Hanews-はにゅうす

ウィーン歌曲歌手、「はにうたかこ」の毎日のちょっとしたことを書いています

国立歌劇場「マノンレスコー」10.10.2007

2007年10月11日 06時35分44秒 | Weblog
昨日のシュトゥルムは本当にきつかったです。今朝は完全二日酔いで起きました。でも午後からは練習しましたよ。自慢でもなんでもないですが、6月の発表会以降は全然歌えなかったので、こっちにきてリハビリからと思っていますが、やっと最近1時間~1時間半身体と気力が持つようになりました。それでもまだ高音は出してなく、中音域で響きだけを探しています。

さて、マノンレスコーを観て来ました。今日はなんと感想を書こうかとても迷っています。このオペラ、音楽だけでも充分ステキですね。目をつむって聞いていても酔えるオペラです。(というか、目をつむって聞いていた)

歌手も、最初テノールの人がどうかな?っと心配だったのですが、すぐにアンサンブルも良くなり、どんどん後半盛り上がっていくのがわかりました。マノン役の人もピアニッシモがとても美しく、しかも高音が魅力的な女性で、とてもすばらしかったし、オーケストラの部分だけでもしんみり聞き入ってしまう部分が多々ありました。

で、舞台なんです。舞台そのものはとっても面白かったんです。いきなり、ディアモールか、はたまた阪急百貨店のグランドビル側のディスプレーか?というくらい、舞台の奥にウィンドーがあり、そこにマネキンが赤や黒のドレスを着ている。
次の幕では、そのウィンドーが窓になり、窓の外の景色が見える。一瞬にして、地上1階から、高級ホテルの最上階みたいになってしまった。こういう仕掛けは大好きで、だから舞台そのものは悪くないんです。おもしろいんです。

なのに、最初からどうしてもしっくりこない。目をつむって聞いてしまいたくなる。最後まで「どうしてなんだろう」と、考えながら聞いてしまいました。

いくつか原因はあって、まず、このプッチーニのふくよかな音楽と、乾いた面白さを持つ舞台のミスマッチだと思った。オケが、どうだ~、これでもか~、かわいそうだぞ~って泣いているのに、舞台は乾いているんです。(この表現で通じるかなぁ)

もちろん時代が現代に近いものになっているので、囲われたマノンの生活は、カメラマンやテレビが取材にくるような生活。そしてまるで雑誌ボーグにでも出てくるような服装。目に映っている絵は悪くないんです。面白いんですよ。でも聞こえてくる音楽と私の中でマッチしない。で、しかたなく目をつむって聞いていると、昔見た古い時代のマノンレスコーの舞台が見えてくる。もうどうしようもなかったです。

娼婦たちと一緒に、港で呼ばれて並ばされるシーンは、手錠に最新ファッション、カメラマンたちのフラッシュを浴びてという解釈だった。これも目はとてもよろこんでいたんだけど、音楽聴きだすとおかしい感じがするし、確か最後はアメリカに飛んで、ひもじくて死ぬんだよねと思っていたんですが、最初のショーウィンドーに戻ってきてしまいました。

時々手元の対訳を読むんですが、「お願い、水を探してきて~」とマノンが死ぬ前に言うのですが、これは昔々まだアメリカに何もないときに、荒野の中で言うから聞こえるセリフなのになぁ~って。たぶんそのちょっとした言葉も、今回の舞台には違和感があったのだと思います。

どっちもパーツとしてはとてもよかったのに、あわせると消しあっている感じがして残念でした。この前の「天国と地獄」は現代にしてパワーアップしたいい例だったのですが、今回は昔のほうがよかったなぁというのが私の感想。(これでまとめてしまいたくないなぁと思うのですが、これでまとまってしまいますね。)

ウィーン国立歌劇場にはHPもあり、今日のマノンレスコーなどほぼすべての作品をビデオで一部見ることができます。今日の舞台に興味のある方は、

ここをクリック

ウィーン国立歌劇場のHPです。写真の下のVideobeispiel という文字をクリックすれば、パソコンによっては見ることができます。有名なアリアも少し入っていますよ。

指揮Miguel Gomez-Martinez
マノンレスコー Daniela Dessi
レスコー(マノンの兄)Eijiro Kai
デグリューFabio Armiliato


コメント (6)
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