人の死。そして動物植物を含めた全ての生命の死。昔からその死の瞬間は、その生物の
体を為すところから、魂とされるものが離脱することが、死の意味するところであった。
私の人生の内、何度か死の瞬間に立ち会う機会があったが、未だその離脱するものを見
たことはない。しかし死に関わる商売をする、例えば葬儀関係や墓石関係の方々の一部に
は、昼間であってもその魂らしきもの離脱と遭遇したことがあると聞き及んだ。
また私の祖父や昭和初期に生きた方々からよく聞かされた話では、田圃や墓地の辺りを
様々な形をした火の玉が飛んでいるのを見た。そしてその火の玉は、死者の魂が浮遊して
いるとか、燐というものが発光しているなどとも聞かされた。
私はそれらの話を聞いて、田圃は腐植土や堆肥、墓地は土葬が主流だったので、腐敗した
ガスに何らかの空中放電が作用して、火の玉が浮遊していたのだと、納得していた。
しかし、最近の科学では、それが違った意味合いで研究対象にされているようだ。下記の
ヒトも、死ぬときに「青い光」を放つ?という研究論文によると、それは生命体の死の瞬間は、
発光する「death fluorescence(死の蛍光)」が確認出来たとある。
死の瞬間...青い光を放つ。それは神秘的で、何とも神々しい事ではないかと私は感じた。
------------------------------------------------------------------------------------
生きている状態(左側)と、死の状態(右側)
死にゆく線虫に紫外線を当てて観察することで、死の過程で青い蛍光が放たれることがわ
かった。この光は次第に強くなり、死の瞬間に最大に達し、直後に消えるという。この研究は、
細胞死遅延薬の開発に役立つ可能性もある。
「ブルーな感じ」という言葉が、これほど決定的な意味を持ったことはなかった。新しい研究
によって、線虫が死ぬときに青い光を放つことがわかったのだ。研究者らによれば、この光は
死が秩序だったプロセスであることを示しており、遅らせることができる可能性もあるという。
細胞死にはふたつの種類がある。ひとつは血行不良や外傷など、細胞内外の環境の悪化
によって起こる壊死(ネクローシス)と呼ばれる過程だ。もうひとつはアポトーシスなどの「プロ
グラムされた細胞死」と呼ばれるものだ。これは必要に応じて誘発される管理・調節されたプ
ロセスで、個体をよりよい状態に保つために積極的に引き起こされる細胞死だ(癌化した細胞
を取り除いたり、発生過程でオタマジャクシがカエルに変態するときなどにこのプロセスが起
こる)。
だが、(ヒトなどの)多細胞生物が個体として死ぬ場合は、死という現象を正確に定義するの
がもっと複雑になる。個体の死は、細胞群の個別の死によって説明できるものではないからだ。
生物の個体が生きるのをやめる瞬間の定義は難しい(日本語版記事)。そもそも、個体が死に
向かうプロセス自体がよくわかっていない。
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のデイヴィッド・ジェムズらは、線虫の一種シー・エ
レガンス(学名:Caenorhabditis elegans)が死にゆく過程を顕微鏡で観察し、『PLOS Biology』
誌に論文を発表した。
ジェムズ氏らは、紫外線を当てると死にかけているシー・エレガンスの内部が青色の蛍光を
発することを発見した。研究チームが「death fluorescence(死の蛍光)」と名付けたこの光は、
シー・エレガンスの細胞が壊死していくにつれて強くなり、死の瞬間に最大の光強度に達したあ
と、すぐに消えた。
この発見は驚くべきものだ。というのも、自然死しかけている線虫と、極端な暑さや寒さにさ
らされるなどのストレスが原因で死ぬ線虫、その両方で青色蛍光が観察されたからだ。
シー・エレガンスは体の一方から青色の光波を発し、この光波は死に至るまで腸に沿って伝
播していった。この順序だった伝播は多細胞生物の個体において、一連の調整された「自滅」
信号を通じて死が訪れる可能性があることを示唆している。
研究者らは青色蛍光の原因について、カルシウム信号に関連する生物学的経路が活性化
され、最終的にはアントラニル酸と呼ばれる物質によって蛍光がもたらされることを発見した。
青色蛍光のきっかけは、アントラニル酸が突然生成されたことではなく、アントラニル酸を閉じ
込めていた細胞膜が壊死と同時に破れて、細胞内の酸性コンパートメントからアントラニル酸
が放出されたことだった。
研究チームがカルシウム信号の経路を塞いだところ、ストレスが死の原因である場合には、
細胞膜の破裂を遅らせることができた。だが、加齢による死の場合には破裂を遅らせることは
できなかった。これは、加齢による死にはカルシウム信号だけでなく、ほかのプロセスも関係
していることを示唆した。
この研究は、加齢による死が細胞レベルで損傷が積み重なった結果にすぎないという説に
疑問を投げかけるものだ。生命が限界に達する時は、協調された作用によって決まっている
可能性がある。
死の進行をリアルタイムで分析することは、死を遅らせる方法を理解し、開発するのにも役
立つ可能性がある。いずれにしろ、われわれは最期のときに「光」を見るのかもしれない。
体を為すところから、魂とされるものが離脱することが、死の意味するところであった。
私の人生の内、何度か死の瞬間に立ち会う機会があったが、未だその離脱するものを見
たことはない。しかし死に関わる商売をする、例えば葬儀関係や墓石関係の方々の一部に
は、昼間であってもその魂らしきもの離脱と遭遇したことがあると聞き及んだ。
また私の祖父や昭和初期に生きた方々からよく聞かされた話では、田圃や墓地の辺りを
様々な形をした火の玉が飛んでいるのを見た。そしてその火の玉は、死者の魂が浮遊して
いるとか、燐というものが発光しているなどとも聞かされた。
私はそれらの話を聞いて、田圃は腐植土や堆肥、墓地は土葬が主流だったので、腐敗した
ガスに何らかの空中放電が作用して、火の玉が浮遊していたのだと、納得していた。
しかし、最近の科学では、それが違った意味合いで研究対象にされているようだ。下記の
ヒトも、死ぬときに「青い光」を放つ?という研究論文によると、それは生命体の死の瞬間は、
発光する「death fluorescence(死の蛍光)」が確認出来たとある。
死の瞬間...青い光を放つ。それは神秘的で、何とも神々しい事ではないかと私は感じた。
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生きている状態(左側)と、死の状態(右側)
死にゆく線虫に紫外線を当てて観察することで、死の過程で青い蛍光が放たれることがわ
かった。この光は次第に強くなり、死の瞬間に最大に達し、直後に消えるという。この研究は、
細胞死遅延薬の開発に役立つ可能性もある。
「ブルーな感じ」という言葉が、これほど決定的な意味を持ったことはなかった。新しい研究
によって、線虫が死ぬときに青い光を放つことがわかったのだ。研究者らによれば、この光は
死が秩序だったプロセスであることを示しており、遅らせることができる可能性もあるという。
細胞死にはふたつの種類がある。ひとつは血行不良や外傷など、細胞内外の環境の悪化
によって起こる壊死(ネクローシス)と呼ばれる過程だ。もうひとつはアポトーシスなどの「プロ
グラムされた細胞死」と呼ばれるものだ。これは必要に応じて誘発される管理・調節されたプ
ロセスで、個体をよりよい状態に保つために積極的に引き起こされる細胞死だ(癌化した細胞
を取り除いたり、発生過程でオタマジャクシがカエルに変態するときなどにこのプロセスが起
こる)。
だが、(ヒトなどの)多細胞生物が個体として死ぬ場合は、死という現象を正確に定義するの
がもっと複雑になる。個体の死は、細胞群の個別の死によって説明できるものではないからだ。
生物の個体が生きるのをやめる瞬間の定義は難しい(日本語版記事)。そもそも、個体が死に
向かうプロセス自体がよくわかっていない。
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のデイヴィッド・ジェムズらは、線虫の一種シー・エ
レガンス(学名:Caenorhabditis elegans)が死にゆく過程を顕微鏡で観察し、『PLOS Biology』
誌に論文を発表した。
ジェムズ氏らは、紫外線を当てると死にかけているシー・エレガンスの内部が青色の蛍光を
発することを発見した。研究チームが「death fluorescence(死の蛍光)」と名付けたこの光は、
シー・エレガンスの細胞が壊死していくにつれて強くなり、死の瞬間に最大の光強度に達したあ
と、すぐに消えた。
この発見は驚くべきものだ。というのも、自然死しかけている線虫と、極端な暑さや寒さにさ
らされるなどのストレスが原因で死ぬ線虫、その両方で青色蛍光が観察されたからだ。
シー・エレガンスは体の一方から青色の光波を発し、この光波は死に至るまで腸に沿って伝
播していった。この順序だった伝播は多細胞生物の個体において、一連の調整された「自滅」
信号を通じて死が訪れる可能性があることを示唆している。
研究者らは青色蛍光の原因について、カルシウム信号に関連する生物学的経路が活性化
され、最終的にはアントラニル酸と呼ばれる物質によって蛍光がもたらされることを発見した。
青色蛍光のきっかけは、アントラニル酸が突然生成されたことではなく、アントラニル酸を閉じ
込めていた細胞膜が壊死と同時に破れて、細胞内の酸性コンパートメントからアントラニル酸
が放出されたことだった。
研究チームがカルシウム信号の経路を塞いだところ、ストレスが死の原因である場合には、
細胞膜の破裂を遅らせることができた。だが、加齢による死の場合には破裂を遅らせることは
できなかった。これは、加齢による死にはカルシウム信号だけでなく、ほかのプロセスも関係
していることを示唆した。
この研究は、加齢による死が細胞レベルで損傷が積み重なった結果にすぎないという説に
疑問を投げかけるものだ。生命が限界に達する時は、協調された作用によって決まっている
可能性がある。
死の進行をリアルタイムで分析することは、死を遅らせる方法を理解し、開発するのにも役
立つ可能性がある。いずれにしろ、われわれは最期のときに「光」を見るのかもしれない。