麦畑

太陽と大地と海は調和するミックスナッツの袋のなかで

水中花

2021-05-29 21:12:14 | 短歌


水中花かざる窓辺のあかるさよ春に逝きたるひとと向き合う

ようかんのきめ細やかな舌触りこういう時しか食べないけれど

白隠禅師座禅和讃は面白しこういう時しか読まないけれど

手のひらのくぼみのように静かなり曇り日なればひかりは射さず

新しい卒塔婆を墓の脇に置くあたらしきものは気持ちよきかな

はなびらをたっぷりつけて立っている墓地南庭の河津桜は

死んでから丸七年と言う父を丸六年よと母はとがめる

キャラメルの黄の空箱を投げつけて祖母を泣かせたむかしもありき

ラジカセをぶっ壊されて何てことするんだと怒鳴ったこともありしよ

午後九時の大和トンネルくぐるとき祖母のくしゃみを聞いた気がした


_/_/_/ 未来6月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/

 

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わが裡に

2021-05-01 13:02:57 | 短歌

 

わが裡にちいさな海があるとしてそこに棲んでるくじらさみしい

雑巾をぎゅっとしぼれば公然の秘密のように水がしたたる

半額のシール貼られるときを待つ格差社会は風邪ひきやすし

村おこしするおおよその村にある「ふれあい広場」の昼の静けさ

街路樹の名前そのまま付けられたけやき通りにけやきは太る

みそ汁の椀がすべって笑いだす家族ありたり昭和のむかし

鼻かんでふわんと捨てるうす紙が枯れ野の底にたどり着くまで

することがなければ広告のうらがわに根の公式ほそくみちびく

貼り替えたほうが良いとは思うけど障子の穴から空を見ている

ハイウェイラジオのひとはくり返す事故渋滞と春の兆しを


_/_/_/ 未来5月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/

 

 

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