父に「修学旅行にはどこにに行ったの?」と聞くと、
「さあ、どこだったか?伊勢だったか・・」
忘れるのも無理もない事。
80年も前の事だから・・・。
今の時代、全ての学生が行く修学旅行も、昔は行けない人もいた。
「奈良の法隆寺や東大寺の大仏は見た事があるの?」と聞くと、
「むかーし、見たかどうか良く覚えとらんが。」
・・・それで、思い立って、日帰りで法隆寺と東大寺に両親を連れて行くことにした。
法隆寺の五重塔。
子供の様に・・・いや、子供よりも興味深くあちこち見回す両親。
シルバーカーを押しながら頑張って歩く母と、身軽にあちこち歩き回る父を見て、
70代くらいのご夫婦が聞く。
「ご両親はおいくつですか?」
「92と88です。」
「えー、まだ20年もある。」
90歳の日帰り弾丸修学旅行。
当たり前のように決められて、当たり前のように行く奈良、京都とは違う。
90歳になって初めて・・・って、素敵な事だ!
斑鳩の里にも夕日が沈む時間が近づいて
「古の日本の歴史に触れて、冥土の土産ができたなぁ」と父。
歩き回って疲れ切って、「明日は一日寝ていてもいいからね。」と母に言う。