como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

真田丸 第8回

2016-02-29 22:58:41 | 過去作倉庫15~
信濃のシンドバッド  うた・春日山ピンクレディー(景勝&兼続)

ア・ア・アンアン ア・ア・アンアン
アア信濃のシンドバッド

ここかと思えばまたまたあちら 浮気な人ね
ふたりの息子両脇にかかえ 大名から大名へ
「真田は上杉の兵でござる!」と刀など抜いて
チョイとお・父・さん しらじらしいわ
主家を裏切る早わざは、ウワサどおりだわ
あなた・シンドバッド
セクシ~ あなたはセクシ~
わたしはイチコロでダウンよ もうあなたにあなたにブチ切れる



…ってな歌が頭の中で勝手に自動再生されてきのうから鳴り響いております。もちろん歌って踊るのは景勝様と兼続様。
 だけどホントに宜しゅうございましたね。直江兼続様が、あの愛の兜の泣き虫武将から、大河ドラマにおける公式キャラクター像をしかるべく上書きされ、ようやく「一般的なイメージはこういう人」というのが確立しました。もしかしてむこう30年くらい修正は無理かも、駄作大河の罪は深いと思っていたので、ほんとによかったと思います。この調子でどんどん活躍していただきたいです。

 とにかく今週は見どころ満載で、ふざけた替え歌なんかやってる場合じゃないんですけど、とにかく面白かったんだからしかたない。
いやあ、あらためて思ったけど「天正壬午の乱」、武田家滅亡後しばしの関東の混乱状態って、すごい面白いんだね。あまりに面白いんで、いまさら真田太平記の考証の平山優先生の本とかを読んでいます。こういうので「真田丸」に出てくる武将の顔を当てて読むと面白さが数倍で、こういうことになると大河ドラマdaysが俄然楽しいです。
 では、第8話「調略」。毎回このハードな感じの二字のサブタイが気持ちいい。このハードさを保って、できれば最後まで「慕情」とか「初恋」とか「傷心」とか、その手の二字を入れないよう希望。


今週のみどころ

 前回、海津城城代の春日信達(前川泰之)に上杉を裏切らせるよう調略するミッションをあたえられた源次郎(堺雅人)ですが、もちろんそんな重要なミッションをひとりでやるわけではなく、叔父の信尹(栗原英雄)の助手です。同じ弟の立場からクールな叔父さんにあこがれている源次郎は、ボクに調略のイロハを教えてくださいね、叔父上みたいになりたいんです、などと無邪気にいうのですが、叔父上は、「俺みたいなんかなるな」とそっけない。
 春日信達というのは、海津城の初代城代、武田家の重臣中の重臣で亡き信玄公の寵童でもあった香坂弾正の子息です。武田が亡んだあと、織田、それから上杉と渡ってきて、亡き父ゆかりの海津城の城代をしているのですが、そんな信達も「風林火山」のときは飯富源四郎こと山県正景だったし…あ、いや。とにかくあのスタイルの良さは健在ですね。さすがモデルさん出身で、長身で足がなっがくて頭小さくて、この人とならぶと堺雅人さんがほんと、幼児体型を脱していない少年にみえますよ、素で。
 そんな信達を、信尹叔父上は「真田は北条に付く。あなたも上杉の元ではいつまでたっても城代どまり、お父上も泣いておられる、一緒に裏切りましょう」などと言葉巧みに…というかかなりストレートに勧誘します。
 その気がなければ話に乗ったふりをして景勝にいいつけるはず、動揺するのは気がある証拠というので、もうひと押しを源次郎が引き受けるんですけど、この人は、信達を落としてほんとに北条軍に入れて幸せにしてあげたいと信じちゃって、実はじぶんは真田昌幸の子なんだと明かし、「北条氏直さまは信玄公のお孫様です!あなたこそ北条について武田の無念を晴らすべきだ。あなたならできます!!」とか、ド直球に熱く勧誘してしまうんですね。
 春日信達は、ピュアというか単純というか…それでその気になっちゃうんですね。「武田家を支えた武将の子同士がここでこうして一緒に…」とかなんとか感慨にふけり、うっとりとポエムの世界に入り込んで花を眺めたりしている夜更け、信尹叔父上が「ゴメンな」といっておもむろに、無防備な信達の急所に脇差をブスッと。
つまり、生きてる信達の裏切りよりも、裏切り者信達の死体が必要だったわけ。この衝撃的な展開に源次郎はボー然とします。

 そんで、信達完落ちの報せを待たず見切り発車で、昌幸(草刈正雄)は北条の陣に入り込んで工作。海津城城代春日信達を調略してこちらに引き入れ、手土産にして参陣しましたと、北条氏直(細田善彦)の前に名乗り出ます。氏直は、超ハイテンションのバカ息子で、「春日の力など借りずとも北条を蹴散らす力を我らはもっておるわっっ!!」などとテンパり気味ですが、フェイントであらわれた父の氏政(高嶋政伸)が、「真田殿さすがじゃのう~ 実にありがたい」とか言ってベッタベタにほめまくり、春日信達に海津城を安堵する起請文も快く書いてくれます。
 ですが裏へ回ると、「真田?誰だ。知らんわそんなもん」と吐き捨てるように。「氏直が天狗にならないように手綱を締めてやったまでだ」と。
 そして川中島に進軍した北条軍ですが、対岸の上杉軍の真正面には、処刑され磔にされた春日信達の凄惨な刑死体が飾られてました。これを見て火を噴きそうにテンパる氏直。これはなんだ、どういうことだ、お前の調略はどうなってんだ、とものすごく昌幸を罵倒します。
 どうやら企みがばれたようで…とすこし凹んで見せる昌幸に、もう川中島はどうでもいい、これから我らは甲斐へ向かう。甲斐で徳川家康を叩く。上杉の追撃が怖いならお前が殿軍をつとめて少しは役に立て、と。足跡も荒く本陣を出ていく大将に、「わかりやすいバカ息子だ、俺が言うのと反対のことしか言わん」とほくそ笑む昌幸。

 つまり昌幸の書いた台本通りで、バカ息子の氏直は、調略が失敗して海津城代が晒されたと聞いた時点で気持ちが萎えて、さっさと方向を変えてしまう。上杉が本領の越後に身内の叛乱を抱えて信濃の前線に貼りついていられないのも調査済み。ここで両軍が兵を引き、自分が殿軍として残れば、信濃はふたたび、国衆以外誰もいない空白地帯にもどるのだ。それに乗じて、「われらだけの国を作るのだ」と…。
 そのために春日信達を利用して殺して晒刑にまでかけた父と叔父のこわさに戦慄する源次郎。そして、そのとばっちりで北条軍を甲斐で迎え撃つことになってしまい、乙女のように恐れおののきながら「真田昌幸って、ちょっと怖い男かも。別の意味で…」とチラとおもうわたしたちのアイドル家康さま、というところで以下次回。

…と、ざっと流れをみてあらためて思うのは、見ごたえのあるドラマには、共通する要素を含んだいくつかの別のストーリーを、対角線にして配置して、双方を引き立てあうという手法があるんですね。
 真田丸のあと11時からのダウントン・アビーはそのお手本みたいな作劇で、上(伯爵一家)と下(使用人部屋)で、良く見れば似てるエピソードが常に2,3本同時進行していますが、それがドラマのストーリー的にどう機能してるかについては、説明するよりとりあえずダウントン・アビーを見てください。
 真田丸に関して言えば、特に今回は、「父親の跡を継ぐ」ということを隠しテーマに複数のエピソードが同時に立ちます。春日信達と北条氏直がメインですが、その陰にひっそりと、氏直の父北条氏政のそれも仕込んであったりします。
 氏政といえば、ご飯に汁を二杯かけ、「一度にかける汁の量も見積もれないバカとは。北条家もこいつの代で終いか」と父氏康を嘆かせた逸話が独り歩きしてて、第一回でそれを小ネタ的に仕込んで歴史好きを喜ばせたのですけど、今回はさらに捻って、「儂の食べ方は、食べながら少しずつ、食べる分だけ汁をかける。ゆっくりといただくのが流儀だ」と言わせます。氏政の冷酷で粘着質な性格とともに、俺は父氏康とは違うのだという気負いの表現も何気にされていて、そのあたりの巧みさには唸ってしまいます。
 あと、そういう父世代の呪縛から完全に自由で、逆に彼らのコンプレックスを利用しているように見える昌幸ですけど、今回、川中島が話の舞台になったことで、この人はこの人で、信玄公の盟友だった父・真田幸隆に呪縛されているのかもしれない…と思ったりしました。一時国を失い、信玄公の元で国衆として返り咲いていまの地域を手中に収めた父親の呪縛が、「信濃に我らだけの国を作る」という、ややポエムがかった野望の根拠にあって、氏政のファザコンの対角線上には、この昌幸のファザコンが置かれるのかもしれない、と。
 そのあたり、やはりこれは幾重にも折り重なる、戦国の息子たちの物語なのかもしれないです。このお話が武田勝頼の悲劇で幕を開けたのは、思った以上に大きな意味があるのかも…。


今週のおぢ萌え

景勝様!! 
いやあ、痺れました。顔はこわいけどハートはピュアだったのね、景勝様。滝川一益さんもそーだったけど、どうしてこう、まっしろでピュアな天使の様な人が、いいオッサンの顔をして現れるのかしら、このドラマ。
萌えてしまうやろ!!
 今回かぎりの悲劇のヒロインとして退場された春日信達さんと違い、景勝様は当分出ずっぱりで活躍される(予定)なので、とうぶんこのピュアさを愛でる時間にめぐまれそうで、喜ばしいです。
 まあ、こんなに簡単に人を信じてふところに抱え込んでしまう人だったら、こんな魑魅魍魎の化かし合いみたいな戦国時代に、命がいくつあっても足りないでしょうけど、そこは、腹の底まで氷が詰まってるみたいな直江兼続がそばにいて、支えているのでしょうね。すばらしいわ。これこそほんとの北斗の七星とか、紅葉ざむらい的なアレだわ。あんなもん1年見てもなんの説得力も無かったのに、この1,2回の出番でそのあたりの主従コンビネーションの妙を表現してしまうって凄いな…。
とにかくこの兼続が直江状を書くところとか、いや、それより前に、ここまでてってー的にコケにしたおされた真田安房守のむすこの源次郎を、どーいう顔して人質に迎え入れるのか、なんかもう今から楽しみでしょうがないんですけど。


今週のバカ息子枠

 北条氏直の細田善彦さんて、きれそうなテンションの台詞の喋り方とか、なにげに高嶋政伸さんのそれに似てて、エア親子感に感心しました。めちゃめちゃ上手いですよね。高嶋さんのマネなんてふつうの人にはできないばかりか、あのテンションを違和感なく…というか適度に壊れた違和感を漂わせ、ストーリーに溶け込むなんて並みの技術じゃありません。
 この方も、小田原評定のあたりまでこの芸を楽しめそうなので、先の楽しみが増えました。


また来週っ!