como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

真田丸 第13回

2016-04-04 22:56:13 | 過去作倉庫15~
 先週、真田丸にしてはまったりしたエピソードで1話つぶし、第1クールの最終回「主人公の大人への旅立ち」を1週あと倒ししたのはなんでだろう、と考えてましたが、その謎が解けました。

諏訪大社御柱祭・上社木落し(平成28年4月3日)

 だって7年に一度のめぐりあわせですよ。7年に一度、大木に男衆がみんなで乗って山から落とし、諏訪大社に建てるという大イベントがたまたま大河ドラマと巡り合ったのですから。1週くらい何が何でも調整して、上田合戦の真田衆の奇襲イベントにぶつけるというのは、これはもう日本人の血が騒ぐコラボレーション。

 というわけで真田丸第13回「決戦」。いよいよ第一次上田合戦です。
 
 戦国ドラマにおける合戦シーンというのは、ドラマの最大の見せ場として手を抜かずに盛り上げるべきなのはもちろんです。 ただ、戦国ドラマといっても、そう年がら年中合戦シーンばかりやっていないのは当然ですよね。合戦シーンというのは予算もかかりますし、毎回趣を変えてドラマをつくるというのも大変です。
 にもかかわらず、「戦、戦の長旅を…」みたいな無常観にとらわれるくらい、ずーっと戦をやってるという空気は、それはそれで必要なので、ようは合戦シーンでない日常の場面でも、皆が常に戦を意識して張りつめているような雰囲気が必要だということです。そして、いざ見せ場の合戦となったら、その経緯、段取りもふくめ、企画の段階からじっくりと見せる。何人かの別の視点にたって多方面から見せたりもする。これで実際の人海戦術より何倍も盛り上がるわけです。よくできた大河ドラマはみんなそうで、実際の合戦シーンの数はそうでもなくても、迫力満点の合戦をしまくっていたように印象を操作できてるんですよね。「政宗」しかり。「太平記」や、「風林火山」もそうでした。
 かたや、何とはいわないけどヘボ大河のほうは、地の部分でしょうもない恋バナや友情話や子役ショーを詰め込んで緊張を切らし、大事な合戦シーンはそれこそ雑に、経緯の説明もヘッタクレもなく野外ロケシーンの使いまわしを、いかにもめんどくさそうに処理したりする。しばらくそんなのが続いたもんですから、ドラマ中の合戦をドラマとして楽しむのが本当に久しぶりで、そういう意味でも尊い回であったと思います。


 今週の見どころ

 前回、上杉景勝様(遠藤憲一)の好意で一時的に人質から解放され、援軍までつけてもらって参戦のため上田に帰った源次郎(堺雅人)。ですが直江兼続様(村上新悟)がよこした援軍というのは、年寄りとガキばっかりで使い物にならず、結局海津城の守りを託しておいてきます。無駄に死ぬ人は少ないほうがいいですからね。
 これは直江様のいやがらせとかではなくて、上杉軍も戦時中で、正規戦闘員の壮丁は全員徴集してしまっており、予備兵力の若者と老人しかかないのでした。ただ、直江様がうっすら口角を上げて微笑んで「ご武運を」とかいうと、嫌みとかを通り越して「僥倖…!!」と思いますよね。あの微かな笑顔。うわあ。
 あ、いや。とにかく、頼りの援軍は連れてこれないものの、源次郎の参戦に昌幸(草刈正雄)は奮い立ちます。これで駒がそろった、勝った!!と言って。
 昌幸の作戦は、徳川軍を上田城下に誘い込み、城の大手門を開けて場内に引き込んで、逃げ場がない状態にして一気に叩くというもの。この、敵を城までひいてくるのが源次郎の役目なのですね。

 かくして、殿さまから庶民まで一丸となった、手作り感満載の合戦の仕込みがはじまるのですが、母親になった新妻の梅(黒木華)が、赤ちゃんの授乳と城下の農兵隊の面倒に行き来していて、なかなか源次郎とあえません。ほとんど「君の名は」とか「オルフェウスの窓」状態ですれ違ってしまったりもします。そして、梅には不吉なスローモーションやエフェクト処理がかかり、なにこの死亡フラグ、わかりやすすぎ。しかも、嫌われていたはずの姑の薫様(高畑淳子)まで「いい子を産んでくれましたね、源次郎にみせてやりたいこと」とかいってにっこり微笑んだりして。
 そんな梅があたまに死亡フラグを立ててフラフラとあちこち歩き回るのですが、まあ、彼女は根っからの地侍の娘で、土地と生活を守るためにずっと地元で体を張って戦ってきたわけですから。急に「お城でおとなしくしていてね」とか言われても無理で、自分にできることをやりに、なければ探しに、自分からでかけてしまうんですね。

 そして、払暁とともに合戦の火ぶたが切って落とされるのです。源次郎は、お梅からもらった六文銭(真田家の裏家紋)をヒントにつくった、手作りの六文銭旗をふって敵をからかい、城下に引き込みます。そこには住民総出で作った乱杭や落とし穴や撒菱などの罠が待ち構えていて、物陰からは庶民の投石や、熱湯などが不意に襲ってきます。徳川軍はだんだんパニック状態になって、上田城の城門に殺到してきます。
 そしたらそこに、城に入りそびれてしまったお梅がいたんですね。敵の目のまえにさらされている愛妻を見てしまった源次郎。ああっお梅…!と見る間に、佐助(藤井隆)が投げ爪でお梅の窮地を救い、安全な場内につれてはいってくれます。
 この、お梅の死亡フラグが今週の見どころのひとつ。さんざんわかりやすいフラグを立てまくった後に、救出されるので、なんだエア死亡フラグじゃん、ていうかよかったよ…とこっちもホッと一瞬安心したりして、お梅の死亡フラグのなびく方向一つで、視聴者を翻弄してくれます。

 かくしてさんざん敵を翻弄し、本丸まで引き込むと、門の向こうからOPテーマを背負って現れたのが大将安房守昌幸……ってこれ、ほんとに完璧に決まっていて、わーっとテンションあがるとともに、ちょっと笑いがこみあげました。この完璧な主役オーラを惜しげもなく発して、タメもたっぷりに現れる人物が「主人公の父」であって主人公じゃない、というのも、今年の大河ドラマのオフビートなところだと思います。
 昌幸の号令一下、城の中に引き込んだ敵のせん滅作戦が始まります。それは爽快ではありますけど、同時にえげつなくもあります。身動き取れなくなった敵を虫でも殺すみたいに潰していくわけですから。そういうのを見て源次郎が感じたことが言葉にされるわけじゃないんですが、その後味の悪さというか、割り切れない感じは、この回の最後に大きな禍になって可視化されます。
 それでも合戦シーンというのはテンションが上がる。かっこいい。合戦シーンの良さというのは、「ここぞというところで千両役者が現れる感」に凝縮されてて、そういうツボをニクいくらいわかっていますよね。さっきのお父ちゃんの登場シーンもよかったけど、そのあと、敗走する敵を迎え撃たんと現れた源三郎(大泉洋)の登場ね。カッコよくてかっこよくて、拍手が出ちゃった。
 さらに出浦昌相(寺島進)が川の堰を切って逃げる敵を水攻めにかけ、最後の仕上げと完全に叩きのめします。かくして、徳川軍の犠牲者数千、真田軍は50くらい、という一方的な大勝利で、手作り感満載の上田合戦は終わるのでありますが、その50という数字の内訳というのが…。

お梅はいずこ お梅は居ずや

…あ、いや。
 そう、敗走する徳川軍が、作兵衛(藤本隆宏)のゲリラ部隊がいる山の中になだれ込んだ、というのが櫓の上からみえたお梅ちゃんは、みんなを助けたい一心で、現場に駆け戻ってしまうんですね。
ってこれ、ほぼ広瀬中佐じゃん!! 作兵衛さんは今回は逆・広瀬中佐じゃん!!

そう、真田軍の犠牲50人というのが、ほとんど作兵衛のゲリラ部隊からでていて、徳川軍の敗走兵とぶつかって多くが悲惨な殺され方をしていました。その中にはお梅も…。

 なにこれ。
 さんざんわかりやすい死亡フラグを立てまくって、いや、いくらなんでもこんなアカラサマな、恥ずかしいような演出を三谷幸喜さんともあろうお方がするとも思えない、と思ったらやっぱりエア死亡フラグだったみたいで、お梅ちゃん無事だった。まあそんなとこでも視聴者をいじってくれちゃってもう、…っておもったら、いや、ガチで死亡フラグだったのよって、何これ何ーー!!


…広瀬中佐が引き返したのが無駄だったのと同じくらい、彼女はこんなところにいる必要が全くなかったし、非常識であほだといえばそれまでのことですが、やっぱり、自分の土地を自分で守ってきた農民の血としかいいようがないですね。「ここにいればいいじゃない、戦は男の人にまかせておけば」と、きりちゃん(長澤まさみ)が至極無責任なことを言って止めるんですけど、そことの温度差がなんともいえない、悲しいです。きりちゃんもいつか、安全地帯にいるわけにはいかない、男の人に守ってもらうだけでは駄目だと思う日が来るんだろうと、そんなことも予感させます。
 同時に、「最小限の犠牲で勝つのが上々」だから一人の犠牲はしょうがないことだと、お梅は源次郎に言ったんですよね。春日信達の後味悪い死の時に。それで、少しの犠牲で多くを生かすということに源次郎の戦哲学のヒントを与えるんだけど、その「一人の犠牲」に自分がなるということを果たして想定してたか。源次郎にしても、かけがえのない人が犠牲者になってしまったら、無邪気に同じことが言えるんだろうか。
 と、これは、ものすごく重い課題であります。「愛する人を守るゥ――!」的なことは大河ドラマじゃ嫌になるくらい聞いてきたけど、こういう問いに切り込んだのは、かなり挑戦的なことじゃないかと思いますね。

さて、来週はがらっと趣を変えて、源次郎の大坂デビューということです。豪華な新キャラの登場も楽しみですが、ストーリーがだんだん信州ローカルを離れていくのが寂しくもあったり。


今週のおぢ萌え。

信尹叔父様は徳川のとらわれ人となって、どうなってしまうのでしょう。できたら牢の中の信尹叔父様のすがたもちょっと拝見したかったですが(←変態)、家康(内野聖陽)が耳元で信尹をくどくところ、思わず血が騒ぎましたわ…。
 それから、やはり今週は昌幸と源三郎の、それぞれ馬に乗って戦場に降臨するシーンでしょうね。カッコいいい。これぞ大河ドラマ!といいつつやがて袂別する親子の予感が、このよく似た馬上の登場シーンに仕込まれているようで、ちょっとほろっとしたりして。


また来週っ!