麦畑

太陽と大地と海は調和するミックスナッツの袋のなかで

背もたれを

2019-12-08 16:00:28 | 短歌

 

背もたれを倒せば広き車なり娘の荷物と娘をはこぶ

助手席の足元にある空間にあらんかぎりの靴を詰め込む

ブタさんの大きなぬいぐるみも乗せる 二十年来の娘の相棒

本棚の長きを積んでひだりがわ見難きままにゆく東北道

初めてのひとりぐらしはうれしいかさみしいか なんて問うこともなく

武蔵野の道ややこしやややこしやカーナビさんの言うことをきく

十年の昔に買ったカーナビがやさしい声でがんばっている

自家用車にいっぱいの荷物二往復 娘ひとりのくらしのために

今生の別れとまでは言わねども手を振る娘に手を振りかえす

月の夜はあるいは月のなき夜はひとりぐらしの娘を思う


_/_/_/ 未来12月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/

 

コメント
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