経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

小池新党に捧ぐ、希望の経済政策

2017年09月24日 | 経済
 選挙の行方は分からないが、2019年10月の10%消費増税は、ほぼ決した。与野の第1党が公約にするらしいから、もう避けられまい。ところで、家計消費(除く帰属家賃)は、増税から3年経った2017年4-6月期に至るも、未だ増税前水準を取り戻せていない。どうして、日本の政治家は、そんな国民の生活水準を切り下げる政策を取りたがるのか。しかも、外需の幸運に恵まれてこうなのだ。「改革」に酔わず、リアリズムに徹すべきである。

………
 9/20に4-6月期の日銀・資金循環統計が公表され、国・地方の財政収支が順調に改善していることが示された。こうした過去8期のトレンドが続くと仮定すると、どうなるか。2021年度内には収支均衡に到達することが分かる。すなわち、2022年度には、財政赤字が解消されるということだ。しかも、社会保障は足下で黒字にあり、これを含む一般政府で見れば、実質的には更に早く収支均衡へ届くだろう。

 重要なのは、10%消費増税なしで、これを見通せることである。消費増税をすれば、1年早く、目標どおり2020年度に赤字ゼロにできるかもしれないが、万一、緊縮財政で景気を腰折れさせれば、かえって遠のくかもしれない。1年早めるために、そんなリスクを冒す必要はあるまい。むしろ、トレンドを守りつつ、着実に財政再建を進める方が市場の信認を得られる。目的は、財政再建であって、消費増税ではないはずだ。

 とは言え、消費税を上げなければ、積み残しの高齢者向け社会保障も充実できないし、まして、新たな保育や教育の拡充もできない。そうであれば、1%だけ引き上げ、財政赤字の圧縮には回さず、2.3兆円すべてを使えば良い。保育や教育には1.6兆円の配分となり、かなりのことができる。例えば、3~5歳の幼児教育無償化なら約0.8兆円である。残る1%増税は、3年後の2022年度に行うものとし、使途は改めて議論すれば良かろう。

 自民党のように、2%上げて、使途を教育に1兆円拡大したとしても、なお2.9兆円もの緊縮圧力がのしかかる。消費は2016年度に+0.5%と1.2兆円しか増えてないことを踏まえれば、どれほど重荷か理解できよう。他方、民進党は、軽減税率を使わず、多く取って全部を歳出で還元するらしいが、駆け込みと反動が起こり、還元したものが貯蓄にも回るため、経済にはストレスがかかる。ショックを軽くし、使途の合意を形成するには、絞る方が得策だ。

 もし、筆者が小池新党の政策担当者なら、消費税9%・全部還元を掲げる。上げ幅圧縮で自民案より軽負担にし、政策絞込みで民進案より現実味を出す。いわば、真ん中の公約にして左右にウイングを伸ばすという、政治学ではよく知られた手法である。ポイントは、真ん中が在り得ることを見抜き、政策を編み出せるかの力量だ。単なる折衷でなく、リアリズムに即して「希望」を訴えられるのだから、おいしいと思うんだがね。

(図)



………
 ここで、ややテクニカルになるが、政府の「中長期の経済財政に関する試算」との違いを説明しておく。まず、出発点の2016年度はGDP比-3.5%と同じだが、2017年度の実績見込みは、-2.9%と政府の-3.3%より高めだ。2015年度に-3.0%まで行ったこともあり、足元の景気の加速ぶりからして、十分あり得ると考える。あとは、実績に従い、成長に伴う収支の改善スピートを年間+0.6%で伸ばしている。

 もちろん、この2,3年のトレンドが長く続く保証はない。しかし、景気が減速してトレンドが鈍ったとして、そこで緊縮を強めるのは愚の骨頂だろう。要は、スピートの緩急はあるにせよ、着実に改善していくことが信用のために大事なのだ。達成が2022年度になるか、2025年度になるかは小事であって、焦りから増税し、成長を失う方が遥かに危険である。「増税を見送ったからこそ、今の成長と改善がある」というのがアベノミクスの最重要の教訓だ。

 また、基礎的財政収支の均衡を達成した先のことまで考えるべきである。達成までは、やたら締め、達成したら、急に甘くなるのでは、おかしかろう。EUの財政基準のGDP比3%まで来たのだから、デフレの今は自然体で臨み、先々インフレが高まってきたら、収支が均衡していようと締めるべきだ。言うまでもなく、経済運営の目標は、成長確保と物価安定であり、財政収支は、それらを支える副次的目標でしかない。

 そして、今後、金利が正常化していけば、基礎的財政収支より利払いがリスク管理に重要となる。利子配当課税を20%から25%に上げ、金利の上昇で利払いが増えても、それを賄える税収増が得られるようにしておくべきだ。増収は利払いに消えるものの、基礎的財政収支を改善する形となる。消費税を9%に値切り、増収分を全部使うとしても、金融資産の上がりは財政再建に使う「保険」を用意しておけば、財政再建派も説得できよう。

………
 2%消費増税は、状況を読み、対応を万全にすれば、乗り越えられなくもないが、公共事業も満足に管理できない日本の財政当局には、無理な注文だ。1兆円の法人減税をするから大丈夫とした理屈ばかりの対策も、脆くも潰えている。一気の増税という戦略の誤りは、容易にカバーできる筋合いのものではない。「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」とされる。増税の苦難に、国民は忍耐を強いられた。そろそろ、為政者は、リアルな政策に練達し、「希望」を見出すべきときであろう。


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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-09-24 22:49:43
大阪維新と政策作ってる連中が同じなのであの政党にそんなこと言っても無意味だと思われます
自民党の別動隊であることがほぼ確定しており、なおかつネオリベ路線なのであの政党かなりやばいですよ
Unknown (Unknown)
2017-09-25 12:10:16
東洋経済でコラムを執筆している反緊縮派の村上尚己氏が今週の記事で指摘してるように、首相の本音は別のとこにあるのかもしれません。消費増税をするのにプライマリーバランス目標は延期というのは、どうも整合性がとれないです。次もまたサミットのときみたいに、変なグラフ用意して無理やり延期しても驚きません。その場合、選挙で約束した教育の無償化は国債発行じゃないでしょうか。

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