ぬばたまのやみそうもない雨のなかとかげの卵はほのあかりする
頬につくひとつ米つぶひとりならそのままだろう 干からびるまで
かみの毛の右半分を銀に染め娘よ悟りをひらくつもりか
ぎんいろの娘の脇にはさまれて体温計は体温になる
機関車の一両のみに曳かれゆく十九両のガソリンの貨車
ガソリンをはらいっぱいに詰め込んで貨物列車は北へ向かうも
ポエジーは北から来るという説にうべないながら心はたわむ
二百円安い買い物するために十二キロ先へ ああ、ゆかねばならぬ
ゆうやみの青い世界は自転車のわたしひとりのものかもしれず
ゆうやみのランドマークに灯はともりわたしはすこしあたたかくなる
※ ルビ 卵(らん)
_/_/_/ 未来6月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/