香木穴(かぎあな)と台風

2017年8月23日
僕の寄り道――香木穴(かぎあな)と台風


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 大城からバスでのぼってきた山道をふたたび引き返し、福沢橋から渓谷沿いの登りにはいり、それが香木穴集落へ向かう道である。美しい小渓谷だが土石流警戒地域でもある。

道の途中に苔むした石碑があり、昭和33(1958)年の台風により、この地域は甚大な被害を被ったという。

その年の台風は記憶にあり、富山市で神通川近くに住んでいた妻は、母親が編んだニットの水着を着て、空気を入れた浮き輪に身体を通し、川の氾濫にそなえてまんじりともしない夜を過ごしていたという。

僕はその年の春、東京で交通事故に巻き込まれて九死に一生を得、静岡県清水市在住の祖父母宅に引き取られて高部幼稚園に通っていた。朝起きて寝ぼけ眼で階段を降りようとしたら、階下で大人たちが
「来るな、二階でじっとしていろ!」
と叫び、台風で巴川が溢れ一階が床上浸水していたのだった。

その年の台風は狩野川台風と呼ばれて歴史に名を残したので、記憶の中であの台風は《狩野川台風》だったとずっと記憶していた。苔で判読が容易でない碑文を読んでいたら、上陸は八月で上陸地点は富士川地区、そのまま北上して舟場や香木穴を直撃したらしい。11号台風だと書いてある。

狩野川台風は九月という記憶があり、気象庁のサイトで調べたら22号だった。その年に静岡県に上陸した台風を調べたら21号も同じようなコースを辿っていて、静岡県は台風の当たり年だったわけだ。

これが九月の狩野川台風で22号

これが同じく九月の21号

これが八月の11号

逆に八月に上陸した台風を調べたらまさに11号がそのルートを辿っており、おそらく富山市民を震え上がらせたのもその台風だったと思われる。思いがけないところで記憶の修正ができた。

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