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ためぞうの冒険 II 第三十七話 「ゆけむり。」 Bパート。

2015年02月26日 23時42分52秒 | ためぞうの冒険(ダークフォース セカンド?仮+未定)
ためぞうの冒険 II 第三十七話。



   「ゆけむり。」 Bパート。



 これまでのお話。


 セバリオスさんは、昨年末の商店街のガラガラで、

 『ゆけむり温泉旅行』を当てていました。


 エリスねーさんや、サフィリアさんを、

 温泉に誘う口実欲しさで、当てましたが、

 なんとなくクラス旅行っぽくなりました。


 そんな感じで、

 手配してもらった送迎バスに乗り込んで、

 目的地の温泉宿に到着です。


セバリオスさん「いやー、絶景だね。」


 薄く雪化粧された、

 白く美しい山地には、

 豊富な湯量の源泉がいくつもあって、


 おもむきのある温泉宿が、

 立ち並んでいます。


 近くには、

 ちょっと硫黄の香りがする、

 名所巡りみたいな場所があって、


 湯気を帯びた岩肌と、

 所々に積もる雪を見ながら散策できます。


 なんとも旅の情緒があっていいですね。


 もくもくと蒸気の噴出すお湯の中には、

 温泉タマゴのカゴが浸かっていて、

 その場で、頂けます。


エリナ先生「まずは、旅館の方にいって、

      そこから自由行動にしましょう。


      みなさん、いいですか。」


 先生は、あつあつの温泉タマゴのカラを

 包み紙で器用にむいて、

 ふーふーしながら、食べちゃってます。


 すでに自由行動をしているエリナ先生と、

 セバリオスさんに付いて行くと、

 立派な旅館の前に着きました。


ためぞう「なんか温泉って、久しぶりっす。」


セバリオスさん「そうだね、

        まずはチェックインを済まして、

        各自、部屋割りだね。」


 旅館の女将さんと、仲居さんたちが、

 お出迎えしてくれます。


 エリナ先生とセバリオスさんは、

 フロントで手続きをして、各自の部屋割りを決めました。


ためぞう「オレと、セバリオスさんと、

     レオクス師匠が、同じ部屋なんですね。」


レオクスさん「では、荷物を部屋に置きにいきましょうか。」


 シオン君は、

 サフィリアさんと、レミーアさんと一緒の部屋になりました。


ためぞう「(ちょっと、シオン君。

      大丈夫なの?)」


シオン君「(えっと、

      むしろ、チャンスだと思っていますよ。)」


 そのシオン君は、

 可愛い花柄のワンピースを着て、

 すぐに、サフィリアさんやレミーアさんと、

 打ち解けています。


 シオン君は、本来なら、

 二人とは、かなり仲のいい関係なのですが、

 その想い出は、変な魔法でうやむやにされています。



  ・ 変な魔法の主な効果。 


    女装することにより、

    シオン君へのMAX2000の好感度を、

    封じています。


    その効果で、

    ためぞうの、

    サフィリアさん、レミーアさんたちとの、

    ハッピーエンドルートを保護しています。




レミーアさん「よろしくっす、シオンさん。」


サフィリアさん「よろしくお願いしますね。」


シオン君「よろしくお願いしますー!」


 エリスねーさんたちも、

 それぞれの部屋に向かいました。


 旅館は、三階建ての本館に、

 和風の別館が通路で繋がっています。


 ためぞうたちは、お土産屋さんの横にある、

 エレベーターを使って、三階の301号室に向かいました。


ためぞう「通路から見える景色もまた、いいもんっすね。」


セバリオスさん「ほら、この場所からだと、

        風呂場の位置がよくわかるだろう。


        露天風呂に混浴もあるね。

        今日は、何回風呂に入ろうかな。」


レオクスさん「ちょっと、セバリオスさん・・・。

       そういう話を通路で、堂々とは。


       あ、エリスさんだ。」


 別館の方に歩いていく、エリスねーさんと、

 セリスさんと、レイカさんの姿が見えました。


 大浴場は、本館と別館の通路の間にあって、

 その辺りから、ゆけむりが立ち上っています。


 露天風呂は、道路からも見えにくい、

 山手の方にあるようです。


 ためぞうたちが301号室に入ると、

 セバリオスさんは、すぐに浴衣に着替えました。


 フロントの方が大きめの浴衣を用意してくれたので、

 高身長のセバリオスさんが着ると、

 なかなかの迫力です。


セバリオスさん「先に、風呂に行って来るね。

        たぶん、エリスもすぐに入る方だから。」


レオクスさん「わ、私は、ちょっとお茶でも頂いて、

       ゆっくりしようかと。」


 セバリオスさんは、ささっと、

 大浴場に向かっていきました。


 レオクスさんは、お湯にのぼせやすいらしいので、

 まずは、ゆっくりくつろいでのスタートのようです。


ためぞう「ちょっと、自分も出てきますね。」


レオクスさん「はーい。」


 ためぞうは、一階の103号室に行った

 シオン君の事が、かなり気になっていました。


 さすがにあの格好なので、

 男子との相部屋はないと分かっていましたが、

 まさか、サフィリアさんとレミーアさんと同じ部屋になるとは、


 いつバレるかなんて、

 それこそ時間の問題でしょ!


 と、ためぞうは焦るのです。


 シオン君は、相当な冒険魂を秘めているので、

 アグレッシブに、チャレンジする事でしょう。


 と、そんなシオン君を、

 一階のお土産屋さんの所で見つけました。


シオン君「どうも、ためぞうさん。」


 シオン君は、お土産のちょうちんや、

 ペナントを見ていました。


 近くにあるロビーの椅子では、

 サフィリアさんとレミーアさんが、

 温泉タマゴの話をしているようです。


ためぞう「お土産のペナントって、

     つい買ってしまうよね。」


シオン君「うん、よくわからない内に、

     欲しくなってたりする。


     メガネの方の姉さんは、

     こういうのを喜ぶんだ。


     カスタードまんじゅうとかも、

     帰りに買っていこうかな。

     アリス姉さんは、甘党だから。」


サフィリアさん「あ、カスタードのおまんじゅう、

        美味しそうですね。


        私も、後で買って帰ろうかな。」


レミーアさん「よかったら、

       温泉タマゴ買いに出かけませんか?

       温泉に来た感、ハンパない感じがいいです。」


サフィリアさん「うん、雰囲気とかもいいですよね。

        何より、美味しそうですし。

        ラムネもありましたよね。」


 そんな流れで、ためぞうたちは、

 旅館を出て、観光に向かいました。
 

 足湯のある場所や、

 お土産屋さんが立ち並ぶ通りは、

 浴衣姿のお客さんが、結構、行き交っています。


 一際、湯気の立ちこめる道の先に、

 温泉タマゴの直売所があるようです。


 歩いている最中に、

 ためぞうは、シオン君に小さな声で、

 こう聞いてみました。


ためぞう「(シオン君、一つ聞いておきたいんだけど、

      お風呂って、どっちの方に入る予定なの?)」


シオン君「(あー、そうですよね。


      湯気のチカラを操れば、

      見えない感じにして、

      女湯の方に入れなくもないと思っていましたが、


      普通に考えたら、入っちゃダメですよね。)」


ためぞう「(ゆけむりパワーを、そっちに使う発想はなかった。)」


シオン君「(確か、混浴もありますよね。

      そっちに入ろうかな。)」


 ためぞうは、混浴には入ってはいけないと強く思いました。


 あれこれ考えながら歩いているうちに、

 温泉タマゴの販売所へと着いてしまいました。


 ちょうどいいタイミングで、

 おじさんが温泉タマゴのカゴを、

 あげてくれました。


レミーアさん「湯気が凄いっすねー、

       おじさーん、タマゴ下さい。」


おじさん「いらっしゃい!


     お嬢ちゃんたち可愛いね。

     少し、オマケしとくから。」


サフィリアさん「どうも、ありがとうございます。」


 販売所のおじさんから、

 温泉タマゴと、冷えたラムネを頂いて、

 その場で、美味しくいただきました。


 その後、ためぞうたちは、

 ゆっくり散策しながら、旅館へと戻って来ました。


ためぞう「それじゃ、一回、部屋に戻るんで。

     またね。」


サフィリアさん「はーい。

        私たちも、戻りましょうか。」


レミーアさん「そっすね、

       ためぞう先輩、またっす。」


シオン君「またね、ためぞうさん。」


 ためぞうは、そのまま部屋に戻るつもりでしたが、

 ゲームコーナの案内が気になったので、

 それとなく行ってみます。


リンカさん「ためぞうさんも、卓球ですか?」


 ゲームコーナーの入り口の付近の、

 自販機が並んでいる場所で、

 浴衣姿で卓球をしているリンカさんがいました。


 湯上りな感じで、黒髪がいつもより艶めいています。


浴衣のA氏「行くぜ、俺たちの、

      トルネードスマッシュ!!」


 浴衣のA氏の強烈なスマッシュを、

 リンカさんは軽く返して、ポイントゲットです。


浴衣のA氏「ハウァァァ・・・。

      まだ、デュアルは始まったばかりでござるYO!」


 奥義に激しいエナジーを消耗したA氏の代わりに、

 浴衣のB氏が、リンカさんとラリーを続けています。


浴衣のB氏「二人がかりでも、まったく歯が立たないんだな。」


 リンカさんは、二人を相手に余裕で勝負を続けています。


 パッと見では、普通にピンポンをしているような感じですが、

 挑戦者たちには、激しいオーラが見えているようです。


ためぞう「オレ、リンカちゃん側に入ろうか?」


浴衣のJ氏「そいつぁ、いけねえぜ!

      オレたち三人も、最初は、

      誰がリンカさんチームに入るかで揉めたんだ!


      だから、三対一で勝負したんだが、

      どうにも、先に果てちまってな。


      今、メロンソーダでスタミナ回復中なんだ。」


 マッサージチェアで、ブルブルと肩を揺られながら、

 浴衣のJ氏は、メロンソーダを飲んでいます。


ためぞう「なるほど、三人でも勝てなかったのか。」


 華麗に舞うリンカさんの浴衣は、

 何だか、しっかり揺れています。


 流れるようなその、揺れの動きは、

 リンカさんに、無限のエネルギーを与えているようです。


リンカさん「えぃ!」


 リンカさんのゆるいショットを追いきれず、

 浴衣のB氏は、無駄に派手に宙を舞います。


浴衣のB氏「湯上りの美少女相手に、

      温泉卓球をする事が目的であるからして、

      いかに記憶に残る名勝負を演じるかが、大事なんだなッ!」


 せっかくの温泉で、

 美少女相手に勝ってはいけないような気がする、

 という建て前で、ガチで三人は負けています。


 それでも勝敗など関係なく、

 爽やかな笑みを浮かべている三人です。


 リンカさんも美少女と呼ばれて、何だか嬉しそうです。


浴衣のA氏「B氏の熱きソウルは伝わったなりィ!

      それがしも、アクロバットのテクでは負けぬでござるよォ。」


 想い出さえ、しっかりキャッチ出来れば、

 結果オーライという事らしいです。


 確かに、今日のフルーツ牛乳の飲むリンカさんの表情は、

 いつもより、素敵な感じになっています。


ためぞう「そういう情熱は、分からん方ではない。

     開幕から、スタートダッシュしてるなぁ。」


浴衣のJ氏「こういうもんは、

      ペース配分なんて、どうでもいいんだ。


      気分だけは、開幕10連勝だぜッ!」


 チャンスに全力を傾ける三人の雄姿に、

 ためぞうは、攻める勇気をもらった気分です。


ためぞう「いやいや、ためぞうの勇気は、

     まだ三人には、遠く及びますまい。


     ただ、全力ダッシュは、ありだと思う。

     気分って、大事だよね。」


リンカさん「そうですよね。」


 次の瞬間、

 A氏とJ氏のダブルブロックを押し退け、

 すり抜ける白球は、二人の身体を容赦なく天空へと誘います。


浴衣のJ氏「なんてパワーだ!」


浴衣のA氏「見事なワザであった・・・。」


 このグリーンのコートには、

 もう、ためぞうしか立っていません。


 ためぞうは、彼らのその情熱に感じて、

 リンカさんに、挑みます。


 リンカさんのゆるいショット → ためぞうは、その一撃を返せないッ!


ためぞう「つよっ!」


 ゆるふわな魔球には、とんでもない威力が秘められていました!


ためぞう「軽く打ってる感じなのに、

     手元ですごく伸びてくるのな。


     よく、これほどのショットをラリーしてたな。

     みんな、エライよ!」


 リンカさんのスマッシュ → ためぞうは、ピンポンに追いついた!


 だが、やはり返せないッ!


ためぞう「うおおぉぉぉ・・・。」


 ためぞうも、飛ばされてしまいました。


 ためぞうが目覚めると、

 301号室に帰ってきていました。


ためぞう「はっ!?」


セバリオスさん「やあ、

        エリスとリンカさんがピンポンをやってて、

        それをマッサージチェアで眺めてたら、


        エリスにためぞう君を頼まれたので、

        部屋に運んでおいたのだけど、

        それで良かったのかな?」


 気が付くと、ためぞうは、

 部屋でセバリオスさんと二人で、お茶を飲んでいました。


 レオクスさんは、その話を聞いて、

 ゲームコーナーの方へ行ったそうです。


ためぞう「お風呂の方は、いかがでしたか?」


セバリオスさん「いやー、大浴場は、

        いろんな種類のお風呂があって、

        楽しかったよ。


        当然、男湯の方に入ったわけだが、

        ゆけむりの先を見る修行は、

        そこでは、逆効果だったよ。」


ためぞう「・・・なるほど。」


セバリオスさん「それで、

        湯上りのエリスが出てくるのを待って、


        偶然、一緒に出たみたいな感じで、

        景色を眺めながら、歩いていたら、


        リンカさんたちに会ってね。


        個人的には、そこそこ満足しているよ。」


 セバリオスさん的には、

 エリスねーさんとのツーショットが、

 久々だったので、ご機嫌なようです。


 ためぞうも、偶然の出会いとかには、

 縁遠い方なので、

 努力が必要だなーと感じました。


ためぞう「参考になるっす。」



 ためぞうも、そろそろ温泉に入ろうかと、

 部屋を出ると、

 大浴場の男湯の方に向かいました。


 すると、大浴場の入り口で、

 その男湯に入ろうとする、

 シオン君を見つけました。


ためぞう「ちょ、ちょっと!?」


シオン君「ためぞうさん、ども。」


 女装したままのシオン君は、

 その持ち前の勇気で、

 可愛い花柄のワンピース姿で、

 男湯に入ろうとしていました。


 ためぞうは、慌ててシオン君の手を引くと、

 人気のない通路で、

 その格好はまずいんじゃないかと説明します。


ためぞう「せめて、浴衣に着替えた状態で、

     男湯に向かおう・・・。


     確実に、大いなる誤解を与える。


     湯気のチカラを操れるからこその、

     誤解なのだが。」


 シオン君は、上手く湯気を重ねて、

 きっと、女の子を演じる事でしょう。


 ですが、男湯でそれを演じさせるわけにはいかないのです。


シオン君「あ、そうですよね! うっかりしていました。」


 すぐに、シオン君は浴衣に着替えて戻ってきます。


シオン君「浴衣って、気分が出ていいですね。


     では、入りましょうか。」


 ためぞうに、試練です。



 ・ 浴衣に着替えたシオン君と、

   二人で、男湯に入ってみますか?



   → それも、一つの冒険だろう! (ためぞうは、魅了されます。)


     ならば、手をつないで行こう! (ためぞうは、大いに魅了されます。)


     あえて、腕を組んで入る!  (メガネの姉さんも、大喜びでしょう。)



ためぞう「・・・オレはこんな、

     三択程度の試練じゃ、やられねえぜッ!」



 ためぞうは、タフガイです。

 ここまで、いろんな試練を越えて来ました。


 ためぞうの、みやぶる+1 が発動!



ためぞう「オレに試練を与えようとしている、

     そこに隠れてる、メガネの姉の副生徒会長さんよォ!


     出てこいよ・・・。」


シオン君「あ、アリサねーさん。」


アリサさん「・・・いろいろ、強くなりましたね、


      ためぞうさん。」


 湯上りツヤめき肌の、アリサさんがいました。


 その、刹那でぇす!


アリサさん「!? しまったッ!」


 冷めた瞳で、アリサさんを見つめる、

 セリスさんがいます。


 気配の消し方が、ハンパではありませんでした。



セリスさん「私とエリス様の、素敵な温泉旅行の想い出を、


      ええ・・・奪えるものなら、奪ってみて下サイ。」


 ためぞうのピンチは、

 セリスさんのピンチでもあります。


 ためぞうが、一定のハッピーエンディングを迎えると、

 セリスさんの日々の喜びでもある、

 エリスねーさんとの、甘い共同生活も、

 それなりのエンディングを迎える事でしょう・・・。



  - ためぞうを、そんな冒険には出せません。 -



 セリスさんの目ヂカラ! → おおっと、湯冷めの効果!!


               ・・・アリサさんは、凍りついた!



             → シオン君は、固まっている!


               かなり、ビビっている!!



             → ためぞうも、ビビっているゥゥゥウ!!!



 アリサさんは、どうやら道を間違えていたようです。


 アリサさんはうつろな目で、

 タクシーに乗って、学園寮に戻って行きました。

 学園寮で、快適に目覚める事だと思います。


 何故か、その場に居合わせた、

 浴衣姿のファルさんと、ローゼさんッ!



ファルさん「な、何も見ていないと思いますっ!」


ローゼさん「見てないですーーーッ!!」


 セリスさんが、ニコやかに微笑むと、

 二人は無事に、ゲームセンターの方へと迎えました。


シオン君「お、温泉あきらめますッ!」


 シオン君の判断は、早い!

 ・・・経験値だけは、並外れているようだ。


セリスさん「いえいえ、お気になさらず。


      ゆっくりしていって下さいね。」


 男湯の前に、セリスさんが立ちはだかった。


 追加効果 → 貸切っぱくなった!(効果時間 15分。)


シオン君「では、お言葉に甘えて・・・。」


 シオン君は、ゆったりと一人で大浴場を楽しめました。

 時間は、10分ほどでしたが・・・。


 残された ためぞうは、

 セリスさんと二人だけになってしまった・・・。


セリスさん「ためぞうさん、がんばって下さいね。」


ためぞう「は、ハイッ!


     適当に、がんばっていきます!」


 この後、ためぞうも、

 ゆっくり温泉を楽しめました。


ためぞう「・・・ためぞうは、すごく安心しました。」



          Cパートにつづく。
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ためぞうの冒険 II 第三十七話 「ゆけむり。」 Aパート。

2015年02月19日 17時10分33秒 | ためぞうの冒険(ダークフォース セカンド?仮+未定)
ためぞうの冒険 II 第三十七話



   「ゆけむり。」 Aパート。



ためぞう「冒険・・・。

     なつかしいが、いい。」


 ためぞうは、先日から庭のテントで

 共同生活を始めた、

 とっても可愛いシオン君と、

 充実したきらめきライフを送っています。


 シオン君が男の子である事が知られてしまうと、

 ためぞうはおろか、

 セバリオスさんやレオクスさんまでピンチに陥るので、

 女装が欠かせないシオン君です。


ためぞう「その手の誘惑に乗ってみたくなる事もしばしばですが、

     ためぞうの中の何かが告げるのです。


     オレは、後戻りの出来ないワナを、

     妄想だけで踏みとどまる努力を重ねています。」


シオン君「ためぞうさんは、紳士だと思います。

     そして、常に冒険の準備を怠らない、

     チャレンジャーなのです。」


 ためぞうは、早朝から、

 目の下にクマを作りながら、牛乳配達に出かけます。


 シオン君は愛らしいジャージ姿で、ためぞうを見送ります。


シオン君「頑張って下さいね、ためぞうさん。」


ためぞう「(・・・耐えろ、オレ。

      ためぞうの未来、ためぞうが守って見せる!)」


 ためぞうは、一つの迷いを越えた後に、

 また、迷いの中にいたりします。


 そんなためぞうを今日も待っている少女が、

 ローゼさんのマンションの前にいました。


リンカさん「おはようございます、ためぞうさん。」


 辺りはまだ暗いので、リンカさんは街灯の下で待っています。


ためぞう「毎日、リンカちゃんは元気だね。」


 ためぞうが、リンカさんに

 いつもの特濃牛乳と、牛乳プリンを三個セットで、手渡します。


 リンカさんは、マンションの一階のローゼさんの部屋に置いて来ると、

 ためぞうの元に戻ってきて、こう言いました。


リンカさん「アリス会長さんの妹さんのシオンさんって、

      あんなに可愛いのに、貧乳ですよね。


      私だって、その貧乳なのですが、

      そういう時代が到来してもいいんじゃないかと、

      願う気持ちもあるのです。」


ためぞう「うん、個性だよな。

     オレが女子に何かを求めるとしたら、

     そこらへんの大小よりも先に、

     ちょっとした、さりげない笑顔だと思うから。


     人生そのまま、いない歴のためぞうに、

     語れる問題ではないかもだけどね。」


リンカさん「両方で、頑張ってみようと思います。

      マジカルな変身願望もありますし、


      でも、今はちっちゃくても、

      胸を張って元気にやっていきたいとも思うのです。」


 リンカさんは、そう言ってにこやかな笑みを浮かべて、

 マンションに戻っていきました。


ためぞう「・・・ためぞうは、誘惑に弱くなったのでしょうか。

     リンカちゃんが、キラキラして見えました。」


 ためぞうは、牛乳配達を終えると、

 将棋友達の亀吉さんの家に寄っています。


 亀吉さんは、とても将棋が強いのですが、

 勝つと気分が良くなって、

 ためぞうに、いろんな構えを教えてくれます。


 ためぞうと亀吉さんは、火鉢のおかれた縁側で、

 餅を焼いて食べながら、お茶しています。


亀吉さん「そういやー、ためぞう君は、

     『必殺奥義』みたいなもんばー、

     持ってなかったとじゃなかね?」


ためぞう「あれって、覚えられるもんなんすか?」


亀吉さん「ヒーローショーとかに出たら、

     覚えられるとじゃ、なかとね?」


ためぞう「・・・確かに、セリカさんは、

     意味も分からない必殺技を、

     アホのように撃ってくるな。


     参考にしたいと思います。」


亀吉さん「無理ばせんで、

     ゆっくりやらんねー。


     いざとなったら、オイの技を伝授しちゃるたい。」


ためぞう「すんません、いつもお世話になってます!」


 ためぞうは、その後、

 長崎ドラゴン魚市場の手伝いをして、


 サフィリアさんや、レミーアさん達と、

 学園に登校しました、


 今日は、三年J組の教室から、

 異様なオーラが発せられていました。


 レミーアさん(16)やリンカ(15)さんは、

 飛び級しているので同じ教室です。


レミーアさん「ためぞうせんぱい、

       ささ、どうぞ中へ。」


リンカさん「冒険心に溢れたためぞうさんなら、

      きっと大丈夫です。」


 ためぞうは、ワナに警戒しながら、

 ガラガラッと、教室の扉を開けました。


エリナ先生「あら、いらっしゃい。」


 エリナ先生がちょっとご機嫌のようです。

 その隣には、セバリオスさんが立っています。


セバリオスさん「やあ、おはようためぞう君。」


 オーラの正体がセバリオスさんだったので、

 女子たちは安心して席に着きました。


エリナ先生「先生も、そろそろ潤いのある生活を送りたいと思いまして、

      あのレイカさんを守れるほどの強さを持つ、

      セバリオスさんに、か弱いこの身を守っていただこうと、

      お願いした次第です。


      先生は、自由でロマン溢れるドキドキな生活を送りたいのですが、

      先生に、そういう展開が起こりそうになると、

      よく、レオクスさんのお父さんっぽい方から、

      邪魔をされてしまうのです。


      セバリオスさんなら、きっと懲らしめてくれるでしょう。」


セバリオスさん「良く分からないんですが、

        エリナ先生には、逆らってはいけない法則が

        存在してるような気もするので、

        何となく、引き受けてしまいました。


        あ、エリナ先生、点呼とかどうぞ。」


 エリナ先生は、適当に点呼を取っていきます。

 先生は興味のないことは、本当にどうでもいいようです。


エリナ先生「セバリオス君。」


セバリオスさん「はい!

        ・・・うっかり答えてしまった、

        生徒でもない人も呼ばれるのですね。」


 パワーバランスでは、

 エリナ先生が、セバリオスさんに、

 微妙に勝っているような感じです。


エリナ先生「では、シオンさん、入って来てください。」


 先生に呼ばれて、シオン君が教室に入って来ました。


 エリナ先生は、黒板に『詩音=クラウス(16)』と名前を書くと、

 簡単な紹介を始めます。


エリナ先生「この時期の三年生のクラスに編入というのも、

      もう卒業じゃね?

      と疑問を持たれる方もいらっしゃるかも知れませんが、


      来年度も、2015年版 三年J組は、続きますので、

      うっかり卒業してしまわないで下さいね。


      何年経っても、

      同じクラスに同じメンツが通っている方のノリの、

      教育方針ですので、

      先生(オトナ)の事情というのもわかってくれると幸いです。


      先生、来年も再来年も、19才のつもりですので、

      どうか宜しくお願いいたします。


      あ、シオンさんの紹介でしたね。

      アリス生徒会長さんの妹です。 以上。」


シオン君「シオンです、よろしくお願いします!」


 可憐なシオン君のブレザー姿に、

 クラスのみなさんが見惚れています。


 プラチナブロンドのショートヘアに、

 白磁に薄桃色が浮かび上がるキメ細やかな肌。

 細い立ち姿に、すらっと伸びた手足。


 背丈は、やや低めですが、

 それでも存在感は、十分です。

 絵に描いたような、お姫さまのような、

 ため息が漏れるほどの美しさです。


生徒A氏「貧乳新時代の、幕開けでござるよォ!!」


生徒B氏「黒髪のリンカさんと、ツートップで、

     応援していきたいんだな。」


教師J氏「J組の担任を辞めた今は、

     体育教師として頑張ってるが、

     体育の時間の楽しみがまた増えちまったぜッ!」


リンカさん「おお、時代の風よ・・・。」


ためぞう「A氏とB氏は、一芸で入学してたのか。

     侮れんな・・・。」


 席は結構空いているので、

 シオン君は、ためぞうの近くの席に座りました。


 教壇の辺りで、セバリオスさんとエリナ先生が何やら相談しているようです。


エリナ先生「ええ、私も参加出来るというのであれば、

      研修とか、修学旅行とか、

      適当に取って付けて、

      うまくやって見せますよ。」


セバリオスさん「さすが、エリナ先生は分かりが早くて助かる。

        お互い、今後も支え合って、

        共通の利益の為に頑張っていきましょう。」


 そう言って、セバリオスさんが教壇に立つと、

 こんな事を言い始めました。


セバリオスさん「えー、みなさん、

        ご存知の方もおられるかも知れませんが、

        私、昨年末の福引きで、

        『ゆけむり温泉旅行』を当てております。


        送迎バスの手配などは済ませてありますので、

        良かったら、参加なさってみませんか?


        学園側の方から、積立金の一部を充てて頂けるとの事で、

        生徒さん側には、宿泊費等は一切かかりません。


        お土産等は、自費でお願いします。」


ためぞう「こ、このタイミングで!?」


 ためぞうが、シオン君の方を見ると、

 温泉旅行の響きに、瞳をキラキラさせています。


ためぞう「(いや、これは結構なピンチだって。

      だいたい、どっちのお湯に浸かる気だよ!)」


 ためぞうは、ヒソヒソとシオン君に耳打ちします。


ためぞう「(行ったら、高確率でバレるって!)」


シオン君「(それでも、ボクは行かなければならないんだ、

      ためぞうさんッ!


      それが、ボクがここに来た運命だとすれば!

      ・・・サフィリアさんと、お風呂。てへ。)」


 ためぞうを遥かに凌ぐ、チャレンジャーがそこにはいました。


 あ、オレは自分から冒険を離れて行ってるんだと、

 ちょっと切なくなった ためぞうは、

 あの頃の冒険野郎だった、自分を思い返すのです!


ためぞう「オレは行かなければならない!

     そう、そこにある、シャングリラへと。」


生徒A氏「共に行こう! 何が出来るかなどではないッ。

     到達への道が険しいほどに、

     心揺さぶられるものなりぃ!」


生徒B氏「機を見るに敏なんだな!

     先陣の誉れを頂くんだなッ!」


教師J氏「ああ、オレも自費で是非参加させてもらうぜ。

     あの頃に回収し損ねた美しきメモリーの為。

     フフ・・・、オレも本気を出す時がきたようだな!」


 野郎たちが盛り上がってる中、

 セバリオスさんは、話を伝える為に、

 ランチの準備をしている、レオクスさんのお店に行きました。


レオクスさん「え!? もーそんな事になっちゃってるんですか。」


セバリオスさん「うん。」


レオクスさん「あ、えっと・・・その、エリスさんは?」


セバリオスさん「呼べば来ると思うが、

        一応、聞いてみよう。」


 セバリオスさんは、スマホを取り出します。


  プルルルル・・・。


エリスねーさん <「はい、こちら担当のエリスになります。」


> セバリオスさん「おはよう、エリス。」


エリスねーさん <「なんだ、セバリオスかよ。

          どーかしたの?」


> セバリオスさん「エリス、温泉旅行、行けるよね?」


エリスねーさん <「ああ、温泉いいなぁ。


          いや待て、行ったらラジオ体操の皆勤賞が、

          取れなくなる。

          日帰りじゃないんだろ?」


> セバリオスさん「そうか、また後で連絡する。」


 問題が発生しました。


レオクスさん「ダメでしたか・・・。」


セバリオスさん「ラジオ体操、エリス大好きだからね。

        現地でハンコ押してもらえれば解決かな?」


 セバリオスさんは、魚市場のとなりの空き地で、

 ラジオ体操を主催している、町内会の方に電話をします。


 そして、もう一度、

 エリスねーさんに電話をしました。


エリスねーさん <「はい、こちら担当のエリスになります。」


> セバリオスさん「やあ、エリス。」


エリスねーさん <「非通知でかけてくるなよ。

          それで何なの、セバリオス?」


> セバリオスさん「エリスが温泉に行きたいって言ったら、

          あのハンコ押してくれるおじさんが

          付いてきてくれるそうなので、

          温泉、どーする?」


エリスねーさん <「さすが、セバリオス。

          行くー。

          ・・・あんがと。」


 問題が解決しました。


レオクスさん「セバリオスさんは、やるなぁ。」


セバリオスさん「いろいろ準備があるから、

        ここで失礼するね。

        また、後で詳細については相談しよう。」


レオクスさん「そうですね!」


 その日の放課後。


 ためぞうは、シオン君がよそ行きの服を持っていないという事なので、

 シオン君と一緒に、デパートの婦人服売り場へと出かけしました。


デパートの田中さん「あら、ためぞうさん。

          可愛い子を連れていますね。」


 デパートの田中さんと、ゲームがめちゃんこ強い山田さんと、

 ためぞうは、

 デパートの前の公園のクレープ屋さんで、

 クレープの誓いを立てた、お友達さんになります。


 結束は、わりと固めです。


ためぞう「ええ、実は訳あって、

     学園の生徒会長のアリスさんから、

     このシオンさんを預かっておりまして、


     いつもの如く、

     端から見るほど充実な感じではありません。」


シオン君「シオンです、よろしくお願いします。」


 ためぞうなりに、シオン君に気遣っていたりします。


 ジャージやブレザーで温泉旅行もいいかも知れませんが、

 新しいよそ行きの服でお出かけするのも、

 いいんじゃないかと、

 理由はそんなところです。


 田中さんは、シオン君の女装をプロの眼力であっさりと見抜いてしまいましたが、

 それは、そっと胸の奥にしまって、

 体形が自然に見える、愛らしい花柄のワンピースと、

 少しゆったりめの、白のジャケットを持って来てくれました。


田中さん「コレなんか、いかがですか?

     ちょっと寒い時でも、わりと暖かいですよ。」


シオン君「ちょっと試着させてもらいますね。」


 バッチリ似合っています。

 より可愛らしさが強調されました。


シオン君「ねえ、ためぞうさん。

     どうですか?」


ためぞう「・・・いいと思います。

     いろいろ、自重したいと思います。」


 その後、田中さんはパジャマまで選んでくれました。

 あちらでは浴衣を着るとしても、

 持っていて困るものでもないので、

 それを込みでのお会計になります。


ためぞう「そんなに安くていいんですか?」


田中さん「はい、いつもありがとうございます。」


 お得意様へのセールの品扱いで、約50%オフの6980円でした。

 シオン君が、お財布から払おうとしましたが、

 ためぞうは、ポイントをたくさん貯めているので、

 ポイントで決済します。


ためぞう「お土産とか買うのに、取っておいたほうがいいよ。

     オレ、まめにポイント貯めてるから、気にしないで。」


田中さん「ためぞうさん、男前ですね。」


シオン君「あ、ありがとうございます!」


 笑顔で見送ってくれる田中さん。

 ためぞうは、デパートを出て、

 エリスねーさんの家に帰って来ました。


 ねーさんの家の前で、

 エリスねーさんと、ローゼさんと、ファルさんが、

 お話しています。


エリスねーさん「おかえり。

        ためぞーと、シオンさん。」


 エリスねーさんたちは、大きめのカテゴリーに入ります。

 リンカさんがやって来て、

 シオン君の手を引いて、こう言います。


リンカさん「シオンさんは、こっちのカテゴリーになります。」


 リンカさんはそう残して、

 ためぞうからフルーツ牛乳を受け取ると、

 ローゼさんと一緒に、マンションへと帰って行きました。


ローゼさん「では、またです。」


ファルさん「私もこの辺で、では。」


 デパートの袋を持ったシオン君を見て、

 エリスねーさんは言います。


エリスねーさん「ためぞうのテント、狭いよね?

        ウチに泊まってもいいんだよ。


        荷物置くとことか、風呂とか、

        てきとーに使っていいから。」


シオン君「そう言ってもらえるをありがたいです。

     お泊りについては、

     今は、まだ姉との約束がありますので、


     あと、クローゼットとお風呂は借りたいです。

     そんな感じでいいでしょうか?」


エリスねーさん「うん、約束あるならしょうがないね。

        困った時はいつでも言ってね。」



 ◇ シオン君の守らなければならない、姉たちとの約束。



   ・ ためぞう(を含む男子)の、

     素敵なフラグを、希望を摘み取らない事。


   ・ 女装がバレて、正体を知られると、

     シオン君への好感度は、

     ためぞうの20倍ほど上がるので、

     現時点で、そういう方向へ行ってはいけない。


   ・ ためぞうを、たやすく終わらせない。

     冒険などなど。


   ・ 適度にメガネの方の姉(アリサさん)の期待にも、

     応えなくてはならない気がする。


   ・ バレても平気な人もいる事はいる。

     お隣さんのレイカさんのような、王子さま耐性を持ってる方。



 辺りが、暗くなって来ました。


 近所の銭湯から戻った、ためぞうと、

 お風呂上りでパジャマになったシオン君は、

 ためぞうのキャンプの中にいます。


ためぞう「約束って、そんなにややこしいのね。」


 ためぞうは、クーラーボックスから、

 フルーツ牛乳を取り出し、

 シオン君に渡します。


シオン君「ごくん・・・。わぁ、美味しいです。」


 湯上りのパジャマ姿で、ふわっとした色気のあるシオン君に、

 ためぞうは、熱い冒険魂を堪えています。


 そんなためぞうに、

 シオン君は、こう話し出しました。


シオン君「ボクは、とても長い時間を、

     過ごしていた事があるんです。


     そんな移り行く時の中で、

     景色は変わり、人々の世代も代わり、


     目を覚ます度に、

     違った光景に戸惑う事もありました。


     それでも、

     サフィリアさんだけは、

     ずっと変わらなくて、ボクの傍に居てくれたんです。


     彼女が居てくれるから、

     ボクは何も心配しないで、


     ここまで来る事が出来ました。」


 ためぞうは、シオン君の言いたい事が、

 何となくわかったような気がしました。


 シオン君は、フルーツ牛乳をごくごくっと飲み干して、

 こう続けます。


シオン君「だから、

     サフィリアさんのグラビア写真が、

     メガネの姉の方から、さりげなく送られてきた時、


     ボクの小さな勇気は、

     この冒険心に変わったんですッ!


     変わりますよね?

     そりゃ、変わっちゃいますよね!」


 突然の変化球に、

 ためぞうは見逃し三振です。


ためぞう「・・・あ、そゆこと。」


シオン君「そーなんです! てへ。」


 ためぞうは、

 シオン君に共感出来る何かを見ましたが、


 うかうかしてられないとも、

 思ってしまいました。


 となりのレイカさんの家の窓から、

 ためぞうは、メガネのお姉さんの方の視線を感じます。


アリサさん「ためぞうさん、がんばって!」


 ためぞうは、

 そこそこ頑張れるとは思いますが、


 メガネのお姉さんの期待に応えられるほどの自信はないので、

 ゆるめに冒険していこうと、寝たふりです。


シオン君「ためぞうさん、もう寝ちゃったの?」


ためぞう「うん、


     またねー。」


 ためぞうは、様々な試練を越える為に、

 キャンプの拡張も必要かなと思いました。



              Bパートに続く。
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ためぞう II フルスロットル! 「チョコレートデイ。」

2015年02月14日 15時52分25秒 | ためぞうの冒険(ダークフォース セカンド?仮+未定)
ためぞう II フルスロットル!


   「チョコレートデイ。」



ためぞう「・・・冒険したい、今日この頃。


     『ためぞう II 』 って、

     『 I 』は、古蔵さんなの?」


 ためぞうは、今日は気の合う仲間たちと、

 一緒にいます。

 シオン君を連れて来ると、ややこしい事になるので、

 主に、ゲーム仲間で集まっています。


 集合場所は、デパートのある駅前です。


A氏「決戦の時は来たなりぃ!

   我ら、今年こそは、

   義理でもいいんで、夢の彼方へ行ってみたいでござるよォ!!」


B氏「熱いバトルなんだな。

   この戦いには、確実に勝ちまくってるヤツと、

   平穏な日常を送ってる者たちとの間で、

   見えないフィールドが発生しているんだな!」


J氏「ああ、その通りだぜ。

   オレも長年の経験の中で、

   この日を思い出した事は、一度もねぇ。


   なんて、記憶に残らねえ激しい一日なんだ!」


 それぞれに好き勝手言っていますが、

 みんな、置いてけぼりはイヤなのです。


 生まれた日は違えども、

 貰える時は出来れば一緒に、

 貰えなくとも、共に明日を目指して、来年を待つのです。


ためぞう「チャレンジャー諸君、よくぞ集まってくれた。


     オレも、どちらかといえば、

     チョコレートって何ですか? と、

     問いたくなる部類に位置している。


     だからこそ、あえて言おう!

     我らの結束は固い。


     貰えなくたっていい、

     ただひたすらに、全力で、駆け抜けて行こうぜッ!」


 彼らには、熱い友情こそありますが、

 作戦は特にありませんでした。

 奮い立つ勇気を胸に、ただ前へと進み続ける。

 そんな冒険野郎でありたかったのです。


 その時です、

 デパートの前に、牛乳大好きリンカさんが通りかかりました。

 時刻は、午後一時くらいになります。


リンカさん「こんにちはー。」


冒険野郎たち「こんにちはー。」


リンカさん「今日は、チョコレートの日ですね。

      みなさん、よかったらコレをどうぞ。」


 するとリンカさんは、

 いろんな色紙に包装された、今日の日の為のアレを、

 冒険野郎たちに、手渡しました。


リンカさん「ゲーセンで、また遊びましょうね。」


 リンカさんは、にこやかに微笑みながら、

 その場を後にしました。


A氏「ミッションコンプリートォ!!

   リンカさんが、エンジェルに見えたでござるよ。」


 冒険の幕は下ろされました。


ためぞう「リンカちゃん、ありがとう!


     でも、幕引きはええよ・・・。」


B氏「想い出メモリーには、バッチリ記録済みなんだな。


   あんないい子がいると思うと、

   自分まで、優しさに溢れてくるような気がして、

   不思議な気持ちなんだな。」


J氏「さすがは、期待の新人リンカちゃんだぜ!

   義理でも何でも、

   貰っちまった、この胸の高鳴りは、

   どーにも抑えきれねえぜッ!


   どーせ、本命を誰も渡せねえ事くらい、

   ためぞう氏だって、予想できるだろう。

   つまり、これで一番なんだよ。」


 J氏のぶっちゃけは、的を得ています。


 良く考えなくても、ためぞうの知り合いの中で、

 本命のチョコを渡せる女性なんて、想像がつきません。


 冒険野郎たちは、各々、満足げに、

 その場を立ち去っていきました。


ためぞう「・・・。

     なんか、あっけなく終わってしまった。


     壮大なスペクタクルもなく、

     ピンチも特になく、

     ちっちゃいが、美少女である事には間違いない、

     リンカさんから、ありがたい宝物を頂いてしまった。」


 フルスロットルで気合を入れて、

 今日の日に挑んだためぞうでしたが、

 十分な目標を達成したので、

 ちょっと、ふにゃんとなって、

 デパートの前にある、大きな公園へと向かいました。


 柔らかな陽差しに包まれながら、

 ベンチで緑を眺めるのもいいものですね。


 ためぞうは、携帯座布団とか持ち歩いているので、

 冬のベンチに座っても、ほんのり暖かいです。


 この公園のちょっと先に、ファルさんが勤めるお花屋さんの、

 裏口があります。

 そちらから、ためぞうに気が付いたファルさんが、

 ためぞうを見つめていますが、


 ためぞうは、ぼーっとしているので、

 その視線には気が付きません。


 ファルさんが今日の日の為に用意した、

 当たり障りのない、義理っぽいチョコの包みを、

 お店の中に取りに行った

 まさにその時です!


謎の声「サイクロン=ハリケーン=タイフーン=ジェット=イナズマボンバー!!」


 油断100%のためぞうに、

 突然、ラリアット系のワザが襲いかかります!


ためぞう「!? やばいっ。」


  ガキーーン!


 謎のラリアットを受け止めた影があります。


ためぞう「ふ、古蔵さん!?」


古蔵さん「ネコのマスクのマスクマン。

     宅配サービスの古蔵です。」


 謎の声の正体は、ためぞうの上司のセリカさんでした。


セリカさん「ククッ、さすがは元祖ためぞうの、古蔵さん。」


ためぞう「ややこしい事言うなよ、セリカさん。

     で、何しに来たの?」


 セリカさんは、ためぞうを指差してこう言い放ちます。


セリカさん「私は、チョコレートを義理でも誰にも渡さない!

      おこずかいが減るから。


      でも、ためさんの物は、私の物な気がするのです。

      諦めて、渡しなさい!

      幸せは分かち合うものだと願うのです。


      だから、ください。」


 ファルさんが包みを取って戻って来ると、

 ためぞうに、何かよくわからないピンチが訪れていました。


セリカさん「一応、聞くけど、

      古蔵さんも、例のアレ、持ってる?

      チョコっぽいヤツ。」


古蔵さん「・・・今朝、不意にリンカちゃんに貰った。


     古蔵さんとしては、

     かなり感動的なイベントだったので、

     後で、アパートに帰ったら飾ろうかと思っています。」


セリカさん「お前もターゲットじゃーーァ!!


      二人まとめて、マットに沈めてやるわッ!」


  コンッ!


 ゴングがなりました。


 ためぞうも、古蔵さんも、

 見えないリングの中にいます。


ためぞう「セリカさんは、チャレンジ力、ハンパないな。」


古蔵さん「このリングっぽいとこを出ると、

     どうなるの、ためぞう君?」


 セリカさんは、木の枝を使って、

 地面に四角いリングを描いています。


ためぞう「・・・もう古蔵さんとは、逢えない気がする。」


古蔵さん「そんなにヤバイんだ!?」


セリカさん「オリャー! 無駄口聞いてるんじゃねーぞォ!


      行くぜ、最終奥義!」


ためぞう「古蔵さん、本気だせ!

     ネコマスク取られて、国に強制送還されるぞ!!」


 セリカさんのサンダーストライク=トルネードスピン!


 → 古蔵さんは、遥か上空へと巻き上げられた!


古蔵さん「つよ!?」


 セリカさんのグランドスラム=ジャイアントボム!


 → おおっと! これは、一気に決着か!?


 ためぞうは、トータスの構え III を発動!


 → 古蔵さんのダメージを98%ブロックした。


 → 古蔵さんに、9800ダメージ!!


古蔵さん「やべぇよ!!

     オレ、HPあと200もねえよ!」


ためぞう「セリカさんは、実力だけは大魔王だから。

     古蔵さん、オレとタッチな。」


 古蔵さんは、青コーナーから、ためぞうを応援している。


セリカさん「ためさんとて、手加減はしないよ。

      いい試合しようぜッ!」


 遠くから見守るファルさんは、

 セリカさんが男前に見えました。


ためぞう「・・・プロレス中継をほぼLIVEで見まくってる、

     セリカさんの技術は、本物だ。


     こんな所で、使いたくはなかったが、

     オレも本気以上の力を見せるしかあるまいッ!」


 ためぞうは、オーバーアクセルの構え!

 ニトロのチャージは万全だ!


ためぞう「フルスロットルで駆け抜けるぜッ!!」


セリカさん「ドリャー!

      最終奥義 マーク II !!」


ためぞう「いくつ、最終奥義持ってんだよッ!」


 ためぞうは、高速でコーナーをドリフトしています。

 パワーでは、セリカさんとは勝負にならない為、

 テクニカルなアクロバット技で、応戦しています。


 ためぞうのドロップキック! → セリカさんに弾かれた!


ためぞう「(早く奥義を撃って来いよ、

      オレのスピードを捉えられるならな!)」


 公園で激しいバトルが繰り広げられていますが、

 フィルター機能で、周りの人には、

 じゃれ合ってるようにしか見えません。


 お前ら、青春してるな! って感じで、普通の人には見えています。


古蔵さん「最近のバトルは、ここまでエボリューションしていたのか。

     古蔵さんも、マスク取られないように、

     気をつけんといかんですな。」


 セリカさんに、ためぞうは腕を捕まれました。


セリカさん「行くぜッ、最終奥義ッ!!」


 刹那、ためぞうの姿がドロンと消えて、葉っぱになります。


セリカさん「!? 変わり身の術だと!」


 すかさず、ためぞうは、

 セリカさんの背後に回り込み、ジャスティス=スープレックスを放ちます!


 ふわっとセリカさんの身体が宙を舞うと、

 勢い良く両肩が、マットにホールドされる!


古蔵さん「3・・・2・・・惜しいッ!」


ためぞう「古蔵さん、さっさとスリーカウント取ってよッ!」


 ピンチをチャンスに変える!


 そんなセンスの持ち主であるセリカさんの、

 幻の大技がためぞうを捉えます!


セリカさん「エンシェントドラゴン=マジェスティック=タイガーバックブリーカー!!」


 轟音と共に、ためぞうはマットに沈みました。

 ためぞうは、燃えカスみたいになっています。


セリカさん「早く、リングにあがっておいでよ、

      古蔵さん。」


古蔵さん「むおぉ・・・、マジ無理だって!


     あんた、どんだけ強いんだよ!!」


 そこに、さりげない感じでファルさんが現れました。

 これまた、さらっとためぞうの戦闘不能状態を回復します。


ファルさん「こんにちはー。


      はい、セリカさん、チョコレート。」


 セリカさんは、ファルさんからチョコの入った包みを受け取りました。


セリカさん「え!? 貰っちゃっていいの?」


ファルさん「最近は、女子同士でもチョコを送ったりするんですよ。

      お花のギフトとかも多いですね。」


セリカさん「か、感動した!

      あげるものなくて、ゴメンね。


      では、遊びに行ってきます!」


 セリカさんは、嬉しそうに街へと消えていきました。


古蔵さん「ファルさん、助かったよ!」


ファルさん「ええ、何よりです。


      これ、よろしかったら、

      お二人にもどうぞ。」


 ファルさんは、ちゃんと二人の分の包みも持ってきてくれていました。

 今日は一段と、ファルさんがフローラルに香っている感じさえします。


ためぞう「あ、ありがとうございます!」


古蔵さん「オレ、ファルさんを誤解してたよ。

     オレの事、倒したくて仕方がなかったんじゃないのネ。

     宅配のバイト、頑張ってて良かったよ!」


ファルさん「本国でのいざこざは、ここへ持ち込むのは、

      控えたいと思っております。


      (義理感は否めませんが、

       ためぞうさんに渡す事も出来ましたので、

       一安心です。)」


 ファルさんは、ちょっとご機嫌な感じでお仕事に戻って行きました。


古蔵さん「ねえ、ためぞう君。

     ファルさんとこの、ラウエルさんを下さいって聞いたら、

     どんな感じかな?」


ためぞう「・・・古蔵さん、一途がどうのこうの言ってなかった?

     多分、古蔵さんは滅ぶね。


     そして、ローゼさんのお兄さんの一世さんの時代が訪れるかな。


     てか、この前は、事務の鈴木さんがいいとか言ってなかったっけ。」


古蔵さん「お! 急な配達を思い出したので、

     ドラゴン魚市場に行ってみる。


     ためぞう君、またね。」


 古蔵さんの、あの分かりやすい所からも、

 ためぞうは、何かを学ばなければいけないと思いました。


ためぞう「・・・フルスロットル出来てないしなぁ。」


 ためぞうは、道の駅ドラゴンの方を手伝いに行くと、

 エストさんに、チョコをねだられたので、

 駄菓子屋さんから、ザ・ビックチョコを買ってあげて、

 夕方、エリスねーさんの家に戻って来ました。


シオン君「ねえ、ためぞうさんっ!」


 ジャージ姿とはいえ、いきなり出てこられると、

 びっくりするほどの、美少女ぶりのシオン君です。


ためぞう「お、おう。

     何かあったの?」


シオン君「エリスさんの家って、よくサフィリアさんが訪ねて来るんだね。


     アリス姉さんが、

     ためぞうさんとの共同生活を勧めてきたのも、

     これが理由だってわかった気がしたんだ。」


 シオン君は、都合のいい勘違いをしていますが、

 それで幸せなら、ためぞうはいいんじゃないかと思いました。


 シオン君は、お隣さんのレイカさんに

 手作りチョコレートの作り方をならって、

 それを、サフィリアさんに渡して、テンションが上がっているようです。


シオン君「エリスさんとか、いっぱい女子から貰ってたんで、

     女子同士で渡し合えるって、

     いまのボクの立場からすると、

     とっても、助かっちゃった。」


 はにかむ笑顔がとても可愛い、シオン君です。

 ためぞうは、ここで誘惑されてはいけないと、

 心の中で、般若心経を唱え始めました。


ためぞう「(・・・そうか、シオン君は、

      サフィリアさんがいるから、

      こっちに来たんだな。


      これは、ためぞうを含め、

      レオクス師匠や、セバリオスさんにも、

      一つの未来へのルートの危機でもあるわけだ。


      好感度、2000とか言ってたもんな・・・。)」


 そこで、ためぞうはアリサ副会長のワナに気付きます。


ためぞう「(はっ!?

      事情を知るオレが、シオン君を攻略しないと、

      サフィリアさんルートが消えるどころか、


      レオクス師匠とセバリオスさんの、

      ねーさん争奪戦に発展しかねないのかッ!


      ためぞうは、いい様に操られているな・・・。)」


 ためぞうは、知力3と得意のとんちで、

 状況の改善策を考えます。


ためぞう「・・・ぜぇぜぇ。


     知力が不足しすぎている。」


 息を少しだけ荒くしたためぞうに、

 シオン君はこう言いました。


シオン君「ためぞうさんの分のチョコレートも作ったんだよ。

     美味しく出来ているか自信はないけど、

     良かったら、受け取って下さいねっ。」


 ためぞうは、もうへろへろです。


 そういう方向に持っていった、レイカさんとアリサさんは、

 隣の家の窓から、成り行きを見守っています。


レイカさん「なんだか、どきどきしちゃいますね。」


アリサさん「レイカさんとは、通じ合える何かがあると思っていました。

      ご協力に、感謝!」


レイカさん「あ、いえいえ。

      私も、女学院に通っていたものですから、

      その気持ち、分からなくはないのです。」


 知力が99+1もある、レイカさんは、

 些細なウワサなどに誤魔化されません。


 シオン君の事を、ちゃんと理解した上で、

 世間勉強の最中なのです。


 その時です、

 セバリオスさんとレオクスさんが、

 一緒に、エリスねーさんの家にやって来ました。


セバリオスさん「やあ、ためぞう君。

        アリス会長さんの妹さんの教育係っぽい事を、

        頼まれたみたいだね。


        確かに可憐な百合の花のように美しいね。」


レオクスさん「あ、どうもレオクスです!

       会長さんには、いろいろとお世話になっていますので、

       良かったら、何でも言って下さい、

       シオンさん。」


シオン君「あ、ありがとうございます。」


 シオン君が、ペコリとあいさつをすると、

 セバリオスさんとレオクスさんは、にこやかに手を振りました。


アリサさん「レオクスさんとシオン君、

      これは、なかなかいいと思いませんかッ!


      フルスロットルでイッちゃいますよー!!」


レイカさん「あ、ええ・・・。

      なるだけ、アリサさんのノリに付いていけるように、

      頑張りたいと思います。」


 セバリオスさんのリムジンから、セリスさんが降りてくると、

 セリスさんは、まるで魂のこもっていないような、

 無機質な瞳で、お隣さん家の窓の二人を見つめます。


アリサさん「!?」


レイカさん「おぉ・・・。」


 セリスさんの付けている、カラーコンタクトの片方が、

 するりと地面に落ちていきました。


 右目はエメラルド、そしてコンタクトが剥がれ落ちた左目は、

 真紅とも言うべき、鮮やかなルビーの煌きを放っています。


アリサさん「(こ、こわ・・・。)」


レイカさん「(セリスさんが、何かを話してくる前に、

       おとなしくした方がいいと、

       心の声が告げている気がします。)」


 セリスさんは、無表情な笑みを浮かべて振り返ると、

 今度は、人が変わったように、

 コンタクト落としちゃったですー! と、

 慌てる素振りをしてみせた。


セバリオスさん「ほら、これだろう?

        ちゃんと綺麗に洗浄しないとダメだぞ。」


セリスさん「はーい。」


ためぞう「へぇー、セリスさんって、両目の色が違うんですね。

     なんかカッコイイっす。」


セリスさん「そうですかー?

      では、このまま、行っちゃいましょうか。」


 セリスさんは、そう言って、

 再度、窓の奥の二人を見つけると、

 魂のカケラも無い、その無機質な視線を送った。


アリサさん「(お願い、カラコン付けて!)」


レイカさん「(・・・エリスさんの事については、

       協力させていただきます。)」


セリスさん「ちょっと、車に積んである、

      洗浄キットで洗ってきますね。


      はい、ためぞうさん、

      シオンさん、板チョコでーす。」


ためぞう+シオン君「あ、ありがとうございます!」


 シオン君は、セバリオスさんとレオクスさんに、

 ちょっと見惚れています。


 こういう人になりたいと目標に出来る、

 それぞれの良さを秘めた王者と王子様のように見えたのです。


セバリオスさん「ためぞう君、

        エリス、帰ってきてるの?」

ためぞう「呼んでみますよ、


     ねーさん、いるんだろう!」


 家のこたつの中から、エリスねーさんが出てきました。


エリスねーさん「お、セバリオスじゃん。

        レ、レオクスさんもいるんだ・・・。」


 今日は、チョコレートの日。


 エリスねーさんは、レオクスさんをチラ見して、

 照れています。


セバリオスさん「今日といえば、渡すものがあるんじゃないか?

        当然、アレを受け取りに来たわけだが。」


レオクスさん「ちょ、ちょっと、セバリオスさん。

       む、無理を言っては。」


 シオン君は、セバリオスさんを男らしい、

 勇気のある人だと、関心しています。


エリスねーさん「ア、アレだよな。(・・・やばいぞ、用意してないぞ。)


        ちょっと、待っててくれ。」


 エリスねーさんは、一度家に入ると、

 勝手口から外に出て、

 ママチャリかっ飛ばして、デパートに向かいました。


 ためぞうはそれを察して、

 セバリオスさんたちと、時間稼ぎを始めました。


ためぞう「ねーさん、わりと探し物に時間かかる方なんで、

     良かったら、こっち来て茶でも飲みませんか?」


 ためぞうは、庭のキャンプで冒険に向けた訓練をしているので、

 炭火で、普通にお湯とか沸かしています。


 レジャー用の折りたたみ椅子をテーブルに三つほど設置して、

 急須に、お湯を注ぎました。


セリスさん「まあ、とばりの下りる空を眺めながら

      いただくのも、いいものですねー。」


 セリスさんは、エリスねーさんのピンチを察して、

 美味しそうに、緑茶を頂いています。


セバリオスさん「エリスが要領が悪いのは、

        今に始まったことではないので、


        アレを買って来るまでの間、

        ゆっくり待たせてもらうよ。」


レオクスさん「・・・な、何を言ってるのかわからないなぁ。」


シオン君「ほんと、凄いです、セバリオスさん。」


 家の勝手口の方から、自転車のブレーキ音が聞こえると、

 息を切らせながら、エリスねーさんが表に出てきました。


エリスねーさん「やっと見つかったよ、

        ははは・・・ちょっと焦ったぞ。」


 結構、いっぱい買ってきているようで、

 ためぞうや、シオン君、セリスさん、ゆきはなさんの分までありました。


セバリオスさん「ありがとう、エリス!


        エリスは出来るヤツだと信じていたぞ。」


エリスねーさん「おう、任せろって!」


レオクスさん「感激です! ありがとうございます。」


セバリオスさん「では、用も済んだので、

        帰るとしようか、レオクス君。


        セリスは、残るのだろう。

        エリスの事は、よろしく頼むぞ、ハッハッハッ!」


レオクスさん「セバリオスさん、頼りになります!」


 セバリオスさんとレオクスさんは、

 ためぞう達にあいさつして、

 車で帰ってしまいました。


シオン君「セバリオスさん、男前ですね。

     いろいろ、勉強させてもらいます!」


ためぞう「あの人は、独特の個性だから、

     シオン君は、そのまんまでいいんじゃないか?


     (と、メガネの方のお姉さんは、期待していると思う。)」


 ためぞうは、冒険離れして久しいので、

 早く、勘を取り戻して、

 せめてタイトルくらいには、冒険を入れたいと思っていました。


アリサさん「ためぞうさん!

      躊躇わずに、トライ決めちゃってくださいッ!」


ためぞう「・・・。


     続け、オレの冒険の日々。」


                   つづく。
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ためぞう II 第三十六話 「ためぞうは、思ってみた。」

2015年02月13日 17時21分04秒 | ためぞうの冒険(ダークフォース セカンド?仮+未定)
ためぞう II 第三十六話。


   「ためぞうは、思ってみた。」



ためぞう「冒険無くなってるじゃん!


     ・・・いや、焦るなオレ。

     そもそも、「 II 」だけ残ってる意味がわからん。」


 ためぞうは、毎日真面目に、

 牛乳配達をしています。

 そのせいか、牛乳とプリンに未来を託した少女、

 リンカさんとは、よくお話をしています。


 朝も早くから、ローゼさんのマンションの前で、

 ためぞうが来るのを待つ、リンカさんを、

 街灯の明かりが照らしています。


リンカさん「おはようございます、ためぞうさん。」


ためぞう「おはよう、リンカちゃん。

     はい、特濃牛乳と、牛乳屋さんのプリン。」


 リンカさんは、嬉しそうに三人分を受け取ると、

 マンションの一階の部屋に帰っていきました。


 すると、リンカさんはまた戻ってきて、

 ためぞうにこう言いました。


リンカさん「とあるウワサで、

      あのエリスさんも、中学の頃までは、

      どちらかというと、無い方だったと聞いたのですが、

      本当なんですか?」


ためぞう「ああ、ねーさんな。


     確かに、そんな事をセバリオスさんに聞いた事がある。

     今の姿からは、想像も出来ないけど。」


 ためぞうを見上げるリンカさんの瞳に、お星様がきらめいています。

 何やら、期待が持てたような素敵な笑顔です。


リンカさん「私、頑張って、大きくなりたいと思います!


      バルマード様が振り向いてくれるくらい、

      大人な女性になりたいです。」


 ためぞうには、ローゼさんのお父さんである、

 あのヒゲのおっさんの何処がいいのか、よく分かりませんでしたが、

 ヒゲには、ワイルドな冒険野郎だった伝説は、たくさん残っています。


 ためぞうは「冒険」という言葉を聴くと、

 何とも言えない気持ちになりました。


リンカさん「ためぞうさん。リンカのお話、また聞いてくださいね。」


ためぞう「うん、いつでも言ってね。」


 ためぞうは、牛乳配達の続きに戻りました。

 自転車で坂道を登ったりしていると、

 ちょっと冷たい風も、少し心地いいくらいの暖かさに、

 体が温もってきました。


 そこに、宅配のトラックに乗った古蔵さんが通りかかりました。


古蔵さん「おはよう、ためぞう君。」


ためぞう「お、古蔵さん、おはよーっす!」


古蔵さん「ちょっと配達、手伝わせてもらうね。」


 ためぞうは、ワープしました。


ためぞう「おぅ! なんだぁ!?」


 どうやらワープ先は、セントクラウス学園の生徒会室のようです。


 さすがに朝の五時半に、学園に人影はありませんが、

 応接間の方にお茶の用意がしてあったので、

 なんとなくためぞうは、座ってみました。


ためぞう「せっかくなので、お茶でももらおう。

     ご自由にと書かれているので、問題ないだろう。」


 室内は、先ほどまで誰かいたように、エアコンで暖かくしてありました。

 ためぞうは、急な展開にある程度慣れてしまっているので、

 ワープくらいでは、すぐに平常心を取り戻します。


ためぞう「ずずーっ。

     見知らぬ場所に飛ばされたわけではないのだから、

     慌てる必要などない。


     ああ、ワープするのを古蔵さんは分かってたから、

     配達の手伝いをしてくれるのな。」


 ためぞうが生徒会室でくつろいでいると、

 副会長のアリサさんが入って来ました。


アリサさん「おはようございます、ためぞうさん。

      急に来てもらっちゃって、すいません。」


ためぞう「あ、いえいえ。

     お茶とか準備してもらって、ありがとうございます。」


 ためぞうは、落ち着いています。

 アリサさんも、ためぞうと向かい合わせで、すぐに椅子に座りました。


ためぞう「何か、緊急事態ですか?

     いつもなら、ファックス辺りで通知が来るのですが。」


 ためぞうは、アリサさんの湯呑みにお茶を注ぎます。

 早朝の緑茶の香りは、すっきりして、目が覚めるようです。


アリサさん「ふーふー。ごくん。


      ためぞうさん、『冒険』がついになくなっちゃいましたけど、

      大丈夫ですか?」


ためぞう「ああ、そうですね。

     でも、本当に冒険していないのは事実なので、

     それは仕方のない事だとは思います。


     何故に『 II 』だけ残っているのかは、

     疑問ではありますが。


     この広い世界から、ためぞうを比べれば、

     ささいな事と割り切れなくもないです。」


 ためぞうが、変な方向に進もうとしているのが分かるからこそ、

 知力99のアリサさんは、そんなためぞうを見ていられないのです。


 ためぞうは、いつの間にか大人への階段をじわじわと上って、

 そのやんちゃな冒険心を失い始めているのです。


 そう、例えるなら、冒険不感症になっているのでぇす!


アリサさん「わかりますか、ためぞうさん。

      ためぞうさんは、冒険者なのです。


      チャレンジャーなのです!


      それが、何故かいつの間にか、

      わりと強めの魔王軍の四天王をやってて、

      それなりに実力もあるものですから、


      冒険や希望やハングリーさが失われていっているのです。」


 ためぞうは、アリサさんの熱い言葉に、

 昔の自分を振り返ってみました。


 セコい、ひがむ、モテないの三拍子揃った、

 生命力だけがバツグンに高い、あの頃のためぞうは、

 野心だけは、人一倍だったハズです。


 それが、安定した学園生活を手に入れたとたんに、

 知らず知らずに、守りへと入ってしまい、

 学園生活で磨かなければならない、

 社会の荒波への適応力や、

 革新などといったアグレッシブな攻める姿勢を


 今はただ、牙の折れたタヌキと化しています・・・。


ためぞう「タヌキはいい・・・、

     天そばだって美味いの作るし、

     天下だって獲れる。


     ためぞうは、マイルドためぞうとして、

     今の生活には、十分満足しています。


     それは、いけない事なのでしょうか?」


アリサさん「いいーーんです!」


ためぞう「い、いいんだ!?」


 アリサさんの知力99に、疑惑が浮かびました。

 言ってることが、結構、無茶苦茶です。


 アリサさんは、フフフッと意味深に笑みを浮かべ、

 ためぞうを見つめています。

 東の空が、朝焼けで室内を照らし始めます。


アリサさん「私は、私がそこそこ愉快なら、

      ためぞうさんが、別に冒険しなくても、

      何度でもためぞうさんを、サポートするするつもりです。


      ですが、そうは思ってくれない者たちもいるのは確か・・・。


      つまりは、「アイツ、すっげー冒険してるよな!」的、オーラを、

      漂わせておけばよいのです!」


ためぞう「おー、なんか凄そうなんですが、

     通常の冒険より、難易度が高い気がします。」


 そんなためぞうの問いに、

 瞳を輝かせながら、アリサさんはこう返します。


アリサさん「ふふっ・・・、


      例えば、「ひと夏の冒険」という甘い言葉で、

      本当に、クエストに行っちゃいますか?


      行くとこ、違うでしょ。

      真夏のビーチや、プールサイドに行くべきでしょ!」


ためぞう「ごもっとも!!


     ためぞう、目からウロコです。」


アリサさん「アイツ、冒険してるよなー! って、


      『冒険』自体の定義を入れ替えてしまえば、

      わざわざ、ガチな冒険に行く必要があると思いますか?


      行くなら、

       - 渚の君が待つ場所へ、2015 -

      でいいんじゃないですか。」


 ためぞうの迷いは、振り切れました!


ためぞう「アリサ副会長さん、


     オレ、冒険したいっす!」


 ためぞうに輝きが戻って来ました。


  もう何者も、オレの『冒険』は、止められない! といった感じです。


 そのソウルに溢れた、ためぞうの熱いシャウトは、

 大地をも響かせ、ちょっと近所迷惑なことでしょう。


ためぞう「・・・そこまでは、まだw」


アリサさん「いい目をしていますね、

      そのワイルドさとハングリーさで、

      ためぞうさんの冒険に、新たな歴史(想い出メモリー)を刻むのです!。」


 ためぞうと、アリサさんは共に立ち上がり、

 熱い情熱の眼差しで、東の空を見つめています。

 青春っていいですね。


 一通り、感動の場面を終えると、

 アリサさんは席に着いてお茶を口に運ぶと、

 次のお題をためぞうに、振って来ました。


アリサさん「ためぞうさん、

      ノリのいい内に、ちょっと冒険してみませんか?」


ためぞう「おお、早速、そっちの冒険を用意してくれていましたか。」


アリサさん「ええ・・・まぁ、

      姉のアリスの許可も出たので、

      ホーネルさんの親友のためぞうさんなら、

      そちらの方も、耐性があるのではないかと。」


ためぞう「ほうほう。」


アリサさん「正直、ためぞうさんには感謝しているのです。

      いつ逢えるとも知れないと思っていた奇跡を、

      この私にくれたのですから。


      こほん、私は決して、

      ためぞうさんの上司のセリカさんみたいに、

      事が面白い方向に進めばいいなんて、

      思ってるんじゃないんだからネッ!!」


 ためぞうの試練センサーがグンと反応しているッ!


ためぞう「いかん!?

     ためぞうの予感は、かなり当たるのだ!」


澄んだ声「失礼します・・・。」


 生徒会室の扉が、ゆっくりと開かれます。


 すると、そこから、

 とんでもなく可愛い、ショートカットの金髪の女の子が、

 一礼して、入って来ました。


アリサさん「お久しぶりです・・・。


      んんっ、ためぞうさんに、ごあいさつを。」


金髪の美少女「初めまして、

       この度、当学園への留学が決まった、

       詩音=クラウスと申します。


       シオンと呼んでくださいね。」


 アリサさんは、何ともいえない難しい表情をして、

 シオンさんに、ためぞうの隣の席に座るように言いました。


ためぞう「(いかん! マジで可愛いぞ。

      美少女レベルは、限りなく会長さんに近いのではないか・・・。)」


アリサさん「えー、お気付きかも知れませんが、

      シオンは、私の弟になります。」


ためぞう「お、弟殿でござるかっ!?


     ・・・そーなんだ。

     でも、何ゆえ女子の制服を?」


 するとアリサさんは、

 ためぞうが見慣れた、箇条書きの紙を取り出します。

 紙には、こう記されていました。



 ・ どうしても、こちらに来たいという、

   シオン君のわがままを、

   姉のアリスは、女装という条件付きで、

   留学を許可しました。


 ・ シオン君への、サフィリアさん、

   レミーアさんたちの好感度は、2000です。

   ためぞうさんの90付近では、勝ち目がありません。

   故に、変装して女生徒での編入となります。


 ・ 正体がバレた時点で、ためぞうさんのあらゆるルートが、

   消えてしまうので、注意して下さいね。


   女装さえバレなければ、

   絶対にわからないような変な魔法がかけてあります。

   変な魔法は、恋の魔法へと変わる事が大いにありますので、

   気を付けてくださいね。


 ・ アリスお姉さん的には、

   シオン君とためぞうさんが、仲良くしてくれると嬉しいです。

   どんどん、冒険しちゃって下さいね。



ためぞう「むおぅ・・・それは、嬉しい試練だが、

     一線を越えたら、戻って来れない率100%の、

     危険なワナと見た!」


 シオン君も、同じように書類を読んでいるので、

 ちょっと、もじもじしちゃってます。


アリサさん「ここからが、さらに重要ですが、

      アリス姉さんは、

      さらに条件を付けて来ています。」


ためぞう「おお・・・。」


シオン君「・・・。」


 アリサさんは、何処かニヤニヤしながらこう言います。


 ・ 条件 = ためぞうさんと、シオンは、

        お互いが持っていない良いものを、

        持っています。


        互いの長所を学ぶ為に、

        寝食を共にしなさい。


アリサさん「ぷぷっ・・・だ、そうですよ。」


シオン君「えぇーー!?」


ためぞう「ふぅ・・・なんてすげえ試練を考えてくれるんだ。


     でも、仮にオレとシオン君が仲良くなりすぎても、

     冒険、終わっちゃうんじゃないですかね?」


 可憐な女の子の格好をしたシオン君は、

 恥ずかしさで、顔を上にあげられません。


 あのアリス会長さんが、それを許可した時点で、

 そのくらいの試練は予期出来たのに、

 浮かれて隙だらけだったなんて、とても恥ずかしくて言えません。


アリサさん「それは、大丈夫だと思いますよ。

      何しろ、姉の気分次第なところも大きいので、

      強引にでも、話を繋げて終わらせないでしょう。」


ためぞう「終わらない夜の始まりだとでもいうのか・・・。」


シオン君「何言ってるんですか、ためぞうさんッ!

     変な事を言わないで下さい。」


アリサさん「変な事を思ってはいけませんよ、シオン君。

      やっと姉弟が再会できたのですから、

      ためぞうさんには、感謝しなければいけません。


      エンジョイ 冒険?」


シオン君「うわーん。」


 ためぞうは、思ってみた。


 どうやって、エリスねーさんや、

 周りの人たちをごまかそうと。


 バレたら、とても窮地に追い込まれるらしいのだが、

 どうやって、女装したシオン君とお泊り会を成立させればいいのか。


 試練が、より強力である方が、

 ためぞうは、その試練を楽しめるような気がしていた。


ためぞう「そうだ、しばらくはジャージでごまかせば、

     いいんじゃないか?」


シオン君「ジャージで、ごまかせるのですか?」


ためぞう「やってみなければ、わからない!


     でも、それが、冒険というものだろう!!」


 ・・・いつしか、ためぞうは、

 冒険について、熱く語るようになっていた。


 そして、夕方。

 エリスねーさんの家。


エリスねーさん「おうっ!

        ためぞうが、なんかすげー可愛い子を連れてきたぞ。


        つ、ついに、ためぞうも勝ち組になったのか・・・。」


シオン君「あ、初めまして、

     よろしくお願いします。」


ためぞう「言い訳はしない。

     今日から、オレのテントで暮らす事になったシオン君だ。


     よろしく頼むよ、ねーさん。」


 ためぞうの男前発言に、エリスねーさんはひるんだ。

 すると、ねーさんの家の奥から、

 学園の事務員さんで、ためぞうの協力者、

 セリスさんが出てきました。


 セリスさんは、言わなくても分かる人なので、

 ためぞうの事情を都合良く理解してくれます。


セリスさん「なるほど、

      アリス会長さんの妹さんのシオンさんですね。


      そういえば、世間知らずのシオンさんを、

      信頼が出来るためぞうさんに、預けたいと、

      そのようなお話があったような気がしなくもありません。」


エリスねーさん「そ、そーなの?」


セリスさん「はい。

      そもそも、ためぞうさんにハッピーフラグが成立した時点で、

      ためぞうさんの冒険が終わると心配していたのは、

      エリス様の方ではございませんか。


      もし、そのような関係であったなら、

      今頃、夕日に照らされたためぞうさんの旅立ちを、

      私たちが見送っているシーンの最中だと思いますが。」


エリスねーさん「だよなぁ!

        ためぞう、ここにいるしな。


        焦って損した。」


 セリスさんが、微妙に説得力のあるウワサを広げてしまったので、

 誰も、ためぞう達の仲を疑うような事がなくなりました。


シオン君「すごいよ、セリスさん!!」


ためぞう「あ、こんばんは、サフィリアさん。

     レミーアさんも、ども!」


サフィリアさん「こんばんはー。」


レミーアさん「こんばんはっす!」


 二人の手には、お泊りセットが入ったバックが握られています。

 サフィリアさんの連れている、ネコx2さんも、

 今日は一緒です。


 ネコx2さんは、シオン君を見ています。


ネコx2さん「何処かで、お会いしましたかニャ?」


サフィリアさん「わー、綺麗な子ですね!

        私、サフィリアですー。」


レミーアさん「会長さんの妹さんって、ウワサだよ。

       レミーアです、よろしくおねがいしますー。」


シオン君「あ、どうも、シオン=クラウスです。


     ねぇ、ためぞうさん!

     これって、どうなっているの!?」


 レミーアさんはおろか、ネコさんたちまで、

 シオン君の事がわかりません。


 ためぞうは、一番星を見上げながら

 シオン君にこう言いました。


ためぞう「オレにも、昔、何でも話せるマブダチがいたんだ。


     でも、その名前さえ消えかかってる。

     確か、記憶が正しいなら、マスオストさん。


     ほら、あれがマスオストさんの星だよ。」


シオン君「言ってる意味はわからないけど、

     お星様って、綺麗だね。


     うん、見えない力があるって言いたいんだよね。

     ためぞうさんと一緒にいたら、

     ボクの足らない何かをきっと見つけれる気がする。


     だって、姉さんに怒られたくないもの。」


 シオン君が、空気を読んでくれる子で、

 ためぞうは、良かったと思いました。


 次の日の早朝。


 アリサ副会長さんが、ためぞうのテントにやって来ました。


アリサさん「頑張って、早起きして来ました!


      シオン君は、もう冒険しちゃったのかな?」


シオン君「やあ、おはよう、姉さん。


     これはもう、毎日が冒険だね!」


アリサさん「ほほーーっ!」


シオン君「湯気の向こう側が、見える特訓とかやってるんだよ!

     そんな事、思いつきもしなかったよ。


     与えられるものだけで満足するのではなく、

     新たな力を得る事で、技術革新してるんだ。


     ボクも、早く身に付けないと。」


アリサさん「・・・。


      それって、テレビのゆけむりシーンとかの、

      お色気は湯気で隠せ、を看破するワザの方?


      妄想の範囲を超えないようにね。」


シオン君「はーい。」


アリサさん「(まあ、時間の問題でしょう。


       私の妄想力の為に、

       がんばってくださいね、ためぞうさん。)」



   ためぞうの冒険 II フルスロットル!

                        つづく。
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ためぞうの冒険(仮) II 第三十五話 「試練いろいろ。」

2015年02月11日 16時53分12秒 | ためぞうの冒険(ダークフォース セカンド?仮+未定)
ためぞうの冒険(仮) II 第三十五話。



   「試練いろいろ。」



 ためぞうの試練は、

 いつも適当な感覚で訪れます。


ためぞう「そーゆーのやめろよ!」


 イヤよイヤよも好きの内。

 ためぞうは、今日はやることもなく、

 エリスねーさんの家のこたつでお留守番です。


 ためぞうは、わりと落ち着いています。

 電気ポットでお茶を入れて、

 来るなら来いよ、と余裕でお茶飲んでます。


ためぞう「だから、今日は何の試練なんだよ!?」


 知りたいですか?

 知らずに見過ごす事も出来ることもあるのですが。


ためぞう「誰が黒幕かは、知らんが、

     知らなくていいものなら、どうかお帰りを。」


謎の声「ふふっ、仕方ありませんね。

    では、お邪魔します。」


 ガラガラっと扉を開けて、

 アリス生徒会長さんが入って来ました。


ためぞう「か、会長さんでしたか!?

     すぐに、お茶入れます。」


アリス会長さん「まあ、ありがとうございます。」


 会長さんは、ためぞうと向き合うように、

 こたつへと入りました。


アリス会長さん「ずずーっ、心温まるお茶ですね。

        あ、それでですが、

        ためぞうさんに、試練っぽいものが発生しそうなので、

        事前にお伝えに参った次第なのです。」


ためぞう「おお、それはありがたいです。」


 ためぞうは、お茶菓子にみたらし団子と大福を出します。


アリス会長さん「まあ、甘党だと覚えてくれていたのですね。

        うれしいですね。


        まるでそう、例えるなら、

        私とためぞうさんは、幼馴染みか、

        恋人か、夫婦のようですね。


        残念ながら、私は好感度設定がありませんので、

        そこまで飛躍する事はございませんが。」


 それでも会長さんは、そんな空気を楽しんでいるようです。


アリス会長さん「では、本題に戻りますね。


        ためぞうさんに、ある意味のエンディングが近付いています。

        これは、毎年発生するイベントなので、

        あまり気構えないで下さいね。


        チョコレートの日がやって来ます。」


ためぞう「チョ、チョコレートデーとかいうウワサの・・・。

     もらった事はありませんが、

     毎年、記憶の奥底にイベント自体を消し去る事で、

     その試練を回避したような気がします。」


アリス会長さん「乙女の気持ちの詰まった、その甘い誘惑を手にすれば、

        勇気100倍、元気1000倍、


        最速ためぞうさん伝説を、その歴史に刻むことをも出来るでしょう。

        ですが、同時にそれは、ためぞうさんの卒業を意味するのです。


        - ためぞうさんの冒険 就職活動編 - 辺りに流れて行く事でしょう。


        それは確実に、一つの幸せのカタチではあるのですが。」


 ためぞうは、思いました。

 そんな人生も素晴らしいんじゃないかと。

 乙女から本命のチョコレートを貰えるチャンスなんて、

 ためぞうの長い、5000年の人生では、

 有り得なかった事なのです。


アリス会長さん「5000年・・・。苦労なさっていますね。」


ためぞう「えー、現在は18才くらいということでお願いします。」


アリス会長さん「私一人では、決められない事のようなので、

        みなさんの意見を伺ってみることにいたしましょうね。」


 こうして二人は、お隣のレイカさんの家に行きました。


レイカさん「アリスさんと、ためぞうさんがラブラブに腕組みして、

      一緒に来るなんて!」


アリスさん「エリスさんのこたつでの、ためぞうさんとのやり取りは、

      しっかり覗かれていたような気がしますが。

      そこで、レイカさんにもお伺いしたいのですが、

      どうすれば、この危機を穏便に済ます事ができるでしょう?」


レイカさん「そうですねー。」


 レイカさんの家は一人暮らしには割と広い感じの3LDKです。

 せっかくなので、ローゼさんや、ファルさんも呼んでみました。


ローゼさん「おじゃましますー。」


ファルさん「おじゃましますー。」


 レイカさんの家に、アリス会長さんがいたので、

 二人はちょっとだけ、緊張しています。


アリス会長さん「ごきげんよう、みなさん。」



 早速、議題の方に移ると、いくつかの問題が浮かび上がってきます。



   ・ 古蔵さんも、今年は貰えるかも知れない。


   ・ ローゼさんのヒゲパパは、放置でも可。


   ・ レオクスさんは、防ぎきれないのでやはり放置。


   ・ セバリオスさんは、きっともらえないのでこれまた放置。


   ・ エリスねーさんが貰ってるのは、いつもの事なので温かく見守る。



 以上の点から、古蔵さんが注意人物のようです。


 古蔵さんは、ラウエルさんを気に入っているので、

 (リンカさんは、大人バージョンだけ好かれている。)

 もし奪われれば、ファルさんは大いなる危機に立たされるでしょう。


ファルさん「そんなのダメー!!」


アリス会長さん「事の重要さが、お分かりいただけましたか?

        覇王同士の勢力バランスさえ、変える魔力を、

        この時期のチョコさんは、お持ちなのです。」


 アリス会長さんは、そう言いながら、

 レイカさんの手作りチョコをパクパク食べています。


レイカさん「ちょっと、アリスさん!?」


アリス会長さん「とても愛のこもった、甘いチョコですね。

        どなたに差し上げるつもりだったのかしら?」


レイカさん「ぎ、義理チョコです! ご近所のみなさんに、

      日頃のお世話を感謝を込めて、

      レシピ本買って、作ったんです。」


 ファルさんは、ラウエルさんの事で、真面目に悩んでいます。

 心の友ですが、あの古蔵さんにだけは、渡すわけには行かないのです。


 もちろん、ためぞうにも乙女の純愛を渡されては困ります。


 ファルさんは、ラウエルさんのスマホに連絡を入れます。


> ファルさん「ラウー、ちょっといい?」


ラウエルさん < 「どうしたある? ボス。」


> ファルさん「ここ数日中に、誰かにチョコ渡したりする?」


ラウエルさん < 「ああ、街は盛り上がってるあるね。

          特にそれはないあるよ。


          渡したほうがいいあるか?」


> ファルさん「くれるなら、私に頂戴。」


ラウエルさん < 「OKあるよー。」


 通話が終了しました。

 どっと疲れた顔をしたファルさんです。


ファルさん「私、間違ってるのかしら・・・。」


ローゼさん「ためぞうさんを応援しようよの会では、

      抜け駆けは禁止なのです。


      今のためぞうさんは、ちょっとした事で、

      冒険が終わってしまう、転換期にあるわけですから、

      舵取りがとても難しい位置にあるのです。


      チョコレートデーに限らず、

      二人で映画館、観覧車、メリーゴーラウンド。


      これら、全てでエンディングの危険が待っています。

      だから、ファルさんもどうかお気になさらず。」


ためぞう「面目次第もないっす。」


 ローゼさんは、秘密の便利な本を取り出すと、

 ためぞうについて、ちょっと調べてみました。


レイカさん「おぉ・・・、実在するんですね。全知の書!」


 レイカさんが興味深くその秘密の本を見つめていると、

 ちょっと恥らった感じで、ローゼさんはこう言います。


ローゼさん「えー・・・。

      ためぞうさんが、冒険を始めるにあたって、

      履歴書に書いた決意表明がありますので、

      発言させていただきます。


      しゅ、『酒池肉林絶倫計画。』、だそうですよ。」


ファルさん「げほっ・・・。お茶がむせた。」


ためぞう「やめてくれー、

     オレの黒歴史を!

     出来れば忘れたままでいたいんだッ!」


 なんとなく言葉の意味がわかっていなさそうな、

 レイカさんが、こう言います。


レイカさん「それって、もしかして、

      全員から、本命のチョコさん貰うような計画だと、

      思ってもよろしいでしょうか?」


 意味のわかっていそうな、アリス会長さんがいいました。


アリス会長さん「まあ、素晴らしいことです。


        ちなみに私はまだそういう経験はございませんが、

        これで、チョコレートデーが、

        ハッピーデーに変わりましたね♪」


 ローゼさんとファルさんは、赤面しています。

 レイカさんは、本当にわかってないだけのようです。


レイカさん「冒険終わっちゃわないんですよね、

      たくさん、貰っちゃって伝説作って下さいね!


      私も、エリスさんとためぞうさんの為に、

      頑張って、作っちゃいますから。」


 戸惑うためぞう。


 その時、窓の外に見慣れたアホ毛がピンと生えていた!


ためぞう「セ、セリカさんだー!!」


 アホ毛の主は、素早く逃げ去ると、

 町の中で、変なウワサが流れ始めた。


   - ためぞうは、エロいらしい。

        しかも、ギンギンだゾ! -


ためぞう「ウワサ、はやっ!」


 ためぞうは、余計にピンチになってしまったようだ。


ファルさん「これはもう・・・時期が過ぎるのを待つしか。」


ローゼさん「私が、至らぬ事を申さねば・・・。」


レイカさん「本当なのですか?」


 ためぞうは、全てを否定は出来ないらしい。

 健全な男子くらいには、興味はあるのだが、

 エロで、ギンギンは言い過ぎだと思う。


 だが、ためぞうの奥に眠る微妙な男らしさが言うのだ。

 言い訳は良くないと・・・。


アリス会長さん「ためぞうさん、その覚悟は立派です。

        ですが、学園内の風紀というものもありますので、

        ためぞうさんには、もっとお淑やかに、

        密やかに、隠された秘密の花園的に、

        ウワサには気をつけていただかねばなりません。


        言い訳をしないその意気は賞賛に当たりますが、

        ちょっとウワサの方を何とかしなくてはいけませんね。


        レイカさんも、その一旦として、取りあえず、

        ためぞうさんの方のチョコは、義理でお願いできないかしら。」


レイカさん「はーい。」


 エリスねーさんが、帰って着ました。

 でも、ためぞうはお隣さんに遊びに行っているみたいなので、

 ねーさんもこちらへと、たずねて来ました。


  ピンポーン!


エリスねーさん「エリスですー。」


レイカさん「あ、どぞどぞ。」


 中には、強力なメンバーが揃っていたので、

 エリスねーさんも、おっ、となってしまいました。


エリスねーさん「会長さん、ファルさん、ローゼさん、ども!


        おい、ためぞー。

        何か町で、変なウワサが流れてるぞ。」


ためぞう「それで、困ってたんだよ。」


エリスねーさん「つーか、あれ、

        古蔵のウワサだよね?」


みなさん「!?」


 エリスねーさんは、勘違いをしています。

 確かに古蔵さんも、同じ志を抱いていましたが、

 ためぞうも、こっそりと抱いていたのです。


 変なウワサが、古蔵さんのものに置き換わりました。



  - 古蔵さんは、銀河の全てを手に入れて、

      エロエロで、ギンギンな生活を手に入れようと、

                  大いに頑張っているゾ!! -



 何か、微妙にひどくなってます。


アリス会長さん「結果オーライ?」


ファルさん「ええ、望む所です、フフフ・・・。」


レイカさん「ネコのマスクマンの宅配屋さんですよね?」


エリスねーさん「大切な想いを乗せたチョコだって、

        たくさんあるんだよ。


        あれは、作るのと同じかそれ以上に、

        渡すのが難しいよな・・・。」


 エリスねーさんが、それとなく話をまとめようとしていると、

 レイカさんの家に、凄い勢いで、

 古蔵さんがやって来ました!


古蔵さん「ネコのマスクの古蔵です!


     ピンチです、ねーさん助けて!!」


 エリスねーさんが玄関先に出て、

 古蔵さんを説得します。


エリスねーさん「お前、このくらいのピンチなら余裕で越えられるだろ。

        大体、言ってたのは本当の事なんだし。」


古蔵さん「オレ、いま真剣にバイトやって、

     仕事が楽しいんだよ!


     行く先々で、そんな誤解されたらオレ、

     泣いちゃうよ。


     女性についても、今は、その子の笑顔を守りたいって、

     昔とはだいぶ、変わったんだよ。

     そりゃ、一度もいい事はなかったけどね。


     頼むよ、ねーさん・・・。」


 古蔵さんが、真面目になってきたのは、

 エリスねーさんも分かっています。


エリスねーさん「あーもう・・・。

        助けなきゃ、気になって、私が寝れなくなっちゃうよ。


        ローゼさん、ちょっといい?」


ローゼさん「はーい。」


 ローゼさんが、やって来ました。

 古蔵さん好みのナイスバディなプラチナの髪のお姫さまです。

 最近は、表情まで穏やかで、キラめいています。


 古蔵さんは、惚れ吹き矢(三連発)を必至でこらえている!!


エリスねーさん「ウワサって、なんとか出来る?」


ローゼさん「出来ない事はないのですが、

      何しろ、未完な本なもので、

      うまく出来なければ申し訳ないです。」


エリスねーさん「あ、いいから、適当で。


        おい、古蔵。吹き矢なんとかしろ。

        言ってたことと違うじゃねーか。」


 古蔵さんは、思いっきり息を吸ってたので、

 げほげほ、むせています。


 ローゼさんの全知の書(みかん)が発動!


 ウワサは、上書きされました。


  → - 愛に枯れた古蔵さんに、義理チョコの一つでも。 - と・・・。


 ウワサが、追記されました。


  → - 彼女募集中! 出会い上等! 愛羅武勇!! -


エリスねーさん「よかったな、古蔵。」


古蔵さん「ありがとう、ローゼさん! ねーさん!」




ローゼさん「では、またー。 ^-^」
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ためぞうの冒険 II 第三十四話 「梅の花の咲く頃に。」

2015年02月06日 14時50分48秒 | ためぞうの冒険(ダークフォース セカンド?仮+未定)
 ためぞうの冒険 II 第三十四話。


   「梅の花の咲く頃に。」



 ためぞうは、何となく一年間くらい、

 頑張りました。


 そもそもタイトルが、「冒険」だったのが、

 間違いの元なのです。


ためぞう「・・・冒険は、出来ていない。

     ゲームとかでは、しっかりやってるんだが。」


 そろそろ、苦しくなってきたので、

 「きらめき、ためぞうの学園生活(仮)」辺りに、

 変更してみませんか?


ためぞう「変更できるなら、ぜひ!

     冒険出来ていない自分に、

     それは、ありがたい様な気がします。」


 ためぞうは、ワープしました。


 - セントクラウス学園、第うにゃうにゃ回、卒業式。 -


ためぞう「卒業はワナだから気をつけなさいと、

     エリナ先生に言われていたんですが、


     ためぞうは、そろそろ仕事に戻っていいでしょうか?」


 タイトルを変えるのですから、一度くらいは卒業してもらわないと・・・。

 また入学すればいいだけですよ。


 何度でも入学できますので。


ためぞう「あの入試難度で、二度目などないわっ!

     オレの知力は、3しかないんだぞ、

     5科目合計で2500点は無理過ぎるだろう。」


 ためぞうさんは、知らないかもしれませんが、

 テスト無しでも入学できるんですよ。


 例えば、1秒間に15・5回、ボタンを押すとか。

 ノーミスで、スーパーマリモをクリアするなど、

 とにかく、一芸でいけるんです。


 やる気が出てきましたか?


ためぞう「オレは騙されんぞ、

     そもそも卒業式に、誰もいねーじゃねーかよ!」


 卒業式の会場となっている第二体育館には、

 ためぞう以外誰もいません。


 ためぞうは、よく周りを見回して、

 確実にニセ行事である事を確認すると、

 凄まじい勢いで気合いを溜め始めました。


ためぞう「ためぞう、インフィニティーー!!」


 ためぞうの纏う闘気が、どんどん上がっています。

 ためぞうは、禁じられた奥義である、

 『ジャスティスモード』を発動しようとしています!


 冒険やってもないくせに、ちゃっかり必殺技のようなものは、

 習得していたようです。


ためぞう「誰が黒幕かは知らんが、オレはその試練を乗り越えよう!」


 強烈な閃光がためぞうから、

 いや、ジャスティス=ためぞうから放たれています。


 ためぞうは、試練を乗り越える意味を理解しているからこそ、

 隠された力である、ヒーローモードを発動しています。

 試練は避けると、他の誰かを巻き添えにしてしまう事があるのです。


ジャスティス=ためぞう「そこにいるな!」


 ためぞうは、あっさり黒幕を見つけました。

 体育館のビロードの幕に隠れていました。


黒幕のセリカさん「ムムッ! 逃げるが勝ち?」


ジャスティス=ためぞう「ジャスティスビーーームッ!」


 高出力で放たれたヒーロー攻撃に、

 セリカさんは避け切れません!


 ためぞうのビーム攻撃 → セリカさんに3500ダメージ!


セリカさん「うおっ、シールド突き抜けてきたよ!!」


 セリカさんは割といつも、とても強力なシールドを展開しています。

 そのシールドが何故か無効化されているのです。


 ツッコミは、避けてはいけないの本能が、

 セリカさんのシールドに、勝手に穴を開けていました。


セリカさん「・・・やばいね、次もらうと、戦闘不能だね。」


 外では、綺麗に咲いた梅の花を、

 サフィリアさんたちが、花見しながらお弁当を食べています。


 ためぞうの煌きレベルが上がっていくと、

 なんだかかなりのイケメンになってきました。


 この今のためぞうを見ても、

 すぐにはためぞうだとは、気付けないでしょう。


セリカさん「ふっふっふっ・・・ためさん、

      ためさんは、すでに負けている!」


ジャスティス=ためぞう「な、なんだとぉ!?」


セリカさん「そこまで強くなったためさんに、

      もはや、エリスさんは不要とみた!


      越えちゃってるじゃん。」


ためぞう「オ、オレとした事が!?」


 ためぞうは、ふにゃんと気合いを失い、

 ただのためぞうに戻りました。


 すかさず、セリカさんの反撃が来るッ!


セリカさん「グレイテスト=ギャラクシー=ドラゴンアッパーカットゥ!!」


 アッパーの威力は、バツグンだぞ! → ためぞうに6800ダメージ!!


 もろにアッパーを喰らったためぞうは、

 天井に叩き付けられ、

 紙切れのように舞い落ちてきました。


 ためぞうは、戦闘不能になった。


セリカさん「お弁当、食べに行ってくるー。」


ためぞう「・・・オレを回復していけよ・・・う、コテッ。」


 セリカさんはそ知らぬ顔で、第二体育館を後にすると、

 サフィリアさんたちと一緒に、お花見弁当です。


 ためぞうは、動けない・・・。


 日が傾いて、辺りが静かになってくると、

 ためぞうは、ちょっと寂しくなりました。


ためぞう「誰か来て・・・。」


 たまたま部活も休みで、使われなかった体育館の天井を見上げると、

 ためぞうは、今までの一年間を振り返ってしまいます。


ためぞう「卒業の方向にいかないでっ!

     ニセなんだよね?


     出来れば、ちゃんとした形で、

     乙女さんとの想い出付きで、卒業させてw


     同窓会とかも、期待の持てる方向で、

     流れを作っておきたい。」



   ガラガラ・・・。


 体育館の扉が開いている事に気が付いた事務のセリスさんが、

 ついでにためぞうにも気が付いてくれました。


ためぞう「た、助かった!」


セリスさん「それは、ぬか喜びですー。


      私は、回復魔法とか使えないので、

      使える方を呼んで来ますね。」



   それでは、選択肢でぇす!


 ・ 誰に、優しく回復魔法をかけてもらいたいですか?



   → モチモチすべすべ肌のナイスバディ、サフィリアさん。


     運動万能、スレンダーな美白の美少女 レミーアさん。


     関東から来た大和撫子、椿の艶の黒髪の美少女 レイカさん。


     無限の可能性を秘めた、ちっちゃい美少女リンカさん。


     そろそろお花屋さんの仕事を終えそうな、大人なファルさん。


     何が起こるかわからない、無敵女教師のエリナ先生(19)。


     回復魔法が使えるか謎な、でもイチオシのエリス様。



ためぞう「・・・選択肢を7つも同時に出せるとは!?


     ここは、無難にねーさんでいいや。」


セリスさん「はーい。」


 セリスさんからのメールを見たエリスねーさんは、

 慌てて、第二体育館にやって来ました。


エリスねーさん「おい、大丈夫か、ためぞー!」


ためぞう「な、長かった・・・。」


 エリスねーさんは、困りました。

 ためぞうを回復させる魔法が使えません。


エリスねーさん「ん? なんだこれ。」


 ためぞうの横に、エナジー回復ドリンクのビンが置かれています。


エリスねーさん「これ、飲めばいいんじゃねーの?」


ためぞう「セリスさん、気付いてました?」


セリスさん「ひゅ~るるる~♪」


 エリスねーさんは、ためぞうにエナジードリンクを飲ませた。


 ためぞうが、ギンギンに復活した!


ためぞう「・・・無駄な元気が溢れてくる。


     セリカさんは、いつもこんなの飲んでるのか。」


エリスねーさん「良かったな、ためぞう!」


 エリスねーさんが笑っています。

 ためぞうは、この笑みをみると、いつもなんだかホッとするのです。


セリスさん「良かったら、今夜は花見で一杯やりませんか?

      たくさん梅が咲いている場所を知ってるんです。」


エリスねーさん「もしかして、おそば屋さんの近く?

        ノルン姐さんが、出前取ってくれるんだよ。


        店内からも綺麗に見えて、いいんだよね。」


セリスさん「そうなんです、ライトアップとかしてくれてて、

      綺麗ですよね。」


 セバリオスさんが、セリスさんを迎えにやって来ました。

 何故か、セリカさんも付いてきています。


セリカさん「おそばレーダーに探知があったのです。


      いつもヒマでごろごろしてるので、

      良かったら連れてってください。」


エリスねーさん「セバリオス、そば食い行こうぜ!


        ためぞーも行くよな?」


ためぞう「行く。」


セバリオスさん「では、レオクス君も呼んで、一緒に行こう。」


 そうやって、セバリオスさんの車にみんなで乗り込むと、

 俊足を飛ばして、レオクスさんがやって来ました。


 どうやら、ランニングの途中だったらしく、

 紺のフリースにオシャレなスニーカーという格好です。


レオクスさん「着替えてなくてすいません。

       音速で駆け抜けてきましたよ。」


セバリオスさん「はい、タオル。

        柔軟剤にはこだわっているんだ。」


 ほのかに汗の香るレオクスさんが、

 車内へと乗り込んできます。


 お花の芳香剤のタオルも、いい匂いがしますが、

 レオクスさんから流れる汗は、

 とても若々しい、甘いメロンのような香りです。


エリスねーさん「(これが、王子様の香りなのか!?

        すげー。)」


セリスさん「(ああ、こういう王子様の空気もいいですねぇ。)」


 途中、ノルンさんのいる長崎ドラゴン魚市場に寄ると、

 そこには、エストさんと事務の鈴木さん、佐藤さんもいました。


エリスねーさん「そば食べいかね?」


ノルンさん「おー行く行く!」


鈴木さん+佐藤さん「ぜひ、お願いしますー!」


 こうして、ノルンさん行き付けのおそば屋さんに到着しました。


そば屋の大将さん「おお、ノルンちゃん、今日はにぎやかだね。」


ノルンさん「大将、いい席空いてる?」


そば屋の大将さん「おう、ノルンちゃんの頼みなら、

         オジサン、ことわれねえな!


         奥にある、別邸を使いなよ。」


 大将さんの心意気で、離れの広間を使うことが出来ました。

 梅の花が満開に咲く庭園を、ゆったりと望む事ができる立派な部屋です。


ためぞう「そば打ちの指導、これからもよろしくお願いします。」


そば屋の大将さん「いつでもおいでよ。

       ノルンちゃんの弟分なんだよな。」


ためぞう「ありがとうございます!」


 ためぞうたちは、席に着きました。

 ちょうどレオクスさんが窓側に座ったので、

 堂々と梅の花を見ながら、レオクスさんも見れます。


鈴木さん「いいですねー、王子様ですねー。

     梅の花もきれいですー。」


佐藤さん「キレイなものを見るって、素晴らしいことですよね。

     どきどきしちゃいます。」


 エリスねーさんと、ノルンさんはメニューを見ながら相談中です。


エリスねーさん「天そば御前に、花見酒でいいかな?

        未成年は、各自、好きなドリンクで。


        ノンアルコールの梅サワーとかいいんじゃない?」


エストさん「炭酸いいですねー。

      私は、それを頂いちゃおうかな。」


ノルンさん「それじゃ、注文するねー。」


セリカさん「おそばの神様に感謝。」


 セバリオスさんとレオクスさんが、

 こそこそと話し始めました。


セバリオスさん「ひそひそ・・・、

        エリスはある程度酔うと、性格がかなり変わるのだ。」


ためぞう「・・・変わりますね。」


レオクスさん「なるほど・・・それは、とても興味あります。」


 ためぞうも加わって、あれこれ話しています。


 鈴木さんと佐藤さんにとっても、エリスねーさんの情報は重要なので、

 こそっと聞き耳を立てています。


セバリオスさん「まあ、一言で言うと、

        ツンデレのデレの部分がハンパないな。


        あんな顔して、すんごい甘えて来る。

        それに、とても素直だ。」


レオクスさん「むはっ・・・。」


鈴木さん+佐藤さん「(おー萌えますねっ!!

           そんなにギャップ凄いんですね。)」


セバリオスさん「個人的に、あれは秘かに楽しむべきであって、

        公然とした場所で、アレをやられると、

        エリスの変なウワサが立って、

        たぶん、こっそり人気が出る。


        私が近くにいるから、エリスは求婚されないだけで、

        だが、いくら私が頑張って妨害しても、


        ツンデレ乙女の正体を知った者達を果たして止められるかどうか。


        ちなみに、未成年の頃のエリスは、

        もっと分かりやすかったので、

        お酒なしでもたまにそうなる事があった。」


レオクスさん「ここは、守っておかないといけませんね。」


セバリオスさん「うん。

        女子のお泊り会だったりすると、

        気にもならないのだが、

        エリスを簡単に嫁にやる気なんてないからね。

        親父でも何でもないんだか、とりあえず言ってみた。」


鈴木さん+佐藤さん「(お姉さんのヒミツを守り抜きましょう!

           お泊り、楽しみだなぁ!!)」


 あれこれ話している内に、

 豪華な天そば御前が席へと運ばれて来ました。


 大将さんが、ノルンさんの為に吟醸酒を振舞ってくれました。


ノルンさん「おお、ありがとー!」


大将さん「お得意様への感謝だから、気にせず飲んでね。

     (エリス嬢ちゃんの話、聞かせてもらったぜ。)」


 達人には、聞こえてしまうらしいのです。


セバリオスさん「いやー吟醸酒、美味そうだね。

        (大将の策から、エリスを守らなければね。)」


レオクスさん「わ、私も飲みたいです! (共に行きましょう!)」


 サクッと揚がった天ぷらは、風味と甘みがあってとっても美味しいです。

 十割りのおそばも、コシがあってのど越しなめらかです。


鈴木さん「おいしーい!」


佐藤さん「うん、とっても!」


ノルンさん「そりゃ、良かった。

      いつでも、連れて来てあげるからね。」


エストさん「はふはふ・・・よろしくお願いします!」


 ためぞうは、このそばを打てるようになりたいと、

 味わって食べています。


 エリスねーさんは、グラスで吟醸酒を飲んでいます。


エリスねーさん「うめー!」


 飲みやすいお酒ですが、度数が20度くらいあるので、

 結構、あとから酔いが来ます。


 セバリオスさんは、まったく酒には酔わない体質なので、

 グラスでごくごく飲んでいます。


セバリオスさん「食事に合うよね、日本酒って。」


レオクスさん「とっても美味しいですね。」


 レオクスさんは、すでにぽやんと赤くなっています。

 ブロックの意味ではあまり期待出来そうにがありませんが、

 顔立ちが女性のような感じなので、

 頬に紅が差したその表情は、とても艶があって素敵です。


 レオクスさんは、酔うとよく笑うようになります。

 真面目すぎる性格から、丁度いいくらいのご機嫌な感じに優しくなります。


ノルンさん「ごくごく・・・。

      (こんなにキレイな男がいるのかってくらい美人だなー。)


      大将! お酒、もう一本持ってきて。」


セバリオスさん「・・・。」


大将さん「あいよっ!」


 セバリオスさんと、そば屋の大将さんとの、

 見えない戦いが始まりました。

 さりげなく、お酒がすすむおつまみなど、差し入れてくれます。


 このやりとりが、梅の花の咲く舞台を前にして、

 一時間ほど繰り返されました。



 ・ お酒の回り具合。



   ノルンさん    = 余裕。


   セバリオスさん  = 全く余裕。


   レオクスさん   = ほろ酔い気分+1


   セリスさん    = 余裕+1


   エリスねーさん  = わりと酔ってる。



セバリオスさん「そろそろ、お開きにした方がいいんじゃないの?」


大将さん「せっかくみんなで来てくれてるんだから、

     遠慮しないで、ゆっくりしていってよ。」


 大将さんは、ノルンさんから注文を取っています。


ノルンさん「みんな、まだ平気だよね。

      大将、お任せでよろしくー!」


セリカさん「お土産もよろしくー!」


大将さん「あいよっ!」


 セバリオスさんは、大将やるな! と思いました。

 大将さんの持ってくる吟醸酒は、

 口当たりもなめらかで、ほのかにメロンのような香りがする、

 素晴らしいセレクトなのです。


 こんなに美味しいお酒を、

 エリスねーさんに飲むなとは、

 さすがにセバリオスさんも言えません。


 セバリオスさんは、相手にも快く賛辞を送ることの出来る、

 わりと心が広い方なので、

 エリスねーさんが変な事になるのも、仕方ないと、

 美味しく料理を頂く事にしました。


エリスねーさん「このお酒、ほんとに美味しいね。

        姐さんの行き付けのおそば屋さんで、

        はしゃいじゃってごめんね。」


ノルンさん「私と大将の仲だから、エリスが気にするなって。

      ここ、離れになってるから、大丈夫だよ。」


レオクスさん「エリスさんは、私が守る!」


 レオクスさんも、相当酔っています。


エリスねーさん「えーーっ!


        ・・・ま、守ってもらっちゃおうかな。」


レオクスさん「うはぁ!」


 レオクスさんが、ノックアウトされました。


ためぞう「じわじわ、変わり始めとるな。」


鈴木さん+佐藤さん「そーなんだ。」


 レオクスさんは、恥ずかしそうな顔をして、外の梅の花を眺めています。

 そういう経験値はほぼゼロに等しいレオクスさんは、

 心の中で、ひたすらに算数ドリルを解き続けています。


レオクスさん(・・・危うく、ためぞう君の冒険を終わらせてしまう所だった。

       つい、嬉しさのあまり、KOされてしまったが。


       エリスさんはいい!

       だが、ためぞう君にはエリスさんが必要なんだ。


       ・・・でも、いい夢は見ました。てへ。)


 だいぶ、レオクスさんも酔ってしまっているようです。


 さらに一時間が経過します。


セリカさん「また、ご馳走してねー。」


 セリカさんは、天ぷらのお土産を持って、

 一人カラオケに行きました。


 レオクスさんと、エリスねーさんの酔いが、

 かなり回っています。


 セリスさんは、エリスねーさんの横で、

 ぴったりくっついて、お酒を飲んでいます。


 そんなエリスねーさんですが、

 とてもニコニコしています。


ためぞう「セバリオスさん、レオクスさん、

     ねーさんそろそろっすよ。」


セバリオスさん「エリスが楽しいんじゃ、仕方がないね。」


レオクスさん「・・・いや、頑張りましょうよ、

       セバリオスさん。」


セバリオスさん「そう?

        なら、ちょっとだけ頑張ってみよう。」


 ノルンさんと、大将さんは、

 世間話で盛り上がっています。

 大将さん、なかなかいい位置取りです。


 そんな大将さんに、エリスねーさんはこう言います。


エリスねーさん「おそばも、天ぷらも美味しかったです。

        私だけの時でも、また、寄らさせてくださいね。


        今日は本当に、ありがとうございます。」


 頬を赤く染めたエリスねーさんは、上目遣いに言いました。

 その心からの言葉に、大将さんは心を射抜かれます。


 優しく微笑むその笑顔を見ると、

 胸の奥が、温かなもので満たされる気持ちでした。


 それでいて、その感じをニコニコとした笑顔で、

 緩やかなものにしてくれています。


ためぞう「案外、しっかりしてるなぁ。

     酔ってるのは見た目だけなのか?」


大将さん「俺の作ったものをこんなに綺麗に食べてくれて、

     料理作ってて良かったよって、思うその瞬間が、

     まさに今だよ。


     こっちまで、笑顔にさせられちまうや。」


 この時、大将さんとセバリオスさんと、レオクスさんの間に、

 友情のようなものが芽生えました。


 『我ら、生まれた日は違えども、

  共に、この微笑みを守っていこうよ! の会。』みたいな感覚です。


鈴木さん「友情って素晴らしいですよね!」


佐藤さん「天そばって、素晴らしいですー。」


 帰り際、セリスさんがお会計をしていると、

 こっそりと何かが入った封筒を、大将さんに渡しました。


セリスさん「(・・・エリス様のデレの時の生写真ですー。)」


大将さん「おお・・・ありがとう、お嬢さん!!」


 こうして、夜の梅の花と、大将さんに見送られて、

 セバリオスさんの車へと乗り込み、みなさん家路へと着きました。

 

 その次の日の朝・・・。


 長崎ドラゴン魚市場。


そば屋の大将さん「次、いつエリスちゃん連れて来るの?」


ノルンさん「お魚、買いに来たんじゃないの!?」
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日記 2・03 節分の日。

2015年02月03日 17時46分26秒 | 日記
 豆のチカラは、いいですね。

 健康にもいいのに、鬼まで払って、

 福まで招くという、


 素敵な話だと思います。


エリスねーさん「ためぞー、

        豆とかお面とか持ってる?」


 仕事上がりのエリスねーさんは、

 今日はOLのピンクの服で、こたつに入っています。


 クマの冬眠のような感覚で、基本、こたつの中にいる事の多い、

 エリスねーさんです。


ためぞう「うん、一応、大豆と落花生はあるよ。

     地域で投げる豆が変わるらしいんで、

     二種類用意してみた。」


エリスねーさん「ためぞーは、抜かりがないよな。

        でも、お面は無いの?」


ためぞう「ある。

     ただ、誰が着けるかが問題だな。」


 エリスねーさんは、MAX159kmで、豆を投げてきます。

 無邪気なのはいいのですが、

 加減を時々忘れてしまう、うかつなねーさんです。


エリスねーさん「うかつ者ですまん。

        私が、鬼をやるしかなさそうだなぁ。」


 ねーさんは避けテクも凄いので、まず1個も当たらないでしょう。


エリスねーさん「い、行き詰ったな・・・。」


ためぞう「取りあえず、神社の豆まきの方に行ってみないか?

     素人のオレたちでは、

     豆の真のチカラを得る事は難しい。


     プロである、神主さんたちに学んで、

     次の機会に備えよう。」


エリスねーさん「そ、そうだよな。プロの方達だしな。

        体験学習は大事だと思う。」


 ためぞうと、エリスねーさんが近くの神社に行こうとすると、

 家の前に、セバリオスさんのリムジンがやって来ました。


セバリオスさん「エリスが神社に行くと聞いて、

        迎えに来てみた。」


エリスねーさん「はええな!」


セバリオスさん「ああ、会話はためぞう君のトランシーバーから、

        筒抜けだったからね。」


エリスねーさん「私に、プライベートは無いのか・・・。」


 車には、すでに事務のセリスさんと、

 お隣さんのレイカさんが乗っています。


セリスさん「さあ、行きましょうよ、エリス様。」


レイカさん「の、乗せていただきました。」


 セリスさんとレイカさんは利害が一致しているので、

 知り合ったその時から、お友達になりました。


 元はセリスさんが暮らす予定だった家を、レイカさんが借りているので、

 大家さんである、セバリオスさんとも仲良しです。


 その輪に、剣帝の称号を持つ、エリスねーさんが加われば、

 鬼退治はおろか、大魔王も倒せる、かなり無敵な感じになります。


ためぞう「鬼退治行くんですか?

     自分がお役に立てるかどうかは、分かりませんが。」


エリスねーさん「ちげーよ。

        神社でありがたい豆をもらいに行くんだよ。」


 家の前でそう言っている内に、レオクスさんもやって来ました。


エリスねーさん「おお・・・レオクスさんも行かれるんですか。」


 エリスねーさん(23)は、王子ランク1位のレオクスさんに憧れています。

 普通に、乙女さんです。


 エリスねーさんに、レイカさんほどの勇気があれば、

 今頃、セバリオスさんの青春は終わっていたかも知れません。


セバリオスさん「ハッハッハッ、

        エリスにそんな勇気は、微塵もないだろう!


        もちろん、私もそちらの勇気な豆粒ほどもないがな。

        よし、いい福の豆をもらおう!」


レオクスさん「私も、その・・・ためぞう君の通信を聞いて、

       やって来ました。


       みんなに、いい福が来るといいですね。」


エリスねーさん「ノルン姐さんより、先にゴールインしたい!」


セバリオスさん+レオクスさん「(・・・受け止めてみせる!)」


 友情っていいですね、

 なかなか、愛情には変わらないと思います。


 ですが最近、レイカさんの登場で、

 みなさんの緩みきった糸も、

 たまにピーンと張るようになりました。


 純真な心と告げる勇気を持ったレイカさんが、

 ためぞうとエリスねーさんの隣にいるという事は、

 いつ、ハッピーフラグが立つか分からないからなのです。


 あの全知の書を持つローゼさん(知力限界値 MAX100)や、

 大陸最高クラスの賢者(知力98+10)であるセリスさんまでも、

 レイカさんの事を「恐ろしい子。」と意識しています。


セリスさん「(ええ、その実力の底がまったく見えないほどに、

       強大な力を感じています。

       きっと、世界にラスボスのような者がいるとしたら、

       このような方ではないかと推察します。


       ためぞうさんはどうぞご自由に。

       ですが、エリス様は渡すつもりはございません。)」


セリスさん「神社の豆まきに、行きましょー!」


 セバリオスさんのリムジンに乗り込んで、一行は神社へと向かいます。

 道中、セバリオスさんが、こんな話をしてきました。


セバリオスさん「温泉旅行、みんな行くよね?


        季節とか希望ある?」


エリスねーさん「そういや、福引きで当ててたね。

        連れて行ってもらえるんなら、いつでも。」


レイカさん「わ、私もよかったらお願いします!」


セバリオスさん「うん、是非来てね。」


 セバリオスさんは、中華まんを食べながら、

 おしるこを飲んでいます。


 ピザまんやカレーまんなど、好きなときに食べれるように、

 車に保温庫を取り付けました。


 ホット緑茶や、ホットレモン、

 おしるこも入っています。


セバリオスさん「最近、湯気の向こう側が見えるようになる為の、

        修行をやってるんだけど、

        なかなか、うまくいかないよね、レオクス君。」


レオクスさん「ぶーーーっ!!」


 レオクスさんが、大好きなホットレモンでむせました。

 慌てて、ハンカチで拭き取ると、

 もう一度、ホットレモンで喉の渇きを潤します。


セバリオスさん「ゆけむり温泉修行も大変なものなんだね。

        正月あたりから、食っちゃ寝している、

        エリスのたるんだバディの入浴シーンを、

        見てやろうと思っているのだが。」


エリスねーさん「たるんでねーよっ!

        つか、セクハラやめろよ。


        セバリオスって、こんなんだったっけ?」


 レオクスさんは、空気が薄くなっているようで、ちょっと呼吸が荒いです。


レオクスさん「は、早く、神社に着かないかなぁ。」


ためぞう「いま、標高どのくらいっすか?」


レオクスさん「うーん、7000m級の薄さだね。

       レジャー修行がこんなところで役立つなんて、

       人生は、わからないね・・・。」


 立派な神社の前に着きました。


 ためぞうたちは、車を降りると、

 賑わう人々に揉まれながら、

 何とか、豆まきの所までたどり着きました。


 レオクスさんは、イケメン王子なので、

 たどり着いた後も、おばちゃん達に揉みくちゃにされています。


おばちゃんA「ふ、福が来たね!」


 レオクスさんはいい人なので、抱きつかれたり、

 揉まれたりしても、嫌な顔一つせず、流れに身を任せています。


おばちゃんB「こりゃ、若返っちまうね。」


 ためぞうは、見抜きました。

 レオクスさんは、ただ触られているだけではなく、

 さりげなくデリケートな部分はしっかり守っています。


 さらに、神主さんたちが投げた豆を、長身を生かして、

 きっちりキャッチしています。

 その豆の入った袋を、おばちゃんたちに手渡しし、

 微笑んでいます。


 おばちゃんたちは、すっかりレオクスさんの虜です。


ためぞう「キャッチ・アンド・リリース!?」


 ためぞうは良く分からない事を言っています。


 セバリオスさんも、その長身でナイスセーブなキャッチを見せつつ、

 豆の袋を女子達に配っています。


エリスねーさん「さすが、セバリオスは出来るヤツだな!」


レイカさん「ありがとうございます!」


 華麗な美技で、豆をキャッチする二人に、

 ためぞうも負けていられません。


 すると、バイトの巫女さんの中に、

 サフィリアさんとレミーアさんがいる事に、

 ためぞうは、気が付きました。


 ためぞうは、キャッチャーミットを天高く構えます。


 レミーアさんは、すぐにためぞうに気が付きました。

 レミーアさんは、ためぞうのサインに首を振ります。


 ためぞうは、ストライクゾーンにミットを構えなおしました。


 刹那! 155kmの速球で豆がミットに投げ込まれます。


ためぞう「ストライク!」


 ためぞうは、カーブのサインを送りますが、

 レミーアさんは頷きません。


 再度、ミットをストライクゾーンに構えると、

 豆は吸い込まれるように、ミットへと投げ込まれました。


ためぞう「ストライクツー!」


エリスねーさん「おお、それ構えると、

        豆を投げ込んでくれるの?


        かして、かして!」


 キャッチャーが、エリスねーさんに交代しました。


 ミットを構えた直後に、156kmのストレートが、

 投げ込まれました。


エリスねーさん「すげー。


        しかも、あれだけ速いのに、豆がぜんぜん綺麗じゃん。

        なんでそんなの、投げられるの!?」


ためぞう「大豆と落花生のチカラなんだよ。


     ありがたい豆なんだから、そういう奇跡も起こるんだよ。」


エリスねーさん「キセキか・・・。


        いい響きだよなー。

        イソフラボンのパワーは、ハンパねーのな。


        落花生は、おつまみにいいんだよなぁ。

        なんか、夢が持てた気分だよ。」


 サフィリアさんが豆をまいているのに気が付いた、

 セバリオスさんと、レオクスさんは、

 その豆を一生懸命取っています。


セバリオスさん「いい汗かいてるよねー。」


レオクスさん「はい、まったくです。」


 サフィリアさんたちのバイトが終わるのを待って、

 みんなで、セバリオスさんの車に乗りました。


サフィリアさん「乗せてもらっちゃって、ありがとうございます!」


レミーアさん「ありがたいっす!」


セバリオスさん「いつでも歓迎だよ。


        ところで、何処まで送っていけばいいかな?

        エリスの家?」


サフィリアさん+レミーアさん「お、お泊りセット取りに行きたいので、

               学園寮経由でいいですか?」


セバリオスさん「うん、青春っていいよね。


        エリスが女子高生だった頃は、

        よく、私やセリスとお泊り会をしていた気がする。


        あの頃のエリスは、全然、ボインではなかったがね。」


エリスねーさん「捏造してんじゃねーよ!


        セバリオスなんかがいたら、小うるさくて寝れるものか。」


レミーアさん「・・・成長の余地ありなのかな。

       豆のチカラを信じてみようと思います。


       福は内ってなりたいです。」


 レイカさんは、おしるこを飲んでいます。

 なんだか、笑顔が可愛いです。


ためぞう「おしるこ、大好きですか?」


レイカさん「はい、とっても。


      こうやって、自然に受け入れてくれるみなさんが、

      本当に大好きです。


      私はもう、いい事がたくさんで、

      いつかこの想いを、誰かに届けてあげたいと・・・。


      あ、いえ、私も泊まりにいっちゃおうかな。」


 レイカさんは、思いました。

 まだわずかな時間かも知れませんが、

 触れてしまうことで、

 もう、かつての自分には戻れないという事を。


 彼らの最期の試練として、立ちはだかる役目が、

 急に重たいものに思え始め、

 出来るなら、予定されたそのシナリオを、

 どうにか変える事が出来ないかと。


 自分にこの世界を見せてくれた、永遠のアリスが、

 宰相のレイカに伝えたかった、

 変革というメッセージを、

 少しだけ、悟ったような想いがしました。


 今は、まだぼんやりとしていますが、

 そのぼんやりとした時間が、ずっと長く続けはいいと、

 ささやかに願うのです。


ためぞう「ねーさん家に、豆とお面があるんで、

     家でも豆まきやりましょうか。」


レイカさん「はい、よろしくお願いします。」


 変えられる人が目の前にいる。

 彼なら、きっと。


 そう感じられたのでした。
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