麦畑

太陽と大地と海は調和するミックスナッツの袋のなかで

いっせいに

2018-09-07 19:46:08 | 短歌

 

いっせいにほろびの呪文を唱えれば並行世界がスクロールする

やわらかなバスが来るのを待っているサツキとメイの傍らに立ち

八月はかなしみの壁 泣きそうな声の少女を見ていられない

くろねこと見習い魔女は空をとぶ古典力学を置き去りにして

人間のようなタヌキに囲まれているかもしれず小田急線内

礼節を知りたる猫の男爵をジェントルニャンと呼べばたのしも

スピードと回転を得てよろこべば星の子供は宇宙をはしる

ぽにょぽにょの赤い体が集まっていもうとたちのトライポフォビア

かすかなるポトフの香りがとどくとき床下人をわれは疑う

月の夜は一旦停止の標識に御門のあごの尖りを思う


  ※ ルビ  御門(ミカド)  10首目


_/_/_/ 未来9月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バックミラーを

2018-09-07 19:31:41 | 短歌

 

未来9月号(800号記念特集号①)「未来歌集2018(1)」
に掲載された連作および小文です。


-----

バックミラーを覗いて見ればパンを食う小顔の女あるいは男か

運転をしながらパン食う人がいてよくよく見れば女のようだ

よく見れば運転しながらパン食うはショートヘアーの女のようだ

白い軽に乗った女はパンを食うサンドイッチに見える白パン

白い軽に乗った女の食うパンは耳なし食パンなのかもしれぬ

パンを食う女はパンを旨そうに食ってしまえりわれも食いたし

パンを食う女のことが気になって昨日と同じ時間に家出る

わが妻は小顔にあらずパンを食う女は小顔ゆえに気になる

本日から何ヶ月かはパンを食う女のことが気になるだろう

昨日だけだったのだろうかパンを食う女がパンを食っていたのは


 短歌を読むのは好きで二十年ほど前から宮柊二の編んだアンソロ―ジーを折々に読んでいました。本格的に作歌を始めたのはちょうど十年前、NHKラジオの短歌番組に投稿を始めた頃です。ときどきは投稿歌が採用されてラジオで読まれることがあり、それが嬉しくてのめり込んでいました。本稿の連作はそんな十年前に作ったものです。とりあえず勢いだけはあるなあと思います。こんな連作でも面白いと言って読んでくださる方がいらっしゃいましたので人目に晒すことにしました。どうぞご笑覧ください。

-----

 

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする