「The Hankyoreh」 2023-07-21 10:04
■福島原発汚染水問題、ハンギョレが「怪談スピーカー」? 批判の根拠を徹底分析
現場から
【写真】国民の力「韓国の海を守る検証タスクフォース」のソン・イルチョン委員長(中央)が19日、国会で開催された福島第一原発汚染処理水緊急討論会「フクシマ怪談はどのように広がるのか」であいさつしている/聯合ニュース
19日に与党「国民の力」や「公正言論国民連帯」などの保守系の市民団体の共催で国会で開催された「福島第一原発汚染処理水緊急討論会」で、発題者がハンギョレを「怪談のスピーカー」だとして批判したことが、聯合ニュースをはじめとする一部メディアによって報道された。
報道によると、「フクシマ怪談はどのように広がるのか」をテーマにした討論会で、「正しい言論市民行動」のホ・ヨプ理事は「3月の韓日首脳会談以降、民主党が(怪談を)提起し、軌を一にするハンギョレと京郷新聞がそのような怪談を拡大再生産し、スピーカー役まで果たしている」と主張した。
何を根拠にハンギョレを「怪談のスピーカー」と呼んだのかが知りたいと思い、討論会の発表資料を入手した。発表資料でその理由まで具体的に説明されている記事は4件だ。その中で「民主党」が直接言及されているのは、7月12日付の1面掲載の「IAEA、汚染水をろ過するALPSの性能検証を一度もしていなかった」という見出しの記事だ。
ホ理事は「(記事は)1週間前に民主党のイ・ソヨン議員が『ALPSの性能検証は抜け落ちている』と主張したのと同じ内容だ」と主張している。そして「イ議員の発言に対してSBSニュースの『ファクトチェック:事実は』チームは7月6日の放送で、7回の報告書を全数分析した結果、『ALPSでろ過した放出直前の段階の汚染水を検証した内容を見つけることができた』として、イ議員の発言は『概して事実ではない』と判定(した)」と付け加えている。
しかしこの主張は、イ・ソヨン議員の発言とハンギョレの報道が同じ内容だという部分からして事実とは異なる。イ議員の発言が4日に発表された国際原子力機関(IAEA)による汚染水放出計画の安全性検討の結果に対するものであるのに対し、ハンギョレの報道はIAEAが2020年に発表した日本のALPS小委員会の報告書の検討結果に対するものであるからだ。
韓国政府は、IAEAがALPSの性能検証をきちんと行っていないという指摘について「ALPSに対する検証はすでに終わっている」とし、「2020年度に検討して報告書を発表している」と説明してきた。ハンギョレは政府が言及したこの報告書を探し出し、ALPSの性能を検証した報告書ではないことを確認した。また、IAEAが2013年3月以降5回行っている別の検討でも、ALPSの性能に対する検証は検討範囲に含まれていなかったことを確認して報道した。
SBSが「IAEAがALPSの検証を全くしていないと考えるのは難しい」という判断の根拠として提示したのは、たった一度の汚染水の試料分析の結果だ。しかし、この結果を記した報告書には、どこにも「ALPSの性能検証」という言葉がない。分析目的が東京電力の分析値の信頼性の確認であって、ALPSの検証ではなかったからだ。
“IAEAはALPSの性能の検証をしていない”という記事をはじめ、ハンギョレの記事は、特定の政党の発表を書き写したものではない。このような記事が「怪談」なら、いっそハンギョレを「怪談の生産者」と呼ぶべきだろう。何の判断もすることなく入力される信号を増幅するだけの「スピーカー」と呼ぶのは、報道機関とジャーナリストに対するより大きな侮辱である。
キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-07-21 05:00
「The Hankyoreh」 2023-07-21 08:24
■[特派員コラム]「汚染水取材」での東京電力の韓国メディア選別
キム・ソヨン|東京特派員
【写真】福島第一原発の敷地のタンクに保管中の放射性物質汚染水/聯合ニュース
日本の東京電力福島第一原発に保管中の汚染水の海洋放出が目前に迫っている。4日に「国際安全基準に合致する」という国際原子力機関(IAEA)の最終報告が発表され、関連の行政手続もすべて完了した。来月中の放出の可能性が高い状況において、汚染水の安全性をめぐる論議は今もなお熱い。
東京電力の不透明で無能な対応は、不信をいっそう強めている。汚染水の安全性を判断するために最も重要なことは、放射性物質を除去する多核種除去設備(ALPS)の性能を確認する作業だ。そのため、今でも様々な国が試料採取を要求しているが、東京電力は特別な説明もせず拒否している。IAEAでさえ直接には試料を採取できなかったほどだ。
原発近くの海で獲られたクロソイやアイナメなどから基準値以上の放射性物質が検出されている点も問題だ。東京電力は、人体に致命的な「セシウムにまみれた」魚がなぜ獲れたのか、正確な理由は分からないと説明する。原発の爆発によって放射性物質が流出して12年、その間東京電力は何をしていたのか。原発近くの海と海底土壌はいったいどのような状態なのか。そうした状況のもとで汚染水を30~40年にわたり海に流すということであれば、周辺国が不安を感じるのは当然だ。
東京電力の非常識な行動は繰り返され続けている。東京電力は今月初め、外国メディアの取材を支援する日本フォーリン・プレスセンター(FPCJ)を通じて、福島第一原発の現場取材の申請を受けた。21日の一日の日程だが、放出設備を直接見て回ることができるよい機会だと考えた。
結果を伝えられ、あきれてしまった。申込書を提出した韓国の新聞社・通信社のうち、ハンギョレだけが選ばれなかった。地上波では文化放送(MBC)だけが除外された。外国メディアを対象にした福島第一原発の取材は、今回が初めてではない。コロナ禍が終わった昨年11月と今年2月にも、フォーリン・プレスセンターを通じて実施されたことがある。その時は韓国メディアからは1社だけが選ばれたので、結果に納得した。今回は状況が違う。何より、今回に先立ち現場取材に参加した報道機関2社は、今回も選ばれている。センターに公平性の問題を指摘し、選定基準を問い質したところ、東京電力が決めたものだと伝えてきた。東京電力はこれまで明確な返答はしていない。
ハンギョレとMBCの共通点といえば、他の報道機関に比べ、汚染水放出に対する懸念を込めた記事を多く報道してきたという点だろう。批判記事を多く書いたという理由で、韓国を代表して取材している報道機関を排除したのであれば、軽く流せる事案でない。在日韓国大使館に公式に問題を提起し、日本外務省と東京電力に懸念を伝えてほしいと要請した。
形式を重要だと考える日本において、外国メディアを相手にこのように露骨に選別するのはめったにみられないことだ。なぜこうしたことが可能だったのだろうか。おそらく、そのようにしても大丈夫だと考えたのだろう。
大統領を批判したとして国外歴訪取材の際に専用機への搭乗を拒否したり、大統領が公式の記者会見を後回しにして好みの報道機関の記者だけ別途呼んで会うような韓国の状況を、日本もよく知っている。7日に訪韓したIAESのラファエル・グロッシ事務局長も、日本とは違って韓国では報道機関数社を選別し、インタビューを進めた。民主主義の重要な軸である報道の自由が各所で崩れ始めた。
キム・ソヨン|東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-07-21 02:35
「The Hankyoreh」 2023-07-21 07:15
■「汚染水現場取材」からハンギョレとMBCを排除した東京電力
【写真】福島第一原発の敷地内のタンクに保管中の放射性物質汚染水/聯合ニュース
東京電力は福島第一原発の汚染水の海への放出を目前に控え、日本駐在の外国メディアに現場取材を提案しながら、韓国メディアでは「ハンギョレ」と「文化放送(MBC)」のみを排除した。韓国でこの問題を最も批判的に報道してきた2つの報道機関のみを排除した格好で、日本政府と東京電力が汚染水放出を強行しつつ主張してきた「透明な情報公開を行う」との約束が守られるのかに注目が集まるとみられる。
東京電力は7日、日本駐在の外国メディアの取材を支援する日本フォーリン・プレスセンター(FPCJ)を通じて、福島第一原発の汚染水放出設備を案内する現場取材を21日午前10時から午後5時まで行う予定だとして、申請書の提出を要請する電子メールを送ってきた。放射性物質を除去する多核種除去設備(ALPS)、汚染水を海に送り出す海底トンネルなどを見て回れるよう取材機会を提供するとの内容だった。ハンギョレを含め多数の東京特派員が申請書を提出した。
FPCJが5日後の12日に通知した選定結果を分析すると、韓国の新聞社や通信社は6社が申請書を出し、ハンギョレだけが落選した。地上波放送局3社では、選定されなかったのはMBCのみ。外国メディアを対象にした福島第一原発の取材は、新型コロナ・パンデミック終了後では今回が3度目。昨年11月と今年2月に実施された現場取材は多数の韓国メディアが申請したが、選定されたのはそれぞれ1社のみ。先の2回の現場取材に参加した韓国メディア2社は、今回も取材機会を得ている。
取材の公平性など、選定基準に深刻な問題があるとハンギョレが問うと、FPCJの関係者は「どの報道機関を選定するかは主催者である東京電力が決める」と語った。東京電力に選定基準を問うたが、20日午後現在、返信はない。東京電力は、個別のメディアには選定基準を明らかにしない方針だという。
岸田文雄首相は12日の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領との会談で「日本の首相として海洋放出の安全性に万全を期し、自国および韓国国民の健康や環境に悪影響を与える放出は行わない」と述べた。このように約束しておきながら、安全性確認のための情報公開の基本である批判的メディアの現場への接近を阻止したわけだ。駐日韓国大使館の関係者は「日本の外務省と東京電力を通じて状況を確認している」と述べている。
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-07-20 14:05
「The Hankyoreh」 2023-07-20 08:11
■中国、日本産水産物を全面的に放射線検査…汚染水放出に「応戦」
岸田首相、中国に「科学的根拠に基づく議論を求める」
中国政府が、日本産水産物を輸入する際に放射線検査を全面的に実施していると報じられた。福島第一原発の汚染水の海洋放出を押し切ろうとする日本政府に圧力をかけるための措置とみられる。
東京新聞は19日、複数の中国と日本の関係者の話を引用し、「中国税関当局が日本からの輸入海産物に対する全面的な放射線検査を今月から始めたことが18日分かった」とし、「日本の外務省と農林水産省は対応の協議を始めた」と報じた。
2011年3月の東日本大震災にともなう福島第一原発の爆発事故で放射性物質が海に流出した後、中国政府は福島県など10地域の水産物に対して輸入禁止を維持している。その他の地域については、輸入する際に水産物の一部だけをサンプル形式で抽出し、放射性物質の検査をしてきた。
今回、規制が強化されたことによって、日本産の輸入水産物一つひとつに対して検査を始めた。冷蔵品は約2週間、冷凍品は約1カ月間が必要とされると発表された。検査に時間が非常に長くかかっており、水産物の鮮度維持が難しく、輸入に支障をきたしている。中国の上海にある日本食レストランの経営者は共同通信に、「日本からの海産物が今月13日以降届かなくなり、スペイン産マグロに切り替えた」と証言した。
中国税関の今回の措置は、来月に予定されている日本の汚染水放出によるものだ。中国税関総署(税関)は7日、「処理水の海洋放出が食品に与える影響を注視している。適時に必要な措置を取り、中国の消費者の安全を確保する」と警告したことがある。この発表の直後、日本産水産物の検査が強化された。
日本の農林水産省は昨年、中国に輸出された水産物は871億円に上ると明らかにした。NHKは「(日本の水産物の輸出額は中国が)国や地域別の中で最も多いだけに影響が広がることが懸念されている」と強調した。
日本の岸田文雄首相は、汚染水放出を強く反対している中国に対して不満を表明した。中東を歴訪中の岸田首相は18日、中国に対して「IAEA(国際原子力機関)包括報告書において、関連する国際安全基準に合致していると結論が示された」として、「科学的根拠に基づいた議論を行うよう強く求める」と述べた。
西村康稔経済産業相もこの日、記者団に「中国に対しては、科学的観点からの(日本と中国の)専門家同士の意思疎通を行う用意がある旨、累次にわたって申入れをしている」と述べた。だが、中国側が拒否していることが分かった。
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-07-20 02:30
「The Hankyoreh」 2023-07-19 08:00
■「汚染水放出は一方的」…福島市民「円卓会議」結成し反対運動展開
福島大学の研究者、住民、農民、漁業者などが参加
【写真】「これ以上海を汚すな!市民会議」など日本の市民団体が6月、福島県で原発汚染水の海洋放出に反対する集会を行っている=ソーシャルメディアよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社
福島第一原発に保管されている汚染水の海洋放出が来月行われる予定である中、福島大学の研究者や住民、農民、漁業者などが「一方的に放流を決めてはならない」と主張し、会合を開いた。
東京新聞は18日付で「処理水(汚染水)の処分について国民的な議論を求める動きが起きている」とし、「福島大の研究者らが『復興と廃炉の両立とALPS(アルプス)処理水問題を考える福島円卓会議』を設立した」と報じた。同会議は汚染水の放出と関連し、日本政府や東電が一方的に方針を決めるのではなく、住民の意見を聞くなど幅広い視点に立った議論をすべきだと訴えている。
同会議の初会合は今月11日、福島市で開かれた。福島大学の中井勝己元学長はこの場で、「地元漁業者らが積み重ねてきた努力を無にすることはできない。(この会議を)復興に取り組むわれわれ住民が、政府や東電と対等な立場で意見を交わす場にしたい」と述べた。初会合にはオンラインを含め120人が参加した。
初会合では汚染水の放出に対する批判が相次いだ。福島県農業協同組合中央会の菅野孝志最高顧問は「政府と東電は決まった方針や質問を説明するだけで国民と一緒に課題に向き合う姿勢が足りない」と指摘した。また「決めるのは国、決められるのは国民という構図では、理解促進はできない。お互いが近づき、本気で話をするべきだ」と語った。
福島県で農業を営む60代の参加者は「海洋放出は科学的知見だけでは決められない。市民やそこに暮らす漁業者、農民の声が全く反映されていないのが問題」だとし、「方針決定のやり方に声を上げていく必要がある」と強調した。同会議は会合を続けながら提言をまとめ、経済産業省と東電に伝える方針だ。
福島県の市民団体は17日、「海の日」を迎え、300人余りが参加した中、市内で汚染水の海洋放出に反対する集会を開催した。彼らは「(汚染水の放出が海に)どう影響が出るか誰も分からない。処分の仕方を、もう一度検討してほしい」と訴えた。
日本政府は福島原発汚染水(約133万トン)の放射性物質濃度を法的基準値以下に下げた後、来月から30~40年かけて海に放出する予定だ。特に多核種除去設備(ALPS)で除去されないトリチウムは基準値の40分の1以下に濃度を希釈して海に流す方針だ。
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-07-18 18:34