写真】稜線に位置する山清の生草古墳群の西南の裾で発見されたM32号墳の入口部分。墓内部の石室につながる羨道(通路)の入口が見える。羨道の床には別の石が敷かれており、排水路を引いていた跡形(並行する2本の白線部分)が見える//ハンギョレ新聞社

 15日午前、山清郡生草面於西里山93-1番地一帯の胎峰山の稜線の裾に、強風と寒さに耐え全国各地から中堅の考古学者たちが集まった。昨年末からこの稜線の裾にあるM32号墳を発掘した極東文化財研究院の現場を見にきた人々だった。山清から流れる鏡湖江を見下ろせる稜線の裾に位置する直径13メートルの封墳を開くと、石塚の石室の構造物が現れた。石室の前方にある羨道(通路)の出入口が開いており、内部の未知の世界へと研究者たちを導いた。リュ・チャンファン研究院長の案内を受け、ヘルメットをかぶり、墓室を結ぶ羨道を通り、墓室に入った。長さ2.8メートル、幅1.7メートルの墓室は、2坪にも満たない4.85平方メートルのやや狭苦しい空間だ。しかし、入った瞬間に眺めた天井と壁面の姿に歓声を上げた。

【写真】M32号墳の墓室内部。明るい外側に通じる羨道が片方に偏っている様子が分かる。壁が上に向かうにつれ台形型となるアーチ形構造により狭まり、天井を覆う板石を支える半球型構造となっている。6世紀の百済の石室墓の典型的な特徴だ//ハンギョレ新聞社

 宋山里(ソンサンリ)型の百済貴族の古墳の特徴であるアーチ形の天井が、ほとんど損なわれずそのまま残っていた。四方の壁がアーチ形の輪郭を描き、天井石に向かい狭まりながら上がっていく、百済の石室墓の特有である虹型もしくは半球型の上部構造だ。6世紀初めの百済が熊津に首都を置いた時期の支配層の古墳の形である横穴式の石室墓の典型的な形だ。羨道に敷石と門柱を置き、門扉石(閉塞石)で塞いで閉鎖した構造は、伽耶人たちの石室や石槨古墳とは大きく異なる百済系統の石室墳の特徴だ。忠清南道公州の宋山里古墳群(武寧王陵を含む)の、いわゆる宋山里型の石室とほぼ同じ構造の首長級の古墳であることが明らかだ。割石で狭まっていく側壁を天井部分まで敷きつめた典型的な百済スタイルの石室だが、宋山里古墳群でも見られない側壁と天井の連結部分や天井の板石まで、すべて完全に残っていた。

【写真】山清生草古墳群のM32号墳の石室を覆った封墳を後ろから見た様子。封墳の中央部分に切り開かれた石室の上部を構成する石塚が見える。稜線の裾にある封墳の先に山清を流れる鏡湖江と野原が見える//ハンギョレ新聞社

 武寧王陵や多くの王陵級の古墳がある公州の宋山里古墳群の古墳の様式だということで「宋山里型」と呼ばれるこの古墳の様式が、思いがけず智異山を越えた山清の地の渓谷に現れたという事実は、学者たちを驚かせた。未盗掘古墳だが、残念なことに、当時の百済の風習では副葬品を特に埋めることはなかったため、腐食して失われた棺に使われた釘と小型の手刀以外には他の遺物は出てこなかった。しかし、砂利と粘土が敷かれた状態で整然と並ぶ遺体の場所を表記した墓室の地面からは、死者の霊気が染みでるようだった。発掘の際に封鎖用の石である門扉石が3つも出てきたことから、一人を葬った後に追加で二人の死者を葬ったと推定される。
 墓室を見て回った学者たちの間では、なぜ山清に百済支配層の墓室が登場したのかについて、多くの意見が交わされた。百済系の遺跡であることは明らかだが、はたして百済人のものなのかについてが論点になった。忠北大学のソン・ジョンヨン教授は、近くの山城から百済系の遺物である印章が刻まれた瓦が出ており、百済の宋山里型の典型的な墳墓構造だという点を重視した。百済勢力が明らかに山清に影響力を行使した証拠だと解釈された。一方、全北大学のキム・ナクジュン教授と慶北大学のパク・チョンス教授は、百済風の瓦や百済風の墓室は見られるが、住居地や土器など他の決定的な百済人の遺物が出ていないため、大伽耶勢力が当時友好勢力だった百済の葬祭文化の影響を受け、このような形の古墳を築造したのではないかという見解を示した。

【写真】M32号墳の石室の天井部分。四方の壁面がアーチ形の曲面を描きながら狭まっていき、頂点の1枚の天井石を支える半球型の構造となっている//ハンギョレ新聞社

 百済は5~6世紀に慶尚道に進出し、伽耶の領域を執拗に占有しようと試みた。高句麗に奪われた漢江流域を奪還するために新羅と羅済同盟を結成してからは、後方の防備のために伽耶地域を直接的な支配権のもとに引き入れようと、新羅と水面下で暗闘をした。いわゆる「郡令・城主」という名称で伽耶地域に軍事的な支配権と行政権を行使する官僚を派遣したという史書の記録もある。朝鮮半島をめぐり展開する南北と列強の外交戦が激しい今の状況において、1600年前の朝鮮半島南部を飛び交った戦乱と外交の歴史を改めて思い起こさせる遺跡が、まさに山清の生草古墳群のM32号墳だった。
山清/文・写真、ノ・ヒョンソク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2022-02-18 22:01


「The Hankyoreh」 2021-10-09 13:01
■全羅道屈指の国宝級古墳、被葬者は倭人?百済人?
 [ノ・ヒョンソクの時事文化財] 国立光州博物館「新徳古墳特別展」

【写真】全羅南道の咸平礼徳里にある新徳古墳の1990年代の調査当時の姿。前方が四角で後方が丸い古代日本特有の前方後円墳(長鼓型墳墓)を示している。墳墓の各部分に割れた石を敷きつめた跡(葺石)が見え、墓の周囲を溝で囲むのも倭式の前方後円墳の特徴だ//ハンギョレ新聞社

 「調査に行った墓が盗掘されていました!」。
 学芸員のソン・ナクチュン氏は青ざめて電話を取って報告した。彼の頭は、少し前に目撃した古代の墳墓の片側に開けられた盗掘の穴の惨状でいっぱいだった。30年前の1991年3月26日午後、ソン氏を始めとする国立光州博物館の職員たちは、全羅南道の咸平礼徳里(ハムピョン・イェドクリ)の丘にある6世紀初めの大型墳墓を測量するために向かった。7年前の1984年に発見された新徳古墳1号墳だった。古代日本特有の前方後円墳、つまり前方は四角で後方は丸い、鍵穴あるいは長鼓型の墳墓形式であり、その年の朝鮮半島における前方後円墳の最初の発見事例として報告された海南長鼓峰古墳とあわせて、学界の特別な注目を集めた。しかし、7年が経過しても実測さえ行われずに放置され、学界では正体をめぐる噂だけが広がった。事情を知る博物館の人々が長年の宿題をするかのように実測を行うために向かったところ、数日前に暴かれた盗掘の穴を見つけたのだ。

【写真】1990年代に新徳古墳1号墳の内部を調査した際に床で発見された木棺の材料。日本産と見られるコウヤマキだ。墓の内部にコウヤマキ製の木棺があるのは武寧王陵や益山双陵など百済高位層の葬法であり、被葬者が現地人や百済系の人物であることを示す根拠となる遺物だ//ハンギョレ新聞社

 墓の中は悲惨だった。盗掘犯は石室の南西側の壁を突き破っていた。内部の遺物をむやみに動かし、金属付きの工芸品や大きな土器類などのみを持ち出し、残りは放り投げてあった。その弾みで石室の壁が損なわれ、床の遺物は踏まれて砕けていた。遺体を収めていた木棺の棺材などと、頭骨や歯などの遺骨が混じりあい、盗掘の穴の近くには鉄器や陶磁のかけらが散らばっていた。副葬品は尋常ではなかった。つぶれはしていたが、冠帯に木の葉の装飾が珠の荘厳とともに付いていた金銅冠の破片は孤高だった。環頭大刀や緑色や黄色のガラス板を重ねて付けていた外国産の練理紋の珠などは、公州(コンジュ)の武寧王陵を思いださせるような東南アジア産の高級品だった。石室の入口の羨道(墓道)の床からは、祭祀で使われた真鯉の骨の入った壺や様々な供え物を入れたふた付きの皿(蓋杯)も大量に発見された。全羅道屈指の国宝級古墳が盗掘されたという急報は、政府を驚かせた。国立中央博物館のハン・ビョンサム館長(当時)から直接報告を受けたイ・オリョン初代文化部長官は、検察総長にすぐ電話をかけ、緊急捜査を要請した。

【写真】新徳古墳1号墳の石室から出た金銅冠の破片。六角形の模様の中に花模様が刻まれた細長い土台の上に木の枝の形の装飾を付けた構造で、九州や畿内地域の高級古墳から出土する冠とほとんど同じだ。被葬者が倭人とする説の有力な根拠の一つだ//ハンギョレ新聞社

 このような内容が報道されると、怖気づいた盗掘犯たちは、旧朝鮮総督府の建物にあった国立中央博物館の東門に盗掘した鉄器類の箱を置いて去っていった。回収した箱の中にあった遺物は、鉄器の刀の柄だった。墓の内部に残っていた刀の刃と合わせてみるとぴたりと合い、副葬品だと確認された。犯人は1993年9月に捕まった。土器や兜など65点の「百済の遺物」を持ち去っていたことが明らかになった。
 新徳古墳には、朝鮮半島の前方後円墳のなかでは最も多くの副葬品が残っていた。博物館も盗掘後の9年間に体系的な調査を行い、相当な研究成果を確保した。しかし、30年間も報告書を出さず、出土品の展示もなかった。理由はいわゆる「倭色」のためだ。二つの山の形の模様を立てる土台を着せた金銅冠や環頭大刀、三角形の鉄帽など、韓国と日本の学界で倭系だと同意できるような遺物が続々と明らかになると、4~6世紀に日本を統一したヤマト政権が任那日本府を設置し、朝鮮半島南部を支配したとする植民地史観の歴史家や日本の極右の主張の根拠として悪用されるだろうという懸念が生じた。朝鮮半島の前方後円墳の研究も不十分な状況であり、公開した場合、日本の学界と論戦する相手になるのは難しいという懸念もあった。

【写真】新徳1号墳の石室から出た環頭大刀(一番上)。鉄棒の上に銀を被せてより合わせて作った輪で刀先を飾ったこの刀は、朝鮮半島にはなく日本列島の支配層の墓からのみ出土する最高級の遺物だ。金銅冠と共に新徳古墳の被葬者が倭人とする説を裏付ける根拠となる遺物だ//ハンギョレ新聞社

 そのような事情を考えると、7月19日から国立光州博物館で行われている新徳古墳特別展「秘密の空間、隠された鍵」(24日まで)と報告書の発刊は、時すでに遅しだが、嬉しい知らせだ。朝鮮半島の前方後円墳についての初の企画展を設け、出土品を学界に全面公開する場まで用意したのは、考古学史上、意義深い事件だ。学界の研究能力が成熟したことを教えてくれるものだ。
 日本に4000基以上残っている前方後円墳は、歴史的な誇りが込められたシンボルだ。3世紀中頃から7世紀初めまでの古墳時代に、現在の大阪一帯の近畿地域に拠点を置いたヤマト政権が、各地の首長と連合して統一国家を建てた歴史的な指標だとされている。近畿から始まった前方後円墳が九州や関東など全国各地で広がっていく過程が、列島統一の過程を端的に示しているというのが定説だ。

【写真】奈良にある6世紀中頃の丸山古墳。日本の古墳時代末期の最後の前方後円墳といわれている//ハンギョレ新聞社

 そのような前方後円墳が、全羅道の西南海岸で現在までに14基確認されており、中心格である新徳古墳から、なぜ倭系の金銅冠や最高級品の刀が中心的な副葬品として出てきたのかについては論争になっている。数が少なく、期間も5世紀末から6世紀初めの50年に過ぎないが、被葬者が倭系の実力者だと解釈する余地が大きい。日本の学界で、ヤマト政権が朝鮮半島に影響を行使したという推論に飛躍されることもありうる。廃棄された任那日本府説をあえて提起する学者はいないが、長鼓型墳墓の研究成果の公開は、日本の学界との解釈の摩擦を呼ぶ可能性が高い。韓国内の学界も墓被葬者をめぐり、倭人説と現地人説、百済人説が交錯している。墳墓の形と構造、中心的な副葬品は倭系だが、もう一つの手がかりであるコウヤマキ製の木棺の遺物は、百済高位層の葬法だからだ。
 博物館の展示は、より積極的な解釈と説明の場を設けられなかった限界も示している。金銅冠と刀と大量の土器、棺材をずらりと並べて置いている遺物報告の形式に留まっているという話だ。前方後円墳については、韓国と日本の学界での議論がなぜ大きくなったのか、任那日本府が及ぼした影響は何であるのかなどについて、歴史的な経緯を詳細に解き明かして説明していない点が不自然だ。史料不足もあるが、長期的に落ち着いてファクトを蓄積し論議していくには、大衆に前方後円墳の歴史的実情を十分に伝え、被葬者の議論を進めていくべきではないだろうか。近代の民族感情による制約を受ける韓国と日本の学界は、今後互いに交流し、共同理解を探る求同存異の姿勢で会うしかない。
光州/文・写真、ノ・ヒョンソク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2021-10-05 04:59


「The Hankyoreh」 2021-08-28 22:24
■朝鮮半島最大の古代の墓、開けた直後に閉じた理由は
 [ノ・ヒョンソクの時事文化財] 
 長鼓峰古墳をめぐり考古学界で騒ぎに 
 日本の古墳に似た構造や祭祀の跡をめぐり議論 
 「追加発掘後に一般公開」とし、再び埋める 
 墓の被葬者は百済の統制を受けた倭人? 
 日本の右翼が任那日本府説の根拠にすることを懸念

【写真】最近発掘調査された全羅南道海南郡北日面方山里の長鼓峰古墳内部の石室。遺体を置く部屋への入口の玄門が正面にみえ、平らな板石をいくつか置いた床と砕いた石を整然と積んだ石室の壁面が見える。1990年代までに2回盗掘され、内部の遺物は大部分が失われた//ハンギョレ新聞社

 朝鮮半島で最大の古代の単一の墓が、新年の初めについに開かれた。考古学者らは5~6世紀の日本の古墳とそっくりな墓の構造に驚き、すぐに土で覆われ再び埋められてしまったことにがっかりした。今年1月、国土最南端の海南(ヘナム)から聞こえた墓の発掘に続く覆土のニュースは、メディアには公開されなかったが、韓国国内の考古学界を騒がせた。
 この遺跡は、全羅南道海南(ヘナム)の北日面方山里(プギルミョン・パンサンリ)の長鼓峰古墳だ。6世紀前半のものと推定されるこの墓の外側の墳墓と石室内部が、昨年10月から今年2月まで、馬韓文化研究院の発掘調査により約1500年ぶりに明らかにされた。驚くべきことに、石室は日本の九州の外海岸と有明海一帯で5~6世紀に造成された倭人貴族の石室墓と、構造はもちろん墓の内部への入口をふさぐ前に行われた祭祀の跡までほとんど同じだった。

【写真】長鼓峰古墳の石室の入口からみた内部空間。床に細長い板石を置き、砕いた石を整然と積み壁面を作り、上側天井に蓋石を置く典型的な古代日本の九州地域の石室墓の構造だ。天井と壁面にはやはり日本の古代古墳の典型的な特徴である赤い朱漆の跡が確認される//ハンギョレ新聞社

 調査団は、後面の封土を掘り、墓の内部に通じる細い通路(羨道)に入り、内側を観察した。調査の結果、床に細長い板石を置き、上側に砕いた石(割石)を整然と積み壁面を作る、古代九州の石室墓特有の構造であることが明確だった。天井と壁面にも、日本の弥生時代以来の古墳の典型的な特徴である赤い朱漆が塗られた跡が残っていた。
 出土品はほとんどが盗掘されていたが、墓の被葬者を明らかにする手がかりとなる遺物が相当数収集された。墓の内部への入口で発見されたふた付きの皿(蓋杯)10点が代表的だ。一部の蓋杯の中にはイシモチなどの魚の骨や肉類など祭礼での食事と推定される有機物の塊も検出された。「日本の古墳で確認された祭礼の遺物と類似の内容物と配置が注目される」と、チョ・グヌ研究院長は説明した。墓の内部を直接調べた慶北大学考古人類学科のパク・チョンス教授は「九州の倭人の墓に入った時と印象がまったく同じだった」と述べた。

【写真】長鼓峰古墳の内部への入口の玄門と内部の様子。石室は、長さと幅がそれぞれ4メートルを越え、天井までの高さは2メートルに達する巨大な空間だ。床に細長い板石を置き、砕いた石を整然と積み壁面を築く古代の西日本九州地域の石室墓と構造が全く同じだ//ハンギョレ新聞社
【写真】墓の石室に入る羨道(細い通路)の入口部分の発掘現場。土の圧力による崩壊の危険に備え、上部をおおう石の下に金属の支柱を差し込んでいる//ハンギョレ新聞社

 長鼓峰古墳は墳墓の長さが82メートル(溝を含む)、高さは9メートルに達する。皇南大塚などの新羅の慶州の大型古墳より大きい韓国国内最大級の墓だ。外見は日本で古代国家が成立する当時の墓の様式である前方後円墳(長鼓形墳墓)の形だ。前方後円墳は、墳墓の前方は四角い形で後方は丸みのある円形の特徴をとり、日本の学者が名付けた名称だ。日本の墳墓の形式である前方後円墳が古代の海上路の要所である全羅南道の海岸一帯に10基存在するという事実は、1980~1990年代に相次いで確認された。日本の右派勢力は、4~6世紀に日本が朝鮮半島南部を支配したという「任那日本府説」を裏付ける物証だと主張した。韓国と日本の学界で、埋葬された人物の出身地が朝鮮半島か倭国かをめぐり大きな議論となった。

【写真】空中から見下ろした海南の長鼓峰古墳の全景。前方は四角い形で後方は丸みのある円形の前方後円墳の特徴がはっきりとみえる。後方の円形の墳墓の上に7の字を逆にした形の穴を掘り石室を開いている発掘の様子がみえる//ハンギョレ新聞社
【写真】海南北日面方山里にある長鼓峰古墳の外見。前方は四角形で後方は丸い墳墓の形である古代日本特有の墓の前方後円墳の典型的な形だ//ハンギョレ新聞社

 長鼓峰古墳も議論の中で困難を経験した。80年代初め、学界に初めて報告された当時は、自然の地形である丘とみなされた。80年代半ばごろに嶺南大学のカン・イング元教授が発掘許可を申請したが、文化財委員会の許可が下りず、外側の実測しかできなかった。1986年に全羅南道記念物に指定されたが、保存措置がまともにとられず、90年代に2回盗掘された。国立光州博物館が2000年に盗掘の穴を確認し、緊急試掘調査により内部を一部確認したが、公式の発掘は20年後の昨年秋に始まった。
 しかし、墓の石室は2月末に再び埋められた。研究院側は「新型コロナウイルスの防疫のための措置で、5~9月に墓の周溝の追加発掘の後に一般公開を推進する」と明らかにした。しかし、一部では発掘による波紋も考慮したものだという見方が出ている。調査内容は、朝鮮半島の前方後円墳の墓の被葬者の議論を再び引き起こす公算が高い。過去20年ほどの間、百済政府の統制を受けた倭人官僚や傭兵という説と、日本に移住し現地の墓の文化の影響を受け帰国した馬韓人または百済人という説など、多くの推測が出された。長鼓峰古墳から九州の古墳と瓜二つの構造と鉄鎧の破片や鉄の矢じりなどの武器類が埋められた事実が確認されたことは、韓国国内の学界に負担になり得る。日本の右派学者が再び任那日本府説の根拠にすることがあり得るという懸念まで出ている。

【写真】昨年10月から今年2月まで調査された長鼓峰古墳の主な出土品。本来の副葬品は大部分が盗掘されたが、今回は蓋つきの土器の皿(蓋杯)やかまどの枠の破片、鉄製の鎧や鉄の矢じりの破片などが相当数出土し、墓の被葬者を推定する手がかりになるとみられる//ハンギョレ新聞社

 ソウル大学国史学科のクォン・オヨン教授の助言を思い出したい。「長鼓峰古墳は倭系統の墳墓の構造を有していますが、埋葬された人物を軽々しく断定してはいけません。外形、構造、遺物などを当時の情勢とともによく調べなければなりません。民族主義を越え古代人の観点まで考え、開かれたものの見方でアプローチしなければなりません」.

ノ・ヒョンソク記者、写真=馬韓文化研究院提供 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2021-03-21 11:46
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「徴用訴訟で勝訴の原告 「賠償金、三菱以外からは絶対受け取らない」」

2023年06月21日 | 国民国家日本の侵略犯罪
「聯合ニュース」 2023.06.20 18:29 
■徴用訴訟で勝訴の原告 「賠償金、三菱以外からは絶対受け取らない」
【光州聯合ニュース】日本による徴用被害者の梁錦徳(ヤン・グムドク)さんは20日、徴用訴訟で勝訴が確定した被害者への賠償支払いを日本企業に代わり政府傘下の財団が行うとする韓国政府の解決策を巡り、「政府の汚い金は絶対に受け取らない」とし「三菱重工業が支払う賠償金でなければ絶対に受け取らない」と既存の立場を改めて強調した。

【写真】梁錦徳さん(右)と握手するパク氏=20日、ソウル(聯合ニュース)

 梁さんは南西部・光州市の自宅で多数の市民団体からなる「歴史正義と平和な韓日関係のための共同行動(韓日歴史正義平和行動)」のパク・ソクウン共同代表と面会し、このような立場を明らかにした。
 梁さんはまた「長生きしてわが国が日本の手先にならないようにする」と述べた。
 パク氏は「政府の稚拙な行為を国民は許さないだろう。これまでのように韓国の正義を貫くために先頭に立ってほしい」とし、体調をくずしている梁さんの回復を祈った。
 パク氏は同じく徴用訴訟で勝訴が確定し、光州市内で暮らす李春植(イ・チュンシク)さんの自宅も訪れた。
 梁さんと李さんは市民団体「日帝強制動員市民の集まり」とともに政府の解決策による賠償金の受け取りを拒否している 。
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韓国野党 来週福島原発訪問へ=社民党が招待

2023年06月20日 | 
「聯合ニュース」 2023.06.17 08:01
■韓国野党 来週福島原発訪問へ=社民党が招待
【ソウル】韓国の革新系野党正義党は17日、東京電力福島第1原発の処理済み汚染水海洋放出を巡り、同党の姜恩美(カン・ウンミ)国会議員をはじめとする「福島汚染水阻止TF」のメンバーが22日から3日間の日程で福島県を訪れると発表した。
 今回の訪日は、日本の社民党の招きによるもので、一行のすべての日程には同党の大椿ゆうこ参院議員が同行するという。
 22日には、日本の超党派議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」と懇談会を開き、東電を訪れて記者会見や抗議のパフォーマンスを行う計画だ。また原発反対運動を進める日本の市民団体「さようなら原発1000万人アクション」とも懇談会を開く。
 23日には福島第1原発を訪問し、汚染水の保管場所として使用できるかなどを確認する予定だ。


「東亞日報」 June. 15, 2023 08:13
■野党議員73人、福島第一「処理水」で被害漁民支援特別法を発議
 最大野党「共に民主党」の議員らが、日本の福島第一原発の処理水の海洋放出を前に、被害漁民と地域を支援する特別法案を発議した。今週末、仁川(インチョン)で糾弾大会を開くことに先立ち、立法攻勢に乗り出した。
 14日、国会議案情報システムによると、同党や正義党など野党所属議員73人は、「原発処理水の海洋放出による被害漁業者支援及び海洋環境復元などに関する特別法」を前日に発議した。同党の宋在祜(ソン・ジェホ)議員(済州甲)が代表発議した特別法案には、同党最高委員の徐瑛教(ソン・ヨンギョ)、宋甲錫(ソン・ガプソク)議員らも名を連ねた。野党所属議員が大規模な共同発議に参加し、党指導部所属議員も含まれているため、法案推進に弾みがつくとみられる。
 特別法は、被害地域と被害漁業者に対する支援及び海洋環境の復元を迅速に行うことが主な内容だ。具体的には、△原発処理水災害管理基金及び首相傘下の原発処理水被害復旧特別対策委員会の設置、△特別災害地域宣言時の医療・防疫・防除などの支援、△漁民に対する廃業支援金の支給などが盛り込まれた。
 同党は17日、仁川で李在明(イ・ジェミョン)代表を中心に原発処理水の海洋放出に反対する野外集会を行う予定だ。同党関係者は、「日本の処理水放出を前後して、場内外での攻勢を強化する予定だ」と話した。


「The Hankyoreh」 2023-06-13 11:25
■「処理された汚染水が安全ならば、なぜ日本で使わないのですか」…日本政府の回答は
  [ニュースAS]福島原発汚染水の海洋放出「秒読み」

【写真】福島第一原発の敷地タンクに保管中の放射性物質汚染水/AP・聯合ニュース

 日本の福島第一原発の汚染水の海洋放出が秒読み段階に入ったなか、これに反対する側からは、汚染水が安全であるのなら、なぜ日本にとどめて置いたり再使用しないのかという声が強まっている。日本でも提起されたことのある意見だが、日本政府は「積極的に被ばくするのは望ましくない」「相当な調整と時間を要する」という否定的な立場を取っている。
 12日までに日本の環境団体や一般市民、専門家らが汚染水放出について提出した書面意見に対する経済産業省の答弁書によると、汚染水の「日本国内での再使用」に対する説明が出てくる。日本政府は主要な政策を決める際、「パブリックコメント」と呼ばれる意見公募の手順を踏む。
 経済産業省に提出された意見のなかには「多核種除去設備(ALPS)処理水が安全と言うならば、トリチウム水を国家公務員、国会議員、東京電力など関係者に飲んでもらいたい」というものがある。また、「(安全性の確認のために)ALPS処理水を生活用水として再利用してはどうか」という意見もあった。
 これに対して経済産業省は「ALPS処理水については、トリチウムの濃度を国内の規制基準を遵守するまで希釈すれば、これを飲んだとしても、放射線による健康影響は考えられません」と強調した。
 その一方で、「国際放射線防護委員会(ICRP)が公表している考え方であるALARA(As Low As Reasonably Achievable)の原則に基づくと、放射線による被ばくを可能な限り避けるという観点からは、希釈・拡散前の処理水について飲用や生活用水に活用することで、積極的に被ばくするのは望ましくないと考えています」と答えた。1977年にICRPが初めて提起した「ALARAの原則」は「合理的に達成可能な限り低く」という意味で、個人の被ばく量を可能な限り縮小することを要求した概念だ。
 日本政府が汚染水の安全性を強調しながらも「ALARAの原則」を取り上げて論じるのは矛盾だとする批判は避けがたい。日本も、燃料棒まで溶けて流れた事故を起こした福島第一原発と正常な原発から出る放射性物質に差があることは認めている。東京電力は資料で、福島の浄化処理前の汚染水には、セシウム137やストロンチウム90など、一般の原子力発電所からは出ない放射性物質が含まれていることを明らかにしている。セシウム137とストロンチウム90は、半減期(放射能量が初めて半分に減る期間)がそれぞれ30年で、人体に致命的となる放射性物質だ。東京電力は、浄化処理をしたALPS処理水を(海に)放出する場合、国家規制基準を遵守しているため問題ないとする立場だが、ALARAの原則には反する。
 こうした理由から、日本の原子力市民団体は、汚染水を10万トンクラスの超大型タンクに保存したり、汚染水にセメントや砂などを混ぜて固体として保管する「モルタル固体化」の方法を提案している。

【写真】環境運動団体の活動家らが5月19日、ソウルの光化門広場で日本の福島第一原発の汚染水海洋放出計画を批判する内容のパフォーマンスを行っている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 ALPSで放射性物質を除去して薄めた汚染水が安全であるのなら、近くにある福島第二原発などを含めた日本国内の他の場所に保管できるのではないかという意見も出された。海洋放出の中心的な理由の一つである福島第一原発のタンク敷地不足の問題を解決できる方法でもある。
 経済産業省は答弁書で「(ALPS)浄化処理や希釈を行うことにより規制基準を満たすようになった水についても、(第一原発の)敷地外に持ち出した上で処分する場合には、現行制度上、輸送中及び持ち出した先でも、所要の管理が求められます」と明らかにした。さらに、「輸送や保管、放出に当たって、(当該地の)自治体を始め様々な関係者との調整が必要となります。このため、その実施には、相当な調整と時間を要します」として、難しいという反応を示した。
 日本政府は、汚染水の海洋放出について、韓国、中国、太平洋諸島などの周辺国家だけでなく日本の漁業者も強く反対しているにもかかわらず、今年夏に押し切るという立場だ。日本が安全だと主張する汚染水の「日本国内での保管」をめぐり、意見の調整に時間がかかるため難しいという説明は、苦しい弁明に聞こえると言わざるをえない。
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-13 07:40


「The Hankyoreh」 2023-06-14 20:10
■「尹、日本汚染水放流をただ傍観…大統領らしからぬ行動容認できない」=韓国
 釜山水曜集会参加者、日本総領事館前で示威 
 約10万人の反対署名を集め、大統領室などに伝達予定

【写真】14日、釜山東区草梁洞の日本総領事館前の「平和の少女像」付近で、釜山の市民団体が福島原発核汚染水の海洋投棄を傍観する尹錫悦政府を批判する水曜集会を行った=キム・ヨンドン記者//ハンギョレ新聞社

 釜山水曜集会の参加者たちが、福島原発の核汚染水海洋投棄に反対しない尹錫悦政府を批判した。
 釜山で日本の戦争犯罪謝罪・賠償運動をする「釜山キョレハナ」は14日、釜山市東区草梁洞の日本総領事館前の「平和の少女像」付近で水曜集会を開き、「絶対に容認できない福島核汚染水投棄を拱手傍観している尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府を糾弾する」と明らかにした。
 同団体は「国民の憂慮を代弁すべき尹錫悦政府は、韓日関係改善という名目で核汚染水の海洋投棄に対して全面的に日本政府と意思を共にしている。海洋投棄そのものに対して憂慮や遺憾、反対のような語彙を一度も使ったことがない。さらに国民の力は、日本の核汚染水投棄に賛成することが国益だといううわごとを並べ立てている」と批判した。
 また同団体は、「日本政府は戦争犯罪に対する心からの謝罪と賠償もなく、全世界の生命体の安全を脅かす原発汚染水の海洋投棄を推進している。今月末、国際原子力機関の最終報告書が出れば、核汚染水の海洋投棄を始めるという。海が汚染されれば、地球の水が汚染されるのと変わらない。しかし、日本側は価格が安いという理由だけで核汚染水の海洋投棄に積極的に乗り出す」と主張した。
 「釜山青年キョレハナ」のパク・ボムシク会員は「国民の安全を無視して国家間の関係だけに集中する大統領らしくない歩みをこれ以上容認できない。汚染された海を絶対に後代に譲らないという気持ちを込めて(核汚染水の海洋放流阻止に)最善を尽くす」と述べた。
 同団体は、釜山の市民社会団体と多くの政党が共にする「日本福島原発核汚染水海洋投棄反対釜山市民10万宣言運動」を先頭に立って知らせ、市民と力を合わせて核汚染水の海洋投棄反対に努める方針だ。
 これに先立って釜山の市民団体は8日、日本福島原発核汚染水の海洋投棄反対、釜山市民10万宣言運動に乗り出した。1カ月間で釜山市民10万人の核汚染水海洋投棄反対署名を集め、大統領室と釜山市、日本大使館などに伝達する計画だ。
キム・ヨンドン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-14 14:23


「中央日報日本語版」 2023.06.13 17:55
■旭日旗燃やした済州の農漁民団体「汚染水日本国内保管せよ」
 済州(チェジュ)地域の農漁民と市民社会団体などが日本政府の福島原発汚染水海洋放流計画を強く糾弾して大規模集会を開いた。
 済州地域の50以上の団体で構成された福島核汚染水海洋投棄とTPP阻止済州汎道民運動本部は13日午後、済州の日本総領事館向かい側の片道2車線道路で集会を開き、「日本政府は福島原発汚染水放流計画を即時撤回せよ」と促した。
 集会には警察の推定で800人ほど、主宰側推定で1000人が参加した。
 参加者は原発汚染水放流計画に対する抗議の意思表示として「阻止!核汚染水海岸投棄」「死守!国民生命権」などと書かれたプラカードを持ち、「核汚染水海洋投棄計画を撤回せよ」などとスローガンを叫んだ。
 また、ドラム缶に旭日旗が描かれた垂れ幕を破って入れた後、海女が海中で獲物を捕る時に使う漁具などととともに燃やした。
 この団体は「福島原発汚染水の安全性に対する不信が全世界に広まっている。だが韓国政府は原発汚染水に対する心配と懸念が怪談に起因するとしながらむしろ信頼を送る奇異な状況が広がっている」と批判した。
 この団体は「原発汚染水の安全性が適切な科学的方法により検証され立証されたとするなら海洋投棄を防ぐ理由も名分もない。だが試料採取から分析方法全般にわたって弱点と欺瞞だけ持続してさらしており、証明責任がある日本政府は明確な立場を見せていない」と主張した。
 この団体は「日本国内でもデモと集会が続いている状況自体が原発汚染水の危険性を傍証するもの。日本政府は国際的犯罪行為と変わらない福島原発汚染水の海洋投棄をあきらめ自国内に保管せよ」と強調した。
 参加者は1時間30分にわたり行われた集会を終え、要求事項を盛り込んだ抗議書簡を在済州日本総領事館に伝達した。


「The Hankyoreh」 2023-06-13 07:28
■[寄稿]福島第一原発の汚染水問題でメディアがなすべきこと
 チェ・ジョンイム|世明大学ジャーナリズム大学院長

【写真】日本放射性汚染水海洋投棄阻止ソウル行動の発足記者会見で、参加者たちが汚染水の海洋放出を糾弾し、パフォーマンスを繰り広げている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 英国BBCがラジオドラマ形式で放送中のドキュメンタリー「フクシマ」は、2011年3月の原発事故が「人災」だったことを示してくれている。東京電力の首脳部は、2008年に内部の研究者が「マグニチュード9の強震で12~15メートルの津波が原発を襲う可能性があるため、防波堤を高くするべきだ」と報告すると、鼻で笑った。彼らが無視したシナリオは現実となり、電源が水に浸かって停電し、炉心溶融(メルトダウン)が起きた。東電の首脳部は経済的損失を懸念して炉心冷却のための海水注入に反対しているうちに、早期の収拾の機会を逃してもいる。同社は2018年、トリチウム(三重水素)以外の放射性物質は多核種除去設備(ALPS)ですべてろ過されると言ったが、処理した汚染水の70%に基準値以上の放射性物質が残っていたことが暴露された。
 汚染水放出問題は、東電のこうした誤った判断やうその前歴と切り離して考えることはできない。にもかかわらず、韓国の原子力界と一部の政治家は、東電を信じ切っているようだ。彼らの主張はこうだ。第1に、汚染水に含まれる64種の放射性物質をALPSで繰り返しろ過すればトリチウムだけが残り、すべて基準値以下になる。国際原子力機関(IAEA)がそれを検証しているので信頼できる。第2に、トリチウムは飲み水の基準以下に希釈して排出し、莫大な量の海水と混ざるので濃度は無視できるほどになる。第3に、トリチウムが健康に被害を及ぼすことを示す研究はない。第4に、福島第一原発事故の直後に高濃度の汚染水が大量排出されたが、それからの12年間で韓国海域の放射性物質濃度には変化がなかった。第5に、福島第一原発から1年間に放出されるトリチウムの量は、韓国の原発から放出されるトリチウムの量より少ない。第6に、米国などの他国は大丈夫だと言っているのに、韓国だけが大騒ぎしている。
 いっぽう国内外の独立的な専門家たちは、汚染水の環境や健康への影響を憂慮している。太平洋諸島フォーラム(PIF)の委任で研究中の核物理学者フェレンツ・ダルノキベレス、核工学者アルジュン・マクジャニ、生物学者ティモシー・ムソー、そして韓国の産業保健医学者ペク・トミョンとキム・イクチュン、核工学者ソ・ギュンニョルなどが代表的な例だ。彼らの主張はこうだ。第1に、汚染水には発表されたものより多くの種類の放射性物質が含まれており、ALPSの処理能力不足や故障などでトリチウム以外の核種も放出される可能性が高い。IAEAは「原発の育成」が目的であるため、このような問題を明らかにする意志はない。第2に、セシウム、ストロンチウムなどを含む汚染水が船舶平衡水(バラスト水)として韓国の海に直に運ばれてくる可能性があり、魚の食物連鎖などによって人体に影響を与えうる。第3に、トリチウムが有機結合型トリチウム(OBT)として体内に吸収されるとがんや遺伝性疾患を誘発するという研究がある。第4に、福島第一原発事故の直後、東海(トンヘ)沿岸の堆積層でセシウムの数値が急増した記録がある。放射性物質の濃度の変化をきちんと測定するためには、サンプルを大幅に増やさなければならない。第5に、正常に稼動している韓国の原発が排出している水は事故原発の汚染水と同列には扱えないが、韓国の原発のトリチウムも問題だ。原発の周辺地域の住民の甲状腺がん発症率は他の地域の数倍にもなり、韓国水力原子力を相手取って集団訴訟が行われている。福島第一原発の汚染水は、すでに排出されてしまった放射性物質にさらに加わるという点、廃炉の状況によっては30年以上にわたって放出されうるという点で深刻だ。第6に、米国政府は核実験などの原罪と自国の原発問題があるため無視しているが、太平洋の18の島国、中国、香港、ロシア、ドイツなどは放出に反対している。
 メディアはこのような相反する主張を可能な限り検証し、真実を突き止めなければならない。汚染水問題は特に、気候環境、エネルギー、外交、科学などの様々な分野が協業して「事案の全貌」を示さなければならない。残念ながら現在、多くのメディアはそれぞれの声を「中継」するにとどまっている。一方ハンギョレはキム・ソヨン、キム・ジョンス両記者ら関連取材陣の積極的な取材と充実した報道が期待を高める。ただし、協業とマルチメディアによって「立体的な全貌」を見せることに関しては多少物足りなさを感じる。代案についても今より多くの報道が必要だ。超大型タンクへの長期貯蔵やコンクリート埋め立てなどの「陸上保管」方法を、海外の例なども示しつつ具体化するとともに、国際海洋法裁判所に暫定措置を求めるなど、韓国政府の取りうる選択肢も詳しく伝えてほしい。
 環境や健康に関する危険は「予防原則」に則ってあらかじめ対処することこそ正しい。すべてのメディアは「多くの専門家が被害を警告する汚染水放出を放置してもよいのか」と政府に厳しく問うべきだ。
韓国語原文入力:2023-06-12 19:05


「The Hankyoreh」 2023-06-13 07:15
■韓国首相「日本の汚染水放出についての虚偽事実流布は司法措置の対象」
 民主党の放出反対については「扇動」 
 「処理水、飲用基準満たせば飲める」
 韓国のハン・ドクス首相は福島第一原発の汚染水放出をめぐる懸念の声について、「度を越した虚偽事実の流布などで水産業従事者に被害が生じた場合、司法当局が適切な措置を取ると考える」と述べた。「汚染水放出反対」を主張する野党「共に民主党」に対しては「利害当事者に被害を与えるなら(野党の主張を)扇動だと非難しても間違いではない」と述べた。「漁業者などに被害を与えるなら」という前提付きではあるものの、捜査の可能性をほのめかしていることから、汚染水放出に反対する声に圧力をかけている格好だ。ハン首相は、世界保健機関(WHO)の飲用基準を満たせば汚染水は「飲める」とも述べた。
 ハン首相は12日に国会で行われた政治・外交・統一・安保分野の対政府質問で、「政府は、怪談によって国民を扇動する行為が偽りであることが明らかになれば、厳しく責任を問うか」と与党「国民の力」のキム・ソッキ議員に問われ、「虚偽事実の流布行為は民事上の損害賠償請求の対象になりうるし、特定の人物に言及した虚偽事実の流布は刑事上の業務妨害や名誉毀損が成立しうる」と述べた。
 ハン首相は続いて「民主党が扇動の先頭に立っているが、どう思うか」との質問に対し、「科学的事実のない内容で利害当事者に被害を与えれば、扇動だと非難しても間違いではない」と答えた。
 これに対して民主党のキム・ソンジュ議員は、「世論調査を見ると、国民の67.6%が政府の対応は信頼できないと言っている。日本国民も日本政府の説明は不十分だと言っている人が62%だ。国民が信じられないのは怪談の影響を受けているからなのか」とハン首相に問いただした。キム議員は続けて「福島沖でセシウムに汚染されたクロソイが発見されたため、日本の漁業者も(汚染水)放出に反対しているが、韓国政府は懸念ではなく放射能の怪談を心配している。政府は日本の首相室なのか」と追及した。
 ハン首相は「福島第一原発の汚染処理水は飲んでも良いと思うか」とキム議員に問われ、「完全に科学的に処理されたものであれば、WHOの飲用基準を満たしていれば飲める」と答えた。
 一方、この日の対政府質問では、与党議員を中心として、労働組合が利敵行為を行えば政党のように解散させることができる法案を準備すべきだとの主張がなされた。国民の力のキム・サンフン議員はハン・ドンフン法務部長官に対して「民主労総が利敵団体や反国家団体ならば犯罪団体として捜査すべきで、必要ならば解散もできるようにすべきだ」と述べた。これに対しハン長官は「過去にも一般団体、結社が利敵行為を行えば解散させることのできる法案が上程されたが、可決されなかった。立法が進められれば法務部から誠実に意見を表明する」と述べた。
ソン・ヒョンス、シン・ミンジョン、カン・ジェグ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1095619.html
韓国語原文入力:2023-06-12 18:55


「中央日報日本語版」 2023.06.13 07:54
■「日本の汚染水だめ」尹政権に立ちはだかる大邱市長、総選挙控え爽快発言
 「韓国は日本の福島原発汚染水海洋投棄を賛成することもなく、賛成してもなりません」。
 大邱市(テグシ)の洪準杓(ホン・ジュンピョ)市長が11日、自身のフェイスブックに投稿した文の一部だ。こうした単純明快な汚染水放流反対の立場は与党の気流とは異なる。与党「国民の力」と韓国政府はこれまで「国際原子力委員会(IAEA)の調査結果を尊重する」として主に「科学的アプローチ」を強調してきた。しかし洪市長は「これは韓日米の経済・安保同盟とは別個の世界の人の健康権問題。(日本が汚染水を)海洋放流する場合、どこの国も日本の海産物を輸入しないだろう」と警告した。海を挟んだ日本の汚染水放流にもっと敏感になっている慶尚南道(キョンサンナムド)を率いる「国民の力」所属の朴完洙(パク・ワンス)知事が12日に「安全が担保されていない福島汚染水放流に反対する」としながらも「デマと怪談が流布され水産業界と商人が被害を受けないよう対処しなければならない」と話したのと比較すると洪市長の発言レベルははるかに強いとみることができる。
 それでも洪市長が日本関連の問題に無条件で強硬な立場を見せてきたのではない。洪市長はこれまで尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が韓日関係正常化に向け努力する外交的な歩みを後押ししてきた。3月に韓国政府が第三者弁済方式を骨子とした強制徴用被害補償案を発表した後に議論が起きると洪市長は「私の父も徴用工だった。北朝鮮の核と安保が厳しい状況で韓日米自由主義同盟を強固にするための苦肉の策」と評価した。4月の尹大統領の訪日成果に対する野党の批判に対しても「正攻法で国民に説明して理解を求めるのが良くないだろうか」としてかばう姿を見せた。
 そんな洪市長が福島問題に独自の声を出すと与党内でも解釈が入り乱れている。党内の人たちは政界のベテランの洪市長が日本問題の世論の敏感性をだれよりもよく知っているためとみている。竹槍歌を歌っていた文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の「反日フレーム」を嫌いだからといって安全問題と直結する原発汚染水問題に国民世論が寛容なはずがないことを政治本能的に知っているだろうという話だ。与党関係者は「洪市長は数回フェイスブックを通じて日本関連問題に対しては尹錫悦政権が国民を直接説得する過程がなければならないと指摘した。それでも政府が努力を見せないので正鵠を射ったとみられる」と話した。実際に党内には「日本が汚染水を放流した後に国民世論が悪化し反日感情が刺激されれば総選挙を控えて与党がその責任をかぶせられないか」という懸念の声も存在する。
 一部では日本との外交的関係を考慮するほかない韓国政府に代わり洪市長が積極的に声を出しているものとの分析もある。あるベテラン議員は「与党内でも福島汚染水放流に対する懸念の見方があるということを日本政府が知らなくてはならないのではないか」と話した。実際に洪市長は12日に自身が作った青年プラットフォーム「青年の夢」で、ある支持者が「党や政府で洪市長に害を及ぼさないか心配」と述べると、「多様な意見が与党内でもなければならない」と答えた。
 与党の重鎮政治家として外交分野で持続的に自分の主張をしようとする意図という見方もある。
 先月2日に「共に民主党」の田溶冀(チョン・ヨンギ)議員らが独島(ドクト、日本名・竹島)を訪問し日本政府が公開的に遺憾を示した時も洪市長は「韓国の議員が韓国の土地に行くのになぜ干渉するのか、本当に滑稽なこと」と一喝して注目を浴びた。当時日本との外交関係を解いていくために努力する韓国政府と足並みを合わせるため相対的に慎重な立場を見せた与党と違い明快な反応を見せたのだ。
 日本だけでなく中国に向かっても連日強いメッセージを出しているのも同じ脈絡と解説される。洪市長は邢海明駐韓中国大使が民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表と8日に会った席で「米国が勝利し中国が敗北するという賭けをしているがこれは誤った判断」としながら韓国政府を狙ったことに対し「横柄なことこの上ない」と直撃した。洪市長は「やることなすこと文在寅政権当時に韓国政府に対したようにする。大国根性だけで国を引っ張っていくのが難しい時代になったのに本当にあきれる中国大使の時代錯誤的発言」と公開批判した。
 与党関係者は「韓国国民の大多数は中国であれ日本であれだれにでも堂々としていることを願う。洪市長の立場ではそうした国民の目線に合わせてスカッとする発言を続けているのではないだろうか」と話した。


「中央日報日本語版」 2023.06.12 10:35
■「日本汚染水放流に反対」大邱市長、周りから懸念の声に「与党も様々な意見が必要」=韓国
 洪準杓(ホン・ジュンピョ)大邱(テグ)市長は日本政府の福島原発汚染水放流の動きに対して明確に反対の立場を示した理由について「様々な意見が必要だ」と説明した。
 12日、洪市長は自身が作った疎通チャンネル「青年の夢」で支持者たちが「洪市長らしく国民の力を気にせず汚染水の放流に反対し、すっきりした」としながらも「このようなことで与党や政府が洪市長に害を及ぼすのではないかと心配だ」と言うと、「様々な意見が与党内でも必要だ」とし、国民の一部の憂慮を代わりに伝えたものだと話した。
 洪市長は「政府としても仕方ないだろう」とし、「日本が国際原子力機関(IAEA)から『安全性』を担保されたと主張し、韓米、韓日、韓日米関係など北東アジアの情勢などを考えると、韓国政府もひたすら拒否することは難しいと納得できる側面がある」と指摘した。
 これに先立って、洪市長は11日、自身のフェイスブックを通じて「わが国は日本の福島原発汚染水の海洋投棄に賛成せず、賛成してはならない」として汚染水の放流に反対した。
 また「これは韓日米経済安保同盟とは別に世界人の健康権問題であるためであり、海洋投棄は日本の自害行為になるだろう」と警告した。
 これはIAEAの検証結果、問題がなければ汚染水の放流に反対しないという政府与党の動きとは温度差がある発言だ。
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