麦畑

太陽と大地と海は調和するミックスナッツの袋のなかで

椰子の木が

2018-05-12 22:59:15 | 短歌

 

『うたつかい』掲載歌まとめ (第26号~第30号)

※ 『うたつかい』はツイッターで使っている「むぎたうろす」という名義で投稿しています。
※ 『うたつかい』は既発表歌の掲載も可能なので既に発表している歌を載せる場合もあります。

 

第26号(2016年夏号)

  自由詠「あけぼのふかき夢のなかにて」
椰子の木が規則正しく立っている生まれる前の記憶のなかに
本屋から薬屋になる物件の青いかもめが消されてゆくよ
留年をしてうあああと声をあぐあけぼのふかき夢のなかにて
イチローが打ったボールを追いかけてそのまま駆けてゆく枯野かな
ひたすらに男爵薯を剥いている二十一世紀のキッチンで

  テーマ詠「家電・家具」
かぎりなくアイスキューブを吐く箱のある一瞬は神と思えり

 

第27号(2016年秋号)

  自由詠「あたらしい朝」
熱々のドリップコーヒーの飲み口に恐るおそるにくちびる寄せる
駅前のベンチを照らす日曜の朝のひかりにもどかしさあり
枝のみになっている樹のかなしみを駅西口に五本ならべる
五年前とまったく同じ服を着てカシャリ撮られている顏写真
ロータリーを時計回りにまわるときわれは左にかたむいている

  テーマ詠「オノマトペ」
野茂の球ぱしんぱしんと受けながら眠りのなかに入りてゆくなり

 

第28号(2017年春号)

  自由詠「回文短歌レッスン4」
理系らも偽理系らも今朝憩い酒もらいけり銭もらいけり
ねむく居て見捨てしそんなテストなど捨てなんそして澄みていく胸
長き夜は深き川こそ波の間の水底若き蕪は良きかな
「イタメシはピザ」テレビ氏は確かだが舌はしびれて錆び始めたい
もがくのち家にまひるま届く福とどまる暇に叡智の句かも

  テーマ詠「お店」
ほんのりとふくらんでいる手芸店 毛糸の匂いは日なたの匂い

 

第29号(2017年秋号)

  自由詠「夏草」
緑黄色野菜がないと言いながら絹ごし豆腐にしょうゆをかける
断りのメールやんわりやわらかく真綿のなかに黒き種あり
温かい缶コーヒーが欲しくても自販機にない そういう季節
うそばっか言って過ごした二十年だったのだろう背中がかゆい
夏草は自分勝手に生えてくる自分勝手な夏草を引く

  テーマ詠「学校」
百までの素数は泣いているのかも静かの海にとり残されて

 

第30号(2018年春号)

  自由詠「やわらかな畝」
正直なそして健やかな歌を読む荒ぶるこころを塩味として
百近き鉄の器を満たしたるのちの電話はやわらかな畝
西の端クリーム色の会議室この世は何も変わっていない
降るかなと思っていたら降ってきた含み笑いの集いの後で
夕ぐれの白き世界の前方を脚のみじかきねこ行き過ぎる

  テーマ詠「文房具」 ※
消すものと消されるものの舟としてわが筆入れはふくらんでゆく

 ※ この歌は巻頭歌に選んでいただきました。

 


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