深爪にならぬ加減を心得て爪に爪切り差し入れている
庭に出て爪切ることの清しさよ爪はぱつんとはじけて土へ
ああ爪は土に還ってゆくんだな僕はそのうち煙になるよ
爪と爪のあいだに暇をつぶす間にひとりのひとを忘れてしまう
でたらめな爪の色した娘らは笑いたいとき笑っているよ
夏休み明けの教室ほのかなるネイルリムーバーの香りに満ちて
もし爪に神経細胞あったなら爪切るたびにぎゃあと叫ぶよ
爪の先をやすりで削ると粉が出るまがうことなく人間の粉
身を粉にして働けどなお働けど娘は派手になるばかりなり
_/_/_/ 未来10月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ 笹公人 選歌欄 _/_/_/