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ためぞうの冒険? 2019/01/30

2019年01月30日 13時55分33秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-
   ためぞうの冒険 - 番外編 1/19 -


ためぞう「どうやら、オレの知らぬまに『ためぞうの冒険』が、
冒険しないまま、うやむやに消えゆきそうなんだが。」

 彼の名はためぞう。
タイトルに名を冠しながら、主人公ではないという、哀れな男子学生であり、
苦労の割に不遇続きの冴えない男である!
彼は長崎副都心構想にあるモデルタウン、『長崎ドラゴンタウン』の義姉の家に居候する、
自称ティーンの怪しいヤツでもあった。

 一時は夢見た主人公という座も、キラメキに溢れ輝く周囲の存在に、我が身の程を知ると、
今は慎ましやかにバイトと学業に取り組み、牙を抜かれたタヌキのように、世渡りのみに、
その一心を注ぐ見た目も中身もごく普通の少年?である。

 そんな彼は今、平和な冒険もない土曜の昼下がりに、溜まった洗濯物を庭先に干しているが、
ピシッと張ったそよ風に揺られる布地の数々を見る限り、こういう芸には秀でているようだ。

 と、悩みもなさそうに淡々を家事をこなす彼は、内心で自分の立場にふと過った不安の一抹を抱えつつも、
手際よく洗濯かご二つ分の衣類を干し終わると、背後にその義姉の気配を感じた。

エリスねーさん「お、ご苦労さん!
あがってコタツにでテレビでも見ながら、みかんでも食って来いよ。」

 明らかに人種の違う、それはもうこのためぞうには勿体ないほどの、
ロングの黒髪の美しい美人過ぎるお姉さんが現れた!
 もうこの時点で、ためぞうに存在感などない。
端から見れば、モデル並みの容姿を備えたこのナイスバディのお姉さんの背景に完全に存在が埋没している……。

エリスねーさん「なんだ? ためぞう顔色悪いな。
お前が、つまみ食いで失敗なんか考えられんが、どーした、ほれ。
おねーさんに、悩みがあるなら言ってみ。」

ためぞう「……。
なあ、オレの物語にちと終焉を感じるんだが、間違いないかな?」

 その鋭い指摘がどうやら義姉さんのハートの奥の的を射貫いたらしく、
チラチラとよそ見をする仕草を見せて、ためぞうに答える。

エリスねーさん「あ、気付いてた?
うんとな、それスピンオフ風だから、まずは落ち着け。」

 その言葉を自分に言い聞かせるように言った綺麗なエリス義姉さん。
ためぞうの不安はやはり本物だと確信がもてる、うろたえぶりにためぞうには見えた。

エリスねーさん「うーん、まいったな。
危険察知能力だけは、今や宇宙一とも言えんでもないためぞうに、
私なんかで説明が出来るわけないじゃん!」

 苦笑いを浮かべてためぞうを少しでも慰めようとするお義姉さんに、
逆に落ち着きなよとなだめようとするためぞう。
 もはやどちらが大人なのかわからない感じだが、
ここでこの美人のお義姉さんに激しく慰められたいと常日頃より妄想している、
銀髪の長身イケメン紳士が、映画並みのCGみたいな激しい閃光をあげて、
突如、ワープアウトして来るッ!

エリスねーさん「なんかいい姉弟のシーンなのに、
何の遠慮なく、どうでもいいヤツが沸いて出たな。」

 その白いスーツのセレブな長身イケメンは、このエリスお義姉さんの上司であり、
海よりも深い愛でこのお義姉さんに張り付いている、
ラスボスも一撃で粉砕する、まさに地上の神・セバリオスさんだった。

セバリオスさん「心の友たるためぞう君の危機を感じで、
商談をほっぽり出して駆け付けたが、どうかしたのかい? ためぞう君。」

エリスねーさん「仕事してろよッ!!」

ためぞう「あ、セバリオスさん、どもっす。」

 何かに付けては、ためぞうを口実に出会いを求めてくるセバリオスさん。
 別にためぞうの心配など全くしてはいないのは、二人にはお見通しだったが、
言って帰ってくれるような素直さはないので、エリスねーさんはなんとなくスルーで話しを続けようとしたが、
お茶目にセバリオスさんがこう遮った。

セバリオスさん「ためぞう君って、冒険できるわけないよねぇ。
ほら、最強魔王のセリカさんの四天王じゃない?

 セリカさん、ガチで本気出したら私でも勝てるかわからない強さだよ。
正体が純度ほぼMAXに近い、超絶戦天使だから、どんな攻撃も無効化するよね。

 んで、ためぞうくんもそのセリカさんが見込んだ最強魔王軍の一角じゃない。
何処の異世界に行っても、そもそも魔王とか邪神の強さって、LV70~80前後程度でしょ。

 LVが端から93もあるためぞう君だと、まさに神というか、
日帰りで世界救ってコタツで晩ごはんって感じかな。

 異世界なら、いつでも飛ばしてあげるんだけど……。」

エリスねーさん「勝手に、終わらせてるんじゃねーYO!!!
ためぞうを応援するためにいるような私の存在まで、
否定すんのかよセバリオス。」

 セバリオスさんはエリスねーさんに、惚れた弱みでからきし弱い。
すでに美人でモデル業もやってる、セクシーなエリスねーさんだが、
その真の美貌を解放すると、美の女神と讃えんばかりの神々しい容姿なのを、
セバリオスさんも、ためぞうでさえ知っていた。

 ふだんはジャージでコタツにみかんのエリスねーさんも、
その正体は神の中の神『破壊と創造を司る女神・ジラ神』として、
本拠地の世界では、主神にして万能神と崇められるセバリオスさんよりも、
一部熱烈な信仰心を集める女神である為、
現地では心優しい気遣いで、主神の上司セバリオスさんを立てて控えめに露出を抑える、
そんな謙虚で慎ましい一面も持ち合わせた、至高のお嬢さんでもあった。

 そこがまたセバリオスさんをより調子にのせてしまうのだが。

 こんな超絶な、世界さえ創生してしまう二人に絡まれ、
揉まれて相手をさせらてきたためぞうが、そこらの伝説の勇者なんかより弱いハズもなく、
冒険譚の一つでも語りたい年頃であるだろうのに、ほぼ無冠のままの生活を続けていた……。

 ためぞうも若い頃は、そのなけなしの一つの称号である、
『最強魔王軍(最強を冠しているのは、必要悪として人類の仮想敵としての魔王を、
大天使セリカさんが役目を引き受けたからである。(というよりセリカさんの上司の存在Sに押しつけられたのであるが)
……とにかく、諸事情で月の環境をフレッシュな(産業革命前の)地球化し、快適この上ない拠点を根城おいて、
セバリオスさんと争っているフリを続けていた。)』

 その天下の魔王四天王としての肩書きだけを武器に、
(実際、腰にぶら下げていた武器は、ためぞうの浪費癖で質から頼んで借りた銅のつるぎ。)中々の醜態を晒し、
人々の中に紛れては透明化のマントで覗きをやったり、人の弱みを握って優位に出ようとしたりしたが、
知力が3しかないので返り討ちにあい、人々は知らぬうちに魔王軍四天王のためぞうを懲らしめる事で、
莫大な経験値を与えてしまい、旨みを知った狡猾な女性冒険者からは、
陰で『はぐれためぞう(稀にいるレアな雑魚)』として、散々な黒歴史を重ねまくっていた……。

ためぞう「勝手に人の辛い過去を語ってんじゃねーよッ!!!」

セバリオスさん「おっと、突然意味不明の解説が流れてしまったようだね。
多少の過去改変や、記憶の操作など造作でもないから、
フレッシュマンためぞう君に、今からでも上書きしようか?」

エリスねーさん「おい、逃げるな。そして、逃がすなセバリオスッ。

色んな苦い経験が今の自分を支えてるんだよ、根性なんだよ。
そんなん、いちいちリセットしてたら、進むどころか後退もいいとこじゃねーか?

過ぎたことから反省するのはいい。でもよ、それをひっくるめて今の自分を背負うってのが、
なんつーかケジメ付けてていいんじゃね?

未来も過去も考えるのは無意味だぞ、今を一生懸命だ!!
ためぞうなら、言わんでもわかってるだろうから、
これはセバリオス、お前の為に言ってんだよ。このパーフェクト無駄使い男がッ!!」

セバリオスさん「エリスが私の事を想ってくれているのをその艶のある声で聞くのも、実にいいものだなぁ。
得難い想い出もゲットしたし、この辺で私は仕事に戻るとするよ。フフッ、ハハハッ!!」

エリスねーさん「おい、こら待てってセバリオスッ!!」

 セバリオスさんは引き際も心得る、超ポジティブ紳士さんである。
中途半端にややこしくした上、満足した時点で一瞬で消え去るお茶目さんで、
この世界を最もエンジョイしている一人と言えるのだろう……。

 そんなセバリオスさんと入れ替わるように現れた、
ためぞうの上司にして大魔王のセリカさんが、玄関先でチラッと残された様子を伺っていた。

 セリカさんも、この世界をエンジョイしている不思議な勝ち組であった。
自身は強固過ぎる謎の拘束を喰らっているので、本拠地に足止め中なのだが、
そこは自分第一主義のセリカさん。

 四天王最強の暗黒騎士として知られる『マベルさん(見た目年齢16~7才の奇跡の美少女)』の重厚なフルプレートを引っぺがし、
悪霊まがいにその精神と肉体に憑依する事で、本来得られなかった有り難い美巨乳と、スタイル抜群の美しき乙女となって、
マベルさんの穢れ無き身体を勝手に使って悪事を繰り返す、どしょーもない上司さんである。

セリカさん「巨乳コンプレックスみたいに言うなっ!!」

 マベルさんに憑依しているだけあって、容姿だけは天上の天使のように美しく、
さらにその上、純真無垢な乙女な割にけしからんウルトラバディで、
この容姿に魅了されぬ者などまさに希有であろう。

 本来ならば、限界に限界を超えた英雄・勇者たちが試練に試練を重ね、
どこまで先があるんじゃい!と、キレかけた辺りでようやく辿り着けるかどうかの、
運まで持ち合わせていなければ出会う事さえままならない至高の存在。

 ・ まず、その前に立ちはだかる文武両道のイケメン四天王『ホーネル』に会わない(出かけている時に限る)。

 ・ 三バカ四天王の一人でありためぞうのマブダチ、四天王のリーダー・マイオストにも出会わない。
   (バカだが、その実力は最強四天王の一角。とんちに長けており、戦わずして相手を言葉で負かす、一応の穏健派。)

 ・ 無論、ためぞうにも会わない事。(黒歴史の塊だが、相手が野郎なら卑怯な手段で辱めようとする……。)


ためぞう「今は、改心してるって!!」


 そこまでして出会い、死闘の末に彼女に認められた時、
彼女の本来の目的である『強者の選定』にその実力が達したなら、
彼女は自ら戦闘行為を停止し、主の定め(セリカさんではない上の主)に従って、
その真の姿を、天使の微笑みを見せるのである(意思に関係なくテンプレで。)

 目前に現われし戦乙女がこうも可憐で純粋で、歌姫のような美声で問いかけてきたものなら、
これはもう漆黒の鎧に呪いをかけられていたと勘違いするのも男のサガとしても仕方ない。
無論、女性冒険者たちをも魅了する美貌が、彼女たちをドキドキ煌めかせたりもする。

 そんな中性的な魅力も兼ね備えているし、
事実、なろうと思えばマベルさんは美少年にさえチェンジも出来た(天使能力をちょちょいと使って)。

 だが、所詮セリカさんの憑依するマベルさんでは、
セリカさんのその下品さと小狡さと馬鹿げた欲望のせいで、
闇の甲冑が取り除かれても、その純真オーラは息を潜め、
スペックはガタ落ちもいいところなのだが、流石にバツグンの容姿だけは本物であった。

セリカさん「出てくる前からメンタルをボコられて、それでも出てくるセリカさんです。」

 黙っていれば、理想の君であろうセリカさんはそのショートヘアをブラウンに染めて、
おしゃれなカーキーのコートで決めているが、しっかり出てる所は主張して、本来無い胸とその美脚をアピールしている。

 ためぞうは、このややこしくどーでもいいセリカさんが、
純真無垢の乙女マベルさんに憑依したものと見ているだけで、
仲間に対する同情で痛々しい気分のもなるが、
それを出すと面倒くささが爆発するので、顔にも出さずいつもの調子でいる事にした。

 とにかく関わるとグレート厄介なセリカさんには、
適度にお小遣いを渡して退散して欲しいと願うのだったが、
エリスねーさんが余計に与えすぎるので、それもまた杞憂であった……。

セリカさん「ためさんの心の声が私の中でハイレゾで聞こえてますがッ!
的は得ているので否定はしない!! 私はお金が楽して欲しいのでぇす。」

 身も蓋もない事を堂々と言って、エリスねーさんにプレッシャーをかけるセリカさん。
こんなセリカさんを打倒するために頑張っている酒場の冒険者たちの事を思うと、
冒険ってなんだろう? という気にさせられそうになるためぞうであったが、
さすがに『冒険』という言葉を否定できない弱みも抱え、
エリスねーさんのお財布事情をチラ見で心配するように、様子を見守っていた。

セリカさん「ためさんから、たかる気はないってw」

 セリカさんはためぞうの財布も千里眼で知っている。
その小銭に興味はない!!

ためぞう「何か、いろいろ見抜けるその神がかり的能力を、
ホントどーでもいいことにセリカさんは使ってんな。

人を傷付ける事さえやらなけりゃ、まぁーそれでもいいんだが。
言って聞くセリカさんではないと、みんな知っているからなぁ……。」

 知らないのはエリスねーさんくらいなものである。
気のいい姉御キャラがもう定着しちゃってるエリスねーさんは、
ためぞうにとって、神よりも上司よりも貴重で尊い存在だが
(セバリオスさんはともかく、セリカさんなんて名を出すのもおこがましい程。)、

この人も自分が思う以上に純心で穢れないおねーさんなので、
ためぞうはそのおねーさんの真心を想って、口を控えているに過ぎなかった。

エリスねーさん「セリカさん、困ってるの?」

 ここぞとばかりにセリカさんの両眼に☆型の閃光が煌めく!!

セリカさん「……月のお小遣い三千円で、細々とやり繋いでおりますので、
ゴホゴホ……、どうかご安心下され、エリスの姐さん。」

 三文芝居でより金をたかろうとしているのは、もう見ていて痛々しいのだが、
それを迷い無くやってのける度胸だけはセリカさんにはあった。

 見れば一目で分かるブランドの服装を一つでも我慢すれば、
そう生活に困ることもないだろうに、
地上へと遊びに来た大魔王さんは、完全に現代の荒波に飲まれ、
それを乗りこなして道楽と遊興の日々を送っている。

エリスねーさん「最近は物入りだったし、バイクで遠出もしまくったから、
このくらいで足るかな? 足らないならいってくれよ、セリカさん。

ためぞうが世話になってる人だしなぁ、もっと何とかしたいんだけど。」

 とエリスねーさんがカパッと開けるガマ口の財布から取り出されたのは、
神々しき光を放つ、ピン札の万金八枚であった……。

ためぞー「ちょ、出し過ぎだって!!」

 そっと静かな動作で、その万金たちを懐へとしまうと、
深々とお辞儀をして目の前から消えるセリカさん。

 とくにダメージゼロという顔をしているエリスねーさんに、
ためぞうはかける言葉を持たなかったが、
あのセバリオスさんでさえ、絡まれてエラい目にあった苦い記憶から、
対処しかねるそんな圧倒的横暴な存在は、ただただ放置するしかないなぁと、

 世の中の出来ないことを、時折吹き抜ける寒風と共に、しみじみ感じるためぞうであった。



    つづく。

ためぞう「こんなん、まだつづくの!?」
コメント
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『セバリオスさんとルフィアさん。』

2017年02月19日 19時58分15秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-

    『セバリオスさんとルフィアさん。』


 いつでも会いに行くという約束を、

 本来、リンカさんの中に封印されている、

 黒髪の美しい乙女さんのルフィアさんに、

 約束しちゃった、セバリオスさん。


 そんな二人は、たいして時間も経たないうちに、

 長崎ドラゴンタウンにて、再会を果たしたのです。


ルフィアさん
「えぇーーーーっ!!!」


 いつの間にか、トレンドの冬コーデに着替えさせられ、

 ルフィアさんは、セバリオスさんの会社のある、

 街のランドマーク、ネクサスビルの22階へと、

 連れて来られたのです。


 そこは、勤勉な社員さんたちが、

 国際的な商取引に励んでいる職場で、

 何カ国もの言葉が交わされ、

 海外のビジネスマンさんたち相手に働く、

 国際的なオフィスでした。


 無理矢理この場所へと召喚され、

 秘書のセリスさんに着替えさせられた、

 ルフィアさんは、そのノリに面を喰らったような感じで、

 何も言えずにただ、立ち尽くしています。


セバリオスさん
「ルフィアさん、お久しぶりですっ。」


 大企業のトップであるセバリオスさんが、

 直々にゲストをもてなす姿なんて、

 社員さんたちも、海外のビジネスマンさんも、

 ほとんどの方が、初めて見る光景です。


 セバリオスさん、普段たいして働いていませんので・・・。


ルフィアさん
「・・・これは、

 どういうおつもりですか?」

 すると大きな鏡を持ってきたセリスさんが、

 その鏡にルフィアさんの姿を映し、

 こう言ったのです。


セリスさん
「お気に召しませんでしたかー?


 ほら、周囲の殿方の視線を、

 一手に集めているですよー♪」


 確かに、セバリオスさんの手前、

 社員さんはチラ見が限界ですが、

 海外の方たちは、ルフィアさんのその可憐な美しさを、

 大絶賛しているのです。


ブラザーA
「OH-! ビューティフォーガール!!」


ブラザーB
「コノ レディーハ、

 ホォワーーイッ!?

 何処ノ素敵ナ、ゴ令嬢サマデショウカ?」


 女性として、これほど好意の視線を集めた事など、

 ルフィアさんは初めての経験です。


 また、映し出された自分の姿に、

 驚いてもいる様子です。


 そんなルフィアさんは、セバリオスさんの耳元で、

 どうして封じられている自分が、

 ここに平然といられるのかを、


 少しもじもじした感じで、

 こそばゆいように小声で尋ねたのです。


セバリオスさん
「ハッハッハッ!!

 それはこの私の『最大限界』のスキルの成せるワザだねっ!!」


 セバリオスさん、声大きいです・・・。

 周囲の方たちは、あえてその言葉を、

 聞かないような素振りを見せています。


 知ってしまうと、いざ実家へ戻る時に、

 その情報源として、恐るべき方々たちに、

 拘束される可能性があるのですっ!!


ルフィアさん
「なるほど、

 あの強固な結界が、私の力の暴走を、

 こんなにも容易く押さえ込むのですか・・・。


 それで、確かに再会は楽しみにしていましたが、

 まさかこんなに早く叶うとは思いませんでしたが、

 何か急ぎの用でもあったのですか?」


 セバリオスさんが近くにいると、

 何だかちょっと落ち着きを感じるルフィアさんです。


 彼の能力の範囲内にいれば、

 この世界を傷付ける事無く、安心して留まる事が出来るからです。


セバリオスさん
「ちなみに今、効果の有効範囲は、

 この星全体にしてますので、そこはお気になさらず~。」


ルフィアさん
「ひろッ!!!」


 思わず口に出て、少し照れた感じを誤魔化している、

 そんなルフィアさんが、

 どうやら、殿方にはたまらないようです。


ブラザーA,B、C
「グッジョブ、ミスターセバリオスッ!!」


 そんな中、ルフィアさんに外の世界を見せたいと思う、

 セバリオスさんが、秘書のセリスさんを呼んで、

 何やら相談し始めました。


セリスさん
「ルフィアさんが本名を名乗るのは、

 古蔵さんにとって、健全ではないのですー。


 もう可愛い愛称とか、付けてしまうしかありませんねっ!!」


セバリオスさん
「なるほど、確かに婚約者に逃げられた古蔵君に、

 その婚約者の名を語るのは、

 ルフィアさんに迷惑がかかってしまうかも知れないね。


 ということで、ルフィアさん。

 何か呼ばれたい愛称とかあったりしますか?」


 話が見えないまま、いきなり振られたルフィアさんは、

 そんな事を言われても、返事に困ってしまいます。


 それをさも待ち受けていたかのように、

 セリスさんが、愛称の書かれたボードを、

 後ろから、ひょいっと取り出してみせます。


セリスさん
「ささ、遠慮なさらず選んでみて下さいねっ。」


 この時!

 何かの強制力のようなものが、

 その申し出をルフィアさんに、頷かせますっ。


ルフィア
(!? この得体の知れないプレッシャーは何ッ!!


 ・・・か、勝手に目線がボードへと、

 吸い込まれるッ!!!)


 この時、ルフィアさんは、

 力以外の、もっと恐るべき何かが、

 それを選べと、まるで自身の身を守るように、

 従わなくてはならないと感じます。


 それは、ルフィアさんにとって、

 新たな脅威を、第六感のようなもので感じたような、

 世界の奥行きを知った瞬間でした・・・。



◇ 通り名を、選んでみてねっ♪


 → ・ 港の『キャシー』嬢

   ・ 花園の『百合重(ゆりえ)』様

   ・ 渚の『ジェシカ』さん

   ・ 熱血の闘将『リンダ』中将

   ・ 青春の帰国子女『ギャラクシー』マークIIIさん

   ・ 第三のラスボス『ルフィ子』さん

   ・ 選ばれし女勇者『ルフィアン』殿



ルフィアさん
「!? ・・・。

 (どれも選ぶ気にはなれないですョ!!!

  こ、困りましたね、


  でも、このプレッシャーには、
  
  あのセバリオスさんでさえ、一目置いている事だし。)」


セバリオスさん
「ほら、ボードの端っこの、

 ちっちゃいのも、ちゃんとみてねっ。」


 なんと、セバリオスさんは、

 7つもの選択を出現させたセリスさんに、

 さらに+1の選択を加えていたのですっ!!


 そんなこと、常人でも超人でも、

 例え覇王でも、

 セリスさんの脅威の知力、

 『98(+10回の計略上書き。)』という、

 圧倒的な策謀を、超えなくては無理な話です。


 セバリオスさんは、いい仕事しますネ。


 ☆ その+1の選択。


   ・ 『ルフィア』さん

     (古蔵君の知人とは違う、同名の乙女さん。

      有効期間は、古蔵さんがセバリオスさんを超えるまで。)



ルフィアさん
「では、+1の選択の『ルフィア』で、

 お願いしますッ!!」


 こうしてルフィアさんは、

 そのままルフィアさんとして、

 この長崎ドラゴンタウンに舞い降りたのです。


 ・・・当然、『ルフィア』さんといえば、

 ある一部の人たちには、有名人ですので、

 きっと、騒ぎの一つや二つ、

 起こると思われますが、


 セバリオスさんにセリスさんという、

 最強の戦士と至高の軍師さんのおかげで、

 そんなに荒波立てずに、過ごせるような雰囲気です。


  ◇ 『ルフィアさん(初代)のこれまでの実績。』


   ・ その名は天下に轟く女傑さんで、

     世紀末覇王伝説の最高の英傑のお一人です。


   ・ 武力100という脅威の強さで、

     セバリオスさんにも匹敵する文武両道の姫将軍さんです。


     彼女を相手に矛を交える事が出来る英雄さんなんて、

     天下広しとはいえ、数える程もいないくらいでした。


   ・ あの古蔵さんがフィーバーなバブル時代、

     彼の実家を覇王最大級にまで育て上げた、

     凄まじい武勇伝があり、


     どこの覇王さんも登用したいと願う、

     とても出来たお嬢さんで、

     さらに容姿端麗という、非の打ち所のない女性で、

     姫将軍ランキングで、堂々の殿堂入りを果たした実績もお持ちです。


   ・ その後も、何処かの「グランドクロス」という、

     銀河最強軍団に、エースとして在籍したり、

     新たなフロンティアで、六極神の第一位にランクインしたりと、

     その英雄譚は、おとぎ話で語られるレベルにまで達しています。


   ・ どういう訳か、現在は『リンカ』さんとして、

     とあるジャパンという国に転生し、

     その強力過ぎたステータスで、双子として誕生しています。



ルフィアさん
「・・・。


 知りませんでした、

 プ、プレッシャーになりますね。」


 そんなルフィアさんの隙に付け込むように、

 セリスさんが、何やら色々吹き込まれているようです。


ルフィアさん
「!? ・・・。

 色々と教えていただき、ありがとうございますっ!!!」


セリスさん
「いえいえ~、

 いつでも気軽に、声をかけて下さいネッ♪」


 どうやら、キラメキ青春ライフの事を、

 セリスさんから吹き込まれたらしく、

 ルフィアさんの異性を見つめるその瞳に、

 なんだか恥じらいのようなものが見て取れます。


 その白肌の端正な顔立ちの頬が、

 少し桜色に染まっている感じで、

 かなり可愛らしく見えますが、


 リンカさんと双子設定ということは、

 年齢は15才という事になりますので、

 年のわりには、凄く大人びて、

 お美しいという感じですねっ♪

 はっきりいって、とてもナイスバディさんです。


 その辺が、どうやらセリスさんに、

 気に入られた理由の一つみたいです。


 いいように、策を巡らされている感じではありますが・・・。


セバリオスさん
「ということで、一度外に出てみてはと思うのですが、

 ルフィアさんは、それでいいのかな?」


ルフィアさん
「あ、はい。

 ・・・よろしくお願いします。」


 後の事は任せて下さいと、セリスさんは、

 セバリオスさんに意気込んで見せています。


 ・・・きっと残された社員さんや、

 海外のビジネスマンさんは、


 豹変するセリスさんの、

 凍り付くような、その強烈な本性に振り回され、

 春の訪れも、もう僅かだというのに、

 今年一番のブリザードに、見舞われる事でしょう。


 こうして、外の世界へと初めて出たルフィアさんは、

 広がる澄みきった空と、緑豊かな街並みに、

 思わず見入ってしまいました。


 まだ、風は少し冷たいですが、

 その艶やかな黒髪を揺らす感じは、何とも心地よく、

 ほんの少しですが、潮の香りも感じられます。


 この時ルフィアさんは、

 世界の美しさと言うものを、

 言葉では言い表せないような想いで、

 その胸の奥に感じました。


セバリオスさん
「さて、ルフィアさん。

 何処か行ってみたい希望とかあります?」


 そう言われても、

 ずっと鳥かごの中ような狭い場所で、

 眠っていたルフィアさんには、


 何処に何があるかなんて事はわかりませんし、

 そういう目線で、何かを見る事も初めての事なのです。


 そのあまりの強さ故に、忌み嫌われるように封じられ、

 自由というものを手にした事のなかった彼女にとって、

 今、この瞬間も驚きの連続で出来ていたりします。


 改めて思えば、彼女はとても不幸な女性でした。

 ですが、彼女はそんな事は一切気にしてはいませんし、

 どちらかといえば、前向きな一人の女の子です。


 セバリオスさんという、

 彼女の暴走する力を、完全にコントロール出来る、

 そんな彼との出会いは、

 彼女に訪れた幸運と言ってもいいのでしょう。


 そこを意識してか、今のルフィアさんは、

 セバリオスさんにたいして、とても恩義のようなものを感じて、

 出来るだけ迷惑をかけたくないという想いが先走りしてか、

 言葉使いが、以前よりも丸くなったように感じられます。


 二人は並木道を少し歩きながら、

 特に会話するような事もなく、


 ルフィアさんは興味深げに、

 その黒く美しい瞳に風景を映しながら、

 何処までも遠く開かれた世界に、

 感じる生命の力強さをその肌で感じながら、


 少し嬉しそうな笑みを浮かべて、

 渇いていたその心が、水を吸うように満たされ、

 様々な事を学んでいるようです。


 この美しい世界を傷付けないようにしてくれた、

 頭一つ背の高い、セバリオスさんを、

 横目で少し眺めると、


 いつの間にか、常に張り詰めていた緊張感が、

 緩やかにとかされていくのを、

 胸の鼓動の高鳴りと共に感じ、


 それを悟られまいと、紅がさした頬を見えないようにして、

 散策を楽しんでいるのでした。


セバリオスさん
「ところで、ルフィアさん。

 何処か行ってみたいとか、あったりします?」


 そのセバリオスさんの問いに、

 言葉を詰まらせるルフィアさん。


 今でもたくさんの物を理解しようと、

 やや戸惑い気味な上、

 行きたい場所どころか、何処に何があるのかさえ、

 わからないルフィアさんに、

 その時、セリスさんがコソコソッと囁いた、

 幾つかの言葉が、スッと頭を過ぎったのです。


 どう答えていいかわからないルフィアさんは、

 セリスさんの言った事を、

 そのまま、セバリオスさんに伝えたのです。


ルフィアさん
「(確か、デートでしたね・・・。)


 えっと、

 お食事が出来る高級ホテルに行って、

 楽しい時間を過ごして、


 ・・・その後、

 セバリオスさんが予約したお部屋に行って、


 セ、セバリオスさんと私との、

 愛の結晶を授かるというか、

 そういった感じなのでしょうか?」


セバリオスさん
「ぶっ!?


 それ、思いっきりエンディングとか、

 すっ飛ばして、

 その後のエピローグになってるよね・・・。


 お、落ち着くのだ私。

 ルフィアさんの口から、そんな直球ど真ん中の、

 言葉がどうして出てくる。」


 めずらしく、セバリオスさんが動揺しています。


 もしや、とんでもない事を発してしまったのではと、

 ルフィアさんも顔をいっそう赤らめて、

 下を向いてしまいます。


 ですが、セリスさんの願う、

 面白い展開に巻き込まれてしまっては、

 上司のセバリオスさんは、

 彼女に頭も上がらなくなってしまう事でしょう・・・。


セバリオスさん
「(こんな試練の数々を、

 ためぞう君は、乗り越え続けているのかぁ・・・。


 ああ、マジでリスペクトしてしまうよ。)」


 セバリオスさんの予想通り、

 周囲には助け船を出してくれそうな人物どころか、

 人影一つ確認する事は出来ません。


 セリスさんの策略に抜かりが無いのは、

 セバリオスさん自身が、一番良く知っているからです。


 声の届く距離に見えるのは、

 セレブの中で有名な、高級ホテルの送迎車が一台のみです。


 ルフィアさんは、身体さえ火照らせるような、

 恥ずかしい思いで、セバリオスさんの言葉を待っています。


 実はセバリオスさん、

 女性にいくら憧れられても、そのパーフェクトさが災いして、

 女性から声がかかった事など、

 過去の一度もなかったのです。


 ・・・当然、そこだけは免疫なんてありません。


 さらに言うなら、その眼前で答えを待つ乙女は、

 この地上に舞い降りた、絶世の女神のように、

 可憐で清らかな、美しい女性なのでぇす!!!


 セバリオスさん包囲網は、どんどんと狭められ、

 送迎者の運転手さんの微笑ましい笑顔さえ、

 セバリオスさんの脅威となっていますっ。



ルフィアさん
「・・・。

 あ、あの・・・。」


 その先の言葉をルフィアさんに言わせた時点で、

 セバリオスさんの敗北が決まります。


 仮に彼女がその身を引いてしまっても、

 忘れえぬトラウマとなって、

 セバリオスさんのそのパーフェクトさを、

 見事に粉砕する事でしょう・・・。


 その額に、焦りの汗が流れたセバリオスさんに、

 突然、何処からともなく言葉が溢れ、

 素晴らしい『とんち』を授けるのですっ!!!


セバリオスさん
「(!?

 ためぞう君のトランシーバーなのかッ!!)」


 そして、奇跡を得たセバリオスさんは、

 ルフィアさんに顔を上げるように告げて、

 堂々とこう言って聞かせるのです。


セバリオスさん
「ルフィアさんは、確か15才だったよね。


 そういう先の話は、16才になってからでも、

 いいと私は思うんだ。

 でないと、私が無責任という事になってしまいますよね。」


ルフィアさん
「あっ、そうでしたねっ!!


 順番を間違えてしまって、すいません。」


 そういうルフィアさんは、

 急に極度の緊張から開放されたのか、

 とても優しい顔になりました。


 でも、高鳴る気持ちの心地良さだけは、

 しっかりと今も感じられるのです。


 そんな天上の微笑みを見せられては、

 セバリオスさんでも、

 思わず道を踏み外してしまいそうな気持ちにさせられますが、


 遠くから親指を立てて、グッジョブ! と送る、

 送迎車の運転手さんに、何処かフフッと笑わされてしまう、

 セバリオスさんでした。


セバリオスさん
「でも、お食事だけでもご一緒したいのですが、

 あちらに車も見えている事ですし、

 良かったら、貴女を招待させていただけませんか?」


ルフィアさん
「はは、はいっ!!」


 こうして二人を乗せた車は、楽しいドライブの後に、

 二人を素敵なディナーへと誘ったのです。



セバリオスさん
「この感謝は、忘れないからねっ!

 ためぞう君っ!!」



 こうして、この長崎ドラゴンタウンの地に、

 ルフィアさんという新たなヒロインが加わったのでした。



遠くの海のエストさん
「・・・。


 私、戦力外にはならないからねっ!!

 もっと、レベルアップして、

 返り咲いてみせるんですからーーーっ!!!」



               つづく・・・。
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番外編 『戦うセバリオスさん!』

2017年02月03日 18時27分48秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-

   - あらすじ -


 謎のワナにはまったローゼさんと、

 その場に居合わせたリンカさんを、

 安全に、お家まで送り届けたセバリオスさん。


 そして、その場に残った、

 セバリオスさんのお話です。



   番外編 『戦うセバリオスさん!』



 まやかしの大地に留まったセバリオスさんは、

 その手を天高く突き上げ、

 巨大な雷雲を呼び寄せると、


 雷光を帯びた巨大な雲によって、

 この禍々しい、仮想世界全体を覆い尽くします。


 その轟雷は、天地を引き裂く激しさで、

 幻惑を打ち砕き、

本来の荒れきった大地が、その姿を露わにして行きます。


 するとそこには、

 この世界には存在してはならない、

 次元の裂け目が姿を現わし、


 開かれた扉からは、邪気に満ちた黒い闇の力が、

 荒廃した世界へと、溢れ始め出すのです・・・。


セバリオスさん「さて、

        そろそろ出て来てはもらえないでしょうか?」


 幾千を超える無数の雷撃が

 セバリオスさんの周囲を取り巻くように、

 莫大な高電圧の塊に変化していきます・・・。


 目も眩む光となったその雷光の球体は、

 闇を現わし始めた大地を、小太陽のように眩く照らすのです。


 セバリオスさんが、その青白い閃光の中へと、

 全身を飲み込まれると、


 次の瞬間、神々しいほどに美しい、

 蒼白に煌く重厚な甲冑をまとった、

 恐るべき『雷帝・セバリオス』として、

 この地へと顕現したのです。


 瞳に蒼い雷光を宿すセバリオスさんは、

 その右手に幾重にも厳重に鎖で拘束された、

 一本の長いつるぎを、強く握っています。


 そして、青白い電光に照らされた大地で、

 鞘に納まったままのつるぎを振り上げ、こう叫んぶのですッ!!


セバリオスさん「では、こちらから、

        行かせて頂きましょうっ!!!」


 天井方向に向かって突き上げた、鎖で繋がれたつるぎを、

 セバリオスさんが、勢い良く振り下ろすと、

 なんと、闇が溢れ出した次元の狭間を、

 真っ二つに引き裂いたのですッ!!


 ・・・大きく十の字に開かれた、次元の狭間。

 そこへと吸い込まれてしまえば、ローゼさんやリンカさんでは、

 一巻の終わりだった事でしょう。


 二つの切裂かれた次元は、星さえ押し潰す強力な重力場で、

 元に戻ろうと互いを引き合おうとしますが、

 それを、セバリオスさんのつるぎから放たれる、

 その驚異的なまでの高電圧の壁が、

 より激しい閃光を上げながら、狭間を拡大させて行くのです。


 何億ボルトあるかもわからない雷帝の鉄槌が、

 溢れ出た闇さえもかき消しながら、その範囲を支配下に置きました。


 さらに強力な雷撃で、次元の裂け目の奥までも、

 セバリオスさんは、一掃しようとするのですっ!!


謎の女性の声「フフフッ、

       この私をどうにか出来ると思っている、

       その慢心をひねり潰すのも一興か。」


 刹那、その次元の裂け目は消失し、

 放たれる雷撃を打ち消しながら、

 一人の女性剣士が、涼しい顔をして姿を現すのです。


セバリオスさん「予想通りに、貴女であったか。


        美しい清流のような錬気を感じる、

        流石は、伝説で語られるだけの存在と言った所だ。」


 スレンダーな体付きに、

 肌に吸い付くような、黒のレザースーツを身に着けた、

 端正な顔立ちの若い女性。


 雷光を纏うつるぎを手にしたセバリオスさんを前にして、

 その彼女は、丸腰で静かに微笑んでいます。


 二人の距離は、わずか10m。

 一太刀で、間合いを詰められる距離にあって、

 その長い髪の女性は、セバリオスさんにこう放つのです。


謎の女性「我が名は、『ルフィア』。


     貴様も名を告げよ。

     さすがに、片付けるとしても、

     その名くらいは、記憶の隅にでも慈悲で残しておいてやろう。」


 ルフィアを名乗る女性がそう言った瞬間、

 彼女のその長い髪は、紅蓮の炎よりも赤い色へと、

 変化していきます。


セバリオスさん「では、その光栄に甘えて、

        名乗らせてもらうとしよう、美しき孤高の戦姫よ。


        我が名は『セバリオス』。

        争いなど望んではいないのです。


        ですが、話にもならぬなら、

        神の如き強さの貴女を、満足させられるかは知れませぬが、

        全力を以って、お相手するといたしましょう。」


 赤い髪のルフィアは、その名を聞いたとたん、

 きょとんとして、噴出すようにこう問い返すのです。


ルフィア「セヴァリオスだと?


     さて、私の知るその男とは、

     まるで別人のようであるが、

     何故に古の神の名を語るのか、フフフフフッ。


     まあ良い、

     ならばその名に相応しいだけの実力を、

     見せてもらうとしようかッ!!」


 一閃が大地を駆け抜けると、

 ルフィアは鋭い片刃のつるぎを出現させ、

 セバリオスさんの背後へと回り込んでいます!


ルフィア「ほう、我がつるぎを避けたのか?


     口だけかと思えば、それなりの力は備えていたか。」


セバリオスさん「そう認められたのならば、

        身に余る賛辞と心得ましょう、美しき姫君。」


 その瞳の色を、より強く光を引く蒼へと変えるセバリオスさん。

 と、同時にその重厚な甲冑を解除して、

 内に着ていた軽装の白のアクトン(布製の防具)のみにして、

 ルフィアの速度にその動きを合わせるのです。

ルフィア「なるほど、

     光速を超える我が一閃に対する為に、

     関節の稼働域を縛る、無駄に重いだけのガラクタを脱ぎ捨てたか。


     フフッ、

     その深淵を見る瞳まで操れるとはな。」


 ルフィアの鮮血のような赤いその眼差しは、

 光という、酷く鈍いものを捉えてなどいません。


 より高速に加速された、粒子とフォースを視覚情報として、

 認識することで、彼女は高速を超えるその速度を実現しています。


 セバリオスさんが捉えたルフィアのスピードは、

 光速の約10倍、秒速300万kmです。


 常識や限界を完全に無視した、

 恐るべき敵、『最強のルフィア』と対峙する為に、

 セバリオスさんは、彼女の域までその身体能力を高めるのです。


 そんなセバリオスさんに、

 直接声が身体に届くようなテレパスが、

 ルフィアから送られて来ます。


ルフィア「やはり、限定的にダークフォースを発生させ、

     時と重力を操る能力に長けているようだな。


     この程度の速度、蚊が止まっているようなものだが、

     僅かなダークフォースの痕跡させ、この世界に残さぬとは、

     それが貴様の獲得した『戦士能力』というワケか。


     だが、本物のヤツ(セヴァリオス)の実力は、

     こんなものではない。

     あいつは、たかだか一つの世界の崩壊などに、

     気を使うほど、お人好しではないぞ。


     フフッ・・・。」


 セバリオスさんも、ルフィアも、

 超光速状態時は、通常世界の中で異次元をその身に纏わせ、

 物理的な不可能を可能にしています。


 わずかな時間に重ねられるその攻撃回数は、

 数十万撃を数え、

 二人はつるぎを交える感覚すら感じる事もなく、

 次の攻撃に移る予測のみで、その先を異次元化しています。


 禁忌とされる力「ダークフォース」は、

 完全に制御出来るものにとって、

 ただの強化の一つの手段に過ぎません。


 セバリオスさんも、ルフィアも、

 この状態にあるだけで、すでに太陽すら超える巨大なパワーを、

 その身に宿し、ぶつけ合っていますっ!


ルフィア「もっと早く動いてやろうか?


     秒速10兆kmほど速度で動けば、

     いくら貴様がこんな朽ちた星一つを守ろうとしても、


     展開させた異次元が、その制御に耐え切れず、

     星と共に塵と化すしかあるまい。」


セバリオスさん「さて、思い通りに行くでしょうか?

        どうやら貴女は、完全体にはほど遠い。

        『最強』と称えられたあのルフィアでは、

        ないようだ。」


ルフィア「何だとッ!?」


 セバリオスさんの挑発に乗せられたルフィアに、

 わずかな隙が生じます。


 投槍のように、その鎖で縛られたつるぎを、

 ルフィアの次の移動地点に、

 勢い良く投げ飛ばしたその瞬間、


 ルフィアが、グッ!っと、

 苦虫を噛み潰したような表情になると、


 投げられたつるぎは、ルフィアの真横を瞬く間にすり抜け、

 まるで何かの壁にでも突き刺さったように、

 ガラスを割ったようなヒビ割れを、

 何もないハズの中空に刻んだのですッ!!


ルフィア「おのれッ!!」


 そう叫んだルフィアを、

 まるで拘束するかのように、


 空気の壁に突き刺さったつるぎに向かって、

 無数の鉄鎖がクモの網のように伸びて行きます。


 鋼鉄のように、鈍い光を放つ鎖の群れは、

 ルフィアの斬撃すら弾き返す強度ですッ!!


 しかも、さらにその数を幾重にも増加させ、

 三角錐状の巨大な鉄塊へと変化して行くのです・・・。


ルフィア「これで私を捉えたつもりかッ!?」


 ルフィアは怒りを窮屈な檻にぶつけるかのように、

 その内に秘めるパワーを増大させて行きますッ!!


 まるで理性を無くした獣のように、

 ギラついた瞳で、鉄鎖の向こう側のセバリオスさんを睨み付け、

 もはや、その力は禁忌を越えて、

 破滅すら感じさせる狂気で、全身を包み込んだのです・・・。


セバリオスさん「だから、私は貴女が完全体ではないと、

        言っているのだ。


        その限界を超えた力を安易に使う危うさと、

        愚かさといい・・・。


        つまりは、『最強のルフィア』の気高さが、

        僅かでも感じられれば、

        私はその剣を抜かざるを得なかっただろう。」


ルフィア「言っていろ、

     すぐに、貴様ごと全てを消し去ってくれるわっ!!!」


 ルフィアの握るそのつるぎが、闇と光に呑まれながら、

 溶けるように湾曲していき、

 彼女を中心に、おぞましい漆黒の飛沫が、

 空間を引き裂くように、撒き散らされて行きます。


 ですが、超高熱の蒸気を周囲に噴出しながら、

 原型すら失い始めた、その醜いつるぎを、

 いくら憎き鉄鎖に叩き付けようとも、

 ビクともしない鉄鎖の群れは、


 さらにルフィアを追い詰めるかのように、

 つるぎに向かって周囲を埋め尽くすように、

 鈍い光を放つ重たい鎖が、その数を増して行くのです。


セバリオスさん「私なりに、貴女を理解しているつもりですが、

        貴女はまだ『ルフィア』の名を名乗るには、

        不完全だと、お分かりいただけませぬか?」


ルフィア「・・・何を言っている。」


 そのつるぎすら、鞘から抜くことなく、

 ルフィアを追い詰めたセバリオスさん。


 少し寂しげな表情をしたセバリオスさんは、

 ルフィアの拘束を緩やかに解くと、

 空間に突き刺さったつるぎを抜き、

 そのつるぎを腰のソードベルトへと納めたのです。


 二人が元の通常世界へと戻った瞬間でした。


 もう、ルフィアからは抵抗する姿勢が感じられません。

 そんな彼女に、彼はこう語りだしたのです。


セバリオスさん「このつるぎを拘束しているのは、

        私自身の意思です。


        普段はレプリカを用いてはいますが、

        貴女と対峙したと同時に、つるぎも本物と、

        入れ替わってしまったのです。


        このつるぎの名は『ラグナロク』。

        預言者セラは、私に告げました。


        - ラグナロクは、世界の終わりを告げるつるぎ。

          一度抜けば、世界を巻き込む最終戦争が始まるでしょう。 -

        、と。


        故に、奇跡とも言える戦士の力の資格を、

        私の知る創世主から授かりし時に、

        つるぎを封じる為に願った力が、

        この戦士能力『最大限界』なのです。


        私の能力の発動下においては、

        破滅的な力を秘める貴女の憤怒をも、

        封じる事が出来るのです。」


ルフィア「フフッ、

     そういうカラクリか。」


 荒れ果てた赤銅色の大地に、

 膝を折って、息を荒くするルフィア。


 その髪の色は、燃えさかる灼熱の紅蓮から、

 次第に美しい黒髪へと変わり、

 碧眼輝く、端正なその表情は、

 何処か少しだけ、満足そうに笑んでいるようにも見えました。


 ルフィアが長身のセバリオスさんを、

 ゆっくりと見上げると、

 彼は一瞬、どうしていいのか分からず、

 その胸の奥に、決して哀れみの表情のようなものは見せてはいけないと、


 彼女を気遣うような顔をして、

 こう語りだすのです。


セバリオスさん「貴女がこうやって、

        もう一人の自分を否定しようとしたのは、

        これが二度目になりますね。


        前回のバルマード王や、今回の私の事を、

        憎く思われても仕方ないかもしれません。


        これは以前、貴女たちが一つの『ルフィア』だった頃の、

        その彼女の願いと聞き及ぶのですが、


        偶然とはいえ、知り得た以上、

        貴女には、伝えておく必要があると、

        私は、思い至った次第です。


        ・・・こうなる事を、

        何者かが意図した事かも知れないと、

        そう感じるのは、否定しません。


        ただ、貴女が望まれないのならば、

        これ以上の口を慎む事にします。」


 そう話すセバリオスさんは、

 ただ、黒髪の乙女の事を純粋な思いで、

 大切にしたいと、

 そんな真摯な彼の姿勢が、

 ルフィアの瞳には映ったのでした。


 彼女は、もう一人の自分、『凜花』とは違い、

 何者からも恐れ慄かれ、

 こうして、誰かと向き合って話す機会など、

 過去の一度もありませんでした。


 破滅的過ぎるその『力』は、禁忌のように扱われ、

 封じられ、自由を奪われ、

 いつ覚めるかもわからない、永遠に等しい眠りを、

 強いられて来たからです。


 時の流れを奪われた彼女には、

 もう一人の自分である凜花が、

 どれほど苦しい思いをして、硬く閉ざされた人々の心を、

 開いたのかというその事実すら、

 知ることは出来ないのです。


 違う道に分かたれた二人、

 そんな彼女が、自由を求め、

 受け入れてくれない世界に抗ったとして、


 はたして、そんな彼女の事情を知ったとしたら、

 その彼女を咎める事は、

 本当に正しい事だと言えるのでしょうか・・・。


 やり場のない思いで、彼女が葛藤していたとしても、

 誰もそんな彼女に手を差し伸べる者は、

 これまで、誰としていませんでした。


 ですが、その彼女を恐れる事もなく、

 理解しようと悩み、言葉を交わそうとする、

 一人の青年のその姿が、


 彼女の見上げるその先に、

 今まさにあるのです。


 黒髪のルフィアは、そんな彼に向かって、

 こう言うのです。


ルフィア「フフッ・・・、

     そんな事、知りたくもないといったら、

     強引にでも、この身を封じるつもりか?」


セバリオスさん「そう望まれるのなら、

        私はこの場を立ち去ることにします。」


ルフィア「同じ事を繰り返せと、

     言っているようにも聞こえるが。



     フフッ、

     一度、つるぎを交えた相手に、

     後れを取るとは、思わぬ事だ。」


 口では強がるルフィアですが、

 この場ですぐに、彼と争おうという気配は微塵も感じられません。

 二人の間に、暫しの時が流れます・・・。


 荒廃した大地の水平に、陽が落ちて行くその時も、

 背後から赤く照らされた、セバリオスさんは、

 ただじっと見守るように、ルフィアの言葉を待っています。


ルフィア「立ち去れと言わなければ、

     ここでじっと、そうしているつもりなのか。」


 その問いに、セバリオスさんは、

 彼女と視線を同じにするように、

 ゆっくりとその膝を突き合わせます。


 夕陽があめ色のように流れる、
 セバリオスさんの長く美しい銀髪が、

 ルフィアの頬を撫でるような距離にあります。


 彼の端正に整った顔を目の前にして、

 ルフィアは、その胸の奥に何か温かいものが溢れるのを感じ、

 どうしていいかも分からず、思わず視線を逸らしてしまいます。


 その感覚が、ルフィアには何なのかを知りませんが、

 決してそれは、嫌なものではなかったのです。


 沈黙してしまったルフィアに、

 吐息がかかるようなそんな距離で、

 こう、セバリオスさんは言うのです。


セバリオスさん「・・・出来れば、この私に、

        また貴女と語り合う機会を頂けないでしょうか?」


 その時、ルフィアは彼のその言葉を、

 すぐに否定する事は出来ませんでした。


 これまで、邪神のように恐れられてきたその身を、

 遥かに上回る実力を持ちながら、

 その行動は、とても自分を気遣うような態度で、


 そんな彼からは、

 言葉だけのうわべだけの人々とは違う何かを、

 ルフィアはその身に生まれて、

 初めて感じさせられたのです。


 彼女がそれが何なのかを知るのは、

 もっと先の事になるでしょう・・・。


ルフィア「・・・。


     好きにすればいい。

     私の行動や考えが、誤っていた事は、

     素直に認めよう。


     フフッ、

     私の知らぬ事が、この世界には、

     きっと溢れているのだろうな。


     自分が無意識に作り出した殻の中で、

     わかったような気になっていた自身が、

     今は愚かだと気付かされた。」


 ルフィアはセバリオスさんと視線を交わすと、

 すっと立ち上がり、

 その美しい黒髪を風に流しながら、

 彼にこう言うのでした。


ルフィア「では、私は元の場所へと帰るとしよう。

     いつまた会えるかは分からないが、


     その時は、あの空の向こうに広がる世界の事など、

     語り合ってみたいものだな。」


 そう残して、彼女がこの場から、

 いつ醒めるともわからない、

 停滞した時へと戻ろうとしたその時、


 彼女よりも遥かに頭一つ以上高い、

 セバリオスさんが、それを制止するように立ち上がって、

 こう言うのです。


セバリオスさん「私からでよろしければ、

        いつでも貴女の元へ駆けつけます。


        そうしても、よろしいですか?」


ルフィア「フフフッ・・・、

     では、こちらも待たせてもらうとしよう。


     気遣いなどいらぬので、

     暇な時ににでも訪れるといい。」


 そう言って振り返るルフィアは、

 何処か微笑んでいるようにも見えました。


 彼女はすぐに理解したのです。

 彼ならば、封じられたその内なる世界にさえ、

 訪れることが出来るという事を。


 かげろうのような光の中に、

 立ち去って行くルフィアの姿を、

 セバリオスさんは、ただじっと見送ります・・・。


 逢おうと願えば、

 何時でも再会出来る事を知って立ち去った、

 ルフィアのその心の中に、


 一輪の綺麗な花が咲いたような想いを、

 セバリオスさんは感じ取ったのでした。


 陽が落ちて、夜の帳に包まれ始めた荒廃した大地に、

 一人残ったセバリオスさんを、

 この星を回る月とは違う、


 突如として現れた、もう一つの輝ける月が、

 その大地ごと、まるで日中のように、

 セバリオスさんを照らし出すのです。


セバリオスさん「来たか、フォーリナ。」


 天空を覆い尽くすほどに、巨大に迫ったそれは、

 セバリオスさんが所有する、

 この大銀河に幾つと存在しない、


   『星々を駆ける者』


 の、その証となる「機動要塞 フォーリナ」でした。


 セバリオスさんは、フォーリナに、

 この星の再生の命を下します。


 すると、荒れ果てていたその大地から緑が溢れ出し、

 人の手によって荒らさせていない、

 美しい蒼い星として、蘇って行くのですっ!


 その光景はまさに、『奇跡』でした。


 世界は失われる以前のその姿を取り戻し、

 芽吹く緑や、川のせせらぎ、

 生命の息吹が豊かな自然が、

 わずか一夜にして、星を覆って行くのです。


セバリオスさん「かつて闇に呑まれし者達を、

        ただ、この大地へと戻してやることしか出来はしないが、


        再度、災厄に見舞われるとしたならば、

        次は私がそれに立ち向かうことを、

        この大地に誓おう。」


 こうしてセバリオスさんは、

 その陽光のように煌く月と共に、

 その世界から、立ち去って行ったのです・・・。



 次にセバリオスさんが、

 リムジンを降りて、白のスーツ姿で現れたのは、


 久しぶりの外食を楽しく終えて、

 豪華なデザイナーズマンションに戻ってきた、

 笑顔に溢れるローゼさんたちの前でした。


ローゼさん「あらセバリオスさん、

      もうお戻りになられたのですか。」


 街灯に照らされながら、三人の帰りを待つセバリオスさんに、

 驚いた様子でそう言った、

 薄桃色のワンピース姿のローゼさんです。



  ◇ セバリオスさんは、ローゼさんの抱えた、

    リンカさんを巻き込んだ大事件を、

    快く解決してくれたという、

    そんないきさつがありました。


    その件は、ローゼさんとセバリオスさんだけが知っています。



 メリハリの効いたナイスバディに、

 冬なのに、やけに露出の多めの服装の、

 金髪美女のハインさんが、

 ローゼさんにこう問いかけます。


ハインさん「誰? このすんげぇー、イケメンッ!!


      ローゼさんの王室の関係者とか、

      何処かの国のプリンス様なのっ!?」


 出かけている事が多いハインさんは、

 以前、会っているはずのセバリオスさんの事を、

 深酒で記憶が飛んでしまったのか、

 まるで覚えていませんでした。


 そんなハインさんに、ローゼさんはセバリオスさんの事を、

 少し盛った感じで、ひそひそ伝えるのです。


ローゼさん(セバリオスさんは、恩人さんなのでぇす!!

      これくらい、盛ったとは言えないのでーす。)


ハインさん「へー、

      エリスさんの上司の方なのかー。


      エリスさんって、何だかんだで、

      顔広いよなー。


      (今度、ぜひ紹介してもらおう・・・。)」


リンカちゃん「こんばんはー、セバリオスさんっ。」


 ちょうど用のあったリンカさんが、

 真っ先に駆け寄ってきてくれたので、

 セバリオスさんは、その手に持った可愛い小箱を、

 リンカさんに手渡すのです。


セバリオスさん「忘れ物を届けにきたよ、

        リンカさん。」


リンカちゃん「忘れ物?

       誕生日プレゼントとか何かですかー。」


 セバリオスさんは、そのリボンの可愛い、

 ピンクの小箱を開けるよう、リンカさんに進めます。


 すると中に入っていたのは、

 リンカさんが欲しくて、すーっとジュエリー店で眺めていた、

 ちょっと大人っぽい、三日月を模った金色のイヤリングです。


 ムーンライトのように輝くきれいな宝石が施された、

 結構なお値段のそのイヤリングは、

 どうやら、子供騙しのイミテーションではなく本物のようです。


リンカちゃん「こ、こんなお高い物を、

       頂いちゃっていいんですか!?」


ハインさん「おお・・・、

      (めっちゃ高いデザイナーのヤツじゃん!!

       さすが、スーパーセレブは違うなぁ・・・。


       羨ましいなー。)」


 その二対のイヤリングに、

 興奮がおさまりそうにないリンカさんですが、

 ローゼさんだけは、その「忘れ物」の意味が、

 キチンと理解出来ていたようですっ。


ローゼさん(リ、リンカさんの失われた希望の丘が、

      しっかりと元に戻っていますっ!!)


 そう絶叫したい思いを、必至に押さえ込み、

 リンカさんに、温かいまなざしを送るローゼさんです。


セバリオスさん「二個で一つの物だから、

        よかったら大事にしてあげてねっ。」

リンカさん「あ、ありがとうございますーっ!!」


 外食で暴食したリンカさんよりも、

 太っ腹なセバリオスさんでした。


 ・ プレゼントの効果! →

   リンカちゃんの好感度が、100になった!


セバリオスさん「・・・。


        リンカさん、もう少しちゃんと、

        好感度とか管理しないと、

        変な人に騙されちゃうよ。(古蔵さんとか・・・。)」


リンカちゃん「あ、はいっ!

       では元に戻しておきますが、

       セバリオスさんの事は大好きですよっ!!」


 子供のように微笑ましい、快活なその返事に、

 セバリオスさんは、にこりと笑んで頷いたのでした。


セバリオスさん「やっぱり、みんな平和で、

        笑顔が素敵なのが、一番だね。


        ローゼさんは、素晴らしくよくやっていると、

        いつも関心しています。


        私の大切な友人のためぞう君のこと、

        これからもよろしくお願いしますね。」


ローゼさん「あ、ありがとうございますっ!


      もしよかったら、上がってお茶でも飲んでいかれませんか?」


ハインさん(ナイス、ローゼさんっ!!)


 ローゼさんのおもてなしは、

 それはもう天下一品なものでした。


 暖かなリビングで、どんな男の心も鷲掴みに出来る、

 最強の手料理を振舞ってくれることでしょう。

 ローゼさん、自分ではそれに気が付いてはいませんが、

 セバリオスさんは、そんな誘惑に負けるわけにはいかないのですっ。


セバリオスさん「ローゼさんのお言葉に甘えたいところだが、

        先約がありまして、


        よかったら、また次の機会にでも、

        是非お願いしたいものです。(耐性つけておきますので。)」


ローゼさん「あ、はいっ。

      リンカさんにプレゼント、ありがとうございましたっ!」


リンカちゃん「ありがとうございますー!!」


ハインさん「・・・わ、私にも、

      機会があったら、お願いしますっ!!!」


 セバリオスさんはにこやかに、三人の乙女たちに手を振って、

 リムジンへと乗り込んで、去って行ったのです。


 遠ざかる車を、何処か寂しそうに見つめるリンカさん。

 そんな彼女にローゼさんはこう言って、

 マンションの部屋へと入って行ったのです。


 「よかったですね、リンカさん。」、と。


 少しだけ、夜風に当てられながら、

 手にした小箱の中の対なすイヤリングを見つめるリンカさん。


 そのイヤリングの煌きを見つめていると、

 リンカさんの胸の中に、何か温かいものが湧き上がるのを、

 何処か恥ずかしそうに感じて、


 車が見えなくなっても、大きく手を振って、

 室内へと戻っていくのでした。



 リムジンの中で、美人秘書のセリスさんと、

 向かい合わせるように座ったセバリオスさんは、

 普段見せないような、油断した表情で、

 フフッ、と笑って見せたのでした。


セリスさん「何かいい事、あったんですかーっ?」

セバリオスさん「そうだね、

        セリスなら、わかっているような気もするが、

        良い感じで、二人の乙女がこの地に、

        舞い降りたのを感じてね。


        ルフィアさんの事だから、

        古蔵君には、黙っておかないといけないね。」


セリスさん「ああー、

      ルフィアさんって、古蔵さんの元フィアンセさんですよね!


      私的には、鈴木さんとルフィアさんで揺れ苦しむ、

      古蔵さんの面白い姿を見てみたいですが、

      今回は、内緒にしておきますねーっ!」


セバリオスさん「フフッ、

        感謝するよ、セリス。」



 こうして、セバリオスさんは、

 いつもの日常へと戻っていくのでした。
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『秋の日のエリスねーさん。 パート III 』

2016年11月05日 19時30分55秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-

   『秋の日のエリスねーさん。 パート III 』



 スーパー強化されたA氏とB氏を、

 一瞬にして、退けた謎の大型マシーン。


 楽しい女子トークに花を咲かせる、

 エリスねーさんたちの知らない場所で、

 熱く激しめのバトルが繰り広げられています!!


 この事をエリスねーさんが知っていれば、

 真っ先に駆けつけて来たのでしょうが、

 何故か普段は、エンジョイには敏感な方の、

 エリスねーさんは、まーったく気が付いていません。


 ちょっと、惜しいですネッ!!

 いいトコ見せる、チャンスですが・・・。


レミーアさん「だったら、さっさと、

       来てくれるように、仕向けて下さいっす!! w」


サフィリアさん「・・・遠のく、久々のお泊り会の夢。

        いつも準備万端に、用意してるんですが・・・。」


 乙女たちのささやかな夢を、

 これは何としても守りたいですね、特攻軍曹さんのJ氏さんッ!!!


J氏「オ、オレにプレッシャーかけてくんじゃねーよッ!!」


 ゲームに使用されている、一台数千万はしそうな、

 電磁レール方式採用の、360度フル回転稼動機!

 Gや風圧まで本格体感できる、宇宙パイロット養成マシンを、

 対戦ゲーム用にカスタマイズした、


 ネクサス長崎ドラゴン店の誇る、

 20台も設置された、ドーム型の筐体の中で、


 J氏はまるで無重力空間に放り出されたように、

 あたふたと、手足を振って逃げ出そうとしています。


J氏(あんなチートみたいな、凶悪マシンに勝てるわけがねぇ!!

   オレは、リアル思考だから、

   マシンの重力・衝撃体感設定を、


   『戦士たちの夢の衝撃、完全再現!!

    ・・・ハンパないので、ベルトで確実に固定して、

    気を失わないで下さいねっ。


   (スーパージェル採用のエアバック装備で、安心安全。

    ヌルヌルにはなりますが、自動洗浄乾燥モードで10分でピカピカ!

    人体には、まったく影響ありません。)』


   と、強烈に念の押された、

   「リアルショック! 再現モード」に、

   カッコつけて、しちまってるんだよォ・・・。


   ・・・オレの正体は、仮にも、

   謎の体育教師兼、特務エージェント兼、

   ギャラクシー栄誉勲章を7つ貰った、

   ウルトラスーパークラスの特務軍曹・・・。


   永久名誉曹長や、訓練教官校校長のポストまで、

   涙、涙で、迷いに迷って、やっと蹴って、


   さらには、これまでに獲得した7つの、

   スーパーレアなスキルまで全部捨てて、


   ・・・この、美女や美少女たちで溢れる夢の、



    キラキラ☆きらめき、どきどき青春ライフ!!

             - THE セカンドシーズン -



   を、選んだんだよぉ・・・。


   横で白目むきながら、

   魂抜けちまって、泡吹いて気絶している、

   A氏やB氏みたいな、失態は見せられねえッ!!!


   オレへ好感度(期待含む)が、無くなっちまうじゃねーか。)


謎の天の声さん「あ、J氏さんですね、

        いちおう、秘密なんですが、


        とってもキュートで、

        素敵で可愛い女の子からの、

        (そこにいる、レミーアさんの事なんですが、

         現在、好感度89もあったりするですョ。)

        好感度があったりしまーすッ!!


        良かったですね~っ。

        苦労は、報われたりするんですねー。

        以上、システムメッセージでした!!」


J氏(マ、マジかぁーーーーーっ!!!

   いかん、落ち着けオレッ!!


   ためぞう氏や、あの乙女さん二人みたいに、

   ・・・あのショックを、気合を保つ自身が、

   かつての栄光をステータスを捨て去った、今のオレにはねえッ。


   てか、どーやったら民間人が、

   あんなすんげぇインパクトを、耐えられるんだYOォ!!!)



 筐体は安全第一です。

 そんな中途半端な、ベルトロック方式では、

 ナッサ宇宙開発機構に鼻で笑われてしまいます。


 ここは、果てるにしても、

 乙女二人に(特に、レミーア王女様押しですよ。)、

 いいとこ見せて、

 何とか、漢の意地を見せてくださいねっ。


J氏「オレがやらねば、誰がやる!!


   こんな危険な任務に、姫さま二人を、

   巻き込むわけにはいかねぇぜっ」


 そんなJ氏の勇姿が、全ての観戦用ディスプレイに映されると、

 会場は、一気にハイテンションモードです!!


 威勢よく言い放った、J氏の軍曹機は、

 単機で、戦場の最前線へと駆け抜けて行きます。


サフィリアさん「軍曹さんっ!?」


レミーアさん「一機では、危険ですよッ!!」


 そんな乙女さんたちの制止を聞かずに、

 地上を蛇行するように、高速移動しながら、

 敵母艦への射程距離へと到達した、J氏です。


J氏「ようは、撃墜される前に、

   母艦にこのエージェントスナイパーライフルを、

   ぶち込んでやればいいだけの事だぜッ!!」


 J氏は、敵の大型ユニットの攻撃範囲に、

 見事に入っていますっ。


 その巨体からは、奇妙な発光シグナルが発せられますが、

 攻撃の気配はありません。


 その間にJ氏はライフルに、僅か2発しか持つ事の出来ない、

 特殊強化弾を装填し終えていますっ。


 三連勝ごとに一発支給される、この弾丸の威力は、

 あの頭上の巨大マシーンのシールドさえ、貫くほどの威力ですッ!!


J氏「オレの命中力に、ミスの二文字はねぇ、

   行くぜーーッ!!!」


 刹那、反動の衝撃により、

 大きく後方へと吹き飛ばされたJ氏の機体から、

 必殺の一閃が、放たれますっ。


   バシューーーーーーンッ!!!


 その一撃は、見事に敵空中母艦のコアを貫きますッ!!


レミーアさん「す、すごいッ!!」


J氏「ふん、これがプロの仕事ってもんだぜ・・・。」


 と、次の瞬間ですッ!!

 空中の大型マシーンの一部が、激しく爆発して、

 機体に大きなダメージを負いますッ。


 そして、敵の空中母艦は耐久100%で健在です!


サフィリアさん「!?」


レミーアさん「あ、あれは、

       もしや、ダメージ転送ッ!?」


 それは、ごく最近明らかにされ、

 一部の限られたトッププレイヤーでなければ、
  
 知り得ない仕様でした。
  

 このスキルが使用出来るという事は、

 相手がいずれかの大会優勝者である事の証です。

 トップに名を連ねるレミーアさんですら、準優勝が最高なのです。


 なお、このスキル情報を、

 ネットや雑誌などに拡散したプレイヤーは、

 問答無用で、情報共有登録が有効になっているフレンドごとまとめて、

 三ヶ月、もしくは次回バージョンアップまで、

 一時アカウント停止処分で、鍛えたマシンが使用不可になります。


 新規にマシンをロールアウトして、

 プレイを再開するくらいなら、

 強化データの回復を待った方が、楽な方が多いのです。


 観戦のLIVEで得た情報に関しては、

 そのまま、お宝メモリーになります。


 それは、よりゲームの対戦を奥深くする為の、

 観戦している方々にも架せられる、

 暗黙のルールでした。


 運営は、情報が漏洩した時点で、

 使用プレーヤーに、同レベルの新スキルを与え、

 そのスキルを消去します。


 それは、裏で何処かの全銀河覇王協会が、

 自分達の娯楽を健全に守る為に、運営に全面的に協力した結果で、


 その彼らの中には、割とだらだら遊んでる、

 退屈さんが多い事の、証明でもあったりします・・・。


 よね? 古蔵さん。


配送中の古蔵さん「(・・・行き付けの会員制クラブに、出禁喰らった上、

         千年くらいは、協会に追放扱いされるんで・・・。)

         い、言えねぇっすw


         あ、でも最近は、

         会員制クラブとか行かないで、

         けっこうマジメにバイトしてますョ。」


 ああ、そこは意中の想い人への、

 ささやかなアピールなんですね。


 はかないその想い、届くといいですねっ!


 以上、システムメッセージでした♪


J氏「なーに、それならもう一発、

   コアにぶち込んで、上のマシンにキツイ一撃加えてやるだけだぜッ!」


 J氏は、素早い判断で2発目の装填を終えており、

 駆動系にダメージを負って、次の反動を耐えられるかどうかの、

 そのマシンで、

 敵空中母艦のコアを、スコープの中央に捉えていますッ!


J氏「コイツを喰らっても、

   そうやって見下してられるか、試させてもらうぜッ!!」


 と、その時、

 レミーアさんが叫びますッ!


レミーアさん「撃っては、ダメっすッ!!

       トップランカー相手に、簡単に同じ手は通じ・・・。」


 すでにJ氏の弾丸は、そのライフルから放たれ、

 機体は、二度もの反動に耐える代償として、

 両足のフレームが、その強烈な反動で潰されていますッ!!


J氏「フフッ・・・、

   この機体はもう動けねえ。


   あとは沈められるまで、

   残された装備で、残弾を撃ち尽くすだけの事よ。」


 猛烈な速度で放たれた弾丸は、

 再度、空中母艦のコアの中心を貫き、


 凄まじい反動で、ライフルごと右アームが吹き飛ばされた、

 J氏の機体が砂塵の中から姿を現し、

 残された左アームに、予備の中距離ライフルを構える勇姿が、

 中央のスクリーンに劇的に描かれています。


  ウオォォォーー!!!


 会場が、沸いていますッ!

 どうして、エリスねーさんは、この興奮のワンシーンを、

 見逃してしまうのでしょう!!


ツキノさん(その償いは、この身に賭けても致しますっ♪)


 ツキノさんは、謎の特殊能力で、

 こっそりとその興奮を味わっています。


 ファルさん・・・。

 ちょっと、組んだ相手が悪かったようです。


ファルさん(・・・聞こえない、聞こえないの術。)


 突然、J氏の機体を中心に大爆発が起こりますッ!!


レミーアさん「!? ダメージ反射ッ!」


サフィリアさん「そ、そんな・・・。」


 会場ごと辺りが静まり返り、暫しの沈黙が流れます。

 この時の1秒1秒が、とても長く感じられる、

 そんな静寂です。


 全スクリーンに、爆発後の映像が映し出されますが、

 そこには、地面を抉るクレーターしか映されていません・・・。


 J氏の機体は、蒸発してしまったのです。


レミーアさん「・・・これは、やりすぎっす。」


 レミーアさんのその怒りが、

 会場の観客たちの感情とリンクします。


 その気持ちが伝わったからこそ、

 誰一人として、J氏の座る筐体を見るわけにはいかないと、

 彼の勇気を称えつつ、

 無惨にも、修復不可能なまでに粉々にされたJ氏の機体への、

 同情を禁じえません・・・。


 中には弔い戦に参加したいと、胸を熱くする者たちも、

 少なくはありません。


 ですが、ルールはルール。


 この戦いは、その圧倒的な相手の数を押さえる為に、

 増援許可のルールが、適用されてはいません。

 こういう危機を、誰も予想していなかったわけではありませんでしたが、


 今、この瞬間、

 そのルールを曲げてでも参加して、未知なる敵にマシンを失う覚悟で、

 参加したいと願うのです。


 その戦場では、敵の巨大マシーンが、

 じっと沈黙を保ち、不気味に残りのタイムカウントを、

 ただ減らしています。


 一瞬にして、勝負を付けられる自信でもあるかのように、

 その巨体に蒼く鈍い光を流し、

 ただ、サフィリアさんたちが前へ出るのを待っているようにも、

 見えたのです。


 戦場に残る、サフィリアさんとレミーアさんは、

 勝算の見えない勝負に、打って出れないでいます。


 あのダメージ転送の仕掛けを攻略しなければ、

 自分たちの攻撃を、そのまま受けるだけでしょう。


 すると、巨大マシーンから、

 空中空母への直接攻撃が行われますッ!


   ビューーーーーーーーンッ!!!


 一度目の直接攻撃より、明らかに高出力のビーム攻撃が、

 明らかに軌道を外して放たれると、

 そのビームの通過後すぐに、

 空間を貫く強力な衝撃波が、母艦ごとサフィリアさんたちを揺らしますッ!!


レミーアさん「・・・なんて規格外の威力。


       弩級戦艦の主砲クラスにも劣らないパワーを、

       あのサイズのマシーンが出せるなんて・・・。」


サフィリアさん「あれを、何度も防ぐ余裕はありませんが、

        その分、隙は大きいようですね・・・。」


 続いて、その大型マシーンのパイロットから、

 こんな挑発めいた通信が送られて来ます。


謎の女性の声「これが、このエリアの最高の部隊ですか?


       そうでない事を願って、

       そちらに、部隊の再編成の猶予を与えます。


       もっと、ワタシを退屈させないメンバーを、

       消えたくなければ、揃える事です。」


 対戦相手の提案により、再度タイムカウントを戻して、

 戦場に入るだけの増援の許可が申請されました。


 屈辱的ではありますが、

 これで、編成時間等のタイムも同時にカウントされず、

 十分に戦列を整え、消耗パーツの交換も可能です。


 観客たちは、それを受け入れる事を望みながらも、

 そこに立つだけの自信を持てるだけのプレイヤーは、

 そうそうにはいませんでした。


 今までの一方的な戦いをイメージに刷り込まれていては、

 仕方の無い事です。


 ここは、役員会を放ってでも、

 参加しとくべきではありませんか?


 変装までして、対戦を楽しんでいたビルのオーナーさんっ。


上層階の亀吉老人「ごほごほ・・・、

         持病の、右足の小指のちょっとした関節痛がッ!?」


 ・・・それは残念な事です。


 しかし、頼りになるプレイヤーは、

 貴方が面倒を見ている、

 名門 吉川家のお姫様のリナさんだけですよ?


 当然、参加希望するであろう、

 義の心に溢れるその彼女まで、


 まさか、

 知らんぷりが出来るのであれば、


 それで、いぃーんですっ!! が。


亀吉さん「・・・今から知り合いば、当たってみるけん、

     ちょっと待っちょきーーーッ!!」


 期待しないで、お待ちしておりますっ♪


 戦場で指揮を取るサフィリアさんは、

 即座にその条件を受諾します。


サフィリアさん「ごめんなさいね、レミーアさん。


        私は、個人的な感情だけで、

        勝ち目のない戦いは、挑めません。


        最低限、引き分けるくらいでなければ、

        引くべきだと、私はそう思うのです。」


 レミーアさんは、そんなサフィリアさんをかばおうとしますが、

 サフィリアさんは、挑発的な敵に対して、

 戦場の礼法に適った凛々しき一礼をして、

 単独の責任として、その提案を受け入れました。


 サフィリアさんの毅然とした態度に、

 人々は闘志を抱き、負けるわけにはいかないという意思を共有します。


 その場は一旦、静まり返ります。


 ここに集うファイターたちは、これまでにない闘争心を、

 強く心で抑えつつ、共に勝てる算段を探しているのです。


 彼らをさらに煽るように、

 敵のパイロットは、こう言い放つのです。


謎の女性の声「ワタシはただ、

       より多くの軍功さえ得られれば、

       それでいいのです。


       今のこの、

       つまらないランキングを塗り替えるには、


       多くを強さでねじ伏せて行くのが、

       最速の手段と言えるでしょ?


       ウフフフフッ・・・。」


 この一言が、戦いそのものを、

 勝たねばならない勝負へと、変えた瞬間でした。


 サフィリアさんやレミーアさんたちと共に勝ちたいという、

 その思いを強烈に掻き立てられます。


 それは、彼女たちとは直接の面識のない、

 ツキノさんにも同じく伝わります。


ツキノさん「あの、もしよかったら私、

      せっかくなので、1Fから見学したいのですが。」


エリスねーさん「あ、そう?

        うん、あたしでよければ案内出来ると思うよ。


        ファルさんも、それでいい?」


ファルさん「あ、はい、

      お願いしますー。」


 こうして三人は席を立つと、エレベーターの方へと向かいますが、

 複数ある、そのエレベーターには、

 すでにちょっとした行列が出来ています。


 三人を取り囲んでいたギャラリーたちも、

 その言葉に、先を急いでいるのです・・・。


エリスねーさん「・・・。


        わたしは、階段とか平気だけど、

        やっぱり、待った方がいいよね。」


 ねーさん、気を使ったつもりが、

 見事に空振りです。


 ツキノさんも、ファルさんも、

 働く女子たちには、階段なんて全然余裕なのです。


ツキノさん「これって、

      誰が一番乗り! とかいう感じでしょうか?」


エリスねーさん「いやいや、

        下りの階段で、かけっことか危ないから、

        普通にいこっ。」


ファルさん「はーい、付いていきますですっ。」


 こうなると、何故か階段の方に人が流れていきます。

 エリスねーさんは、なんだろうなぁーっ

 (ツキノとファルさん目当て?)と、

 思わなくはありませんでしたが、

 そこはあねご肌のおねーさん、優しくスルーなのです。


 ねーさんは、その輪の中心に自分がいるだなんて、

 きっと、いつまで経っても理解する事はないのでしょう・・・。


 そこが、ねーさんの良さではありますが。


ツキノさん+ファルさん(その通りですッ!!!)


 目的地の1Fでは、

 サフィリアさんとレミーアさんが、一生懸命頑張っていますッ!!


 エリスさんも、自分の名前がタイトルなのですから、

 もう少し、頑張りたいですねっ。


エリスねーさん(それを言わないでっw)


 なんとなく季節が、秋から変わり始めていますが、

 そこは、突っ込まないでおきますですっ!


エリスねーさん(それって、

        あのカンペ持ってる人の責任だって・・・。


        てゆうか、あたしも、

        もう少しスムーズに進みたいかなっ。


        ・・・一応、冗談ですよ~。)


 そ、そうですねッ!!! ^^:




               つづきますー。
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『秋の日のエリスねーさん。 パート II 』

2016年10月30日 20時10分52秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-

    『秋の日のエリスねーさん。 パート II 』



 長崎ドラゴンタウンの新たなランドマーク、

 ネクサスビルの25Fの展望テラスでくつろぐ、

 エリスねーさんたち。


 同席するツキノさんは、そのプレッシャーを感じていたようですが、

 階下の1Fのゲームセンターで、

 よくわからない熱い戦いが始まってすでに、

 30分の時が経過していました・・・。


 30分とはいえ、ゲームの中の戦場では、

 数時間の時が経過したような体感がありました。


 サフィリアさんの部隊を中心とする、

 『ネクサスビル・長崎ドラゴンタウン店』の、

 ゲーマーたちの熱過ぎるその戦いぶりは、


 全国の数多の猛者たちの侵攻をこちらへと誘い、

 当初の戦力を、半分にまで減らしています。


 ですが、席が空けば後詰めはたくさんいるので、

 どんどんファイターは補充されます。


サフィリアさん「皆さん、無理はなさらないで下さいね。

        十分に休憩を取られて、

        せっかくのバトルを、思う存分に楽しみましょう!」


 最も激しい消耗戦に、

 さらされているハズのサフィリアさんですが、

 その言葉は優しく野郎たちの心に響き、その笑顔はとても爽やかです。


 これでは野郎共も、のんびり休憩している訳にはいきませんがッ!

 参加者多数で、再度、行列へと並ばなければなりません・・・。


 ウワサを聞きつけた会社員さんたちが、

 適当に理由を付けて会社を早退し、

 ちゃっかりと前の列に並んじゃっているのですっ。


J氏「フハハッ、

   リアルプリンセスたちとの、その想い出メモリーに刻みたければ、

   気合を入れて勝ち残る事だなッ!!


   カァーッ、この高揚感は何ともたまらねえぜッ!!!」


 J氏は、新兵を鍛えるプロフェッショナルです。

 個人的な戦闘力自体は、たいしたことはありませんでしたが、

 戦場での生き残り方だけは、誰よりも熟知しています。


 このJ氏の激により、奮起した野郎共は、

 通常の数倍の力を発揮し、同時に魂のエナジーを、

 激しく消耗させられてます。


J氏「役立たずで悪かったなッw」


レミーアさん「あ、いえいえ。

       軍曹さんには、指揮を上げてもらって助かってます。


       ・・・あの、当たらないで下さいネ。」


 高速で移動し、J氏のマシンを援護するレミーアさんが、

 すばしっこい彼を囮にして、撃墜数を稼ぎまくっています。


 結果そうなっているだけですが、

 持ちつ持たれつで、サフィリアさんチームは、

 6連勝中の今も、その味方の数を一機も減らしてはいません。


 でも何故か、技術でJ氏に劣るはずの、

 A氏とB氏が、まるで何かに憑り付かれた様に、

 快進撃を続けていますッ!!


A氏「敵の副将を、討ち取ったニャーンッ!!」


B氏「我輩のレールキャノンが、唸ってるんだニャン!」


 ・・・戦っているのは、

 サフィリアさんのネコちゃん達のようです。


A氏「さすがは、歴戦のガゲカツ殿だニャン。」


B氏「いえいえ、カネツグ殿の突破力のおかげなんだニャン。」


J氏「どーなってんだYOォ!!」


 これって、本物のA氏とB氏の想い出メモリーは、

 どうなっているんでしょうね。


 結果、素晴らしい戦果を挙げていますし、

 J氏もまさかここまで粘れるとは、想像していなかっただけに、

 そこには誰も触れては来ないようです・・・。


サフィリアさん(・・・エリスさんに、いい所を見せたいのです。

        本当に、ごめんなさいネ。)


レミーアさん「ネコちゃんたち、やるっすねッ!!

       サフィリアさんは、いい側近に恵まれてるなぁ。」


 レミーアさんのうっかりは、スルーです。

 ネコちゃんの部分は、聞こえていない、聞こえていないの法則で。


 こうして、サフィリアさんチームは、

 次々と勝利を重ねて行きます。


 これも、他の皆さんが勝ったり、負けたりして、

 他のプレーヤーたちの、店内への挑戦を防いでいるおかげです。

 サフィリアさんチームに勝てそうな相手には、

 次々と望んで敗北を重ねまくり、疲弊させた状態で、

 サフィリアさんチームにバトンタッチです。


 たまに味方がピンチになると、フッと1Fの店内に現れる、

 将棋好きな、グラサンのおじいさんと、

 ジェネシス! 連呼しまくってる、中年のエプロンおじさん。

 そして、オーナーから参加を許可された、

 バイトのリナさんがチームを組み、


 わずか三機で、敵集団の中心へと殴り込み、

 二十を超える大部隊を相手に、猛烈な戦果を挙げています。


 旧式の量産型ロボを、超絶技巧で操る、

 世直し旅をお供と共に、やっていそうな、

 イカしたグラサンの、黒いスーツのおじいさん。


グラサンおじいさん「カッカッカッ!


          ワシの店に攻めて来ちょる、連中に指南をしてやるのも、

          オーナーの務めというものじゃッ!!


          行くぞい、ジェネさん、リナさん!

          勝てると見た勝負しか、ワシはしませんがのー。」


 そのソウルに溢れるおじいさんを、

 遠巻きに囲むように、ゴツイSPぽい方たちが、

 警備に当たっています。


ジェネシスおじさん「うーん、ジェネシスッ!!


          この上にエリスさんがいると想えば、

          少しでも親密になりたいからねっ。


          年の差なんて、ノー問題という、

          エリスさんのその幅の広い異性の好みは、


          ためぞう君の親父さんに憧れてた過去で、

          すでに、証明済みだからねえッ!!」


 おじさんは、イエローに塗装された重攻撃爆装ロボを駆使し、

 一挙に敵部隊中央へと突っ込ませると、


 大量に搭載したホーミングミサイルや、

 多連装マシンガンを雨のように浴びせ、敵部隊を大いにかき乱しますッ!!


 見た目は、ちょっとお腹が出てる感じの冴えないおじさんですが、

 店内のディスプレイに色鮮やかに映し出される、

 おじさんのその勇姿は、たしかにちょっとカッコイイです。


 ただ、おじさんの声はやたら通るので、

 言ってる事が、結構あちこちに聞こえています。


 ・・・おじさん叫んだ、ある情報に、

 世の中年男性さんたちは、足を止め、

 それが、こんな変なウワサとなって、広がっていくのです。


 - あの素敵なエリスさんは、

   年の差なんて気にしない、

   心の広い女性(ひと)なんだなぁー。- 、と。
 

 確かにエリスねーさんは、

 自分の歳は気にするくせに、

 お相手の年齢差なんて、まったく気にしない、

 内面を感じ取れる、いいお嬢さんではあります。

 (褒めてますよッ!!)


 そのウワサは、光の速さで拡散し、

 店内どころか、上の階にいるおじさま方へ、

 有益な情報を伝えたのですっ!!


 現時点では、ウワサはネクサスビル内だけに、

 謎のブロックによって留まっていますが、


 対戦相手が、ゲーム内で友人登録されていれば、

 メッセージを送る事は可能なようです。


 周囲に広まるのは、もはや時間の問題でした。


 そこをブロック出来ていないのが、

 謎のブロックの欠点のようにも思えますが、

 意図的にそれを突破した者が、

 何処かに潜んでいるのかも知れません。


 A氏とB氏が、ゲームで使用しているとは違う、

 別のマイクに、何やらつぶやいています。


謎のネコちゃんの声 < 「こちら、ブラボー III 

             ・・・厄介なウォールだったが、

             これで通信が回復したハズだ。」


> 軌道ネコジャラクシー「こちら、軌道ネコジャラクシー、

             難解な任務、ご苦労だった。


             貴殿らの活躍で、もたらされた情報には、

             各提督方も、ご満悦のようだ。


             これで私の給与も、上がるかも知れませんねッ!!」


ブラボー III < 「オ、オペレーターのお嬢さんッ、

            本音とは隠してこそ、その結果への喜びが増すものだ。

            浮かれる気持ちは、わからんでもないのニャン。


            ・・・。

            ところで増援の方は、期待して良いのかな。」


> うっかりオペレータ嬢さん「残念だが、現有戦力を降下させようとしても、

               こちら側へのブロックが、いまだ突破出来てはいない。


               もう少し時間がかかると思われるが、

               間に合うか? というその問いには、

               今は答えられない。


               ただ、健闘を祈るとだけ言っておこう。」


ブラボー III 「了解した。

          ただちに任務へと戻り、我らが越後の姫様をお守りするとしよう。」


 ただ、この時点で、

 サフィリアさんたちは、まだ気付いていませんが、

 このネクサスビルには、ゲームセンターの裏側に、

 オフィス・マンションの方向けに、

 駅ビル方面側の、立派なエントランスがあったりします。


 マンションにお住まいの方は、

 繁華街側のゲームセンターが入っている方と、

 アクセスが便利な駅ビル方面側の、どちらの出口からも、

 出入りする事が出来ましたが、


 基本、ゲームセンターなどのテナントの入っている繁華街側は、

 オフィスの方たちは、上司さんの手前、

 土日利用の方が多くなりますネ。


ナイスなグラサン老人の亀吉さん(ワ、ワシとした事がぁッ!?


                ・・・うかつにも、

                便利に作り過ぎたようじゃ。)


 その頃、ウワサのエリスねーさんは、

 25Fの展望デッキで、女子トークに花を咲かせていました。


 すでにビルの最上階まで、エリスねーさんのウワサが広がっていますので、

 その美女三人が座るテラスを見つめるギャラリーの数も、

 おじさま多めで、数を増やしています。


 ギャラリーの皆さんは挨拶を交わしながら、

 エリスねーさんの攻略情報があちこち飛び回っています。


 そのギャラリーの目線の先にいる、ツキノさんやファルさんも、

 しっかりと耳を済ませて、その攻略ネタを仕入れています。


ツキノさん+ファルさん(情報がはっきりするまで、

            もう少し、お話しを楽しみましょうね♪)


 実家では険悪だった、ファルさんとツキノさんですが、

 新天地のドラゴンタウンでは、

 とっても仲良くなれそうです。


 どちらとも、違う方向で優秀な特技をお持ちなので、

 うまくやれば、あのセバリオスさんでも排除できそうですっ!


階下のセバリオスさん「何だか、激しい乙女オーラを感じるねぇ。


           レオクス君ほどでもないが、

           私も、女子たちの熱い注目を集めてしまっているのかな。


           ハッハッハッ!!」


秘書のセリスさん「平和なことで、なによりです~っ。」


 セリスさんは、お気楽なテンションで振舞いながら、
 こういう思いを巡らせていました。


セリスさん(切り札として使うには、

      この絶大なる主に対しては、まだまだ未熟なようですが、


      使い方によっては、

      エリス様を、より幸せな方向へと、

      お導き出来るかも知れません。


      ワタクシの最大の喜びは、

      この身がどれほど報われなくても、

      エリス様が、誰よりも幸せであれば、

      ただ、それで良いのです。)


 セリスさんにとって、

 セバリオスさんの存在は、ホントにどーでもいいみたいです。


 ただ、最強の虫除けなのは間違いないので、

 セバリオスさんを支えることは、理に叶ってはいます。


 効き過ぎなのが、少々欠点ではありますが。


セバリオスさん「私は、セリスに絶対の信頼を寄せているよ。

        今日も、お仕事ありがとうねっ。」


 さすがに、神がかりな存在感を放つセバリオスさんを、

 簡単に操る事など、セリスさんでも出来ないようです。


 それが、何よりも難しい事もまた、

 セリスさんは嬉しいように、ニコリと微笑んでこう返すのでした。


「いえいえー、

 私こそ、素晴らしい上司さんに出会えて、感謝してます~~ぅ♪」


 この二人の独特の雰囲気の前に気圧され、

 セバリオスさんの会社の社員さん達は、

 ひたすら頑張って、営業成績を上げているのです。


 上では、ツキノさんとファルさんが、

 女子トークを盛り上げて、しっかりと時間を潰してくれています。


 陽射しが西へと傾き、水平線へと沈みかけた、

 展望テラスから広がるその光景は、


 とても落ち着きのあるオレンジの光を、

 おだやかな波が反射させ、

 青い空とのコントラスト差も、

 次第に柔らかな夕焼け色へと、塗り替えられていくのでした。


 真横から差し込むその金色のきらめきに照らされた、

 三人の美女たち。


 終業時間の5時を告げる、チャイムが鳴り響くと、

 殿方たちは、彼女たちに魅せられながらも、

 1Fのゲームセンターへと競うように、降りていきます。


 どうやら、ゲームの上手な殿方を、

 エリスねーさんが好むと誤解しているようです。


 何処のウワサというものも、伝わり方で、

 内容が聞き手にいいように変わってしまうようですね。


 この頃には、ツキノさんもファルさんも、

 ウワサの真相へと辿り着き、互いに頷きながら、

 正確な情報を手にしたようでした。


エリスねーさん「何かあったのー?」


ツキノさん「えっと、1Fにゲームセンターありますよね。

      そこで、大会並みに対戦ゲームコーナーが、

      盛り上がっているようですねっ。」


エリスねーさん「ああ、みんながやってるあのゲームね。

        あたしもたまにやるんだけど、

        下手すぎて、いつもやられまくってるな~。


        まあ、それでも連帯感とみんなでの達成感とかは、

        好きな方かな。


        でも、どちらかというと、

        私にも出来る、クレーンゲームコーナーに居たりもする。

        取れないけど、あれは楽しい。


        てか、ノルン姐さんの影響で、

        やっぱり、2Fのボウリングとカラオケが、

        メインなんだけどねっ。」


ツキノさん「ノルンおねーさんにも、

      後で、ご挨拶しなくっちゃいけませんね。」


エリスねーさん「多分、電話かかって来るから、

        その時でいいんじゃないかな。


        姐さん、あれで魚市場と道の駅の両方やってるから、

        終わるのに、もうちょっとかかると思う。


        それまで、ファルさんも一緒にいかがですか?」


ファルさん「ぜひ、お願いしますーっ。」


 どうやらツキノさんとファルさんは、

 エリスねーさんを簡単に、

 熱く盛り上がった、1Fの闘魂のゲーセンへと、

 行かせる気はなさそうです。


 より長く、この貴重な時間を楽しみたいんですねッ♪


 その頃、エリスねーさんが来るのを願って、

 バトルに勝ち残ってる、サフィリアさんとレミーアさんですが、


 突如として現れた強敵を前に、

 苦戦を強いられているようです。


サフィリアさん「この巨大なユニットは、何ッ!?」


 サフィリアさんたちの戦場に現れたのは、

 たった一機の大型バトルマシーンです。


 今は、空に浮かぶ船の形をしていますが、

 母艦の三分の一はありそうなその巨体は、

 なんと、人型ロボにまで変形出来ると、


 一度、前線から退いて、サフィリアさんと合流した、

 レミーアさんが告げました。


レミーアさん「サフィリアさん、気を付けるっすッ!!


       ・・・あれは、最近ロールアウトしたばかりの、

       最新鋭の大型マシーンです。


       その莫大なコストから、ゲーム内には、

       それ一機しか配置する事が出来ませんが、

       火力もシールドも、通常のマシーンの10倍を超える、

       とんでもない化け物ですッ!!」


 この巨大マシーンの登場により、

 瞬く間に、店内の他チームの防御は破られ、

 メインの戦場へと、乗り込まれてしまいます。


J氏「エース級の三人組みのチームがあっただろ!?」


 強力な社会人プレーヤー出現を予知してか、

 すでに5時前には、グラサンの亀吉老人は、

 ゴツイSPたちを連れて、戦場を後にしています。


 ジェネシスな花屋のおじさんも、

 配達の関係で居なくなっており、


 残されたリナさんだけが、順番待ちの他のプレイヤーさんと、

 再度チームを結成し、健闘していましたが、

 あの化け物を相手に退かされてしまっています。


バイトのリナさん「つ、強すぎましたね・・・。」


 可愛い店員のリナさんと一緒に、貴重な時間を共有した、

 常連のD氏、E氏、Iさん、Kさん達たちは言います。


一同「あれは、リナさんが居なければ、

   壊滅だったっすよ!!


   爆散せずに撤退出来ただけでも、最高っすッ!!」


リナさん「有難うございますーっ!

     私も、とっても楽しかったですっ。」


 その素敵なリナさんの無邪気に弾ける笑顔で、

 関係ない周囲の方々も、つい常連さんになってしまいそうです。


 つい、その輪に加わりたくなった、

 VIPのJ氏は、そういう理由なら仕方ないと、

 いち早く前線から引いて、二人の美少女のいる側へと寄っていました。


 J氏は誰よりも早く、危険を察知出来るので、

 生存率がとても高いのですッ。


 ・・・でも、まさか、

 サフィリアさんとレミーアさんが倒されようとしている間に、

 こっそり退却したりはしないですよね?


J氏「そんな事できるかーーッ!!

   (A氏とB氏には悪いが、

    確かに、速攻倒されるのはごめんだと、

    思っちまったのは認めるぜ・・・。


    相手の出方がわからねえ内は、

    攻略しようもないからなッ!!)」


 普段のA氏とB氏とは、思えない、

 凄まじい機動性と、攻撃力を発揮してきたその二機は、

 最前線の、中空に浮かぶ大型マシーンのその直下にいました。


A氏改「まずは当たってみないと、

    わからないものだニャン!!」


B氏改「なんだな、

    軽く接触して、出方を見るんだニャン。


    後ろの母艦は、誰も守ってないので、

    隙だらけなんだニャーッ!!」


 と、二機が大型マシーンにターゲットを絞ったその時です!


 シュン! と大地に向かって、一閃のレーザーが放たれると、

 二機が同時に爆散しますッ!!!


J氏「は、反則だろォ!!!」


 二つの爆煙が立ち昇る、その黒煙の中にある、

 鈍い蒼色の大型マシーンは、まだこちらへと動く気配を見せません。


 だだ、その圧倒的な存在感に気圧される、

 サフィリアさんたちです。


ブラボー III <「こちら、ブラボー III


           見たこともない閃光に、一瞬にて撃沈された。

           後は、よろしく頼むニャ、ン・・・。」


 同時に二機もの味方を失い、

 サフィリアさんチームは、相当ピンチです。


 そして、5時を過ぎたというのに、

 エリスねーさんの姿はまだ見られません。


 敗退した別チームも、

 すでに再編成を終え、新たなる他の別のチャレンジャーたちの、

 挑戦を受けるのに、手一杯の状況です。


レミーアさん「一瞬ですが、レーザーが発射される瞬間に、

       敵のシールドが無効化されたのを感じたっす。


       シールドを使わなければならない状況を保てば、

       あの強力な一撃は、放てないと見たっすよ!!」


 そのレミーアさんと、横のJ氏に、

 サフィリアさんは、銀光に輝く女性騎士の機体から、

 こう言うのです。


サフィリアさん「A氏とB氏の見せた、戦いを私たちは、

        無駄にする事は出来ません。


        私も母艦を離れ、先陣に立って、

        お二人を守る盾となりましょう!!」


 中央のメインディスプレーに映された、サフィリアさんの勇姿が、

 他のプレイヤーを巻き込んで、その士気を高めますッ!!


 きっと、そのサフィリアさんのその姿は、

 戦場に咲く、一人の戦乙女として、

 可憐で鮮烈に、皆さんの記憶に残ったことでしょう。


 レミーアさんも、頑張って下さいネっ!


レミーアさん「わ、わかってるっすッ! w」



               では、つづきますー。
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『秋の日のエリスねーさん。』

2016年10月25日 16時07分06秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-

   『秋の日のエリスねーさん。』



 エリスねーさんの会社の支店が、

 新たな街のランドマークとなった、

 国際的大企業の「亀吉インダストリー」会長、

 亀吉さんの所有する、


 70階建ての超高層ビル、

 「ネクサスビル・長崎」に入ることになりました。


 どうやら亀吉老人の策のようで、

 エリスねーさんの会社の社長さんを、

 あれこれとたぶらかし、


 23Fにある、広いオフィスに支店を移させた事で、

 世紀末覇者伝説時のエリスねーさん活躍とその魅力を知る、

 たくさんの優秀な企業のトップさんたちが、

 (最近のグラビア活動で、ファンになった方も含みます。)


 挙って同じくオフィスをビルへと移そうと、

 その希望倍率がなんと数十倍にまでに達し、


 激しい倍率を勝ち残った、資金の潤沢な企業と、

 有効な一芸(コネも含む)を持つにベンチャー企業によって、


 4Fから51Fまでの貸しビル区画が、一気に埋まってしまったのです。


 セバリオスさんも、

 世界に名の知れる大企業の社長さんですので、


 エリスねーさんの会社の支店の、すぐ直下の22Fに、

 豪奢な調度品で飾り尽くされた、

 何処よりも立派な長崎支店を構えました。


セバリオスさん「エリスに悪い虫が付かないように、

        そういう事は、きっちりしとかないとね。


        支店を新たに建てる費用に比べれば、ずいぶん安く付いたよ。

        ハッハッハッ!」


レオクスさん「セバリオスさん、流石だなー。


       (う、うらやましいっ! とか、

        思ってはいけません・・・。)」


セバリオスさん「レオクス君には、色々とお願いしたいから、

        デリバリーとか、よろしく頼むよ。


        糖分不足は、仕事の効率が落ちそうだし、

        お菓子職人のレオクス君の作った物なら、

        特に女子社員たちは、喜ぶだろうからねッ!」


レオクスさん「あ、ハイッ!

       ありがとうございますッ!!」


 レオクスさんは、子供のように無邪気な笑顔でそう答えます。

 レオクスさんは頼まれれば期待に応える、

 レジェンドクラスのお人好しさんです。


 セバリオスさんの会社の女性方はもちろんの事、

 この穢れを知らない美しき王子様との出会いのチャンスを、

 他の方々も放って置くなど有り得ません。


 老練なる賢人、亀吉さんの方がセバリオスさんより、

 男女の色恋の方は上手です。


 でも、とても仲良しさんなので、

 これは二人で企んだ策だったりします。


 殿方には、エリスねーさんという、

 明るく乙女なオフィスの華を、


 そして女性たちには、レオクスさんという、

 稀に見ぬ、血統書つきの至高の王子様を、

 ハニートラップ的に配して、


 ビルと会社の運用効率と作業効率を、最大まで高めたのです。


ためぞう「・・・ねーさんも、レオクス師匠も、

     また、ダシに使われたのか。


     おろおろおろ・・・。」


 そう言うためぞうも、亀吉さんとセバリオスさんには、

 莫大な恩恵を受けているので、密かに協力者になっています。


 天下を取れないタヌキもどきは、ただのタヌキもどきなのです。

 長いものには、並べるようになるまで、

 巻かれておくのが、処世術というものでした。


 この異国文化溢れる長崎の地で、

 世渡りだけは、ちゃっかりと上手くなっている ためぞうです。


 さて、その会社でのエリスねーさんなのですが、

 仕事の時は、普段とだらんとした姿とは、

 全く違った雰囲気で、


 髪をシンプルな髪留めで止めでまとめ、

 襟を正して制服を着こなすと、


 その姉さん口調は息を潜め、

 女子アナクラスの完璧な標準語へと、

 声質のトーンまで変わり、


 英語やフランス語、スペイン語など、

 五ヶ国語を流暢に操り、

 通訳まで、容易くやってのけるという、


 その仕事ぶりは、まさに社員の鏡となっています。


 ちなみに仕事モード以外では、

 その語学力も知性も気品も、まったく消え失せてしまうという、

 不思議な一面も魅せる、残念なおねーさんです。


 男性社員だけでなく、女子社員からも憧れられており、

 その出来過ぎさんな所が、ねーさんから異性を遠ざけているという事を、

 本人が、まったく気が付いていません。


 お得意さんからも、とても評判が良く、

 相手に合わせて、くだけた話も出来るので、

 社内と社外での雰囲気も、場所場所によって変化します。


エリスねーさん(何だか今日は、変な視線を感じるなぁ。

        やっかい事に巻き込まれないよう、気を付けよう・・・。)


 すでに、その術中に落ちている事を気付かないのも、

 ねーさんの良さだったりするので、

 暖かな眼差しで見守る、セバリオスさんです。


セバリオスさん「凜としたエリスも、またイイ。


        男たちは、この私が何とかするが、

        女性に何かをするというのは、

        ジェントルではないからネ。


        エリスがあまりの出会いの無さに、

        別の方向へと路線変更しないように、祈るしかない。」


 そこに、学園で事務もこなしながら副担任まで務め、

 さらにセバリオスさんの業務の一切をさらっとこなす、

 スーパー秘書のセリスさんが、

 学園のキュートな事務員姿で、セバリオスさんの傍らでこう言います。


セリスさん「そちらの一切は、この私にお任せ下さいですーぅ。

      かき乱すのは、得意な方なので~。


      (セバリオス様も、女性に免疫がある方ではないのですから、

       自身とてレオクス様と、たいしてお立場がお変わりないのを、

       早く気が付けると良いですワね。


       ウフフッ・・・。

       いずれにせよ、脱落者が増えるのは、

       ワタクシにとっても、喜ばしい事でありますが。)」


 セリスさん、最近天然を装うそのメッキが、

 じわじわと剥がれて来てます。

 それでも、隙を見せることなど無さそうですが、


 元の悪戯を極めたような、あの女帝的性格に戻ると、

 冗談ではすまない策略で、

 天下までかき乱す危うさを秘めています。


 その知力は『98』ですが、

 その後にこっそり付いている(×10倍)という、

 恐ろしいオーバードライブのステータスが、他の賢者たちをも脅かし、

 愛しいエリスねーさんを守り抜いています。


 何処かの天下を統一するくらいの知性を持つセリスさんは、

 それまで賢者に恵まれなかったセバリオスさんにとって、


 (内訳は、エリスねーさんと、

  せりかさんとたいして変わらない性格の、美形のフェルツさん。)


 得難い軍師さんです。


 (全国軍師ランキング 暫定1位のセリスさん。

  武力0 知力98+10倍のオーバードライブ。)


 そう言う事情で、

 セバリオスさんに選択肢の無かったので、


 実際のセリスさんは、その地位を利用し、

 かなり、裏の裏まで裏の人だったりします。


 と同時に、

 何故か、一番の忠義者でもあるのですが・・・。


 そんなセリスさんですが、

 自身に最も貢献度の高い、ためぞうには、

 かなり過大な期待をしており、


 借りを作るのを極端に嫌うその性格から、

 ためぞうには、とても協力したいと願っています。


 ためぞうが冒険に出て、ヘタに天下統一などしてしまうと、

 エリスねーさんを縛るものが消え去って、

 遠慮なく、色恋が可能になってしまいますので。


 セリスさん、

 余裕で天下統一に導くだけの自信はあるのですが・・・。


セリスさん(出来れは末永く、

      永久にとも願ってはいるのですが、

      望んでも叶わないのは、分かっているのです。


      ですので、

      せめて世界の崩壊が始まるその瞬間までは、

      悦に至っていたいのですよ、

      フフフッ・・・。


      ですからワタクシには、

      セバリオス様にお仕えし、

      その時期(ラグナロク)を遅らせる義務があります。


      真に世界の平和を願っているのは、

      決して嘘ではないのです。


      ワタクシの望む形の、真の平和になりますが。

      ウフフフフッ・・・。)


 
 いろんな思惑はありますが、

 策を巡らせワナを操る側のセリスさんの、

 目が届いているその間は、


 ためぞうは、確立変動の超高確率状態で、

 そのピンチを無意識に回避出来ています。


 ためぞうに触れているだけで(気持ちだけでも可)、

 同様の効果が得られる、ハンパ無い加護力なので、

 お守り代わりには、とても重宝されますね。


ためぞう「オレの背中に、強大な見えない力を感じるが、

     考えてはいけない。


     オレの知力『3』では、悩むというその事に自体に、

     ほぼ意味はないのだから。


     ・・・ちと悲しいが、これがためぞうの今の限界ィ!!」



 場所は変わって、1Fのゲームセンターでは、

 サフィリアさんと一緒に、対戦ゲームを協力プレイで楽しんでいる、

 人物紹介の終わっていない、

 純白にとても近い美白の持ち主で、

 薄幸の美少女、レミーアさんは気付きます。


レミーアさん「(そ、その言い方は、あんまりっすよッ!!


       ・・・たしかに存在も、幸せも、

       決して豊かとは言えないこの胸だって、


       お隣の誰かさんに比べれば、

       薄っすらなのは、おおむね当たってますが。)」


 あ、『薄幸』付けたのは、レア感出す為ですよッ♪

 そういう子って、何となく殿方の胸の奥底に、

 響くパターンもあると思いませんか?


レミーアさん「(では、それはそのままでw)


       ねえ、サフィリアさんっ、

       この上に、エリスさんの気配を感じますよ。」


サフィリアさん「えーー!?

        どうしてそんな事分かっちゃうんですか?


        ・・・い、いるんだ。」


 何かといろいろ持ってる、

 銀髪の美少女副生徒会長さんのサフィリアさんです。


 そのけしからんナイスバディに、

 ボタンのはち切れそうな、

 魅惑の学園帰りのブレザー姿は、


 野郎どものゲーマー魂に、闘魂を注入しまくってます!


 戦場と化したゲーセンの中にあって、

 憩いオアシスの雰囲気を醸し出し、

 癒えたファイターを次々と、また戦場へと駆り立てる、

 おっとり美少女のサフィリアさんです。


 ここは、一つハイスコア取って、

 店内の電光掲示板に、ハンドルネームを飾ってやりたいものです。


常連のA氏「それがしの渾身のコマンド捌きを、

      今ぞ魅せる時でござるヨォ!!」


常連のB氏「き、気になって、ゲームに集中できないんだなっ。


      チームバトルは、お二人に任せて、

      ばっちり癒されとくんだなっ。」


VIPのJ氏「フハハッ、

       しっかりと堪能しとくんだなッ。


       メンツが変わった感じは受けんが、

       トレンドのスポットで安定して席が確保できるのは、

       このオレの、店への熱い愛情が成せるワザだぜッ!!


       戦いはまだまだ前哨戦だ、

       あの不沈の『バトルシップ・エンプレス』が現れるまで、

       せいぜい、勝ち残っておく事だなッ。」


 外野は盛り上がっていますが、

 そんな店内の中でも、レミーアさんの千里眼は、

 的確にエリスねーさんの存在を捉えています。


 レミーアさん、特技の千里眼が大変便利で、

 天体観測も、スコープいらずです。


 ただ、存在を詳しく知るには、

 条件もありまして、


 得たい情報分の対価を払う必要があるので、

 ねーさんの映像を確認したい場合は、

 同量のハズカシさと情報漏えいをしなくてはいけません。


 高度になると裸踊りクラスまで行きます。


レミーアさん(絶対、やらないっすよッ!!)


 ・・・問題は、その需要ですネッ。


レミーアさん(・・・。


       (: ω:)< クーッ、何にも言えねぇー。 )


 まあまあ、絶壁のリンカよりは、

 需要があるでしょうから。


遠くのリンカさん <(日々、すくすくと育っているのですッ!!

           あと一年もすれば、ムフフ・・・。)


 ちっちゃい少女の妄想は置いといて、

 レーダ表示のマーカー感覚で、

 エリスねーさんに気付いている、


 レミーアさん、続きをどぞ。


レミーアさん「最低五時までは、負けられないっすねッ!


       今日はいつになく、待合の席が混んでますから。」


サフィリアさん「おお、レミーアさん、

        さすがは、トップランカー入りする程の気迫ですっ。


        お泊り会に発展するといいですね~。」


 少女たちも、各々のテンションで盛り上がっています。


 縦横に激しく揺れまくる、

 サフィリアさんのその豊かな胸へと、

 目が誘われたその時点で、


 野郎どものゲームオーバーを意味します。



  ・・・バシューーンッ!!



 B氏の操る、重装甲の六連装レールカノンの巨体が、

 天空方向に無数の弾丸を散らしながら、

 爆煙を上げて、轟音と共に大地へと沈み行きます・・・。


B氏「・・・後は、まかせたんだなっ。」


A氏「B氏~~~ッ!!


   ・・・後の事は、それがしに任せるナリィイ!!!」


 B氏はそそくさと、

 サフィリアさんの後ろの方の列に、

 並びに行ってしまいます。


J氏「フハハッ、

   テメエに正直なのは、若さの故の役得だなッ!!


   年輪を重ねていくだけ、

   しっかりと冒険とキラメキをその胸に刻んでおく事だぜッ!!


   戦場で必要なのは、その経験がもたらす、

   至高の心の支えだからなッ。」


 野郎どもが無駄に熱くたぎらせるその熱気で、

 新装開店のオープンからの勢いは、まだまだ続いています。



 ここで話は再度、上の階へと戻ります。


 オフィスを新たに移したばかりのその日は、

 デスクのセッティングや、書類の整理などに追われ、

 予定では、数日かかるものと思われていましたが、


 エリスねーさんのテキパキとしたその動きを、

 皆さんが手本にした為、

 3時頃には、ほとんど片付いてしまい、

 後は送られて到着する、翌日以降の荷物を待つだけになってしまいました。


 基本、おせっかいなエリスねーさんは、

 不器用な人を丁寧に手伝ってくれるのです。


 それが目当てで、頑張ってる感を装う人にも、

 分け隔てなく、傍に来てくれるので、


 それはまずいなと、自身を反省をしながら、

 良い方向へと気持ちを持っていかれ、


 遅れてる人を手伝わなくてはならないと、

 そんな使命感を植えつけられ、

 さらに、オフィスの効率を上げていきます。
 

 その、ほのかに香る素敵な芳しさは、

 まるで湯上りのソープのようにフレッシュで、

 どうやって、そんな香水を選んでいるのか、

 他の女子社員さんたちを困惑させつつも、

 惹き付けていますが、


 それは、ためぞうがバイトで貰ってくる、

 ファルさん所の入浴剤の香りだったりします。


 秘伝の配合で調合された、おじさんの花を愛でるその想いが、

 なんと24時間も持続する、

 そのお花の香りの入浴剤を生み出したのです。


エリスねーさん「部長、

        五時まで、まだ時間もありますので、

        外にご挨拶に参りたいと思います。」


 仕事モードのエリスねーさんは、

 百戦錬磨のおじさん達でも、ドキッとさせられるほど、

 清楚で気品に溢れた、美しい社内の華なのです。


 その声も、澄んで耳に柔らかに届くほど綺麗な響きで、

 どうしてこれを、仕事明けには出来ないのかが惜しまれるくらい、

 いい声してるのです。


部長さん「エリス君が行きたい時は、許可はいらないから、

     でも、そこまで頑張らなくてもいいんだよ。


     ノルマだって毎回一位だし、

     エリス君のおかげで、楽に管理職やらせてもらってるから、

     凄く助かってるんだ。」


 実はこのオフィスの部長さんに限らず、各管理職の方々も、

 まだ30代かそれ未満と、とても若いです。


 エリスねーさんが入社して以来、

 この部署の成績が、他を圧倒して瞬く間に、

 皆さんが出世街道を駆け抜け、

 この部長さんも、わずか数年前は係長になったばかりの方です。


 新入社員の時のエリスねーさんには、

 世紀末覇者伝説(一部、世紀をまたいで完結。)で、

 全国制覇を果たした、レディース時の一世風靡魂が、

 継続状態のままでしたので、


 高校三年で全国制覇を成し遂げなければならない、

 そのノウハウと、生まれ持ったカリスマ性で、


 周囲にその気迫を知らぬ内に振りまいてしまい、

 一気に、花形部署まで駆け上がったのでした。


 部長さんとしては、まだこの雰囲気の中に、

 留まっていたい気持ちで、

 これ以上の出世を遠慮している感じです。


 以降の役職は、栄転となって、

 この心地いい職場の方たちとは、

 離れ離れになってしまうからでもありますね。


 なので、23Fフロアの社員全体の平均年齢が20代と、

 まるで大学のキャンパスの延長線みたいになってしていますが、


 時に、おじさんの需要もあったりするので、

 クジ運のいいおじさんが、転属されて来る事もあり、


 良き知恵者として、相談役などを引き受けたり、

 そのまま指導で親密になって、

 社内結婚というパターンで、めでたいパターンもあります。


 年の差なんて、超える愛もあるのですッ!

 と思いますです・・・。


 ですが、その恋話とは無縁の位置にある、

 エリスねーさんは、


 自分の知らないうちに、

 恋愛運を吸われているような感じです。


エリスねーさん「(プルプルッ・・・、


        何か変な事言われてるような、

        そんな寒気が、背中にゾクッと来たぞ。)


        あ、では出てまいります。」


 と、一礼してオフィスを後にするエリスねーさんですが、

 ねーさんは少し変わってて、

 一人の時は基本エレベーターを使わず、

 階段の方へと歩いていきます。


 どんなに鍛えても、そのラインが崩れない、

 綺麗な脚をしていますが、

 落ち着きのその無い性分は、エレベーター内でじっとしているより、

 少しでも身体を動かしたいという、そんな軽い感じです。


 幅広の階段は、外の景色が見れるように、

 透明度の高い硬質ガラスが用いられ、夕暮れ前の海岸線を一望出来ます。


 23F以上の高さから見れるその光景は、

 海面の光が美しくきらめき、

 エリスねーさんの家まで、きちんと見渡せます。


 直ぐ下は、セバリオスさんの会社が入っているので、

 ねーさんは無意識に、上へと階段をあがっていきます。


 24Fはまだ、お引越しが忙しそうなので、

 次の25Fを目指しますが、


 そこには、屋内で180度以上に広がる、

 オーシャンビューで楽しめるよう、

 少し突き出るように空間があり、

 天井から窓までが、一枚の硬質ガラスで覆われた、

 景観の素晴らしいテラスがありました。


 そこで、何処か見覚えのある、

 女性の姿を見付けます。


エリスねーさん「ん!? もしかして、ツキノ(月乃)?」


ツキノと呼ばれた女性「あ、エリス姐さーんッ!!」


 そのツキノと呼ばれた女性は、

 遠巻きにギャラリーが出来るほどの、

 端正で気品溢れる顔立ちと、

 素晴らしいプロポーションの持ち主です。


 艶やかに腰まで伸びる、長く美しい黒髪の若い女性で、

 赤いルージュの魅惑的な唇に、

 その瞳はエメラルドのような輝きを放っています。


 家にいる時とは比較にならない美貌を、

 ビルの屋内で放っているエリスねーさんにも、

 引けを取らない美しさです。


 エリスねーさんは周りに聞こえないような小声で、

 そのツキノさんに、こっそりとささやきます。


エリスねーさん「・・・あのね、ツキノ。


        あたしら、同じ年じゃん、

        タメなんだから、もう姐さんって呼ぶのやめてw


        てか、また遠くからこっちに来たもんだね。」


ツキノさん「はいっ、エ、エリスさんッ!!


      何時か再会出来る日を願っていましたが、

      ロンドン支局から、急に転属が決まって、

      聞いたら、エリスさんのオフィスも入ってるって、

      殿方たちがウワサするじゃありませんか。


      23Fという事なので、ここでお待ちしてました~。」


エリスねーさん「前っから、

        勘は人一倍いいからなぁ、ツキノは。

        あと、あたしの事もエリスって呼んでいいから、

        変な気回さないでくれよっ。」


ツキノさん「い、いえ。

      私は尊敬するエリスさんを、そう呼ばせて頂くには、

      まだまだ未熟者です。


      気にならないなら、私の心の準備が整うまで、

      エリスさんと呼ばせて下さいね♪


      ・・・でないと、私の口から、

      エリスさんの全国統一時代の武勇伝が、

      今にも熱く、たぎるように溢れてきそうで、

      語り尽くしきれませんッ。」


エリスねーさん「・・・。

        まあ、変わってないようで、

        ちょっと安心したよ。


        飲み物取ってくるから、待ってて。」


ツキノさん「はーい。」


 エリスねーさんとツキノさんは、

 魚市場のノルンさんが前に率いていた、

 九州八州連合時代からの、仲良しのお友達さんです。


 ツキノさんは、文武両道の良家のお姫様ですが、

 仲間内で、一際輝いていたエリスねーさんを、

 どういうわけか、一方的に敬愛してます。


 特に性癖に問題のある方かというと、

 そうではなく、むしろかなり常識ある方です。

 女子高生時代は、お茶目な面もありましたが・・・。


 実際のところ、体術や武道ではツキノさんの方が、

 ねーさんよりかなり達者でしたが、


 ねーさんのその持ち前の、強いリーダーシップに、

 マジなリスペクトしてしまい、


 箱入り娘のお上品な育ちなのに、

 白く清楚なワンピースのお嬢様の格好のまま、

 ヤンキー溢れる最前線に立つや、

 ねーさんもよりも遥かに、相手から恐れられて、

 また憧れられていました。


 一度、見えない疾風が木の葉を巻き上げ、

 ツキノさんの周囲を舞うと、

 白く繊細なその手も触れる事無く、相手が次々と竜巻のように吹き飛ばされ、

 白目をむいて気絶した、憐れな姿で駆逐されてゆくのです。


 性格はとても善良なので、仲良くしておけば頼もしい存在です。

 来る者は礼を持って接し、去る者を決して追わない、


 ある意味、きっちり筋の通った方で、

 世紀末覇者伝説で、『華麗なる鬼神』としてその名を馳せていました。


 と、エリスねーさんが二つの紙カップを持って、

 ギャラリーに笑顔を振りまきながら、戻って来ました。

 抹茶のいい香りがします。


エリスねーさん「抹茶ラテ、好きだったよね?」


ツキノさん「えーーっ、お覚えてくれてたんですか?

      感激ですッ!!」


エリスねーさん「ねえツキノ~、

        アヤノ(文乃)とアサカ(亜紗花)は、

        元気でやってんのー?」


ツキノさん「あ、はい。

      妹のアヤノも、一緒に住んでたアサカちゃんも、

      元気にしてますよ。


      アヤノはロンドンの大学に通ってますが、

      どうもこっちに来たがってるようでした。


      私と一緒にイギリスに付いて来てくれた、アサカちゃんも、

      同じカレッジに通っていますが、

      アヤノの手に負えるか、そこはまだ連絡取り合ってるところです。」


エリスねーさん「アヤノは16だし、アサカは15だろ?

        大学に飛び級とは、すげーなっ!」

 エリスねーさんは、口調だけは元に戻っていますが、

 周囲の方たちには、普段と変わりなく聞こえています。


 エリスねーさんを見つめるその眼差しが、

 その変なフィルターになっているようで、

 ツキノさんの魅力も重なり、

 相乗効果で、まるで見えない壁があるかのようです。


 ツキノさんの席につくその姿は、

 気品があって、とても優雅に見えます。

 見ている人には、背景に薔薇や百合などが映っているかも知れません。


 隣のエリスねーさんも、その姿を鏡に映したように、

 可憐な感じです。


 この魅力を仕事中ではなく、いつでも発揮出来るようになれば、

 さぞかし便利な事でしょうが、

 残念なのは、「責任感」というものから開放された時点で、

 イモジャージで、外に出て回るような、

 女子力の低さが顔を出し、油断も隙もありまくりになってしまう事です。


 エリスねーさんの場合、影の秘密結社、

 『おねーさんを、みんなで共有しようよの会』みたいなのが即席で生まれ、

 アイドルの親衛隊のような、鉄壁の防御を見せる所です。


 ツキノさんも、影でそういう動きをきっと見せることでしょう・・・。


 ねーさんとツキノさんが、楽しげに会話していると、

 ねーさんのスマホに、業務連絡が入ってきます。


エリスねーさん「おお、もう今日の仕事が終わってしまった・・・。


        うーん、五時くらいまでは時間潰してくれないと、

        他のノルン姐とかの仕事も終わんねーから、

        結構、ヒマなんだよね。


        そっからなら、すっと家に帰っても、

        カラオケとか行っても、全然気にならないんだけど、

        お日様が頑張ってる内に、だるんってなるのは、

        なんか気がすーっと抜けていっちゃって、

        凡ミスかましそうなんだよねぇー。」


ツキノさん「エリスさんのスマホ、カッコいいですねー。

      私も同じ物にしたいなーっ。


      とりあえず、番号とか交換してもらっちゃって、

      いいですか?」


エリスねーさん「あ、そうだね。

        せっかくだから、よろしく頼むよー。


        セバリオスがくれたんだけど、

        あたし、電話以外の機能とか、ぜんぜんわからんのよ。

        よかったら、後でいいから教えてね。」


 機械オンチのエリスねーさんから、ツキノさんがスマホを預かると、

 ささっと、QRコードを使って、アドレス交換を済ませてしまいます。


 エリスねーさん、ぽっかりと口を開けて、

 一瞬のその魔法に驚きを隠せません。


エリスねーさん「おおっ、

        それって、私にも出来るようになるの?


        同僚とか、取引先には名刺もらって、

        名刺入れから、直接電話とかしてんだけど、


        いま、その四角いの、

        名刺にも付いてたりするよね。」


ツキノさん「ああ、エリスさんから、

      そんな事言われちゃうなんて、とっても光栄ですー。


      この私でよろしければ、

      ご都合の良い日に、いつでもスケジュール開けてお伺いしますっ。


      (他の方の目もありますので、

       この場でお教えするのは、エリスさんに対しての非礼です。


       うふふっ、逢える理由が出来ましたねッ!)」


エリスねーさん「き、気持ちはありがたいけど、

        教えてって言ってるのあたしの方だから、


        ほんと、無理とかしないでね。」


 弾ける笑顔を見せるツキノさんに、そう言うエリスねーさんです。

 ねーさんは、今回も「おねーさん」扱いされてしまうのかと、

 同い年のツキノさんの、そのフレッシュさに当てられながら、


 「恋人」や「婚期」という、ワードがまた遠のいて行くようで、

 秋風のように、さらりと通り過ぎちゃうんじゃないかと、

 何気に、遠い空を眺めちゃったりしています。


 そんな時、お花の配達を終えたファルさんが、

 偶然、二人の前を通りかかります。

 二人のオーラのフィルターは、ファルさんには効かないです。


ファルさん「あ、エリスさーんっ、


      ・・・と、どうしてここに、

      ツキノさんがいらっしゃるのッ!?」


 エリスねーさんは、いつものおさげにエプロン姿のファルさんに、

 ニコッっとしていますが、

 ツキノさんとファルさんは、どうやら面識があるようで、

 互いに奇妙な雰囲気を醸し出しています。


 と、そこにエリスねーさんが、

 ファルさんに声をかけて、割って入ります。


エリスねーさん「ファルさん、いつもありがとねッ!

        ためぞうも世話になってるし、


        あのいい香りの入浴剤、毎日使わせてもらってますw


        ああ、ツキノ~。

        この方、色々お世話になっている、

        商店街のお花屋さんで、

        看板娘さんの、ファルさんねっ。


        ツキノもこっち来たんだから、

        一緒に、お花とかも見に行こうね。」


 ねーさんのその言葉が、

 二人の雰囲気を、一気に鮮やかな花色に変えました。


 はいっ! と快活に頷くツキノさんは、

 どうやら、エリスねーさんとお出かけイベントの発生で、

 ファルさんの事が一気の心の中から、吹き飛んでいます。


 ファルさんも、実家でのいざこざを出さずに、

 穏便にやり過ごせるならと、

 この町に来て芽生えた、新たな気持ちで、

 素直な心で、ツキノさんと挨拶を交わします。


 この時、二人はいかに、「エリスおねーさん」が、

 大きい存在かと言うのを、改めてその身に感じるのです。


 余談になりますが、

 実家の方では、ファルさんは新規に台頭した新たな女帝として、


 また、ツキノさんは、

 やや険悪寄りの、強大な勢力を誇るその覇者を支え、

 天下に鳴り響く、至高の剣の達人として、

 かなりの有名人さんです。


 でも、ここは長崎ドラゴンタウンの、

 エリスねーさんの暮らす、穏やかなる地。


 そんな因縁を持ち出して、ややこしくなるより、

 エリスねーさんを共有し、共にきらめきな日々を過ごせればと、

 もうここは、仲良しアピールをするしかありません。



 エリスねーさんを困らせる不届き者は、

 ねーさんに近寄る資格などないのです。


 本気の笑顔で、二人とも心の底から、

 仲良くしたいと願っています。


エリスねーさん「あ、お知り合いだったの?

        なら良かった、うん。」


 二人は手を取り合っての、仲良しアピールです。


エリスねーさん「あ、ファルさんも、

        あたしがスマホ使いこなせるようになったら、

        アドレスとか、教えてねっ。


        いまさらながら、スマホの勉強中ですっ!」


ファルさん「あ、交換だけなら今でも嬉しいですーっ!

      でも、エリスさんのスマホ、

      カッコイイですねー。


      私の、ちょっと古くなってきたので、

      一緒の機種に変更しちゃってもいいですか!?」


エリスねーさん「おお、それならセバリオスに言っておくねっ。


        あいつから貰ったものだから、

        しっかりセバリオスのアドレスは入ってるんだけど、


        あいつの会社の中に、スマホの代理店とかあるんじゃないかな?

        手広く商売やってるから。


        ツキノとファルさんの分、伝えとくね。」


ファルさん+ツキノさん「はいっ! ありがとうございますー。」


 こうして、席にファルさんが加わると、

 エリスねーさんがすぐに気を利かせて、

 ファルさんの飲み物を取りに行ってくれました。


 いつもと違う一面を魅せながら、

 ねーさんから手渡されるミルクティーに、ファルさん感激ですっ。


 会社のエリスねーさんが、普段とこんなにイメージ違うんだと、

 ファルさん、新たな発見に喜んでいるようです。


 こうして、三人は世間話にしばしの間、

 花を咲かせるのですが、


 そのエリスねーさんが下りて来るのを待っている、

 ゲーム好きの二人の女子のうち、

 レミーアさんの方が、その25Fの一角で展開される、

 あまりにも強大な、その三つ女子力を探知するのです。


レミーアさん「サフィリアさんに、お知らせがあるっす。」


サフィリアさん「はい、何でしょうか。」


 一見、のん気にゲームの筐体に座る、

 おっとり系の美少女、サフィリアさんですが、

 その画面の向こうでは、とんでもなく激しい勝ち抜きバトルを、

 難なくこなしていました。


 レミーアさんとチームを組んで、連戦連勝中のサフィリアさんに、

 レミーアさんは、息を飲んでこういうのです。


レミーアさん「ビルの上の方に、エリスさん以外の凄いプレッシャーを、

       二つも感じるっす。

       たぶん、その内の一つは、お花屋のファルさんで、


       肝心の一番強力な、セバリオスさんクラスのパワーの持ち主が、

       誰なのか想像が付かないっす・・・。


       気を抜かずに、しっかりと構えて下さいっすよ、

       サフィリアさん。」


サフィリアさん「えーっ!?

        そんな事になってるんですかー!!


        ど、どうすればいいのかな?

        ためぞうさんを呼んで、何とかしてもらった方が、

        いいんでしょうか。」


 サフィリアさんの二匹のネコちゃんたちが、

 何やら、衛星無線機のような物を取り出して、

 ザワ付き始めます。


> ブラボーIII(ネコちゃん)「ジャミングが強力すぎて、

                 軌道ステーションに繋がらねぇぜッ!!」


 そのネコちゃん達の会話がわかるのか、

 休憩中のJ氏が、二匹の元へとやって来ます。


J氏「残念だが、外部との通信が遮断されてやがる。


   ゲームの回線や、通常の電波はどういうワケか、

   オンラインに保たれているが、

   暗号通信の一切が、どうにもならねえ。


   ここは腹を括って、互いに生き残るしかなさそうだな、

   ブラボーIII 」


ネコちゃん I 「そうですかニャン?

         特務上級軍曹さんが言うなら、仕方ないのニャー。」


 ネコちゃんたちは、サフィリアさんに、

 ためぞうとは、連絡が付かないとそう伝えます。

 普通に電話は通じるのですが、

 それではネコちゃん達も、J氏も納得出来ません。


 漢の意地というか、こだわりなのか、

 あえてピンチを招いているようにも見えなくもありません。

 ここで、自分をアピールしておきたい、

 企みのような感じにも見て取れますね。 


J氏+ネコちゃん達(無論、熱い戦いを期待してるぜェーーッ!!)


サフィリアさん「・・・そうですか。


        では、ここは皆さんとご一緒に、

        頑張るしかなさそうですね。」


J氏「いいか野郎ども、

   我らがお姫さんたちを守り抜く為に、

   共に戦おうじゃねーかッ!!」


 J氏のこの一喝に、アリーナに集いしファイター達は、

 共にその心を一つにし、

 特殊チーム「闘魂野郎 Jチーム」を結成するに至ります。


 (J氏を筆頭に、A氏とB氏が、

  サフィリアさんたちのチームに加入。
  
  
  ・・・J氏以外が戦力になるかは、皆さんも疑惑ですが、
  
  その勢いに分け入るだけの熱さがなかったので、
  
  
  サフィリアさんチームに乱入を仕掛けてくる、
  
  全国のプレイヤーチームをブロックする為に、
  
  腕の立つプレイヤーを軸に、残りの筐体を使用して、
  
  長崎ドラゴン店への侵攻をブロックするというポジションに回ります。)


 憩いのオアシス的存在のサフィリアさんと、

 あと、ついでにレミーアさんも守ろうと、

 理由や状況など分からなくとも、

 同じ時間と共有したいという一心と勢いで、

 その戦いに参加します。


 友情っていいですネ・・・。

 という事でッ!!


レミーアさん「取って付けたみたいな、私のポジションには、

       いささかの納得いかない所もありますがッ!!


       協力していただけるっていうのは、

       なんだかありがたくて、照れるっすね。」


サフィリアさん「皆さん、ありがとう!!


        (でも、ホントに、

         一体・・・何の為に、戦うんでしょう。)」


 熱くなるのに、理由(ワケ)なんていらないのです。


 結果、絆が生まれるなら、それでいいじゃないですかっ。


 野郎共も、ちょっとした秋のイベントみたくして、

 きらめきたいんですよっ。


 戦いのルールは、分かりやすいですが、

 それだけに奥深いものもあるようです。


 ようは、イカしたマシンに乗り込んで、

 (カッコいいロボや支援機、対艦砲搭載のユニットなど多種多様です。)


 自分を戦場へ運んだ母艦を守りつつ(ゴールキーパー的な)、

 相手の母艦を撤退させれば(ゴールを決めれば)、勝利です。


 こうして、ファイターたちは旅立ち、

 戦場へ到達した空中母艦のカタパルトから、

 次々と発進してゆきます。


レミーア中尉「行きますっ!」


 レミーアさんは、上級者向けの高速ロボットで発進します!!

 その装甲を削って、細いフレームを採用した人型のマシンには、
 防御力こそありませんが、それを補う速度と、

 バックパックに、折りたたみ式の長距離ライフルが搭載されています。


 サフィリアさんは、母艦の先端に立ち、

 母艦の防衛の任務です。


 その中世の女性騎士を模した重装甲のマシンには、

 母艦に連結された高出力のシールドと、

 長い槍先を持つランスの形状をした、

 遠近両用の装備が右アームに固定され、


 重厚なそのランスには、後方支援用の高出力長距離ビーム砲と、

 対空用の拡散ビームが搭載されています。


 J氏、A氏、B氏は略です。


J氏「そりゃねーだろッ!!」


  バシューーーーンッ!!!


 突然、発進中のカタパルトの脇を、

 巨大の閃光の帯が、空を貫いて通り抜けますッ!!


 そのビーム攻撃を、母艦の直撃コースから逸らしたのは、

 眩いプラズマを発する、サフィリアさんの大盾でした。


サフィリアさん「・・・相手は、問答無用のようです。


        すぐに離艦して、散開しながら、

        狙われないように気をつけて下さいッ!!」


 そんなサフィリアさんの勇敢な姿は、

 館内の大型ディスプレイにも映されています。


 まさに、この地に舞い降りた戦いの乙女、

 「ワルキューレ」のようですッ!!



 こうして、姫たちと野郎どもの長い戦いが、

 その幕を開けるのでした・・・。


               つづきます。
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ホット、ためぞうプラス。 - 2016.8.3 -

2016年08月03日 17時49分54秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-
   『ホット!! ためぞうプラス。』


 ここ最近、

 2020の五輪ピックを控えたせいか、

 ためぞうの暮らす、長崎ドラゴンタウンの発展が

 著しくなって来ました。


 大会は、関東管領の北条さんちのセントラル東京で行われますが、

 海外旅行客も増えた昨今、

 たくさんの港があるドラゴンタウンにも、

 その余波がやって来ました。


 成長率2000%の勢いです。


ためぞー「発展しすぎだYO!!


     オレの憩いのゲーセンが、

     70Fの高層タワーになってるなんて、

     ありえねーよっ。


     でも、行っちゃうけどね。」


 爽やかな朝の陽射しを浴びて、

 ラジオ体操を2セット終えた ためぞうは、


 エリスねーさんの姐さん的な存在の、

 ノルウェー出身の美人の敏腕経営者、

 ノルンさんの仕切る、

 長崎ドラゴン港に、バイトに来ています。


ノルンさん「ためぞうは、働きもんだよなぁ。


      あんたが来てからウチの連中も、

      やたらとやる気持ってくれて助かってるよ。


      野郎たちが頑張るのも、

      サフィリアさんや、レミーアさんや、

      鈴木さん、佐藤さんみたいな、

      フレッシュ美少女さんが増えたのが、

      一番の理由だろうけど、


      連れてきたのは、ためぞうだからな。

      ためぞうは、使えるヤツだと関心してます。」


 プラチナブロンドの長い髪を潮風に揺らし、

 絶世の美貌の持ち主である、

 ノルンさんは、そう言って微笑みます。


 そのスタイルは、メリハリのある、

 スーパーダイナマイトボディで、

 レディース時代には、九州八州連合をまとめていた、

 この町のカリスマさんです。


 熱いイベントが連発してもおかしくはない、

 このサマーシーズン。


 でも何故か、

 観光客も多いこの港町で、

 この麗しのノルンさんには、

 誰からもお声が掛かりません。


 水着も、うきわも、準備万端なのに、

 サマーな思いを一度もしていないのです。


 海には、毎日来ているのですが、

 ノルンさんは、そっちではなく、

 サンシャインで溢れた、砂浜が眩しい、

 ビーチの方へ行きたいのです。


 ノルンさんは、

 ためぞうに得意の握り寿司(主にサーモン。)を振舞って、

 こう言います。


ノルンさん「ためぞーは、

      『あの夏の日のひと時。』とか、

      充実して送れてる方?」


ためぞう「それは、もちろん充実してるよ。

     満喫しきったと言っても過言ではないかも。」


ノルンさん「えっ!?


      もう、ビーチイベント終わっちゃったの?

      私、乗り遅れちゃったの?」


 ためぞうの言葉に、

 おろおろとするノルンさんの姿を、

 漁を終えた海の男たちや、

 ネコ船長さんや、ワンダ艦長さんも見つめています。


 彼らもまた、

 今年のサマーイベントを経験していない方々です。


ためぞう「ビーチ?


     そんなの、亀吉さんに頼めば、

     プライベートビーチ貸してくれるよ。


     でも求めてるのは、ビーチでの出会いや、

     突然の異性との、ラッキーイベントみたいなヤツだろ?」


ノルンさん「そーなんだよぅ。

      知ってるなら教えてくれよう・・・。」


 ノルンさんの握る寿司ネタの種類が増えて来ました。

 コンビニで買って、自分へのご褒美に取っておいた、

 パインアイスも出てきます。


 ノルンさんの夏への想いは、それだけ熱いのです。


ためぞう「むしろ今、賑わってるのは、

     亀吉さんちのネクサスビルにオープンした、

     ゲーセンとかカラオケとかの、

     アミューズメント施設じゃねーの?


     あの渚の君の待つ、

     ビーチに行くには、

     どうやったらいいのか計画とか、

     事前の雰囲気が大事だからね。


     でも、ゲームやカラオケだと気軽さが違う。

     ようは、どう夏を『ENJOY』したかって事じゃね?

     と、思うためぞうです。


     夏じゃなくても変わりなく遊べるけど、

     グランドオープン的な勢いは今かなぁ。」


 ためぞうは、朝からご馳走を頂きながら、

 ちょっぴりと達観したような事を言いました。


ノルンさん「ためぞーは、頼りになるなぁ。

      冒険行くときは、言ってくれれば、

      いつでも援軍送っちゃうぞ。


      そかそか、

      新スポットは、大事だよな。

      ビーチに固執し過ぎた気がしたぞ。」


 ノルンさんは上機嫌になって、

 次のご馳走を用意しようとしましたが、


 ためぞうは、その気持ちだけで十分と一礼して、

 ドラゴン港を後にしました。


 ためぞうの言葉に聞き耳を立てていた男たちも、

 ノルンさんも、何だかその気になって来ます。


 それが噂となって、

 ドラゴンタウンへと広がって行くのでした。


 あっという間に広がった噂で、

 さらに大盛況になったゲームセンターへと、ためぞうは向かいます。


ためぞう「人で溢れかえってんのなー。


     ・・・これじゃ、プレイするのも時間待ちだな。

     公園の駄菓子屋さんにでも、行こうかな。


     この青空の下、

     シュパッと、公園の木陰のベンチで、

     ラムネを開けるのもいいよなぁ。


     ためぞうは、予算に限りがあるのです。」


 ためぞうは、

 普段から、ソロでの行動に慣れていますが、

 新装開店期間中のゲームコーナーも、

 実に魅力的ではありました。


 高層ビルの1Fのゲームセンターの入り口で、

 入るかどうか迷っていた、ためぞうに、


 ビルの隣の入り口から出てきた、

 高層マンション住まいの、

 夏らしい格好をしたラウエルさんが、
 
 ためぞうを見つけて駆け寄ってきます。


 白光の下に照らされた線の細い金髪は、

 いつものチャイナ風の三つ編みではなく、

 今日は、ゆるふわなロングのソバージュで、


 清涼感漂うの白のTシャツ姿に、

 下は、きわどいホットパンツという、


 なんとも、目の保養になる格好で、

 ためぞうに話しかけてきました。


 日中の陽射しが、あまりにも眩しすぎる、

 中国人のお父さんとフランス人のお母さんを持つ、

 ハーフの美少女、ラウエルさんです。


ラウエルさん「ためぞうさん、こんにちはアル。」


ためぞう「おお、ラウエルさん。


     さすがに大企業のお嬢さん、

     いいとこ住んでますね。


     今日は、お花屋さんの仕事はお休みですか?

     バイト、あまり行けてない自分が言うのもあれっすけど。


     (いかん! 誘惑に釣られるな。

      何でもいいから、オレでは解けないものを考えるんだ!!)」


 ためぞうは、ラウエルさんの魅惑の脚線美を前に、 

 心の中で念じるように、

 ひたすら意味のない方程式を巡らせ、


 なんとか夏の誘惑に陥落させられないよう、

 平静を保っています。


 きっと、ラウエルさんは、

 お父さんのラウ会長が、亀吉さんの友人という理由で、

 ゴージャスなオーシャンビューのマンション暮らしなのだろうと、

 ためぞうは、セレブな想像をしてしまいます。


 ラウエルさんは、ためぞうの事を、

 長崎ドラゴンタウンでの、親代わりの亀吉さんの勧めで、

 いいお見合い相手として見ています。


 世の殿方たちの足を止め、

 時を忘れて振り向かせるのに、十分過ぎるほどの、

 スーパーモデル級の、金髪の美少女とのツーショットに、


 端から見たら、ためぞうは勝っていました。


 ためぞうが、もしラウエルさんとお見合いを選べば、

 まず間違いなく、豊か過ぎるハッピーライフを送れるでしょう。


 でもそれは同時に、

 『ためぞう の ぼうけん。』の終止符を意味しています。


 さすがに番外編で、

 自分の物語にピリオドを打つには早すぎると、

 まだまだ、いろんなイベントを想い出メモリーを回収しておきたい気持ちで、

 ためぞうは、額に汗しながら耐えているのです。


 ためぞうには、

 毎度、かなりの忍耐の日々が続きますが、

 ためぞうなので仕方がありません。


 でも、もしためぞうの、

 ラウエルさんルートが成就すると、

 ためぞうのお友達である、

 セバリオスさんと、レオクスさんには嬉しい限りです。


 ためぞうが、サフィリアさんルートから完全に脱落し、

 二人の勝利はより確実になるのです。


 それは円満解決なので、素晴らしい事ではありますが、

 ためぞうは、かなり優柔不断なヤツなのです。


 色んな誘惑に目移りして、

 耐えに、耐えた果てに、

 いろんなチャンスを取りこぼす漢こそ、

 ためぞうなのですっ!!


ためぞう(び、びみょーーー!!


     だが、オレはこの町に来て、

     かなり恵まれた想いをしているのは確かだ。


     謎の裏方さん(ローゼさんや、

     アリサ副会長さん、セリスさん等)たちが、

     オレの運気を極限にまで高めてくれているおかげで、


     過去の五千年のためぞうの歴史には、

     1グラムも存在しなかった、

     数多の出会いやキラメキが、ありふれた日常のように訪れている。


     大いなる意図を感じられてならないが、

     ためぞうは、流れに逆らってはいけない。


     オレは今、ただのためぞう演じなければ、

     あっという間に大河に呑まれて、世界の最果てへと流されるだろう。


     何故ならば、オレは、

     親の遺伝で、レベルは93(MAX 99)とけっこう高いが、


     実績もなければ、知力もわずか3しかない・・・。

     猛者相手に通用する奥義とかも、まだ何も憶えてないっ!


     スキルといえば、逃げ足の速さと来た。


     ノリで流れに抗えば、

     オレの16才というあやしい設定も吹き飛び、

     二度とは戻れぬ辺境へと、冒険の旅に出て、

     今まで、応援ありがとうございました。っと、

     終わりかねんのだ・・・。


     オレ、頑張れ! ためぞうとして。

     ひそかに、目立たず、コツコツと強くなれ!!)


 ためぞうは、青春をゆっくりと確実に、

 でも思い返せば、いつでも強く前へと進めるような、

 そんな感じで送りたいと妄想しています。


 このイベントに満ち満ちた、ある夏の日。


 ラウエルさんのその魅力に悶絶誘惑されながら、

 ためぞーは、何とか平静を保っています。


 いつもはチャイナ服姿で、中華まんなどを販売しながら、

 ファルさんのお花屋さんでも働くラウエルさんですが、


 こんな感じのラウエルさんも可愛いなぁーとか、

 ためぞうは、すでに魅了されかけています。


ためぞう(フゥー・・・、

     落ち着けオレ、流されてはいかん。


     確かに、ラウエルさんはオレなんぞには、

     勿体無いほど素敵なお嬢さんだ。


     だが、オレはまだ学生で、居候の身だ。


     お見合いとか、そういう事を真剣に考えるのは、

     上手くいけば、次に来るであろう、
     

     『ためぞう の おしごと』編に突入するまでは、

     考えてはいかんッ!!


     今は、同じ時間を共に過ごすという、

     その夏の清涼剤のような、空気さえ吸えていれば、

     それで、いいのだ。

     
     踏み込んだ話の展開を上手く切り抜けるには、

     まず、メシを食わせるだけの力を持たねば、

     ハッピーライフは儚い夢で朽ちる事だろう・・・。)


 ためぞうは、割と計画的です。

 お店のポイントとかも、しっかり集めるコツコツタイプです。


 そんな、意外としっかり者のためぞうや、

 趣味に一直線でも、仕事きっちり王子のホーネルのような、

 愉快な仲間たちがいるからこそ、


 ためぞうの上司のセリカさんは、

 チャライ感じで、

 ふらふら遊びまわれるのでした。


 っと、噂に敏感なそのセリカさんが、

 二人の前に、にょきっと現れます。


セリカさん「オッス! ためさん、元気か。


      私は元気で、カネが無いぞっ!!」


 割と露出の高めの格好で、夏をエンジョイしている、

 セリカさんです。


 お小遣いが足りなくなると、よく現れますが、

 露出のわりには、清純さと健康美が漂う、

 爽やか系のスーパー美少女です。


 セリカさんは、とある理由で、

 部下で、ためぞうの仲間のマベルさんの身体を乗っ取って、

 遊んでいます。


 他人の身体と美貌を勝手に利用して、

 ひたすら美味しい思いをしている、愚か者さんです。


 なので、その清純さと爽やかさは、

 マベルさんに備わっているもので、

 セリカさんは、ただその美徳に、

 いいようにあやかっているだけなのでした。


 かなりヒャッホウやらかしています。


ためぞう「おい、セリカさん!

     その身体に、絶対、

     余計な事すんじゃねーぞ。」


セリカさん「ほうほう、


      具体的に、その余計な事とは、

      何のことですかな?」


 試練はいきなりやってきますっ!


 セリカさんは、自分が面白ければ、

 それでいい人なのですッ!!


 ためぞうは、ラウエルさんと大勢の群衆の前で、

 その意味をセリカさんに、

 説明しなければならなくなってしまいます。


ためぞう「おぉう!?


     うんとだな・・・。


     (なんたる迂闊ッ!


      あのアホのセリカさんを前に、

      隙を見せてしまうとは・・・、


      ためぞうは、所詮、

      ためぞうだとでも言いたいのか。


      でも、オレが戦力外になれば、

      もう、ホーネルしか残らんぞ。


      マスオストさんは、星になったままだしなぁ。)」


 ラウエルさんも、観衆たちも、

 いつの間にかいる、

 ゲーセンから出てきたA氏もB氏もJ氏も、


 事の成り行きを、

 まったりと、アイス食べながら見守っています。


J氏「こいつぁ、

   とんでもねえトラップを仕掛けやがったもんだぜッ!!」


A氏「ためぞう氏、絶体絶命と見たリィ!

   奇跡が起こる事を祈って、

   成り行きを見守るでござるヨォ!!」


B氏「なんだなっ!

   二人のヒロインによる、争奪戦のようにも見えても、

   全然違うという、恐ろしい策なんだなっ!!


   ためぞう氏は、

   まったくおいしい想いとかしてないんだなっ。」


 勝手に集まってきた三人組は、

 勝手に場を盛り上げて、ためぞうを追い込みます。


ためぞう「レベル上げてんじゃねーよッ!!」


セリカさん「ほれほれ、聞かせてみ?


      ためさんや・・・。」


 ためぞうの知力は、わずか3しかありません。


 これまでに、様々なトラップを掻い潜って来た、

 ためぞうも、

 これは、かなりのピンチです。


 そんな中、ラウエルさんは、

 そっと、ためぞうの身体に細い腕を絡ませ、

 白肌の眩しい、そのしなやかな足先を、

 ためぞうの股の間におもむろに差し入れると、


 グッとためぞうの身体を引き寄せるようにして、

 その端正に整った顔を近付け、

 舌先で潤わせた淡いピンクの唇で、


 フウッ、と吐息を吹きかけます。


 ラウエルさんは、

 さらに、その柔らかな胸の感触を、

 むぎゅっ、ためぞうに押し付けるようにして、

 セリカさんにこう言いました。


ラウエルさん「こういう事アルか?


       別にためぞうさんなら、構わないアルよ。」


 可憐な美少女ラウエルさんの、その大胆な行動に、

 周囲は驚きを隠せません。


A氏「こ、これが奇跡でござるかァァア!!!」


 ためぞうは、勝っています!


 もの凄く勝っているのですッ!!!


ラウエルさん「これから、ウチに上がっていくアルか?

       ためぞうさん。


       新しい部屋、見せたいアル。」


 ぽっかり開かれた口から、魂がぽわんとなって、

 もうすでに、陥落したと言ってもいい、

 ためぞうです。


 山奥でひっそりとタヌキと共に暮らしてきた、ためぞうに、

 この手のハニーな誘惑に対する免疫など、

 ありはしないのです。


 あっては、ためぞうでは無くなってしまうのですっ! 


 ためぞうは、

 セリカさんにとやかく言う資格は無いんだと、

 甘い誘惑に飲まれながら、そう思うのです。


ためぞう(・・・ああ、

     さらば,オレのぼうけん・・・。)


セリカさん「グッジョブ! ためさん。


      あんたは、いつかやってくれるヤツだと、

      信じてたよッ!!


      これで、ラウエルさんを、

      ファルさん一味から引き抜ければ、

      私もずーっとエンジョイだねっ!」


ためぞう「そ、そっちかッ!?」


 セリカさんのアホに、救われた瞬間でした。


 自分の自由さえ保障されれば、

 別に、ためぞうの人生に大した興味もないセリカさんは、

 ささ、続きをどうぞと、

 お小遣いだけは、きっちりとせびります。


 と、そこに音速を超える勢いで、

 引き抜かれる側のファルさんが現れましたっ!!


 ファルさんが巻き起こしたソニックブラストで、

 A氏とB氏とJ氏は、遥か上空へと吹き飛ばされます!!


J氏「パラシュートは準備済みだぜッ!!」


A氏「それがしのポスターさばきは、

   垂直離着も可能ナリィ!!」


B氏「じぇ、J氏にしがみつくんだなっ!!」


J氏「や、やめろぉーーーっ!!!」


 長い黒髪を振り乱しながら、息を切らして、

 お花屋さんから駆け抜けて来たファルさんが、

 ラウエルさんに言いますっ!


ファルさん「ちょっと、ラウーッ!


      ためぞうさんを、こっちに引き入れたいって、

      二人でずっと言って来たのに、

      あなたが引き抜かれてどーすんのよっ!!」


ラウエルさん「ん? ためぞうさんアルか?


       私は、別にためぞうさんなら、

       素敵な家庭が築けると思うアルよ。


       何より誠実だし、真面目アル。」


 ためぞうに季節離れの春風が吹いています。

 これは、なかなかいい風です。

 桜の花びらもいっぱい舞っています。


ファルさん「そんな事、言ってるんじゃなーーいっ。


      ダメーーーーッ!!


      ぜぇぜぇ・・・、

      とにかくそれはダメだから、

      その誘惑ポーズは、さっさとお止めになってネ。」


ラウエルさん「ボスは、素直じゃないアルね。」


 ファルさんはスマホを取り出すと、

 お店の宅配に使っている、ネコのマークのネコマスク、

 宅配屋さんの古蔵さんを呼び出します。


古蔵さん「迅速丁寧、ネコのマスクの宅配便の古蔵です。


     いつもひいきにしてもらって、

     ありがとね、ファルさん。」


ファルさん「あとで代金払うから、

      あの吹き矢貸してっ!!」


 ファルさんは、古蔵さんから半ば強引に、

 3連射機構付きの惚れ吹き矢を借りると、

 その矢先をラウエルさんに向けますっ!!


   フウゥゥーーーッ! ゲホゲホッ!!


ファルさん「何これ、壊れてるんですか、ゲホッ・・・。


      矢か出ないじゃないですかっ!!」


古蔵さん「そりゃあ、

     ファルさんに、三連吹きのスキルないからでしょ。


     はい、こっちが単発の方。

     いっぱいあるから、こっち使ってね。」


 古蔵さんはそう言って、初心者向けの惚れ吹き矢を、

 ファルさんに渡します。


 高精度のロングバレル仕様で、

 吹き口も大きめに、軽い息で放てるよう工夫され、

 命中場所もしっかりわかる、レーザーサイトまで付属しています。


 これを外しては、打つ手なしといった、

 古蔵さん自慢のカスタムモデルです。


 あらためて、

 吹き矢を構えるファルさんの前にして、


 ためぞうは、ラウエルさんを背に前に出ると、

 両手を広げて立ちはだかります。


ためぞう「その惚れ吹き矢は、やばいっすっ!


     そんなのラウエルさんに当てちゃったら、

     二人はとんでもない事になっちゃうんですよっ!!」


 当たれば、商店街のお花屋さんは、

 ファルさんとラウエルさんの甘い百合の園と化し、


 オーナーのジェネシスおじさんは、

 居場所を失い、移動販売の旅に出るしかないでしょう。


ファルさん(・・・でも、これを当てれば、

      ためぞうさんは、私のもの。


      ううん、そんなの、

      私が求める安らぎじゃないっ!!


      ・・・。

      ホント、どうすればいいのかしら。)


 金髪の美少女ラウエルさんと、

 黒髪の美女ファルさんによる争奪戦に、

 周囲は、ただただ息を飲んで見守るしかありません。


 誰も皆、あの三人組みたいに、

 変な巻き添えを、喰らいたくはないのですから。


 この時、すでにためぞうから、

 お小遣いをゲットしたセリカさんは、

 面倒な事には関わらないよう、

 歓楽街の方へと遊びに行っています。


 ドラゴンタウンの、

 新たなランドマークタワーの下で行われている、

 この熱い展開に、引き寄せられたかのように、

 ノルンさんたちがやって来ました。


ノルンさん「ここが新名所の実力なのかっ!


      昼間っから、乙女同士の争奪戦が行われてるなんて、

      なんてホットなエリアなんだ・・・。


      おねーさん、そういうの、

      全然、想い出リストにないぞっ。」


鈴木さん「おおっ、


     何だか分からないけど、

     これは、青春してるんでしょうか!?」


佐藤さん「・・・ええ、

     これはかなりハイレベルな青春ですわ。


     銀河の覇権争いにさえ、発展しかねない、

     乙女たちのバトル・・・。」


 知り合いが増えてきたのが恥ずかしいのか、

 ファルさんは、惚れ吹き矢を握ったまま、

 固まってしまっています。


古蔵さん「ねえ、ファルさん?

     吹くの、吹かないの。


     配達あるから、早く決めてもらえると嬉しいです。


     余分に、たくさん置いて行こうか?」


ためぞう「古蔵さん、それはダメっす!!


     そんないい加減な事したら、

     ねーさんに、この町から追い出されますよ。」


 そんな便利アイテムを山積みで残されては、

 どんな波乱が巻き起こるかわかりません。


 まさに至高のマジックアイテムの吹き矢を、

 誰も手に取らないとは言い切れないでしょう。


 一本、10億ゴールドと、

 その価格もギャラクシー級ですが、


 それ以上の奇跡を、

 運命変革を起こす事が出来るのです。


 実家がなんとか、お代を工面出来る方ならば、

 何とも欲しい、レアアイテムです。


ノルンさん「夏の誘惑ってヤツなのか。


      欲しいw

      でも、手にしちゃダメだ。

      夏は、ハンパねえなぁ・・・。」


鈴木さん「ふう、

     あぶないあぶない。


     危うく、実家を頼ろうかと思ってしまうとこでした。」


佐藤さん「鈴木さんは、古蔵さんに、

     とりあえず一発、当てておいたらどうですか?


     きっと、おつり出まくりですョ♪」


鈴木さん「そ、そそのかさないで下さいっ!!」


 そのやり取りをチラ見していた古蔵さんは、

 お気に入りの鈴木さんの方へと、

 さりげなく一本転がすのです。


 古蔵さんも、甘酸っぱい青春や、

 温かなぬくもりには、飢えまくっている方です。


 でも、バイト生活がとても充実しているので、

 すっきり爽やかな方ではあります。


 好意を寄せる鈴木さんなら、

 古蔵さんは、お代なんか取るはずもありません。


 自分が吹いて当てたいくらいな気分ですから。


古蔵さん(あれ?

     吹き矢、転がしたのに気付いてないの!?


     せっかく『鈴木さんには、一本無料。』って紙を、

     巻き付けてるのに。


     オ、オレを狙うとは限らんかっ!?)


 すると観衆の中から、瞬時に現れた緑の影が、

 その吹き矢を奪い取ります。


エストさん「フフフ・・・、

      ピンチの中こそチャンスあり!


      ハードモードなダンジョンから、

      生還した甲斐がありましたぜ。」


 そう語るエストさんは、年代ものの暑苦しい甲冑を身に付け、

 勝ち誇ったように、微笑んでいます。


エストさん「うう、さすがに鉄の鎧はアツ過ぎる。


      おお、どんどん日差しで熱くなってきたぁ!!」


 エストさんは今、鎧の下には、

 クマのプリントの下着しか身に着けていません。


 この大勢の観衆を前にして、

 その加熱されていく甲冑を脱ぐことは、

 露出好きの変態さんと公言するようなものです。


 そんなことしたら、

 精査の必要なく、PTAに指導されて、

 エストさんの夏休みは、一瞬で消滅しまうでしょう。


エストさん「・・・お家に帰ろう。」


 古蔵さんは、そんなエストさんの肩をガッツリ掴むと、

 ネコマスク越しの妖しい瞳をギラつかせながら、

 こう言うのです。


古蔵さん「吹き矢、持って帰るの?


     お代、10億ゴールドになるけど、

     払ってもらえるかなー。」


 古蔵さんは見た目のわりに、

 相当なパワーを持っています。


 エリスねーさんのいない今、

 ラスボス級の強さを誇る、古蔵さんです。


エストさん「む、無理っ!!」


 エストさんは、落し物を拾ったとか誤魔化して、

 お礼の一割を貰う手もアリかと思いましたが、


 ためぞうは、目配せのモールス信号で、

 その危険度をエストさんに伝えます。


エストさん(おー・・・、


      いつの間にか、

      私に良く似ているレミルさんと、

      ポジション入れ替えられて、


      遠洋漁船に乗せられて、

      きっと帰って来れないYO!!

      って、


      さすがは、ためさんっ!

      素直に、返しときます。)


 エストさんは、

 拾った吹き矢をおとなしく古蔵さんに返して、

 熱中症になる前に、

 エアコンの効いた部屋へと帰る事にしました。


エストさん(何とかピンチ、切り抜けてね、

      ためさん。)


 ラウエルさんとファルさんの女の戦いに、

 周囲がヒートアップして、

 自販機のアイスが売り上げを伸ばしています。


古蔵さん「鈴木さんと佐藤さんと、ノルン姐さん、

     何か欲しいのある?


     アイスおごるよ。」


ノルンさん「おお、マジなのか!?


      私は、バニラアイスがいいぞっ。

      カップのフタまで、ちゃんと舐めるぞ。」


鈴木さん「私は、抹茶がいいですー。」


佐藤さん「アイスモナカをお願いしますー。」


 古蔵さんは、コツコツ貯めたお小遣いの中から、

 三人にアイスを買ってあげました。


 額に汗して貯めた小遣いで、何かをあげるのは、

 古蔵さんにはあまりない経験でしたが、

 なかなか気分は良かったようです。


 ネコのマスクが、なんだか笑顔に見えるのです。


ノルンさん「エリスはほんと、後輩育てんのが上手いよな。


      ためぞーにしろ、このネコ仮面にしろ、

      何だかずいぶんいいヤツに見えるぞ。


      私も、エリスを見習わなくちゃなー。」


 そんなためぞうの前に、

 エリスねーさんがやってきます。


エリスねーさん「何だかためぞーも、

        いい風が吹くヤツになったよなぁ。


        一昔前では、ありえんくらい、

        モテてるよなぁ。


        私も、あやかりたいもんだよ。」


ためぞう「おぉ、ねーさん、

     まだ、こっちに残ってたの!?」


 出張して長く家を空けていたエリスねーさんですが、

 この恋の季節を取りこぼすのは嫌なので、

 しばらく、ドラゴンタウンに居たいそうです。


 エリスねーさんの後から、

 エリナ先生とセリスさんが、ゲームセンターから出てきます。


ラウエルさん「戦いは、続いていたのアルか?」


ファルさん「お、おうっ!?


      (ヤバいのが二人もやってきたわ・・・。


       ここは、ややこしくされる前に、

       ラウと仲良くしなくちゃ。)」


セリスさん「何を盛り上がっちゃてるんですかー?」


 ファルさんは素早く、

 ラウエルさんと仲良しアピールをすると、


 今度は、ラウエルさんが、

 エリナ先生とセリスさんに、クーラーボックスから取り出した、

 特製マンゴープリンをお届けします。


ラウエルさん「アイスを愛す集まりアル。


       アイスじゃないけど、OKアルか?」


エリナ先生「まぁ、嬉しいです。」


セリスさん「おおお、ご馳走ですー。」


 かの強敵二人は、ラウエルさんのマンゴープリンに、

 いとも簡単に篭絡されました。


 それはもう、フランス料理と中国四千年の技を極めた、

 ラウエルさんの作った、孤高のマンゴープリンは、

 そのプルンプルン感も、ツヤも香りも超一流です。


 一口入れたその瞬間から、

 宮崎のあの青空が広がるような、

 夢のような、筆舌に尽くしがたい、

 夢心地の味です。


 そんな夢旅行中の二人の隙に、

 空気を呼んだ人々は、

 あの三人組を吹き飛ばしたそれを、

 遥かに超える厄災を避けるように、


 何事もなかったように、振舞うのです。


ファルさん「ひゅるるるぅ~~~♪

      今度、私にもご馳走してねー。」


鈴木さん+佐藤さん+ノルンさん「わ、私たちにも是非っ!!」



   『女子を知りたくば、まずスウィーツを極めよ。』


 そんな、アリス会長さんが、

 ヒントのように、ためぞうに伝えてくれたあの記憶が、

 その心によみがえる思いです。


ためぞう「これからも、しっかり、

     レオクス師匠に、学ばないとなッ!!」


 今でも、十分、ホールケーキを作れるくらい、

 腕の立つ、お菓子職人なためぞうです。


 と、ためぞうは思い出したように、

 ポケットから、トランシーバーを取り出します。


ためぞう < 「もしもし、師匠ですか?」


> レオクスさん「おお、ためぞう君。


         どうかしたのですか?」


ためぞう < 「夏の間は、エリスねーさん、

        出張から帰って来てるみたいです。


        いま、ゲーセン前に、

        ねーさんいますよ。」


レオクスさん < 「え!? 本当なの?


          さっき作ってたジェラート、

          今すぐ、そっちに持っていって大丈夫かな?」


ためぞう < 「えっと、人数的に、

        十人分くらい用意出来るなら、効果抜群だと思うっす。」


 ためぞうは、エリナ先生たちや、ファルさん達、

 それに、ノルンさん達の分に、

 予備にいくつかあった方がいいかなと、


 レオクスさんに、そう伝えました。


レオクスさん < 「たくさんあるから、

          出来るだけ早く持っていくねっ!」


 そのレオクスさんの快活な返事に、

 ためぞうに、レオクスさんのワクワク感が伝わります。


何とか戻ってきたJ氏「さすがだなっ!

           ためぞう氏。


           予備のパックを常に携帯しておくのは、

           戦場を駆ける者の常識だからな。」


ヘリ感覚で、垂直着地してきたA氏「また飛ばされるところを、

                 回避出来たでござるよォ!!」


J氏にしがみついて帰って来たB氏「冴えてるんだなっ!!」


 エリナ先生とセリスさんが夢の中の安全地帯に、

 今日は珍しく、アリス生徒会長さんがやって来ました。


 美少女世界ランク1位の絶対王者さんです。


アリス会長さん「何だか、美味しい思いが出来るのではないかと、

        のこのことやって参りました。」


 会長さんが来た以上、ためぞうはもう無敵です。


 ためぞうは、アリス会長さんに、

 何故か気に入られています。


 エリナ先生とセリスさんがタッグで当たっても、

 会長さんには、きっと返り討ちにされる事でしょう。


 このドラゴンタウンにおいて、

 絶対的な存在である、アリス会長さんですが、

 ためぞうを本編に戻すことだけは、

 何故か出来ないのです。


アリス会長さん「ごめんなさいネ、ためぞうさん。


        どうしても、守らなければならない、

        ルールというものがありまして。」


ためぞう「いえいえ、

     お気遣いだけでも、ありがたいっす。」


 アリス会長さんは、かなりの甘党さんです。

 たくさんのカロリーを摂取しているはずなのですが、

 そのスタイルは、常に完璧な黄金比を維持し続けています。


 甘い誘惑に誘われて、

 ひょっこり現れたアリス会長さんのおかげで、

 エリナ先生とセリスさんは、ネコ被って仲良くやっています。


古蔵さん「ネコを被るのは、ネコ愛の証です。


     お二人にも、この愛らしいネコさんマスクを、

     進呈しましょう。」


 ただの罰ゲームです。


 レスラー仕様のネコマスクは、

 被ったとたんに、古蔵さんの仲間入りです。


 エリナ先生もセリスさんも、

 公衆の面前で、この暑い中、

 フルフェイスのレスラーマスクを被るほど、

 ハイテンションでは無いのです。


 そんな二人を、

 優しい眼差しで、微笑むように見つめる、

 金髪、ブレザー姿のアリス会長さんです。


エリナ先生(戦闘力でも知力でも、

      私たちでは、あのとんでもお嬢様には、

      歯が立ちません。


      まあ、グラビアならいい勝負は出来ると自負していますが、

      勝てない勝負を好んでやるほど、

      お人好しでも、愚かでもありません。


      古蔵さんは、あとで亀甲縛りにギッチリ縛り上げて、

      強制送還させてあげるといたしまして、


      さて、マスクの一つでも被って道化てやりますか。)


セリスさん(回避策を考えます~~♪


      うんと、良かったらエリナ先生には、

      エリス様とノルンさんに、

      絶対零度の眼差しを、さらっと送ってもらえますか?)


エリナ先生(それくらいなら、たやすい事です。)


 刹那、ノルンさんとエリスねーさんは、

 エリナ先生の凍てつく眼差しに、ガクプルに震えています。


ためぞう(冷凍光線でも、放ってるのかっ!?)


 いい風にノッてる、ためぞうには、

 エリナ先生が、一瞬、

 目から放ったビームの軌跡が、

 見えたような気がしたのです。


 虚ろな眼差しをしたエリスねーさんは、

 古蔵さんに、こう言います。


エリスねーさん「おい、フルゾウ。


        自分がネコLOVEだからって、

        押し付けちゃだめだろ・・・。


        鈴木さんが、それ被って、

        リングにデビューしても、


        お前はそれでいいのか?


        ていうか、マジ、

        イマスグ キョウセイソウカン スル ゾ。」


鈴木さん「わ、私は、

     学業とオペレーターのお仕事がありますので!!


     プロレス観戦は、好きな方です・・・。」


古蔵さん「・・・。


     オ、オレは、まだ、

     一世さんのいちゃラブ見せ付けられながら、

     名義だけの王って、家臣どもに陰口叩かれるあの日々に、

     戻る気なんか、ないぞっ!!


     ・・・ヤツらを見返すくらいの、

     充実特攻野郎になるまで、帰る気はないッ!


     あっ、お届けしなきゃいけない場所残ってるから、

     またね、ねーさんッ!!」


 古蔵さんは、逃げ出すようにバイトへと戻りました。


 働き者になった古蔵さんに、

 エリスねーさんが関心していると、

 その眼差しに光が戻りました。


 一方のノルンさんは、

 絶大なる尊敬を何故か受けている、

 アリス会長さんに、虚ろな瞳でこう言うのです。


ノルンさん「なあ、アリス。

      お前も仕事ばっかしてないで、こっち来いよ。


      タマニハ、息抜キ シヨウゼ・・・。」


アリス会長さん「はいっ!

        ノルン姉様が、そう仰られるのなら。」


 ノルンさんの前では、隙だらけの会長さんです。


 ノルンさんの呪縛は、アリス会長さんが解除しましたが、

 知ってて、策に乗っても、

 とても嬉しげに微笑んでいます。


 その笑みは、まさに天使の微笑みといったオーラで溢れまくったもので、

 周囲の人々を巻き込んで、とても幸せな空気で包んでいきます。


佐藤さん「!? さすが、アリス会長様。


     この無限のいたわりと優しさのオーラは、

     まさに人智を超えた究極の微笑み・・・。」


鈴木さん「なんだか、癒されますねぇ・・・。」


 ほぼ全員が、リラックスモードでふやけている中、

 エリナ先生と、セリスさんは、

 突然の嵐が去ったような気分で、

ふうっ、と息を漏らします。


エリナ先生「このドラゴンタウンには、

      私たちの勢力と、


      対するアリスさんの巨大勢力の、

      二つが存在しています。


      あちらは数多の優秀な猛将を抱え、

      こちらの戦力では、押されるがままでしょう。


      つまりは、故事に習って、

      三角関係を作るのが、最も最善の策かと、

      そう思います。」


セリスさん「さながら、長崎ドラゴンタウン三国志ですねー。


      では、もう一つの勢力は、

      手玉に取りやすい方が良いかと思いますっ。


      エストさんとかどうでしょう?


      ミカンの大器ですが、

      第三勢力のヘッドにおいて置くには、

      申し分ないと思いますー。」


 エリナ先生とセリスさんに、

 いい様に利用されそうな、エストさんです。


エリナ先生「サモンッ!! エストさんっ。」


 突然、エリナ先生がそう叫んだかと思うと、

 路地に魔法陣が現れ、


 だらしない格好で涼んでいた、

 部屋着のエストさんが召還されますっ!!


 周囲の人々は、アリス会長さんのオーラに酔っていて、

 気付いていませんでしたが、

 ためぞうは、その奇跡の光景に驚きを隠せません。


ためぞう(な、何でもアリなのかーっ!!!)


エストさん「え、何っ!?


      あっつゥ、アスファルト熱いってっ!!」


 裸足で立ち上がったエストさんは、

 アチチと路面を踊りながら、突然の展開に慌てています。


 エリナ先生は、そのエストさんの双肩にグッっと手を置くと、

 足元を固定して、エストさんを見つめます。


エストさん「ア、アスファルト、熱いっす!!」


 すると、路面の一部が永久凍土のように、

 一瞬で、凍りつきました。


エストさん「きょ、極端だってっ!

      冷た過ぎて、足の感覚が無くなってきたんですが・・・。」


 そこに、セリスさんがサンダルをひょいと取り出します。


 大地を元のアスファルトへと戻したエリナ先生は、

 エストさんにサンダルを履かせると、

 強い口調で、こう言うのです!!


エリナ先生「先生は、エストさんの成長に期待していますっ!


      大志を抱いて国を興し、

      天下に覇を唱え、中原へと出るのです。


      在野の人材を、広く求め、

      義を貫く、英雄となりなさいッ!!」


 意味はわかりませんでしたが、

 逆らうとエストさんは、

 銀河の最果てへと飛ばされそうな勢いに押され、

 ブンブン、首を縦に振りました。


エリナ先生「良い心構えです。


      先生が、先生繋がりで、

      諸葛先生の娘さんを紹介しますので、

      彼女に意見を求めて、上手く国を興すのですよ。


      何度かあった事があるはずですから、

      すぐに打ち解けられると思います。


      はい、これが彼女のアドレスです。


      最低、三回はお中元持って行って、

      がんばって下さいネッ。」


 と、次の瞬間、

 エストさんは、元居た部屋にワープされます。


エリナ先生「これで、放置しておけば、

      きっと調子に乗って・・・もとい、


      たくさんお勉強されて、

      きっと立派な社会人となって、

      役に立ってくれるでしょう。


      力が無ければ、次を探せば良いだけです。」


セリスさん「エリナ先生、

      何気に、鬼畜~~っ。」


 二人は互いに微笑んで、

 レオクスさんの持って来る、

 スウィーツを心待ちにしていますが、


 どちらもその手の内を隠してのやり取りに、

 ためぞうの危険フラグは、ピリピリと反応してしまいます。


ためぞう「・・・まずは、生き残ろう、

     この夏に、一つでも想い出を残す為に。」


J氏「オレも一枚、かませてもらうゼッ!


   早く、リンカちゃんの白スクイベントを回収したいしなッ!!」


A氏「同じく、夢を追うものとして、

   乗らせてもらうナリィ!!


   それがしの一押しは、

   あの純白のレミーアさんでござるヨォ!!」


B氏「じ、自分は、

   どちらでも回収できれば、大満足なんだなっ!」


 そのA氏とB氏の叫びが、

 レミーアさんにも、届いたような気がしました。


 誰が言ったのかまでは、

 よく聞こえていなかったようです。


レオクスさんと一緒に居た、

レミーアさん「へ、へくちゅ・・・、


       何だか夏っぽいイベントが、

       自分にも起こりそうな気が、

       一瞬、したっす。


       (水着とかの携帯は、忘れないようにしよう・・・。)」


レオクスさん「そ、そうですか。

       私も、何かいい事あるといいなぁ。


       (トランシーバーの充電は、バッチリかな。

        ためぞう君、頼りにしてるからねっ!)
       

       ま、マッハでいきましょうか。」


レミーアさん「そ、そっすね!!」




 ためぞうの熱い夏は、

 こうして、番外編で進んで行きそうです。


               つづく、かも知れません。


エリスねーさん「では、またーーー。 ^-^」
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エリナ先生とセリスさん。 2016.海の日。

2016年07月18日 17時34分22秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-
  『エリナ先生とセリスさん。』


エリナ先生「↑↑、←←、→↓←、↑↑、B、Aッ!!


      『グレート・シャイニング・サマータイム・

       ギルティ・タイムシフト・アタァァァクッ!!!』。」


エリスねーさん「え、なにっ!?」


 エリスねーさんは、格ゲーに敗れた・・・。


 どうやら、何かマジカルな感じで、

 現代に戻って来れたようです。


 ・・・そこは、ためぞうが出会いを求め、

 足繁く通いまくる、

 ともだち兼、恩師の亀吉老人所有の、

 長崎ドラゴン港名物のゲームセンター。


 『ネクサス・サンクチュアリビル1F

   - KAMEゲームス。

         ドラゴン長崎タウン、本店。-』


 1Fは、オンライン対戦ゲーム機に、各種キャッチャー類。

 小さなレディから、大きなお姉さんまで満足の、

 プリクラコーナー、アイドルゲームコーナーに、

 ファミリー向けの、ミニミニ四駆サーキット九州予選会場を擁し、


 2Fの方は、カラオケ店と多目的フロアーで構成され、


 (ボウリングや温泉施設、

  マッサージコーナー、(ファーストクラス席、ビシネスクラス席、

  腰ベルト式も完備などなど。)、

  カードゲームエリア等、様々なご要望に答え、

  増築可能なスペースもあります。)


 遠方の方向けの簡易宿泊施設まで、完備されています。


 3Fは、ネクサスイノベーション的な、

 スーパー6DXVR方式の、

 裸眼立体視の新式シネマが7つと、

 昭和レトロのロマン映画劇場が3つで構成された、


 大型のカラオケ&ゲームセンター+シアターになります。 


 長崎ドラゴン港の新スポットとして、

 本日朝10時、新筐体入荷の、

 リニューアルオープンです。


 店舗ごと、亀吉ヒルズのナウなビルに移転した為、

 ためぞうは、この場所はまだ知りません。


 たぶん、辿り着けないでしょう・・・。


ためぞー「番外編から、居場所取らないでw」


 幻聴が聞こえましたが、

 4F~51Fまでは、貸しビルとして、

 主に商社や飲食店、IT関連企業など、

 様々な業種が、入っています。


 52F~70Fまでは、高級マンションとして、

 亀吉老人の会社の役員達と、

 その友人らが暮らしています。


 ビルのリニューアルセレモニーも、

 先日終えたばかりで、


 新たな町のランドマークとして、

 ギャラクシー&ユニバース的な、

 新名所となっています。


 20F~からの、オープンオーシャンビューは、

 朝焼けから、水平線のサンセットまで楽しめるので、


 展望レストランから一望出来るその光景は、

 大切な方と、見たりしたいものです。


 1F~2Fのバイトとして、

 懸命に働くピュアな女子高生、

 吉川 リナさんは、若きその衝動で、

 こう叫びますっ。


リナさん「い、いつの間に、

     こんな事になっているんですかッ!!


     というか、場所も名前もエヴォリュ-ションしてますよねっ!?」


 ナチュラルなブラウンヘアーの髪と、

 健全すこやか、青く瑞々しい香りの漂う美少女さん。


 まるで、何処かのお殿様の姫君のようにも見えますが、

 それを感じさせないフレッシュさで、

 健康的な小麦色に肌を染め、夏の訪れを感じさせます。


 容姿端麗で、元気な女の子さんです。


リナさん「・・・褒めても、何も出ませんよっ!

     (も、もちろん、素直にうれしいですが・・・。)


     あ!? エリスさんだっ。」


 エリスねーさんが、謎の挑戦者に惨敗を続ける、

 そのゲームコーナーの方に、

 リナさんが早速向かうと、

 ねーさんに速攻、両替を頼まれます。


エリスねーさん「これ、おねがいっ!!」


リナさん「えーっ、万金ですかっ!?

     ・・・そんなに、入れちゃだめですよ。」


エリスねーさん「せめて、1R取らせてw」


 1ゲーム2R先取、1プレイ100円の、

 オンライン格闘ゲームになります。


 最大対戦人数は6人で、チーム戦も可能です。


 対戦側の席には、

 髪をピンクに染めている、エリナ先生が座っています。


エリナ先生「こんにちは、

      何処かの毛利家のお姫様のリナさん。」


リナさん「おおぉー・・・、


     年始にいきなり現れ、

     瞬く間に、ハイランカーの仲間入りを果たした、


     ゲーム界の『バトルシップ・エンプレス!!』


     現在、全国ランク2位の

     《デストロイヤー@えりな》さんだっ!!!」


 全国大会決勝大会、

 福岡天神「めんたいコア」会場で行われた、


 『九州、冬の陣』と呼ばれた頂上決戦で、


 ダントツのポイントを誇る、

 NO、1の王座《ギャラクティカ=・・・略》さんを、

 急な腹痛で欠く中(疑惑の腹痛。)、


 四天王決戦で、

 あの三位《紅の大佐》さんと引き分け、

 二位の《サードGTR☆みすとれうす》さんを、蹴散らし、

 女帝の名を欲しいままにした、エリナ先生。


 彼女の通った道には、

 魂(ソウル)を砕かれし猛者たちが倒れ、

 ぺんぺん草以外は、何も残らななかったと云われる、

 ブリザードの吹き荒れた冬の乱・・・。


リナさん「・・・サ、サインくださいッ!!」


エリスねーさん「えっ、寝返るのっ!?」


エリナ先生「いえ、エリスさん、

      これは、『ティーン』の問題なので。」


エリスねーさん「意味わかんねーよッ!!」


 リナさんの取り出したマイゲームパッドに、

 すらすら~っと、マジックでサインしたエリナ先生。


 すると可愛い女子高生の笑顔が弾けますっ。


エリナ先生「ティーンとか、JKの問題ですから。


      ちなみに私たちは、

      ティーン向けの読者モデルでもあります。」


エリスねーさん「23歳OLは、もうダメなの?


        ・・・年齢詐称でも、仲間に入れないの?」


 するとその場に、

 通りすがりのA氏とB氏が現れます。


トルネードA氏「エリスねーさん様は、

        貴重な、大人な感じのお方ナリィ!!


        これほどに美人で、

        ナイスバディーな保健の先生なら、

        我が校にも、熱望したい所でござるョォオ!!!


        イッツ、転職ッ! 大歓迎と見たりィ!!」


ハリケーンB氏「なんだな。


        女医さんでも、ENJOYさんでも、

        OLさんでも、需要は有りまくるんだな。


        ギャルゲーには、そういう隠し要素も、

        大切なコンプリート条件なんだなっ!!


        攻略難度、悶絶で、

        さ、最高なんだなッ!!!」


エリスねーさん「あ、ありがとぅ!!」


 っと、

 A氏とB氏とエリスねーさんは、

 ガッツリと円陣を組んで意気投合します!!


 言ってる意味はわかりませんでしたが、

 彼らは確かに、ナカマでした。


エリナ先生「私も先生ですが、

      攻略対象ですよ?」


 その純真な笑みは、

 どっから持って来たの?と、

 突っ込まずにはいられない、学園の天使の微笑ですが、


 その威力はバツグンですッ!!!


A氏+B氏「コ、コンプリーーーートッ!!!」


 全てを吸い込むエリナ先生は、

 まさにあらゆる老若男女、全てを惹き付ける、

 長崎ブラックホール女子です。


 その神々しいまでの魅力と、最高の女子力。


 そして、絶対的なその安定感は、

 人々の心に平穏を招き入れ、


 熱心な彼らの、心からの差し入れにより、

 エリナ先生の食生活は、

 とても豊かなものとなります。


エリナ先生「メロンとかスイカとか、

      ブルーハワイとかも、大好きですよ。」


エリスねーさん「セ、セバリオス、

        今日はおっせーなぁ~。


        ひゅ~るるる~~ぅ♪」


 いつもなら、ためぞうの友人を口実に、

 強引にでも横に分け入って来る、

 セレブで、イケメンなセバリオスさんですが、


 あの横道にそれまくった、

 第二話の中から、

 エリナ先生が、現代へとワープさせたのは、

 先生自身と、エリスねーさんだけです。


ためぞう「うぉう!?


     見つけるまでに、様々な試練を乗り越えてきたが、

     新装開店というレベルじゃねーなw


     ・・・スーパーハードモード並みの、

     高層タワーに、移店していたとは。


     ってか、最近までヒルズもビルも無かったでしょ!?


     鈴木さんと佐藤さんの、

     (+ネコ船長とワンダ艦長。)科学力?


     ドでかい宇宙船を、漁船に偽装させて、

     言い張ってるくらい、

     未来な方々だからな。


     一階の雰囲気は、そのままで一安心だが、


     (そう、ここはサフィリアさんとの出会いの場。

      ・・・コホン、もちろん、

      バイトのリナさんとも出会っているぞっ。)


     オレ、メール会員だし、

     ダイレクトメールくらい、頼むよ。


     あ、番外編で、電波届いてないの?

     ・・・便利だよな、番外編ってのはよぅ。


     おーーーッ!?

     よう、ねーさん、久しぶりっ!」


エリスねーさん「おおぉ、ためぞ~~~~っ!!」


 ロングロング、バケーション的な再会です。

 互いに以前、いつ会ったのかも覚えていませんでした。


 でも、ためぞうは、まだ高校生です。

 リンカさんも、まだ中学生です。


リンカさん「同級生です! 女子高生ですッ!!」


 リンカさんの魂のシャウト的なものが、

 聞こえたような気がしましたが、

 それは、エリナ先生の声マネでした。


ためぞう「すげーーーっ!!

     いろいろ出来るんですか!?」


エリナ先生「はい、歌って踊れる声優志望の、

      フレッシュ新任先生なので。」


セバリオスさん(マネ)「やあ、ためぞう君。

            エリスが、いつもお世話になってるね。」


ホーネル(マネ)「やあ、ためさん!


         ついに、次のラスボス(ギャルゲー内)の、

         挑戦権を得たんだッ!!」


 それは、まさにコピーされたかのような、

 完璧な口真似でした。


エリナ先生「これを使えば、誰でも出来ますよ。」


 と、取り出されたボイスレコーダーは、

 ハイレゾと記された、ナウな商品でした。


ためぞう「口パクだったのか。


     ・・・無線のやり取りとかに、

     暇つぶしに割り込まれんように、注意せねばいかんな。」


 ためぞうの、

 その用心深い危機探知能力に、

 エリスねーさん、素直に感心してます。


エリスねーさん「いつの間にか、

        すげー成長してんのなっ!!


        デキる偵察(スカウト)と一緒に居るくらい、

        ワナ避けれそうな気がすっぞ。」


 そんな中、新たな人影が現れ、

 澄んだ声が、ゲームコーナーに響きます。


レオクスさん「おおおっ、

       エリスさんじゃないですかッ!!」


エリスねーさん「フフッ、

        もう騙されんぞ、ニセモノめ。」


 その時、周囲が一斉に声の方へと振り返り、

 場が凍り付きます。


 ニセモノの烙印を押された、

 アメジストの髪の王子様、

 レオクスさんへの悲哀の眼差しです。


エリナ先生「おろおろおろ・・・。」


ためぞう「ほ、本物だってっ!!」


エリスねーさん「ま、まじかーっ!?」


 当のレオクスさんは、

 大型のゲームの筐体の裏へと、

 消えるように、フェードアウトしています・・・。



 ・ エリスねーさんは、貴重な戦力を失った!

   それも全球団、ドラフト一位指名の名手だゾッ!!



ためぞう「レオクス師匠ッ!!


     ねーさんはただ、

     エリナ先生の策(ワナ)にはまっただけですっ。


     ねーさんが、これからも掛かり続けて、

     師匠は、それでも大丈夫なんですかっ!?」


レオクスさん「ほっ・・・。

       なんだ、計略だったのネ。


       ハッハッハッ、驚かさないでよ。」


 今や、ためぞうにさえ、

 便利に使いこなされてる、『ワナ』という言葉です。

 ということで、


 ◇ 策にかかりにくい人、リスト。<無効化率>

   (計略を仕掛ける際の成功率にも影響します。)



   ・ アリス会長さん  ほぼほぼ、100%


   ・ アリサ副会長   100%に迫る99%


   ・ セバリオスさん  結構、100%(現在、審議中。)


   ・ レオクスさん   うっかり100%(かかり掛けたりはする。)


   ・ 3年J組

     教諭のセリスさん 98% (98、999、999、999%の

                       +9回抽選で、まず無効化。)


   ・ ためぞー      3% (そのちっちゃい確立を、

                   神業のように引き続け、なおも更新中。)



 ◇ 逆にかかりやすい人、リスト。<計略成功率等も、上記同。>


   ・ お花屋ファルさん 30%(かつての威光に翳りが・・・。)


ファルさん「えっ!? そうなのー!!

      ここは是非、ためぞうさんを、

      引き入れないと。」



   ・ 古蔵さん     10%



古蔵さん「ネコのマスクの宅急便、

     ネコさん大好き、

     JKの鈴木さんに憧れてる、古蔵です。


     自分、新たに生まれ変わり中なので、

     そんなもんですかなぁ・・・。


     鈴木さん、学園のご卒業、

     ぜひお待ちしてますよ。」


ゆるふわ系美少女、佐藤さん「良かったですね、玉の輿。」


ナチュラル美少女、鈴木さん「・・・古蔵さんの素顔は、超イケメン。

              実家の資産規模は、ギャラクシー級・・・。


              あ、いえ、

              好意がただ、嬉しいだけですよっ!」


佐藤さん「あーでも、それって、

     エリスさんの、義理の妹になりますよね。


     いいなぁ・・・。」


鈴木さん「面白くしようとしてるでしょ!


     ネコ船長さんが泣いちゃいますよッ!!!」



   ・ 鈴木さんと佐藤さん。     1%



鈴木さん+佐藤さん「うぉう!?


          た、ためぞうさんも、いいですよネ?」


エリスねーさん「リストやめーぃ!


        どーせ、わたしは、0%って言いたいんだろぅ。」



   ・ エリスねーさん  『国2・数1・体5・理1・社2・英1。』


                      ◇ もう少し頑張りましょう。



エリスねーさん「人の通知表、

        勝手に、暴露してんじゃねーよっ!!」


 こうしてエリスねーさんが、

 エリナ先生に弄ばれている内に、

 結構な数のお友達が、集まって来ました。


古蔵さん「よう、姐さん。

     いまさら、アドベンチャー?」


鈴木さん+佐藤さん「お、お泊りしたいですっ!(パジャマ持参)」


ファルさん「ためぞうさん、お帰りなさい。

      番外地でも、全然かまわないので。^^」


チャイナドレスの金髪美少女、

ラウエルさん「ボスが感激あるよ、

       よかったアルね。」


 エリスねーさんの取引先の社長、会長さん、

 会社の愉快な仲間たちさん、などなど。


 そんな中、エリナ先生は、

 適度にエリスねーさんをいじり終えたのか、

 ちょっと用事を思い出したと、こう言います。


エリナ先生「ちょっと、私用がありますので、

      みなさんで、楽しんでいて下さいね。」


 その言葉を残して、光の速さでいなくなりました。


 この時、古蔵さんも姿が消えています。


ためぞう「み、見えんかったぞ!!」


レオクスさん「光で見ては、だめですよ。

       極限に練られた気迫を感じるんです。」


       (毎度、・・・父がご迷惑おかけしております。

        ああ、でも夏号のグラビアは期待しています!!)」


 複雑な表情で、物思いに耽る、

 長身でプリンスな美青年に、

 世の女性たちはすっかり虜です。


 バーゲンセールに群れるオバサマ並の速度で、

 一気に取り囲まれています。


佐藤さん「いいなぁ・・・、

     リアル王子様ですよ、鈴木さん。


     あ、鈴木さんには、古・・・。」


鈴木さん「な、何をいっているんですか。

     妄想だけなら、自由なはずです。」


 その後すぐに、

 エリスねーさんが帰って来たという噂が、

 町内に流れ始めます。


 それは、虚ろな目をしたネコのマスクの宅配便の、

 古蔵さんにより、迅速に広められたものでした。


 すると噂を聞きつけた、

 煌びやかに飾られた白の法衣を纏い、

 セバリオスさんの秘書さんを務める、


 女教皇のアセリ・・さん、もとい、

 セリスさんがやってきます。


ためぞー+レオクスさん(噂の黒幕はこの方なのっ?


            それともエリナ先生なの? 一体、どっち!?)


 ためぞうとレオクスさんは、

 過去のほろ苦いイベントのせいで、

 白のローブのセリスさんに、少しビビっています。


セリスさん「エリスさま、お久しぶりです~。

      コスプレイベント会場から、

      走って駆けつけてきましたーっ!」


エリスねーさん「自前で衣装持ってるのは、いいよな。


        うーん、

        コスプレもいつか挑戦してみたいなぁ。


        留守番ありがとねー。」


 セリスさんは、いつものハイテンションで、

 エリスねーさんに絡んでいますが、


 その神々しき気高さが、

 周囲のA氏やB氏、鈴木さん佐藤さんまでをも、

 圧倒しています。


 何故か、奥のシューティングゲームコーナーから、

 ミリタリーな感じの漂う、軍曹さんっぽいJ氏が現れました。


英雄勲章を5個持つ、

特務軍曹のJ氏「こいつぁ、熱い戦いが期待出来そうだなっ!


        最新鋭のバトルシップ・エンプレスVS

        パワーゲームの覇者、黒薔薇の女教皇様と来たぜ。


        こいつを見逃しちゃー、

        想い出メモリーのコンプリートなんて、

        坊やの戯言になっちまうなッ、

        ハッハッハッ!!」


 J氏で見えませんでしたが、

 その影には、サフィリアさんのお供のネコx2さんもいます。


ネコさんⅠ(ワン)「まずは、我らがエリナ先生に、

          チャレンジしちゃうんだニャーーーッ!!!」


ネコさんマークⅡ < 「こちらーブラボーⅢ、

            攻略データのダウンロードを要請する。」


軌道ネコジャラクシー < 「ブラボーⅢ、

              現在、君たちのフィンガースピリッツでは、

              かのアルテメットな、

              超弩級戦艦を相手にするのは不可能だ。


              諦めて、偵察任務へと移行し、

              僅かでもデータの収集に当たってもらいたい。


              これは、大口のスポンサーである

              《サードさん》陛下の、ご意向でもある。


              支援として、

              エージェントY氏に、協力要請を打診しておこう。」


ネコさんx2 < 「感謝しますニャ。」


 エリスねーさんをボコボコにしまくっている、エリナ先生に、

 今、まさに反攻の狼煙が上がろうとします。


セリスさん「エリナ先生は、仲良しさんですが、

      皆さんで、やっつけちゃってくださいーっ。」


 そのセリスさんの観戦発言に、

 事情通の一同は、ポカンと口を開きます。


 「それは、アナタの役目でしょ!!」っと、


 思いっきり突っ込みたくなりましたが、


 恐るべき策にはまる代償として、

 それを口にする勇気は、誰も持てませんでした。


ためぞう「無理だって、

     オレじゃ勝てねえし、


     勝てるんなら、もっとキラメキな冒険だって、

     進んでるだろー。」


レオクスさん「父がご迷惑をおかけしている方に、

       私が何かをするような真似は出来ません。


       やっても、確実に負けちゃいますが・・・。」


エリスねーさん「そんなに、ハンパないんですかっ!?

        エリナ先生って。」


 エリスねーさんは、憧れのレオクス王子様の前では、

 慣れない乙女を演じています。


 好意を持たれてるのに、

 それに気付かないレオクスさんも、

 かなり微妙なのですが。


 (セバリオスさんのいない間に、

  抜け駆けするような事は、

  分かっていてもやらない。)


  器用貧乏のレオクスさんです。


レオクスさん「ハハハ・・・、

       心のナレーションありがとう、

       セリスさん。」


セリスさん「いえいえ~、

      私はエリス様が幸せであれば、

      別にどなたでもかまいませんので。


      当たりを引いたときは、

      オマケで私も混ぜてくださいネっ。」


 このやり取りは、

 ためぞうがマブダチのマイオストから貰った、


 どんだけ喋ってても、

 持ってないと聞こえない、

 便利なマナーモード付き、

 トランシーバーで行われています。


 なので、ためぞうと、

 レオクスさんとセリスさん以外には、

 聞こえてはいません。


 セリスさんは、セバリオスさんの物を使っています。


 三人が、エリナ先生が帰ってくる前に、

 対策を練ろうと意見交換しますが、

 セリスさんの一言で、

 あっという間に有効策がまとまりました。


セリスさん「ネコさんマークⅡ(カネツグさん?)が、

      山田さんを呼んでいるらしいので。」


ためぞう「おお、『大佐』の山田さんなら、

     かなり頼りになるなあ。」


 ためぞうと山田さんは、クレープ仲間です。

 デパート裏の公園で、よく休憩時間を共にしている仲でした。


ためぞう「でも、それだと、

     決着するのに、相当かかるんじゃないっすか?」


セリスさん「そうなれば、いいですねっ。


      エリス様の横に、ずっとくっ付いていられますので♪」


 何処までも操られそうな、

 ためぞうとレオクスさんでした・・・。


 それはそうと、

 ためぞうは、ネコさんたちに、


 艶やかな銀髪で、抜群のプロポーションをお持ちな、

 麗しの美少女同級生の、

 サフィリアさんの所在を尋ねます。


ネコx2さん「姫様は今、弟君の剣真(けんしん)公に、

       会いに、越後に帰っておられますニャ。


       姫様がお嫁さんに行くには、

       家督を弟君に譲らなくてはなりませんですニャ。


       いいネタになったかニャ?」


ためぞう+レオクスさん+

A氏+B氏+J氏+山田さん「グッジョブッ!!」


 ためぞうの親父さんのグラサンをかけ、

 家電量販店の制服姿の、

 山田さんが、ちょうど付いた所でした。


エリスねーさん「・・・レオクスさんはやっぱり、

        あんな風に、おしとやかな感じの、

        綺麗な子が好きなのかぁ。


        (婚期、遠くなるよなぁ・・・。)」


 レオクスさんの自滅を、

 微笑んで見守る、セリスさんです。


セリスさん「まあ、私はエリス様なら、

      選り好みさえしなければ、すぐゴールイン出来ると、

      信じていますので~。


      (別に、永遠に独り身であられても構いません。


       ウフフッ・・・。

       ワタクシは、何処までもお慕いしておりますワ。)」


レオクスさん(セリスさん、助けてw)


セリスさん(おや、


      それは、取り引きでしょうか?

      レオクス様。)


 ゴクリと息を飲むレオクスさんですが、

 冷や汗を流しながらも、根性見せますっ!!


レオクスさん(いいでしょう、・・・とにかくお願いします。


       我が領地の半分くらいお譲りしますのでッ!!)


セリスさん(あらまあ、


      そこまでの覚悟を見せていただいては、

      お代を頂くのも、気が引けてしまいますワ。


      一夜の甘美な享楽でも、よろしいのですよ。

      ウフッ・・・。


      今後ともよしなに。)



   ◇ レオクスさんは、セリスさんに借りが出来ましたっ!



レオクスさん「後悔はしません、

       だって、それは私の一番の望みなのですから。」


 セリスさんがエリスねーさんの耳元で囁くと、

 一瞬だけエリスねーさんは虚ろな感じになり、

 ハッと、我に返ります。


エリスねーさん「えーっと、


        エリナ先生に、ぎゃふんだったのよね?」


 早く古蔵さんの事も、

 どうにかしてあげてと思う、ためぞうでした。


山田さん「・・・美人秘書さん、

     ツワモノだなぁ。」


J氏「オレが五度もの危機から帰還出来たのは、

   あの御方のおかげなんだ・・・。


   最高の参謀殿のミッションを遂行出来るのは、

   実に名誉な事だぜッ!!」


 その最強クラスの参謀さんは、

 ためぞうの親父さん並のスピードを備えた山田さんと、

 あと一人くらいの猛者を探しているようです。


セリスさん「3オン3でやれば、

      エリス様も少しは、有利になりますよねっ。


      (さて、麗しきエリス様を輝かせたまま、

       あのしたたかな女狐に、

       敗北という辱めを与えられば、それでよいのです。


       腕利きさんは、もういらっしゃらないでしょうか?

       ワタクシは、思考に手先が追いつきませんので、

       たいしたお役に立てませぬが、


       サングラスのエージェント程度の駒が、

       あと一つは欲しい所ではありますワ。)」


エリスねーさん「セリスはいい事を言うなぁ。


        山田さんいれば、

        下手なあたしでも、何だかやれそうな気がしてきたな。」


 実質、2対3ですが、


 エリナ先生のチームには、

 気合と根性だけは溢れている、

 A氏とB氏が選ばれるでしょう。


セリスさん「OKですかぁ~?」


 二人の特攻野郎を見つめるセリスさんのその瞳は、

 まるで寝覚めの悪い、氷の女王のようです。


 絶対零度の凍てつく眼差しに、

 その真夏の熱さは瞬く間に吹き飛ばされ、

 半袖姿でガクプルします。


J氏「装備がなってねぇぜ!


   怠った時点で、補給部隊の到着は期待出来んぞ。

   フルシーズンに備えておかなくちゃな。


   ホットテックの肌着は、ほんわりほかほかだ。


   あと、バターピーナッツや、

   ジンジャードリンクが、寒い日にはお勧めだがなっ。


   (・・・ふぅ、危ねぇぜっ、

    あんなの喰らったら、即ゲームオーバーだろッ。)」


 A氏とB氏は、セリスさんが持ち込んでいた、

 小さなクーラーボックスから、

 当たり付きのアイスのメロンバーを貰います。


 メロン大好きなセリスさんから、

 そのアイスを頂けるという事は、

 ある意味、勲章並みの価値のあるものです。


 その逸話さえあれば、

 A氏もB氏も、セリスさんのホーム地で、

 VIP待遇です。


 もちろん、二本とも当たってます。


A氏「それがしのような者に、

   これほどの栄誉を賜ろうとワッ!


   身命をとして、

   そのお役目、お受けしたナリィ!!」


B氏「たぶん、夏の間中、当たり続けるんだな。

   も、もちろん、頑張ってみるんだなっ!!」


 J氏はうっかり、

 選ばれても良かったのかなっと、

 不思議な顔になっています。


セリスさん「大丈夫ですよ、J氏さんっ。


      勇敢な方は、いくらいても、

      助かりますので~。」


 ホッっと、胸を撫で下ろすJ氏でした。


 山田さん以外のプレイヤーを見つけるまでは、

 対戦台で、特訓です。


 エリスねーさんは、勝ちまくって、

 ご満悦ですが、


 全て、山田さんの功績です。


 A氏とB氏も、エリナ先生ががっかりしないよう、

 気合で、腕を上げています。


A氏「これは、絶好の好機ナリョォォオ!!


   拙者のランキングでは、まず会えない相手と、

   こうも拳を交えられるとはァ!!!」


B氏「おお、負けても、

   めきめきランキングポイントが、入り続けてるんだな。


   う、美味いんだな!!」


 かやの外のためぞうは、

 自分も混ざりたいと、コインを握り締めていますが、

 セリスさんに選ばれなければ、参加は不可能です。


 それは、もじもじとしている、

 レオクスさんも同じです。


レオクスさん(ああ、エリスさんの笑顔に癒されるなぁ。


       セ、セバリオスさんがいないんですし、

       今は、観戦モードで十分です・・・。


       後で、少しでも練習しておかなくちゃ。)


 そこで、A氏とB氏とJ氏は、

 どうして、こんなチャンスに、

 ゲーム大好き少女、リンカさんがいないのかを、

 疑問に思います。


J氏「あの夏空の下に咲くひまわりのような笑顔が、

   今日も見れないのは残念だぜ!」


セリスさん(当然、あのエリナ先生が、

      リンカさんに無条件で、

      甘い汁を吸わせるハズもありません。


      自身の需要にお気付きになった、

      サマーなこの季節。


      リンカサンは、きっと今頃、

      全てのクローゼットが、

      名前入りの白のスクール水着で、

      埋め尽くされたその一室、


      出るに出れない破廉恥な遊びを、

      羞恥心と期待の中で葛藤し、

      そして見知らぬ悦へと至るや、


      線の細いその身は、次第にほてり始め、

      早熟の果実のような、青い香りの湿気をおびるや、

      雫となって、その肢体を艶めかせる事でしょう。


      やり場のない、淡くも強い想いに、

      恍惚として喘ぐその表情が、

      目に浮かんでなりませんワよ。


      エリナ先生とは、

      これからも、良き仲でありたいものです。


      ウフフフフッ・・・。)


 そうしている内に、幻惑の解けた古蔵さんは、

 結構真面目に続いている、

 宅配便のバイトに戻ります。


 古蔵さんの宣伝効果で、

 外野は賑やかになってきました。


 リナさんは、観客席を増やすのに忙しそうです。


リナさん「いい汗、かいてますっ。」


 これはおいしいと、

 鈴木さんと佐藤さんが、

 加わります。


 小麦色の健康的な肌に夏の訪れを感じさせる、

 バイトの乙女さんの言葉に、

 わさわさと集まった若者やおっさん達も、

 会場設置を率先して手伝い始めました。


 鈴木さんも、佐藤さんも、なかなかの人気です。


 何だか、軽く大会のイベント会場みたいに仕上がっちゃいます。


リナさん「ありがとうございますっ!!」


野郎ども「こちらこそ、

     いい汗かかせていただきましたっ!!」


 その光景を店舗の窓ガラス越しに見つめる、

 気配すら感じさせない、コンクリートジャングルの影の主。


 UVカットクリーム100%の光学迷彩装備の、

 美白のホッパン金髪美少女、レミーアさんです。


レミーアさん(ホットパンツとか、

       そんな勇気はないっすよッ!!


       夏を感じる水色のワンピースです。


       危険を感じたので、今はステルス状態ですが、

       あの激動の3年J組担任代行、

       セリス先生がいるっす・・・。


       入りたいのに、入れない!

       いやぁ・・・ひと夏の淡い恋(希望)を、

       取りこぼすのは、避けたいのでw


       セリスさんの恐ろしさを味わうのは、

       夏休みの登校日以外には、避けたいので。


       サフィリアさんは、虚ろな目をして、

       実家に帰っていきました。


       ・・・ひえぇ。)


 レミーアさんは、店内のゲーム画面を、

 スマホのLIVE配信で見てはいますが、


 やはりその頂を目指す者の一人である、

 レミーアさんは、その目で山田さんのスティックさばきを、

 見てみたいのです。


 それからしばらく店内は、

 決勝戦待ちのカウントダウンイベントのような、

 妙な盛り上がりを見せていました。


 店内、なかなか美女、美少女率高いです。

 なんだか、キラキラしています。


 レミーアさんは、メロン味のかき氷を買ってきて、

 隠密モードで、その賑やかな店内を見つめています。


 デパートで選びに選び抜いた、愛らしいワンピース姿も、

 お披露目出来なくて残念ですね。


 レミーアさん(行けって、煽ってますねっ!?


        ・・・ちなみに私のトラブル回避率だけ、

        聞かせてもらえますか?)



  ・ レミーアさんは、1%未満です。



 レミーアさん(・・・ですよねーっ、

        伏兵踏んで、即蒸発ですよねー!!


        嗚呼、サヨナラ、今日の日の青春。)


 諦めて、かき氷を食べようとしたその時ですっ!


   パクッ。


 ステルスしてないかき氷を、

 エリナ先生が自前のスプーンで、パクリといっちゃってます。


 レミーアさん「・・・見えてましたよね?

        かき氷以外も。」


 エリナ先生「あらまあ、


       ためぞう君とレオクス王子を、

       天秤にかけ青春している、セレブなお嬢様、

       レミーアさんではありませんか。」


 レミーアさん「て、天秤になんか掛けてませんっ!


        ま、まぁ・・・、

        どちらも、恋愛ゲーム的に言う、

        好感度は、100になってはいますが。」


 もじもじしているレミーアさんを横に、

 いつの間にか、カップを残してメロン味のかき氷は、

 消えちゃいました。


エリナ先生「一宿一飯の恩です、

      レミーアさんの回避率を一時的に、

      完璧にしますので、


      ためぞう君でも、レオクスさんでも、

      告っちゃって下さいな。


      必ず願いは叶いますよっ。」


レミーアさん「!? ・・・一宿のとこだけ、

       勘弁して欲しいっす。


       何か別の花園へと誘われてしまいそうなのでw」


エリナ先生「ほら、完璧でしょ?」


レミーアさん「はっ!?」


 レミーアさんは、

 エリナ先生のオモチャになる定めを避けました!


レミーアさん「おおぅ、なんというスペック・・・。


       これなら、代打のセリス先生に遭遇しても、

       無事な気がして来ました。」


エリナ先生「さて、参りましょうか。」


レミーアさん「ハイっす、

       付いて行かせてください。」


 エリナ先生は、

 何気に使えるレミーアさんを従え、

 店内へと戻っていきます。


 エリスねーさんの代わりに、

 袋とじ付き、ビーチの女神たち特集号と、

 バイク雑誌のモデルの撮影を終え、

 今回の目的を果たしたエリナ先生は、


 エリスねーさんを連れ戻す前に、

 少し遊んで、歌って踊って帰ろうかと、

 ノリ軽いです。


 即興仕立てのバトルアリーナに現れた、

 最強のバトルシップ・エンプレス。


リナさん「赤コーナー、


     今年のランキング争いに、

     その壮絶な爆雷攻撃で風穴を空けた、

     沈まぬ対艦巨砲ッ!!

     
     《デストロイヤー@えりな》選手ゥウ!!}



   オオオオオゥーーーーー!!!


 先生の帰りを待つ観衆たちが、

 一斉に歓声を上げます。


J氏「流石だぜッ!


   恐るべき超弩級浮沈戦艦、バトルシップ・エンプレスは、

   あの上位ランカーの《白の王女・レミやん》氏を引き連れ、

   このリングに舞い戻って来るとはな。」


レミーアさん「そ、そんなネーム付けた事ないし、

       ちょっと、変えさせて下さいよっ!!」


リナさん「おおっと、


     ここで、セリス元帥閣下(先生代理)と、

     女帝エリナ先生の協議です!!」


 元々、大会やイベントに興味のあるバイトのリナさんは、

 これもお店の為と、元気にがんばっています。


 二人の強者の協議により、

 一度だけ、ネームの変更が許可されます。


レミーアさん「ほっ・・・。」


エリナ先生「元々、てきとーに付けたものですから。」


セリスさん「エリナ先生はお友達さんなので、

      全然、おっけーですよ~っ。」



  ◇ では、下記から選んでください。



    ・ 《喧嘩上等、特攻隊長☆レミ》

  
    ・ 《天上天下、唯我独尊☆れみ》
  

    ・ 《白の王女・レミやん》


    ・ 《脅威なる胸囲、レミ+パッド》


    ・ 《ストロング@天婦羅マークII》


    ・ 《キュートな小悪魔☆チェリーハンターREMI》


    ・ 《スーパー大関・ジャイアント☆ジャイGO》



レミーアさん「これ、元と変わりませんよね?


       自分では付けれないんすか?」


 おおっと、ここで『完璧』回避スキル発動ゥ!!!


 乱入したエストさんは、

 それを阻止しようとカバディの構え II !!


 エストさんは、星になった・・・。


レミーアさん「効果は凄いけど、

       後が怖すぎw


       うんと今回は普通に《レミーア中尉》でいいすか?」


エリナ先生「なるほど、


      なんとかヒロイン的な、

      女性パイロットのポジションで、

      落ち着きたいのですね。」


 メロン味の効果はバツグンです。

 元のネームで登録出来ました!


レミーアさん(えっと、・・・メロン味の何かを携帯しておけば、

       何とかなるのかな。)


セリスさん「何とかなりますよっ!!」


 っと、レミーアさんの肩を、

 軽くポンと叩いたセリスさんです。


レミーアさん(・・・読まれてるよなぁ。


       こういう極め系の方々は、地位や財や土地には、

       興味がないんだ。


       だから、アリス生徒会長同様、

       甘い物が有効なのネ。


       んっ!?

       何となく今の私って、冴えまくってるの?


       メロン味のかき氷、

       ・・・効果マジ、ハンパないっす。


       実家に連絡して、

       メロン的な物を、いろいろと仕送りしてもらおう。


       サフィリアさんにも、こっちの猛者たちに、

       銘菓とか送るように、後でメールしとかなきゃ。


       ・・・抜け駆けは、きっと良くない。


       このお二人への配達、

       しっかり頼みますよ。

       ネコのマスクの古蔵さん!!)


 レミーアさんは、出来るだけたくさんの知人に、

 ギフト関連の情報を送ります。


 お中元とかって、貰って嬉しいですよね。


 3対3の対戦格闘ゲーム筐体が、

 新たに観客席の中央へと設置され、


 熱気を帯び、戦場と化した格闘ゲームコーナーには、

 エリナ先生は、あまり興味がないようです。


 あの山田さんが相手では、

 戦いはタイムアップの繰り返しです。


 歌う予定だったカラオケも、

 荒行の事を考えると、

 割とどうでもよくなった、エリナ先生です。


エリナ先生「さて、エリスさん。


      もう、十分楽しめたと思いますので、

      さっさと、ほったらかしのあの場所へ戻りましょうか。」


レミーアさん「えっ!? エリナ先生、

       味方してくれないんすか!?」


ためぞう「あ、レミーアさん、

     こんにちはー。」


エリスねーさん「レミーアさんも、

        何とか言ってやってくれよぅ。」


 エリスねーさんは、ゲームにカラオケと、

 まだ遊び足らない様子です。


レオクスさん「お味方のエリナ先生を、

       何とか引き止めてもらえると、

       個人的には嬉しいです。」


 会場の視線を一気に集める、

 美白な美少女、レミーアさん。


 あのプリンスなレオクスさんにまで、

 おねだりされて、


 何だかそれを、モテ期のように感じて、

 照れてしまいます。


レミーアさん「えっと、もしよろしればなんすが、

       ちゃちゃっと、一戦、

       一緒にやってみませんか?


       お願いします、エリナ先生。」


 レミーアさんは、マッハで自販機から買ってきた、

 カップ入りのスイカアイスを、

 その水色のワンピースの後から、

 涼しげに取り出します。


エリナ先生「 - それは、ひと夏のビーチの煌めき。


         マリンブルーと砂浜の曲線が描き出す、

         美しい、マーメイドたちの楽園♪


         跳ねる飛沫に、レッツ、ジャンピング!!


         足を取られて、転んだ僕に、

         あの日の君は微笑んだね♪♪


         ほらっ、『スイカアイス』食べよっ!


           亀吉製菓・スイカアイス。


         底に当たりのマークがあれば、

         夏のチャンスは続いてるネッ!! - 」



 スイカアイスのCMを丸暗記している、

 エリナ先生の潤うルージュの唇が紡いだその歌に、

 自販機のスイカアイスは、速攻売り切れです。


 外に出れば買えますが、

 せっかく陣取った席を失います。


エリスねーさん「う、売り切れたの?」


ためぞう「オレ、買ってくるよ。」


 そんなためぞうの肩を、

 エリスねーさんは、がっちり掴んでこう言います。


エリスねーさん「せっかく会えたのに、離れちゃだめだッ!!


        なんだよ、ほら、・・・寂しいじゃん。

        アイスは別のでいいから、

        近くにいろよぅ。」


 アイスはつられて、全部完売です。


エリス「いいから、いてくれよぅ。」


 レオクスさんは、そんな風に頼られたいと、

 店を飛び出そうとしますが、

 親衛隊の女性たちに、取り囲まれて動けません。


 プリンス・レオクスさんを拘束しているオバ様たちの群れの中を、

 突如、稲妻のようにすり抜け、迫る謎の影ッ!!


 それは、迅速丁寧、

 ネコのマークの宅配便屋さんでバイトに励む、

 ネコのマスクのマスクマン、

 古蔵さんでした。


古蔵さん「はい、ねーさん、スイカアイス。


     あと、セリスさんとエリナ先生の分も、

     持って来たっす。」


セリスさん「きゃー、嬉しいです~!」


エリナ先生「実に、素晴らしいと思います。」



   ◇ 古蔵さんに、惚れ吹き矢命中率100%の付与ッ!! (効果 約30分。)



佐藤さん「鈴木さん、早く隠れてッ!!」


鈴木さん「えーっ、


     古蔵さんは、吹き矢3連射出来るんですから、

     佐藤さんも、当たりにいけば、

     いいじゃないですかー。」


佐藤さん「私は、レオクスさん(もしくは、シオン殿下)、

     狙いですのでw」


 古蔵さんは、珍しく震えています。


 エメラルドグリーンのビーチで、

 初代エスト王妃とバカンス中の、

 ウィルハルト一世さんは、

 いまだに手を握るのにも一苦労していますが、

 現在、とってもご満悦です。


 1本10億ゴールドを超える、

 惚れ吹き矢の10本や、20本、

 無駄撃ちしても、ポケットマネーで何とかしてくれるでしょう。


 古蔵さんは、そのちっちゃい男気を、

 フルスロットルさせ、

 惚れ吹き矢を封印しましたッ!


古蔵さん「プルプル・・・、


     自分、まだ勤務中なんで、

     次の配達、行って来ます。


     今夜の晩酌のワンカップ、

     大吟醸に代えてもいいっすよね?


     あとは、スルメがあれば・・・。」


エリスねーさん「お前、もうマスク外してもいいんじゃね?


        立派になったよ、うんうん。」


 そんな弟分の成長を素直に喜ぶ、

 エリスねーさんに、

 古蔵さんは、その背中で語ります。



  「自分、今はネコを本気で愛しているもんで。」、と。



 古蔵さんの勇姿に、鈴木さんも佐藤さんも、

 その胸の奥に、ちょっぴりズキュンです。


 その素顔は、ギャラクシー級のイケメンで、

 天下で最大の勢力を誇る、現役覇王さんです。


鈴木さん「私たち、もしかして青春してますか!?」


佐藤さん「ええ、(鈴木さん押しのネコ船長には、お気の毒ですが。)、

     青春させられましたね・・・。」


 アイス二段重ねの威力は、

 エリナ先生を足止めするには、十分でした。



エリナ先生「では、お相手いたしましょう。」


 こうして、エリスねーさんとべたべたしていたい、

 セリスさんの策に、

 エリナ先生は、乗ってあげる事にしたのです。


 何といっても、

 二人は、大の仲良しさんですから。


セリスさん「ウフフ・・・。」


エリナ先生「フフフフフ、


      ウッ!? 今、キーンって来ました。

      ああっ、甘い誘惑漂う、

      夏の日、今日のこの頃・・・。」




エストさん「ついでに、

      私も、復活させてYO!!!」



              続く、かも知れません。
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番外編 「ファンタジスタ エリスさん。」 2016.6.27

2016年06月27日 15時10分01秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-
   番外編「ファンタジスタ エリスさん。」


 第二話の途中辺りから、

 めっきり出番をジラさんに取られてしまった、

 乙女な姿のエリスねーさん。


 ねーさんと呼ぶには、

 あまりにも愛くるしい容姿で、

 萌える草原のような、光流れる長い髪に、

 アラバスターの頬に咲く桜色の頬紅。


 湧き出す泉のように、澄んだその瞳を持つ、

 端正な顔立ちのその美少女は、


 ねーさん時の胸の豊満さは失っていますが、

 それを補って余りあり過ぎる、

 可憐さを周囲に漂わせています。


エリスさん「まな板で悪かったなッ!!!」


 と、魂のシャウトをするエリスさんは、

 ファンタジーな感じの香る、

 お花畑に立っていました。


リンカさん「貧乳は、選ばれし者のステータスですよッ!!」


 と、白いスク水姿のリンカさんが突然現れ、

 そのメッセージを熱く残して、森の方へと去っていきます。


エリスさん「おおぅ!?

      なんで、リンカちゃんが!?

      と言いたいとこだが、

      私の事、全然気付いてなかったっぽいな・・・。


      んんっ、とにかく言葉使いには気を付けよう。


      今の私は、「ねーさん」では無くなってしまったのだな、

      はぁ~~~っ。」


 っと、深いため息を付きながら、

 なんとなく、今の姿にあった会話を心がけようと思う、

 エリスさんです。


 ここは、何処? 私はだれ?


 と、言いたくなったエリスさんに、

 残酷な現実を突きつけるような、

 立て看板が、道なりに立っています。


 『ここは、ファーム。

  貴女は、エリスさん。
  

  うかうか浮かれて、

  色恋沙汰なんて止めて下さいね。
  

  先を越されるのは、不愉快ですし、

  具体的に言うと、元の世界に戻れなくなりますョ。

  
    - きゅんきゅん LOVE ME エリナより。- 』


 エリスさんは、純白のドレスを可愛く揺らしながら、

 速攻で、立て看板を引き抜くと、


エリスさん「ホォァタァァァァアア!!!」


 ぽこぽこ叩いて、

 木っ端微塵の木片へと変え、

 土へと還してあげました。


エリスさん「ぜぇぜぇ・・・。な、何なんですの。


      ・・・こんなワナ的なフラグを、

      他人に見せるわけにはいきませんっ!!」


 証拠を隠滅したエリスさんは、

 あの青い空を見上げて思います。


 穏やかに晴れわたる空は、甘酸っぱい青春をするには、

 いい日和です。


エリスさん(・・・『ファーム』って、なんだろ。


      野球的な二軍ってこと?


      まあ、私はお気に入りの選手は、

      ファームから応援しに行ってるからなぁ。


      最近は、近代的なカッコいいファームもあって、

      応援楽しいんだよな。


      そういう未来のスター選手に、

      ツバを付けるなという、警告的な意味だろうか?


      エリナ先生って、恋愛したい120%モードなのに、

      THE・BIGさん(前世の旦那)にストーカーされて、

      災難なんだよな。


      そこは、同情せんでもないが、

      私の実力では、どーにもならんギャラクシー的なパワーを誇る、

      ザ・ビックさんが相手じゃ、

      エリナ先生に加担した時点で、


      「ためぞうの冒険」は終わる・・・。)


 長いものには巻かれて生きようと、

 レディース時代の、

 あの雄雄しき気概を失ってしまった、エリスさんです。


 エリスさんは、きっと出口のない、

 このほんわか世界を、道標の示すまま、

 道なりに歩いていきます。


エリスさん(・・・なんか、待機中のまま出番のない、

      A氏、B氏やら、いろいろすれ違っている気がした。

      ここは、やっぱ一軍に上がる為の試練場なんだな。


      冒険の扉とか、

      初心者から、中級、スーパーハードモードまで、

      完備されてるぞ。


      扉は、洞穴に木の扉ってのが、

 
      胡散臭いけどなぁ。)


 しばらく歩いていると、

 通り道に、縁日の出店のような露店を一軒見付けました。


 近付くと、そこには一匹のたぬきの店員が、

 わたあめと、リンゴ飴を売っています。


たぬきさん「いらっしゃ・・・おおぅ!?


      なんで、こんな場所に、

      ナイスで素敵でエレガントなお姫様がいるのッ!!」


 ・・・その口調から、エリスさんには、

 たぬきの正体の想像が付きました。


 たぬきは、突然の出会いにヒャッホウしながら、

 チャンスだ、落ち着けと、

 深く息を吸って深呼吸をしています。


たぬきさん「おめでとうございます!


      来店一万人目の貴女には、

      このたぬき特製のわたあめとリンゴ飴を、

      豪華一年分、毎日お届けいたします!!」


 出会い一年間を押し付けてくる、たぬぞうさんです。


エリスさん「お、お気持ちだけで。」


 エリスさんは、この時、

 このたるんだ「たぬぞう」さんに、

 気合を注入するか、

 スルーして、わたあめを買って帰るかで、

 ちょっと迷っています。


エリスさん(スルーは無しだ。

      番外地でしか、ためぞうと会えないなんて、

      おねーさん、悲しすぎるぞ。


      いっちょ、気合を入れてやるかね。)


 可憐なお姫様なエリスさんは、

 たぬきさんを手招きして、店から誘い出します。


たぬきさん(どきどき・・・。)


エリスさん「おいコラ! ためぞー!!


      気合入れてやんぞーッ!!!」



   パチィーーーン!!!



 エリスさんは、たぬぞうさんの頬を激しく平手打ちです!

 ですが、その手は細くしなやかで、

 いい音のわりに、ダメージ0のほんわか感触です。


 たぬぞうさんは、もっとと、

 反対側の頬を差し出しますが、

 何か違うプレイに変化しそうなので、


 エリスさんは、たぬぞうさんの頭の上の、

 見えない葉っぱを取り上げました。



   どろ~ん。



 たぬきさんは、弟分のためぞうに戻りました。


 ただ、戻っただけなので、

 たぬきサイズのちっさい布切れが、

 大事な部分を隠しているだけです。


エリスさん「ブーーーーッ!!

      早く何か着ろよっ!」


 ためぞうは、露店の中から、メロンのプリントのシャツと、

 ジーンズに着替えて、テレながら戻って来ました。


エリスさん「てか、普通はたぬきさんが、葉っぱを乗せて、

      人に変化すんじゃねーの?


      葉っぱ乗せて、たぬきさんになるって、どうよ?」


ためぞう「・・・そういう仕様なんで、すんません。」


 素直に謝られると、対応に困るエリスさんです。

 押しは強いですが、押されると弱いのです。


エリスさん「世の中には色々ある!

      そして、ここは何でもありの番外地だ。


      現実に目を背けず、よく私を見ろっ!!」


 ためぞうは、ツンデレっぽい美少女に、

 なんだか、もじもじしています。


エリス「だから、私はためぞうの姐さんの、

    エリスだよ!


    見た目が、まあ声も全然違うが、

    とにかく現実を受け入れて、

    気合を見せろ!


    さっさと、本編で会おうや・・・。」


 何だか熱く語る可憐なお姫様姿のエリスさんに、

 ためぞうとしては、何だか勇気が持ててきました。


 何と言っても、エリスさんとためぞうは、

 血の繋がった姉弟ではなく、アネキと弟分の関係です。


 この愛らしいエリスさんでも、いいーーんですっ!

 きっと、トゥルーエンドの幸せゴールインなんです!!


ためぞう「と、いう事で、

     よろしくお願いします、

     ねーさんじゃない方のエリスさんっ!」


エリスさん「お前、サフィリアさんと、レミーアさんは、

      どーすんだよ。


      言っちゃうよ。

      世界のあちこちで、シャウトしまくっちゃうよ。」


ためぞう「うぉぉ・・・。


     どうすればいい、考えるんだオレ!


     そう、今こそとんちを使う時だ。」


 すると、その場にマッハで現れた、

 アメジストの髪の貴公子、レオクスさんが、

 ためぞうの前に現れ、こう耳打ちます。


レオクスさん「ためぞう君!

       目移りはダメだよ、悲しいよ。


       エリスさんは、

       私とセバリオスさんの甘酸っぱい青春なんだよ。


       ちなみにサフィリアさんは、ためぞう君も含む、

       争奪戦の対象です。


       最近、エリナ先生の素晴らしさにも、

       ようやく気付き始めましたが、

       父がご迷惑をおかけしている最中なので、

       私は自重しようかと思っています。


       わかるかい、ためぞう君!


       私たちは、強い絆で結ばれた仲間なんだよ。

       抜け駆けは、ダメなんだからネ。」


 と、久しぶりに熱く語った充足感に浸る、レオクスさん。


 振り返ったレオクスさんは、あの時のエリスさんの姿に、

 感涙しています。


レオクスさん「セバリオスさんしか知らないキラメキを、

       私は今、この瞳で見つめているんだね・・・。


       ああ、今ようやく分かったよ、

       セバリオスさん。


       (これが、未来の私かセバリオスさんの娘さんの姿なんだね。)」


 何だか、ハンカチで涙を拭ってるレオクスさんに、

 エリスさんも、照れています。


 そんな風に見られているのを、知らずにいれば、

 幸せな事でしょう。


 憧れのレオクス王子様に、ちょっぴり浮かれてしまう、

 エリスさんです。


エリスさん「さすが、レオクスさんですね。


      私の事をわかってくれるんですね!」


レオクスさん「もちろんですとも!


       いやー、いい想い出も出来たので、

       一旦、本編に戻っておきますね。」


 帰る時は、光の速さのレオクスさんです。

 いいメモリーをゲットして、

 ためぞうと、エリスさんを残して、

 番外地を去って行きました。


エリスさん「ハァ・・・いつになったら、

      戻してくれるんだろうな、エリナ先生。


      もうすぐ夏だぞ。

      デパート行って、田中さんに水着選んでもらわないと

      いけないのに、


      トレンドから置いて行かれるなぁ~。


      有給は、一年分くらい溜まってたから、

      しばらくは大丈夫なんだが、

      余裕ぶっこいてる場合じゃないぞ。


      エリナ先生に、なんだかポジション持っていかれそうだゾ!!」


ためぞう「・・・オレも早く復帰したいんだが、

     当分、無理っぽいな。」


エリスさん「気合だよ、気合ッ!!

      ためぞうにも、あんだろ、


      熱い魂(ソウル)を届けたいって気持ちが。」


 何とも愛くるしい美少女姿のエリスさんに諭されても、

 うんうん、とほがらかに微笑んでしまう、

 ためぞうでした。


エリスさん「ほら、行くぞためぞー!

      もう冒険の資金は露店でしっかり稼いでるんだろ。


      早く帰ろうぜ、私たちのあの家になぁ。」


ためぞう「付いていくよ、ねーさん。」



        エリスさんの放浪記は、まだまだ続きそうです。
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パート1 『ためぞうの帰還。』  2016・5・30

2016年05月30日 19時29分07秒 | -ためぞう の ぼうけん。『番外編。』-

  パート1 『ためぞうの帰還。』


 長崎ドラゴンタウンという街に暮らす、

 美人OLのエリスおねーさん。


 農業や、漁業が盛んで、

 オフィス街のベットタウンとあって、

 結構、たくさんの人々が暮らしています。


 だいたい、3000万人くらいです。


ためぞう「何処の、

     スカイタワーのある都市圏の話してんだYO!!


     地域でおよそ、1000万人くらいだと思います。」


 旅からふらりと帰ってきた、

 ためぞう君、18才です。


 それでも、中々の人口ですねっ。


 名物の明太子に、

 とんこつラーメン、皿うどん、


 海苔がおいしい有明海の、

 ムツゴロウさんパワーなのです。


ためぞう「うん、街も港も、

     デカい造船所もあるからね。


     アクセスも、結構便利だよ。


     市街地のすぐそばに、

     「佐賀・がばい国際空港」もあるのし、

     冒険行くにも、楽なので、

     自称、冒険野郎もあちこちいたりする。」


 そうです!


 ためぞうは、番外編なら、

 いつでも帰ってこれるのですッ!!


ためぞう「そこ、強調する所じゃないからね・・・。


     オレ、本編に出れないよね?

     出す気、ないよね?


     ・・・まあ、ともかく、

     梅雨も間近なこの時期に、

     エリスねーさん家に、帰ってきたわけだが、


     もうすでに、

     きらめきの学園生活を、

     相当取りこぼしているよね。


     主に始業式から、自己紹介やら、

     お花見やら・・・、

     
     ・・・語るとむなしいとこは、

     この際、省こう。


     でもね、

     銀髪の美少女サフィリアさんにも、

     おまけのネコちゃん×2や、


     実は、麗しの美白なお姫様の、

     ゲーム大好き、レミーアさんとも、


     一度も会ったことないよ、本年度。」


 エリスねーさんがいなくなってから、

 しばらくの時が流れています。


ためぞう「エストさんとかは、

     別に、会いたきゃいつでも会えそうだし、


     女の子というより、マブダチなんで、

     別にいいんだけど。」


 そんなエリスねーさんの、

 ガレージ付きの一軒家に、


 ためぞうは、長い旅を終えて、

 帰って来ました。


ためぞう「エリスねーさんも、

     まさか冒険出てるの?


     新聞が一週間ぶんくらい、

     郵便受けから溢れ出して、

     生活感が、まるでないんだけど。」


 そう言って、家の中に、

 冒険の荷物とお土産を置いた、ためぞうは、


 まず、木の葉の落ちたままの、

 縁側の雑巾かけから始めました。


 お寺の小坊主のように、せっせと動くためぞうは、

 ピカピカに床や縁側を磨き上げると、


 廃品回収用に、古新聞や、

 使わなそうな物を、きちんと分別して、

 片付けをしてます。


 業者並のスピードで、エリスねーさんの家が、

 磨かれていきますが、


 こたつは年中、

 出しっぱなしのくつろぎスペースなので、


 いつでも、ごろ寝出来るように、

 ねーさんの、枕代わりのクッションとかを洗濯して、

 物干し竿に、天日干しにし、


 敷き布団を、ひんやり冷感タイプに交換して、

 テレビを付けて、一息、お茶でも注ぎます。


ためぞう「まあ、のんびりやっていこう。」


 と言いながら、

 ずずーっ、とお茶をすする、

 ためぞうです。


 もう、家の中のほとんどが、

 ピッカピカになっています。


 ためぞうは、その長い冒険の旅で、

 掃除スキルを磨いて、戻ってきたようです。


 残すは、ねーさんの愛する、

 カスタムガレージの掃除です。


   ピンポーンッ!


ためぞう「はーい。」


 お客さんが来たっぽいので、

 ためぞうは、玄関に向かうと、


 磨りガラスの木製の戸の向こうに、

 長身の男性らしいシルエットが見えます。


 ためぞうが、ガラガラ~っと音を立てながら、

 玄関を開けると、


 そこには、イケメン王子様のレオクスさんが、

 立っていました。


レオクスさん「ためぞう君!?


       帰ってきてたのッ!」


ためぞう「ほんの、

     ちょっと前に帰ってきたとこっす。


     あ、庭掃除とかしてくれてたのって、

     師匠だったんすか?」


 ためぞうは、人生の先輩であるレオクスさんを、

 いろんな意味で、「師匠」と仰いでいました。


 ためぞうは、レオクスさんの、

 そのイケメンパワーにあやかっています。


 190cmの長身に、

 端正な顔立ちの、優しいレオクスさんは、

 老若問わず、世の女性を惹き付けます。


 そのおかげで、ためぞうは、

 女子との出会いに困りません。


 よく見ると、レオクスさんは、

 簡単なお掃除キットを持参しています。


 どうやら、週一くらいの感覚で、

 古新聞や、庭掃除をしてくれていたみたいです。


レオクスさん「いやー、逢えて良かったよ!

       ためぞう君。」


 舞台の女形もスッピンで演じられるくらい、

 紫陽花色の長い髪が綺麗な、

 絵に描いたような王子様のレオクスさんが、


 その元気なためぞうの姿を見て、

 曇りのない、美しい瞳を、うるうると潤ませています。


ためぞう「ためぞうは、

     番外編なら登場可能らしいんで、


     何かご用があれば、

     この番外地に足を運んでくれると、助かります。」


レオクスさん「大変なんだよ、ためぞう君!!


       エリスさんが出かけちゃって、

       もう、結構経つんだけど、


       今度は、あのセバリオスさんまで、

       どっかに行っちゃてて、


       スマホも繋がらないし、

       ホント、困ってた所だったんだよ。」


 レオクスさんは、そう言って、

 ためぞうの安否が確認出来た事の、

 その安心感と、


 強烈な度胸を持って、自分を引っ張ってくれる、

 セバリオスさんと連絡がつかない不安で、

 びみょ~な表情をしています。


ためぞう「まずは、あがって下さいよ。


     茶でも飲みながら、

     ゆっくりと話してみましょうよ。」


レオクスさん「そうだね、ためぞう君。」


 レオクスさんの表情が、

 ちょっとだけ柔らかくなります。


 今のレオクスさんは、


 何事にも怯まず、

 いろんなものを手に入れまくる、

 セバリオスさんと、


 無駄に激しい試練を切り抜けまくって、

 その経験のほとんどを、水に流してしまっている、

 冒険野郎のためぞうとの、


 そんな対極にいる二人の間にいることに、

 とても安心させられるのです。


 多彩で何でも出来る、

 神のルックスを持つ、レオクスさんですが、


 実は、かなり引っ込み思案で、

 自分にも、からきし自信のない、

 相当、もったいない性格をしている人なので、


 いつもの三人組でいる時が、

 一番、生き生きしています。


 相変わらず、和風テイストの、

 アットホームな感じのする、

 こたつのある、縦長の居間に、

 レオクスさんは通されます。


 レオクスさんは、ちょこんと、

 エリスねーさんの指定席に近い場所に座ると、


 ためぞうは、すすーっと台所の方へと向かい、

 湯のみと茶菓子を取りに行きます。


 レオクスさん(あれ? エリスさんのあの優しい匂いが、

        しない・・・。)


 レオクスさんは、料理のプロなので、

 香りにはとても敏感です。


 誰も気付かないくらいで、微かに漂う、

 ねーさんの使ってる、シャンプーの柔らかな空気が、

 今日は、感じられませんでした。


ためぞう「模様替えしたんす。


     きっちり、ピカピカに磨き上げました。」


レオクスさん「あ、そうなの?」


 空気まで新品にされた感じで、

 心の中では、ちょっとガッカリなレオクスさんです。


 すると、ためぞうが持ってきた、

 その渋い湯のみは、


 ツーリングで立ち寄った陶芸村で、

 エリスねーさんが作ったという、

 『えりす』という、銘の入った湯のみでした。


レオクスさん「えっ!?


       それ、使っちゃうの?」


 ためぞうは、新しく入れなおしたお茶を、

 その湯のみに注いで、

 レオクスさんに、差し出します。


ためぞう「ねーさんいないんで、

     せめて、雰囲気だけでも、と。」


 レオクスさんは、

 その温か湯のみを包み込むように持つと、


 (グッジョブ! ためぞう君っ!!)っと、

 その心が、シャウトしました。


 ためぞうが、エリスねーさんが買ってきた、

 からしレンコン煎餅の袋を開けると、

 そのお煎餅を、レオクスさんに進めてきます。


 縁側には、エリスねーさんのクッションなどが、

 天日干しされていて、


 居間に差し込む陽射しに、

 ほっこりさせられそうです。


 なかなか、湯のみに口を付ける勇気を持てない、

 レオクスさんは、

 先に、エリスねーさんのお土産っぽい、

 お煎餅の方に手を延ばします。


   パリッ!


レオクスさん「うおぅ!!!


       ・・・これ、めっちゃくちゃ、

       からし効いてるのね。ひーひー。」 


ためぞう「慣れたら、めちゃ旨いっす。


     ねーさん、バリバリ食べてますし。

     袋、残っててよかったっす。」


レオクスさん「確かに・・・、じわぁ~んと旨みが出てくるね。」


 レオクスさんは、額に汗を流しながら、

 なかなか、その湯のみを口に運ぶことが出来ずに、

 その青春の辛さを、艶のある唇を痺れさせて味わっています。


 確かに、レオクスさんは、

 青春の味を感じているのです。


 お茶は飲めなくても、

 料理を嗜む者としてのサガが、

 お煎餅に延ばす手を、止めさせないのです。


レオクスさん「これ、ホント美味しいね!


       うん、癖になりそうです。」


 恍惚とした表情を浮かべながら、

 いい汗を流しているレオクスさんです。


 そんなレオクスさんに、

 ためぞうは、これまでの経緯を尋ねます。


ためぞう「ところで、ねーさん、

     いつ頃から、見かけなくなったんですか?」


レオクスさん「うんと、話すと長いんだけど、

       こんな感じという事で。」


 レオクスさんは、そう言うと、

 新聞のチラシを裏返し、


 ポケットから取り出した、

 すごく高そうな万年筆で、


 自分にも分かりやすいように、

 これまでの出来事を整理し始めます。



  ・ まず、エリスさんを、

    春先辺りから、見かけなくなりました。


  ・ ためぞう君もいなかったので、

    金髪ショートカットの美少女、シオンさんは、


    ためぞう君が本編に戻ってくるまでの期間、

    忙しそうなアリス会長さんに、連れて行かれました。


  ・ エリスさん家に、一緒に住んでる、

    雪華の美少女、ゆきはなさんも、

    今は実家の、東北の伊達の本家に帰っています。


  ・ エリスさんの代わりに、

    花嫁衣裳を身に包んだ、エリナ先生の写真を見て、

    ちょっといいかな?


    ・・・うんと、かなりいいかなっ!! とか、

    セバリオスさんと一緒に、思ってしまった事。


    でも、サフィリアさんバージョンも見てみたいなと、

    思います。


・ エストさんは、相変わらず元気ですね。

  ローゼさんとも、良く会う感じです。


・ そして、セバリオスさんと、

  いつの間にか連絡が付かなくなってしまいます。


  セバリオスさんの秘書っぽい、

  黒髪美人の、学園の事務員も兼務している、

  セリスさんに聞いても、


  「たぶん、いつか帰って来るでしょう。」と、

   簡単に言われただけです。


レオクスさん「と、まあ、

       こんな感じですね。」


ためぞう「なるほど、

     謎に謎な、ミステリーなわけですね。」


 ためぞうは、状況をよく分かってるのか、

 わからない感じですが、

 納得した様子をしています。


エストさん「とぅ!!」


 と、そこに、

 何処からともなく、颯爽とエストさんが現れます。


 結構な重装備で、

 重そうなキュイラス系の甲冑を着ています。


 これまたゴツイ兜を畳みに置いて、

 背中にしょった、いっぱいに戦利品の詰まった、

 大きなバックを、軽々とからっています。


 よいしょ、っとエストさんが、

 こたつに座ろうとしたその時ですッ!


 エストさんは、こたつに空いた謎の穴に落ちて、

 その姿を消してしまいます。


エストさん「せっかく帰ってきたのに、

      また、高難度の冒険かぁ~~~!!!」


 エストさんは、

 ゴツイ兜を、畳の上に残して、

 その叫びと共に、いなくなってしまいました。


ためぞう「うぉう!


     ・・・この安全地帯で、

     いきなり凶悪なワナが、発動しやがったぜッ!」


 次は、我が身と、

 ためぞーは、エストさんの残した重たそうな兜を、

 じーっと、見つめています。


レオクスさん「だ、大丈夫だよ、ためぞう君。


       仮に、ワナに落ちても一緒に行くから。」


 そんな、緊迫した現場に、

 黒髪の美人秘書、セリスさんがやってきます。


セリスさん「お二人とも、ごきげんよう。


      厚い友情で、素晴らしい事ですワ。

      ウフフフフ・・・。」


 いつもと360度以上、雰囲気の違う、

 そのセリスさんが、

 上品にこたつへと座ります。


セリスさん「あら、ごきげんよう、エストさん。


      そんな所に居ただなんて、

      気付かなくてごめんなさいネ。」


 セリスさんは、無機質な表情をして、

 畳に置かれた、ゴツイ兜にそう言います。


ためぞう+レオクスさん(こ、怖えぇーー!!!


            中身が、あの恐怖の女王様、

            『アセリエス』さんに、戻っちゃってるよォ!!)


 今、うかつ発言をすると、

 ためぞうは、もちろん、


 実力では、あの無敗のセバリオスさんにも迫る、

 レオクスさんでさえ、


 エストさんの出落ちの、二の舞になりかねません。


 安全地帯と思われた、このこたつエリアを、

 一瞬で戦場へと変える事が出来る、セリスさん。


 そんな彼女を止める事が出来る、エリスねーさんも、

 セバリオスさんも、今は居ません。


セリスさん「あら、そんなに畏まらなくっても、

      よろしゅうございましてよ。


      エリス様に会えなくて、悶々とした日々を送る、

      いわば、同士ですもの。


      ワタクシたちは、ね?」


ためぞん+レオクスさん「は、ハイでありますッ!!」


 気の利くレオクスさんは、

 エリスねーさんの湯のみを、

 よかったらどうぞと、セリスさんに譲ります。


セリスさん「まあ、嬉しい。」


 ためぞうは、代わりの湯のみを探しに席を立ちます。


 残されたのは、レオクスさんと、

 エストさんの残した、

 物言わぬ鉄兜だけです。


レオクスさん(ひぃ・・・、

       一人にしないでYOッ!!!)


 その恐怖に、レオクスさんも、

 ちょっとズレた感じになっちゃってます。


 そんなセリスさんは、

 湯のみの温かなぬくもりをその手に感じながら、

 鉄兜となってしまった、エストさんに、

 こう言います。


セリスさん「エストさんは、どう思われますか?


      ・・・なるほど、

      沈黙も一つの答えというわけですね。


      ええ、それにはワタクシも、

      同意してしまいますワ。」


 テーブルの上に置かれたメモさえあれば、

 知力が98(+10)もある、セリスさんに、

 相談相手など無用なのです。


 つまり、ためぞーも、レオクスさんも、

 何らかの存在意義を持たなければ、

 エストさんと、同じ末路を辿ることでしょう・・・。


レオクスさん(た、助けてw)


 ためぞうも、ためぞうなりに、

 数多の試練を乗り越えて来ましたが、

 今度の試練は、いつものとは格が違います。


 ですが、レオクスさん一人を、

 その試練の前に晒す事は、

 ためぞうには出来ません。


 エリスねーさんの予備の湯のみを持って、

 こたつへと向かうのです。


ためぞう「師匠、湯のみどぞ。」


レオクスさん「ありがとう、ためぞう君。」


 セリスさんは、その新しい湯のみに、

 お茶が注がれるのを、

 ただ、見つめています。


 少し手が震えている、レオクスさんです。


レオクスさん(まじまじと、見ないでっ!)


セリスさん「まあ、

      それもエリス様の愛用の品なのですワね。」


 白磁の湯のみに、

 マジックで、またも『えりす』と書いてあります。


 何だか、色んな物に名前入りって、

 小学生の持ち物みたいで、いいですね。


ためぞう(OH-、ミステイクッ!!!)


レオクスさん(・・・嬉しさと、恐ろしさを、

       同時に体験するだなんて。)


 セリスさんは、

 ためぞうの方を見て、こう言います。


セリスさん「ためぞうさんは、

      このワタクシがこよなく敬う、

      エリス様の大切な存在ですし、


      どんな事が起こっても、

      ワタクシは、ためぞうさんの味方ですよ。


      取引には、誠実でありたいと、

      常に思っておりますので。」


 ためぞうの、これまでの貢献度に応じて、

 セリスさんは、同等の対価をもたらす事でしょう。


 つまり、普段ピンチとは、縁遠いレオクスさんだけが、

 今のターゲットだという事になります。


 ためぞうも、レオクスさんも、

 そして、虚しいそこの鉄兜も、

 まるで石のように固まって、動けないでいます。


 そんな中、セリスさんは、

 メモに目を通しながら、


 激辛、からしレンコン煎餅を、

 上品にですが、バリバリと食べています。


 あんなに辛いものを、顔色一つ変えずに、

 とくにお茶をがぶ飲みするわけでもなく、

 淡々と食べています。


レオクスさん(は、半端ねーッ!!)


 どうやら、そのキャラを維持できそうにもない、

 レオクスさんです。


 セリスさんは、わりと熱いお茶を、

 平然とごくんと飲むと、


 ためぞうと、レオクスさんと、

 残された鉄兜に、こう話し出します。


セリスさん「簡単な見解を、申し上げさせて頂きますと、


      現在、姿が確認出来ない方々が、

      この問題に関係しています。


      ああ、申し遅れましたが、

      今は、教員免許を持つワタクシが、

      エリナ先生の代わりに、

      3年J組の教鞭を執らせて頂いております。


      つまり、ためぞうさんと、

      ワタクシは、

      生徒と女教師という関係ですので、


      ご要望がございましたら、

      秘め事的な展開も、サービス内容に入っております。


      気軽に、お声をかけて下さいまし。」


   ブーーーッ!!!


 含んだままのお茶を、

 鼻と口から噴射する、ためぞう。


 慌てて、濡れたテーブルを、

 持参した布巾で拭く、レオクスさんに、


 ためぞうは、ティッシュて顔を拭いて、

 すいませんっ、という表情をしています。


 この時、ためぞうは内心、

 どーなってんの!? 『狂嵐の3年J組!!!』

 って、思えてしまったのです。


 これでは、クラスメイトのサフィリアさんや、

 レミーアさんとは、簡単に会う事が出来ません。


 「取り引き」という言葉を使えば、

 セリスさんは、ためぞうの貢献度を消費して、

 その願いを叶えてはくれそうです。


 そんな二人の様子に、無関心な表情で、

 セリスさんは、話を続けます。


セリスさん「このメモの中には、

      我が主が、エリナ先生に興味を持ったという、

      大変、愉快な情報が記されています。


      まあ、それはワタクシの楽しみとして、

      この胸の奥に秘めておくとしまして、


      報告を一つ、

      して差し上げたいと思います。」


 セリスさんの次の言葉に、

 ためぞうも、レオクスさんも、

 興味深々です。


セリスさん「現在、こちらへと花嫁修業中として、

      ヒゲが収めるある大国の姫、


      そのローゼさんが、

      大きなマンションの管理人である事は、

      みなさん承知の事ですワね。


      あらゆる出来事を、知る事が出来る、

      その『便利な本』をお持ちの、

      ローゼさんに、手がかりを求めて、

      会いに行ってみたのですが、


      面白い事になっていたので、

      そのまま放置して参りました。


      彼女のその本も、今は使い物にならず、

      時々、その容姿が弟のウィルハルト王子と入れ替わっていたりします。


      中身がそのままで、入れ替わっているので、

      おろおろとしている様は、

      中々の見物ではありました。


      ワタクシは、美しい男の娘は、

      大変、興味がございますので、


      内面など気にせす、

      あの姿で、固定されてしまえば良いと、

      個人的に願っています。


      そういうオモチャを手に入れるのに、

      悦びを感じる性分なもので。


      それもアリと思われるのであれは、

      ためぞうさんも、レオクスさんも、


      美しく可憐な男の娘との、

      甘美なる営みを、妄想、あるいは、

      目標の一つとしてみるのも、いかがでしょう。」


 うかつに、お茶すら飲めないと悟る、

 ためぞうと、レオクスさんです。


ためぞう(シオン君との同居ですら、かなりの試練なのに、

     そこまで話が進んだら、

     オレは、きらめき学園ライフから、

     完全に脱落する事だろう・・・。


     落ち着けオレ。


     オレの知力3では、答えの出ない事を、

     ひたすら考えるのだ。


     いろんな誘惑にホイホイ、飛び込むんじゃーない。


     桃栗三年、柿八年と言うではないか。

     機を見て敏たるを極めねば、

     オレは、あらゆる戦場から、生還は出来ない。


     ・・・まだ、何の結果も出せていないオレが、

     それを語るのも、

     知力が3な理由なのだろうが。)


 セリスさんは、お茶をおかわりすると、

 袋の残りを気にしてか、

 お煎餅に手を延ばすのをやめます。


セリスさん「さすが、エリス様は、

      大変おいしい物を、

      ご存知でいらっしゃいます。


      十分に満足いたしましたので、

      あとは、三人(+鉄兜)でお楽しみください。


      では、推測の域を超えるものでは、ないものの、

      ワタクシなりの見解を述べさせていただきます。


      どうやら、タイムパラドックスが、

      起こっている様子です。


      具体的に言うならば、

      過去の歴史、に何らかの変化が起きていると、

      言えるでしょう。」


 すばり来たセリスさんの、その大胆な結論に、

 ためぞうも、レオクスさんも釘付けにされます。


 この人のいう事が外れる確立は、

 1000分の1%も無いからです。


セリスさん「ある文献の記述が、

      ワタクシの知るものと一部、

      異なっている点があるのを、

      書庫を調べている内に、判明したワケですが、


      さらに詰めて言うと、

      過去のエグラート大陸の、その南方で起こった、

      大きな争いに、エリス様は、巻き込まれています。


      仕掛け人は、エリナ先生。


      でなければ、

      その過程で現在へと戻って来て、

      かの主さえ魅惑した、


      あの可憐なる花嫁姿の写真の、説明が付きませんもの。


      また、我が主セバリオスも、

      ローゼ姫と共に暮らす凜花さんも、

      その出来事に関係しています。


      主とワタクシが、

      長距離移動に用いるフォーリナも、


      何らかの干渉を受けておりますので、

      そこに過去の出来事が、関連しているのは、

      間違いございません。」


 予想もしない展開を語る、

 セリスさんに、


 ためぞうも、レオクスさんも、

 言葉がありません。


 有体に言うと二人は、居ても居なくても同じなくらい、

 役に立ってはいません。


 ですが、

 その想いは、一つでした。


ためぞー+レオクスさん(ちょースゲーーーーーッ!!!)


 っと、その時です。

 セリスさんが食べていた、

 お煎餅の激辛カラシが遅れて鼻に来たのか、


   くちゅん!


 と、可愛いくしゃみをしました。


 しばし、沈黙の時が流れます・・・。


セリスさん「えーっと、

      なんだか、私、

      元にもどっちゃったみたいですねっ!


      時々、あんな風になっちゃう事があるんですよ。

      長く管理職をやってると、

      こう、ヒュッて、

      その感覚が、フィードバックするような感じです。


      あー、でもさっきお話ししてた事は、

      もちろんしっかり覚えてるんですよ。


      さっきのは寝起き? みたいな感じでしょうか。」


 とんでもない、

 寝起きの恐ろしさを見せられたものでした。


 ですが、普段のひょうひょうとした、

 ポップな感じのセリスさんに戻ったので、


 ためぞうも、レオクスさんも、

 一安心です。


 辛味に耐えてきたレオクスさんも、

 ようやく、お茶を飲めました。


レオクスさん「いやー、お茶が旨いねっ!

       ためぞう君。」


セリスさん「あー、それって、

      間接キスってやつじゃないですかぁ?」


 レオクスさんは、一気に赤面して、

 あわわと、動揺してます。


 レオクスさんは、いい想い出メモリーをゲットしました。


ためぞう「そういや、ねーさん、

     湯のみって、ざっと水で濯ぐくらいだから。


     オレがいない間は、
     ちゃんと誰か洗ってたのかな・・・。」


 それは、セリスさんにも、

 レオクスさんにも、吉報でした。


 湯のみを手にした二人は、

 何だか幸せそうに、ほっこりしています。


レオクスさん「こういうのも、

       いいものですね。」


セリスさん「ですよねー、

      私、エリス様の愛人で構いませんので、


      レオクスさんルートに、エリス様が入ったら、

      私も混ぜてくださいねっ!」


レオクスさん「あはは・・・、

       その勇気を持てればですが。」


 セリスさんとしては、

 相手がセバリオスさんだろうが、

 レオクスさんだろうが、


 エリスねーさんと一緒なら、

 それで幸せだったりします。


 元に戻ったとはいえ、

 セリスさんの知力98(+10)は、健在です。

 能力的には、さほど変わらないのです。


セリスさん「第二話って、

      そろそろ10章に入ってるじゃないですか、


      早く解決できるといいですねぇ~。


      それと、ためぞうさんとも、

      早く、本編で会えるといいですねっ!!」


 性格は変わっても、

 中身は変わっていないんだと思い知る、

 ためぞうと、レオクスさんでした。


 セリスさんは、浮かれた様子で、

 持ち込んだ、ローゼさんが内職で作っている、

 1本100円の見事な完成度の造花を、

 飾り付けます。


レオクスさん「手伝いますよ、セリスさん。」


 レオクスさんは、高い所の飾り付けを担当します。

 セリスさんのエコバックには、

 底に、中華まんのパックと、

 たくさんのお花が入っています。


ためぞう「花見、見逃してるんなら、

     違う花でも、飾ったおいた方が、

     帰ってきた時、嬉しいかもですね。


     自分、いい香りの芳香剤、

     裏から探してきますー。」


セリスさん+レオクスさん「はーい。」


 エリスねーさんの事情が、

 なんとなく分かったので、


 三人とも、ちょっとだけ浮かれています。


 残った一輪の花は、セリスさんが、

 エストさんのその鉄兜に、手向けました・・・。



 ローゼさんの、海が見える、

 リゾートホテルのようなマンションの前にある、


 道路のマンホールのフタが、

 ガタガタと、動きます。


   シュポーーーンッ!!


 宙を舞う、マンホールのフタ。


 その穴から、帰還したのは、

 とんでもないアドベンチャーから帰って来た、

 泥だらけのエストさんでした。


エストさん「勝手に、花とか手向けてんじゃねーッ!!」


 ぜぇぜぇと、息を切らしながら現れた、

 ボロボロのレディースの特攻服に、

 ヘッドライトの壊れた、黒いヘルメット姿のエストさん。


 特攻服は、エリスねーさんのお下がりのようです。


 あんなに山盛りあった戦利品も、

 置き去りに、


 今のお宝は、

 腰にぶら下げた、

 小さなそのずた袋を残すのみです。


 その中身は、

 ドラゴンが10ダースほど居るような、

 秘宝の迷宮から、命がけで持ち出した、

 小さな色の付いた石ころが数個と、

 保存食のバターピーナッツが一本です。


 エストさんが、

 ちゃんとマンホールのフタを元に戻していると、


 そこに、赤毛の長い髪をふわふわさせた、

 とても美しい、中学生くらいの女の子が通りかかります。


エストさん「ウ、ウィルハルト王子様!?」


 怒涛の勢いで迫り来る、

 黒いヘルメットの泥まみれの不審者に、


 赤い髪の女の子は、

 反射的に、つま先を天高く上げて、

 見事な、かかと落としで、

 エストさんをアスファルトに沈めます。


ローゼさん「あれれ、・・・エストさん!?」


 気絶するエストさんに、ウィルハルト王子の姿をした、

 ローゼさんが近寄ると、


 その腰のずた袋から、

 こぼれ落ちる石ころを目にします。


ローゼさん「・・・ざっと鑑定して、

      300円くらい?


      苦労なさっているのですね、おろおろ・・・。」


 自分でノックアウトしておきながら、

 エストさんの稼ぎに同情する、ローゼさんです。


 ですが、このままエストさんを、

 放置するわけにも行かないですし、

 この状況で、起きられるのは、

 なお面倒なので、


 ローゼさんは、誰にも気付かれないよう、

 農作業用の服に着替えなおして、

 麦わら帽子を深くかぶると、


 ヒゲパパの農園で使っているリアカーに、

 エストさんを担ぎ上げて、

 エストさんのアパートまで、送って行くのでした。


ローゼさん「これでよし、っと。」


 今日は真夏日を記録していたので、

 ローゼさんは、

 エアコンの温度を26℃に設定すると、


 ソウルを感じたクマと、

 まりものヌイグルミに、

 エストさんを託して、家路に着きます。


 リアカーには、

 何故か立派な紅鮭が、

 保冷剤の入った発泡スチロールに、

 入れられた状態で、積まれていました。


ローゼさん「いいもの食べているのですね、

      エストさん。」


 ローゼさんは、コソコソと姿を悟られないように、

 ワナを避けながら、マンションへと帰ってきます。


ローゼさん「ハインさーん、

      今日は、立派な紅鮭が手に入りましたよ。」


ハインさん「おっ! 今日は贅沢だね~。

      リンカちゃん、残念だな。」


 金髪、ナイスバディの元気なおねーさん、

 ためぞうの元師匠のハインさんです。


 ローゼさんの、姿が元に戻ったので、

 ハインさんは、ためぞう達を夕食に招きます。


ためぞう「おお、これは幻の1万匹に1匹いるかという・・・。」


レオクスさん「おじゃましてます。

       ワインとノンアルコールのシャンパン、

       持ってきました。」


セリスさん「私は、中華まん持ってきましたー。

      エストさんの紅鮭ですね!


      美味しく頂ますー。」


 こうして、

 ハイタワーマンションの一階にある、

 ローゼさんの家で、


 楽しい夕食が始まります。


ローゼさん「・・・エリスさん、がんばってくださいね。


      では、またですー。^-^」
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