三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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「慰安婦支援団体前理事長の寄付金横領事件 検察が上告=韓国」

2023年09月30日 | 日本軍隊性奴隷
■慰安婦支援団体前理事長の寄付金横領事件 検察が上告=韓国 
「聯合ニュース」 2023.09.26 19:52
【ソウル聯合ニュース】旧日本軍の慰安婦被害者を支援する韓国の市民団体「日本軍
性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」への寄付金を横領した罪などに問われた同団体前理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員(無所属)の裁判を巡り、検察側は26日、懲役1年6カ月、執行猶予3年とした9月20日のソウル高裁の判決を不服として大法院(最高裁)に上告した。法曹関係者が明らかにした。
 今年2月の一審では尹被告による1718万ウォン(約190万円)の横領が有罪と認められ、罰金1500万ウォンの判決が言い渡された。控訴審では横領の認定額が8000万ウォンに増え、一部の罪が追加で有罪と判断されたことで量刑が重くなった。検察は懲役5年を求刑していた。
 韓国の国会議員は、犯罪の内容にかかわらず執行猶予付きであっても禁錮以上の刑が確定すれば関連法により失職する。


■慰安婦支援団体の前理事長に執行猶予付き判決 寄付金横領=韓国高裁
「聯合ニュース」 2023.09.20 13:33
【ソウル聯合ニュース】旧日本軍の慰安婦被害者を支援する韓国の市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」への寄付金を横領した罪などに問われた同団体前理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員(無所属)の控訴審で、ソウル高裁は20日、懲役1年6カ月、執行猶予3年の判決を言い渡した。検察は懲役5年を求刑していた。

【写真】判決後、記者の質問に答える尹美香氏=20日、ソウル(聯合ニュース)

 今年2月、一審は尹被告による1718万ウォン(約190万円)の横領を有罪と認め、罰金1500万ウォンの判決を言い渡した。控訴審では横領の認定額が8000万ウォンに増え、一部の罪が追加で有罪と判断されたことで量刑が重くなった。慰安婦被害者の故金福童(キム・ボクドン)さんへの香典を関係のない用途に使用した罪、人件費を偽り女性家族部などから数千万ウォンの国庫補助金を詐取した罪など、一審で無罪と判断されていた罪が有罪と認められた。
 高裁は「慰安婦支援などのための寄付金の管理を徹底する必要があったにもかかわらず、期待を裏切って横領し、挺対協(正義連の前身の韓国挺身隊問題対策協議会)を支援する人々に被害を与えた。直接の弁償や被害の回復も行われなかった」と指摘。一方で、「30年にわたり人的・物的資源が不足する中で活動を続けたこと、複数の団体や慰安婦の家族らが善処を求めたことを考慮した」と量刑理由を説明した。
 国会議員は、犯罪の内容にかかわらず禁錮以上の刑(執行猶予を含む)が確定すれば国会法と公職選挙法により失職する。
 尹被告は判決直後、記者団に「裁判で私の無罪を十分に立証するため最善を尽くしたが、受け入れられなかった。上告して無罪を立証する」と述べた。「このことによって慰安婦問題の解決に向けた30年間の運動がおとしめられることのないよう努める」とも語った。
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国連特別報告者、「韓日慰安婦合意の改正」を勧告…韓国政府「合意を尊重」

2023年09月09日 | 国民国家日本の侵略犯罪

「The Hankyoreh」 2023-09-15 11:56
■国連特別報告者、「韓日慰安婦合意の改正」を勧告…韓国政府「合意を尊重」
 国連の真実・正義・賠償・再発防止の促進に関する特別報告者 
 人権理事会の会議で韓国に関する報告書を発表

【写真】国連の真実・正義・賠償・再発防止の促進に関する特別報告者のファビアン・サルビオリ氏=ジュネーブ/国連テレビ・聯合ニュース

 韓国の過去事清算問題を調査した国連特別報告者が13日(現地時間)、韓国の「国家保安法」廃止と2015年の韓日「慰安婦」合意の改正を韓国政府に勧告した。
 国連の真実・正義・賠償・再発防止の促進に関する特別報告者のファビアン・サルビオリ氏は、スイス・ジュネーブの国連事務所で開かれた第54回国連人権理事会会議で、このような内容を取り入れた韓国訪問報告書を発表した。サルビオリ氏は昨年6月8日から15日まで韓国を訪問し、慰安婦被害者など過去事に関連する人物や団体に会って意見を聞き、韓国の人権状況を調べた。
 サルビオリ氏はこの日の会議で「韓国は法治と民主的な支配構造、過去の人権侵害を扱う法律的な体系の導入などで進歩を遂げた」としつつも「すべての被害者の人権侵害を徹底的に調査し正すための努力をさらに強化しなければならない」と報告した。深刻な人権侵害を犯した犯罪者に対する司法的責任追及がないこと、過去の国家暴力を招いた制度および規制の改革が進展していないことなども、問題として指摘した。
 サルビオリ氏は報告書で「多くの人権団体が、かつて人権弾圧の中心にあった国家保安法を廃止するよう要求しているが、同法はいまだに廃止されていない」とし「同法の曖昧な条項が、表現の自由と結社の自由を平和に行使しようとする人や団体に向けて依然として活用されている」と批判した。報告書では「国家保安法を廃止、あるいは国際基準に合うよう改正するための具体的な措置を取るよう韓国政府に勧告する」、「『集会とデモに関する法律』と国家情報院法も国際基準に合わせて再検討するよう勧告する」と明らかにされた。
 また、2015年の韓日政府間における「慰安婦」合意に関して、「国連人権機関は、この合意が国際人権基準に合わない点に懸念を表明し、被害者の観点を考慮するよう求めた経緯がある」とし「国連拷問防止委員会も、この合意が補償と賠償を提供できない点に憂慮を示した」と指摘した。さらに「第2次世界大戦における(日本軍)性奴隷制の生存被害者が、国際基準に則って真実・正義に符合する賠償と再発防止措置を保障されるよう、合意を改正することを勧告する」と明らかにした。
 朴槿恵(パク・クネ)政権と日本の安倍政権は2015年12月28日、日本軍「慰安婦」被害者問題の解決策に合意し、合意事項の着実な履行を前提に「最終的かつ不可逆的な解決」を宣言した。日本政府はこの問題に対する「責任」を取り上げ、韓国政府が設立した財団に10億円を提供することにした。だが、韓国挺身隊問題対策協議会などの関連団体は、日本の真の謝罪が含まれていない合意だと批判してきた。
 報告書はまた、第2期真実・和解のための過去事整理委員会の任期延長、過去の人権侵害に関する機密記録の公開および真実究明機関が記録を参照するのを許容すること、国家の違法行為に対する賠償請求の消滅時効の排除、被害立証責任に関する政策の変化を実現する立法的措置なども共に勧告した。
 聯合ニュースの報道によると、駐ジュネーブ韓国代表部のユン・ソンドク大使は同日、サルビオリ特別報告者の発表直後、「日本軍慰安婦被害問題については、2015年の韓日慰安婦合意を両国間の公式の合意として尊重するという立場のもと、被害者の名誉と尊厳回復および心の傷を癒すために努力している」と述べた。
 一方、4・9統一平和財団、民族問題研究所、カトリック人権委員会など国連人権理事会韓国NGO代表団は、韓国政府の過去事と関連した措置に対する意見を14日の会議で提示する予定だ。
シン・ギソプ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2023-09-14 19:40


「The Hankyoreh」 2023-09-09 06:50
■韓国外交部、慰安婦・強制動員歴史問題関連予算を大幅に削減
 約3千万円から1160万円に大幅削減 
 外交部「国際法的検討の需要減少」

【写真】2018年10月30日、日本の新日鉄住金(現日本製鉄)を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、最終勝訴した強制動員被害者のイ・チュンシクさん(右)が感想を述べながら涙を流している=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 韓国外交部が来年度予算案で日本軍「慰安婦」、原爆被害者、強制動員被害者問題など韓日の歴史問題へ対応関連予算を大幅に削減したことが分かった。
 8日、野党「共に民主党」のパク・ホングン議員室が分析した資料によると、外交部は「韓日請求権協定」関連対応予算を今年の2億6900万ウォン(約3千万円)から2024年度には1億500万ウォン(約1160万円)に半分以上減らした。日本軍「慰安婦」、原爆被害者、強制動員被害者など1965年韓日請求権協定で解決されなかった歴史問題に対する韓国政府レベルの国際法的対応論理の開発に使われる予算が大きく減ったわけだ。
 具体的には「慰安婦、原爆被害者、強制動員被害者問題」など、韓日請求権協定関連研究に関連した予算が1億6200万ウォン(約1790万円)から5000万ウォン(約550万円)に大幅に削減された。「韓日請求権協定関連法的対応論理開発」のために民間専門家諮問に配分された予算は9500万ウォン(約1050万円)から5000万ウォン(約550万円)に減った。
 韓日請求権協定対応関連予算は文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に、朴槿恵(パク・クネ)政権に比べて2倍以上増えたが、来年度予算案から再び朴槿恵政権時代の水準に戻った。2017年度予算案で1億600万ウォン(約1170万円)だった該当予算は2018年1億5000万ウォン(1660万円)に増えた後、2021~23年度予算案には2億6900万ウォン(約2970万円)にまで増額された。
 それだけでなく、外交部は来年度予算案で韓日間の歴史問題への対応と関連し、「正しい歴史認識の構築に向けた努力および歴史問題懸案の進展を図る」ための予算も今年14億2600万ウォン(約1億5750万円)から8億4400万ウォン(約9320万円)に40%以上削減した。日本が世界遺産登録を試みている佐渡鉱山(「佐渡島の金山」)対応関連予算も2053万ウォン(約230万円)から1760万ウォン(約190万円)に減った。一方、外交部全体予算は4兆2895億ウォン(約4740億円)で、今年より約12.8%増えた。
 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が強制動員被害者賠償問題を「第三者弁済」方式で急いで幕引きを図り、韓日関係改善に乗り出したことで、関連予算も大きく削減したものとみられる。外交部関係者は「請求権協定と関連して国際法的に検討する需要が減った」とし、「総額は維持し、(韓日請求権協定関連で)削減された予算は海洋法関連予算に再分配された」と説明した。
 しかし、依然として歴史問題に対する韓日間の認識の差が大きい状況で、関連予算の削減が政府の対応能力を弱める恐れがあるという懸念の声があがっている。パク・ホングン議員は「被害者が反対する第三者弁済案だけを出した状態で、歴史問題をめぐる日本への対応はあきらめたということだ」とし、「韓日関係の復元とは別に、今後残った交渉のためにも、韓国側の論理を用意する必要がある」と懸念を示した。

イム・ジェウ、シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-09 01:14
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「ユン・ミヒャン議員と総連「理念論争の悲劇」」

2023年09月08日 | 国民国家日本の侵略犯罪
「The Hankyoreh」 2023-09-08 08:10
■[特派員コラム]ユン・ミヒャン議員と総連「理念論争の悲劇」
 関東大震災朝鮮人虐殺100年にあたる1日、時ならぬ「理念論争」が登場した。韓国と日本の市民数百人が東京のど真ん中で日本政府に対して真相究明と謝罪を要求した声が、「理念論争」を前にあっけなく打ち消されてしまった。「痛みが癒されるよう、日本政府が出てきてほしい」。慶尚南道居昌郡(コチャングン)から東京まで来た朝鮮人犠牲者遺族のチョ・グァンファンさん(63)の切実な叫びが埋もれてしまい、非常に痛ましい。
 事件の発端は、在日本朝鮮人総聯合会(総連)が1日午後、日本の市民団体と共同で主催した「関東大震災朝鮮人虐殺100年東京同胞追悼会」にユン・ミヒャン議員が参加したことだ。韓国の国会議員が親北朝鮮団体である総連の行事になぜ出席したのかということで、保守メディアが攻撃を始め、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、事実上これを「反国家行為」だと規定した。
 在日本大韓民国民団(民団)中央本部は4日に談話を出し、ユン議員の国会議員職の辞職を要求し、「韓国当局が反国家的勢力とのつながりを徹底的に調査するよう」求めた。
 民団の談話は変だ。1日には関東大震災朝鮮人虐殺が起きた別の場所である埼玉県でも、追悼行事が行われた。埼玉県の本庄市、上里町、熊谷市の3つの地方自治体が、それぞれ時間をずらして主催する「朝鮮人犠牲者追悼式」だ。これらすべてに民団と総連の地域代表が参加した。朝日新聞は2日、「(民団の埼玉県地方本部団長と総連の埼玉県北部支部委員長の)両氏とも、追悼を続けてきた市や関係者への感謝」を示し、「不幸な過去を教訓にして日本と南北朝鮮の未来につなげることへの期待をにじませた」と報じた。「反国家的勢力」と協力する民団の埼玉県地方本部はどのように説明するのだろうか。
 在日コリアン社会は簡単ではない。韓国と日本が解決しなければならない争点である強制動員被害者、日本軍「慰安婦」、関東大震災朝鮮人虐殺、原爆犠牲者などの歴史問題を追っていくと、「総連」と常に向き合うことになる。総連の人たちは、民族の痛みをめぐり日本を相手に激しく戦ってきた。不幸なことに、民団と総連は、南北分断にともなう理念対立のため、「共通の痛み」ですらともに感じることができない場合が多かった。
 韓国の民主化や冷戦終結などの時代の変化によって、在日コリアン社会も大きく変わった。1980年代後半から留学や就職を目的に韓国から日本に渡った、いわゆる「ニューカマー」が急速に拡大した。理念を跳び越え文化で一つになる「ワンコリアフェスティバル」(1990年開始)には、民団・総連・ニューカマーがともに参加している。
 「理念論争」は、日本で在日コリアンへの差別・排除・ヘイトにもつながる。韓国人ヘイトで悪名高い極右団体「在日特権を許さない市民の会」は、朝鮮学校に対して「日本人を拉致する学校は追い出さなければならない」としてデモを行い、最近になり裁判所で名誉毀損罪が認定された。新型コロナウイルスが荒れ狂った2020年には、マスク不足現象が深刻化したため、埼玉県が教育機関などに備蓄マスクを配布する計画を立てたが、朝鮮学校幼稚部だけ対象から除外した。フジ住宅は、2年半以上にわたり「(韓国は)嘘が蔓延している民族性」と書かれた文書を社内に配布し、化粧品大手のDHCが運営するネット番組の出演者は「チョーセンジン」というヘイト発言を浴びせかけた。
 100年前の関東大震災「朝鮮人虐殺」という惨劇は、朝鮮人に対する差別とヘイトも一つの原因だった。私たちは歴史で何を習っているのだろうか。
キム・ソヨン|東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-08 02:36


「The Hankyoreh」 2023-09-07 07:06
■韓国の関東大震災犠牲者追悼団体「尹政権の『理念攻勢』、100年前の狂風の再現」

【写真】関東大震災虐殺100周忌追悼事業推進委員会のメンバーたちが6日午後、ソウル龍山区の大統領室近くで記者会見を開き、韓国政府に虐殺犠牲者への追悼に対する理念攻勢をやめ、真相究明に乗り出すよう求めている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 関東大震災における朝鮮人虐殺犠牲者を追悼する市民団体が韓国政府と与党に「理念攻勢をやめ、直ちに真相究明に乗り出せ」と主張した。
 「関東大震災虐殺100周忌追悼事業推進委員会(推進委)」は6日、ソウル龍山区(ヨンサング)の戦争記念館前で記者会見を開き、「関東大震災における虐殺被害の真相を究明するために総力を尽すべき政府が『理念攻勢』をかけている」とし、「北朝鮮追従勢力というレッテルまで貼り、非難攻勢を強めているこの状況はまるで100年前の(関東大震災における虐殺の)狂風が再現されているかのようだ」と糾弾した。
 無所属のユン・ミヒャン議員が1日、東京で在日朝鮮人総連合会(朝鮮総連)主催の関東大震災虐殺犠牲者追悼式典に出席したことを受け、保守メディアと政府、与党は「反国家団体の行事に出席した」として、ユン議員除名を求めるなど、総攻勢を繰り広げている。
 推進委は「総連主催の追悼式典はさまざまな追悼集会の主催の一つだ。断絶した朝鮮半島とは異なり、日本では(南北の)垣根がないため、様々な行事会場で朝鮮総連の在日コリアンに会う」とし、「このような現実を無視し、追悼集会に参加したことを口実に反国家団体と交流したと決めつけるのは、関東大震災における虐殺問題の真相究明に努めてきた日本の市民社会と在日コリアンたちの努力に理念の物差しを突きつける歪曲された姿勢だ」と批判した。
 彼らは「韓国政府が日本の地で(虐殺によって)亡くなった6661人を悼み、日本政府に責任を問えなかった過去を反省しても足りないのに、枝葉のことを問題視し、日本で行われた追悼行事の意義を損ねている」とし、「政府が関東大震災の虐殺犠牲者の追悼式を開いたり追悼文を発表したことがあるのか」と問い返した。
 関東大震災は1923年9月1日、関東一帯に発生したマグニチュード7.9の大規模地震で、当時日本の警察が介入して「朝鮮人が暴動を起こした」というデマを流し、朝鮮人に対する無差別虐殺が発生した。
 昨年7月に発足した関東大震災虐殺100周忌追悼事業推進委員会には6・15南北共同宣言実践南側委員会や正義記憶連帯、強制動員問題解決と対日過去清算のための共同行動、韓国進歩連帯など57団体が参加している。

【写真】関東大震災虐殺100周忌追悼事業推進委員会のメンバーたちが6日午後、ソウル龍山区の大統領室近くで記者会見を開き、韓国政府に虐殺犠牲者への追悼に対する理念攻勢をやめ、真相究明に乗り出すよう求めている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

クァク・チンサン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-07 02:44
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釜山の市民団体、日本の核汚染水放流反対記者会見

2023年09月07日 | 
「中央日報日本語版」 2023.09.07 16:50
■釜山の市民団体、日本の核汚染水放流反対記者会見
 日本の福島原子力核汚染水海洋放流反対対策委員会である釜山(プサン)を愛する市民政策連帯が7日午前、釜山駅広場で日本の福島核汚染水海洋放流を反対する記者会見を開催した。
 政策連帯はこの日の記者会見で、「中国など太平洋沿岸諸国の懸念と反対にもかかわらず、日本政府の福島核汚染水海洋放流が1週間以上続いている。核汚染水を放流し始めれば日本に最も隣接した韓国の被害は明らかだ。当然韓国も核汚染水放流を積極的に反対し始めなければならないようだが韓国政府の反応は微温的なだけだ。核汚染水放流に積極的に反対していない」と背景を説明した。
 続けて「日本の福島核汚染水放出に反対するある教授は韓国政府の微温的反応に対し尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が基本的に原子力に対する効用性が大きい政権であるためと解釈した。すなわち原子力に対する危険性を過小評価し放射性物質が大きく危険ではないとの認識を持っているということだ。さらに核汚染水放流を外交同盟を強化するひとつの方法とみているのも大きな問題で、これを通じ現政権は福島核汚染水放流に免罪符を与えている」と指摘した。
 これに伴い、政策連帯は韓国と全世界の人類の健康のため日本の福島核汚染水放流にアジアが共同で対応して出るべきで、これは反日感情扇動ではなく韓国と人類運命共同体の環境権、生命権、生存権保障に向けた決議だと声を高めた。
 また、いまからでも尹錫悦政権はアジア共同で国際海洋法裁判所に日本を提訴すべきだとし、それだけがわれわれ人類の健康な未来を守る道になるのが明らかだと強調した。
 これとともに「国民の力」釜山支部所属の国会議員らと委員長の趙慶泰(チョ・ギョンテ)議員に向け、本当に釜山市民の健康主権を保護するならば党本部に即刻放流中断の立場表明することを強く促して、福島核汚染水放流関連対策をまとめるよう促した。
 特に、「2004年から2020年まで釜山を守って活動してきた趙慶泰議員の微温的な態度は彼を愛する多くの釜山市民から怒りを買っている。趙議員が本当に釜山市民と、さらには韓国国民のために献身するならば、当然今回の要求に積極的な歩みを見せなければならなかった」とし、「日本に福島核汚染水放流中断を強力に要請し、積極的に擁護、助長している趙議員の不当なやり方」と強く批判した。


「The Hankyoreh」 2023-09-06 07:39
■海を挟んで日本と向かい合う釜山、汚染水に民意動揺…与野党、どう攻略か

【写真】共に民主党釜山市党のソ・ウンスク委員長(中央)らが、釜山鎮区西面の歩道に張ったテントで、福島第一原発の汚染水海洋放出の中止などを要求して座り込みを行っている=共に民主党釜山市党提供//ハンギョレ新聞社

 釜山(プサン)の与野党は、福島第一原発の汚染水の海洋放出をめぐって、民意の獲得に全力を尽くしている。
 野党「共に民主党」釜山市党は5日、「本日から釜山の18の地域委員会がそれぞれテントを設置し、福島第一原発の汚染水海洋投棄をほう助する尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権を糾弾する無期限座り込みを開始する。座り込み会場の名は『みんなの海、私たちが守りましょう』。国民抗争テント座り込み場だ」と発表した。
 共に民主党の釜山の各地域委員長は、2日午後6時30分に釜山東区(トング)の鄭撥(チョン・バル)将軍像前で開催された「福島核汚染水海洋投棄阻止第2回釜山市民大会」参加後に緊急会議を行い、各地域委員会がテント座り込み会場を設置することを決議した。
 テント座り込み会場は門ヒョン(ムンヒョン)交差点21世紀薬局前、亀浦(クポ)市場公営駐車場前、旧海雲台(ヘウンデ)駅舎前、下端(ハダン)五叉路ヒョンジアートモーリング前、民楽(ミンラク)水辺公園民楽刺身センター前、沙上(ササン)ターミナル3番出口、東莱(トンネ)駅1番出口、チャガルチ公営駐車場前、鄭撥将軍像前、国連平和公園駐車場付近、鳴旨洞(ミョンジドン)近隣公園噴水台前、盤如1洞(パニョイルトン)郵便局向かいのピョルバラギ公園、蓮山(ヨンサン)交差点10番出口、鼎冠(チョングァン)新都市ヘモロアパート交差点、多大浦(タデポ)海水浴場駅2番出口など。
 各地域委員会はまた、福島第一原発の汚染水の海洋放出で水産物の消費心理が冷え込むことが懸念されることから、水産物消費促進キャンペーンを展開する。各座り込み会場では原発汚染水の実体と海洋放出の問題点を説明したビラを市民に配るとともに、日本政府を国連人権委員会に告発する署名を集める。
 民主党釜山市党は先月28日に、釜山鎮区西面(プサンジング・ソミョン)の若者通りに「福島核汚染水海洋投棄糾弾テント党舎」を設置し、座り込みを続けている。
 与党「国民の力」釜山市党は先月24日から「韓国水産物消費リレーキャンペーン」を展開している。参加方法は、韓国の水産物を販売する食堂で韓国の水産物を食べている証拠写真を撮り、SNSに水産物消費を勧めるメッセージと共に掲載し、次の人を名指するというもの。
キム・グァンス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-05 15:25


「The Hankyoreh」 2023-09-04 19:43
■韓国の国策研究機関4カ所「汚染水、国民の健康に脅威」…韓国政府は非公開
 昨年9月、協同研究報告書を発刊

【写真】福島第一原発敷地のタンクに保管中の放射性物質汚染水/聯合ニュース

 昨年、韓国海洋水産開発院など韓国の国策研究機関4カ所が出した協同研究報告書で「日本の福島原発汚染水放流計画は海洋生態系に脅威を与えかねず、韓国国民の健康と安全への被害が憂慮される」と警告したことが一歩遅れて確認された。
 4日、韓国の国会政務委員会に所属するカン・フンシク共に民主党議員が公開した資料によると、海洋水産開発院などは昨年9月に完成した「原発汚染水対応戦略樹立のための基礎研究」報告書で「日本が2023年から太平洋へ原発汚染水を30~40年かけて排出しようとする計画は、人類全体が共に保全し持続可能に利用しなければならない対象である『公海生物多様性』と生態系に実際的・潜在的脅威を与えかねない。また、韓国国民の健康と安全、水産業・海洋観光産業など環境的・社会経済的に否定的な影響と被害が憂慮される」と診断した。
 800ページ余りの報告書は、文在寅(ムン・ジェイン)政府時期の2021年7月から政権交代後の昨年9月まで国務調整室傘下の経済・人文社会研究会の出捐研究機関である海洋水産開発院が主管し、韓国環境研究院・韓国法制研究院・韓国原子力研究院の3カ所が協力機関として参加し作成した。

【写真】福島第1原子力発電所の放射性物質汚染水放流開始翌日の先月25日の福島原発沖の様子/ロイター・連合ニュース

 報告書で研究機関は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の「汚染水政策」に反する提案を出した。「原発汚染水の海洋排出が行われないように(韓国政府が)多角的な努力を傾けなければならず、もし排出される場合まで含めた政策目標と政策方向を明確にすることが必要だ」と指摘している。具体的な政策方向と関連しては、「原発汚染水による健康・安全被害を防止し、汚染水による影響を観測・予測し評価するための力量を向上させなければならない」と指摘した。
 あわせて報告書では「原発汚染水関連の国際協力と共助を強化することで、汚染水問題に対する実効的・体系的対応体系を構築していかなければならない」と強調した。「国際原子力機関(IAEA)だけでなく、国際海事機関(IMO)、国連環境計画(UNEP)など韓国が当事国として参加している国際協約と国際機関で原発汚染水問題をイシュー化しなければならない」としているが、韓国政府は「福島汚染水の放流は安全だ」という国際原子力機関の発表を受け入れる以外に、特別な外交戦に出なかった。
 この協同研究報告書は昨年9月に完成したが、韓国政府はこれを公開しなかった。そのため野党では「政府の口に合わない報告書なので非公開処理したのではないか」という疑惑を提起してきた。7月、カン・フンシク議員が「日本の顔色伺い」と批判すると、パク・グヨン国務調整室国務1次長は「根拠のない推測」と反論した。
 パク次長は当時の記者ブリーフィングで「経済・人文社会研究会は(報告書が完成した)昨年9月に『汚染水に関連した韓国政府の細部政策が確定していない状態で対応方向などの提言が盛り込まれた報告書が公開されれば、国民に混乱を招いたり対外交渉力などに影響を与える恐れがあり非公開を決めた』と明らかにした経緯がある」と話した。

オム・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-04 17:58
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民団と総連が共に参加する「浮島丸殉難追悼集会

2023年09月07日 | 国民国家日本の侵略犯罪
「The Hankyoreh」 2023-09-07 09:53
■[コラム]民団と総連が共に参加する「浮島丸殉難追悼集会」
 1945年8月22日、青森県の大湊港から朝鮮人3735人(日本政府発表)を乗せた浮島丸が、目的地の釜山(プサン)にたどり着けず、舞鶴港の沖合で炎に包まれたまま沈没した。 苛酷な強制労働に苦しめられ、8・15光復(日本の敗戦)を迎えて祖国に帰る夢を膨らませていた人たちを空しい死に追いやった原因は、いまだ解明されていない。 犠牲者の遺骨は、70年あまりが過ぎた今でも、故郷の地を踏めずにいる。
 舞鶴の住民たちは、1978年から浮島丸が沈没した8月24日に、舞鶴港にある「殉難の碑公園」で朝鮮人犠牲者の魂を悼む追悼集会を行う。 「戦争のために朝鮮人を強制的に連れてきた日本政府が、戦争が終わったにもかかわらず、無事に帰国させることができないでいることは、非常に間違ったことだ。ここの住民たちは、そのような過ちを繰り返さないために、浮島丸の参事を舞鶴の歴史に残そうと努めている」。
 2019年8月5日、浮島丸事件の取材のために現地で会った「浮島丸殉難者を追悼する会」の余江勝彦会長(82)が語った話だ。 中学校の美術教師だった余江会長は慰霊碑を建てた。 故郷に戻ることのできなかった朝鮮人家族を形象化した作品だ。 一番高く立っている母親は、泣き叫ぶ乳飲み子を左腕で抱え、堂々とした目で故郷の釜山を眺めている。 いつかは故郷に帰ろうという決意が感じられる。
 住民たちは、追悼集会に必要なすべての費用は募金で用意し、集会の準備はボランティアで解決するという。 それでこそ、住民たちの純粋な意図が歪曲されることなく、追悼集会を着実に進めることができるからだ。 この集会には、在日本大韓民国民団(民団)と在日本朝鮮人総聯合会(総連)の地域代表が並んで参加し、追悼の辞を韓国語で朗読する。 追悼の辞の朗読順序は毎年変わる。 民団と総連の不必要な対立を防ぐための住民たちの「配慮」だ。 集会は追悼の辞に続き、献花、追悼の踊り、追悼歌、花を海に投げる順に進められるが、そこにも住民たちの細やかな配慮がある。 献花と追悼の踊りは民団系の団体が担当し、追悼歌は総連系である朝鮮学校の生徒たちが出てきて歌う。
 関東大震災朝鮮人虐殺の犠牲者追悼式典の10日前に開かれる浮島丸殉難追悼集会は、今年も例年通り、8月24日に無事に行われたという。 関東大震災の追悼式典も、浮島丸のように民団と総連がともに参加することはできないのだろうか。 日帝強占期(日本による植民地時代)に犠牲となった朝鮮人の魂を追悼する気持ちは、民団も総連も同じだろう。

イ・チュンジェ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-07 02:38
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「韓国国防部の公文書、悲惨なレベル…「洪範図撤去」の主張、3つの間違い」

2023年09月06日 | 朝鮮史
「The Hankyoreh」 2023-09-06 10:11
■韓国国防部の公文書、悲惨なレベル…「洪範図撤去」の主張、3つの間違い
 [ハンギョレ21]特別寄稿  イム・ギョンソク|成均館大史学科教授
   (1)自由市惨事に関する疑惑は事実無根 
   (2)「パルチザン」の意味は1919~1922年の「独立軍」と指摘 
   (3)日帝時代、ソ連は米国と同じく独立運動の友軍 
 
【写真】78年ぶりに故国の地に戻った独立活動家の洪範図将軍の遺体が2021年8月15日午後、国立大田顕忠院に臨時安置されている/聯合ニュース

 2023年8月25日、陸軍士官学校は報道機関に声明文を配布した。それには信じ難い内容が含まれていた。校内に設置された「独立軍・光復軍英雄胸像」をすべて撤去し、別の場所に移すという内容だった。
 一度読んでみよう。「学生が学習する建物の中央玄関の前に、2018年に設置された独立軍・光復軍英雄胸像は、場所の適切性、国難克服の歴史が特定の時期に限定される問題などについての論議が続いていた」とする。そこで、これらの胸像を撤去し、学校外のどこかに移転するという話だった。

◆独立活動家に向けられた突然の攻撃
 胸像の主人公は、抗日武装闘争の指導者だった。大韓独立軍総司令官の洪範図(ホン・ボムド)、北路軍政署の総司令官の金佐鎮(キム・ジャジン)、新興武官学校の設立者の李会栄(イ・フェヨン)、光復軍総司令官の池青天(チ・チョンチョン)、光復軍参謀長の李範奭(イ・ボムソク)の5人だ。武装独立運動を代表するのに不足しない人物たちだ。解放された祖国の軍事将校を養成する士官学校で目標にすべき人物だちだ。
 その胸像をなくす代わりに、どうするというのか。声明文によれば「陸軍士官学校の校内には、学校のアイデンティティと設立の趣旨を実現し、自由民主主義の守護および韓米同盟の価値と意義を体感できる最適な環境を作ることに重点を置き、記念物の再整備事業を推進」するという。「自由民主主義」と「韓米同盟」が陸軍士官学校のアイデンティティを表象する言葉とみなされているようだ。それにふさわしい人物に置き換えるという意味だった。
 マスコミ報道によれば、新たに胸像の設置が検討されている人物は、ペク・ソンヨプ将軍だ。ペク・ソンヨプとは誰か。2009年、大統領直属の親日反民族行為真相糾明委員会が、親日の反民族行為者と規定した人物ではないか。彼は「1942年に満州国軍の少尉に任官してから1945年の日帝の敗戦に至るまで、満州国軍将校として日本の侵略戦争に積極協力」した人物だ。

【写真】8月29日午後、大田儒城区の国立大田顕忠院の独立有功者の第3墓地を訪れた大田市民が、洪範図将軍の墓地を調べている/聯合ニュース

 「1943年2月から満州地域の抗日武装独立勢力を武力で弾圧した間島特設隊で、これらに対する弾圧活動を展開し、また、1944年から1945年にかけて、間島特設隊員として、日本軍の作戦の一環で中国軍の八路軍を討伐する作戦に従事し、1945年春から日帝の敗戦時まで、延吉(ヨンギル)地域の国境守備任務に従事」したと指摘され、注目を集めた。
 要するに、陸軍士官学校の声明文は、独立軍の胸像をなくし、その代わりに親日反民族行為者の胸像を建てるという話に違いはない。この方針は、単に陸軍士官学校のレべルで決定されたものではなかった。同日、イ・ジョンソプ国防部長官は、国会の国防委員会で行った発言を通じて、陸軍士官学校の校内の記念物整備計画があることを認めた。独立軍・光復軍の胸像を陸軍士官学校の校内から撤去して外部に移すという方針が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権のレべルで推進されていることを確認したものだった。
 世論が沸騰し始めた。まず、社会団体が動いた。独立活動家記念事業団体が連合して反対声明を発表し、記者会見を行った。独立有功者とその遺族を構成員とする光復会も出てきた。光復会のイ・ジョンチャン会長は、胸像の主人公である李会栄の孫であり、陸軍士官学校16期(1956年入学)出身で、民主正義党の国会議員、国家情報院長を歴任した保守派の政治家だ。彼は激しく反発した。イ・ジョンソプ国防部長官に辞任を要求する公開書簡を発表した。
 野党も立ち上がった。野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表は、国立大田顕忠院に安置されている洪範図の墓地を参拝し、「独立戦争の英雄を斬殺することは、決して容認できない」と発言した。パク・グァンオン院内代表も、党内最高委員会の会議の席上で、独立運動の誇らしい歴史を消そうとする反歴史的・反民族的な暴挙を取り消すよう要求した。
 さらに与党からも批判の声が出てきた。与党「国民の力」で非主流の人物たちがそれぞれ発言した。大統領選で党内選挙候補者だったユ・スンミン元議員、ホン・ジュンピョ大邱(テグ)市長、イ・ジュンソク前代表らが、フェイスブックなどを通して胸像撤去計画を非難した。
 普段は政権側の論調を維持している一部のメディアも背を向けた。朝鮮日報は8月28日付の社説で「北朝鮮と何の関連もなく、反国家的活動をしたわけでもない洪将軍の共産党加入の経歴だけを問題にするのは、理念的かつ偏狭だとする指摘が出ている」と批判した。中央日報も、ソ連共産党に入党したという理由で銅像を移すことは納得しがたいとして、独立活動家5人の胸像移転に反対の立場を明らかにした。文化日報に続き毎日経済も、洪範図の胸像移転は常識外のことであり、逆風が吹くだろうと懸念した。
 結局、胸像撤去計画は反対の世論に包囲されたわけだ。この計画を推進した政権内のニューライト原理主義者らが孤立した局面だとも言える。彼らは窮地に陥った。

【写真】8月28日、ソウル龍山区の国防部で定例会見を行うチョン・ハギュ国防部報道官/聯合ニュース

 8月28日、国防部はふたたび声明文を出した。「陸軍士官学校の洪範図将軍の胸像に関する国防部の立場」と題する文章だった。前回の声明文を出してから、わずか3日後のことだった。沸き立つ世論に負担を感じたのだろうか。国防部はすみやかに局面転換を試みた。独立活動家5人全員ではなく、そのうちの1人をつまみ出した。それが、洪範図将軍だ。
 声明文を読んでみよう。「ソ連共産党への加入や活動履歴などの論議がある洪範図将軍の胸像が陸軍士官学校に、しかも、士官候補生の教育の象徴的な建物である忠武館の中央玄関にあることは適切ではない」と判断した。
 国防部はその判断の根拠を具体的に指摘した。(1)1921年6月、ロシア共産党極東共和国の軍隊がスヴォボードヌイ(自由市)にいた独立軍を抹殺した自由市惨事に関係したという疑惑、(2)パルチザンの活動期間が1919~1922年と記載された洪範図の身分証明書から推定し、鳳梧洞・青山里(ポンオドン・チョンサンリ)戦闘にもパルチザンとして参加したという疑惑、(3)1927年にソ連共産党に入党した事実などがそれだ。要するに「1921年にロシアのヴォボードヌイに移動してから示した行跡」は、独立運動の業績ではないとみなしたのだ。

◆これが政府機関の公的文書だと言えるのか
 目を疑わざるをえない。はたしてこれが政府機関の公的文書なのか。虚偽と無知、そして、歴史に対する無理解が判断の前提にあることがわかる。一つ目の疑惑は、全面的に虚偽の所産だ。自由市惨事に関する歴史学界の研究は、ロシア語資料と日本側の情報資料、独立軍当事者の資料を縦横に比較分析したパン・ビョンリュル教授、イム・ギョンソク教授、ユン・サンウォン教授らの著書や博士学位論文などが代表だ。
それによると、自由市惨事の基本性格は、独立軍部隊の大統合の方法をめぐる内紛だった。死亡者が生じた武装解除の決定の責任は、高麗革命軍の指揮部(カランダリシュヴィリ、崔高麗(チェ・コリョ)、金夏錫(キム・ハソク)、呉夏黙(オ・ハムク))にあった。洪範図は流血の内紛が生じることを懸念し、武装解除の決定に反対する立場だったことが資料上では明確だ。国防部が提起した一つ目の疑惑は、全く事実の根拠がない。
 二つ目の疑惑は、全面的に無知の所産だ。パルチザンという単語は、ロシア語のパルチザン(Партизан)から来た外来語で、非正規戦に従事する武装部隊を示す。非正規軍という意味だ。1919~1922年にはこの用語は、「独立軍」や「義兵」を指し示す意味で用いられた。「パルチザン」という単語を「共産主義武装部隊」として用いる用例は、解放(日本敗戦後)後に初めて現れたことを留意しなければならない。
 三つ目の疑惑は、歴史に対する無理解のために生じた誤解だ。日帝植民地時代には、ソ連共産党は韓国独立運動の友軍だった。レーニン政権は、朝鮮独立運動を支援するために、金貨200万ルーブルを提供することを約束したし、そのうち金貨60万ルーブルが実際に支払われたことを思い出そう。独立活動家の多くが、ソ連との提携を多角的に模索した。大韓民国臨時政府は、全権大使の韓馨権(ハン・ヒョングォン)をモスクワに派遣した。李承晩(イ・スンマン)でさえ、ソ連の独立運動支援を得るために李喜儆(イ・ヒギョン)を密使としてモスクワに派遣した。

【写真】国防部が陸軍士官学校の校内だけでなく、国防部庁舎前に設置された故・洪範図将軍の胸像についても、必要に応じて移転を検討していると明らかにした8月28日、ソウル龍山区の国防部庁舎の前に設置された故・洪範図将軍の胸像の様子/聯合ニュース

 国際共産党が招集した1921年の極東民族大会に、韓国独立運動系の団体多数が52人に達する最大規模の代表団を派遣したのもそのためだった。1927年にソ連に移住した洪範図がソ連共産党に入党したのは、韓国独立運動の発展のために極めて自然で望ましいことだった。第2次世界大戦時も、ソ連と米国は日本と相対して戦った連合国だった。1946年に冷戦が始まるまで、ソ連と共産党は、米国がそうであったように、韓国独立運動の友軍であったことを理解しなければならない。
 ソ連に対する敵対意識は冷戦が激化した後に生じた。歴史的な流れを考慮しなければならない。後代の評価基準を自分勝手に遡及し、過去の歴史的事案を判定する基準として乱用することは、歴史に対する無理解を示す行為だ。物心のつかない子どもの非常識と違いはない。

◆反日感情を反共主義で防ぎたいのか
 国防部と陸軍士官学校は変則を企てている。陸軍士官学校は撤去予定だった5つの胸像のうち、洪範図将軍の胸像だけを学校外に持ちだすと発表した。金佐鎮将軍・池青天将軍・李範奭将軍と新興武官学校の設立者の李会栄氏の胸像はそのまま残すという話だ。当初は胸像5つをすべて撤去しようとしたが、批判の世論が激しいため、変則を企てているわけだ。独立運動を軽視しているという批判を薄め、事案を反共主義のイデオロギー問題に変化させ、局面の主導権を握ろうとする意図が隠れていると解釈される。
 いったいなぜ、こうしたことを行うのだろうか。尹錫悦政権は、何のために陸軍士官学校内からの独立活動家の胸像撤去問題を提起したのだろうか。視野をもう少し広げてみよう。胸像の撤去が問題化する前は、日本の核汚染水の排出と尹錫悦政権のほう助の態度に、国民的な公憤が醸成された。その直前には、世界スカウトジャンボリーの運営不備問題、忠清北道清州五松(チョンジュ・オソン)での地下車道浸水事故、ソウル~楊坪(ヤンピョン)高速道路の路線変更問題などが相次いで提起された。
 いずれもすべて、現政権の無能力と貪欲に関連した問題だった。そのため、政治工学的な解釈が提起される。胸像撤去問題を提起した理由は、核汚染水の放出によって触発された激しい反日感情を反共主義で防ごうとしたという解釈だ。新しい問題で古い問題を覆い隠す策略が隠れているという意味だ。
 視野を国際関係に移してみよう。洪範図胸像撤去問題は、韓米日同盟と内的関連性があることが推察できる。2023年8月18日、米国メリーランド州のキャンプデービッドで開かれた韓米日首脳会談は、韓国と日本が、安全保障の危機の際、相互に軍事的に支援しなければならない根拠を作りだした。洪範図胸像撤去問題は、まさにキャンプデービッドの「3カ国協議に対する公約」の趣旨と関連している。有事の際には、日本軍が再び朝鮮半島に出没するだろう。それに対する韓国人の抵抗心理を、事前に弱めておく必要があるのではないだろうか。独立活動家の洪範図の胸像を持ち去り、そこに親日反民族行為者のペク・ソンヨプの胸像を建てる理由が、まさにそこにあるだろう。2つの解釈は、ともにそれなりの理があると判断される。もしかしたら、2つとも正しいこともありうる。

◆洪範図の独立運動は終わらなかった
 尹錫悦大統領は8月29日、閣僚会議の席上で洪範図胸像撤去問題について発言した。「何が正しくて誤っているのか、一度考えてみよ」としたうえで、「誰かがしなければならないのであれば、私がする」と語ったと報じられた。国防部の措置は適切だとする意向を示したものと分析される。
 それだけなのか。国家報勲部が洪範図の独立有功者叙勲を剥奪する案を検討しているという報道が出てきた。近い将来、叙勲功績審査委員会を開き、「重複叙勲」などの問題が発見された場合、叙勲剥奪を含むあらゆる可能な措置を念頭に置いているという。
 今後、波風はさらに激しくなりそうだ。洪範図はたとえ地中で永眠していても、彼が一生献身した独立運動はまだ終わっていないようだ。洪範図将軍の独立運動は今も続いている。

◆参考文献 
 パン・ビョンニュル『1920年代前半の満州・ロシア地域抗日武装闘争』独立記念館、2009年 
 イム・ギョンソク『韓国社会主義の起源』歴史批評社、2003年 
 ユン・サンウォン『ロシア地域の韓人の抗日武装闘争研究(1918-1922)』高麗大学博士学位論文、2010年 
 イム・ギョンソク|成均館大史学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-05 22:20


「The Hankyoreh」 2023-09-04 08:05
■「洪範図排除」めぐり首相と国防部が異なる立場表明…乱脈ぶり露呈した韓国政府

【写真】ソウル龍山区の国防部前にある洪範図将軍の胸像/聯合ニュース

 韓国の陸軍士官学校における洪範図(ホン・ボムド)将軍胸像の移転推進で浮き彫りになった尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の「洪範図排除」に、野党と学界などの反発が続いている。こうした中、「洪範図排除」を巡り首相と国防部が互いに異なる立場を表明する一方、同じ独立戦争の英雄である洪将軍の胸像なのに、陸軍士官学校からは撤去し、国防部庁舎には存置することにするなど、矛盾が露呈している。名目と論理に欠けた尹錫悦政権の無理な「歴史・理念戦争」を現場で遂行する過程で、乱脈ぶりが際立っている。
 韓国政府の一貫性のない動きは、まず朴槿恵(パク・クネ)政権時代に進水した海軍の1800トン級潜水艦「洪範図」の改名問題をめぐり露呈した。ハン・ドクス首相は先月31日、国会予算決算特別委員会全体会議で、野党「共に民主党」のキ・ドンミン議員が潜水艦「洪範図」の艦名変更について尋ねると、「我々の主敵と戦わなければならない軍艦を象徴する名前が(ソ連の)共産党員だった人のものなのは適切ではないと思う」とし、「修正を検討すべきだ」と述べた。しかし翌日の1日、国防部関係者は記者団に「首相が議員の質疑に答弁したものだが、その必要性について語ったと思う」とし、「海軍で艦名の変更は検討していないと聞いている」と答えた。歴史・理念の議論にさらに油を注ぐ「洪範図」の改名問題を巡り、政府内で調整されていない立場の衝突が公になり、混乱を招いている。
 世界的に、国が滅んだか独裁の統治者が勝手に変えた場合を除き、軍艦の名前が変更されることはほとんどない。韓国では1999年「裡里(イリ)」を「益山(イクサン)」に変えるなど地方自治体の名称変更に伴う艦名の変更があったケースのみ。
 陸軍士官学校の校庭内の忠武館(総合講義棟)前の独立英雄5体の胸像のうち、洪範図将軍の胸像は校外に移し、池青天(チ・チョンチョン)、李範奭(イ・ボムソク)、金佐鎮(キム・ジャジン)将軍と李会栄(イ・フェヨン)先生など残りの胸像は校庭内の他の場所に移すという決定についても、「小細工」という批判の声があがっている。当初、独立英雄5人の胸像を外部に移そうとしたが、反発が激しくなると、洪将軍だけをソ連共産党の経歴を問題視して撤去することにしたのだ。さらに国防部は、洪将軍の胸像を陸軍士官学校から撤去する一方、ソウル龍山区(ヨンサング)の国防部庁舎前の洪将軍の胸像はそのままにしておく方向に傾いているという。先月28日、「陸軍士官学校の洪範図将軍胸像に関する国防部の立場」で、洪将軍のソ連共産党活動経歴▽スヴォボードヌイ(自由市)惨事への関連疑惑▽鳳梧洞(ポンオドン)戦闘にパルチザンとして参加したという疑惑を挙げ、洪将軍の胸像が陸軍士官学校に不適切だと説明したのに、国防部庁舎前の胸像は存置するというのは矛盾と言わざるを得ない。
 独立軍歴史研究の権威者であるパン・ビョンリュル韓国外国語大学名誉教授(史学科)は3日、ハンギョレとの電話インタビューで「正常な議論過程も経ずに少数の人々が密室で決定したため、このような乱脈ぶりが露呈している」と指摘した。パン教授は「国軍が作られた時と比べいくつもの世代が過ぎ、国家構成員の価値観と基準も大きく変わった」とし、「なのに軍はこれを無視して1970年以前に戻そうとしている」と述べた。
 文在寅(ムン・ジェイン)前大統領も先月27日に続き、同日にもフェイスブックを通じて、「胸像の撤去は歴史を歪曲し国軍と陸軍士官学校の正統性とアイデンティティを自ら損ねる処置」だとし、大統領室に胸像撤去計画の撤回を求めた。文前大統領は「我々は(洪将軍の)その愛国心と献身の足元にも及ばない」とし、「陸軍士官学校レベルで議論されたことだとしても、ここまで波紋が広がったら、大統領室が乗り出して収拾を図るのが望ましいだろう」と指摘した。野党「共に民主党」のカン・ソヌ報道担当も同日のブリーフィングで、「時代遅れの理念戦争論にはまった尹錫悦大統領の言動が日増しに深刻化している。『反共マッカーシズム』ではなく、『親尹マッカーシズム』の絶頂」だと批判した。
シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-04 02:44


「The Hankyoreh」 2023-08-30 03:17
■「歴史を忘れた陸軍士官学校に未来はない」=韓国
 独立運動家の子孫と市民、陸軍士官学校前で会見 
 「庚戌国恥に準ずる侮辱…洪範図将軍胸像の撤去を中止せよ」

【写真】国防部が陸軍士官学校の校内だけでなく、国防部庁舎前に設置された故洪範図将軍の胸像についても、必要に応じて移転を検討していると発表した28日、ソウル龍山区の国防部庁舎前に設置された故洪範図将軍の胸像/聯合ニュース

 韓国政府が陸軍士官学校内部と国防部庁舎前に設置された独立戦争の英雄、洪範図(ホン・ボムド)将軍(1868~1943)の胸像を撤去する方針を明らかにした中、独立運動団体が「庚戌国恥(韓国併合ニ関スル条約が結ばれた日)に準ずる侮辱的なこと」だとし、撤去方針の撤回を求めた。
 25の独立運動家記念事業会などで構成された抗日独立烈士団体連合は29日、ソウル蘆原区孔陵洞(コンルンドン)の陸士前で記者会見を開き、陸士に設置された洪将軍の胸像の撤去中止を要求した。
 彼らは「胸像を撤去するという国防部は民族共同体の歴史を否定し、軍固有の精神を守るという国民との約束を破ること」だとし、「国家と民族と歴史に対する反逆行為を行ってはならない」と主張した。
 日帝に国を奪われた庚戌国恥日でもある同日の記者会見には、大雨にもかかわらず義烈団の金翰(キム・ハン)先生の子孫である「共に民主党」のウ・ウォンシク議員など、独立運動家の子孫と市民100人余り(主催側推算)が集まった。

【写真】ソウル蘆原区の陸軍士官学校正門の入り口で29日午後、陸軍士官学校における独立運動家の胸像撤去を糾弾する記者会見が開かれている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 雲巌金星淑(キム・ソンスク)先生記念事業会のミン・ソンジン会長、無後光復軍記念事業会のチェ・スチャン会長、云山将軍記念事業会のチェ・ソンジュ理事は記者会見文を朗読し、胸像の撤去が「理念対立を助長する行為に過ぎない」と批判した。
 彼らは「2018年、洪将軍など独立運動家5人の胸像除幕式は軍部独裁と光州(クァンジュ)5・18民主抗争と関連した否定的で誤った歴史と決別し、国民の軍隊として国家を防衛し自由民主主義を守護し祖国の統一に寄与するという軍本来の精神を確認する時間だった」とし、「南北分断を悪用し理念対立を助長しようとする見え透いた術策で独立抗争先烈たちを侮辱する行為がこれ以上繰り返されないよう願う」と述べた。

【写真】ソウル蘆原区の陸軍士官学校正門の入り口で29日午後、陸軍士官学校独立運動家の胸像撤去を糾弾する記者会見が開かれている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 彼らは、今回の国防部の決定が光復節記念演説などで独立抗争を否定した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の無責任な言動から始まったと主張した。出席者たちは「78周年光復節記念演説などで政府は独立抗争、民主化闘争、南北の平和と一致に向けた献身を否定し、ひいては反国家的行為と規定して非難した」とし、「国防部の憲法精神と理念を破壊する没知覚な行為は国政最高責任者の無責任な言動から始まったもの」だと指摘した。
 ウ・ウォンシク議員は「歴史学界で検証が終わった独立運動家に理念の物差しを突きつけて歪曲し、分裂を引き起こすマッカーシズム的な策動を必ず打ち破る」と述べた。

【写真】ソウル蘆原区の陸軍士官学校正門の入り口で29日午後、陸軍士官学校独立運動家の胸像撤去を糾弾する記者会見が開かれている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 記者会見には撤去に反対の声をあげるために自発的に参加した市民もいた。郷友会を通じて記者会見のニュースを聞いて駆け付けたという主婦のCさん(62)は、「独立闘士の精神を見習うべき陸軍士官学校から胸像が撤去されるのは理解に苦しむ。暮らしは日増しに厳しくなっていくのに、なぜこのような消耗的なことをするのか分からない」とし、「ことあるごとに人のせいにし、国民の気持ちは眼中にない尹大統領の考えが反映されたものだと思う」と語った。
コ・ビョンチャン記者、カン・シンボム教育研修生(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-08-30 02:42


「The Hankyoreh」 2023-08-29 08:24
■尹政権、韓国独立の英雄・洪範図を消す…日本との戦闘についても「反共」攻撃
 国防部、陸軍士官学校からの胸像移転に対する批判に 
 「パルチザンとして戦闘参加の疑惑」

【写真】国防部は28日、陸軍士官学校の構内だけでなく国防部庁舎前に設置されている洪範図将軍の胸像についても必要に応じて移転を検討していると明らかにした。ソウル龍山区の国防部庁舎の前に設置された洪範図将軍の胸像の様子/聯合ニュース

 国防部は28日、「ソ連共産党への加入および活動履歴などの論議がある洪範図(ホン・ボムド)将軍の胸像が陸軍士官学校にあるのは適切ではない」という判断の根拠として、洪将軍のソ連共産党での活動を具体的に説明し、洪将軍が1920年に鳳梧洞・青山里(ポンオドン・チョンサンリ)戦闘にもパルチザンとして参加したという疑惑があると主張した。1920年6月、洪将軍が満州の鳳梧洞の谷間で独立闘争初の全面戦争を行い、武装独立運動史における不朽の勝利をおさめた歴史的業績についても、独立闘争でなく共産党活動の一環である可能性があるという「反共攻撃」を展開したのだ。
 国防部は同日夜に発表した「陸軍士官学校の洪範図将軍の胸像に関する国防部の立場」を通じて、「洪範図将軍の独立運動の業績は業績として評価するが、今後はソ連共産党の活動に同調した事実については分けて評価するのが適切だ」と主張した。「国防」に関連した場所では、「反共」を基準としてソ連共産党員だった洪将軍の胸像は容認しがたいというわけだ。
 国防部は「特に洪将軍のパルチザン証明書には活動期間は1919~1922年と記録され、1920年6月の鳳梧洞戦闘と1920年10月の青山里戦闘にもパルチザンとして参加したという疑惑もある」と主張した。
 国防部は、洪範図将軍が自由市惨変にも関係しているという疑惑も提起した。自由市惨変は、1921年6月にシベリアのスヴォボードヌイ(自由市)で武装解除を拒否した独立軍がソ連赤軍に攻撃され、400~600人ほどが死亡した事件だ。国防部は、洪将軍がソ連共産党による自由市惨変の際、独立軍500人を裁く裁判委員として活動し、自由市惨変の発生後はイルクーツクに移動してソ連赤軍第5軍団所属の「朝鮮旅団」第1大隊長に任命されるなどの歴史的事実があると主張した。
 また国防部はこの日、陸軍士官学校の構内だけでなく、ソウル龍山(ヨンサン)にある国防部庁舎前に設置された洪範図将軍の胸像についても、必要に応じて移転を検討すると明らかにした。陸軍士官学校も、金佐鎮(キム・ジャジン)将軍、池青天(チ・チョンチョン)将軍、李範奭(イ・ボムソク)将軍と新興武官学校の創立者である李会栄(イ・フェヨン)氏を合わせた5体の胸像のうち、洪将軍の胸像だけを学校外に移す案を検討していることが分かった。陸軍士官学校は当初、胸像5体をすべて天安(チョナン)の独立記念館に移そうとしたが、批判世論が激しいため、洪将軍の胸像だけを移す「変則」を試みているわけだ。国防部はこの日、海軍潜水艦「洪範図」の名称変更についても、「必要であれば検討が可能だと考えている」と述べた。
 国防部が「洪範図胸像の撤去」に踏み切ったのは、大統領室とのコンセンサスによるものとみられる。大統領室のイ・ジンボク政務首席はこの日、仁川(インチョン)国際空港公社の人材開発院で開かれた与党「国民の力」の議員研鑽(けんさん)会で、「(2021年8月に洪将軍の遺骨がカザフスタンから奉還された際)非常に盛大に執り行い、突然各地に胸像が設置され、陸軍士官学校にも胸像ができた。これがはたして正しいことなのかどうかは、国民の前で一度ふるいにかけるべきであり、問題があれば国民の意向に従うことが正しいのではないか」と述べた。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-08-29 02:44
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「国史編纂委員会、太平洋戦争の「朝鮮出身軍人・軍属死亡者」約2千人の名簿を初公開」

2023年09月06日 | 国民国家日本の侵略犯罪
「東亞日報」 August. 15, 2023 08:29  
■国史編纂委員会、太平洋戦争の「朝鮮出身軍人・軍属死亡者」約2千人の名簿を初公開
 「慶尚南道晋州(キョンサンナムド・チンジュ)、1907年生まれのキム・○スク。1944年7月24日、第233設営隊(労働部隊)の軍属としてテニアン島で食糧運搬作業中に短銃で射殺され死亡」。
 国史編纂委員会は、日本が起こした太平洋戦争当時、死亡または行方不明になった朝鮮出身の軍人・軍属死亡者約2千人の個人情報や死亡原因が整理された名簿を発掘し、14日に初めて公開した。
 国史編纂委員会によると、この名簿は日本国立公文書館が所蔵している「戦没者等援護関係資料」に含まれていた「朝鮮死連(朝鮮人死亡者連名簿)」、「死亡者原簿」、「朝鮮陸上軍人軍属留守名簿」など。1946~49年に日本の厚生労働省社会・援護局が作成した。国史編纂委員会は、「日本の厚生労働省が戦後補償問題提起の基礎資料を準備するために作成したのだろう」と見ている。名簿には死亡・行方不明者の個人情報をはじめ、死亡日時や場所、事後処理の内容などが比較的詳細に記録されている。国史編纂委員会は、「日本の植民地期に強制徴用・徴兵された朝鮮出身の人々がどのような状況でどのような死を迎えたかを明確に確認できる重要な資料」と説明した。
 イ・ソヨン記者 always99@donga.com
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「日本軍慰安婦「記憶の場」、ソウル市による奇襲撤去を阻止した「紫の波」」

2023年09月05日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2023-09-05 13:43
■日本軍慰安婦「記憶の場」、ソウル市による奇襲撤去を阻止した「紫の波」
[フォト]強制わいせつで有罪判決受けたイム・オクサン氏が制作参加した造形物の撤去問題

【写真】強制わいせつで有罪判決を受けた美術作家イム・オクサン氏が制作に参加したという理由で、ソウル市が日本軍「慰安婦」を追悼する南山の「記憶の場」造形物の撤去作業に突入する予定の4日午前、正義記憶連帯など市民団体が奇襲撤去糾弾行動を行っている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 韓国の市民団体が日本軍「慰安婦」被害者の歴史を記録する「記憶の場」の造形物を撤去しようとしているソウル市に抗議する糾弾行動に突入した。
 ソウル市は4日午前7時、南山公園にある日本軍慰安婦「記憶の場」公園内の造形物「大地の目」と「世界のへそ」の撤去を試みた。自身の美術研究所の女性職員に対する強制わいせつで有罪判決を受けた美術作家のイム・オクサン氏がこの造形物の設置に参加したという理由からだ。
 「記憶の場造成推進委員会」と市民社会団体は、この日午前6時からソウル市の撤去の試みに反発し、「記憶の場」を平和を象徴する紫色の布で囲んで作品撤去を阻止した。

【写真】ソウル市が強制撤去しようとしている「世界のへそ」に、参加者たちが平和を意味する紫色の布を被せている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】正義記憶連帯のハン・ギョンヒ事務処長が「大地の目」に刻まれたキム・スンドクさん作の絵「連れていかれる少女」の前で発言している=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】プラカードを持っている参加者の後ろに慰安婦被害者の女性たちの証言の文言が見える=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 正義記憶連帯のハン・ギョンヒ事務処長は「『記憶の場』は数多くの推進委員、女性作家、市民など1万9755人が参加し、つらい歴史を忘れないという誓いで作り出した集団創作物だ」と説明し、撤去反対の立場を明らかにした。続けて「ソウル市は性暴力根絶対策をまず立てるべきであり、『記憶の場』の奇襲撤去は性暴力に対する抵抗の歴史を消そうとするソウル市の欺まん的な行動に過ぎない」とし、「イム・オクサンを口実に日本軍『慰安婦』の歴史まで丸ごと消そうとするソウル市を強く糾弾する」とソウル市を批判した。
 団体は声明書を通じて「『記憶の場』の歴史的意味と平和と女性の人権を願う被害者および市民の崇高な意思を称える作品作りに、強制わいせつ犯罪に対する責任と反省もなく参加したイム・オクサンの行動に怒りを禁じえない」とし「美術作家イム・オクサンは強制わいせつ犯罪に対する法的責任を果たし、被害者に対する心からの謝罪を必ずしなければならない」と、強制わいせつで有罪宣告されたイム氏を批判した。
 韓国性暴力相談所のキム・ヘジョン所長は「ここが今日撤去されたら、その場に女性暴力防止対策が立てられるだろうか」とし「オ・セフン市長が『記憶の場』を削除するならば、女性たちの歴史をイム・オクサンの歴史とみるということだ」と、ソウル市を再度糾弾した。キム所長は「『記憶の場』で今も繰り返される性暴行を市民の力で終わらせよう」と述べ、参加者たちとともに「今この場から性暴力を終わらせよう」、「女性暴力を終わらせよう」と叫んだ。

【写真】ソウル市が強制撤去しようとしている南山に造成された「記憶の場」公園内の造形物「大地の目」に、慰安婦被害者の女性たちの名前が刻まれている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯や韓国性暴力相談所、記憶の場建設推進委員会などの参加者が、日本軍慰安婦「記憶の場」を紫色の布で囲んでいる=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯や韓国性暴力相談所、記憶の場建設推進委員会などの参加者が、ソウル市の日本軍慰安婦「記憶の場」奇襲撤去に反対する糾弾行動を行っている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯や韓国性暴力相談所、記憶の場建設推進委員会などの参加者が、ソウル市の日本軍慰安婦「記憶の場」奇襲撤去に反対する糾弾行動を行っている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社
【写真】日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯や韓国性暴力相談所、記憶の場建設推進委員会などの参加者が、ソウル市の日本軍慰安婦「記憶の場」奇襲撤去に反対する糾弾行動を行っている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 午前8時43分ごろ、「記憶の場」を撤去するために近くのソウル総合防災センター横で待機していたショベルカーが撤収した。糾弾行動に出た市民たちは、ソウル市の奇襲撤去に備えて現場を守っている。
 ソウル市は2016年、光復(植民地解放)70周年を記念して、慰安婦被害者を悼み記憶するために、韓日強制合併条約が締結された南山の統監官邸跡に「記憶の場」を造成した。ここに設置された「大地の目」と「世界のへそ」はイム・オクサン氏が設計・制作に参加した。

【写真】午前8時43分頃、近くで待機中だったショベルカーが現場を離れていく様子=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

キム・ヘユン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2023-09-05 00:21


2023-09-02 10:21
■南山「慰安婦記憶の場」撤去決定に「歴史性無視」と反発=韓国
 ソウル市、強制わいせつで有罪のイム・オクサン氏が設置参加したことを理由に「記憶の場」撤去 
 推進委員会「市民2万人の寄付による集団創作物」

【写真】ソウル中区南山に造成された「記憶の場」公園内の造形物「大地の目」(左)と「世界のへそ」=ソウル市のウェブサイトよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 ソウル市は4日から、日本軍「慰安婦」を追悼するソウル中区南山(チュング・ナムサン)にある「記憶の場」の造形物の撤去作業に着手する。造形物の設置に、最近強制わいせつで有罪判決を受けた美術作家のイム・オクサン氏が参加しているという理由からだ。だが、「記憶の場」にある造形物はイム氏個人の作品ではなく、国民2万人あまりの募金によって作られた「集団創作物」であるだけに、性急な撤去措置は適切でないとする反発も出ている。
 「記憶の場」造成募金に参加した市民100人は1日、立場表明文を出し、「ソウル市は『記憶の場』の場所性と歴史性、市民参加の価値を無視したまま、性急な決定を下してはならない」として、撤去決定の再考を要求した。これに先立ち、ソウル市は7月28日、市立施設で設置・管理中のイム氏の作品を一審判決が出た後に撤去すると明らかにしている。ソウル中央地裁は8月17日、強制わいせつの容疑で起訴されたイム氏に懲役6カ月、執行猶予2年の判決を下した。
 ソウル市立施設に設置されたイム氏の作品は、中区南山の「記憶の場」▽市庁西小門(ソソムン)庁舎前の「ソウルを描く」▽麻浦区(マポグ)ハヌル公園の「空を入れる器」 ▽城東区(ソンドング)「ソウルの森」の「バリアフリーの遊び場」 ▽鍾路区(チョンノグ)光化門(クァンファムン)駅内の「光化門の歴史」の5つ。このうち、「光化門の歴史」「ソウルを描く」「空を入れる器」はすでに撤去が完了した。市は今月6日までに残りの2つの作品の撤去作業を完了する計画だ。
 議論になっているのは、南山の「記憶の場」にある作品だ。イム氏個人の創作物というよりは、集団の意志を集めて作った創作物であるという性格が濃いためだ。「記憶の場」は、ソウル市が2016年に日本軍「慰安婦」を記憶し追悼しようという趣旨で作った空間。女性運動団体らと市民社会が参加した「設立推進委員会」が作られ、市民からの募金も行われた。当時、設立募金に参加した人たちは、「イム・オクサン氏の事件に悲痛な心情を禁じえない」としながらも、「イム氏が設計を担当したとはいえ、数多くの人たちの意見を集めた集団創作物であるだけに、撤去を再考すべきだ」とする立場だ。
 実際、そこに設置された「世界のへそ」には、フェミニズム作家のユン・ソンナム氏の絵が彫られている。「大地の目」には、慰安婦被害女性のキム・ボクトンさんの要請で、「慰安婦証言録」から抜粋した被害女性たちの証言と名簿、慰安婦被害女性のキム・スンドクさんの作品「連れ去られる少女」が彫られている。2016年の開幕式の際には、日本軍「慰安婦」被害女性が直接来て見学したりもした。
 これらの人たちは「イム氏の過ちのために、慰安婦被害女性の絵と名前、『忘れないでほしい』という痛ましい証言まで、すべてぶち壊さなければならないのか」と問い、「歴史は守り、個人の過ちは別に問い詰めたい。対策なしに撤去するのであれば、必ず2万人ほどの同意を得なければならない」と述べた。また、イム氏が「記憶の場」から自分の名前を消してほしいとソウル市に要請したことから、作品はそのまま置いておき、イム氏の名前だけを消す方式もあわせて検討すべきだというのが人々の主張だ。
 「記憶の場」設立推進委員会のチェ・ヨンヒ委員長は「ソウル市は、推進委員会や募金参加者などの関係者の意見を『十分に』聴取する手続きを進めると報道資料にも明記したにもかかわらず、協議なしに急ぐかのように撤去手続きを進めた」と批判した。推進委員会は前日(8月31日)、ソウル行政裁判所に「工作物撤去禁止」の仮処分を申し立てたが、裁判所はこれを却下した。
 ソウル市は、他の作品との公平性を合わせるためにも、撤去は避けられないとする立場を貫いている。ソウル市関係者は「該当の空間は、引き続き日本軍『慰安婦』を追悼する場として残る。(代わりに)内部を再造成する」としたうえで、「推進委員会がこの空間をどのように作るかについて提案してくれれば、積極的に受け入れる」と明らかにした。

パク・ダヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-01 21:29
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「「教師の怒りの波を呼んだ悲劇」…海外メディアも注目した韓国の教権侵害」

2023年09月05日 | 韓国で
「中央日報日本語版」 2023.09.05 10:50
■「教師の怒りの波を呼んだ悲劇」…海外メディアも注目した韓国の教権侵害

【写真】4日午後、政府世宗(セジョン)庁舎教育部の前で開かれた「公教育停止の日」行事に参加した教師が追悼祭を開いている。 キム・ソンテ記者

 ソウル瑞草区(ソチョグ)の小学校教師の自殺から四十九日となった4日、全国の教師が各地で「公教育停止の日」として追悼行事および大規模集会を開いた中、韓国の教権侵害実態に海外メディアが注目した。
 英BBCはこの日、「韓国、教師の自殺で保護者のパワハラが浮き彫りに」 (Teacher suicide exposes parent bullying in S Korea)と題した記事で「この悲劇は韓国全国の小学校教師の怒りの波を起こした」とし「この6週間、数万人の教師がソウルでデモを行った」と明らかにした。
 続いて「(教師が)児童虐待犯と呼ばれるのを恐れて、生徒を訓育したり、けんかをする児童の間に割り込めない状況」とし「2014年に児童虐待処罰法が制定されて以降、教室内の暴力的な生徒を制止することが児童虐待として申告され、厳しく叱ることが感情的虐待として烙印を押されている」と指摘した。
 BBCは「こうした文化が強まる背景には、すべてのことが学業の成功にかかる韓国の超競争社会がある」とも診断した。韓国の生徒が「幼い年齢からいつか名門大に入ろうと激しい競争する」ということだ。
 伝統的に韓国では教師を尊敬する強い文化があったが、国家経済が急速に成長しながら多くの親が高等教育を受け、教師の待遇が変わったという点も取り上げられた。ソウル教育大のキム・ボンジェ教授はBBCに「教師に対する軽視が増えたということ」とし「保護者は自分が出した税金で教師の給料が出ていると考えている」と述べた。
 またBBCは学校暴力を素材にしたドラマ『ザ・グローリー』の旋風的人気に注目し、生徒間のいじめや暴力が大きな問題とも指摘した。続いて「韓国は教室だけが崩れたのではなく、全般的な教育システムに改革が必要という声が多い」と強調した。
 米国など先進国では「タイムアウト制」が適用されている。授業を妨害する生徒、教育活動を侵害する生徒に対して段階的に注意を与え、こうした行為を続ける場合、他の生徒の学習権保護のために教室の外に分離する。ただ、韓国では保護者が子どもを侮辱したとして「情緒的児童虐待」と見なされたり学習権が侵害されたとして訴訟を起こしたりする。
 韓国政府は先月17日、「教員の学生生活指導に関する告示」の行政予告を発表し、1日から現場で適用すると明らかにした。小・中・高校の教員は授業権と学習権保障のために授業を妨害する生徒に対して「授業時間中に教室内の他の座席に移動」「授業時間中に教室内の指定された位置に分離」「授業時間中に教室の外の指定された場所に分離」「正規就業以外の時間に特定の場所に分離」と4つの措置を取ることができる。授業中に携帯電話の使用を続ければ没収することができる。また、授業を妨害して他の生徒の学習権を侵害する生徒は保護者に引き渡すこともできる。
 教育部は物理的な制止の場合、人権侵害の余地があるという指摘を受け、教員と生徒が容易に理解できるよう告示解説書を今月中に制作して配布する予定だ。各級学校は来月末までに告示内容に基づく学則整備を完了しなければならない。


「中央日報日本語版」 2023.09.05 09:49
■韓国の学校がストップ…「何も変わってない、教権を保護すべき」 教師10万人の叫び

【写真】韓国の学校がストップ…「何も変わってない、教権を保護すべき」 教師10万人の叫び

 ソウルのある小学校3年担任のカン教師は4日午前、3年の4つの組のすべての児童を教えた。この日、学校の教師28人のうち午前に出勤した教師は6人だけだった。カン教師も午後に国会前の集会に参加するために午後休暇を取った。カン教師は2組ずつ共同で授業をするので対面授業は難しく、映像資料を利用して授業をした」と話した。
 別のソウルの小学校では校長、教頭、保健教師が1学年ずつを引き受けた。病気休暇を出して学校に出なかった同小学校2年の教師は「校長先生は教科目でなく共同体の礼節などをテーマに授業をした」と伝えた。続いて「児童もほとんど登校せず、落ち着かない雰囲気だった。『学校の電気が消えていて子どもが家に戻って来た』と抗議する保護者の電話もあったと聞いた」と話した。
 月曜日の4日、大韓民国の学校がストップした。7月に故人となったソウル・ソイ小学校教師の四十九日に合わせて教師らが「教権と教師の生存権保護」を訴えることを約束したこの日、前例のない教師の「迂回ストライキ」があった。形式は自発的な年次休暇・病気休暇の取得が中心だったが、多くの教師が直接・間接的に集団行動に参加した。教育部は要請文を書いて懲戒カードを掲げるなど阻止に動いたが、一日の教育空白は防げなかった。教育当局に協調的だった一部の校長も休業でなく短縮授業などの迂迴路を探して後輩教師らの意志を受け入れた。

◆事実上一日停止した学校
 今回の闘争は、先月21日に小学教師コミュニティー「インディスクール」に掲載されたある教師の提案で始まった。「ソイ小学校教師の四十九日に年次休暇と病気休暇を出そう」と提案する内容のコメントが教師社会の呼応を得て、公教育停止の日に拡大した。かつて教師の年次休暇闘争が主に全国教職員労働組合の反政府デモの性格で行われたとすれば、今回は特別な求心点がなく自発的に進行された。学校長が裁量休業や短縮授業などで教師の意に合わせて学事日程を調整したのも過去にはなかったことだ。
 教育部はこの日午後5時基準で小学38校が休業を決定したと明らかにした。休業は全体小学校(6286校)の0.6%水準だが、教師個人の年次休暇や病気休暇が多くの学校で見られた。教育部は休暇を出した教師の数を公開していないため、教師の参加率は公式的に確認されていない。ソウル教師労働組合の関係者は「地域ごとに異なるが、ソウルの場合、ほとんどの学校で50-90%の教師が出てこなかったようだ」と伝えた。休業をしたソウルのある小学校の関係者は「事前調査の結果、教師49人のうち47人が休暇を使ったと答えた。『教師をやめて別の職を探す』というほど教師は断固としていた」と話した。
 地方の学校の参加度は各地域教育庁の方針に基づいて差が表れ、小・中・高校の順に参加度が高かったという。釜山市教育庁は小学校教師9369人のうち1634人(17.4%)が、慶尚南道教育庁は1万2400人うち1300人(10.5%)が学校に出て来なかったと推算した。この日、全国13地域で開催された追悼集会の主催側は参加人員を約10万人と明らかにした。全国小・中・高校教師が50万人であることを勘案すると、小学校だけでなく中学・高校の教員もかなり参加したというのが、教育界関係者の分析だ。

◆「短縮授業の予告あれば登校させなかったが」 保護者から抗議も
 ソウル市教育庁は1日、「学校の状況によって併合授業や下校時刻調整など弾力的な学事運営で安全な学校運営に万全を期してほしい」という妥協策の性格の公文書を送ったが、教育部は「短縮授業も制裁の対象」と明らかにした。このため休業ではなく短縮授業を選択した学校が増えたとみられる。休業を短縮授業に変更したソウルの小学校校長は「今日は29人のうち15人の教師が出てきた。校長、教頭、部長教師まで全員が動いて4時限までの短縮授業を終えた」と説明した。
 教育現場は混乱していた。あるインターネットコミュニティーには「学校長が正常授業すると公示し、児童も全員出席したが、教師が来なかった」「あらかじめ体験学習申請書を出して学校に行かなかったが、共働きの家庭はやむを得ず子どもを学校に行かせたようだ」などのコメントがあった。ある保護者は「9・4追悼集会は支持するが、短縮授業をあらかじめ公示していれば子どもを学校に行かせていなかった」と書いた。

◆教育部、強硬対応から「善処」に旋回
 この日の「公教育停止」は、ソイ小学校教師事件以降、教師の怒りが増幅しているという意味だと、教育界は分析している。教育部が教権保護総合対策を出したが、先月31日以降の4日間で教師4人が極端な選択をし、教権侵害の深刻性はさらに浮き彫りになっている。参加人数5000人で始まった教師の週末集会は7回目まで続き、約20万人(2日、主催側推定)まで増えた。9.4闘争を率先した教師が開設した「公教育停止の日署名集計」サイトには8万人以上の教師が休暇を取ると明らかにした。
 教育部が予告した懲戒が現実化する場合、教師の反発はさらに強まるという懸念の声が出てきた。懲戒権を持つ教育監の賛否が分かれ、理念対立構図が深化するという指摘もある。ソウル市のチョ・ヒヨン教育監はこの日、「教育部は教師に対する懲戒方針を撤回してほしい」という立場を明らかにした。ある地域教育庁の関係者は「大量懲戒事態だけは避けなければいけない。教権を立て直すのに率先すると言った教育監が教師を懲戒すれば、結局、もう一つの争いが始まる」と憂慮した。
 ソウル教師労働組合の関係者は「教育部が教権侵害を防ぐとして出した学生生活指導告示は人員や予算が不透明な状態であり、多くの教権保護法案は与野党の隔たりで通過が延びている。すべてが半分だけの対策」と批判した。ソウルの小学校教師は「昨日も児童がけんかをして保護者から抗議を受けたという同僚の話を聞いた。この1カ月間、何も変わっていない」と語った。
 韓国教員団体総連合会のキム・ドンソク教権本部長は「7月のアンケート調査の結果、回答教師全体の99%が『自分が感情労働者と感じる』と答えた。その間、無分別な授業妨害などに対してやめるよう要請すること以外に何もできなかった教師が自分たちの無気力さを感情労働者という言葉で表現したものだ」とし「法改正に先立ち『ただ尊重されたい』という教師の要求を理解する社会的な雰囲気形成が必要な時」と述べた。
 批判が強まると、李周浩(イ・ジュホ)副首相兼教育部長官はこの日、深夜まで開かれた国会予算決算特別委員会全体会議で「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は教権を確実に立て直す」とし「追悼に参加した教師に対する懲戒は検討しない。教師を懲戒することはない」と明らかにした。


「The Hankyoreh」 2023-09-04 09:53
■[現場]ソウルで黒服着た30万人の教員たち「悪質クレーム、他人事じゃない」
 瑞草区の小学校教員の四十九日を前に7度目の集会

【写真】2日昼、全国から集まった教員たちがソウル永登浦区の国会前で、瑞草区の教員死亡事件の真相究明および児童虐待関連法の即時改正を求める7度目の集会を行っている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 全国の教員たちが黒い服装をして国会前に集まり「教員を保護せよ」と叫んだ。7月18日にソウル瑞草区(ソチョグ)のある小学校で死亡が発見された教員の四十九日を2日後に控え、7度目の集会だ。
 2日午後、ソウル永登浦区(ヨンドゥンポグ)の国会議事堂前で運営陣「教育を守りたい人たち」の主導で開催された「50万教員総決起追悼集会」には、主催側の推計で30万人が集まり、亡くなった瑞草区の小学校教員を追悼するとともに教権関連法の改正を要求した。
 国会前の8車線道路から汝矣島(ヨイド)公園の一部まで、すべての車道と歩道が教員たちで埋め尽くされた。集会が始まる20分前から集会区域として届けのあった12区域が埋まった。進行要員たちは汝矣島公園の陰に教員たちを案内した。集会開始後も教員たちが続々と集まって来ていた。
 亡くなった教員の四十九日に当たる今月4日を教員たちが「公教育停止の日」と規定し、年次有給休暇を取得するなどで「迂回ストライキ」を行おうとしていることに対して、教育部が刑事告発などの厳正対応方針を明らかにしていることから、教員たちが大挙結集したと分析される。2日に舞台に立った教員たちも、複数回にわたって迂回ストライキを訴えた。運営陣側はこの日、全国で600台以上のバスを貸し切り、済州道など島しょ地域の教員のために飛行機の支援も行ったと明らかにした。

【写真】2日昼、全国から集まった教員たちがソウル永登浦区の国会前で、亡くなった瑞草区の小学校教員を追悼した。人の波は汝矣島公園の内部まで埋め尽くした=キム・ガユン記者//ハンギョレ新聞社

 亡くなった教員の大学院の同期だと明かした教員は舞台上で「安全に教えられる学校環境を作るために、教育庁と教育部は先頭に立ってほしい」、「故人の死の真相究明を徹底してほしい」と訴えた。教職を離れたある発言者は「授業より業務とクレームに追われる現実を訴え続けてきたが、この社会は無視し、問題は腐っていったため、ある者は死に追い込まれ、ある者は現場を離れた」として制度改善を求めた。このような発言に教員たちは歓声を上げたり、涙をぬぐったりした。
 気温が30度前後にまであがったにもかかわらず、教員たちは「児童福祉法即時改正」、「悪性クレーマー強硬対応」と記されたプラカードを掲げて「私たちは教育を守る」、「私たちはあきらめない」、「崖っぷちに立たされた教員たちを保護せよ」などのスローガンを叫んだ。教員たちは帽子と傘で日差しを防ぎつつも、各区域に設けられた電光掲示板から目を離せずにいた。
 教員たちは「他人事ではなく、自分に降りかかってきうる問題」と口をそろえた。京畿道のある小学校5年生の担任を務めるCさん(30)は、「私も悪質なクレームを言われた経験がある。親友は精神科の薬を飲んでいる。瑞草区の小学校だけの話ではない。自分の事であり、隣のクラスの先生、私の友達の事だ」と強調した。
 小学校に通う2人の子どもと共に参加した経歴14年目の教員、Kさん(41)は、「悪質なクレーム問題は古くからの問題。生徒が3人いれば1~2人の割合であるほど。そのたびに学校ではもみ消して、結局は膿(うみ)となってそれが爆発した」、「教育現場が崩壊すれば、結局は平凡な子どもたちが被害を受ける。自分の子どもたちも知っておくべきだと思い、一緒に来た」と話した。
 また、教育部が四十九日に休暇を取った教員たちは懲戒するとの方針を打ち出したことに対し、教員たちは怒りを隠さなかった。大田(テジョン)から1000人あまりの教員と共にやって来たというCさん(28)は、「瑞草区の小学校教員が亡くなって1カ月がたったが、何一つ変わっていない」、「(教育部の方針にも)腹が立ったから参加が増えたようだ」と話した。
 教え子たちが現場で苦しんでいる姿を見て「当然参加すべきだ」と決心したという公州教育大学のハ・ヨサン教授(教育学科)は、「多くの生徒と先生の授業権を保護することが至急求められている」と強調しつつ、法改正を要求する現場の教員たちの発言を後押しした。
 教員たちはこの日、児童福祉法改正と生徒・保護者・教育当局の責務の強化、分離された生徒の教育権の保障、統一された苦情処理システムの開設、教育関連法案・政策推進過程への教員参加の義務付けなどの8つを柱とする政策要求案を発表した。彼らは特に、児童のメンタルヘルスおよび発達に害を及ぼす情緒的虐待行為を禁じる児童福祉法第17条5の改正を要求した。この日の集会には、国会教育委員会に所属する共に民主党のアン・ミンソク、ト・ジョンファン、カン・ミンジョンの各議員も参加した。

【写真】2日昼、ソウル永登浦区の国会前で行われた瑞草区教員死亡事件の真相究明および児童虐待関連法の即時改正を求める第7回集会で、死亡した教員の友人である教員の追悼発言に同僚たちがすすり泣いている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

キム・ガユン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-02 15:34
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「恥ずべき歴史、その記憶がベルリンの「自由」を守る」

2023年09月04日 | 国家・社会
「The Hankyoreh」 2023-09-02 08:38
■[レビュー]恥ずべき歴史、その記憶がベルリンの「自由」を守る
 ナチス時代の過ちを記憶に留めるためのベルリン各地の記念物 
 責任回避と歪曲に明け暮れる日本の行動とは対照的 
 「異なる考えを持つ自由」叫んだローザの精神、綿々と受け継がれる

【写真】ブランデンブルク門の2つの照明パフォーマンス。ナチスの強制収容所入口の「働けば自由になる」という文言を光照明で浮かび上がらせたもの(上)と、ドイツ統一30周年を迎え「統合」という字句が光る場面(下)=チャン・ナムジュ、グラフィック、ドン・ヘウォン//ハンギョレ新聞社
【写真】『ベルリンが歴史を記憶に留める方法 1、2』(チャン・ナムジュ著、青い歴史)//ハンギョレ新聞社

 この本を読んでいる間、羨ましさと切なさ、驚きと怒りの感情がせわしく交差した。歴史の過ちを真正面から見つめ、それから現在と未来の教訓を引き出すドイツ人の責任感と自信に自ずと頭が下がった。同じ戦犯国であるにもかかわらず、ドイツとは全く違う行動を取ってきた日本の無責任と卑怯さが改めて嘆かわしかった。100年前の関東大震災における朝鮮人虐殺や南京虐殺、非人道的な戦争犯罪を否定し、無視してきた行動が、放射能汚染水の無断放出につながったのではなかろうか。
 ドイツに居住するフリーランス作家、チャン・ナムジュ氏の『ベルリンが歴史を記憶に留める方法』は、ベルリンに関する本だが、その含意はベルリンとドイツにとどまらず、私たちの歴史と現実にも及ぶ。第1巻『ナチスの過去事』と第2巻『冷戦の半世紀』からなる同書で、著者はベルリン市内のいたるところで見られる歴史記念物を媒介に、ドイツ社会が歴史を記録し教育する姿勢を浮き彫りにする。ドイツ統一過程を取り上げた第2巻も興味深いが、ドイツの恥部ともいえるホロコーストに光を当てたた第1巻で、その姿勢は特に際立つ。その中心内容をあえて先にいうなら、「(過去事の)整理は終わっていない」という連邦文化相の発言で要約できるだろう。

【写真】東ドイツの国境警備隊施設があった場所を公園に復元し、1997年ベルリンの壁の崩壊を記念して建てられた造形物「沈みゆく壁」=チャン・ナムジュ提供//ハンギョレ新聞社

 著者によると、ベルリンだけで1万2千個余りの記念物が登録されているという。その中で著者がまず注目するのは、グルーネバルト駅の17番線だ。1941年10月18日、ベルリンでは初めて1千人を超えるユダヤ人を乗せた列車がこの線路を出発し、強制収容所に向かい、戦争が終わるまでこの駅だけで1万7千人がアウシュビッツやビルケナウ強制収容所に移送された。今、この駅前には「1941.10.18」と刻まれた標識が置かれているが、1987年にある女性団体がこの標識を設置する前にも何度も似たような記念標識が設置されては除去されたりしたという。ドイツでも負の歴史を記憶に留めるのは決して容易ではなかったことが分かる。
 1985年5月8日、ワイツゼッカー大統領がナチス降伏40年を迎え行った議会演説で、この日を降伏や敗戦ではなく解放の日であり記憶の日だと宣言したことが決定的な転換の契機となった。1998年1月27日、アウシュビッツ解放日を迎え、ドイツ鉄道はナチスの移送を手助けしたことについて謝罪し、グルーネバルト駅を記念館に指定した。2007年には、ヨーロッパ全域から100万人以上の子どもと青少年が収容所に移送された記憶を込めた「記憶の列車」がフランクフルトを出発し、アウシュビッツまで1万キロの旅路に出た。翌年にはドイツ鉄道本社のすぐ前にあるベルリンのポツダム広場駅で、「死に向かう特別列車」という名前の展示が開かれ、この展示は7年間ドイツ全域の44駅を巡回した。
 国立オペラ劇場とフンボルト大学などが取り囲んでいるベーベル広場では、1933年5月10日、ナチスを追従する大学生たちの主導でいわゆる「非ドイツ精神」の烙印を押された数万冊の本が焼き払われた。今、この広場の地面には「書物が焼かれるところでは、いずれ人間も焼かれるようになる」というハイネの文言が銅板に刻まれており、毎年5月10日には「忘却に立ち向かう読書」という名前で当時燃やされた本を読むイベントが開かれる。ベルリンだけでなくミュンヘンやハンブルク、ボン、ドレスデンなどドイツ各地で同じイベントが開かれている。

【写真】ドイツ統一後、戦争と暴政の犠牲者を追悼するための中央追悼記念館に変貌した「新衛兵所」にケーテ・コルビッツの彫刻「哀れみ(死んだ息子を抱く母親)」が拡大展示されている=チャン・ナムジュ提供//ハンギョレ新聞社

 5万人以上が犠牲になったブーヘンバルト強制収容所広場にある、常に人の体温と同じ温度が維持されるように設置された「36.5度追悼造形物」、重症患者や身体・精神障害者を殺害場所に運んだバスを模した「灰色のバス記念碑」、ジプシーと通称されたシンティとロマなどの犠牲者を悼む「涙の泉」、同性愛犠牲者の追悼碑と映像窓、ヒトラー暗殺を企てて逮捕されたゲオルク・エルザーを偲ぶ鋼鉄棒とLEDランプ、ベルリン市内バス停留所に建てられた主なナチス監部の顔写真と説明などの記念物は、多様かつ執拗だ。あえてここまでする必要があるのかという反応を予想したかのように、フランク=ワルター・シュタインマイヤー連邦大統領は2020年のアウシュビッツ解放日75年追悼式典における演説で、このように強調した。「私たちは起きたことを忘れません。私たちは起こり得ることを忘れません」。シュタインマイヤー大統領彼の誓いと約束は、植民地支配の歴史に関する記憶にもつながる。 「植民地時代の犯罪と抑圧、搾取、収奪、数万人の殺害は私たちの記憶の中に適切に根付かなければなりません」。このような言葉を日本の指導者から聞くことはできないだろうか。
 ケーテ・コルビッツとローザ・ルクセンブルクは、ベルリンとドイツが特に多くの記念物で称える2人の女性だ。コルビッツは息子と孫がそれぞれ第1次世界大戦と第2次世界大戦に出て戦死した苦しみを経験し、戦争に反対し平和を訴える芸術家として生まれ変わった。彼女が第1次世界大戦勃発10周年記念集会用に描いたポスター「二度と戦争はごめんだ(Nie wie der Krieg)」は今も反戦イベントで使われている。

【写真】ケーテ・コルビッツの反戦ポスター「二度と戦争はごめんだ」=チャン・ナムジュ提供//ハンギョレ新聞社

 革命家のローザ・ルクセンブルクは、ドイツ社民党とソ連共産主義を同時に批判し、独自かつ根本的な評議会体制を主張し、1919年1月、右翼民兵隊員に残酷に殺害された。彼女の名前にちなんだベルリン中心街の広場には、彼女の語録60個余りを刻んだ「思惟の標示」が設置されているが、その中で最も有名な言葉を結びに代えて紹介したい。「政府支持者や党員だけのための自由は、彼らの数がいくら多くても決して自由とはいえない。自由とは常に、思想を異にする者のための自由である」。意味もまともに知らずに口を開くたびに「自由」を叫ぶある人に贈ってあげたい言葉だ。2017年ベルリン市は「自由の首都ベルリン」をモットーに寛容と開放の「自由ベルリン」キャンペーンを行ったが、その一環としてローザのこの言葉を盛り込んだポスターがベルリン市内各地に貼られ、市内の建物にもローザの肖像画と共にこの引用文プラカードが掲げられた。市民の反対はなかった。

チェ・ジェボン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-09-01 11:01
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