ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

無名であることが「神」の大切な条件だと、そういうことなんだね。

2006-07-20 | 映画
おーい! 皆ものどもよ! なんだって? オチが弱い? 怖くない?

何考えてるんだ! わかってないな~。

わたしは、「ダークネス」を先に見たので、そういう意味ではこちらの方が「尻すぼみ」だと思う。しかし! しかしだよ! 「尻すぼみ、尻すぼみ」という人たちは、あのラストの意味がわかっていないのだな。オチを直撃せずして、それでも解説を試みたい。

すべては題名が示唆しているのである。

ネイムレス」。

これは、先ずは作中の淫祀邪教集団《カルト》の名前として登場する!

これだけで、この作品の「核心」は確定ではないか!

「ネイムレス」「カルト」だぞ!

わからないヤツは、ホラーを語れません。勉強しなおしなさい。

……煽りすぎました。これでは、不親切ですね。うーん。

ウルトラマンティガ」の最終3話を知っていますか? 「もっと高く!~take me higher~」という回で、「怪獣」の名前を聞いたとき、身震いしましたよ。ゾイガー! (しかも必死で倒したゾイガーが無数に存在し、世界中の都市を襲い、)そして、その次の回「暗黒の支配者」で古代人(ウルトラマンが属した種族)を滅ぼした邪神ガタノゾーアが出現するに及んで、もう、悶絶しましたとも。

クトゥールー神話をご存知でなければこの「ウルトラマンティガ」の終幕は充分に楽しめたといえないのです。知識あってこそ楽しめる作品というものがあって、それは作品の普遍的な楽しみ方といえましょう。(古典文学作品だって「本歌取り」という和歌の技法に限らず、先行作品のモチーフを使って面白さを演出するということは常なのです)。

話を戻します。「ネイムレスカルト」とは「クトゥルー神話体系」のなかに登場する「無名祭祀書」とも訳される禁断の書物の名で、さまざまな淫祀邪教が列挙されている「名もない書物」であるとも、「名無し」の神を祀る宗旨の秘蹟を書き記した書物ともいわれている。

題名だけで既に、あの「死霊秘法」=「ネクロノミコン*」と肩を並べる書物を想起させるように作られている本作、だからこそのあのオチなのですね。

つまり、名無しの純粋な邪悪は、希望を掴んだと思った瞬間に深い絶望を与えられた「母」によって生み出されるのです。生むのはあくまで母なのですね。

*サム・ライミ監督の「死霊のはらわた2」冒頭で、(前作にも出た)死霊を呼び出す魔書「ナテュラン・デモント」はすなわち「死者の書(ブック・オブ・ザ・デス)」はまたの名を「ネクロノミコン」という、と知らされたときには映画館の暗がりでうひゃうひゃ笑ってしまいましたよ。