浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

ことば

2024-03-22 17:13:14 | 日記

 ことばは、魅力的である。いろいろな文章を読んでいると、ことばに関しての新鮮な知識を与えられるし、また刺激を与えられる。

 『世界』4月号で、韓国の作家・翻訳家であるチョン・スヨンさんと、日本の翻訳家である斎藤真理子さんが「往復エッセイ」をはじめた。斎藤さんは、韓国の文学を翻訳したりしている。斎藤さんについては、このブログでも書いたことがある。だから、関心を持って読みはじめたら、「蚊」のことが記されていた。あの「蚊」である。

 チョン・スヨンさんは、日本に留学しているとき、谷中霊園で「蚊」にであった。「蚊」を、日本では「文を読む虫という漢字をつかう」とある。なるほど、「蚊」の野郎は、耳元で「ブンブン」と羽音を立てる。「蚊」の野郎は、耳元で「文を読んでいる」のであろうか。そんなことはあるまい。「文を読む」のではなく、血を吸いに来ているのである。

 この字、中国からきたのか、それとも「凩」や「颪」のような和製漢字なのか。調べてみたら、そうでもないようだ。漢和辞典を調べたら、中国発祥の字である。「正字」は虫二つを並べて、その上に「民」という字が来る。「民」は「「か」の羽音の擬声語」だとのこと。私は“虫に苦しめられる民”という意味ではないかと思ってしまう。

 「正字」であるその字がなぜ「蚊」になったのか。やはり、「ブンブン」という羽音の擬声語として使われるようになったのだろう。

 「蚊」の読み方は、漢音では「ブン」、呉音では「モン」だそうだ。

 韓国では「蚊」のことを、모기(モギ)というそうだ。呉音の「モン」から来ているのではないだろうか。

 「蚊」とよく似た字に「虻」がある。「正字」は虫二つの上に「亡」がくる。「亡」は、あぶの羽音の擬声語だとのこと。

 山口誓子の句に、「虻翔(か)けて静臥の宙を切りまくる」がある。私は「蚊翔けて静臥の闇を切りまくる」としたい。

 ちなみに虫偏に工をつけた「虹」(にじ)という字がある。この場合の「虫」は蛇の意だという。「工」はつらぬく、という意味だそうで、「天空をつらぬく蛇」。虹はきれいだが・・・・・

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする