エリスねーさんの家のとなりに、
北条 レイカさんが引っ越してきて、
もう幾日が過ぎました。
ためぞうのキャンプは、レイカさんの家側の方にあるので、
レイカさんが一階の窓を開けると、
そこから、ためぞうとお話が出来ます。
- まるで、幼馴染みみたいな関係ですね。
後付けな的な感は大いにありますが。 -
レイカさん「おお、開幕から来るのですね。
なんと言いますか、言葉のトラップ的なものが。」
レイカさんは、躊躇うことなく窓を開けます。
レイカさん「こんにちは、ためぞうさん。」
ためぞう「こんにちわっす!」
ためぞうは、庭先でじゃがバターを作っていました。
焼き芋も仕込まれています。
レイカさんは、ためぞうのお姉さんにすごく憧れを持っています。
今まで、何でもキビキビとこなしてきた、名門女学院の生徒会長さんは、
リーダーシップに溢れていますが、
誰かに頼ることには、なれていません。
レイカさん「私も、そちらにおじゃましていいですか?」
ためぞう「どぞどぞ、
よかったら一緒にじゃがバターとか食べましょうよ。」
レイカさんは、エリスねーさんにならって、
学園の赤のジャージを着ています。
とても綺麗なお嬢さんですが、気取ったところがまるでありません。
ためぞうは、テント脇の椅子を持ってきました。
レイカさん「わあ、この椅子、暖かいですね。」
焚き火の近くでほんのりと暖められた折りたたみ椅子は、
なかなかの座り心地です。
レジャーの大好きなレオクスさんと一緒に買いに行ったものなので、
起毛が付いて、ほかほかです。
ためぞうが今使ってるテントも、冒険仕様の高級テントなので、
買うと結構お高いです。
普通のテント、10個は買えちゃう優れものだったりします。
レイカさん「ためぞうさんは、冒険が大好きなのですね。
インドア派の私ですが、
良かったらいつか、そういうものも教えて欲しいです。」
ためぞう「あー、いえいえ。
自分、師匠と仰ぐレオクスさんに付いて行ってるだけなので。
でも、自分で良ければ、いつでも言ってくださいっす。」
ためぞうは、おいもが出来上がったら、
エリスねーさんの家に上がるつもりでした。
普段は、お泊り会で女子たちが賑わう家に、
気を使って、テントを設置しているためぞうです。
ついでに、テント生活のコツのようなものも学んでいます。
レイカさんは、言いました。
今日は晴れているので、よかったらここで頂きませんかと。
ためぞう「そっすね、
じゃがいもも箸が通るくらいには、
茹で上がっているので、
早速、頂いちゃいますか。」
レイカさん「はい。」
レイカさんのその、素直に喜ぶ顔が、
なんとも嬉しいためぞうでした。
ためぞうは、器用にじゃがいもの皮をむいて、
箸で軽く切れ目を入れると、
そこにバターをのせます。
何とも言えない黄金色に溶けるバターに、
お皿のからは、湯気がほわわっと、立ち込めます。
レイカさん「美味しそう。」
ためぞう「一緒に食べましょう。」
口に入れると、ほくほくとしたじゃがに、
バターの甘みが絡んできます。
ハフハフいいながら食べる二人の姿は、
端から見たら、恋人のように見えなくもありません。
レイカさん「ええ、こんな素敵な気分になれるのなら、
むしろ、こちらから恋人になって欲しいですねっ。」
ためぞう「えっ!?」
その光景を、こっそりローゼさんと、レミーアさんが見つめていました。
ローゼさん「お、恐ろしい子!?」
レミーアさん「おお、自然に言ってくるなぁ・・・。」
ためぞうは、少し動揺しています。
レイカさんは、じゃがバターのおかわりです。
ローゼさん「・・・いいなぁ。」
レミーアさん「なんで、コソコソしてるんでしょうね、私たち。」
ためぞうは、焼いもの位置を微妙に調整しながら、
棒で焚き木を寄せていきます。
アルミに包まれた焼いもを二つ取り出したためぞうは、
テーブルのお皿の上に置きます。
ためぞう「ちょっと熱すぎるので、持ちやすくなってから頂きましょう。
まだ、幾つか入れてあるので、お土産にでも。」
レイカさん「ありがとうございます!
後で、鈴木さんと佐藤さんに届けますね。」
ローゼさんと、レミーアさんは、
こっちに先に届けて欲しい様子でしたが、
二人とも、隠れるのが上手いので、
ためぞうたちには、全く気付かれていません。
ローゼさん「出ていきにくくなりましたね・・・。」
レミーアさん「誰か、通りかからないかなぁ。」
こういう日に限って、なかなか知り合いがやって来ないものですね。
ぐーっと、おなかの空いた音が鳴っても、
ちょっとそわそわしているためぞうには、
無意味なアピールになっちゃってます。
ためぞう「レイカさんは、こっちは少しは慣れましたか?」
レイカさん「まだ、たくさん学ばなくてはいけませんが、
とっても楽しい日々を過ごしています。
・・・自由には、ずっと憧れていました。
それは、多くの責任を伴うものだと、
足踏みしていただけかも知れません。
実際は、そんな自信のない私を受け入れてくれた、
みなさんに、とても感謝しています。
そして、いつか思うのです。
この私が、みなさんと一緒に、
誰かの勇気になれればいいなって。
・・・あ、話が長いですね。
じゃがバター、本当においしいです!」
そういって、照れるように微笑むレイカさんに、
ためぞうは、ふと、心を奪われたような気がした。
ためぞうは、次の瞬間、
何と話しかけていいか、わからないでいる。
すると、それを察したレイカさんは、
テーブルの上に置かれた焼いもの方に目をやった。
ためぞう「あ、焼いもっすね!
ついでに、お茶も入れます。」
ためぞうは、
保温ポットからティーパックの入ったカップにお湯を注ぐと、
出来立ての焼いもと一緒に、レイカさんに手渡した。
レイカさん「美味しいから、たくさん食べちゃえます。
私、わりと食いしん坊なんですよ。ウフフ。」
レイカさんは、家の外からの視線に気付いて、
二人の方に、手を振った。
ためぞう「おお、いらっしゃい!
よかったら、お二人もどうすか?」
レミーアさん「おじゃまさせていただきます!」
ローゼさん「ためぞうさん、
私、じゃがバター食べたいです。」
ためぞう「結構、たくさん茹でているので、
遠慮せず、食べちゃって下さい。」
テーブルに椅子が二つ追加されると、
ローゼさんとレミーアさんは、照れくさい感じで席に着いた。
ためぞうは、焚き火の中から焼きいもを包んだホイルを数個取り出すと、
また新しい焼きいもの包みを中に入れた。
ためぞう「ノルンさんがダンボールで送ってきたので、
遠慮なさらず、どぞどぞ。
はい、じゃがバターになるっす。」
ローゼさん「はふはふ・・・美味しいっ。」
レミーアさん「美味いっすよね!」
ローゼさんは、白のダウンジャケットを着て、味わって食べています。
レミーアさんは、厚手のジャンバーに、ニットの帽子姿です。
わりとワイルドにレミーアさんは、食べちゃってます。
レミーアさん「マジ、美味いっす!
ためぞうさん、おかわり。」
ためぞう「たくさんあるから、いっぱい食べてね。」
レイカさんは、ほくほくと甘い焼いもを口に運びながら、
ローゼさんとレミーアさんの事を見ています。
可愛い人たちだなって、感じです。
レイカさんは、いい意味で正直なのです。
なので、正直に二人に聞いてみました。
レイカさん「お二人は、ためぞうさんが気になっているみたいですね。
でも、私も好きだったりしますよ。
お二人が告白するのをためらっていらっしゃるのでしたら、
私がためぞうさんに、
想いを伝えてもかまわないのでしょうか?」
ローゼさん「ぶはっ!!」
レミーアさん「げほ、げほっ!!」
ためぞう「ぬおぉ!?」
レイカさんは、生粋のお嬢様育ちなので、
気持ちの伝え方が、わからないでいました。
ただ、ためぞうと一緒にいることは、
長い目で見ても、素敵な想いが育つと信じられたのです。
レイカさん「だめですか?」
ローゼさん「えー、
ためぞうさんに、そういうイベントが発生した場合、
ためぞうさんの冒険どころか、
学園生活さえ終わってしまいます。」
レミーアさん「そ、そうなんですよ!(・・・そーなんですか。)」
レイカさん「あっ、それはいけませんね。
だからみなさん、想いを胸に秘めていらっしゃるのですね。」
ローゼさんはいいます。
・ ためぞうは、プレイヤー(主人公)の代打なので、
勝手に、エンディングは迎えられません。
・ プレイヤー(新勇者さんとか)が登場した時点で、
ためぞうは、とある魔王の四天王に戻らされてしまいます。
・ もしくは、タヌキさんとして、リスタート。
注) これは、ローゼさんの勝手な想像です。
ためぞうが照れています。
具体的に、幼馴染み感覚でとなりに引っ越してきた、
レイカさんを見て、照れています。
レイカさん「あ、その、・・・事情も知らずにごめんなさい。
この想いは、胸に秘めて大切にはぐくむ事にします。」
ためぞう「ぶはっ!!」
ためぞうは、ノックアウト寸前だ!
それを意識したためぞうは、
もう、レイカさんの事しか考えられなくなってしまうでしょう・・・。
ローゼさん「ためぞうさん、ごめんなさい!
行きますよ、レミーアさん。」
レミーアさん「はいっす!」
二人の乙女パワーは、彼女達を上空12000mまで舞い上げる!
横を飛んでいた旅客機に、
バンバン写メを取られまくりだが、
一心不乱に、二人は合体奥義を放ちながら、
地上へと舞い降りた!
ローゼさん+レミーアさん「スーパー=プラズマ=ハリケーン=ツインラリアットォォオ!!!」
ためぞうの自動防御 トータスの構え III が発動!
ダメージの99%をブロック! → ためぞうに、7000ダメージ!!
・・・ためぞうは、倒れた。
ためぞう「うぎゃ!!」
ローゼさんは、マッハで回復魔法を唱え、
素早くためぞうの戦闘不能状態を回復した。
ローゼさん「ぜぇぜぇ・・・ヒーロー技的攻撃からの、連続回復魔法は、
結構、堪えますわね。
私、本当にためぞうさんのお父さんに、勝った事あるのかしら。
軽くリハビリしておいた方が良さそうですわね。」
ためぞう「・・・。
あれ、みなさん。
何処かで、お会いしましたか?」
ためぞうは、微妙に記憶が飛んでいるようだ。
レイカさん「は、激しいですね・・・。
えっと、ためぞうさんは、私とローゼさんと、
レミーアさんに、じゃがバターと、
焼いもを振舞ってくれていましたよ。」
ためぞう「なるほど! 思い出したっす。」
ローゼさんは、行儀良く椅子に座って紅茶を頂いています。
勘のいいローゼさんは、
このままためぞうの隣に、
レイカさんが住んでいるのは、アブナイ事を悟りました。
何と言ってもレイカさんは、他の女子たちが持てないでいる、
告げる勇気を持っている方なのです。
ローゼさんも、言う割のには自分で勇気を出すのは、
苦手な方です。
ローゼさん「め、面目ないです・・・。」
レイカさん「ローゼさんや、レミーアさんの気持ちは、
とても優しい素敵な感じですね。
もしよろしければ、私の家に今度遊びに来ませんか。
みなさんでお話すれば、きっと楽しいだろうなって。
エリスさんの家にも、遊びに行けますし。」
レミーアさん「お泊り会は、いつでも歓迎です!
私、レイカさんとは、仲良くやれそうな気がします。」
ローゼさん「わ、私も、お邪魔しようかしら。
レイカさんから学びたい事はたくさんありますし、
ためぞうさんのとなりなのも、いいですよね。」
女子三人は、焼いもを美味しく頂きながら、
話に夢中になっています。
ためぞうは、新しく焼けたいもを取り出すと、
三人のお土産用に分けて、
急須で入れたお茶を飲んでいます。
ためぞう「ずずーっ。
ためぞうにしては、上出来だと思っています。
冒険に出る機会こそありませんが、
こうやって集まれる仲間の存在はありがたいものです。
最近、ためぞうが思うようになったのは、
オレのような中途半端なヤツでも、
この優しい日だまりの中に居れるというか、
素晴らしいこんな場所を、
守っていきたいという想いのようなものが、
だんだんと強くなっていってる事です。
少しずつでも、気付けるようになりたいと、
ためぞうは思うようになりました。」
ためぞうの上司のセリカさんが、
ためぞうのテーブルに置かれた焼いもを、
キラキラした視線で見守っています。
ためぞうは、その焼いもを持って、
セリカさんの元に行きました。
セリカさん「出来るね、ためさん!」
ためぞう「セリカさんも、気をつけて遊んでこいよ。」
セリカさん「うん、カラオケ行ってくるー。」
席へと戻って来た、ためぞうに、
レイカさんは、言いました。
レイカさん「素敵な方たちに、見守られているのですね。
私も早く、そんな輪の中に入りたいものです・・・。」
レミーアさん「レイカさんは、もうマブダチっすよ!
早速、今日からお泊りさせていただきます。」
ローゼさん「私もお邪魔いたします。
夜な夜な、みなさんのお布団の中でホクロの数でも、
数えてみましょうね。」
レイカさん「そうなのですか? 何だか楽しそうですねっ。」
ローゼさん「ぎゃふん・・・。
出来もしない事を、
軽々しく口に上らせないようにしなくては、
お嫁にいけなくなっちゃいますネ。」
そこに、お花の配達をしていた、
ファルさんが軽トラで通りかかりました。
レイカさん「こんにちはー。」
ファルさん「こんにちはー。
この前のお泊り、ありがとうございました。
楽しかったです。」
ローゼさん「えっ!?」
レイカさん「今日は、ローゼさんと、レミーアさんです。」
ファルさん「わ、私も入れてw」
レイカさん「はいー。」
ローゼさんは心の中で、
レイカさんを、恐ろしい子と思ってしまいました。
今のローゼさんでは、
いずれレイカさんに対抗出来なくなってしまうでしょう。
ローゼさんは、自分自身をがんばって! と励まします。
ためぞう「ファルさん、おやつ代わりによかったら。」
ファルさん「焼いもですか、
わー、嬉しいです!
買うの、勇気がいったりしちゃうので。
配達中に、美味しくいただきますね。」
ファルさんは、配達に戻りました。
お仕事を頑張って早く終わらせて、
レイカさん家にお泊りです。
レイカさん「ファルさん、またねー。」
レイカさん家は、立地条件が最高で、
いつでも憧れのエリスねーさんの家に遊びに行けます。
セバリオスさんは、いい物件を押さえていました。
さらに、セバリオスさんは、
レイカさんをデパートへと連れて行き、
エリスねーさんの好みを知り尽くした、店員の田中さんから、
羽毛布団などの寝具や、パジャマを揃えてもらっています。
部屋も広く、いっぱい買ったので、修学旅行感覚でお泊りできます。
ローゼさん「・・・さすが、あのアリス会長さんと、
ほぼ互角の能力をお持ちの、レイカさんですわね。
すでにラスボスとしても風格が伝わって参ります。」
レイカさん「もう、昔の話はしないでくださいっ!
ラスボスだったなんて、恥ずかしいじゃないですか。」
レミーアさん「(ラスボスだったんだ・・・。仲良くしよう。)」
ためぞう「困った事があったら、いつでも言ってくださいね。
あと、エリスねーさんいる時も言ってもらえば、
そっちに行かせますので。」
レイカさん「いつも、ありがとうございます!」
ためぞう「あ、いえいえ。」
ローゼさん「ま、負けないようにがんばります。
がんばれー、私!
では、またですー。 ^-^」
北条 レイカさんが引っ越してきて、
もう幾日が過ぎました。
ためぞうのキャンプは、レイカさんの家側の方にあるので、
レイカさんが一階の窓を開けると、
そこから、ためぞうとお話が出来ます。
- まるで、幼馴染みみたいな関係ですね。
後付けな的な感は大いにありますが。 -
レイカさん「おお、開幕から来るのですね。
なんと言いますか、言葉のトラップ的なものが。」
レイカさんは、躊躇うことなく窓を開けます。
レイカさん「こんにちは、ためぞうさん。」
ためぞう「こんにちわっす!」
ためぞうは、庭先でじゃがバターを作っていました。
焼き芋も仕込まれています。
レイカさんは、ためぞうのお姉さんにすごく憧れを持っています。
今まで、何でもキビキビとこなしてきた、名門女学院の生徒会長さんは、
リーダーシップに溢れていますが、
誰かに頼ることには、なれていません。
レイカさん「私も、そちらにおじゃましていいですか?」
ためぞう「どぞどぞ、
よかったら一緒にじゃがバターとか食べましょうよ。」
レイカさんは、エリスねーさんにならって、
学園の赤のジャージを着ています。
とても綺麗なお嬢さんですが、気取ったところがまるでありません。
ためぞうは、テント脇の椅子を持ってきました。
レイカさん「わあ、この椅子、暖かいですね。」
焚き火の近くでほんのりと暖められた折りたたみ椅子は、
なかなかの座り心地です。
レジャーの大好きなレオクスさんと一緒に買いに行ったものなので、
起毛が付いて、ほかほかです。
ためぞうが今使ってるテントも、冒険仕様の高級テントなので、
買うと結構お高いです。
普通のテント、10個は買えちゃう優れものだったりします。
レイカさん「ためぞうさんは、冒険が大好きなのですね。
インドア派の私ですが、
良かったらいつか、そういうものも教えて欲しいです。」
ためぞう「あー、いえいえ。
自分、師匠と仰ぐレオクスさんに付いて行ってるだけなので。
でも、自分で良ければ、いつでも言ってくださいっす。」
ためぞうは、おいもが出来上がったら、
エリスねーさんの家に上がるつもりでした。
普段は、お泊り会で女子たちが賑わう家に、
気を使って、テントを設置しているためぞうです。
ついでに、テント生活のコツのようなものも学んでいます。
レイカさんは、言いました。
今日は晴れているので、よかったらここで頂きませんかと。
ためぞう「そっすね、
じゃがいもも箸が通るくらいには、
茹で上がっているので、
早速、頂いちゃいますか。」
レイカさん「はい。」
レイカさんのその、素直に喜ぶ顔が、
なんとも嬉しいためぞうでした。
ためぞうは、器用にじゃがいもの皮をむいて、
箸で軽く切れ目を入れると、
そこにバターをのせます。
何とも言えない黄金色に溶けるバターに、
お皿のからは、湯気がほわわっと、立ち込めます。
レイカさん「美味しそう。」
ためぞう「一緒に食べましょう。」
口に入れると、ほくほくとしたじゃがに、
バターの甘みが絡んできます。
ハフハフいいながら食べる二人の姿は、
端から見たら、恋人のように見えなくもありません。
レイカさん「ええ、こんな素敵な気分になれるのなら、
むしろ、こちらから恋人になって欲しいですねっ。」
ためぞう「えっ!?」
その光景を、こっそりローゼさんと、レミーアさんが見つめていました。
ローゼさん「お、恐ろしい子!?」
レミーアさん「おお、自然に言ってくるなぁ・・・。」
ためぞうは、少し動揺しています。
レイカさんは、じゃがバターのおかわりです。
ローゼさん「・・・いいなぁ。」
レミーアさん「なんで、コソコソしてるんでしょうね、私たち。」
ためぞうは、焼いもの位置を微妙に調整しながら、
棒で焚き木を寄せていきます。
アルミに包まれた焼いもを二つ取り出したためぞうは、
テーブルのお皿の上に置きます。
ためぞう「ちょっと熱すぎるので、持ちやすくなってから頂きましょう。
まだ、幾つか入れてあるので、お土産にでも。」
レイカさん「ありがとうございます!
後で、鈴木さんと佐藤さんに届けますね。」
ローゼさんと、レミーアさんは、
こっちに先に届けて欲しい様子でしたが、
二人とも、隠れるのが上手いので、
ためぞうたちには、全く気付かれていません。
ローゼさん「出ていきにくくなりましたね・・・。」
レミーアさん「誰か、通りかからないかなぁ。」
こういう日に限って、なかなか知り合いがやって来ないものですね。
ぐーっと、おなかの空いた音が鳴っても、
ちょっとそわそわしているためぞうには、
無意味なアピールになっちゃってます。
ためぞう「レイカさんは、こっちは少しは慣れましたか?」
レイカさん「まだ、たくさん学ばなくてはいけませんが、
とっても楽しい日々を過ごしています。
・・・自由には、ずっと憧れていました。
それは、多くの責任を伴うものだと、
足踏みしていただけかも知れません。
実際は、そんな自信のない私を受け入れてくれた、
みなさんに、とても感謝しています。
そして、いつか思うのです。
この私が、みなさんと一緒に、
誰かの勇気になれればいいなって。
・・・あ、話が長いですね。
じゃがバター、本当においしいです!」
そういって、照れるように微笑むレイカさんに、
ためぞうは、ふと、心を奪われたような気がした。
ためぞうは、次の瞬間、
何と話しかけていいか、わからないでいる。
すると、それを察したレイカさんは、
テーブルの上に置かれた焼いもの方に目をやった。
ためぞう「あ、焼いもっすね!
ついでに、お茶も入れます。」
ためぞうは、
保温ポットからティーパックの入ったカップにお湯を注ぐと、
出来立ての焼いもと一緒に、レイカさんに手渡した。
レイカさん「美味しいから、たくさん食べちゃえます。
私、わりと食いしん坊なんですよ。ウフフ。」
レイカさんは、家の外からの視線に気付いて、
二人の方に、手を振った。
ためぞう「おお、いらっしゃい!
よかったら、お二人もどうすか?」
レミーアさん「おじゃまさせていただきます!」
ローゼさん「ためぞうさん、
私、じゃがバター食べたいです。」
ためぞう「結構、たくさん茹でているので、
遠慮せず、食べちゃって下さい。」
テーブルに椅子が二つ追加されると、
ローゼさんとレミーアさんは、照れくさい感じで席に着いた。
ためぞうは、焚き火の中から焼きいもを包んだホイルを数個取り出すと、
また新しい焼きいもの包みを中に入れた。
ためぞう「ノルンさんがダンボールで送ってきたので、
遠慮なさらず、どぞどぞ。
はい、じゃがバターになるっす。」
ローゼさん「はふはふ・・・美味しいっ。」
レミーアさん「美味いっすよね!」
ローゼさんは、白のダウンジャケットを着て、味わって食べています。
レミーアさんは、厚手のジャンバーに、ニットの帽子姿です。
わりとワイルドにレミーアさんは、食べちゃってます。
レミーアさん「マジ、美味いっす!
ためぞうさん、おかわり。」
ためぞう「たくさんあるから、いっぱい食べてね。」
レイカさんは、ほくほくと甘い焼いもを口に運びながら、
ローゼさんとレミーアさんの事を見ています。
可愛い人たちだなって、感じです。
レイカさんは、いい意味で正直なのです。
なので、正直に二人に聞いてみました。
レイカさん「お二人は、ためぞうさんが気になっているみたいですね。
でも、私も好きだったりしますよ。
お二人が告白するのをためらっていらっしゃるのでしたら、
私がためぞうさんに、
想いを伝えてもかまわないのでしょうか?」
ローゼさん「ぶはっ!!」
レミーアさん「げほ、げほっ!!」
ためぞう「ぬおぉ!?」
レイカさんは、生粋のお嬢様育ちなので、
気持ちの伝え方が、わからないでいました。
ただ、ためぞうと一緒にいることは、
長い目で見ても、素敵な想いが育つと信じられたのです。
レイカさん「だめですか?」
ローゼさん「えー、
ためぞうさんに、そういうイベントが発生した場合、
ためぞうさんの冒険どころか、
学園生活さえ終わってしまいます。」
レミーアさん「そ、そうなんですよ!(・・・そーなんですか。)」
レイカさん「あっ、それはいけませんね。
だからみなさん、想いを胸に秘めていらっしゃるのですね。」
ローゼさんはいいます。
・ ためぞうは、プレイヤー(主人公)の代打なので、
勝手に、エンディングは迎えられません。
・ プレイヤー(新勇者さんとか)が登場した時点で、
ためぞうは、とある魔王の四天王に戻らされてしまいます。
・ もしくは、タヌキさんとして、リスタート。
注) これは、ローゼさんの勝手な想像です。
ためぞうが照れています。
具体的に、幼馴染み感覚でとなりに引っ越してきた、
レイカさんを見て、照れています。
レイカさん「あ、その、・・・事情も知らずにごめんなさい。
この想いは、胸に秘めて大切にはぐくむ事にします。」
ためぞう「ぶはっ!!」
ためぞうは、ノックアウト寸前だ!
それを意識したためぞうは、
もう、レイカさんの事しか考えられなくなってしまうでしょう・・・。
ローゼさん「ためぞうさん、ごめんなさい!
行きますよ、レミーアさん。」
レミーアさん「はいっす!」
二人の乙女パワーは、彼女達を上空12000mまで舞い上げる!
横を飛んでいた旅客機に、
バンバン写メを取られまくりだが、
一心不乱に、二人は合体奥義を放ちながら、
地上へと舞い降りた!
ローゼさん+レミーアさん「スーパー=プラズマ=ハリケーン=ツインラリアットォォオ!!!」
ためぞうの自動防御 トータスの構え III が発動!
ダメージの99%をブロック! → ためぞうに、7000ダメージ!!
・・・ためぞうは、倒れた。
ためぞう「うぎゃ!!」
ローゼさんは、マッハで回復魔法を唱え、
素早くためぞうの戦闘不能状態を回復した。
ローゼさん「ぜぇぜぇ・・・ヒーロー技的攻撃からの、連続回復魔法は、
結構、堪えますわね。
私、本当にためぞうさんのお父さんに、勝った事あるのかしら。
軽くリハビリしておいた方が良さそうですわね。」
ためぞう「・・・。
あれ、みなさん。
何処かで、お会いしましたか?」
ためぞうは、微妙に記憶が飛んでいるようだ。
レイカさん「は、激しいですね・・・。
えっと、ためぞうさんは、私とローゼさんと、
レミーアさんに、じゃがバターと、
焼いもを振舞ってくれていましたよ。」
ためぞう「なるほど! 思い出したっす。」
ローゼさんは、行儀良く椅子に座って紅茶を頂いています。
勘のいいローゼさんは、
このままためぞうの隣に、
レイカさんが住んでいるのは、アブナイ事を悟りました。
何と言ってもレイカさんは、他の女子たちが持てないでいる、
告げる勇気を持っている方なのです。
ローゼさんも、言う割のには自分で勇気を出すのは、
苦手な方です。
ローゼさん「め、面目ないです・・・。」
レイカさん「ローゼさんや、レミーアさんの気持ちは、
とても優しい素敵な感じですね。
もしよろしければ、私の家に今度遊びに来ませんか。
みなさんでお話すれば、きっと楽しいだろうなって。
エリスさんの家にも、遊びに行けますし。」
レミーアさん「お泊り会は、いつでも歓迎です!
私、レイカさんとは、仲良くやれそうな気がします。」
ローゼさん「わ、私も、お邪魔しようかしら。
レイカさんから学びたい事はたくさんありますし、
ためぞうさんのとなりなのも、いいですよね。」
女子三人は、焼いもを美味しく頂きながら、
話に夢中になっています。
ためぞうは、新しく焼けたいもを取り出すと、
三人のお土産用に分けて、
急須で入れたお茶を飲んでいます。
ためぞう「ずずーっ。
ためぞうにしては、上出来だと思っています。
冒険に出る機会こそありませんが、
こうやって集まれる仲間の存在はありがたいものです。
最近、ためぞうが思うようになったのは、
オレのような中途半端なヤツでも、
この優しい日だまりの中に居れるというか、
素晴らしいこんな場所を、
守っていきたいという想いのようなものが、
だんだんと強くなっていってる事です。
少しずつでも、気付けるようになりたいと、
ためぞうは思うようになりました。」
ためぞうの上司のセリカさんが、
ためぞうのテーブルに置かれた焼いもを、
キラキラした視線で見守っています。
ためぞうは、その焼いもを持って、
セリカさんの元に行きました。
セリカさん「出来るね、ためさん!」
ためぞう「セリカさんも、気をつけて遊んでこいよ。」
セリカさん「うん、カラオケ行ってくるー。」
席へと戻って来た、ためぞうに、
レイカさんは、言いました。
レイカさん「素敵な方たちに、見守られているのですね。
私も早く、そんな輪の中に入りたいものです・・・。」
レミーアさん「レイカさんは、もうマブダチっすよ!
早速、今日からお泊りさせていただきます。」
ローゼさん「私もお邪魔いたします。
夜な夜な、みなさんのお布団の中でホクロの数でも、
数えてみましょうね。」
レイカさん「そうなのですか? 何だか楽しそうですねっ。」
ローゼさん「ぎゃふん・・・。
出来もしない事を、
軽々しく口に上らせないようにしなくては、
お嫁にいけなくなっちゃいますネ。」
そこに、お花の配達をしていた、
ファルさんが軽トラで通りかかりました。
レイカさん「こんにちはー。」
ファルさん「こんにちはー。
この前のお泊り、ありがとうございました。
楽しかったです。」
ローゼさん「えっ!?」
レイカさん「今日は、ローゼさんと、レミーアさんです。」
ファルさん「わ、私も入れてw」
レイカさん「はいー。」
ローゼさんは心の中で、
レイカさんを、恐ろしい子と思ってしまいました。
今のローゼさんでは、
いずれレイカさんに対抗出来なくなってしまうでしょう。
ローゼさんは、自分自身をがんばって! と励まします。
ためぞう「ファルさん、おやつ代わりによかったら。」
ファルさん「焼いもですか、
わー、嬉しいです!
買うの、勇気がいったりしちゃうので。
配達中に、美味しくいただきますね。」
ファルさんは、配達に戻りました。
お仕事を頑張って早く終わらせて、
レイカさん家にお泊りです。
レイカさん「ファルさん、またねー。」
レイカさん家は、立地条件が最高で、
いつでも憧れのエリスねーさんの家に遊びに行けます。
セバリオスさんは、いい物件を押さえていました。
さらに、セバリオスさんは、
レイカさんをデパートへと連れて行き、
エリスねーさんの好みを知り尽くした、店員の田中さんから、
羽毛布団などの寝具や、パジャマを揃えてもらっています。
部屋も広く、いっぱい買ったので、修学旅行感覚でお泊りできます。
ローゼさん「・・・さすが、あのアリス会長さんと、
ほぼ互角の能力をお持ちの、レイカさんですわね。
すでにラスボスとしても風格が伝わって参ります。」
レイカさん「もう、昔の話はしないでくださいっ!
ラスボスだったなんて、恥ずかしいじゃないですか。」
レミーアさん「(ラスボスだったんだ・・・。仲良くしよう。)」
ためぞう「困った事があったら、いつでも言ってくださいね。
あと、エリスねーさんいる時も言ってもらえば、
そっちに行かせますので。」
レイカさん「いつも、ありがとうございます!」
ためぞう「あ、いえいえ。」
ローゼさん「ま、負けないようにがんばります。
がんばれー、私!
では、またですー。 ^-^」