経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・ゼロ成長と消費低迷

2024年02月04日 | 経済(主なもの)
 12月の経済指標が出て、10-12月期のGDPは、実質ではゼロ成長というところか。やはり、消費が伸びておらず、設備投資も横ばいだ。住宅や公共はマイナスである。それでも、足下のソフト指標は上向きで、人手不足も著しく、高めの賃上げも望めそうだ。名目では伸びているせいと思われるが、こうした実質と名目の食い違いが今回の景気の特徴で、本当に景気が良いと言えるのか、躊躇してしまう。

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 10-12月期については、商業動態・小売業は、12月が大きく落ちて、前期比-3.2となってしまった。インバウンドやサービスは伸びているにせよ、消費は停滞している。10-12月期の設備投資は、資本財や輸送機械は増えているものの、建設投資が不調で、若干の増加にとどまりそうだ。住宅や公共は、資材高もあって低下傾向である。他方、景気ウォッチャーは、12月に前月比+1.2と5か月ぶりに上昇し、消費者態度は、雇用環境の改善もあって、12月が前月比+1.2、1月が+0.8と4か月続いての上昇となっている。

 消費の低迷は、昨年の4-6月期からであり、実質だと2期連続のマイナスだ。その理由は、可処分所得の動向にある。7-9月期までの4四半期における名目の増加率の平均は、雇用者報酬が+0.4%なのに対して、可処分所得は+0.1%にとどまる。その可処分所得と家計消費は、4-6月期から軌を一にしている。要するに、賃金は増えても、税・社会保険料で所得が抜かれるから、消費が増えないという、実もフタもない話である。別段、将来不安とかの心理学を持ち出すまでもない。

(図) 


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 先日、『日本の経済政策 失われた30年をいかに克服するか』という本を読んだが、実体の分析より、財政金融政策の論評という内容のせいか、停滞の原因は、雇用のリスク、将来の財政不安、ゼロ金利の長期化にあり、不良債権処理の遅延や財政金融の緩和の副作用といった政策の失敗に帰するとしている。

 実体を見れば、失われた30年と言っても、設備投資が盛り上がった時期もあって、平坦ではない。問題は、消費が低迷を続けたことにある。バブル崩壊後、財政出動の下で、設備投資は減っても、消費が伸びて、ゼロ成長を支えたが、1997年に財政を一気に切って、デフレに転落し、小泉政権下では、輸出で設備投資が伸びても、緊縮財政を採り、消費は低迷した。

 アベノミクスでも、異次元緩和で輸出と設備投資は伸びたが、可処分所得を削ったために、消費は低迷した。これがなければ、成長率はマシになっていただろう。高成長の経済構造へ変革するには、需要を期待形成の導き手とし、設備投資を引き出さねばならない。結局、輸出頼りで、内需を削ったために、そこまで至らなかった。消費を伸ばすために財政再建という穿った政策思想があると、こうなるわけである。


(今日までの日経)
 NISA対象投信に1.3兆円流入。巨大IT、再点火 5社そろい増収増益。GPIF収益、昨年最高の34兆円。人手不足で滞る設備投資 計画未達、12年ぶり水準。「支援金」徴収、26年4月から 少子化対策。製造業生産、1月1割減 車の品質不正で停止響く。

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