麦畑

太陽と大地と海は調和するミックスナッツの袋のなかで

ぬばたまの

2018-05-31 00:47:06 | 短歌

 

ぬばたまのやみそうもない雨のなかとかげの卵はほのあかりする

頬につくひとつ米つぶひとりならそのままだろう 干からびるまで

かみの毛の右半分を銀に染め娘よ悟りをひらくつもりか

ぎんいろの娘の脇にはさまれて体温計は体温になる

機関車の一両のみに曳かれゆく十九両のガソリンの貨車

ガソリンをはらいっぱいに詰め込んで貨物列車は北へ向かうも

ポエジーは北から来るという説にうべないながら心はたわむ

二百円安い買い物するために十二キロ先へ ああ、ゆかねばならぬ

ゆうやみの青い世界は自転車のわたしひとりのものかもしれず

ゆうやみのランドマークに灯はともりわたしはすこしあたたかくなる


  ※ ルビ  卵(らん)


_/_/_/ 未来6月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/

 

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椰子の木が

2018-05-12 22:59:15 | 短歌

 

『うたつかい』掲載歌まとめ (第26号~第30号)

※ 『うたつかい』はツイッターで使っている「むぎたうろす」という名義で投稿しています。
※ 『うたつかい』は既発表歌の掲載も可能なので既に発表している歌を載せる場合もあります。

 

第26号(2016年夏号)

  自由詠「あけぼのふかき夢のなかにて」
椰子の木が規則正しく立っている生まれる前の記憶のなかに
本屋から薬屋になる物件の青いかもめが消されてゆくよ
留年をしてうあああと声をあぐあけぼのふかき夢のなかにて
イチローが打ったボールを追いかけてそのまま駆けてゆく枯野かな
ひたすらに男爵薯を剥いている二十一世紀のキッチンで

  テーマ詠「家電・家具」
かぎりなくアイスキューブを吐く箱のある一瞬は神と思えり

 

第27号(2016年秋号)

  自由詠「あたらしい朝」
熱々のドリップコーヒーの飲み口に恐るおそるにくちびる寄せる
駅前のベンチを照らす日曜の朝のひかりにもどかしさあり
枝のみになっている樹のかなしみを駅西口に五本ならべる
五年前とまったく同じ服を着てカシャリ撮られている顏写真
ロータリーを時計回りにまわるときわれは左にかたむいている

  テーマ詠「オノマトペ」
野茂の球ぱしんぱしんと受けながら眠りのなかに入りてゆくなり

 

第28号(2017年春号)

  自由詠「回文短歌レッスン4」
理系らも偽理系らも今朝憩い酒もらいけり銭もらいけり
ねむく居て見捨てしそんなテストなど捨てなんそして澄みていく胸
長き夜は深き川こそ波の間の水底若き蕪は良きかな
「イタメシはピザ」テレビ氏は確かだが舌はしびれて錆び始めたい
もがくのち家にまひるま届く福とどまる暇に叡智の句かも

  テーマ詠「お店」
ほんのりとふくらんでいる手芸店 毛糸の匂いは日なたの匂い

 

第29号(2017年秋号)

  自由詠「夏草」
緑黄色野菜がないと言いながら絹ごし豆腐にしょうゆをかける
断りのメールやんわりやわらかく真綿のなかに黒き種あり
温かい缶コーヒーが欲しくても自販機にない そういう季節
うそばっか言って過ごした二十年だったのだろう背中がかゆい
夏草は自分勝手に生えてくる自分勝手な夏草を引く

  テーマ詠「学校」
百までの素数は泣いているのかも静かの海にとり残されて

 

第30号(2018年春号)

  自由詠「やわらかな畝」
正直なそして健やかな歌を読む荒ぶるこころを塩味として
百近き鉄の器を満たしたるのちの電話はやわらかな畝
西の端クリーム色の会議室この世は何も変わっていない
降るかなと思っていたら降ってきた含み笑いの集いの後で
夕ぐれの白き世界の前方を脚のみじかきねこ行き過ぎる

  テーマ詠「文房具」 ※
消すものと消されるものの舟としてわが筆入れはふくらんでゆく

 ※ この歌は巻頭歌に選んでいただきました。

 

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たそがれ燃やす

2018-05-10 22:23:07 | 新いろは歌

 

2018年のいろは歌の日の詠草です。題「星」。
#kiz48 4作品 #IRH48 1作品

 

たそがれ燃やす広場背に
星のむこうへゆく祭り
きっと抜け道あるならん
ワープを終えて良い寝覚め

たそかれもやすひろはせに
ほしのむこうへゆくまつり
きっとぬけみちあるならん
わーぷをおえてよいねさめ

#kiz48 #いろは歌の日 op.69 2018/4/8

 

惑星たちの眠るころ
甘きレモンは冷えおりぬ
四時から部屋に波受けて
そっとブーツを干す夢さ

わくせいたちのねむるころ
あまきれもんはひえおりぬ
よしからへやになみうけて
そっとふーつをほすゆめさ

#kiz48 #いろは歌の日 op.70 2018/4/8

 

惑星や朝練終えて君を待つ
ラメ塗った予知猫ひそむスロープは星のゆうべとなりにけるかも

わくせいやあされんおえてきみをまつ
らめぬったよちねこひそむすろーふはほしのゆうへとなりにけるかも

#kiz48 #いろは歌の日 op.71 2018/4/8

 

重たそう星座早見を茹でるかな
くっつけよメロンとスフレ眠き星ぬり絵蛇鰐コアラのマーチ

おもたそうせいさはやみをゆてるかな
くっつけよめろんとすふれねむきほしぬりえへひわにこあらのまーち

#kiz48 #いろは歌の日 op.72 2018/4/8

 

童夜半群れ歩めるを
ツインの星に招きたり
蝉と鵺ゐて地声消す
嘘や黒ミサ思ふかな

わらへよはむれあゆめるを
ついんのほしにまねきたり
せひとぬえゐてちこゑけす
うそやくろみさおもふかな

#IRH48 #いろは歌の日 op.9 2018/4/8

 

 

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昼過ぎの

2018-05-08 21:13:56 | 短歌

 

昼過ぎの水面色濃き堀川にかるがもたちはぐわぐわ鳴けり

丸腰の武士のごとくにわれはゆく車両進入禁止の道を

仰角おおよそ三十度なるのり面に水仙咲けり一月二十日

手のひらでアフターシェーブローションを擦りつければすべるおとがい

レンジにて残りご飯をあたためるあたたかきものを欲しがるわれは

北浦和駅西口を出てあるく冬の飛沫はゆきどころなし

音楽は水面をゆらしたちまちに噴き出る水は虹をよびだす

外出のすべては虚構わたくしはわが敷地から一歩も出ない

奥歯から側頭葉へと移りたる痛みとともに夜は更けてゆく

かぜぐすり白湯に三錠のみくだしゆるき仕事を始めんとする


_/_/_/ 未来5月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/

 

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