掃除機の

掃除機の音からにげるようにしてどこか遠くへ（昼にはもどる）

二番目に近いホームセンターまではや歩きにて三十五分

二十七畳用という機種もありだれが買うのかこのストーブを

火はついていないけれどもストーブの売り場の前はどこかあたたか

三十秒の塗装で二年はもちますと床用ワックス実演販売

コーヒーを飲みつつ本を読むひとのとなりでわれはコーヒーを飲む

防災上禁煙のはずのトイレからわれのきらいなタバコのにおい

むこう側の土手を歩いているひとが時々うしろ向きにてに歩く

娘らもうしろを向いて歩くひとをたびたび見かけていると言いたり

うしろ向き歩きは健康に良いらしいインターネットで検索すれば

十二月

十二月二十四日の食卓にわか鳥たちはから揚げられる

十二月二十四日の食卓に親どりたちは焼きあげられる

宅配のピザを運んでくる人よ一夜の宅配ピザをください

くりすますくすぐりますにみえまする笑えぬ夜を笑える夜に

いもうとは大貧民から抜けられずストーブの前で笑いころげる

ねえさんは猪鹿蝶と青短のどちらがいいか決められません

とうさんは何だかんだと言いながらいつもの二倍の酒を飲んでる

かあさんはほかほか電気カーペットに倒れたままで真夜中になる

クリスマスとクリスマスイブを比べたらどちらの方が聖なるものか

十二月二十五日のごみ箱に茶色い骨はつみあげられる

メモ帳の

メモ帳の隅にちいさく「白」と書き一時間半川沿いを歩く

_/_/_/ 夜はぷちぷちケータイ短歌（１２月２０日放送分） 月間テーマ「白」 _/_/_/
_/_/_/ 穂村弘さんに選んでいただきました。 （放送外） _/_/_/

まっすぐな

まっすぐな線（ライン）を描く毎日も生活の為だったりもする

_/_/_/ ＮＨＫ短歌 １月号（１０月１日締め切り分） 題「線」 _/_/_/
_/_/_/ 今野寿美さんに選んでいただきました。（佳作） _/_/_/

ストーブを

ストーブを消されてしまい仕方ないこころもちにて玄関を出る

舗装路は砂利道になり砂利道は舗装路になりそこをわがゆく

白菜をひとつかかえてあるくひと白菜畑のわきを過ぎゆく

泥なのかほこりなのかわからないが要はよごれたＲＺ３５０

踏切でおおよそ二分待たされてたった一両の機関車が過ぎる

トラックが横を過ぎればわたくしの左半身ばかりがゆるむ

ニット帽を少しずらしてこめかみを掻けばほのかにわたしのにおい

ショーウインドウに映し見ているわが姿背すじの伸びを気にとめながら