春色雑記

今年は桜の開花が遅いらしい。
光が春色になったのは早かったような気がするからいつもより春が長いってことなのかしら。
得した気分だ。

もう長く花見をしたことがない。
満開の桜の下、安吾を思いだす。
大学生のとき住んでたアパートの裏手の山は大きな霊園でこの時期大量の桜がなまめかしく咲いていた。

春はひっそりやってきて知らぬうちに去っていくもの。
なんだかチャーミングな異性のようだ。
ハミングしたくなるような季節が一年のうちにあってもいいじゃないか。

何かはじめたくなる季節でもある。
若いときは何かはじめなきゃって焦っているうちに春はいなくなっていた。
恋と同じようなもの。

昼間の公園で缶ビール片手に桜を見上げたい。
立派なおっさんになりたいものだ。
走る子どもの姿を見ながらニコニコしていたいそれが春。