ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

70年代? 実は60年代末。高度成長と、未来への陰りが見えたころ。

2006-07-17 | アニメ
夏休みというと、思い出すのが「石森章太郎」「東映動画」「野沢雅子」。

「空飛ぶゆうれい船」は1969年作品。
同時上映は「飛び出す冒険映画 赤影」という「仮面の忍者 赤影」の編集版を「立体映画(赤青セロファン眼鏡で視聴するタイプ)」に仕上げたもの。


原作は石森(石ノ森)作品「幽霊船」だが、SF性は本作の方が上である。脚本に辻真先が参加しているので、当然かも知れない。

「幽霊船」が各地で船舶を襲うという噂がしきりだったある日、隼人は交通事故を起こした黒汐コンツェルン会長夫人を父とともに助ける。そして夫人を運び込んだ岬の廃屋で、怖ろしい幽霊船長を目撃する。
またある日。父とともに街をドライブしていると、巨大なロボットが飛来し、「幽霊船の使者ゴーレム」を名乗り、街を破壊、この襲撃で隼人は両親を失い、「幽霊船」への復讐を誓う。
前半、悪役は「幽霊船」と「幽霊船長」なのであるが、実は幽霊船が狙う船舶は黒汐コンツェルンの船舶ばかりであり、実は黒汐コンツェルンこそ、死の商人で、悪の「ボア」の手先とわかる。
「ボア」はまた、コマーシャルと懸賞で人々の購買意欲を煽って大人気となっていた「ボアジュース」という毒入り飲料で人々を殺戮し、地上の全てを意のままにしようとしていた!
黒汐のかつての計略で顔に傷を負い、妻を失い、息子を奪われた幽霊船長=滝こそ隼人の本当の父とわかったり、幽霊船の少女船員ルリ子の可愛そうな身の上と、隼人以上に気丈な彼女に触発されて、ついに「ボア」を退治する隼人、といった展開も胸がすくのである。

おんぼろな幽霊船に見え、空を飛び、実は未来的な兵器を満載するという意外性に満ちた設定というのは、「宇宙戦艦ヤマト」の1・2話にも影響を与えているのではないかと思われる。

主題歌「隼人のテーマ(Go ahead! キャプテン・ハヤト)」も好きだ。
ラストシーン。ルリ子と犬のジャックとともにヨットを沖に出す隼人。そこに流れるのがこの主題歌。途中ジャックが鮫に驚いて大切な収集品をみんな落としてしまう。
隼人が慰めて「これからみんなで集めればいいさ」というようなことを言い、ルリ子も賛同する。

(日本万国博覧会な)脳天気な70年が目前だったが、「暗い未来」の足音が近づきつつあったのだが(コレは「コカコーラ」が骨を溶かすという伝説よりも明白に、早くも芽吹き始めた食の不安、功利主義への不安が作品に影を落としているということに間違いはない、しかし!)みんなが手を携えて頑張れば「心の支え」は失われないというメッセージがここにはある。

翌1970年の作品「海底3万マイル」についてはまたの日に……。

*魔神皇帝さまからの「70年代アニメやヒーロー」というお題リクエストに、素直でないわたくしは60年代の終わりの作品で応えてみました。